特許第6543560号(P6543560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543560
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   B60R21/264
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-230815(P2015-230815)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-94998(P2017-94998A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】福本 健二
(72)【発明者】
【氏名】小林 睦治
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−178643(JP,A)
【文献】 特表2002−539007(JP,A)
【文献】 特開2001−130368(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3040975(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔である、ガス発生器。
【請求項2】
筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記隔壁側の前記第2室に面した前記筒状ハウジングに形成された貫通孔である、ガス発生器。
【請求項3】
筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔と前記隔壁側の前記第2室に面した前記筒状ハウジングに形成された貫通孔である、ガス発生器。
【請求項4】
筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されて形成された内部空間からなり、前記内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
さらに前記筒状ハウジングの前記隔壁で閉塞された第2端開口部側にはディフューザ部を有しており、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔からなる第1ガス排出口と、前記ディフューザ部に形成された第2ガス排出口からなるものであり、
前記燃焼室内で生じた燃焼ガスが、前記第1ガス排出口から前記ディフューザ部内に排出されたあと、前記第2ガス排出口から排出されるものである、ガス発生器。
【請求項5】
筒状ハウジングの第1端開口部から軸方向反対側の第2端開口部に向かって順に第1ガス排出口を有し、ガス発生剤が充填された燃焼室、第2ガス排出口を有するディフューザ室および加圧ガス室を有しているガス発生器であって、
前記ディフューザ室と前記加圧ガス室の間が閉塞部材で閉塞されており、
前記燃焼室と前記ディフューザ室の間には、作動時に前記第2端開口部側に移動して前記閉塞部材を破壊する、基板部と破壊部を有する破壊手段が配置されており、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側が前記破壊手段の基板部で閉塞されて形成された内部空間からなり、前記内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記第1ガス排出口が、前記燃焼室から前記ディフューザ室に燃焼ガスを移動させるための開口で、前記基板部の前記第2室に面した部分に形成された貫通孔であり、
前記第2ガス排出口が、前記筒状ハウジングの外に燃焼ガスと加圧ガスを排出させるための開口で、前記ディフューザ室を形成する前記筒状ハウジングの周壁部に形成された貫通孔である、ガス発生器。
【請求項6】
前記多孔筒状体に形成されている多孔の開口面積が、前記第1端部側から前記第2端部側に向かって大きくなっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記燃焼室の第1室の容積(V1)と第2室の容積(V2)が、V2>V1の関係を有しているものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載するエアバッグ装置のガス発生器として使用できるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1図4には、長尺円筒状のハウジング1を使用したガス発生器X1が示されている。
図1図4のガス発生器は、燃焼室G内に仕切筒20を配置することで、燃焼室Gが内側燃焼室G1と外側燃焼室G2に分けられており、内側燃焼室G1と外側燃焼室G2のそれぞれにガス発生剤2が充填されている。
図1図4のガス発生器は、いずれも内側燃焼室G1のみに面した位置にある点火装置15が作動したとき、内側燃焼室G1内のガス発生剤2を先に燃焼させ、外側燃焼室G2内のガス発生剤2を遅れて燃焼させることで、エアバッグの展開速度をコントロールできるようにしたものであることが記載されている。
このため、図1図4のガス発生器は、外側燃焼室G2内のガス発生剤2は、内側燃焼室G1内のガス発生剤2よりも燃焼し難い構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−78766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しているガス発生器であり、前記燃焼室内のガス発生剤の燃焼性を向上させたガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(第1発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0006】
筒状ハウジングは、公知のガス発生器の筒状ハウジングと同様に鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
筒状ハウジングの第1端開口部は、点火器を含む点火手段で閉塞されている。点火手段は点火器のみからなるものでもよいし、公知の伝火薬などと組み合わせたものでもよい。
点火器は、着火部を含む点火器本体と、点火器本体を包囲して保持している金属製の点火器カラーを有しているものである。
【0007】
筒状ハウジングの第2端開口部は、金属からなる隔壁で閉塞されている。隔壁の金属は、筒状ハウジングと同じものでもよいし、異なるものでもよい。また、隔壁と筒状ハウジング(周壁部)を一体に形成してもよい。
第1端開口部と第2端開口部が閉塞された筒状ハウジングの内部空間が燃焼室となり、多孔筒状体が配置されている。
多孔筒状体は金属からなるものであり、前記金属は筒状ハウジングと同じものでもよいし、異なるものでもよい。
【0008】
多孔筒状体は、外径および内径が均一なものでもよいし、部分的に外径および内径が異なっているものでもよく、例えば、第1端部側から第2端部側に向けて外径が小さくなっているものを使用することもできる
多孔筒状体が有している孔の配置状態は特に制限されるものではなく、
第1端部側から第2端部側の間に同じ大きさの孔が均一配置されている(孔の形成密度が均一である)もの、
第1端部側から第2端部側の間で同じ大きさの孔が不均一に配置されているもの(孔の形成密度が不均一であるもの)、
第1端部側から第2端部側の間に異なる大きさの孔が配置されているものなどにすることができる。
【0009】
燃焼室は、多孔筒状体の内側空間の第1室と外側空間の第2室に分けられており、第1室と第2室の両方にガス発生剤が充填されている。
第1室と第2室の容積は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
第1室と第2室に充填するガス発生剤は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1室と第2室のガス発生剤として異なるものを使用するときは、組成、組成比、形状、寸法のいずれか一つ以上が異なっているものを使用することができる。
【0010】
ガス排出口は、第2室に面した隔壁に形成された貫通孔からなるものであり、前記ガス排出口は第1室には面していない。
ガス排出口は、防湿のためにシールテープで閉塞されていてもよい。
【0011】
ガス発生器の筒状ハウジング(燃焼室)内には、多数のガス発生剤が充填されている。そして、ガス発生剤同士の間に隙間が形成されるように、ガス発生剤が配置されている。
前記ガス発生剤は、錠剤形状、円柱形状、それらが凹部または貫通孔を有するものなどの所望形状に成形された成形体を使用する。
前記筒状ハウジング(燃焼室)は細長い形状であるため、一端開口部側の点火器を作動させてガス発生剤を着火燃焼させたとき、点火器に近い位置にあるガス発生剤から遠い位置にあるガス発生剤に向かって順次燃焼して行くことになる。
しかし、一端開口部側が燃焼して燃焼ガスが発生すると、その燃焼ガスの圧力によって未燃焼部分のガス発生剤は他端開口部側に圧縮される状態になってしまう圧縮現象が発生するおそれがある。
そのような圧縮現象が発生すると、ガス発生剤間の隙間が潰れて燃焼ガスがより流れ難くなり、ガス発生剤全体の燃焼性やガスの排出効率が低下することになる。
本発明のガス発生器は、燃焼室内に多孔筒状体が配置され、燃焼室が内側の第1室と外側の第2室に分けられており、第1室と第2室の間で燃焼ガスが出入りできるようになっている。
多孔筒状体の第1端部側にある点火器を作動させて第1室のガス発生剤を着火燃焼させたときには、前記の従来技術と同様に第1室のガス発生剤に前記の圧縮現象が生じて第2端部側への燃焼が進行し難い場合も考えられる。
しかし、第1室内のガス発生剤から発生した燃焼ガスが多孔筒状体の孔を通って第2室に流入して第2室内のガス発生剤を燃焼させ、第2室内のガス発生剤から発生した燃焼ガスが多孔筒状体の孔を通って第1室に流入して第1室内のガス発生剤の未燃焼部分を燃焼させるため、第1室および第2室のガス発生剤の燃焼は相互に促進される。
このため、前記したような圧縮現象が生じることもなく、細長い形状の燃焼室内に充填されたガス発生剤でも着火性、燃焼性、およびガスの排出性能が向上される。
なお、第1発明のガス発生器は、上記した燃焼室(第1室)内における多数のガス発生剤同士の圧縮現象が生じた場合であっても、ガス発生剤同士の間の隙間を含むガス流路が確保されるようにできるものである。このため、第1発明では、燃焼室内に一つまたは二つ程度の少ない数のガス発生剤を充填したタイプのガス発生器や、ガス発生剤の間に隙間が形成されていないガス発生器のように、上記したガス発生剤同士の圧縮現象が生じないようなものは含まれない。以下の各発明においても同様である。
【0012】
本発明(第2発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記隔壁側の前記第2室に面した前記筒状ハウジングに形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0013】
第2発明のガス発生器のガス排出口は、隔壁側の第2室に面した筒状ハウジングに形成された貫通孔である。
ここで隔壁側とは、筒状ハウジングの第1端開口部から第2端開口部を閉塞した隔壁の燃焼室側の面までの長さを1としたとき、前記隔壁の燃焼室側の面から0.3以下の長さ位置が好ましく、0.2以下の長さ位置であり、この範囲にガス排出口が形成されていることがより好ましい。
【0014】
本発明(第3発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されており、内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔と前記隔壁側の前記第2室に面した前記筒状ハウジングに形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0015】
第3発明のガス発生器のガス排出口は、第2室に面した隔壁と、前記隔壁側の第2室に面した筒状ハウジングの両方に形成されている。
ここで隔壁側とは、筒状ハウジングの第1端開口部から第2端開口部を閉塞した隔壁の燃焼室側の面までの長さを1としたとき、前記隔壁の燃焼室側の面から0.3以下の長さ位置が好ましく、0.2以下の長さ位置であり、この範囲にガス排出口が形成されていることがより好ましい。
【0016】
本発明(第4発明)は、筒状ハウジング内にガス源としてのガス発生剤が充填された燃焼室を有しており、前記ガス発生剤の燃焼により生じたガスを排出するガス排出口を有しているガス発生器であって、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側の第2端開口部が隔壁で閉塞されて形成された内部空間からなり、前記内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
さらに前記筒状ハウジングの前記隔壁で閉塞された第2端開口部側にはディフューザ部を有しており、
前記ガス排出口が、前記第2室に面した前記隔壁に形成された貫通孔からなる第1ガス排出口と、前記ディフューザ部に形成された第2ガス排出口からなるものであり、
前記燃焼室内で生じた燃焼ガスが、前記第1ガス排出口から前記ディフューザ部内に排出されたあと、前記第2ガス排出口から排出されるものである、ガス発生器を提供する。
【0017】
第4発明のガス発生器は、第1発明のガス発生器がさらにディフューザ部を有しているものであり、その他は第1発明と同じである。
ディフューザ部自体は公知のガス発生器と同様にカップ状のものを使用することができる。
ディフューザ部は、別部材が溶接などで接続されたものでもよいし、筒状ハウジングと一体に形成されたものでもよい。
第2発明のガス発生器は、隔壁に形成された第1ガス排出口と、ディフューザ部に形成された第2ガス排出口を有している。
カップ状のディフューザ部に形成された第2ガス排出口は、底面部に形成されていてもよいし、周壁部に形成されていてもよい。
第1ガス排出口と第2ガス排出口は、いずれか一方が防湿のためにシールテープで閉塞されていてもよい。
【0018】
本発明(第5発明)は、筒状ハウジングの第1端開口部から軸方向反対側の第2端開口部に向かって順に第1ガス排出口を有し、ガス発生剤が充填された燃焼室、第2ガス排出口を有するディフューザ室および加圧ガス室を有しているガス発生器であって、
前記ディフューザ室と前記加圧ガス室の間が閉塞部材で閉塞されており、
前記燃焼室と前記ディフューザ室の間には、作動時に前記第2端開口部側に移動して前記閉塞部材を破壊する、基板部と破壊部を有する破壊手段が配置されており、
前記燃焼室が、
前記筒状ハウジングの第1端開口部が点火器を含む点火手段で閉塞され、前記第1端開口部とは軸方向反対側が前記破壊手段の基板部で閉塞されて形成された内部空間からなり、前記内部空間には多孔筒状体が配置されているものであり、
前記点火器が、着火部を含む点火器本体と、前記点火器本体を包囲して保持している点火器カラーを有しているものであり、
前記多孔筒状体が、第1端部側が前記点火器の着火部を取り囲むように配置され、軸方向反対側の第2端部側が前記隔壁側に位置しており、
前記多孔筒状体の内側空間が前記ガス発生剤の一部が充填された第1室となり、前記多孔筒状体の外側空間が前記ガス発生剤の残部が充填された第2室となるものであり、
前記第1ガス排出口が、前記燃焼室から前記ディフューザ室に燃焼ガスを移動させるための開口で、前記基板部の前記第2室に面した部分に形成された貫通孔であり、
前記第2ガス排出口が、前記筒状ハウジングの外に燃焼ガスと加圧ガスを排出させるための開口で、前記ディフューザ室を形成する前記筒状ハウジングの周壁部に形成された貫通孔である、ガス発生器を提供する。
【0019】
第5発明は、ガス源としてガス発生剤と加圧ガス(アルゴン、ヘリウムなど)を併用しているものである。
このため、ガス発生剤が充填された燃焼室と加圧ガスが高圧充填された加圧ガス室を有しており、さらに燃焼室と加圧ガス室の間にディフューザ室を有している。
このように燃焼室、ディフューザ室および加圧ガス室が順に配置された構造のガス発生器自体は公知であるが、第5発明のガス発生器は、燃焼室として第1発明の燃焼室と同じ構造のものを使用していることが特徴である。
【0020】
第5発明では、第1発明および第4発明の隔壁に相当するものとして、ディフューザ室と加圧ガス室の間を閉塞している閉塞部材の破壊手段を使用している。
第1ガス排出口は、破壊手段の基板部に厚さ方向に形成された貫通孔である。
第2ガス排出口は、ディフューザ室を形成する筒状ハウジングの周壁部に形成された貫通孔である。
【0021】
作動時には、燃焼室内において第1発明と同様の動作がなされ、燃焼室内の燃焼ガスは第1ガス排出口からディフューザ室内に排出される。
さらに燃焼室内の圧力上昇を受けて、破壊手段が軸方向に摺動して閉塞部材が破壊されると、加圧ガス室からディフューザ室へのガス排出経路が開放される。
このため、燃焼室内の燃焼ガスと加圧ガス室内の加圧ガスは、ディフューザ室に入ったあと、第2ガス排出口からガス発生器の外に排出される。
【0022】
第1発明から第5発明のガス発生器は、多孔筒状体に形成されている多孔の開口面積が、前記第1端部側から前記第2端部側に向けて大きくなっているものを使用できる。
【0023】
多孔の開口面積を第1端部側から第2端部側に向かって大きくする方法としては、
第1端部側から第2端部側に向かって、孔の形成密度を連続的にまたは段階的に大きくして行く方法、
第1端部側から第2端部側の間に向かって、孔の大きさを連続的にまたは段階的に大きくして行く方法などを適用することができる。
段階的に大きくして行く方法の場合は、例えば、多孔筒状体を長さ方向に複数のゾーンに分けて、ゾーンごとに変えて行く方法を適用することができる。
【0024】
第1発明から第5発明のガス発生器は、前記燃焼室の第1室の容積(V1)と第2室の容積(V2)が、V2>V1の関係を有しているものであることが好ましい。
【0025】
ガス排出口(第1ガス排出口)は、第2室に面しているため、V2>V1を満たす方が、燃焼ガスが流れやすくなり、ガス発生剤の燃焼がより促進されるので好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のガス発生器は、細長い形状の燃焼室に充填されたガス発生剤の着火性および燃焼性が向上されており、燃焼ガスも燃焼室から排出されやすくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1発明のガス発生器の長軸方向断面図。
図2】第2発明のガス発生器の長軸方向断面図。
図3】第3発明のガス発生器の長軸方向断面図。
図4】第4発明のガス発生器の長軸方向断面図。
図5】第5発明のガス発生器の長軸方向断面図。
図6図5とは別実施形態である第5発明のガス発生器の長軸方向の部分断面図。
図7図5とはさらに別実施形態である第5発明のガス発生器の長軸方向の部分断面図。
図8図5とはさらに別実施形態である第5発明のガス発生器の長軸方向の部分断面図(作動前)。
図9図8のガス発生器の作動後の状態を示す長軸方向の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(1)図1のガス発生器
ガス発生器1は、鉄またはステンレスなどの金属からなる筒状ハウジング10を使用している。
筒状ハウジング10の第1端開口部10aは、点火器11で閉塞されている。
点火器11は、着火部12を含む点火器本体と、点火器本体を包囲して保持している点火器カラー13を有している。
着火部12の周囲には、樹脂、ゴム、金網などからなる環状のクッション材14が配置されている。
筒状ハウジング10の第1端開口部10aとは軸方向反対側の第2端開口部10bは隔壁15で閉塞されている。
【0029】
筒状ハウジング10の内部空間は燃焼室20であり、燃焼室20内には多孔筒状体21が配置されている。
多孔筒状体21は、第1端部21a側が点火器11の点火器カラー13に当接され、かつ点火器11の着火部12を取り囲むように配置されている。なお、図1では多孔筒状体21は、点火器カラー13に当接しているが、点火器カラー13に当接していなくてもよい。
多孔筒状体21は、第1端部21aとは軸方向反対側の第2端部21bが隔壁15側に位置している。
第2端部21bは、隔壁15の燃焼室20側の面15aに当接されていてもよいし、僅かな隙間をおいて対向されていてもよい。前記の僅かな隙間とは、多孔筒状体21が有している孔(孔径が異なっているときは最小径の孔)の径以下の隙間である。
多孔筒状体21の第2端部21bは、隔壁15の面15a(但し、ガス排出口16が形成されていない面)に形成された環状溝または円形凹部に嵌め込まれていてもよい。
【0030】
燃焼室20内に配置された多孔筒状体21の内側空間は、ガス発生剤の一部(第1ガス発生剤25)が充填された第1室22となり、多孔筒状体21の外側空間はガス発生剤の残部(第2ガス発生剤26)が充填された第2室23となっている。
第1ガス発生剤25と第2ガス発生剤26は、同じものであってもよいし、組成(燃料、酸化剤などの組み合わせ)、組成比(燃料、酸化剤などの割合)、形状、寸法の何れか一つ以上が異なっているものでもよい。
第1ガス発生剤25と第2ガス発生剤26は、図1では錠剤形状であるが、円柱形状などの他の形状でもよく、さらに凹部や貫通孔を有していてもよい。
【0031】
多孔筒状体21は、外径および内径が均一なものを使用しているが、これに代えて、第1端部21aから第2端部21bに向けて外径および内径が小さくなっているものを使用することもできる。
多孔筒状体21として、第1端部21aから第2端部21bに向けて外径および内径が小さくなっているもの使用すると、点火器11の作動初期における着火性および燃焼性が向上されるので好ましい。
【0032】
多孔筒状体21は、周壁部に多数の貫通孔(ガス通過孔)27を有している。図1では、ガス通過孔27は、同じ大きさのものが均一に分散配置された状態が示されている。
ガス通過孔27は、第1端部21aから第2端部21bに向けて開口面積が大きくなるようにすることができる。
第1端部21aから第2端部21bに向けてガス通過孔27の開口面積が大きくなるようにすることで、点火器11から遠い位置にあるガス発生剤(第1ガス発生剤25と第2ガス発生剤26)の着火性と燃焼性が向上されるので好ましい。
前記開口面積の増減は、ガス通過孔27の大きさや形成密度を調整することで実施できる。
【0033】
燃焼室20の第1室22の容積(V1)と第2室23の容積(V2)は、V2>V1の関係を有していることが好ましく、V2/V1=1.1〜1.5の範囲であることがより好ましい。
V2>V1およびV2/V1=1.1〜1.5を有していると、ガス発生剤(第1ガス発生剤25と第2ガス発生剤26)の着火性と燃焼性が向上されるので好ましい。
【0034】
ガス排出口16は、隔壁15に形成された貫通孔であり、第2室23に面した部分のみに形成されている。
ガス排出口16は、4〜8個の貫通孔が環状に配置されている。
ガス排出口16には、内側または外側から金属製のシールテープで閉塞されていてもよい。
【0035】
次に図1に示すガス発生器1の動作を説明する。
点火器11が作動すると、着火部12が面している第1室22内の第1ガス発生剤25が着火燃焼して燃焼ガスを発生させる。
第1室22内にて発生した燃焼ガスは、多孔筒状体21の第1端部21aから第2端部21bに向かって第1ガス発生剤25の燃焼を進行させるが、同時に多孔筒状体21のガス通過孔27から第2室23内にも流入して、第2ガス発生剤26を着火燃焼させる。
【0036】
このとき隔壁15側に近い領域にある未燃焼の第1ガス発生剤25は、着火部12の軸Xの延長線上にあり、着火部12からの圧力などをうけて、隔壁15側に圧縮された状態にある。
第1ガス発生剤25と第2ガス発生剤26は、ガス発生器1のガス発生量(ガス発生能力)に応じて充填量(充填数)が調整されるものであるが、例えば、それぞれ数十個〜数百個程度のガス発生剤が充填されているため、ガス発生剤同士の間に隙間が形成され、第1室22内の第1ガス発生剤25の間で上記した圧縮現象が生じる。
したがって、第1ガス発生剤25同士の隙間が狭くなっており、第1室22内では軸Xに沿って隔壁15側にガスが流れにくくなっている。
本発明のガス発生器は、第1室22で発生した燃焼ガスの一部はガス通過孔27から第2室23に流れ、第2ガス発生剤26を着火燃焼させるが、その際、第2ガス発生剤には着火時の衝撃による圧縮現象が発生しないため、第2室23に面したガス排出口16から速やかに排出され、ガス流路の閉塞が起こり難くなっている。
第2室23内の燃焼ガスは、多孔筒状体21のガス通過孔27から第1室22内に流入して、未燃焼の第1ガス発生剤25の燃焼を促進させ、それと並行して第1室22内の燃焼ガスが多孔筒状体21のガス通過孔27から第2室23内に流入してガス排出口16から排出される。
このように上記したガス発生剤の圧縮現象が隔壁15側に近い領域で発生しても、第1ガス発生剤25および第2ガス発生剤26の両方とも燃焼が促進される結果、燃焼ガスが流れやすくなり、ガス排出口16に至るまでの燃焼経路が確保できる。
【0037】
(2)図2のガス発生器
図2のガス発生器1Aは、ガス排出口16aの位置が異なるほかは、図1のガス発生器1と同じものである。
ガス排出口16aは、隔壁15側の第2室23に面した筒状ハウジング10に形成された貫通孔からなるものである。
ガス排出口16aは、筒状ハウジング10の第1端開口部10aから第2端開口部10bを閉塞した隔壁15の燃焼室20側の面15aまでの長さを1としたとき、隔壁の燃焼室側の面15aから0.2以下の長さ位置に形成されている。図2のガス発生器の作動機構は、図1と同じである。
【0038】
(3)図3のガス発生器
図3のガス発生器1Bは、ガス排出口16とガス排出口16aを有しているほかは、図1のガス発生器1と同じものである。
ガス排出口16は、図1のガス発生器1と同じものである。
ガス排出口16aは、図2のガス発生器1Aと同じものである。作動機構も図1のガス発生器と同じである。
【0039】
(4)図4のガス発生器
図4のガス発生器1Cは、ディフューザ部30を有しているほかは、図1のガス発生器1と同じものである。
ディフューザ部30は、底面部31、周壁部32および開口部33を有するカップ形状のものであり、開口部33と周壁部32の間は、底面部31側に内径が小さくなった傾斜面34を有している。
図4に示すディフューザ部30は、周壁部32に複数の第2ガス排出口36を有しているが、底面部31に有していてもよいし、底面部31と周壁部32の両方に有していてもよい。
ディフューザ部30は、開口部33側において筒状ハウジング10の第2端開口部10bと溶接されている(溶接部39)。
【0040】
図4のガス発生器1Bは、隔壁15の貫通孔が第1ガス排出口16となっており、燃焼室20内で生じた燃焼ガスは、第1ガス排出口16からディフューザ部20内に排出されたあと、第2ガス排出口36からガス発生器1Cの外部に排出される。点火器11の着火から、燃焼ガスが第1ガス排出口16より排出される機構は、図1のガス発生器と同じである。
【0041】
(5)図5のガス発生器
図5のガス発生器100は、燃焼室ハウジング102と加圧ガス室ハウジング103が溶接一体化された筒状ハウジング101を使用している。
筒状ハウジング101(燃焼室ハウジング102)の第1端開口部102aから軸方向反対側の筒状ハウジング101(加圧ガス室ハウジング103)の第2端開口部側の閉塞面105に向かって順に燃焼室110、ディフューザ室140および加圧ガス室150を有している。
ディフューザ室140と加圧ガス室150の間は、金属製の閉塞部材151で閉塞されている。
【0042】
筒状ハウジング101(燃焼室ハウジング102)の第1端開口部102aは、点火器111で閉塞されている。
点火器111は、着火部112を含む点火器本体と、点火器本体を包囲して保持している金属製の点火器カラー113を有している。
燃焼室ハウジング102の点火器111と軸方向反対側は、閉塞部材151を破壊するための破壊手段130で閉塞されている。
【0043】
燃焼室ハウジング102内の点火器111と破壊手段130で挟まれた内部空間は燃焼室110であり、燃焼室110内には多孔筒状体120が配置されている。
多孔筒状体120は、第1端部120a側が点火器111の点火器カラー113に当接され、かつ点火器111の着火部112を取り囲むように配置されている。なお、図5では多孔筒状体120は点火器カラー113に当接しているが、点火器カラー113に当接していなくてもよい。
多孔筒状体120は、第1端部120aとは軸方向反対側の第2端部120bが破壊手段130側に位置している。
第2端部120bは、破壊手段130の基板部132の燃焼室110側の面132aに当接されていてもよいし、僅かな隙間をおいて対向されていてもよい。前記の僅かな隙間とは、多孔筒状体120が有しているガス通過孔127(孔径が異なっているときは最小径の孔)の径以下の隙間である。
【0044】
燃焼室110内に配置された多孔筒状体120の内側空間は、ガス発生剤の一部(第1ガス発生剤125)が充填された第1室122となり、多孔筒状体120の外側空間はガス発生剤の残部(第2ガス発生剤126)が充填された第2室123となっている。
第1ガス発生剤125と第2ガス発生剤126は、同じものであってもよいし、組成(燃料、酸化剤などの組み合わせ)、組成比(燃料、酸化剤などの割合)、形状、寸法の何れか一つ以上が異なっているものでもよい。
第1ガス発生剤125と第2ガス発生剤126は、図5では錠剤形状であるが、円柱形状などの他の形状でもよく、さらに凹部や貫通孔を有していてもよい。
【0045】
多孔筒状体120は、外径および内径が均一なものを使用しているが、これに代えて、第1端部120aから第2端部120bに向けて外径および内径が小さくなっているものを使用することもできる。
多孔筒状体120として、第1端部120aから第2端部120bに向けて外径および内径が小さくなっているもの使用すると、点火器111の作動初期における着火性、燃焼性および燃焼ガスの排出効率が向上できるので好ましい。
【0046】
多孔筒状体120は、周壁部に多数の貫通孔(ガス通過孔)127を有している。図5では、ガス通過孔127は、同じ大きさのものが均一に分散配置された状態が示されている。
ガス通過孔127は、第1端部120aから第2端部120bに向けて開口面積が大きくなるようにすることができる。
第1端部120aから第2端部120bに向けてガス通過孔127の開口面積が大きくなるようにすることで、点火器111から遠い位置にあるガス発生剤(第1ガス発生剤125と第2ガス発生剤126)の着火性と燃焼性が向上されるので好ましい。
前記開口面積の増減は、ガス通過孔127の大きさや形成密度を調整することで実施できる。
【0047】
燃焼室110の第1室122の容積(V1)と第2室123の容積(V2)は、V2>V1の関係を有していることが好ましく、V2/V1=1.1〜1.5の範囲であることがより好ましい。
V2>V1およびV2/V1=1.1〜1.5を有していると、ガス発生剤(第1ガス発生剤125と第2ガス発生剤126)の着火性、燃焼性および燃焼ガスの排出効率が向上されるので好ましい。
【0048】
ディフューザ室140には、閉塞部材151を破壊するための破壊手段130が配置されている。
破壊手段130は、厚さ方向に複数の貫通孔(第1ガス排出口)131を有する基板部132と、基板部132の中心部から垂設された破壊部133を有している。破壊部133の先端部134は、閉塞部材151の湾曲形状に対応した形状になっている。
破壊手段130の基板部132の周面は、燃焼室ハウジング102の内壁面に当接されている。
基板部132は、燃焼室ハウジング102の内壁面に軸方向に間隔をおいて形成された低い凸部によって、軸X方向両側から挟み付けられることで作動前の摺動が防止されている。
【0049】
基板部132の破壊部133を除いた面には、厚さ方向への複数の貫通孔(第1ガス排出口131)が形成されている。
第1ガス排出口131は、4〜8個の貫通孔が環状配置されており、第2室123に面している。
【0050】
ディフューザ室140に面した燃焼室ハウジング102には、複数の第2ガス排出口136が周方向に均等配置されている。
ディフューザ室140に面した燃焼室ハウジング102には、作動時において、破壊手段130(基板部132)の軸X方向への摺動を停止させるための停止手段137が形成されている。
停止手段137は、複数の独立した凸部が周方向に均等間隔で形成されているものである。
【0051】
加圧ガス室150内には、アルゴン、ヘリウムなどのガスが高圧で充填されている。前記ガスは閉塞面105のガス注入孔から充填された後、前記注入孔は、差し込んだピン106と閉塞面105を共に溶接することで閉塞されている。
【0052】
図5のガス発生器100の動作を説明する。
点火器111が作動すると、着火部112が面している第1室122内の第1ガス発生剤125が着火燃焼して燃焼ガスを発生させる。
第1室122内にて発生した燃焼ガスは、多孔筒状体120の第1端部120aから第2端部120bに向かって第1ガス発生剤125の燃焼を進行させるが、同時に多孔筒状体120のガス通過孔127から第2室123内にも流入して、第2ガス発生剤126を着火燃焼させる。
【0053】
このとき基板部132側に近い領域にある未燃焼の第1ガス発生剤125は、着火部112の軸Xの延長線上にあり、着火部112からの圧力などをうけて、基板部132側に圧縮された状態にある。
第1ガス発生剤125と第2ガス発生剤126は、ガス発生器100のガス発生量(ガス発生能力)に応じて充填量(充填数)が調整されるものであるが、例えば、それぞれ数十個〜数百個程度のガス発生剤が充填されているため、ガス発生剤同士の間に隙間が形成され、第1室122内の第1ガス発生剤125の間で上記した圧縮現象が生じる。
したがって、第1ガス発生剤125同士の隙間が狭くなっており、第1室122内では軸Xに沿って基板部132側にガスが流れにくくなっている。
本発明のガス発生器は、第1室122で発生した燃焼ガスの一部はガス通過孔127から第2室123に流れ、第2ガス発生剤126を着火燃焼させるが、その際、第2ガス発生剤126には着火時の衝撃による圧縮現象は発生しないため、第2室123に面した第1ガス排出口131から速やかに排出され、ガス流路の閉塞が起こり難くなっている。
第2室123内の燃焼ガスは、多孔筒状体120のガス通過孔127から第1室122内に流入して未燃焼の第1ガス発生剤125の燃焼を促進させ、それと並行して第1室122内の燃焼ガスが多孔筒状体120のガス通過孔127から第2室123内に流入して第1ガス排出口131から排出される。
このようにして第1ガス発生剤125および第2ガス発生剤126の両方とも燃焼が促進される結果、上記したようなガス発生剤の圧縮現象が発生する領域が限定されており、燃焼ガスが流れやすくなる。
このように上記したガス発生剤の圧縮現象が基板部132側に近い領域で発生しても、第1ガス発生剤125および第2ガス発生剤126の両方とも燃焼が促進される結果、燃焼ガスが流れやすくなり、第2ガス排出口136に至るまでの燃焼経路が確保できる。
【0054】
上記のとおり、燃焼室110内で第1ガス発生剤125および第2ガス発生剤126から燃焼ガスが発生して燃焼室110内の圧力が上昇すると、破壊手段130の基板部132が押されて破壊手段130が加圧ガス室150方向に摺動する。
破壊手段130は、基板部132が距離Lだけ摺動した後、停止手段137に衝突することで停止される。
このように破壊手段130が摺動したとき、ディフューザ室140と加圧ガス室150の間を閉塞している閉塞部材151が破壊されて、加圧ガス室150からディフューザ室140へのガス排出経路が開放され、加圧ガス室150内の加圧ガスはディフューザ室140内に流入する。
【0055】
また燃焼室110内で第1ガス発生剤125および第2ガス発生剤126が燃焼して発生した燃焼ガスは、基板部132に形成された第1ガス排出口131からディフューザ室140内に流入する。
ディフューザ室140内に流入した燃焼ガスと加圧ガスは、第2ガス排出口136からガス発生器100の外に排出される。
なお、破壊手段130が距離Lだけ摺動したとき、多孔筒状体120の第2端部120bと破壊手段の基板部132の間に距離Lの隙間が形成された場合でも、第1ガス発生剤125および第2ガス発生剤126の燃焼性と燃焼ガスの第1ガス排出口131からの排出には影響しない。
【0056】
(6)図6および図7のガス発生器
図6のガス発生器100Aと図7のガス発生器100Bは、多孔筒状体120の第2端部120b側が破壊手段130(基板部132)に対して嵌め込まれていることにおいて、図5のガス発生器100と異なっている。
【0057】
図6のガス発生器100Aは、基板部132の燃焼室110側の面132aが環状溝138aを有しており、環状溝138aに多孔筒状体120の第2端部120bが嵌め込まれている。
作動時、破壊手段130(基板部132)が距離Lだけ摺動したとき、多孔筒状体120も基板部132と共に摺動する。
このとき、多孔筒状体120の第1端部120aと点火器の着火部112の間には隙間が生じる。しかし、着火部112に近接している第1ガス発生剤125および第2ガス発生剤126はいずれも燃焼した後であり、前記隙間から一部の燃焼ガスが第1室122と第2室123の間で移動した場合であっても、作動自体には影響しない。
【0058】
図7のガス発生器100Bは、基板部132の燃焼室110側の面132aが、平面形状が円形の凹部138bを有しており、凹部138bに多孔筒状体120の第2端部120bが嵌め込まれている。
作動時、破壊手段130(基板部132)が距離Lだけ摺動したとき、多孔筒状体120も基板部132と共に摺動する。
このとき、多孔筒状体120の第1端部120aと点火器の着火部112の間には隙間が生じる。しかし、着火部112に近接している第1ガス発生剤125および第2ガス発生剤126はいずれも燃焼した後であり、前記隙間から一部の燃焼ガスが第1室122と第2室123の間で移動した場合であっても、作動自体には影響しない。
【0059】
(7)図8図9のガス発生器
図8図9のガス発生器100Cは、多孔筒状体120の第1端部120a側と点火器111の取り付け関係が異なることと、多孔筒状体120の第2端部120b側が破壊手段130(基板部132)に対して嵌め込まれていることにおいて、図5のガス発生器100と異なっている。
【0060】
多孔筒状体120は、第1端部120側の外径が大きくされた拡径部120cを有している。
点火器111は、図5のものと比べると、点火器カラー113の一部の外径が小さくされている。
図8に示すとおり、多孔筒状体120の第1端部120a側の拡径部120cが点火器カラー113の一部に嵌め込まれている。
図8に示すとおり、多孔筒状体120の第2端部120b側は、図7と同様に凹部138bに嵌め込まれている。
【0061】
作動時、破壊手段130(基板部132)が距離L1だけ摺動したとき、多孔筒状体120も基板部132と共に摺動する。
このとき、図9に示すとおり、点火器カラー113からの着火部112の突出長さがL2である。
本実施形態では、突出長さL2>距離L1になるように調整されている。このため、破壊手段130(基板部132)と多孔筒状体120が距離L1だけ摺動した場合でも、多孔筒状体120の第1端部120aは着火部112を包囲している。
このため、第1室122と第2室123は分離されており、第1室122と第2室123の間の燃焼ガスの出入りは、ガス通過孔127のみを介して実施される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のガス発生器は、自動車に搭載するエアバッグ装置用のガス発生器などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A、1B、1C ガス発生器
10 筒状ハウジング
11 点火器
12 着火部
13 点火器カラー
15 隔壁
16、16a ガス排出口
20 燃焼室
21 多孔筒状体
22 第1室
23 第2室
25 第1ガス発生剤
26 第2ガス発生剤
27 ガス通過孔
30 ディフューザ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9