【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(第1発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0006】
筒状ハウジングは、公知のガス発生器の筒状ハウジングと同様に鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
筒状ハウジングの第1端開口部は、点火器を含む点火手段で閉塞されている。点火手段は点火器のみからなるものでもよいし、公知の伝火薬などと組み合わせたものでもよい。
点火器は、着火部を含む点火器本体と、点火器本体を包囲して保持している金属製の点火器カラーを有しているものである。
【0007】
筒状ハウジングの第2端開口部は、金属からなる隔壁で閉塞されている。隔壁の金属は、筒状ハウジングと同じものでもよいし、異なるものでもよい。また、隔壁と筒状ハウジング(周壁部)を一体に形成してもよい。
第1端開口部と第2端開口部が閉塞された筒状ハウジングの内部空間が燃焼室となり、多孔筒状体が配置されている。
多孔筒状体は金属からなるものであり、前記金属は筒状ハウジングと同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0008】
多孔筒状体は、外径および内径が均一なものでもよいし、部分的に外径および内径が異なっているものでもよく、例えば、第1端部側から第2端部側に向けて外径が小さくなっているものを使用することもできる
多孔筒状体が有している孔の配置状態は特に制限されるものではなく、
第1端部側から第2端部側の間に同じ大きさの孔が均一配置されている(孔の形成密度が均一である)もの、
第1端部側から第2端部側の間で同じ大きさの孔が不均一に配置されているもの(孔の形成密度が不均一であるもの)、
第1端部側から第2端部側の間に異なる大きさの孔が配置されているものなどにすることができる。
【0009】
燃焼室は、多孔筒状体の内側空間の第1室と外側空間の第2室に分けられており、第1室と第2室の両方にガス発生剤が充填されている。
第1室と第2室の容積は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1室と第2室に充填するガス発生剤は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1室と第2室のガス発生剤として異なるものを使用するときは、組成、組成比、形状、寸法のいずれか一つ以上が異なっているものを使用することができる。
【0010】
ガス排出口は、第2室に面した隔壁に形成された貫通孔からなるものであり、前記ガス排出口は第1室には面していない。
ガス排出口は、防湿のためにシールテープで閉塞されていてもよい。
【0011】
ガス発生器の筒状ハウジング(燃焼室)内には、多数のガス発生剤が充填されている。そして、ガス発生剤同士の間に隙間が形成されるように、ガス発生剤が配置されている。
前記ガス発生剤は、錠剤形状、円柱形状、それらが凹部または貫通孔を有するものなどの所望形状に成形された成形体を使用する。
前記筒状ハウジング(燃焼室)は細長い形状であるため、一端開口部側の点火器を作動させてガス発生剤を着火燃焼させたとき、点火器に近い位置にあるガス発生剤から遠い位置にあるガス発生剤に向かって順次燃焼して行くことになる。
しかし、一端開口部側が燃焼して燃焼ガスが発生すると、その燃焼ガスの圧力によって未燃焼部分のガス発生剤は他端開口部側に圧縮される状態になってしまう圧縮現象が発生するおそれがある。
そのような圧縮現象が発生すると、ガス発生剤間の隙間が潰れて燃焼ガスがより流れ難くなり、ガス発生剤全体の燃焼性やガスの排出効率が低下することになる。
本発明のガス発生器は、燃焼室内に多孔筒状体が配置され、燃焼室が内側の第1室と外側の第2室に分けられており、第1室と第2室の間で燃焼ガスが出入りできるようになっている。
多孔筒状体の第1端部側にある点火器を作動させて第1室のガス発生剤を着火燃焼させたときには、前記の従来技術と同様に第1室のガス発生剤に前記の圧縮現象が生じて第2端部側への燃焼が進行し難い場合も考えられる。
しかし、第1室内のガス発生剤から発生した燃焼ガスが多孔筒状体の孔を通って第2室に流入して第2室内のガス発生剤を燃焼させ、第2室内のガス発生剤から発生した燃焼ガスが多孔筒状体の孔を通って第1室に流入して第1室内のガス発生剤の未燃焼部分を燃焼させるため、第1室および第2室のガス発生剤の燃焼は相互に促進される。
このため、前記したような圧縮現象が生じることもなく、細長い形状の燃焼室内に充填されたガス発生剤でも着火性、燃焼性、およびガスの排出性能が向上される。
なお、第1発明のガス発生器は、上記した燃焼室(第1室)内における多数のガス発生剤同士の圧縮現象が生じた場合であっても、ガス発生剤同士の間の隙間を含むガス流路が確保されるようにできるものである。このため、第1発明では、燃焼室内に一つまたは二つ程度の少ない数のガス発生剤を充填したタイプのガス発生器や、ガス発生剤の間に隙間が形成されていないガス発生器のように、上記したガス発生剤同士の圧縮現象が生じないようなものは含まれない。以下の各発明においても同様である。
【0012】
本発明(第2発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記隔壁側の前記第2室に面した前記筒状ハウジングに形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0013】
第2発明のガス発生器のガス排出口は、隔壁側の第2室に面した筒状ハウジングに形成された貫通孔である。
ここで隔壁側とは、筒状ハウジングの第1端開口部から第2端開口部を閉塞した隔壁の燃焼室側の面までの長さを1としたとき、前記隔壁の燃焼室側の面から0.3以下の長さ位置が好ましく、0.2以下の長さ位置であり、この範囲にガス排出口が形成されていることがより好ましい。
【0014】
本発明(第3発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔と前記隔壁側の前記第2室に面した前記筒状ハウジングに形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0015】
第3発明のガス発生器のガス排出口は、第2室に面した隔壁と、前記隔壁側の第2室に面した筒状ハウジングの両方に形成されている。
ここで隔壁側とは、筒状ハウジングの第1端開口部から第2端開口部を閉塞した隔壁の燃焼室側の面までの長さを1としたとき、前記隔壁の燃焼室側の面から0.3以下の長さ位置が好ましく、0.2以下の長さ位置であり、この範囲にガス排出口が形成されていることがより好ましい。
【0016】
本発明(第4発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されて形成された内部空間からなり、前記内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
さらに前記筒状ハウジングの前記隔壁で閉塞された第2端開口部側にはディフューザ部を有しており、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔からなる第1ガス排出口と、前記ディフューザ部に形成された第2ガス排出口からなるものであり、
前記燃焼室内で生じた燃焼ガスが、前記第1ガス排出口から前記ディフューザ部内に排出されたあと、前記第2ガス排出口から排出されるものである、ガス発生器を提供する。
【0017】
第4発明のガス発生器は、第1発明のガス発生器がさらにディフューザ部を有しているものであり、その他は第1発明と同じである。
ディフューザ部自体は公知のガス発生器と同様にカップ状のものを使用することができる。
ディフューザ部は、別部材が溶接などで接続されたものでもよいし、筒状ハウジングと一体に形成されたものでもよい。
第2発明のガス発生器は、隔壁に形成された第1ガス排出口と、ディフューザ部に形成された第2ガス排出口を有している。
カップ状のディフューザ部に形成された第2ガス排出口は、底面部に形成されていてもよいし、周壁部に形成されていてもよい。
第1ガス排出口と第2ガス排出口は、いずれか一方が防湿のためにシールテープで閉塞されていてもよい。
【0018】
本発明(第5発明)は、筒状ハウジングの第1端開口部から軸方向反対側の第2端開口部に向かって順に第1ガス排出口を有し、ガス発生剤が充填された燃焼室、第2ガス排出口を有するディフューザ室および加圧ガス室を有しているガス発生器であって、
前記ディフューザ室と前記加圧ガス室の間が閉塞部材で閉塞されており、
前記燃焼室と前記ディフューザ室の間には、作動時に前記第2端開口部側に移動して前記閉塞部材を破壊する、基板部と破壊部を有する破壊手段が配置されており、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側が前記破壊手段の基板部で閉塞されて形成された内部空間からなり、前記内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記第1ガス排出口が、前記燃焼室から前記ディフューザ室に燃焼ガスを移動させるための開口で、前記基板部の前記第2室に面した部分に形成された貫通孔であり、
前記第2ガス排出口が、前記筒状ハウジングの外に燃焼ガスと加圧ガスを排出させるための開口で、前記ディフューザ室を形成する前記筒状ハウジングの周壁部に形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0019】
第5発明は、ガス源としてガス発生剤と加圧ガス(アルゴン、ヘリウムなど)を併用しているものである。
このため、ガス発生剤が充填された燃焼室と加圧ガスが高圧充填された加圧ガス室を有しており、さらに燃焼室と加圧ガス室の間にディフューザ室を有している。
このように燃焼室、ディフューザ室および加圧ガス室が順に配置された構造のガス発生器自体は公知であるが、第5発明のガス発生器は、燃焼室として第1発明の燃焼室と同じ構造のものを使用していることが特徴である。
【0020】
第5発明では、第1発明および第4発明の隔壁に相当するものとして、ディフューザ室と加圧ガス室の間を閉塞している閉塞部材の破壊手段を使用している。
第1ガス排出口は、破壊手段の基板部に厚さ方向に形成された貫通孔である。
第2ガス排出口は、ディフューザ室を形成する筒状ハウジングの周壁部に形成された貫通孔である。
【0021】
作動時には、燃焼室内において第1発明と同様の動作がなされ、燃焼室内の燃焼ガスは第1ガス排出口からディフューザ室内に排出される。
さらに燃焼室内の圧力上昇を受けて、破壊手段が軸方向に摺動して閉塞部材が破壊されると、加圧ガス室からディフューザ室へのガス排出経路が開放される。
このため、燃焼室内の燃焼ガスと加圧ガス室内の加圧ガスは、ディフューザ室に入ったあと、第2ガス排出口からガス発生器の外に排出される。
【0022】
第1発明から第5発明のガス発生器は、多孔筒状体に形成されている多孔の開口面積が、前記第1端部側から前記第2端部側に向けて大きくなっているものを使用できる。
【0023】
多孔の開口面積を第1端部側から第2端部側に向かって大きくする方法としては、
第1端部側から第2端部側に向かって、孔の形成密度を連続的にまたは段階的に大きくして行く方法、
第1端部側から第2端部側の間に向かって、孔の大きさを連続的にまたは段階的に大きくして行く方法などを適用することができる。
段階的に大きくして行く方法の場合は、例えば、多孔筒状体を長さ方向に複数のゾーンに分けて、ゾーンごとに変えて行く方法を適用することができる。
【0024】
第1発明から第5発明のガス発生器は、前記燃焼室の第1室の容積(V1)と第2室の容積(V2)が、V2>V1の関係を有しているものであることが好ましい。
【0025】
ガス排出口(第1ガス排出口)は、第2室に面しているため、V2>V1を満たす方が、燃焼ガスが流れやすくなり、ガス発生剤の燃焼がより促進されるので好ましい。