(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シール材はウインドフレームの前部から後部に亘って取り付けられるものなので長尺状の部材である。このような長尺状の部材をウインドフレームへ取り付けていくのは作業が煩雑で、作業性が悪いという問題がある。特に、ウインドフレームは湾曲しているのが一般的な形状であり、この場合には作業性がより一層悪化する恐れがある。
【0006】
また、自動車用ドアには、ウインドフレーム以外にも長尺状のシール材を取り付ける場合があり、この場合にも作業性の問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長尺状のシール材を自動車用ドアに容易に取り付けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、シール材にドアフランジが挿入される挿入溝を形成し、該挿入溝をシール材の長手方向の一端部に開口させ、シール材の挿入溝の一端部の開口からドアフランジを挿入溝に挿入するようにした。
【0009】
第1の発明は、
自動車用ドアから突出するドアフランジに長尺状のシール材を取り付ける自動車用ドアのシール材の取付構造において、
上記ドアフランジは、車室外側へ延びる基部と、該基部の先端から上下方向に延びる先端板部とを有し、
上記シール材は、弾性材からなる部分と、該弾性材よりも硬い芯材とを有しており、
上記シール材には、上記ドアフランジが挿入される挿入溝が該シール材の長手方向に延びるように形成され、該挿入溝は、上記シール材の長手方向の端部に開口しており、
該挿入溝は、上記ドアフランジの上記基部が挿入される基部挿入部と、上記先端板部が挿入される先端板部挿入部とで構成され、
上記シール材の上記挿入溝の端部の開口から上記ドアフランジが該挿入溝に挿入されて上記シール材が上記ドアフランジに取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、シール材をドアフランジに取り付ける際、そのドアフランジを、シール材の挿入溝の端部の開口から該挿入溝に挿入する。そして、ドアフランジの長手方向にシール材を相対的に移動させていくと、シール材がドアフランジによってガイドされながら、ドアフランジが徐々にシール材の挿入溝に挿入されていくので、ドアフランジをガイドにしてシール材をウインドフレームに容易に取り付けることが可能になる。
【0011】
また、ドアフランジが基部と該基部の交差する方向に延びる先端板部とを有することになる。そして、ドアフランジの基部及び先端板部が、それぞれがシール材の挿入溝の基部挿入部と先端板部挿入部とに挿入されるので、挿入状態でドアフランジがシール材の挿入溝から離脱し難くなる。
【0012】
第2の発明は、
自動車用ドアから突出するドアフランジに長尺状のシール材を取り付ける自動車用ドアのシール材の取付構造において、
上記シール材は、弾性材からなる部分と、該弾性材よりも硬い芯材とを有しており、該芯材には、軟質樹脂材からなる部分と、硬質樹脂材からなる部分とが該芯材の長手方向に交互に設けられ、
上記シール材には、上記ドアフランジが挿入される挿入溝が該シール材の長手方向に延びるように形成され、該挿入溝は、上記シール材の長手方向の端部に開口しており、
上記シール材の上記挿入溝の端部の開口から上記ドアフランジが該挿入溝に挿入されて上記シール材が上記ドアフランジに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、芯材は軟質樹脂材からなる部分と硬質樹脂材からなる部分とが交互に設けられているため、芯材に外力を加えた際に、芯材における軟質樹脂材からなる部分が伸縮可能となり、このことで芯材を屈曲ないし湾曲させることが容易になる。これにより、第6の発明と同様に、湾曲ないし屈曲したドアフランジである場合に、ドアフランジをシール材の挿入溝に挿入するとき、ドアフランジの形状に対応するようにシール材を容易に屈曲ないし湾曲させることが可能になる。
【0014】
尚、軟質樹脂材とは、シール材を組み付ける際に芯材を湾曲ないし屈曲させるべく外力を加えた際に、作業者の力によって容易に変形させることができる樹脂材のことである。一方、硬質樹脂材とは、上記軟質樹脂材よりも硬く、作業者の力によっては容易に変形し難い樹脂材のことである。
【0015】
第3の発明は、第1
または2の発明において、
上記シール材の上記挿入溝の内面と、上記ドアフランジとの少なくとも一方には、上記シール材と上記ドアフランジとの摺動抵抗を低減させるための摺動抵抗低減材が設けられていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、ドアフランジをガイドにしてシール材をドアフランジに取り付ける際、ドアフランジがシール材の挿入溝の内面を摺動することになる。このとき、ドアフランジとシール材との摺動部分に摺動抵抗低減材が設けられているので、ドアフランジの摺動抵抗が低減し、シール材の取り付けに要する力が少なくて済むとともに、取付作業がスムーズに行える。
【0017】
第
4の発明は、第1
から3のいずれか1つの発明において、
上記シール材の上記挿入溝の内面と、上記ドアフランジとの間には隙間が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、ドアフランジをガイドにしてシール材をウインドフレームに取り付ける際、ドアフランジの摺動抵抗が低減し、シール材の取り付けに要する力が少なくて済むとともに、取付作業がスムーズに行える
。
【0019】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、
上記シール材には、弾性材からなる凸部が上記挿入溝内で上記ドアフランジに当接するように形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、シール材の挿入溝にドアフランジを挿入した状態で、凸部がドアフランジに当接することになる。これにより、シール材のガタつきが抑制されるとともに、異音の発生も抑制される。
【0021】
第6の発明は、第
1の発明において、
上記シール材の上記芯材には、上記シール材の長手方向と交差する方向に延びる複数のスリットが、該シール材の長手方向に互いに間隔をあけて形成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、芯材に複数のスリットが長手方向に互いに間隔をあけて形成されることになるので、芯材を屈曲ないし湾曲させることが容易になる。これにより、例えばドアフランジが屈曲ないし湾曲した形状である場合に、ドアフランジをシール材の挿入溝に挿入するときにドアフランジの形状に対応するようにシール材を容易に屈曲ないし湾曲させることが可能になる
。
【発明の効果】
【0023】
第1の発明によれば、長尺状のシール材にドアフランジの挿入溝を形成し、この挿入溝がシール材の長手方向の端部に開口しており、この挿入溝の開口からドアフランジを挿入溝に挿入して取り付けるようにしたので、ドアフランジをガイドにしてシール材をドアフランジに容易に取り付けることができる。
【0024】
また、ドアフランジが車室外側へ延びる基部と上下方向に延びる先端板部とを有し、シール材の挿入溝が上記基部が挿入される基部挿入部と、先端板部が挿入される先端板部挿入部とで構成されているので、挿入状態でドアフランジがシール材の挿入溝から離脱し難くなり、安定させることができる。よって、取付作業をスムーズに行うことができる。
【0025】
第2の発明によれば、軟質樹脂材からなる部分と、硬質樹脂材からなる部分とを芯材の長手方向に交互に設けたため、屈曲ないし湾曲した形状のドアフランジをシール材の挿入溝に挿入するときにドアフランジの形状に対応するようにシール材を容易に屈曲ないし湾曲させることができ、取付時の作業性をより良好にすることができる。
【0026】
第
3の発明によれば、シール材の挿入溝の内面とドアフランジとの少なくとも一方に摺動抵抗低減材を設けたので、シール材の取り付けに要する力が少なくて済むとともに、取付作業をスムーズに行うことができる。
【0027】
第
4の発明によれば、シール材の挿入溝の内面とドアフランジとの間に隙間を形成したので、シール材の取り付けに要する力が少なくて済むとともに、取付作業をスムーズに行うことができる
。
【0028】
第5の発明によれば、シール材に弾性材からなる凸部を形成し、ドアフランジに当接させるようにしたので、シール材のガタつきを抑制できるとともに、異音の発生も抑制できる。
【0029】
第6の発明によれば、芯材に、シール材の長手方向と交差する方向に延びる複数のスリットを長手方向に互いに間隔をあけて形成したので、屈曲ないし湾曲した形状のドアフランジをシール材の挿入溝に挿入するときにドアフランジの形状に対応するようにシール材を容易に屈曲ないし湾曲させることができ、取付時の作業性をより良好にすることができる
。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
(実施形態1)
(ドアの構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る自動車用ドアのシール材30を備えた自動車用フロントドア1を車室外側から見た側面図であり、また、
図2は、本発明の実施形態1に係る自動車用ドアのシール材50を備えた自動車用リヤドア2を車室外側から見た側面図である。フロントドア1及びリヤドア2は、自動車(図示せず)の側部に配設されるものであり、フロントドア1は、自動車の側部において前側に形成された開口部(図示せず)を開閉し、また、リヤドア2は、自動車の側部において後側に形成された開口部(図示せず)を開閉する。
【0033】
フロントドア1は、該フロントドア1の略下半部を構成するドア本体10と、略上半部を構成するウインドフレーム11とを有している。ドア本体10の前端部は、図示しないが、上下方向に延びる回動軸を有するヒンジを介して車体のピラーに取り付けられている。ドア本体10は、鋼板等からなるインナパネル(図示せず)とアウタパネル10aとで構成されており、内部には、昇降動作するウインドガラス13や、ウインドガラス13を昇降動作させるための昇降装置(図示せず)等が収容されるようになっている。
【0034】
ウインドフレーム11は、ウインドガラス13の周縁部を保持するサッシュとして機能するものである。この実施形態のウインドフレーム11は、
図6に示すように鋼板等をプレス成形してなる第1パネル材P1及び第2パネル材P2を組み合わせて構成されたものであるが、ウインドフレーム11は、例えばロール成形法によって構成されたものであってもよい。
【0035】
図1に示すように、ウインドフレーム11は、前側フレーム縦辺部11aと、後側フレーム縦辺部11bと、フレーム上辺部11cとで構成されている。前側フレーム縦辺部11aは、ドア本体10の上縁における前部から上方へ延びている。後側フレーム縦辺部11bは、ドア本体10の上縁における後部から上方へ延びている。後側フレーム縦辺部11bの方が前側フレーム縦辺部11aよりも上方まで延びている。フレーム上辺部11cは、前側フレーム縦辺部11aの上端から後側フレーム縦辺部11bの上端まで、車体のルーフ側縁部(図示せず)に沿って前後方向に延びている。
【0036】
ウインドフレーム11の前側フレーム縦辺部11aの前方には、ドアミラー(図示せず)が取り付けられるドアミラー取付部14がドア本体10の上方へ延びるように設けられている。ドアミラー取付部14の上縁部は、ウインドフレーム11のフレーム上辺部11cの前端部と連続するように形成されており、前側へ行くほど下に位置するように傾斜して延びている。
【0037】
図6に示すように、ウインドフレーム11のフレーム上辺部11cには、車室外側へ突出する上側ドアフランジ11dが設けられている。上側ドアフランジ11dは、ウインドフレーム11を構成している第1パネル材P1及び第2パネル材P2の縁部を車室外側へ延ばすように形成し、かつ、互いに上下方向に重ね合わせることによって構成された部分である。上側ドアフランジ11dは、車室外側へ延びる基部11fと、該基部11fの先端から上下方向に延びる先端板部11gとを有している。先端板部11gは、第1パネル材P1の先端側を屈曲させることによって構成されている。上側ドアフランジ11dが基部11fと先端板部11gとを有しているので、上側ドアフランジ11dは、該上側ドアフランジ11dの長手方向に直交する縦断面が略T字状になる。尚、上側ドアフランジ11dは、縦断面がL字状であってもよい。上側ドアフランジ11dの前部は、ドアミラー取付部14の前部まで連続して延びている。
【0038】
また、フレーム上辺部11cには、下方へ延出する下側ドアフランジ11eが設けられている。下側ドアフランジ11eは、ウインドフレーム11を構成している第1パネル材P1及び第2パネル材P2の縁部を下側へ延ばすように形成し、かつ、互いに車室内外方向に重ね合わせることによって構成された部分である。
【0039】
図1に示すように、フレーム上辺部11cは、側面視で前後方向の中間部で屈曲している。そして、フレーム上辺部11cの屈曲部よりも前側部分は、前方へ向かって下降傾斜しながら延びている。また、フレーム上辺部11cの屈曲部よりも後側部分は、屈曲部へ向けて前側部分の傾斜角度よりも緩やかに傾斜しながら延びている。尚、フレーム上辺部11cの形状は図示した形状に限られるものではなく、全体的に上方へ向けて湾曲した形状であってもよいし、屈曲部の位置やフレーム上辺部11cの傾斜角度も車体のルーフ形状に対応するように任意に設定することができる。上側ドアフランジ11dには、シール材30が設けられている。
【0040】
図2に示すリヤドア2の基本構造はフロントドア1と同じである。すなわち、リヤドア2は、ドア本体20と、ウインドガラス23の周縁部を保持するウインドフレーム21とを有しており、ウインドフレーム21は、前側縦辺部21aと、後側縦辺部21bと、上辺部21cとで構成されている。そして、
図4に示すようなシール材50が設けられている。
【0041】
(シール材の構成)
シール材30は、上側ドアフランジ11dを車室外側から覆い隠す、いわゆるヒドンタイプである。シール材30は、上側ドアフランジ11dの上面及び下面を覆い隠すように形成されたものであり、ウインドフレーム11の周縁部と車体の開口部の周縁部との間をシールするとともに、ウインドフレーム11の周縁部とウインドガラス13の周縁部との間もシールする。シール材30は、例えばEPDM(エチレンプロピレンゴム)やTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)等のように、弾性を有し、かつ、止水性も有する弾性材からなる部分と、弾性材とは異なる材料からなる芯材45とを有している。
【0042】
シール材30は、ウインドフレーム11のフレーム上辺部11cに沿って延びるシール上辺部31と、ウインドフレーム11の前側フレーム縦辺部11aに沿って延びる前側シール縦辺部32と、ウインドフレーム11の後側フレーム縦辺部11bに沿って延びる後側シール縦辺部33とを有しており、これらは一体化されている。
【0043】
前側シール縦辺部32及び後側シール縦辺部33の下部は、ドア本体10の内部まで延びて該ドア本体10の下部近傍に位置しており、ドア本体10の内部に設けられた保持部材(図示せず)に保持されている。前側シール縦辺部32及び後側シール縦辺部33は、昇降時のウインドガラス13の前縁部及び後縁部の移動方向に延びており、該前縁部及び後縁部が摺接するようになっている。
【0044】
図3に示すように、シール上辺部31の前部には、前側シール縦辺部32よりも前方へ延びる前部シール部34が連なっている。
図1に示すように、前部シール部34は、ドアミラー取付部14の上縁部に沿って延びるように形成されている。また、
図3に示すように、シール上辺部31の後部には、後側シール縦辺部33よりも後方へ延びる後部シール部35が連なっている。
【0045】
シール材30は、押出成形された押出成形部と、型成形された型成形部とが組み合わされてなる。
図3に示すように、シール材30の前部シール部34において、境界線L1(一点鎖線で示す)よりも下側部分は型成形部である。また、シール材30の後部シール部35において、境界線L2(一点鎖線で示す)よりも後側部分は型成形部である。また、シール材30のシール上辺部31と前側シール縦辺部32との境界部分において、境界線L3(一点鎖線で示す)で囲まれた部分は型成形部である。さらに、シール材30のシール上辺部31と後側シール縦辺部33との境界部分において、境界線L4(一点鎖線で示す)で囲まれた部分は型成形部である。上記以外の部分は押出成形部である。
【0046】
シール材30のシール上辺部31の断面形状は
図6に示すようになっており、シール上辺部31の前端部から後端部に亘って略同じ断面形状となっているが、前部シール部34と後部シール部35の断面形状は、シール上辺部31の断面形状とは異なっている。
【0047】
すなわち、シール上辺部31は、シール上辺部31の上側を構成するとともに、上側ドアフランジ11dに取り付けられるドアフランジ取付部36と、ドアフランジ取付部36から下方へ延びる板状部44とを有しており、車両前後方向に長い長尺状である。
【0048】
ドアフランジ取付部36は、上側ドアフランジ11dの上面に沿って車室内外方向に延びる上板部36aと、上板部36aの車室外側の端部から下方へ延びる縦板部36bと、縦板部36bの下端部から上側ドアフランジ11dの下面に沿って車室内側へ延びる下板部36cとからなる略コ字状の断面を有しており、車室内側に開放されている。
【0049】
このドアフランジ取付部36の内側に、シール材30を補強するための芯材45が設けられている。芯材45の材料としては、シール材30を補強することができる材料であればよく、特に限定されないが、例えばアルミニウム合金、鋼材、ステンレス鋼、硬質樹脂(例えばタルクやガラス繊維を混合した樹脂)等を使用することができる。
【0050】
芯材45は、ドアフランジ取付部36の形状に対応して車室内側に開放された形状となっている。すなわち、芯材45は、上側ドアフランジ11dの上面に沿って車室内外方向に延びる上側嵌合板部45aと、上側ドアフランジ11dの下面に沿って車室内外方向に延びる下側嵌合板部45bと、上側ドアフランジ11dの先端板部11gを収容する収容部45cとで構成されている。上側嵌合板部45aと、下側嵌合板部45bとは互いに略平行であり、この実施形態では、下側嵌合板部45bの方が上側嵌合板部45aよりも厚くなっている。
【0051】
芯材45の内方には、上側ドアフランジ11dが挿入されるドアフランジ挿入溝38がシール材30の長手方向に延びるように形成される。ドアフランジ挿入溝38は、シール材30のシール上辺部31の長手方向両端部に亘って連続するとともに、ドアフランジ挿入溝38の前側は前部シール部34にも形成されて該前部シール部34の前端部において開口しており、また、ドアフランジ挿入溝38の後側は後部シール部35にも形成されて該後部シール部35の後端部においても開口している。従って、ドアフランジ挿入溝38は、シール材30の長手方向の両端部に開口することになる。詳細は後述するが、シール材30のドアフランジ挿入溝38の一端部の開口から上側ドアフランジ11dが該ドアフランジ挿入溝38に挿入されて、これにより、シール材30が上側ドアフランジ11dに取り付けられる。
【0052】
芯材45の上側嵌合板部45aと下側嵌合板部45bとの間に、上側ドアフランジ11dの基部11fが挿入されるようになっており、この上側嵌合板部45aと下側嵌合板部45bによって基部挿入部が構成されている。上側嵌合板部45aと下側嵌合板部45bとの上下方向の離間寸法は、上側ドアフランジ11dの基部11fの上下方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、ドアフランジ挿入溝38の内面と、上側ドアフランジ11dの基部11fとの間には隙間が形成される。
【0053】
下側嵌合板部45bの内面には、第1凹部46a及び第2凹部46bが形成されている。第1凹部46aは、下側嵌合板部45bの内面において車室外側寄りに配置されている。また、第2凹部46bは、下側嵌合板部45bの内面において車室内側寄りに配置されている。第1凹部46a及び第2凹部46bを形成することにより、ドアフランジ挿入溝38の内面と、上側ドアフランジ11dとの接触面積が低減する。
【0054】
ドアフランジ挿入溝38の内面には、上側ドアフランジ11dとの摺動抵抗を低減させるための摺動抵抗低減材48が設けられている。具体的には、摺動抵抗低減材48は、ドアフランジ挿入溝38の内面において収容部45cの内面にのみ設けられている。また、摺動抵抗低減材48は、例えば、各種潤滑剤や、摩擦抵抗を低減する樹脂材(ポリエチレン、テフロン等)の被膜、塗装及び布材等で構成することができる。摺動抵抗低減材48は、上側嵌合板部45aの下面や、下側嵌合板部45bの上面等に設けることもできる。摺動抵抗低減材48は、必要に応じて設けられるものであり、後述する取付作業時に摩擦抵抗がそれほど大きくない場合には、設けなくてもよい。また、摺動抵抗低減材48は、収容部45cの内面の全部に設けるのが好ましいが、一部にのみ設けてもよい。
【0055】
また、図示しないが、上側ドアフランジ11dの外面に摺動抵抗低減材を設けてもよい。また、ドアフランジ挿入溝38の収容部45cの内面と、上側ドアフランジ11dの外面の両方に摺動抵抗低減材を設けてもよい。
【0056】
また、芯材45の収容部45cは、上側嵌合板部45aよりも上方へ膨出するとともに、下側嵌合板部45bよりも下方へ膨出している。そして、収容部45cは、上側ドアフランジ11dの先端板部11gが挿入される先端板部挿入部である。この収容部45cの上下方向の内寸は、上側ドアフランジ11dの先端板部11gの上下方向の寸法よりも長く設定されている。これにより、ドアフランジ挿入溝38の内面と、上側ドアフランジ11dの先端板部11gとの間には隙間が形成される。
【0057】
図7及び
図8に示すように、芯材45には、シール材30の長手方向と交差する方向に延びる複数の第1スリット45eが、該シール材30の長手方向に互いに間隔をあけて形成されるとともに、第2スリット45fも該シール材30の長手方向に互いに間隔をあけて形成される。第1スリット45eは、上側嵌合板部45aから収容部45cの上部まで連続して延びている。また、第2スリット45fは、下側嵌合板部45bから収容部45cの下部まで連続して延びている。第1スリット45e及び第2スリット45fを形成することで、芯材45、即ち、シール材30を屈曲ないし湾曲させることが可能になる。
【0058】
また、ここで、シール材30を屈曲ないし湾曲させることを可能にする芯材45の形状例として、本実施形態の説明では、
図7〜
図9に示すもののみ図示して説明しているが、芯材45の形状はこれに限定されない。例えば、特許登録第4538632号公報の
図3及び
図4に開示されている成形装置を使用する等の手段により、特許登録第4538632号公報の
図1に示す形態の芯材を使用して自動車用ドアのシール材30を製造することにしてもよい。すなわち、図示しないが、芯材45の構造の一例として、軟質樹脂材からなる部分と、硬質樹脂材からなる部分とが該芯材45の長手方向に交互に設けられている構造とすることができる。軟質樹脂材とは、シール材30を組み付ける際に芯材45を湾曲ないし屈曲させるべく外力を加えた際に、作業者の力によって容易に変形させることができる樹脂材のことであり、熱可塑性エラストマー(例えばオレフィン系熱可塑性エラストマーやスチレン系熱可塑性エラストマー)や軟質樹脂(ポリ塩化ビニルやナイロン)や、これらを発泡させたもの等で構成することができる。一方、硬質樹脂材とは、上記軟質樹脂材よりも硬く、作業者の力によっては容易に変形し難い樹脂材のことであり、オレフィン系熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレンやポリエチレン等)で補強材(例えばタルクやガラス繊維)を多量に配合したもの等で構成することができる。補強材の配合量は任意に設定することができる。このような構成とすることにより、芯材45としての機能を殆ど損なうことなく、組付作業性を良好にすることができる。
【0059】
また、ドアフランジ挿入溝38の内面には、弾性材からなる複数の凸部47が上側ドアフランジ11dの基部11fの上面に当接するように形成されている。凸部47は、ドアフランジ取付部36の上板部36aから第1スリット45eを通ってドアフランジ挿入溝38の内方に達するまで突出している。この凸部47により、上側ドアフランジ11dに取り付けられたシール材30のガタつきが抑制される。
【0060】
また、
図10は、
図8におけるX−X線に相当する部分のシール材30、ウインドフレーム11及びウインドガラス13の断面図である。
図6との相違点は、断面図上で、芯材45の形状が、第1スリット45e及び第2スリット45fを除いた形状となっている点であり、芯材45の収容部45cの一部分しか存在していない。この部分には、シール材30のドアフランジ取付部36を構成する弾性材が流れ込み、芯材45を介さずに凸部47と接合する。
【0061】
ドアフランジ取付部36の上板部36aには、上方へ突出するリップ部37が設けられている。リップ部37は、フロントドア1の閉状態で車体の開口部の周縁部に接触してシール作用を発揮する部分である。
【0062】
ドアフランジ取付部36の下部には、ガラス接触部39が下方へ突出するように設けられている。ガラス接触部39は、下方へ延びた後、車室内側へ折り曲げられており、略V字状断面を有するように形成されている。ガラス接触部39の先端側がウインドガラス13の周縁部に接触することでシール性が得られるようになっている。また、ガラス接触部39の基端部には、車室内側へ向けて延出する延出板部39aが形成されている。この延出板部39aもウインドガラス13の周縁部に接触する。
【0063】
シール上辺部31の下側部分を構成する板状部44は、この実施形態では、シール上辺部31の上側部分を構成するドアフランジ取付部36と一体成形しているが、これに限らず、ドアフランジ取付部36と板状部44とは別部材であってもよい。
【0064】
板状部44は、フレーム上辺部11cの上側ドアフランジ11dよりも下側部分を車室外側から覆うように形成されている。板状部44の車室外側の面には、上下方向中間部に上側リップ部44aが形成され、下部に下側リップ部44bが形成されている。上側リップ部44a及び下側リップ部44bは、ウインドガラス13の周縁部に接触することでシール性が得られるようになっている。
【0065】
板状部44の下部には、下方へ突出する突出部44cが設けられている。突出部44cには、フレーム上辺部11cの下側ドアフランジ11eを挿入するための挿入溝44dが上方に開口するように形成されている。
【0066】
一方、
図3に示すように、前部シール部34と後部シール部35には、板状部44が設けられていない。そのため、前部シール部34と後部シール部35の幅は、シール上辺部31の幅よりも狭くなっている。
【0067】
また、
図4に示すように、リヤドア2のシール材50は、フロントドア1のシール材30と同様に構成されており、シール上辺部51と、前側シール縦辺部52と、後側シール縦辺部53と、後部シール部54と、前部シール部55とを有している。
【0068】
また、
図3に示すフロントドア1のシール材30と同様に、リヤドア2のシール材50における境界線L5よりも下側部分、境界線L6よりも前側部分、境界線L7で囲まれた部分、及び境界線L8で囲まれた部分は、いずれも型成形部分であり、上記以外は押出成形部分である。
【0069】
(シール材の取付方法)
次に、シール材30の取付方法について説明する。シール材30をウインドフレーム11に取り付ける際には、
図5に示すように、ウインドフレーム11の上側ドアフランジ11dを、シール材30のドアフランジ挿入溝38の端部の開口から該ドアフランジ挿入溝38に挿入する。この
図5では、ドアフランジ挿入溝38の前端部の開口に、上側ドアフランジ11dの後端部を挿入するようにしている。この場合、ドアフランジ挿入溝38の後端部は閉塞しているのが好ましい。
【0070】
そして、上側ドアフランジ11dの長手方向に沿ってシール材30を該上側ドアフランジ11dの前側へ向けて相対的に移動させる。このとき、
図6に示すように、上側ドアフランジ11dの基部11fが、芯材45の上側嵌合板部45aと下側嵌合板部45bとの間に挿入され、上側ドアフランジ11dの先端板部11gが、芯材45の収容部45cの内部に挿入されているので、ドアフランジ挿入溝38に一旦挿入した上側ドアフランジ11dは、当該ドアフランジ挿入溝38から離脱し難くなる。
【0071】
上側ドアフランジ11dの長手方向に沿ってシール材30を移動させる際、上側ドアフランジ11dの先端板部11gがシール材30の内部に設けられている摺動抵抗低減材48に当たっているので、摺動抵抗が低減する。また、ドアフランジ挿入溝38の内面と、上側ドアフランジ11dとの間に隙間を形成して接触面積を低減している。これらのことにより、シール材30の取り付けに要する力が少なくて済む。
【0072】
また、芯材45に第1スリット45e及び第2スリット45fを形成することにより、予め直線状に成形されているシール材30を屈曲ないし湾曲させることができるようになっているので、屈曲部や湾曲部を有するウインドフレーム11であっても、シール材30を当該ウインドフレーム11の屈曲部や湾曲部の形状に対応するように屈曲ないし湾曲させて取り付けることができ、取付時の作業性が良好になる。
【0073】
そして、シール材30が上側ドアフランジ11dによってガイドされながら、上側ドアフランジ11dが徐々にシール材30のドアフランジ挿入溝38に挿入されていくので、上側ドアフランジ11dをガイドにしてシール材30をウインドフレーム11に容易に取り付けることが可能になる。
【0074】
シール材30の取付後は、弾性材からなる凸部47が上側ドアフランジ11dに当接するので、シール材30のガタつきを抑制できるとともに、異音の発生も抑制できる。
【0075】
尚、シール材30の取付後、シール材30の前端部及び後端部に、図示しないがクリップ等の部材を取り付けることによってシール材30がウインドフレーム11の前後方向に移動しないようにしておくのが好ましい。
【0076】
また、シール材30の前端部及び後端部のいずれ側から上側ドアフランジ11dを挿入してもよいが、シール材30の前端部から上側ドアフランジ11dを挿入する方が、シール材30の挿入作業性及び車両外観性(外観見栄え)両方の観点から、好ましい。また、次いで、シール材30のドアフランジ取付部36を上側ドアフランジ11dに取り付けた後に、シール材30の突出部44cを下側ドアフランジ11eに取り付ける。最後に、シール材30の前側シール縦辺部32を前側フレーム縦辺部11aに、後側シール縦辺部33を後側フレーム縦辺部11bに、それぞれ取り付ける。
【0077】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る自動車用ドアのシール材30の取付構造によれば、ウインドフレーム11の長手方向に延びるように上側ドアフランジ11dを形成し、シール材30にドアフランジ挿入溝38を形成し、該ドアフランジ挿入溝38がシール材30の長手方向の一端部に開口している。そして、シール材30のドアフランジ挿入溝38の開口から上側ドアフランジ11dをドアフランジ挿入溝38に挿入して取り付けるようにしたので、上側ドアフランジ11dをガイドにしてシール材30をウインドフレーム11に容易に取り付けることができる。
【0078】
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係るものである。この実施形態2は、実施形態1のものに対し、ウインドフレーム11の下側ドアフランジ11eの形状と、シール材30の下部に設けられている突出部44cの構造が異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0079】
ウインドフレーム11の下側ドアフランジ11eの下端部には、車室外側へ向けて延出する下端板部11hが形成されている。これにより、下側ドアフランジ11eの縦断面形状は略L字状になる。尚、下側ドアフランジ11eの縦断面形状は略T字状にしてもよい。
【0080】
シール材30の突出部44cに形成されている挿入溝44dは、下側ドアフランジ11eの縦断面形状に対応するように略L字状に形成されている。そして、挿入溝44dの内部には、実施形態1のものと同様な摺動抵抗低減材49が設けられている。
【0081】
挿入溝44dは、シール材30の長手方向に延びるように形成されている。そして、挿入溝44dは、シール材30の長手方向の端部に開口しており、挿入溝44dの一端部の開口から下側ドアフランジ11eが該挿入溝44dに挿入されている。これにより、シール材30が下側ドアフランジ11eにも取り付けられる。
【0082】
したがって、この実施形態2のものも、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0083】
また、上記実施形態1、2では、それぞれ、ウインドフレーム11の上側ドアフランジ11d及び下側ドアフランジ11eをシール材30の挿入溝38、44dに挿入するようにしているが、これに限らず、例えばフロントドア1のドア本体10の上縁部にシール材(図示せず)を設ける場合、該ドア本体10の上縁部に形成されるドアフランジ(図示せず)をシール材の挿入溝に挿入するようにしてもよい。
【0084】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。