(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結部は、前記支持筒の前記溝の幅方向における一方の側の部分と前記支柱とを連結する第1部材と、当該溝の他方の側の部分と前記支柱とを連結する第2部材とを備えており、
前記第1部材および前記第2部材は、前記溝の長手方向に延びるように配置されている、
請求項2に記載の防護柵。
【背景技術】
【0002】
高速道路の中央分離帯などの道路または当該道路に隣接した所定の場所には、従来より地面に固定された防護柵が設置されている。このような防護柵は、支柱が地面に埋設されて当該地面に固定されているので、交通事故などの緊急時において、防護柵が障害となって、緊急車両が中央分離帯を越えて反対側車線へ行く、すなわち、Uターンすることができないおそれがある。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されているように、平常時には地面に固定され、緊急時には移動可能な防護柵を設置することが提案されている。
【0004】
このような移動可能な防護柵は、道路の上を移動可能な複数の台車部と、前記台車部の上にそれぞれ立設された支柱と、支柱を横切る方向に延び、当該支柱に連結されたビームパイプと、台車部を道路に着脱自在に固定する台車部固定部とを備えている。
【0005】
台車部は、支柱を支持する支持台と、当該支持台に貫通した状態で固定された支持筒と、当該支持台の下部に設けられ、道路上を転動することが可能なキャスタとを備えている。台車部固定部は、支持筒に挿入および離脱が可能な長尺の挿入部材と、地面に固定され、挿入部材を固定する固定筒とを備えている。
【0006】
この構成を有する防護柵では、挿入部材を支持台を貫通する支持筒に挿入し、さらに当該挿入部材の先端部を中央分離帯の地面に固定された固定筒に挿入することによって、台車部を中央分離帯の地面に固定することが可能である。一方、緊急時には、挿入部材を上方に移動させて固定筒から引き抜くとともに、支持筒から分離させることにより、容易に台車部の固定を解除することが可能である。これにより、台車部のキャスタを道路上で転動させて、容易に防護柵を道路上で移動させることが可能である。その結果、緊急時には防護柵を中央分離帯から離脱した位置へ移動させることにより、緊急車両などが中央分離帯を越えてUターンするための区間を確保することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の防護柵では、緊急時に防護柵を移動させる際に、挿入部材を支持台を貫通した支持筒から上方に引き上げて支持筒から分離させるので、緊急時には挿入部材を支持筒から分離された状態で保管しなければならない。そのため、挿入部材が紛失するおそれがあり、挿入部材の保管および管理が難しいという問題がある。
【0009】
本発明はかかる問題を解消するためになされたものであり、挿入部材の保管および管理が容易な防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の防護柵は、道路または当該道路に隣接する場所における所定の位置に配置される防護柵であって、前記道路の上を移動可能な複数の台車部と、前記台車部の上にそれぞれ立設された支柱と、前記支柱を横切る方向に延び、互いに異なる前記支柱に連結されたビームと、前記台車部を前記道路の所定の位置に着脱自在に固定する台車部固定部とを備えており、前記台車部は、前記支柱を支持する支持台と、前記支持台に貫通した状態で立設された支持筒と、当該支持台の下部に設けられ、少なくとも前記ビームの延びる方向と直交する方向へ前記道路上を転動することが可能な転動部材と、を備えており、前記台車部固定部は、前記支持筒に挿入および離脱が可能で、かつ、当該支持筒の内部で当該支持筒の中心軸回りに回転可能な外径を有し、前記支持筒よりも長
く、かつ、地面から当該支持筒の上端までの距離より長い挿入部材と、前記所定の位置の地面に固定され、前記挿入部材が挿入および離脱が可能な内径を有する固定筒とを備えており、前記挿入部材のうち前記支持筒に挿入される側面には、当該側面から突出する突起が設けられ、前記支持筒には、上下方向に延び、前記突起の上下方向への移動を許容する溝が形成され、当該溝は、前記支持筒の上端で開放しており、前記支持筒は、前記突起が当接可能な形状の上端を有することを特徴とするものである。
【0011】
本願発明では、挿入部材の側面に突起が設けられ、挿入部材が上方へ移動した位置で当該突起を用いて支持筒に保持されることにより、緊急時において挿入部材の紛失のおそれを低減している。具体的には、挿入部材のうち支持筒に挿入される側面には、当該側面から突出する突起が設けられ、一方、支持筒には、上下方向に延び、かつ、当該支持筒の上端で開放されている溝が形成され、しかも、支持筒の上端は、突起が当接可能な形状を有する。そのため、支持筒の側面から突出する突起が支持筒に形成された溝の中を上下方向へ移動可能であるので、支持筒は、突起が支持筒に干渉することなく、上下方向に昇降することが可能である。緊急時には、挿入部材を上方へ移動させて、地面に固定された固定筒から引き抜くとともに突起を支持筒の上端まで移動させる。そして、挿入部材を支持筒の中心軸回りに(例えば90度程度)回転させて、突起を溝から外れる位置まで移動させ、支持筒の上端に突起を当接させることにより、当該突起を支持筒に係合させることが可能である。これにより、挿入部材は、支持筒に対して突起を介して支持筒の上端にぶら下がった状態で当該支持筒に保持されるので、緊急時に挿入部材が紛失するおそれが無くなり、挿入部材の保管および管理を容易に行うことが可能である。
【0012】
また、前記支持筒と前記支柱とを連結する連結部をさらに備え、前記連結部は、前記支持筒の前記溝の幅方向における両側の部分をそれぞれ前記支柱に連結することが可能な構成を有するのが好ましい。
【0013】
この構成では、溝が形成された支持筒を連結部を用いて補強することが可能である。すなわち、連結部が支持筒における溝の両側の部分を支柱に連結することにより、支持筒を補強し、その結果、防護柵に自動車などが衝突することによって当該防護柵に大きな衝撃が作用した場合でも、支持筒は溝が広がるなどの変形することを抑えることが可能である。これにより、支持筒の変形を抑えながら支持筒から挿入部材へ衝撃を伝播させ、さらにその衝撃を当該挿入部材を介して固定筒が固定された地面に伝播させることが可能である。
【0014】
さらに、前記連結部は、前記支持筒の前記溝の幅方向における一方の側の部分と前記支柱とを連結する第1部材と、当該溝の他方の側の部分と前記支柱とを連結する第2部材とを備えており、前記第1部材および前記第2部材は、前記溝の長手方向に延びるように配置されているのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、連結部を構成する第1部材および第2部材は、支持筒の溝の長手方向に延びるように配置されているので、当該第1部材および第2部材が支持筒における溝の両側の部分をそれぞれ支柱に連結することにより、防護柵に自動車が衝突することによって当該防護柵に大きな衝撃が作用した場合でも、支持筒における溝が広がるなどの変形を溝の長手方向の広い範囲で抑えることが可能である。
【0016】
また、前記第1部材および前記第2部材は、前記溝の幅方向において重なり合わないように互いに異なる高さに配置されているのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、第1部材および第2部材が互いに重なり合わない高さに配置されることにより、当該第1部材および第2部材を支持筒に溶接などで固定する作業が容易である。しかも、第1部材および第2部材が重なり合わない配置なので、突起が溝の内部を移動する状態を、外部から常時視認しやすい。
【0018】
前記第1部材および前記第2部材は、前記溝の幅方向において重なり合うように同じ高さに配置されていてもよい。
【0019】
この場合、第1部材および第2部材が配置された高さの位置で支持筒における溝が広がるなどの変形を確実に抑えることが可能である。
【0020】
また、前記第1部材および前記第2部材は、前記溝の全長を覆うことが可能な長さを有するのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、第1部材および第2部材によって溝の全長にわたって当該溝の両側から覆うので、支持筒の溝付近における変形を溝の全長にわたる広い範囲で効果的に抑えることが可能である。しかも、外部から溝を通して支持筒へ塵などの異物が入りにくくなる。
【0022】
前記第1部材および前記第2部材は、前記溝の幅方向に厚みを有する第1プレートおよび第2プレートによって構成されているのが好ましい。
【0023】
この場合、溝の幅方向に厚みを有するプレートによって第1部材および前記第2部材を構成することにより、第1部材および前記第2部材の設置スペースの増大を抑えることが可能である。また、第1部材および第2部材を安価に構成することが可能である。
【0024】
前記連結部は、前記支持筒の前記溝の幅方向における一方の側の部分に連結された第1連結脚と、当該溝の他方の側の部分に連結された第2連結脚と、前記支柱に連結され、前記溝の幅方向に延び、前記第1連結脚と前記第2連結脚とを連結する幅方向部分とを有しており、前記第1連結脚と、前記第2連結脚と、前記幅方向部分とによって、前記突起が前記溝に沿って移動する際に当該突起の通過を許容する大きさを有する空間が形成されているのが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、連結部を構成する第1連結脚および第2連結脚が支持筒における溝の両側の部分を支柱に連結され、これら第1連結脚および第2連結脚が支柱に連結された幅方向部分によって連結されているので、溝が広がる方向の力が第1連結脚および第2連結脚に作用した時には、幅方向部分で受けることが可能である。その結果、防護柵に自動車が衝突することによって当該防護柵に大きな衝撃が作用した場合でも、支持筒における溝が広がるなどの変形を効果的に抑えることが可能である。しかも、前記第1連結脚と、前記第2連結脚と、前記幅方向部分とによって、当該突起の通過を許容する大きさを有する空間が形成されているので、突起が溝に沿って移動する際に当該突起が幅方向部分に当たるおそれがない。
【0026】
前記支柱および前記支持筒は、前記支持台を貫通した状態で、当該支持台の少なくとも上面および下面のいずれかの面に対して溶接によって固定されているのが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、支柱及び支持筒が支持台に対して溶接によって強固に固定されるので、支柱が受けた衝撃を支持台を介して支持筒へ確実に伝達することが可能である。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の防護柵によれば、挿入部材の保管および管理が容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
つぎに図面を参照しながら本発明の防護柵の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0031】
防護柵1は、道路および道路に隣接する場所における所定の位置に配置される。防護柵1は、例えば、道路の中央分離帯に設置される場合には、当該中央分離帯の地面Gに固定された固定式の防護柵(図示せず)が途切れた区間で、当該固定式の防護柵と並んで配置される。
【0032】
防護柵1は、
図1〜4に示されるように、道路および中央分離帯などの地面Gの上を移動可能であり、主として、複数の台車部2と、各台車部2の上に1本ずつ立設された複数の支柱3と、当該支柱3に連結されたビームパイプ4と、台車部2を上記の所定の位置の地面Gに着脱自在に固定する台車部固定部5とを備えている。
【0033】
台車部2は、地面Gの上を移動可能な構成を有する。具体的には、台車部2は、
図6〜7に示されるように、支柱3を支持する支持台6と、支持台6に取り付けられた支持筒7と、当該支持台6の下部に設けられた複数(本実施形態では4個)のキャスタ8とを備えている。支持台6には、支持筒7が挿入可能な大きさの貫通孔6aが当該支持台6を垂直方向に貫通して形成されている。支持筒7は、支持台6を貫通した状態で立設されている。
【0034】
支柱3および支持筒7は、支持台6を貫通した状態で、当該支持台6の少なくとも上面および下面のいずれかの面、(本実施形態では、上下両面)に対して溶接によって固定されている。
【0035】
キャスタ8は、任意の水平方向に移動できるように地面Gの上を転動する転動部材である。したがって、キャスタ8は、ビームパイプ4の延びる方向と直交する方向だけでなく、その他の方向へも道路上を自由自在に転動することが可能である。これにより、防護柵1を中央分離帯から容易に退避させることが可能であるとともに、道路の脇の緊急車両の通行を妨げない場所へ自由に移動させることが可能である。
【0036】
支柱3は、各台車部2の上にそれぞれ1本ずつ立設されている。支柱3は、当該支柱3間にビームパイプ4が連結されることにより、互いに間隔をあけて配置されている。
【0037】
ビームパイプ4は、支柱3を横切る方向に延び、互いに異なる支柱3にブラケットなどを介して連結されている筒状のビームである。ビームパイプ4は、支柱3が延びる方向に複数段並べ(
図1に示される本実施形態では2段)、さらに、支柱3の幅方向に2本平行に並べて設けられている。本実施形態では、各ビームパイプ4の端部は、同じ高さに並ぶ他のビームパイプ4の端部と連結できるように90度円弧状に曲げられているが、直線状に延びていてもよい。
【0038】
台車部固定部5は、台車部2を中央分離帯の地面Gに着脱自在に固定する構成を有する。台車部固定部5は、具体的には、
図6〜7に示されるように、挿入管9と、中央分離帯の地面Gに固定された固定筒10とを備えている。
【0039】
挿入管9は、
図5〜6に示されるように、円筒状の本体9aと、当該本体9aの上端に取り付けられた取っ手9bおよび円板9cと、を有する。
【0040】
挿入管9の本体9aは、支持筒7に挿入および離脱が可能で、かつ、当該支持筒7の内部で当該支持筒7の中心軸回りに回転可能な外径を有する。本体9aは、
図6に示されるように、支持筒7よりも長
く、かつ、地面Gから当該支持筒7の上端までの距離より長い。具体的には、本体9aの長さは、少なくとも当該本体9aが支持筒7を貫通して地面Gに固定された固定筒10に挿入可能な長さを有する。
【0041】
円板9cは、本体9aの上端を塞ぐように取り付けられている。円板9cは、支持筒7の外径より大きい直径を有するので、挿入管9の本体9aを支持筒7に挿入したときに円板9cが支持筒7の上端13に当たることにより、挿入管9の位置決めをすることが可能である。
【0042】
取っ手9bは、作業者が把持することが可能な形状を有しており、円板9cの上面に取り付けられている。取っ手9bを把持することにより、挿入管9の昇降および回転の操作を容易に行うことが可能である。
【0043】
固定筒10は、中央分離帯の地面G内部に垂直方向に延びるように埋設されることにより、中央分離帯の地面Gに固定されている。固定筒10の上端開口は、地面Gから外部に露出している。固定筒10は、挿入管9の本体9aが挿入および離脱が可能な内径を有する。
【0044】
さらに、
図5〜7に示されるように、挿入管9のうち支持筒7に挿入される本体9aの側面には、当該側面から突出する突起11が設けられている。
【0045】
一方、支持筒7には、上下方向に延び、突起11の上下方向への移動を許容する溝12が形成されている。溝12は、支持筒7の上端13で開放している。溝12は、支持筒7の管壁を貫通して形成されている。挿入管9が支持筒7に挿入された状態では、挿入管9が上下方向へ移動することにより、突起11は溝12の内部を通って上下方向へ移動する。突起11の高さが溝12の上端開口を通過して支持筒7の上端13の高さ以上に達した場合には、
図8〜9に示されるように、挿入管9は、支持筒7の中心軸回りに回転することが可能になる。
【0046】
支持筒7の上端13は、突起11が当接可能な形状を有しており、本実施形態では平坦な水平に延びる面を有する。
【0047】
挿入管9において突起11と円板9cとの距離L(
図6〜7参照)は、突起11が支持筒7の上端13の高さに位置するときに、挿入管9の本体9aの下端9d(
図8〜9参照)が固定筒10から完全に離脱することが可能な距離に設定されている。
【0048】
突起11の長さは、当該突起11が支持筒7の溝12を通過して支持筒7の外部に突出することが可能な長さに設定されている。
【0049】
また、防護柵1は、
図6〜7に示されるように、支持筒7と支柱3とを連結する連結部21をさらに備えている。連結部21は、支持筒7の溝12の幅方向における両側の部分をそれぞれ支柱3に連結することが可能な構成を有する。
【0050】
具体的には、連結部21は、支持筒7の溝12の幅方向における一方の側の部分と支柱3とを連結する第1部材としての第1プレート22と、当該溝12の他方の側の部分と支柱3とを連結する第2部材としての第2プレート23とを備えている。第1プレート22および第2プレート23は、溝12の長手方向に延びるように配置されている。第1プレート22および第2プレート23は、溝12の幅方向に厚みを有する板状部材であり、上記の第1部材および第2部材をそれぞれ構成している。
【0051】
第1プレート22および第2プレート23は、支柱3と支持筒7とが互いに対向する部分にそれぞれ溶接などによって固定されている。本実施形態では、第1プレート22および第2プレート23は、溝12の幅方向において重なり合わないように互いに異なる高さに配置されているので、溶接などの固定作業が容易である。
【0052】
上記のように構成された防護柵1は、以下のようにして使用される。すなわち、平常時では、防護柵1は、
図1〜2に示されるように、平常時では、防護柵1は、所定の位置、例えば、中央分離帯の内部の固定式の防護柵が途切れた区間で、当該固定式の防護柵と並んで配置される。
【0053】
この平常時では、防護柵1の台車部2が台車部固定部5によって中央分離帯の地面Gに固定されている。具体的には、台車部固定部5の挿入管9は、
図6〜7に示されるように、支持筒7を貫通するとともに、地面Gに垂直方向に立てられた状態で埋設された固定筒10に挿入される。これにより、台車部2は、中央分離帯の地面Gに固定される。
【0054】
一方、
図2に示される中央分離帯の両側の道路のうち、一方の道路で交通事故等の緊急事態が発生した場合には、他方の道路を通って事故現場に向かう緊急車両が中央分離帯を越えて、Uターンできるように、当該区間から防護柵1を退避させる。具体的には、
図8〜9に示されるように、作業者は、取っ手9bを把持して台車部固定部5の挿入管9を上方へ移動させることにより当該挿入管9を地面G側の固定筒10から引き抜く。これにより、台車部2は、挿入管9による地面Gへの拘束が解除される。その結果、防護柵1は、自由に移動できる状態になり、中央分離帯から防護柵1を容易に退避させて、緊急車両が通るのに十分な幅を有する区間が確保される。
【0055】
この緊急時では、
図8〜9に示されるように、挿入管9を固定筒10から引き抜いたときに、突起11が支持筒7の上端13の高さを越えて溝12から離脱した高さに達した状態で、挿入管9を支持筒7の中心軸回りに回転(例えば90度程度)させて、突起11を溝12から外れる位置まで移動させ、支持筒7の上端13に当接させることにより、当該支持筒7に係止させる。これにより、挿入管9は、支持筒7に対して突起11を介して支持筒7の上端13にぶら下がった状態で当該支持筒7に保持されるので、緊急時に挿入管9が紛失するおそれが無くなる。
【0056】
しかも、上記の防護柵1では、連結部21を構成する第1プレート22および第2プレート23が支持筒7における溝12の両側の部分を共通の支柱3に連結することにより、当該両側の部分の相対変位、特に溝12の幅方向においての相対変位を抑制し、これにより、溝12を有する支持筒7を補強している。その結果、平常時において、防護柵1に自動車などが衝突することによって当該防護柵1に大きな衝撃が作用した場合でも、支持筒7の変形、特に溝12が広がる方向の変形を抑えることが可能である。このようにして、支持筒7の変形を抑えながら支持筒7から挿入管9へ衝撃を伝播させて、さらにその衝撃を当該当該挿入管9を介して地面Gに伝播させることが可能である。
【0057】
(特徴)
(1)
本実施形態の防護柵1では、挿入管9の本体9aの側面に突起11が設けられ、挿入管9が上方へ移動した位置で当該突起11を用いて支持筒7に保持されることにより、緊急時において挿入管9の紛失のおそれを低減している。具体的には、挿入管9の本体9aうち支持筒7に挿入される側面には、当該側面から突出する突起11が設けられ、一方、支持筒7には、上下方向に延び、かつ、当該支持筒7の上端13で開放されている溝12が形成されている。しかも、支持筒7の上端13は、突起11が当接可能な形状として水平に延びる平坦な面を有する。そのため、支持筒7の側面から突出する突起11が支持筒7に形成された溝12の中を上下方向へ移動可能であるので、支持筒7は、突起11が支持筒7に干渉することなく、上下方向に昇降することが可能である。一方、緊急時には、挿入管9を上方へ移動させて、地面Gに固定された固定筒10から引き抜くとともに突起11を支持筒7の上端13まで移動させる。そして、挿入管9を支持筒7の中心軸回りに(例えば90度程度)回転させて、突起11を溝12から外れる位置まで移動させ、支持筒7の上端13に突起11を当接させることにより、当該突起11を支持筒7に係合させることが可能である。これにより、挿入管9は、支持筒7に対して突起11を介して支持筒7の上端13にぶら下がった状態で当該支持筒7に保持されるので、緊急時に挿入管9が紛失するおそれが無くなり、挿入管9の保管および管理を容易に行うことが可能である。
【0058】
(2)
本実施形態の防護柵1では、連結部21は、溝12が形成された支持筒7を支柱3に連結することにより、支持筒7を補強することが可能である。具体的には、当該連結部21を構成する第1プレート22および第2プレート23が支持筒7における溝12の両側の部分を支柱3に連結することにより、支持筒7を補強する。その結果、防護柵1に自動車などが衝突することによって当該防護柵1に大きな衝撃が作用した場合でも、支持筒7は溝12が広がるなどの変形することを抑えることが可能である。これにより、支持筒7の変形を抑えながら支持筒7から挿入管9へ衝撃を伝播させ、さらにその衝撃を当該挿入管9を介して固定筒10が固定された地面Gに伝播させることが可能である。
【0059】
(3)
本実施形態の防護柵1では、連結部21を構成する第1部材および第2部材としての第1プレート22および第2プレート23は、支持筒7の溝12の長手方向に延びるように配置されているので、当該第1プレート22および第2プレート23が支持筒7における溝12の両側の部分をそれぞれ支柱3に連結することにより、防護柵1に自動車が衝突することによって当該防護柵1に大きな衝撃が作用した場合でも、支持筒7における溝12が広がるなどの変形を溝12の長手方向の広い範囲で抑えることが可能である。
【0060】
(4)
本実施形態の防護柵1では、第1プレート22および第2プレート23が互いに重なり合わない高さに配置されているので、当該第1プレート22および第2プレート23を支持筒7に溶接などで固定する作業が容易である。しかも、第1プレート22および第2プレート23が重なり合わない配置なので、突起11が溝12の内部を移動する状態を、外部から常時視認しやすい。
【0061】
(5)
本実施形態の防護柵1では、溝12の幅方向に厚みを有する第1プレート22および第2プレート23によって第1部材および第2部材が構成されているので、第1部材および第2部材の設置スペースの増大を抑えることが可能である。しかも、鋼板などのプレートによって第1部材および第2部材を安価に構成することが可能である。
【0062】
(6)
本実施形態の防護柵1の支柱3および支持筒7は、支持台6を貫通した状態で、当該支持台6の少なくとも上面および下面のいずれかの面に対して溶接によって固定されている。このように、支柱3及び支持筒7が支持台6に対して溶接によって強固に固定されるので、支柱3が受けた衝撃を支持台6を介して支持筒7へ確実に伝達することが可能である。
【0063】
(変形例)
(A)
上記の実施形態の防護柵1では、第1プレート22および第2プレート23が互いに重なり合わない高さに配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の防護柵1の変形例では、
図10〜11に示されるように、第1プレート22および第2プレート23は、溝12の幅方向において重なり合うように同じ高さに配置されていてもよい。この場合、第1プレート22および第2プレート23が配置された高さの位置で支持筒7における溝12が広がるなどの変形を確実に抑えることが可能である。
【0064】
第1プレート22および第2プレート23の高さは、溝12の長手方向において高い位置、具体的には、溝12の上端開口付近の高さであるのが好ましい。これにより、支持筒7が溝12の上端開口付近の部分を補強し、支持筒7の強度を向上させることが可能である。
【0065】
さらに、本発明の防護柵の他の変形例として、
図12〜13に示されるように、第1プレート22および第2プレート23は、溝12の全長を覆うことが可能な長さを有してもよい。この構成によれば、第1プレート22および第2プレート23によって溝12の全長にわたって当該溝12の両側から覆うので、支持筒7の溝12付近における変形を溝12の全長にわたる広い範囲で効果的に抑えることが可能である。しかも、外部から溝12を通して支持筒7へ塵などの異物が入りにくくなる。
【0066】
(B)
上記の実施形態の防護柵1では、連結部21を構成する第1部材および第2部材が溝12の幅方向に厚みを有する第1プレート22および第2プレート23によって構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明における第1部材および第2部材は、支持筒7の溝12の幅方向における両側の部分をそれぞれ個別に支柱3に連結することが可能であれば、いかなる形状でもよく、プレート形状以外の形状(例えば柱状体や棒状体など)であってもよい。
【0067】
(C)
また、本発明の連結部は、支持筒7の溝12の幅方向における両側の部分をそれぞれ支柱3に連結することが可能な構成であればいかなる形態でもよい。したがって、本発明では、
図6〜13に示される第1プレート22(第1部材)および第2プレート23(第2部材)を有する形態の連結部21に限定するものではなく、連結部の他の形態として、例えば、
図14〜16に示されるような一体型の連結部31を採用してもよい。
【0068】
具体的には、本発明の防護柵のさらに他の変形例として、
図14〜16に示される例では、連結部31は、支持筒7の溝12の幅方向における一方の側の部分に連結された第1連結脚32と、当該溝12の他方の側の部分に連結された第2連結脚33と、支柱3に連結され、溝12の幅方向に延び、前記第1連結脚32と前記第2連結脚33とを連結する幅方向部分34とを有する。
【0069】
第1連結脚32および第2連結脚33の端部は、支持筒7に溶接などによって固定され、幅方向部分34は、支柱3に溶接などによって固定されている。
【0070】
第1連結脚32と、第2連結脚33と、幅方向部分34とによって、突起11が溝12に沿って移動する際に当該突起11の通過を許容する大きさを有する空間35が形成されている。
【0071】
連結部31の第1連結脚32、第2連結脚33、および幅方向部分34は、一体に形成されることが可能であり、例えば、連結部31の全体が単一の板材で構成されることが可能である。
【0072】
連結部31の高さは、溝12の長手方向において高い位置、具体的には、溝12の上端開口付近の高さであるのが好ましい。これにより、支持筒7が溝12の上端開口付近の部分を補強し、支持筒7の強度を向上させることが可能である。
【0073】
図14〜16に示される防護柵の構成によれば、連結部31を構成する第1連結脚32および第2連結脚33が支持筒7における溝12の両側の部分を支柱3に連結され、これら第1連結脚32および第2連結脚33が支柱3に連結された幅方向部分34によって連結されている。そのため、溝12が広がる方向の力が第1連結脚32および第2連結脚33に作用した時には、幅方向部分34で受けることが可能である。その結果、防護柵1に自動車が衝突することによって当該防護柵1に大きな衝撃が作用した場合でも、支持筒7における溝12が広がるなどの変形を効果的に抑えることが可能である。しかも、前記第1連結脚32と、前記第2連結脚33と、前記幅方向部分34とによって、当該突起11の通過を許容する大きさを有する空間35が形成されているので、突起11が溝12に沿って移動する際に当該突起11が幅方向部分34に当たるおそれがない。
【0074】
上記の
図14〜16に示される変形例では、連結部31が単体で構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図17〜18に示される変形例のように、連結部40が複数個(例えば3個)の連結体31a、31b、31cを備えるようにしてもよい。これら連結体31a、31b、31cは、
図14〜16の連結部31と同一の構成を有するものであり、溝12の長手方向に間隔をあけて配置(例えば上端位置、中間位置、下端位置にそれぞれ配置)されている。この場合、支持筒7における溝12が広がるなどの変形を効果的に抑えることが可能である。
【0075】
(D)
上記実施形態では、転動部材の一例として、道路上を任意の方向へ水平移動が可能なキャスタ8を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくともビームパイプ4の延びる方向と直交する方向へ道路上を転動することが可能な転動部材を採用すればよい。これによっても、緊急時に、防護柵1を所定の位置(例えば、中央分離帯内部の固定式の防護柵が分断された区間)から移動させることが可能である。
【0076】
(E)
上記実施形態では、挿入部材の一例として、円筒状の挿入管9を例にあげて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の挿入部材は、支持筒7に挿入および離脱が可能で、かつ、当該支持筒7の内部で当該支持筒の中心軸回りに回転可能な外径を有し、前記支持筒よりも長い形態であれば、いかなる形態の部材を採用してもよい。したがって、円筒の外周面の一部が平坦になっている形状(すなわち、D字状の断面の形状)を有する管を挿入部材に採用してもよい。または、管以外の部材、例えば中実丸棒などの挿入部材に採用してもよい。
【0077】
(F)
上記実施形態では、ビームの一例としてビームパイプ4を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のビームは、支柱3を横切る方向に延び、互いに異なる支柱3に連結されたものであればよく、筒体からなるビームパイプ4以外にも種々の形態のものを含む。例えば、ガードレールなどの板状のビームや中実丸棒などの棒状のビームなども本発明のビームに含まれる。