(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業者がスプレーガンを持って行う作業においては、硬化性樹脂の均等な吹き付けを安定的に行うことができず、対象物に形成される樹脂層の厚みにばらつきが生じるという課題が生じていた。この課題の要因の一つは、対象物に対するスプレーガンの硬化性樹脂の吹き出し角度が固定されていないためであると考えられる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、対象物に形成される樹脂層の厚みのばらつきを抑制する樹脂コーティング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る樹脂コーティング装置は、ノズル部から硬化性樹脂を対象物に吹き付ける樹脂コーティング装置であって、前記ノズル部を仮想直線L1に沿って案内するノズルガイドと、駆動力を与えて前記ノズル部を前記仮想直線L1に沿って移動させる第1の駆動源と、前記ノズルガイドを、前記仮想直線L1に非平行な仮想直線L2に沿って案内するガイド部材と、駆動力を与えて前記ノズルガイドを移動させる第2の駆動源と
、前記対象物に載った状態で前記ガイド部材を支持する支持体と、前記対象物にレーザー光を当てて、前記硬化性樹脂を面状に塗布するための、前記硬化性樹脂を吹き付け可能な範囲を示す光照射手段とを備える。
【0006】
【0007】
本発明に係る樹脂コーティング装置において、前記支持体は、前記対象物上を転動する車輪を有するのが好ましい。
【0008】
本発明に係る樹脂コーティング装置において、前記支持体は、自走式車体であるのが好ましい。
【0009】
本発明に係る樹脂コーティング装置において、前記支持体が水平面に載った状態で、前記仮想直線L1、L2は水平に配されるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る樹脂コーティング装置において、前記ノズル部から吹き出される前記硬化性樹脂が周囲に飛散するのを防止するカバー体を、更に備えるのが好ましい。
【0011】
【0012】
本発明に係る樹脂コーティング装置において、人に取り付けられて、前記ノズル部、前記ノズルガイド及び前記ガイド部材を該人と共に移動可能にする装着具を、更に備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコーティング装置は、ノズル部を仮想直線L1に沿って案内するノズルガイドと、ノズル部を仮想直線L1に沿って移動させる第1の駆動源と、ノズルガイドを、仮想直線L1に非平行な仮想直線L2に沿って案内するガイド部材と、ノズルガイドを移動させる第2の駆動源とを備えるので、対象物に対する硬化性樹脂の吹き付け角度を一定の値に維持した状態でノズル部を移動させることができ、対象物に形成される樹脂層の厚みのバラつきを抑制可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る樹脂コーティング装置10は、ノズル部11から硬化性樹脂を対象物Tに吹き付ける装置であって、ノズル部11を仮想直線L1に沿って案内するノズルガイド12と、ノズルガイド12を、仮想直線L1に非平行な仮想直線L2に沿って案内するガイド部材13、13aとを備えている。以下、詳細に説明する。
【0016】
樹脂コーティング装置10によって硬化性樹脂が吹き付けられる対象物Tは建造物であり、実際に吹き付けがなされるのは建造物の水平領域及び傾斜領域である。
樹脂コーティング装置10は、
図1、
図2に示すように、間隔を空けて設けられた4本の柱材14を備えている。4本の柱材14は、前側左右及び後側左右にそれぞれに配され、各柱材14は、他の2つの柱材14にそれぞれ横架材15によって連結されている。本実施の形態では4本の横架材15が設けられ、各横架材15は、隣り合う柱材14の中央部どうしを連結している。
【0017】
前側左右に設けられた柱材14の下部には、それぞれ対象物T上を転動する車輪16が取り付けられ、後側左右に設けられた柱材14の下部には、それぞれ対象物T上を転動する車輪17が取り付けられている。車輪16は、
図3に示すモータ18の作動によって駆動する駆動輪で、転動方向が変更可能な状態で柱材14に取り付けられている。車輪17は従動輪であり、転動方向が固定された状態で柱材14に取り付けられている。
【0018】
前側左右の柱材14の上側は、
図1に示すように、棒材19によって連結され、後側左右の柱材14の上側は棒材20によって連結されている。
本実施の形態では、主として、4本の柱材14、4本の横架材15及び2つの車輪16、2つの車輪17及び棒材19、20によって、支持体21が構成されている。本実施の形態では、支持体21が、対象物Tに載った状態でガイド部材13、13aを支持する自走式車体である。
【0019】
左前の柱材14の上側には、
図1、
図2に示すように、左後の柱材14の上側に連結された長尺のガイド部材13が連結され、右前の柱材14の上側には、右後の柱材14の上側に連結された長尺のガイド部材13aが連結されている。ガイド部材13、13aは、支持体21が対象物Tの水平領域(即ち、水平面)に載った状態で、前後方向に配される(即ち、水平配置される)。
こととなる。
以下、特に記載しない限り、支持体21が対象物Tの水平領域に載った状態であることを前提に説明する。
【0020】
ガイド部材13、13aには、左右方向(即ち、水平)に配置された棒状のノズルガイド12が取り付けられている。
ノズルガイド12の左右には、ガイド部材13に移動可能に装着されたスライドブロック22及びガイド部材13aに移動可能に装着されたスライドブロック22aがそれぞれ固定されている。ガイド部材13には、
図1、
図3に示すモータ23(第2の駆動源の一例)が固定され、図示しないプーリがガイド部材13の前後に回転自在にそれぞれ取り付けられている。
【0021】
そして、前後のプーリには、モータ23から後側のプーリを介して与えられる駆動力をスライドブロック22に伝える
図1に示すタイミングベルト24が架け渡されている。なお、
図2においては、モータ23及びタイミングベルト24の記載を省略している。
このため、ノズルガイド12は、モータ23の作動によって、スライドブロック22、22aと共に、ガイド部材13、13aの配置方向、即ち、前後方向に移動する。本実施の形態では、
図1に示すように、ガイド部材13、13aの配置方向に仮想直線L2が配される。
【0022】
よって、ガイド部材13、13aは、ノズルガイド12を仮想直線L2に沿って案内し、モータ23は、駆動力を与えてノズルガイド12を仮想直線L2に沿って移動させる。
モータ23は、
図1、
図3に示すように、モータ18に接続された操作部(操作盤)25に接続され、操作部25になされた入力操作によって、作動の開始及び停止が制御される。
【0023】
モータ18、23は、回転方向が切り替え可能であり、それぞれ操作部25への入力操作によって回転方向が切替えられ、左右の車輪16は、操作部25への入力操作によって転動方向が調整される。
ノズルガイド12は、モータ23の回転方向に応じて、支持体21に対して前進あるいは後退する。支持体21は、モータ18の回転方向に応じて、対象物T上を前進あるいは後退し、左右の車輪16の転動方向の変更によって進行方向が調整される。
【0024】
また、ノズルガイド12には、
図1、
図2に示すように、硬化性樹脂を吹き出すノズル部11が取り付けられている。
ノズル部11は、硬化性樹脂を貯留する図示しないタンクにチューブ26を介して接続されたヘッダ27と、ヘッダ27に連結され、ノズルガイド12に移動可能に装着されたスライドブロック28を有している。ヘッダ27は、対象物Tに向かって下方に硬化性樹脂を吹き付ける配置でスライドブロック28に取り付けられている。なお、チューブ26は、
図2に示すように、棒材20に固定された支持具26aによって支持されている。
図1では、チューブ26の記載が省略されている。
【0025】
本実施の形態では、タンクに2つの貯留部が設けられ、それぞれの貯留部に液体状のポリイソシアネート及び液体状のポリアミンが蓄えられている。タンク内のポリイソシアネート及びポリアミンは、タンクに取り付けられた
図3に示すポンプ29の作動によって、チューブ26に設けられた2つの流路をそれぞれ進み、ヘッダ27内で混合された後、ヘッダ27から対象物Tに向かって吹き出される。よって、本実施の形態において、ヘッダ27から吹き出される硬化性樹脂は、ポリイソシアネート及びポリアミンの混合物である。
ポリイソシアネート及びポリアミンは、混合されることによって硬化するため、ヘッダ27から液体状で吹き出された硬化性樹脂は、対象物Tに吹き付けられた後、時間の経過と共に硬化し、対象物Tの表面に樹脂が硬化した樹脂層を形成する。
【0026】
ノズルガイド12には、
図1、
図3に示すように、操作部25に接続されたモータ30(第1の駆動源の一例)が固定され、ノズルガイド12の左右には、図示しないプーリが回転自在にそれぞれ取り付けられている。左右のプーリには、モータ30から左側のプーリを介して与えられる駆動力をスライドブロック28に伝える
図1に示すタイミングベルト31が架け渡されている。
【0027】
ノズル部11は、モータ30の作動によって、支持体21に対して、ノズルガイド12の配置方向に移動する。本実施の形態では、
図1に示すように、ノズルガイド12の配置方向である左右方向に仮想直線L1が配される。従って、モータ30は、駆動力を与えてノズル部11を仮想直線L1に沿って移動させ、ノズルガイド12は、ノズル部11を仮想直線L1に沿って案内することとなる。仮想直線L1、L2は、水平に配され、平面視して直交している。
モータ30は、回転方向が切替え可能であり、操作部25になされた入力操作によって、作動の開始及び停止並びに回転方向の切替えが制御される。ノズル部11は、モータ30の回転方向に応じて、ノズルガイド12に沿って左あるいは右に移動する。
【0028】
また、ガイド部材13、13aは、
図1に示すように、棒材20より後方に突出した領域があり、ガイド部材13、13aの棒材20より後方に突出した各領域には、作業者P(人)に取り付けられる装着具32の一側及び他側がそれぞれ接続されている。本実施の形態では、装着具32が作業者Pの腰に取り付け可能なベルトであるが、これに限定されないのは言うまでもない。
【0029】
装着具32は、作業者Pに取り付けられることによって、ノズル部11、ノズルガイド12、ガイド部材13、13a及び支持体21を、作業者Pと共に移動可能にするもので、装着具32を取り付けた作業者Pの移動に伴い、ノズル部11、ノズルガイド12、ガイド部材13、13a及び支持体21は作業者Pと一体的に移動する。
作業者Pは、ノズル部11、ノズルガイド12、ガイド部材13、13a及び支持体21を移動させる際、
図1に示すように、腕で棒材20を把持してもよい。そして、作業者Pが移動する際、左右の車輪16は、フリーな状態であってもよいし、操作部25への入力操作によって作業者Pの移動に合わせた駆動を行っていてもよい。
【0030】
なお、左右の車輪16及び左右の車輪17を具備する支持体21の代わりに、支持体21から左右の車輪17を取り除いた支持体を採用することもでき、その場合、支持体の移動は、作業者Pが後側左右の柱材14を浮かせた状態で行われる。また、支持体21から左右の車輪16及び左右の車輪17を全て削除した支持体を採用することも可能で、その場合、支持体の移動は、人力によって行われることとなる。
【0031】
作業者Pは、装着具32が取り付けられていない状態でも操作部25への操作によって、左右の車輪16を駆動回転させて、支持体21を移動させることができる。この場合、作業者Pは、モータ18の回転方向又は左右の車輪16の転動方向の切替えにより、支持体21の移動方向を変更可能である。
【0032】
次に、樹脂コーティング装置10を用いて硬化性樹脂を対象物Tに吹き付ける方法について説明する。
まず、作業者Pは、支持体21を、自らの移動によって、あるいは、左右の車輪16の駆動力によって対象物T上で移動させ、硬化性樹脂の吹き付け位置に停止させる。そして、作業者Pは、操作部25への入力操作によって、モータ23を作動させ、ノズルガイド12を最前位置まで移動させる。その後、作業者Pは、操作部25への入力操作により、ポンプ29及びモータ30を作動させてヘッダ27から対象物Tに向かって下方に硬化性樹脂を吹き付けながら、ノズル部11をノズルガイド12に沿って移動させる。
【0033】
ノズル部11は、ノズルガイド12に沿って、一回あるいは複数回往復させてもよいし、右端から左端(又は左端から右端)に一回だけ移動させるようにしてもよい。本実施の形態において、ノズル部11の移動速度、及び、ヘッダ27から単位時間当たりに吹き出される硬化性樹脂の量は、操作部25からの入力操作によって調整可能である。
ノズルガイド12を最前位置に配した状態での硬化性樹脂の吹き付けが完了後、作業者Pは、操作部25への入力操作によりモータ23を移動させてノズルガイド12を後退させる。そして、作業者Pは、ノズルガイド12を停止させ、ノズル部11をノズルガイド12に沿って移動させながらヘッダ27から対象物Tへの硬化性樹脂の吹き付けを行う。
【0034】
ノズルガイド12の後退と、ノズル部11をノズルガイド12に沿って移動させながら行う対象物Tへの硬化性樹脂の吹き付けとを繰り返し、ノズルガイド12を最も後退させた位置における硬化性樹脂の対象物Tへの吹き付けが完了した時点で、支持体21を停止させていた位置における対象物Tに対する硬化性樹脂の面状の塗布が終了する。なお、最初に硬化性樹脂の吹き付けを行う際のノズルガイド12の位置は最前位置である必要は無く、例えば、ノズルガイド12を最も後退させた位置から硬化性樹脂の吹き付けを開始してもよいのは言うまでもない。
支持体21を停止していた位置での硬化性樹脂の対象物Tへの吹き付けを終了した後、作業者Pは、支持体21を移動させ、対象物Tの新たな領域に対して硬化性樹脂を吹き付ける。
【0035】
ここで、ガイド部材13、13aには、
図1に示すように、レーザーポインタ(光照射手段の一例)33がそれぞれ取り付けられ、棒材19には2つのレーザーポインタ(光照射手段の一例)34が間隔を空けて取り付けられている。レーザーポインタ33、34は、下向きにレーザー光を照射し、対象物Tにレーザー光を当てて硬化性樹脂を吹き付け可能な範囲を示す。このため、作業者Pは、対象物Tに当てられたレーザー光を見ることで、硬化性樹脂の吹き付け範囲を容易に知ることができる。
【0036】
2つのレーザーポインタ33及び2つのレーザーポインタ34は、
図3に示すように、操作部25に接続され、操作部25への入力操作によって、レーザー光の照射の開始、あるいは、停止を行う。
また、ガイド部材13、13a及び支持体21には、
図2に示すように、ヘッダ27から吹き出される硬化性樹脂が周囲に飛散するのを防止するカバー体35が取り付けられている。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、ガイド部材は、2本である必要や棒状である必要がなく、必ずしも前後方向に沿っている必要もない。
また、ノズルガイドは、棒状である必要はなく、左右方向に配されている必要もない。
そして、仮想直線L1、L2は直交している必要はなく、非平行であればよい。また、仮想直線L1、L2は、支持体が水平面に載った状態で、水平に配されなくてもよい。
更に、光照射手段やカバー体は必ずしも必要ではない。
【0038】
また、硬化性樹脂は、対象物に液体状で吹き付けられた後に硬化するものであればよく、ポリイソシアネート及びポリアミンの混合物である必要はなく、更に、複数の液体を混合してなるものでなくてもよい。
そして、操作部は、支持体に取り付けられている必要はなく、遠隔から支持体の走行や、硬化性樹脂の吹き出しを制御できるものであってもよい。
更に、硬化性樹脂の吹き付けが行われる対象物は建造物に限定されない。
また、支持体に設けられた車輪を全て従動輪とし、樹脂コーティング装置に自走式車両を連結し、その自走式車両の走行により樹脂コーティング装置を移動させるようにしてもよい。