(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
登録実用新案第3007189号公報は、一枚の矩形状の板材からなる半透明の透過パネルと、該透過パネルを車室天井に取付け支持するための支持部と、を有する車両用バイザ装置を開示している。
【0003】
ところで、透過パネル内に導入された太陽光が透過パネルの下端面(の上面)で乱反射し光って見えることにより、車の乗員の視界を妨げることがある。特に、下端面が水平となっており、太陽光が鉛直上方(略鉛直上方を含む)から透過パネルに導入される場合、すなわち透過パネルの下端面(の上面)への太陽光の進入角が90度に近い場合(入射角が0度に近い場合、透過パネルの下端面の面直方向に近い場合)、光のエネルギーが強くなるため下端面はより光る。乗員から見て、下端面の見える面積が大きいほど光って見える面積が大きくなるため、より眩しさを感じ、視界の妨げになると考えられる。
【0004】
ここで、上記公報開示の装置では、透過パネルの、鉛直方向に延びる姿勢にあるときにおける下端面が水平面とされている。このため、下端面が水平となる姿勢に透過パネルがあり鉛直上方(略鉛直上方を含む)から太陽光が透過パネルに導入されて下端面(の上面)が光った際に、乗員の視界を妨げることを抑制する点において改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、下端面が水平となる姿勢に透過パネルがあり鉛直上方から太陽光が透過パネルに導入されて下端面が光った際に、乗員の視界を妨げることを従来に比べて抑制できる、車両用バイザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 一枚の矩形状の板材からなる半透明の透過パネルと、該透過パネルを上下方向に回動可能に支持する支持部と、を有する車両用バイザ装置であって、
前記透過パネルの、鉛直方向に延びる姿勢にあるときにおける下端面は、車両後方かつ上方に傾斜する傾斜面とされて
おり、
前記傾斜面の傾斜角度は、前記透過パネルが鉛直方向に延びる姿勢にあるときにおいて、車両左右方向から見て、該傾斜面を通るアイコンタの上側の接線に一致する角度とされている、車両用バイザ装置。
(2)
前記透過パネルの、鉛直方向に延びる姿勢にあるときにおける左右両側面は、車両後方かつ前記透過パネルの左右中央側に傾斜する側方傾斜面とされている、(1
)記載の車両用バイザ装置。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)の車両用バイザ装置によれば、透過パネルの下端面が車両後方かつ上方に傾斜する傾斜面とされている。このため、透過パネルの下端面が水平面とされている場合(従来)に比べて、下端面が水平となる姿勢に透過パネルがあるときに乗員から下端面(の上面)の見える範囲(面積)を小さくすることができる。よって、下端面が水平となる姿勢に透過パネルがあり鉛直上方(略鉛直上方を含む)から太陽光が透過パネルに導入されて下端面(の上面)が光った際に、乗員の視界を妨げることを従来に比べて抑制できる。
【0010】
上記(
2)の車両用バイザ装置によれば、透過パネルの左右両側面が車両後方かつ透過パネルの左右中央側に傾斜する側方傾斜面とされているため、透過パネルの左右両側面が車両左右方向と直交する平面とされている場合に比べて、乗員から左右両側面の見える範囲(面積)を小さくすることができる。よって、透過パネルの左右両側面が乗員の視界を妨げることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明実施例の車両用バイザ装置(以下、単にバイザ装置ともいう)を、図面を参照して、説明する。なお、図において、FRは車両前方を示し、UPは上方を示す。
【0013】
本発明実施例の車両用バイザ装置10は、
図1に示すように、車室天井1の車両前側端部またはその近傍で、運転席および/または助手席の車両前方に設けられる。バイザ装置10は、主として車両の前席(運転席、助手席)に着座している乗員Pの遮光のために設けられる。バイザ装置10は、透過パネル20と、支持部30と、を有する。
【0014】
透過パネル20は、一枚の矩形状の板材からなる。透過パネル20は、光透過率が1パーセント以上で99パーセント以下の半透明樹脂製である。透過パネル20は、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂製である。透過パネル20は、上端部で支持部30に図示略のトルクヒンジを用いて上下方向に回動可能に支持される。透過パネル20は支持部30に直接支持されており、透過パネル20の下端面21と左右両側面22は全体にわたって乗員Pから直接視認可能である。透過パネル20は、支持部30に車両左右方向に延びる軸芯Aまわりに上下方向に回動可能に支持される。透過パネル20は、トルクヒンジにて支持部30に対して任意の上下方向角度で保持可能とされており、トルクヒンジによる保持力よりも大きい力が加えられた際に支持部30に対して上下方向に回動する。
【0015】
支持部30は、車両に対して固定されていてもよく可動に支持されていてもよい。支持部30は、たとえば、ルーフパネル2とルーフヘッドライニング3との間の収納スペースSに配設される。なお、
図1において符号4は、フロントガラスである。ルーフヘッドライニング3の前端部には、透過パネル20が挿通する開口3aが形成されている。支持部30は、透過パネル20を、少なくとも透過パネル20が鉛直方向に延びる姿勢となる鉛直位置20a(
図1の(a))と該鉛直位置20aから車両前方かつ上方に回動してフロントガラス4に沿う姿勢となる上方位置20c(
図1の(c))とに、回動可能に支持する。
【0016】
透過パネル20の、鉛直位置20aにあるときにおける下端面21は、
図2(a)に示すように、車両後方かつ上方に傾斜する傾斜面21aとされている。傾斜面21aは、下端面21の全体(略全体を含む)にわたって形成されている。ただし、
図4に示すように、下端面21の車両前後方向の各端部、左右の各端部(透過パネル20の幅方向の各端部、車両左右方向の各端部)の少なくともいずれか1つに、C面またはR面の面取り処理が施されている場合には、その処理が施されている部分を除いた下端面21全体が傾斜面21aとされている。傾斜面21aは、加工上平面であることが望ましい。
【0017】
傾斜面21aの傾斜角度θは、傾斜面21aが乗員Pの視線方向に近い角度となるように設定されている。具体的には、傾斜面21aの傾斜角度θは、
図1に示すように、透過パネル20が鉛直位置20aにあるときにおいて、車両左右方向から見て、傾斜面21aを通るアイコンタIの上側の接線(上接線)Lに一致する角度θ1とされている。なお、「アイコンタ」とは、乗員Pの体格によるバラツキ(AF05(American Femaleを100人並べたときの小柄な方から5番目)からAM95(American Maleを100人並べたときの小柄な方から95番目))を考慮した目位置(アイポイント)の存在する範囲である。
【0018】
傾斜面21aの傾斜角度θが、接線Lに一致する角度θ1とされている理由は、(i)θ>θ1の場合、裏(下)から見える下端面21の範囲がθ=θ1の場合に比べて大きくなり下端面21自体が乗員Pの視界の妨げとなり、(ii)θ<θ1の場合、傾斜面21aを形成することにより得られる効果がθ=θ1の場合に比べて小さくなってしまうからである。
【0019】
図3に示すように、透過パネル20の、鉛直位置20aにあるときにおける左右両側面(車両左右方向両側面)22は、車両後方かつ透過パネル20の左右中央側(幅方向中央側)に傾斜する側方傾斜面22aとされている。側方傾斜面22aは、左右両側面22の全体(略全体を含む)にわたって形成されている。ただし、左右両側面22の車両前後方向の各端部、上下方向の各端部の少なくともいずれか1つに、C面またはR面の面取り処理が施されている場合には、その処理が施されている部分を除いた左右両側面22全体が側方傾斜面22aとされている。側方傾斜面22aは、加工上平面であることが望ましい。
【0020】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
【0021】
(A)下端面21について
(A1)太陽光が、
図1の矢印S1にて示すように、透過パネル20内に鉛直上方(略鉛直上方を含む)から導入される場合
(i)透過パネル20が鉛直位置20aにあるとき(
図1の(a)位置、
図2(a)参照)
透過パネル20の下端面21は、下端面21への太陽光の進入角が90度に近く光のエネルギーが比較的強いため、比較的強く光る。しかし、下端面21が傾斜面21aとされている。このため、下端面21が水平面とされている場合(従来)に比べて、乗員Pから下端面21(の上面)の見える範囲(面積)は小さくなる。よって視界の妨げが小さい。
【0022】
(ii)透過パネル20が鉛直位置20aから車両前方かつ上方に回動して下端面21が水平面となる位置(以下、水平位置という)20bにあるとき(
図1の(b)位置、
図2(b)参照)
透過パネル20の下端面21は、下端面21への太陽光の進入角が90度になり光のエネルギーが最も強いため、最も強く光る。しかし、下端面21が傾斜面21aとされており、鉛直位置20aから水平位置20bまで上方に回動した分だけ、従来に比べて下端面21の上下方向位置は高い。よって、乗員Pから下端面21(の上面)の見える範囲(面積)は、従来に比べて小さくなる。したがって、視界の妨げが小さい。
【0023】
(iii)透過パネル20が上方位置20cにあるとき(
図1の(c)位置、
図2(c)参照)
透過パネル20の下端面21は、下端面21への太陽光の進入角が0度に近く光のエネルギーが比較的弱いため、比較的弱く光る。そのため、透過パネル20が鉛直位置20aや水平位置20bにあるときに比べて下端面21(の上面)の見える面積は増加するが、視界への影響は比較的小さくて済む。
【0024】
(A2)太陽光が、
図1の矢印S2にて示すように、透過パネル20内に車両前方かつ水平方向(略水平方向を含む)から導入される場合
(i)透過パネル20が鉛直位置20aにあるとき(
図1の(a)位置、
図2(a)参照)
透過パネル20の下端面21は、下端面21への太陽光の進入角が0度に近く光のエネルギーが比較的弱いため、比較的弱く光る。さらに、下端面21が傾斜面21aとされているため、下端面21が水平面とされている場合(従来)に比べて、乗員Pから下端面21(の上面)の見える範囲(面積)は小さい。よって、視界の妨げは小さい。
【0025】
(ii)透過パネル20が鉛直位置20aから車両前方かつ上方に回動して水平位置20bにあるとき(
図1の(b)位置、
図2(b)参照)
透過パネル20の下端面21は、下端面21への太陽光の進入角が0度になり光のエネルギーが最も弱いため、最も弱く光る(光らないか光っても無視できる程度である)。さらに、下端面21が傾斜面21aとされており、鉛直位置20aから水平位置20bまで上方に回動した分だけ、従来に比べて下端面21の上下方向位置は高い。よって、乗員Pから下端面21(の上面)の見える範囲(面積)は従来に比べて小さくなる。したがって、視界の妨げは小さい。
【0026】
(iii)透過パネル20が上方位置20cにあるとき(
図1の(c)位置、
図2(c)参照)
透過パネル20の下端面21(の下面、裏面)で太陽光は反射され、下端面21(の上面)の眩しさは比較的少ない。そのため、透過パネル20が鉛直位置20aや水平位置20bにあるときに比べて下端面21(の上面)の見える面積は増加するが、視界への影響は比較的小さくて済む。
【0027】
(B)左右両側面22について
図3に示すように、左右両側面22が側方傾斜面22aとされているため、左右両側面22が車両左右方向と直交する平面とされている場合(従来)に比べて、透過パネル20が鉛直位置20a、水平位置20、上方位置20cのいずれにあっても、乗員Pから左右両側面22の見える範囲(面積)は小さい。よって、視界の妨げは小さい。
【0028】
本発明実施例では、透過パネル20の下端面21が車両後方かつ上方に傾斜する傾斜面21aとされている。このため、透過パネル20の下端面21が水平面とされている場合(従来)に比べて、下端面21が水平となる姿勢に透過パネル20があるときに乗員Pから下端面21(の上面)の見える範囲(面積)を小さくすることができる。よって、下端面21が水平となる姿勢に透過パネル20があり鉛直上方から太陽光が透過パネル20に導入されて下端面21が光った際に、乗員Pの視界を妨げることを従来に比べて抑制できる。
【0029】
傾斜面21aの傾斜角度θが、透過パネル20が鉛直位置20aにあるときにおいて、車両左右方向から見て、傾斜面21aを通るアイコンタIの上側の接線(上接線)Lに一致する角度θ1とされているため、乗員Pの体格によらず、乗員Pの視界を妨げることを効果的に抑制できる。
【0030】
透過パネル20の左右両側面22が車両後方かつ透過パネルの左右中央側に傾斜する側方傾斜面22aとされているため、透過パネル20の左右両側面22が車両左右方向と直交する平面とされている場合(従来)に比べて、乗員Pから左右両側面22の見える範囲(面積)を小さくすることができる。よって、従来に比べて、左右両側面22が乗員Pの視界を妨げることを抑制できる。
【0031】
透過パネル20の左右両側面22が車両後方かつ透過パネルの左右中央側に傾斜する側方傾斜面22aとされているため、透過パネル20の左右両側面22が車両左右方向と直交する平面とされている場合(従来)に比べて、透過パネル20を横後方(斜め後方)から見たときにパネル20の左右両側面22が厚く見える。具体的には、
図3に示すように、透過パネル20の左右両側面22が車両左右方向と直交する平面とされている場合(従来)における厚さ寸法D1に比べて、透過パネル20を横後方から見たときにおける厚さ寸法D2が大きくなる。そのため、重厚感を演出でき商品力を向上させることができる。