特許第6543498号(P6543498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543498インクジェット光造形法における光造形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543498
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】インクジェット光造形法における光造形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20190628BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20190628BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190628BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20190628BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B29C64/112
   B29C64/40
   B33Y10/00
   C08F2/00 A
   C08F290/06
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-76068(P2015-76068)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2016-196104(P2016-196104A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 真
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】松本 英嗣
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111226(JP,A)
【文献】 特開2005−254521(JP,A)
【文献】 特開2007−169423(JP,A)
【文献】 特開2002−067172(JP,A)
【文献】 特開2004−123840(JP,A)
【文献】 特開2001−49129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット光造形法を用いた光造形品の製造方法であって、
モデル材(α)が単官能エチレン性不飽和単量体(A)と多官能エチレン性不飽和単量体(B)と光重合開始剤(C)とを含有し、モデル材用吐出ヘッドから前記モデル材(α)を、サポート材用吐出ヘッドからサポート材(β)を造形テーブル上に吐出し、吐出された前記モデル材(α)を光硬化手段により光硬化させ、前記モデル材(α)と前記サポート材(β)からなる層を形成し、さらにこれを高さ方向に繰り返し、前記モデル材(α)と前記サポート材(β)からなる積層体(γ)を形成する工程(I)と、
前記積層体(γ)から前記サポート材(β)にて構成される部分を除去することにより、前記モデル材(α)からなる三次元造形物(δ)を造形物として取り出す工程(II)と、
前記三次元造形物(δ)を加熱処理することにより、三次元造形物内の未硬化成分としての多官能エチレン性不飽和単量体(B)の少なくとも一部を除去する工程(III)と、
を含み、
前記未硬化成分の除去工程(III)において、加熱処理を溶媒中に浸漬して行うことを特徴とする光造形品の製造方法。
【請求項2】
前記未硬化成分の除去工程(III)での加熱処理温度が50〜140℃である請求項1に記載の光造形品の製造方法。
【請求項3】
前記未硬化成分の除去工程(III)において、加熱処理を溶解度パラメータ−(SP)が8〜18である溶媒中に浸漬して行うことを特徴とする請求項1または2記載の光造形品の製造方法。
【請求項4】
前記未硬化成分の除去工程(III)において浸漬に用いられる溶媒がアルキレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項3記載の光造形品の製造方法。
【請求項5】
三次元造形物の加熱処理前の荷重たわみ温度が50〜80℃であり、加熱処理後の荷重たわみ温度が90〜120℃である請求項1〜のいずれか記載の光造形品の製造方法。
【請求項6】
多官能エチレン性不飽和単量体(B)が、分子内に2〜6個のメタクリル基を含有する請求項1〜のいずれか記載の光造形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット光造形法を用いた光造形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状の光硬化性樹脂にレーザー光や紫外線等の光を照射して、一定のパターンに硬化させ、立体状のデザインモデルやワーキングモデルを作製する方法は幅広く知られており、液状の光硬化性樹脂としては種々のものが提案されている(例えば特許文献1〜6参照)。
近年、インクジェット方式による光造形法が提案され、従来法に比べ、インクジェットノズルから吐出した液状の光硬化性樹脂を硬化させ、積層して光造形することが可能となり、従来のように大型の樹脂液槽や暗室の設置が不要となる等の利点がある。光造形機がコンパクトで小型化できる他、CAD(Computer Aided Design)システムを用いることにより、自由に立体モデルを作製できる3DCADとして注目されている(例えば特許文献7参照)。
【0003】
しかしながらこのような光造形法で造形された造形物は、そのままでは比較的耐熱温度が低いため、耐熱性の要求される部品、例えば自動車のエンジン周りの部品やコピー機等のランプ周りの部品に適用することは困難であった。光造形法で造形した自動車エンジンのインテークマニホールドの造形物をエンジンに取付け、エンジンの燃焼効率や吸気効率を実験する場合、時間の経過に伴いエンジンの熱で造形物が変形してしまうという問題があった。また加熱後の反りが大きく、寸法安定性に不具合が発生する問題があった。
【0004】
また造形後に後処理して、耐熱性を高め、時間経過にともなうひずみの発生を抑制する技術が開発され、例えば造形物に硬化促進エネルギ−を付与(加熱)し未硬化液を硬化させる技術が知られている(例えば特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−204915号公報
【特許文献2】特開平8−59760号公報
【特許文献3】特開平9−169827号公報
【特許文献4】特開平9−316111号公報
【特許文献5】特開2001−310918号公報
【特許文献6】特開2004−59601号公報
【特許文献7】特開2002−67174号公報
【特許文献8】特開2002−67172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐熱性及び機械物性に優れた光造形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、インクジェット光造形法を用いた光造形品の製造方法であって、
モデル材(α)が単官能エチレン性不飽和単量体(A)と多官能エチレン性不飽和単量体(B)と光重合開始剤(C)とを含有し、モデル材用吐出ヘッドから前記モデル材(α)を、サポート材用吐出ヘッドからサポート材(β)を造形テーブル上に吐出し、吐出された前記モデル材(α)を光硬化手段により光硬化させ、前記モデル材(α)と前記サポート材(β)からなる層を形成し、さらにこれを高さ方向に繰り返し、前記モデル材(α)と前記サポート材(β)からなる積層体(γ)を形成する工程(I)と、
前記積層体(γ)から前記サポート材(β)にて構成される部分を除去することにより、前記モデル材(α)からなる三次元造形物(δ)を造形物として取り出す工程(II)と、
前記三次元造形物(δ)を加熱処理することにより、三次元造形物内の未硬化成分としての多官能エチレン性不飽和単量体(B)の少なくとも一部を除去する工程(III)と、
を含むことを特徴とする光造形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光造形品の製造方法により製造された光造形品は、耐熱性及び機械物性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インクジェット方式の三次元造形システムの概略図
図2】三次元造形装置の構成を示す概略図の側面図
図3】三次元造形装置の構成を示す概略図の平面図
図4】各プリンタヘッドのひとつを下方から見た概略図
図5】各プリンタヘッドに対するモデル材及びサポート材を供給する材料供給システムの概略図
図6】三次元造形装置を作動させ、三次元の造形物の作製途中を示す概略図
図7】(イ)は造形が完了したサポート材を含むモデルを示す概略図、(ロ)は造形が完了したサポート材を含むモデルからサポート材を除去したモデルを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のインクジェット光造形法を用いた光造形品の製造方法は、モデル材用吐出ヘッドからモデル材(α)を、サポート材用吐出ヘッドからサポート材(β)を造形テーブル上に吐出し、吐出されたモデル材(α)を光硬化手段により光硬化させ、モデル材(α)とサポート材(β)からなる層を形成し、さらにこれを高さ方向に繰り返し、前記モデル材(α)と前記サポート材(β)からなる積層体(γ)を形成する工程(I)と、
前記積層体(γ)から前記サポート材(β)にて構成される部分を除去することにより、前記モデル材(α)からなる三次元造形物(δ)を造形物として取り出す工程(II)と、
前記三次元造形物(δ)を加熱処理することにより、三次元造形物内の未硬化成分としての多官能エチレン性不飽和単量体(B)の少なくとも一部を除去する工程(III)の三段階の工程から構成される。
【0011】
本発明のインクジェット光造形法を用いた光造形品の製造方法の最初の工程である工程(I)で用いられるモデル材(α)は単官能エチレン性不飽和単量体(A)、多官能エチレン性不飽和単量体(B)および光重合開始剤(C)の三成分より構成される。
【0012】
本発明における単官能エチレン不飽和単量体(A)はエチレン性不飽和基[(メタ)アクリロイル基及びビニル基等]を1個有する化合物であり、特に限定されない。(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。以下具体例を示す。
【0013】
炭素数4〜30の直鎖又は分岐のアルキル(メタ)アクリレート;
[エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等メチル(メタ)アクリレート及びtert−ブチル(メタ)アクリレート等]
炭素数6〜20の脂環式骨格を有する(メタ)アクリレート;
[シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン及びアダマンチル(メタ)アクリレート等]
複素環式骨格を有する(メタ)アクリレート;
[4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン等]
炭素数9〜15の芳香環を有する(メタ)アクリレート;
[フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等]
炭素数5〜15の水酸基を有する(メタ)アクリレート;
[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等]
数平均分子量(以下、Mnと略記)200〜2,000の水酸基を有する(メタ)アクリレート;
[ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びPEG−PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等]
炭素数3〜15の(メタ)アクリルアミド誘導体;
[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]が挙げられる。
【0014】
(A)の内、光硬化物の耐熱性の観点から、そのホモポリマーのガラス転移点(以下Tgと省略)は好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは85〜190℃である。
【0015】
(A)の内、さらに光硬化物の造形精度及び耐熱性の観点から好ましいのは炭素数6〜20の脂環式骨格を有する(メタ)アクリレートであり、更に好ましいのはイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレートである。
【0016】
本発明における多官能エチレン性不飽和単量体(B)はエチレン性不飽和基[(メタ)アクリロイル基及びビニル基等]を2個以上有する化合物であり、特に限定されない。
(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。以下具体例を示す。
【0017】
炭素数5〜30の直鎖又は分岐のアルキレングリコールジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート;
[ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート及び2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等]
炭素数10〜30の脂環式骨格を有するジ(メタ)アクリレート;
[ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等]
炭素数10〜40の芳香環を有するジ(メタ)アクリレート;
[ビスフェノキシフルオレンジ(メタ)アクリレート等]
Mn200〜2,000の水酸基を有するジ(メタ)アクリレート;
[PEGジ(メタ)アクリレート及びPPGジ(メタ)アクリレート等]
等が挙げられる。
【0018】
また、(B)として、かさ高いメタクリル基を含有させると、硬化収縮を抑えた上で、Tgを上げることが可能なことから、造形物の反りを抑えた上で、高い耐熱性を発現できることから、(B)のうち特に好ましいのはメタクリル基を分子内に含有する多官能エチレン性不飽和単量体である。
【0019】
また、(B)を、上述した脂環式骨格及び/又は芳香環を有する構成にすることによって、更に、造形物の反りを抑えた上で、高い耐熱性を発現するという効果がある。
(B)のうち耐熱性の観点から好ましいものはジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートおよびビスフェノキシフルオレンジ(メタ)アクリレートである。
(B)の内、光硬化物の耐熱性の観点から、そのホモポリマーのガラス転移点(以下Tgと省略)は好ましくは200℃以上であり、より好ましくは205℃〜230℃、更に好ましくは210〜220℃である。
【0020】
本発明における多官能エチレン性不飽和単量体(B)としては、分子内にウレタン基を含有する多官能エチレン性不飽和単量体も使用することができ、例えば、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基を有する(メタ)アクリレートから形成されてなるもの、又は有機ポリイソシアネート及び水酸基を有する(メタ)アクリレートから形成されてなるもの等が挙げられる。
【0021】
本発明における多官能エチレン性不飽和単量体(B)は耐熱性および硬化収縮性の観点から、好ましくは分子内に2〜6個の、より好ましくは2〜4個のメタクリル基を含有する。
【0022】
(B)のうち耐熱性の観点から特に好ましいものはジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレートおよびビスフェノキシフルオレンジメタクリレートである。
【0023】
本発明における光重合開始剤(C)としては、
ベンゾイン化合物(炭素数14〜18の化合物);
[例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等]
アセトフェノン化合物(炭素数8〜18の化合物);
〔例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン〕;
アントラキノン化合物(炭素数14〜19の化合物);
〔例えば2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン]
チオキサントン化合物(炭素数13〜17の化合物);
[例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン及び2−クロロチオキサントン]
ケタール化合物(炭素数16〜17の化合物);
[例えばアセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール]
ベンゾフェノン化合物(炭素数13〜21の化合物);
[例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド及び4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン]
ホスフィンオキシド(炭素数22〜28の化合物);
[例えば1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド];
及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの(C)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記(C)の内、光硬化物が黄変しにくいという耐光性の観点から好ましいのは、アセトフェノン化合物及びホスフィンオキシド、更に好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、特に好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0025】
本発明におけるモデル材(α)には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により添加剤(D)を含有させることができる。
(D)には、重合禁止剤、着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、充填剤等が含まれ、目的に応じて種々選択することができ、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
三次元造形システムを用いた光造形品の製造
<工程(I)>
図1は、インクジェット方式の三次元造形システムの概略図である。図1に示すように、このシステムは、パーソナルコンピュータ(パソコン)1と、このパソコン1と接続される三次元造形装置2とから構成されている。パソコン1は、造形すべき物体の三次元CADデータの入力を受け付け、この入力されたCADデータを三次元造形用のデータとして、例えばSTL(Stereo Lithographyの略)データに変換し、更に、この三次元STLデータから、Z方向にスライスした各レイヤ(層)のデータを生成する。
【0027】
詳細には、造形するワークに対応するモデル材のデータに加え、造形時にモデル材を支持するためのサポート材のデータも生成する。一般的には、例えばZ方向において、下方位置のモデル材の幅より、上方位置のモデル材の幅が大きく、いわゆるオーバーハングしている部分がある場合、1にインストールされているソフトウエアにより、下方位置のモデル材のX、Y方向の周囲にサポート材を配置することにより、このオーバーハング部分を下方より支持するように自動的にサポート材が設けられるようになっている。
【0028】
更に、1では、三次元造形装置2の保有する造形空間内における、造形用の三次元データのX、Y及びZ方向における位置決めならびに姿勢の決定を、STLデータを用いて行う機能も有している。より具体的には、1の画面上に、三次元造形装置2の保有する造形テーブル上の造形空間を三次元的に表現した仮想三次元空間を表示するとともに、この空間の初期設定位置に、造形すべき物体の三次元のSTLデータを表示し、この画面上において、マウスやカーソルなどのポインティングデバイスを用いて、造形すべき物体の三次元のSTLデータを、三次元造形装置2の保有する造形空間に対して、所望の位置並びに姿勢を決定することができる。
【0029】
三次元造形装置2は、上述したZ方向にスライスした各レイヤ(層)のデータを1から一括又は各レイヤ単位で受け取り、各レイヤのデータに基づいて、三次元造形装置2の有する、後述する二次元プリンタヘッドを主走査方向(X方向)及び副走査方向(Y方向)に走査させるとともに、モデル材吐出用のプリンタヘッドからモデル材とサポート材吐出用のプリンタヘッドからサポート材を吐出することにより、各層の形成を行うものである。
【0030】
図2及び図3は、三次元造形装置2の構成を示す概略図であり、図2は側面図、図3は、平面図である。
図2及び図3に示すように、三次元造形装置2は、Z方向に移動可能な造形テーブル21と、この造形テーブル上にモデル材を吐出するためのモデル材用のプリンタヘッド22と、この造形テーブル上にサポート材を吐出するためのサポート材用のプリンタヘッド23と、プリンタヘッド22及び23から吐出され、造形テーブル21上に形成された層の上面を平滑にするために、余分なモデル材及びサポート材を除去するためのローラ24と、塗布された少なくともモデル材を光硬化させるためのUV光源25とを有する。
【0031】
上述したプリンタヘッド22、23と、平滑化のためのローラ24と、UV光源25は、プリンタヘッドモジュール26に位置決めされて搭載され、図示しない駆動手段によって、造形テーブル21の上方において、主走査方向(X方向)及び副走査方向(Y方向)に一体的に駆動される。
【0032】
図4は、各プリンタヘッド22及び23のひとつを下方から見た概略図である。図4に示すように、各プリンタヘッド22及び23は、造形テーブルに対向する面に、副走査方向(Y方向)に所定の間隔を持って設けられる、モデル材やサポート材を吐出するための複数のオリフィスを有している。
【0033】
図2において、左側から右側に移動する主走査方向(往路)において少なくともプリンタヘッド22及び23からモデル材とサポート材を造形テーブル上に吐出する場合、ローラ24は、上述した主走査方向の右端部から左方向に移動する復路において作用するようになっており、その際のローラの回転方向は、図2に示す矢印方向、つまり時計回りに回転する。
言い換えれば、ローラ24が作用する時点のプリンタヘッドモジュール26が走査する方向と、ローラ24の下部が回転する方向(図2に示す矢印方向)とが同じ向きに回転するように制御されることが好ましい。
【0034】
UV光源25は、副走査方向に沿って伸びており、その長さは少なくとも、各プリンタヘッドに設けられるすべてのオリフィスを含む長さを有することが望ましい。
また、UV光源25としては、光硬化型の樹脂を硬化させるために一般的によく用いられるUVランプ又はLEDを用いることが好ましい。
また、造形テーブル21は、図示しない駆動手段によって、各レイヤ(層)に対応する各スライスデータに基づいて各レイヤ(層)を形成する毎に、次のレイヤの形成に先だって、各レイヤの厚み分だけ、下方(Z方向)に移動する。
【0035】
図5は、各プリンタヘッド22及び23に対するモデル材ならびにサポート材を供給する材料供給システムの概略図である。
各プリンタヘッド22及び23に対しては、モデル材及びサポート材のカートリッジ27及び28が各々接続され、その接続経路途中に各々供給用ポンプ29及び30が設けられている。各カートリッジ27及び28は、内部のモデル材又はサポート材がなくなると、交換可能となっている。
【0036】
次に、上述したインクジェット方式の三次元造形システムを用いた三次元造形方法について述べる。
三次元造形のためのCADデータが1に入力されると、STLデータに変換されるとともに、上述した画面上にて、三次元造形装置2の保有する造形空間内における三次元的なデータ(モデル)の姿勢を決定した後、1からZ方向の各スライスデータが三次元造形装置2に送られる。
三次元造形装置2は、プリンタヘッドモジュール26を主走査方向に往復動作させるとともに、その往復動作中に、受け取った各スライスデータに基づき適切な位置にモデル材とサポート材とを各プリンタヘッド22及び23から吐出制御させることにより、各スライスデータに対応する各層を造形テーブル上に積層していく。
各層には少なくともモデル材がプリンタヘッド22から適切な位置に吐出され、必要に応じて、サポート材もプリンタヘッド23から適切な位置に吐出され各層が造形されることになる。
【0037】
更に、例えば、図2の左から右方向(往路)にプリンタヘッドモジュール26が移動する過程において、各プリンタヘッド22及び23からモデル材とサポート材が吐出される場合、その復路(図2の右から左方向)の過程において、ローラ24が既に造形テーブル21上に塗布されているモデル材とサポート材から形成される表面の平滑化を図るために、余分な材料を取り除くため、モデル材とサポート材の表面に対して接触しつつ、上述した回転方向に回転しつづける。
そして、このローラ24によって平滑化された表面に対して、プリンタヘッドモジュール26に載置されるUV光源25から紫外線を照射することによって、造形テーブル21上に形成されている最上面に位置する層の硬化を行わせる。なお、各層は、少なくともモデル材によって形成され、必要に応じてサポート材を加えて形成されることは言うまでもない。
従って、各層の形成は、各プリンタヘッド22及び23からモデル材とサポート材の吐出により、造形テーブル21上の最上面に位置する層の形成、その層の表面をローラ24による平滑化、平滑化された、造形テーブル21上の最上面に位置する層に対する紫外線の照射による層の硬化によって行われ、これらの工程を繰り返すことにより、三次元のモデルを造形することになる。
【0038】
図6は、三次元造形装置2を作動させ、三次元の造形物の作製途中を示す概略図である。図6に示すMの部分がモデル材によって各層が積層されている部分であり、Sの部分がサポート材によって各層が積層されている部分である。
上述したように、Mの部分のモデル材がZ方向の下方から上方に略Sの字状になっているため、図6に示すモデル材の左右の湾曲している部分を支持するために、Sの部分にサポート材が設けられるように造形させている。
【0039】
本出願の発明者らは、上述した、インクジェット光造形方法により、造形物の造形工程である、工程(I)によって、単官能エチレン性不飽和単量体(A)と多官能エチレン性不飽和単量体(B)と光重合開始剤(C)とを含有するともに、造形後の目標荷重たわみ温度が90〜120℃となるように調合したモデル材を用いて、インクジェット光造形方法にて造形物を造形した。
そして、造形後の造形物の荷重たわみ温度を測定したところ、荷重たわみ温度が50〜80℃となり、上述した目標荷重たわみ温度に達していないことがわかった。
【0040】
より具体的には、単官能エチレン性不飽和単量体(A)として、ホモポリマーのガラス転移温度が80℃以上である単量体を使用し、多官能エチレン性不飽和単量体(B)として、ホモポリマーのガラス転移温度が200℃以上であるとともに、メタクリル基を分子内に有する単量体を使用し、さらに光重合開始剤(C)を含有するモデル材を用いて、イングジェット方式にて、造形後の目標値としての荷重たわみ温度が90〜120℃となることを狙ったものの、荷重たわみ温度が50〜80℃となり、上述した目標荷重たわみ温度に達していないことがわかった。
この結果を踏まえ、本出願の発明者らは、造形完了後の造形物を分析した結果、造形物には、未硬化成分が含まれており、この未硬化成分の存在によって、造形物の荷重たわみ温度が目標値に達していない理由であることが判明した。
【0041】
更に、このような結果を招いた原因を発明者らが検討した結果、主な原因は、本発明が、モデル材として耐熱性向上と造形物の反りの抑制を両立するために、モデル材の成分として、多官能エチレン性不飽和単量体(B)を用いていること、ならびにモデル材とサポート材を用いるインクジェット光造形方法を造形方法として用いていること、であることがわかった。
【0042】
より詳細に説明すると、本発明の基本的な狙いは、造形物の反りを抑制しつつ、モデル材の耐熱性の向上を図る点であり、この狙いの達成のために、多官能エチレン性不飽和単量体(B)をモデル材の成分として用いている。しかしながら、多官能エチレン性不飽和単量体(B)の採用は、一方で、光硬化反応性能の低下を生じることが判明した。より具体的には、多官能エチレン性不飽和単量体(B)の成分に対する光硬化反応性能の低下であり、場合によっては、これら多官能エチレン性不飽和単量体(B)の一部が未硬化成分として、造形物内に残留することが判明した。
【0043】
<工程(II)>
図7の(イ)は、このようにして造形が完了したサポート材を含むモデルを示す概略図であり、図7の(ロ)は、造形が完了したサポート材を含むモデルからサポート材を除去したモデルを示す概略図である。
図7の(イ)に示すように、三次元造形装置2により、三次元のモデルの造形が完了した時点では、このモデルには、造形中のモデル材の支持のためのサポート材が一体的に形成されている。このため、このサポート材は、水溶解性の材料からなっているため、例えば水に浸けることにより、図7の(ロ)に示すようなモデル材のみからなるモデル(光造形品)を得ることができる。このようにして、本発明の光造形品を得ることができる。
【0044】
なお、上述したサポート材除去では、サポート材の除去を水に浸けることによりおこなったが、本発明におけるサポート材除去は、それ以外の手法、例えば手でモデル材とサポート材を分離することによりサポート材を除去する方法でもよい。
【0045】
<工程(III)>
工程(III)において、除去される未硬化成分としての(B)は工程(I)の光硬化反応において、未反応の成分のことであり、通常成分全体の0.1〜5%が相当する。
なお、工程(II)後の三次元造形物(δ)中に未硬化成分としての(A)が含まれている場合は、工程(III)において、未硬化成分としての(A)の少なくとも一部を併せて除去しても構わない。
【0046】
前記未硬化成分としての(B)が工程(II)後の三次元造形物(δ)中に存在することが三次元造形物(δ)の耐熱性を低下させている要因であることから、工程(III)において未硬化成分としての(B)の少なくとも一部を取り除くことにより三次元造形物(δ)の耐熱性を向上させることが可能となる。
【0047】
前記未硬化成分の除去工程(III)は、三次元造形物(δ)を加熱処理することにより未硬化成分としての(B)の少なくとも一部を三次元造形物(δ)より取り除く目的で実施するものであり、結果として耐熱性向上を図るものである。
【0048】
前記未硬化成分の除去工程(III)における加熱処理方法は大気雰囲気下で、又は、溶媒中に浸漬して実施することが可能であり、未反応硬化成分としての(B)の少なくとも一部を除去するために必要な加熱処理温度は好ましくは50〜140℃であり、より好ましくは50〜130℃、さらに好ましくは50〜120℃である。
【0049】
前記未硬化成分の除去工程(III)における加熱処理方法において、効率よく未反応硬化成分としての(B)の少なくとも一部を除去し、かつ造形物を変形させることなく耐熱性を向上させることのできる好ましい手法は、加熱処理を溶媒に浸漬して行う方法である。
【0050】
前記未硬化成分の除去工程(III)において三次元造形物(δ)を溶媒に浸漬して加熱処理して未硬化成分としての(B)の少なくとも一部を除去する場合、未硬化成分との相溶性を高め、除去を効率的に行うため、用いる溶媒の溶解度パラメータ−(SP)は、好ましくは8〜18であり、より好ましくは9〜16、さらに好ましくは9〜14である。
【0051】
前記未硬化成分の除去工程(III)において、用いる溶媒の沸点は揮発性の観点から、好ましくは200〜500℃、さらに好ましくは250〜500℃である。
【0052】
前記未硬化成分の除去工程(III)において、用いる溶媒の具体例を以下に示す。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(1)アルキレンオキサイド付加物系溶媒;
本溶媒は活性水素化合物、例えば水、アルコール、アミン、カルボン酸等にエチレンオキサイド(以下EOと省略)、プロピレンオキサイド(以下POと省略)、ブチレンオキサイド(以下BOと省略)等のアルキレンオキサイドを付加することで得られる溶媒である。
例えば、ポリエチレングリコール(水のEO5モル付加物)、プロピレングリコール(水のPO5モル付加物)、ブタノールのEO6モル付加物、ヘキサノールのBO5モル付加物等が挙げられる。
(2)アルコール系およびエーテル系溶媒;
[1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ブチルカルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシルグリコール、等]
(3)炭化水素系溶媒;
[ターベン(ソルベントナフサ)、ソルベント#150(高沸点芳香族炭化水素)等]
(4)エステル系溶媒;
[酢酸カルビトール、乳酸ブチル、酢酸メトキシブチル等]
(5)シリコーンオイル;
[ジメチルシリコーンオイル等]
【0053】
これらの溶媒のうち、低揮発性および三次元造形物内の未硬化成分との親和性の観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(より好ましくはポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール)である。
【0054】
前記未硬化成分の除去工程(III)は、三次元造形物(δ)を大気雰囲気下で加熱処理することにより行うことも可能であり、その場合、使用する加熱機器は特に限定されない。
【0055】
本発明における加熱処理前、すなわち工程(II)の後の三次元造形物(δ)の荷重たわみ温度は、耐熱性の観点から、好ましくは50〜80℃であり、より好ましくは55〜75℃、さらに好ましくは60〜75℃である。
【0056】
また本発明における加熱処理後、すなわち工程(III)の後の三次元造形物(ε)の荷重たわみ温度は、耐熱性の観点から、好ましくは90〜120℃であり、より好ましくは92〜115℃、さらに好ましくは95〜110℃である。
【0057】
なお、本発明における三次元造形物の加熱温度範囲の上限は、三次元造形物の最終的な目標の荷重たわみ温度と同等である。また、本発明における三次元造形物の加熱温度は、目標の荷重たわみ温度以下であっても、温度が低いほど熱処理に必要な時間が長くなるとともに、目標荷重たわみ温度より若干低い温度で、熱処理に必要な時間がほとんど変化しない傾向を示すため、目標荷重たわみ温度とその荷重たわみ温度からマイナス40℃の範囲で実験的に定めることが好ましい。
【0058】
また本発明における加熱処理後、すなわち工程(III)の後の三次元造形物(ε)の保管時(40℃×10%RH、24h)の変形量は使用上の観点から好ましくは1.0mm未満であり、さらに好ましくは0.6mm未満である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0060】
製造例1
反応容器にPPG[商品名「PPG−400」、三洋化成工業(株)製、Mn=400]400部、水添MDI(ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート)524部及びウレタン化触媒0.5部を仕込み、80℃で4時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート232部を加え、80℃で8時間反応させてウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(B−4)を得た。得られたウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(B−4)の官能基数は2、Mnは1,388であった。
【0061】
製造例2
反応容器にPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)[商品名「PTMG−1000」、三菱化学(株)製、Mn1,000]1,000部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)333部及びウレタン化触媒0.5部を仕込み、80℃で4時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート116部を加え、80℃で8時間反応させてウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(B−5)を得た。得られたウレタン基を有するエチレン性不飽和単量体(B−5)の官能基数は2、Mnは2,898であった。
【0062】
実施例1
表1に示すモデル材の原料の配合組成(重量部)を均一混合して、実施例1のモデル材(α−1)を得た。
また特開2012−111226号公報の「実施例2−1」に基づきサポート材の原料の配合組成(重量部)を均一混合してサポート材(β−1)を得た。
【0063】
続いてモデル材用吐出ヘッドからモデル材(α−1)を、サポート材用吐出ヘッドからサポート材(β−1)を造形テーブル上に20nL/sの速度で吐出し、吐出されたモデル材を露光量300mJ/cmの光硬化手段により光硬化させ、モデル材とサポート材からなる層を形成し、さらにこれを高さ方向に繰り返し、前記モデル材と前記サポート材からなる積層体(γ−1)を得た(工程I)。
【0064】
前記積層体(γ−1)から前記サポート材(β−1)にて構成される部分をイオン交換水に24時間浸漬して除去することにより、前記モデル材からなる三次元造形物(δ−1)を造形物として取り出した(工程II)。
【0065】
さらに前記三次元造形物(δ−1)をポリエチレングリコール(Mn約200)(E−1)に浸漬し、温度100℃にて24時間加熱処理することで、実施例1に示す三次元造形物(ε−1)を得た(工程III)。
【0066】
実施例2〜8および比較例3〜4
実施例1と同様のサポート材(β−1)を用い、モデル材配合組成(部)以外は上記実施例1と同様の工程処理を行い、三次元造形物(ε−2)〜(ε−8)および(ε’−3)〜(ε’−4)を得た。
【0067】
実施例9
モデル材配合組成(重量部)および工程III以外は実施例1と同様に工程処理を行い、工程IIIにおいては表1に示すように循風乾燥機[ESPEC(株)製]を用いて大気雰囲気下中で100℃下、24時間加熱処理することで、実施例9に示す三次元造形物(ε−9)を得た。
【0068】
比較例1および2
表1に示すとおりモデル材配合組成(重量部)を元に工程Iおよび工程IIを実施し、工程II終了段階に得た三次元造形物(δ’−1)および(δ’−2)については工程IIIの処理を実施せず、それぞれ(ε’−1)および(ε’−2)とした。
【0069】
以下の測定方法で加熱処理前後の造形物の荷重たわみ温度、加熱処理後の造形物の破断強度、加熱処理後の造形物の保管時の変形および加熱処理後の造形物のTgを測定した。
結果を表1に示す。
なお、加熱処理を行っていない比較例1及び2については、工程II終了段階に得た三次元造形物について特性の評価を行った。表1には「加熱処理後の荷重たわみ温度」「加熱処理後の破断強度」「加熱処理後の造形物のTg」として示しているが、比較例1及び2では加熱処理は行っていない。
【0070】
【表1】
【0071】
尚、表1における記号が示す内容は以下のとおりである。
(A−1):イソボルニルアクリレート[商品名「ライトアクリレートIBXA」、共栄社化学(株)製、官能基数=1]
(A−2):イソボルニルメタクリレート[商品名「ライトエステルIB−X」、共栄社化学(株)製、官能基数=1]
(A−3):1−アダマンチルアクリレート[商品名「1−AdA」、大阪有機化学工業(株)製、官能基数=1]
【0072】
(B−1):ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート[商品名「ライトエステルDCP−M」、共栄社化学(株)製、官能基数=2]
(B−2):ビスフェノキシフルオレンジメタクリレート[商品名「BPEF−MA」、新中村化学(株)製、官能基数=2]
(B−3):ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート[商品名「ライトアクリレートDCP−A」、共栄社化学(株)製、官能基数=2]
【0073】
(C−1):1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ルシリンTPO」、BASF(株)製]
(C−2):1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
(C−3):ビス(2,4,6、−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド[商品名「イルガキュア819」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
【0074】
(D−1):ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK307」、ビックケミージャパン(株)製](界面活性剤)
(D−2):ヒドロキノンモノメチルエーテル[和光純薬工業(株)製](重合禁止剤)
(D−3):カーボンブラック[商品名「MHIブラック#220」、御国色素(株)製](着色剤)
【0075】
(E−1):ポリエチレングリコール(Mn約200)[商品名「PEG200」、三洋化成工業(株)製]
(E−2):ポリプロピレングリコール(Mn約400)[商品名「サンニックスPP−400」、三洋化成工業(株)製]
(E−3):ジメチルシリコーンオイル[商品名「KF−96」、信越化学工業(株)製]
【0076】
以下の方法で、測定と評価を行った。その結果を表1に記載した。
<加熱処理前の造形物の荷重たわみ温度の測定方法>
工程IIで得られた三次元造形物(δ)を荷重たわみ温度測定装置型番「148−HDPC−3」、安田精機(株)製]を用いて、JIS−K7191に準じて荷重たわみ温度を測定した。荷重は高荷重(1.8MPa)とした。
【0077】
<加熱処理後の造形物の荷重たわみ温度の測定方法>
工程IIIで得られた三次元造形物(ε)を上記と同じ方法で荷重たわみ温度を測定した。荷重は高荷重(1.8MPa)とした。
【0078】
<加熱処理後の造形物の破断強度(N/mm)の測定方法>
工程IIIで得られた三次元造形物(ε)をオートグラフ[(株)島津製作所製]を用いて、試験速度50mm/分で引張り、JIS−K7113に準じて引張破断強度を測定し、破断強度とした。
【0079】
<加熱処理後の保管時の変形(mm)の測定方法>
工程IIIで得られた三次元造形物(ε)をカッターで幅5mm、長さ50mmの形状に成型したものを試験片とする。
この試験片を水平固定した状態で恒温恒湿器(40℃、10%RH)中に24時間静置後、重力による変形で垂れ下がった部分と水平面からの距離を測定し、保管時の変形(mm)とした。
【0080】
<加熱処理後の造形物のTgの測定方法>
工程IIIで得られた三次元造形物(ε)をカッターで幅5mm、長さ50mmの形状に成型した試験片を用いて、動的粘弾性測定(DMA)装置[型番「Rheogel−E4000」、(株)ユービーエム製]を用いて、DMA法により、引張モード、10HzでTgを測定した。
【0081】
表1に記載の結果から、本発明の製造方法(実施例1〜9)で作成した三次元造形物は、比較用の方法(比較例1〜4)で製造した三次元造形物に比べて、荷重たわみ温度が高く、耐熱性に優れたものであることがわかる。同時に破断強度も高いことから、光造形物としての強度も十分に持ち合わせたものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の製造方法で作成した三次元造形物は、高い耐熱性及び優れた機械物性を有することから、本発明の製造方法は、インクジェット光造形法における光造形品の製造方法として極めて有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 パーソナルコンピュータ(パソコン)
2 三次元造形装置
21 Z方向に移動可能な造形テーブル
22 モデル材用のプリンタヘッド
23 サポート材用のプリンタヘッド
24 ローラ
25 UV光源
26 プリンタヘッドモジュール
27 モデル材のカートリッジ
28 サポート材のカートリッジ
29 供給用ポンプ
30 供給用ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7