(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施形態に係る加圧装置は、試料を研磨する研磨装置や複数の合板を積層接着する合板積層装置などのように、鉛直方向(Z軸方向)で定圧の加圧力を被対象物に印加する装置に適用することができるものである。
【0027】
以下の説明では、本発明の実施形態に係る加圧装置を上述した研磨装置に適用した場合の例に沿って説明する。なお、本発明の実施形態に係る加圧装置の適用は、上述した研磨装置や合板積層装置に限られるものではなく、鉛直方向(Z軸方向)で定圧の加圧力を被対象物に印加する必要のある装置であれば、いずれのものでもよい。
試料の研磨を行う際には、回転する研磨盤に対してZ軸方向(上下方向)にスライド可能な試料ホルダに被研磨対象物である試料を取付け、前記試料ホルダを研磨量に応じてZ軸方向に垂直移動させつつ前記試料を前記研磨盤で設定の研磨量まで研磨することになる。前記試料を研磨する際には、設定された研磨荷重(加圧力)を前記試料に付加する必要がある。
【0028】
既設の技術としてZ軸ステージ1を鉛直方向に下降させて加圧力を被対象物に印加する研磨装置が開発されているが、本発明の実施形態は、Z軸ステージ1にスライドユニット2を鉛直方向に設定ストロークの範囲でスライド可能に支持し、Z軸ステージ1の下降による加圧力の印加に代えて、前記スライドユニット1による加圧力を印加する構成に特徴がある。しかも、前記スライドユニット1のストロークに左右されずに定圧の加圧力を印加することに特徴がある。
本発明の実施形態に係る加圧装置を適用した研磨装置は
図14に示すように、スライドユニット2に保持された試料12が、スライドユニット2の下降に伴って研磨盤21に接触し、磁気作動素子3の推力による加圧力が印加され、前記試料12が前記研磨盤21で研磨されることとなる。研磨装置では、スライドユニット12に保持された試料12が研磨盤21に接触された時点から、スライドユニット12に加えられる磁気作動素子3の推力を受けて試料12に加圧力が印加される。
【0029】
本発明の実施形態に係る加圧装置は
図1及び
図2に示すように、Z軸ステージ1に設定ストローク範囲で上下方向にスライド可能に支持され、自重で前記設定ストロークの下死点まで下降するスライドユニット2と、前記Z軸ステージ1に取り付けられ、磁気回路(磁石3b)の磁力と前記磁気回路(磁石3b)内のコイル3dへの通電による磁力との相互作用で前記コイル3dに通電される電流値に比例する推力を鉛直方向に励起する磁気作動素子(
図4のボイスコイルモーター参照)3と、前記Z軸ステージ1と前記磁気作動素子3とを駆動制御する駆動回路4a,4bと、前記設定ストロークの下死点に下降する前記スライドユニット1を検出し、且つ前記設定ストロークの下死点から上昇する前記スライドユニット2を検出する下死点センサ5と、前記駆動回路4a,4bを駆動制御する制御ユニット6とを、有している。前記駆動回路4aは、磁気作動素子3を駆動制御するVCM駆動回路であり、前記駆動回路4bは、Z軸ステージ1が備えた駆動源24を駆動制御するZ軸ステージ駆動回路であるが、駆動回路4a,4bとして表記することがある。
【0030】
前記制御ユニット6は
図2に示すように、前記下死点センサ5の検出信号に基づいて前記駆動回路4a,4bで前記Z軸ステージ1と前記磁気作動素子3を駆動制御して、前記磁気作動素子3への通電による推力で前記スライドユニット1を被対象物から離間する上方へ引き上げて前記磁気作動素子3へ通電する電流値に基づいて前記スライドユニット2の自重を測定する自重測定部7と、前記下死点センサ5の検出信号に基づいて前記駆動回路4a,4bで前記Z軸ステージ1と前記磁気作動素子3を駆動制御して、前記スライドユニット2が前記被対象物に対して前記設定ストロークの範囲内で上下にスライド可能な高さ位置に前記Z軸ステージ1を停止させた状態で、前記磁気作動素子3へ(設定加圧値−自重値)の差分に相当する電流値を前記磁気作動素子へ通電して前記磁気作動素子3による加圧力を前記被対象物に印加する加圧部8と、を有することを特徴とする。
【0031】
前記加圧部8は、前記駆動回路4aによる前記磁気作動素子3への通電を負極性に切り替えることにより、前記磁気作動素子3による加圧力を前記スライドユニット2の自重以下の加圧力に設定可能であり、また、前記駆動回路4aによる前記磁気作動素子3への通電を正極性に切り替えることにより、前記磁気作動素子3による加圧力を前記スライドユニット1の自重以上の加圧力に設定可能である機能を有している。
【0032】
前記制御ユニット6は
図2に示すように、前記Z軸ステージ1の高さ位置を測定する高さ測定センサ9を有している。前記高さ測定センサ9としてリニアエンコーダを用いており、
図1に示すガイド23に添って鉛直方向に設置し、前記ガイド23に案内されて上下動する前記Z軸ステージ1の高さを測定するようになっている。前記自重測定部7及び加圧部8はメモリ10を有している。
【0033】
次に、本発明の実施形態では
図4に示すように、磁気作動素子3としてボイスコイルモーターを用いている。磁気作動素子3としてのボイスコイルモーターは
図5(a)に示すように、ボイスコイルモーター3のコイル3dに通電される電流値とボイスコイルモーター3が発生する推力との関係は直線的に比例する関係にある。さらに、ボイスコイルモーター3のコイル3dに通電する電流値すなわちボイルコイルモーター3が発生する推力は、前記スライドユニット2を上方に引き上げる能力を示すものであるから、ボイスコイルモーター3の推力とスライドユニット2の自重との関係は
図5(b)に示すように直線的に比例する関係がある。前記メモリ10は
図5(a)(b)に示すデータ及び被対象物に印加する設定加圧力及びそれに対応する電流値などのデータを記憶している。
【0034】
本発明の実施形態に係る加圧装置は
図1及び
図11に示すように、Z軸ステージ1にスライドユニット2を設定ストローク範囲で上下方向にスライド可能に支持し、スライドユニット2の自重で前記設定ストロークの下死点まで下降させ、前記設定ストロークの下死点に下降する前記スライドユニット2、および前記設定ストロークの下死点から上昇する前記スライドユニット2を下死点センサ5でそれぞれ検出し、前記下死点センサ5の検出信号に基づいて、前記Z軸ステージ1に取り付けられた磁気作動素子3の磁気回路の磁力と前記磁気回路内のコイル3dへの通電による磁力との相互作用で前記コイル3dに通電される電流値に比例する推力を励起し、前記磁気作動素子3への通電による推力で前記スライドユニット2を前記被対象物から離間する上方へ引き上げて前記磁気作動素子3へ通電する電流値に基づいて前記スライドユニット2の自重を測定し、
図12〜
図15に示すように、前記下死点センサ5の検出信号に基づいて前記スライドユニット2が前記
被対象物に対して前記設定ストロークの範囲内で上下にスライド可能な高さH5(H5<H2)の位置に前記Z軸ステージ1を停止させた状態で、前記磁気作動素子3へ(設定加圧値−自重値)の差分に相当する電流値を通電して前記磁気作動素子3による加圧力を前記被対象物に印加することになる。
【0035】
以上の説明では、本発明を加圧装置として構築したが、加圧プログラムとして構築してもよい。その本発明に係る加圧プログラムは、Z軸ステージを鉛直方向に下降させて加圧力を被対象物に印加する制御を行う加圧プログラムにおいて、コンピュータに、下死点センサ5の検出信号に基づいてZ軸ステージ1と磁気作動素子3を駆動制御して、前記磁気作動素子3への通電による推力で前記スライドユニット2を前記被対象物から離間する上方へ引き上げて前記磁気作動素子3へ通電する電流値に基づいて前記スライドユニット2の自重を測定する自重測定機能と、前記下死点センサ5の検出信号に基づいて前記Z軸ステージ1と前記磁気作動素子3を駆動制御して、前記スライドユニット2が前記
被対象物に対して前記設定ストロークの範囲内で上下にスライド可能な高さ位置H5に前記Z軸ステージ1を停止させた状態で、前記磁気作動素子3へ(設定加圧値−自重値)の差分に相当する電流値を通電して前記磁気作動素子3による加圧力を前記被対象物に印加する加圧機能と、を実行させる実行させる構成として構築する。
【0036】
前記加圧プログラムにおいて、前記コンピュータに、前記磁気作動素子3への通電を負極性に切り替えることにより、前記磁気作動素子3による加圧力を前記スライドユニット2の自重以下の加圧力に設定し、前記磁気作動素子3への通電を正極性に切り替えることにより、前記磁気作動素子3による加圧力を前記スライドユニット2の自重以上の加圧力に設定する機能を実行させる。また、前記コンピュータに、自重測定部の自重測定時の電流値を引き継いでその電流値を漸減させて前記スライドユニット2を前記設定ストロークの下死点に移動させ、その状態を維持して前記スライドユニット2を前記被対象物に接触させる機能を実行させる構成として構築する。
【0037】
本発明の実施形態に係る加圧装置を適用する研磨装置を示す
図3において、図の上下方向にZ軸方向、図の左右方向にX軸方向、図の奥行き方向にY軸方向をそれぞれ設定して説明する。本発明の実施形態に係る研磨装置による研磨には、単純に試料を研磨することにとどまらず、積層界面構造,多層膜(薄膜)の観察及び除去,結晶解析に必要な試料情報を得るための研磨,半導体の故障解析,メッキ層の構造解析,電子部品などの平面研磨や断面研磨を含むものである。
【0038】
図3に示す研磨装置は、装置本体20に回転自在に支持され上面に研磨材(図示略)を備えた研磨盤21と、直交するX軸方向とY軸方向とZ軸方向との3軸方向にガイド22aに案内されて移動するZ軸ベース22と、前記Z軸ベース22にZ軸方向(鉛直方向)に移動可能に支持されたZ軸ステージ1と、前記Z軸ステージ1にZ軸方向(鉛直方向)にスライド可能に支持されたスライドユニット2とを有している。
図3に示す研磨装置では、試料12がスライドユニット2に保持され、試料12はZ軸ステージ1及びスライドユニット2の下方への移動に伴って研磨盤21に接触し、且つ更なるスライドユニット2の下方への移動に伴って加圧力(研磨圧)が加わることになる。研磨装置の場合、スライドユニット2は下端に図示しないホルダが取り付けられ、そのホルダに試料12が保持されることになり、この場合におけるスライドユニット2の自重は、スライドユニット2の重量及び図示しないホルダ並びに試料12の重量の総重量となる。
なお、
図3に示す研磨装置自体に特徴がなく、本発明者等は
図7に示す研磨装置の具体的構造を特願2014−180567号にて開示しており、その具体的構造についての説明を省略する。以下では、本発明の実施形態において特徴をもつ構造についてのみ説明する。
【0039】
前記Z軸ステージ1と前記スライドユニット2との具体的な関係を
図4に基づいて詳細に説明する。
図4においては、前記Z軸ステージ1をZ軸方向(鉛直方向)に移動させる昇降機構が汎用のものであり、前記昇降機構を図示省略している。前記Z軸ステージ1は
図3に示すZ軸モータ24を備えており、
図2のZ軸ステージ駆動回路4bがZ軸モータ24を駆動制御することにより、前記Z軸モータ24の駆動により前記昇降機構を介して
図4のZ軸方向(鉛直方向)に移動するようになっている。
前記Z軸ステージ1は前記Z軸ベース22の鉛直方向のガイド23,23に案内されてZ軸方向(鉛直方向)に移動可能であり、さらに前記Z軸ステージ1は駆動源24を備えており、Z軸モータ24の駆動によりZ軸方向の上下方向に移動されて被対象物である研磨盤21に対する高さ位置が設定される。前記Z軸ステージ1の高さ位置は、前記ガイド23に添って設置されたリニアエンコーダで測定される。なお、高さ位置センサ9は、Z軸ステージ1の高さを測定できるものであれば、リニアエンコーダ以外のものあってもよい。
【0040】
前記Z軸ステージ1は
図4に示すように、鉛直方向に伸びる2本のガイド13,13を有している。前記スライドユニット2は、前記Z軸ステージ1のガイド13,13に案内されて設定ストロークの範囲内でZ軸方向(鉛直方向)にスライド可能に支持されており、前記スライドユニット2の自重で前記設定ストロークの下死点にスライドしている。
図4は、前記スライドユニット2が自重で設定ストロークの下死点に位置していることを示している。前記スライドユニット2が前記設定ストロークの下死点までスライドした場合に、前記スライドユニット2が前記Z軸ステージ1から下方へ抜け出るのを防止するストッパ1aが前記Z軸ステージ1のガイド13,13の最下点の位置に設けられており、その位置に前記スライドユニット2の設定ストロークの下死点が設定されている。
【0041】
前記スライドユニット2の設定ストロークの下死点の位置に下死点センサ5が設置されている。前記下死点センサ5は、前記設定ストロークの下死点に下降する前記スライドユニット1を検出し、且つ前記設定ストロークの下死点から上昇する前記スライドユニット2を検出するようになっている。
図4に示す下死点センサ5の例では、発光素子5a(又は受光素子5b)をZ軸ステージ1に取付け、受光素子5b(又は発光素子5a)をスライドユニット2に取り付けており、発光素子5aと受光素子5bとの間での光のON,OFFにより前記スライドユニット2を検出するようにしている。下死点センサ5としては光学式センサを用いたが、これに限られるものではなく、前記スライドユニット2を検出可能なセンサであれば、いずれのものであってもよい。
【0042】
本発明の実施形態では磁気作動素子3としてボイスコイルモーター(VCM)を用いており、以下に、前記VCM3と前記スライドユニット2との関係を
図4に基づいて詳細に説明する。前記磁気作動素子3としてボイスコイルモーターを用いているが、ボイスコイルモーターのように磁気回路の磁力と前記磁気回路内のコイルへの通電による磁力との相互作用で前記コイルに通電される電流値に比例する推力を励起する構成のものであれば、ボイスコイルモーター以外のものであってもよいものである。
図4に示すように、前記VCM3は、円筒状の固定枠3aと、前記固定枠3aの内周面に取り付けられた円筒状の磁石3bと、前記Z軸ステージ1にZ軸方向に移動可能に支持されて前記円筒状の磁石3bの内方でZ軸方向に直線移動する連結軸3cと、前記磁石3bによる磁気回路Gの範囲で前記連結軸3cに巻き付けられたコイル3dとからなる。また、前記磁気作動素子3の連結軸3cは前記スライドユニット2に連結されている。
【0043】
前記連結軸3cは、その下端に前記スライドユニット1が連結されている。従って、前記VCM3は、VCM駆動回路4aから前記コイル3dに通電されると、前記磁石3bによる磁気回路Gの磁力と前記磁気回路G内の前記コイル3dへの通電による磁力との相互作用で前記コイル3dに通電される電流値に比例する推力を鉛直方向に励起し、前記コイル3dへの通電が継続している間は前記VCM3に前記推力が継続して励起しており、その連結軸3cの直線移動の推力で前記スライドユニット2が前記Z軸ステージ1のガイド13,13に案内されてZ軸方向(鉛直方向)へスライドして直線移動することになる。前記VCM3は、前記VCM駆動回路4aからの通電の極性を切り替える、例えば負極性(−)側に切り替えると前記連結軸3cをZ軸の上方へ直線移動させる推力を励起し、正極性(+)側に切り替えると前記連結軸3cをZ軸の下方へ直線移動させる推力を励起する。
【0044】
(動作の説明)
次に、本発明の実施形態に係る加圧装置を用いて加圧力を制御する場合を
図6〜
図15に基づいて説明する。
【0045】
[スライドユニットの自重測定]
スライドユニット2の自重として、図示しない試料ホルダ,試料12,VCM3の連結軸3c及びコイル3d,下死点センサ5の受光素子5bなどの重量を合わせた自重を測定する場合を
図6及び
図11,
図12に基づいて説明する。
図11に示すように、Z軸ベース22の左右方向への動きを固定する。
【0046】
自重測定部7は
図11に示すように、高さ位置センサ9の出力を受けてZ軸ステージ駆動回路4bにより駆動源24を駆動制御してZ軸ステージ1を高さH1まで上昇させ、その高さ位置H1に停止させ、VCM3のコイル3dへの電流値を零すなわち無給電状態として(
図6のステップS1)、
図11に示すようにスライドユニット1の自重で前記スライドユニット2を設定ストロークの下死点までスライドさせる。この高さ位置をH2とする。スライドユニット2が設定ストロークの下死点にスライドすると、下死点センサ5がスライドユニット2を検出する。
自重測定部7は、下死点センサ5の出力を受けて、下死点センサ5が設定ストロークの下死点にスライドユニット2を検出したか否かを判定する(
図6のステップS2)。自重測定部7は、下死点センサ5がスライドユニット2を検出しない場合(下死点センサ5がOFF)、メカエラーの信号を出力する(
図6のステップS2の不検出)。
【0047】
下死点センサ5が設定ストロークの下死点にスライドユニット2が下降した場合にONとなり、
図11に示すように、スライドユニット2は研磨盤21から上方に離間した高さH2に位置する、すなわち、スライドユニット2は設定ストロークの下死点でZ軸ステージ1にぶら下がっている状態となる。
【0048】
自重測定部7は、下死点センサ5がスライドユニット2を検出した場合(下死点センサ5がON:
図6のステップS2の検出)、VCM駆動回路4aの極性を負極性に切り替えて(
図6のステップS3)、VCM駆動回路4aを駆動制御してVCM3のコイル3dへ負極性の電流を例えば1mAずつ漸増させてVCM3に上方への推力を発生させる(
図6のステップS4)。
図12に示すように、VCM3の発生する推力がスライドユニット2の自重より勝った場合に、VCM3の推力によりスライドユニット2が上方に持ち上げられ、スライドユニット2に取り付けた受光素子5bがZ軸ステージの発光素子5aから離れることにより、下死点センサ5がOFFになる。
自重測定部7は、下死点センサ5の出力を受けてVCM3の推力によりスライドユニット2が持ち上げられて下死点センサ5がOFFになったことを判定した場合(
図6のステップS5 不検出)、その瞬間にVCM3のコイル3dに通電している電流値に基づいてスライドユニット2の自重を測定し、その測定値をメモリ10に記憶させる(
図6のステップS6)。すなわち、自重測定部7は、
図5(a)(b)に示す特性において瞬間の電流値が電流値A1である場合、VCM3の発生する推力がF1であること、及びその電流値A1である場合にスライドユニット3の自重がM1であることを割り出すことにより、スライドユニット3の自重を測定し、スライドユニット2の自重と瞬間電流値A1と推力F1とを対応させてメモリ10に記憶させる。
【0049】
図6のステップS5の処理において、自重測定部7は、下死点センサ5がONのままである場合(
図6のステップS5の検出)、VCM3のコイル3dへ通電している電流値が最大であるか否かを判定する(
図6のステップS7)。自重測定部7は前記電流値が最大でない場合(
図6のステップS7のNO)、処理を
図6のステップS4の処理に戻す。自重測定部7は電流値が最大である場合(
図6のステップS7:YES)、VCM3への通電を停止させ(
図6のステップS8)、自重オーバーである表示を出力する(
図6のステップS9)。この場合、VCM3の発生する推力ではスライドユニット2を設定ストロークの下死点から上方に引き上げることができない、すなわち、スライドユニット2の自重を測定できない状態となる。
【0050】
[研磨動作]
次に、
図6に示すスライドユニット2の自重測定が完了した後において、研磨開始から研磨が終了するまでの一連の動作を
図7に基づいて説明する。
図7のステップS20に示すように研磨開始のスタートボタンを操作すると、
図7に示す動作フローに従ってスライドユニット1の自重を測定する処理が実行され(
図6のステップ6,
図7のステップS21)、
図8に示す接触圧軽減処理(
図7のステップS22)を実行させる。前記接触圧軽減処理(
図7のステップS22)は
図8に示すように、研磨盤21と試料12の接触を下死点センサ5で検知するためにスライドユニット2を下死点に移動させ、かつ接触の際に研磨盤21の図示しない研磨面に与えるダメージを最小限に抑えるための処理である。
次に、研磨盤21を回転させた後に、Z軸ステージ1を下降させて、試料12を研磨盤21の研磨面に接触させる(
図7のステップS24)。このように、研磨盤21を回転させて試料12を研磨盤21の研磨面に接触させることにより、試料12が研磨盤21に接触する際のダメージを軽減させている。
次に、加圧部8による研磨荷重設定処理(
図7のステップS25)を経て、VCM3の連結軸3dの直線移動によりスライドユニット2が下降して試料12が研磨盤21に圧接され、試料12の研磨量に応じて徐々にスライドユニット2がVCM3の推力を受けてZ軸の下方に移動し、研磨盤21による試料12の研磨が行われる(
図7のステップS26)。
研磨盤21による試料12の研磨が停止条件まで実行され(
図7のステップS27)、研磨が終了した時点でZ軸ステージ1が
図14の高さH5の位置から上昇し、研磨された試料12が研磨盤21から離脱する(
図7のステップS28)。その後、Z軸ステージ1が
図10の高さH1まで上昇した際にVCM3への通電を停止し(
図7のステップS29)、それに伴って、研磨盤21の回転動作が停止し(
図7のステップS30)、研磨動作が終了する。
【0051】
[接触圧軽減処理]
図7のステップ22において実行される接触圧軽減処理を
図8に示すフローに基づいて説明する。
図8に示す接触圧軽減処理、すなわち、研磨盤21と試料12の接触を下死点センサ5で検知するためにスライドユニット2を下死点に移動させ、かつ接触の際に研磨盤21の研磨面に与えるダメージを最小限に抑えるための接触圧軽減処理を実行する。
前記加圧部8は、スライドユニット2の自重測定時の電流値をメモリ10から読み出して、その自重測定時の電流値を例えば1mAずつ漸減させ(
図8のステップS31)、
図14に示すようにスライドユニット2を下死点に徐々にスライドさせ、スライドユニット2が下死点に到達、すなわちスライドユニット2がストッパ1aに到達した際のVCM3のコイル3dに通電している電流値を保持する(
図8のステップ32:検出)。
【0052】
加圧部8は下死点センサ5がONのままである場合(
図8のステップS32:不検出)、
VCM3への電流値が零であるか否かを判定し(
図8のステップS33)、電流値が零ではない場合(
図8のステップS33のNO)、その処理をステップS31に戻す。電流値が零である場合(
図8のステップS33のYES)、加圧部8は、メカエラーの表示を行う(
図8のステップS33)。
【0053】
図8に示す接触圧軽減処理が終了すると、加圧部8は
図14に示すZ軸ステージ1を
図15に示すように下降させて
図7のステップS24に示すZ軸下降処理を行う。この処理を
図9及び
図15に基づいて説明する。
図9に示すZ軸下降処理S40を開始すると、加圧部8は
図15に示すように、Z軸駆動回路4bでZ軸モータ24を駆動制御してZ軸ステージ1を高さH4の位置まで下降させる(
図9のステップS41)。Z軸ステージ1が高さH4の位置を過ぎると、下死点センサ5がOFFになる。
加圧部8は
図15に示すように、下死点センサ5がOFFとなった際に高さ位置センサ9の出力を得て、前記スライドユニット2が前記設定ストロークの範囲内で下方へスライド可能な高さ位置H5、望ましくはスライドユニット2がスライドする設定ストロークの中点に対応する高さ位置までZ軸ステージ1を下降させ、その高さH5(H5<H2)の位置に停止させる(
図9のステップS43)。
【0054】
[研磨加重設定処理]
研磨に必要な荷重の設定処理を
図10に基づいて説明する。
図10のステップS25において、加圧部8は、自重測定部7が測定したスライドユニット2の自重の測定値及びその自重測定時の電流値と、設定荷重(設定加圧力)の設定荷重値及びその設定荷重値に対応する電流値とを読み出し、スライドユニット2の自重と設定荷重値との大小を比較する(
図10のステップS50)。
図10のステップS50において、スライドユニット2の自重が設定荷重値よりも大きい(スライドユニット2の自重>設定荷重値)場合(
図10のステップ50:YES)、加圧部8は、VCM3のコイル3dへ通電する電流を負極性のままで、(設定加圧値−自重値)の差分に相当する電流値をVCM3のコイル3dに継続して通電する(
図10のステップS51)。したがって、スライドユニット2の自重に対してVCM3の上方への推力が働くため、スライドユニット2の自重が軽減されて、試料12に印加される荷重は、スライドユニット2の自重より小さい荷重に設定される。
【0055】
図10のステップS50において、スライドユニット2の自重が設定荷重値よりも小さい(スライドユニット2の自重<設定荷重値)場合(
図10のステップ50:NO)、加圧部8は、VCM3のコイル3dへ通電する電流を正極性に切り替えて、(設定加圧値−自重値)の差分に相当する電流値を正極性でVCM3のコイル3dに継続して通電する(
図10のステップS52)。したがって、スライドユニット2の自重にVCM3の下方への推力が加わるため、試料12に印加される荷重は、スライドユニット2の自重より大きい荷重に設定される。
【0056】
次に、本発明の実施形態の変形例について説明する。
図16(b)に示すように、VCM3のコイル3dへの電流値を徐々に増加させ、スライドユニット2が移動し始めることについてはヒステリシス特性がある。これはVCM3の電流対推力特性がスライドユニット2のストローク中心を頂点とした緩やかな太鼓型のカーブを持っている特性がある。
そこで、
図16(a)に示すように、VCM3の磁石3bの内周面を、VCM3の連結軸3cのストローク中心を頂点として緩やかな太鼓型カーブと逆の凹形状に構成し、この凹形状により、前記スライダユニット2のスライド範囲内で前記磁石3bの磁力を補正する磁力補正手段15を構成してもよいものである。
【0057】
以上説明したように本発明の実施形態によれば、Z軸ステージにスライドユニットを設定ストローク範囲で上下方向にスライド可能に支持し、前記スライドユニットの自重で前記設定ストロークの下死点まで下降させ、前記設定ストロークの下死点に下降する前記スライドユニット、および前記設定ストロークの下死点から上昇する前記スライドユニットを下死点センサでそれぞれ検出し、前記下死点センサの検出信号に基づいて、前記Z軸ステージに取り付けられた磁気作動素子の磁気回路の磁力と前記磁気回路内のコイルへの通電による磁力との相互作用で前記コイルに通電される電流値に比例する推力を励起することにより、前記磁気作動素子への通電による推力で前記スライドユニットを前記被対象物から離間する上方へ引き上げて前記磁気作動素子へ通電する電流値に基づいて前記スライドユニットの自重を測定することができるという効果を奏する。
【0058】
さらに、前記下死点センサの検出信号に基づいて前記スライドユニットが前記
被対象物に対して前記設定ストロークの範囲内で上下にスライド可能な高さ位置に前記Z軸ステージを停止させた状態で、前記磁気作動素子へ(設定加圧値−自重値)の差分に相当する電流値を前記磁気作動素子へ通電して前記磁気作動素子の推力による加圧力を前記被対象物に印加することができるという効果を奏する。
【0059】
さらに、スライドユニットの自重を測定することによりユーザにスライドユニットの自重を意識させないで設定加圧力の設定を可能にすることができるという効果を奏する。
【0060】
さらに、スライドユニットの自重を測定することにより、スライドユニットの自重以下から自重以上の加圧力を自在に設定することができという効果を奏する。
【0061】
前記加圧部は、前記磁気作動素子への通電を負極性に切り替えることにより、前記磁気作動素子の推力による加圧力を前記スライドユニットの自重以下の加圧力に設定し、前記磁気作動素子への通電を正極性に切り替えることにより、前記磁気作動素子の推力による加圧力を前記スライドユニットの自重以上の加圧力に設定することができる。
【0062】
前記自重測定部は、自重測定時の電流値を漸減させて前記スライドユニットを前記設定ストロークの下死点にソフトランディングさせることにより、衝突によるスライドユニットの損傷を回避することができる。
【0063】
前記加圧部は、自重測定部の自重測定時の電流値を引き継いでその電流値を漸減させて前記スライドユニットを前記設定ストロークの下死点に移動させ、その状態を維持して前記スライドユニットを前記被対象物に接触させる機能を有しているため、前記スライドユニットを前記
被対象物にソフトランディングさせることができ、スライドユニットが被対象物に衝突することを回避して被対象物を保護することができる。
【0064】
さらに、
図16(b)に示すように、VCMの磁石の内周面を、VCMの連結軸のストローク中心を頂点として緩やかな太鼓型カーブと逆の凹形状に構成し、この凹形状により、前記スライダユニットのスライド範囲内で前記磁気回路の磁力を補正する磁力補正手段を構成することにより、緩やかな太鼓型カーブをほぼ直線状の推力(定圧の推力)特性を得ることができるものである。