特許第6543596号(P6543596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6543596-エレベーター 図000002
  • 特許6543596-エレベーター 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543596
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】エレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20190628BHJP
   B66B 1/50 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B1/50 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-133861(P2016-133861)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-2437(P2018-2437A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】兪 明敏
(72)【発明者】
【氏名】中川 公人
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸一
(72)【発明者】
【氏名】永沼 一斗
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−036340(JP,A)
【文献】 特開2016−008092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
B66B 1/00−1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごと、前記かご内に設けられた運転盤と、昇降路内に設けられた停止スイッチと、前記かごの昇降距離を測定するためのエンコーダと、乗り場に設けられ前記かごを呼び寄せるために入力される乗り場釦とを備えたエレベーターにおいて、
規定距離が記憶される規定距離記憶部と、
前記運転盤の操作により保守運転モードに設定され前記乗り場釦が特殊操作された場合、前記規定距離記憶部に記憶された規定距離前記かごを昇降させる規定距離走行部と、
前記エンコーダからの出力により前記かごが前記乗り場から昇降した距離を演算する昇降距離演算部と、
前記乗り場釦の操作によって任意の位置に前記かごを昇降させるかご位置調整部とを備え、
前記規定距離記憶部は、前記かごが前記規定距離走行部によって昇降した前記規定距離に加え前記かご位置調整部によって任意の位置まで昇降した後の昇降距離を、前記停止スイッチが押されたときに新たな規定距離として記憶することを特徴とするエレベーター。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
前記停止スイッチは昇降路内のかご上に設けられることを特徴とするエレベーター。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーターにおいて、
前記停止スイッチは昇降路内のかご上とピット両方に設けられることを特徴とするエレベーター。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベーターにおいて、
前記エンコーダはガバナの軸に取り付けられたエンコーダであることを特徴とするエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの保守点検には、技術作業員がピット部に侵入して行われる作業とかご上に乗り込んで行われる作業がある。このような保守点検にて行われるかごの位置をピット部進入位置又はかご上搭乗位置に合わせる作業は、従来より技術作業員と共同で保守点検を行う共同作業者を含む少なくとも二人以上で行われ、例えば乗場で待機する技術作業員が乗場ドアのガラス窓や乗場ドアの隙間からかごの停止位置を確認し、かご内に乗車した共同作業者にかごの走行指示を行うことにより、かごをピット部進入位置又はかご上搭乗位置に停止させるようにしていた。そのため、かごを適切な位置に停止させるまで非常に手間がかかっていた。
【0003】
そこで、通常運転時のモードである通常運転モードと、保守点検を行うためのモードである保守点検モードのいずれかの動作モードで動作し、この動作モードの切り替えをかご内操作盤に設けられたコマンド入力ボタン、行き先階ボタン、扉を開くボタン、及び扉を閉じるボタンを組み合わせて入力することで行うエレベーター装置が提案されている。このエレベーター装置は、保守点検モードで動作する際に、乗り場操作盤に設けられた上ボタン又は下ボタンを操作することにより、かごをピット部進入位置又はかご上搭乗位置に自動で一定距離昇降させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-335524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オーダー型エレベーターと例えばかご高さが一律でないエレベーターにおいては、予め決められた距離を昇降させてもかごによっては乗り込みに適切な位置で停止しない場合がある。
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、あらゆるかご高さのエレベーターに対応し、かごを作業に適した位置に的確かつ自動的に昇降させることができるエレベーター保守運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ごと、前記かご内に設けられた運転盤と、昇降路内に設けられた停止スイッチと、前記かごの昇降距離を測定するためのエンコーダと、乗り場に設けられ前記かごを呼び寄せるために入力される乗り場釦とを備えたエレベーターにおいて、規定距離が記憶される規定距離記憶部と、前記運転盤の操作により保守運転モードに設定され前記乗り場釦が特殊操作された場合、前記規定距離記憶部に記憶された規定距離前記かごを昇降させる規定距離走行部と、前記エンコーダからの出力により前記かごが前記乗り場から昇降した距離を演算する昇降距離演算部と、前記乗り場釦の操作によって任意の位置に前記かごを昇降させるかご位置調整部とを備え、前記規定距離記憶部は、前記かごが前記規定距離走行部によって昇降した前記規定距離に加え前記かご位置調整部によって任意の位置まで昇降した後の昇降距離を、前記停止スイッチが押されたときに新たな規定距離として記憶することを特徴とするエレベーター。
【発明の効果】
【0007】
あらゆるかご高さのエレベーターに対応して自動でかごを適した位置に昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るエレベーターの全体構成を示す図である。
図2】乗り場保守運転モードの処理動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1はエレベーターの全体構成を示す図である。本発明に係る乗り場保守運転の実施形態は、例えば図1に示すように建物の昇降路8内に設けられたエレベーターに適用される。このエレベーターは、昇降路8内を昇降するかご6と、このかご6に対して相対的に昇降する釣合い錘9と、かご6を昇降させる巻上機4と、巻上機4に取り付けられかご6の昇降距離を計測するエンコーダ5と、巻上機を介してかご6と釣り合い錘を吊り下げる主ロープ10と、巻上機を含む昇降路1内の機器の動作を制御する制御盤3とを有している。なお、かご6の昇降距離計測はガバナに取り付けられたエンコーダでも可とする。なお、図では制御盤3や巻上機4を昇降路下部に置く構造としているが、昇降路上部に置く構造としてもよい。
【0010】
エレベーターは、かご6内に設けられた運転盤7と、昇降路8内のかご上とピット部に設けられ、制御装置3及びかご2の運転を停止させる停止スイッチ2とを備えている。運転盤7は、図示されないが、かごドアを開く開釦と、かごドアを閉じる閉釦と、かご6の行先として目的階を登録するかご呼び釦と、後述の保守運転モードの入力を行う保守スイッチとを含んでいる。
【0011】
この保守スイッチは、運転盤7の下部に配置され、作業員以外の人に操作されないようカバーで覆われたボックス内に格納されている。また、エレベーターは乗り場に設けられ、かご6を呼び寄せるために入力される乗り場釦1を有している。
【0012】
本実施形態では、エレベーターの動作モードとして、各階の乗場へ通常の速度で走行させる通常モード、かご6を通常よりも低速で走行させる前述の保守運転モード、かご6上でかご6を通常よりも低速で走行させるかご上保守運転モード、ピット部でかご6を通常よりも低速で走行させるピット保守運転モードがある。
【0013】
制御盤3は、例えば図1の昇降路8の底部すなわちピット部に設けられ、図示されないが記憶された規定距離昇降させる規定距離走行部と、乗り場釦1の操作によって任意の位置に昇降させるかご位置調整部と、かご6が乗り場から昇降した距離を計測する昇降距演算部と、かご6が乗り場から昇降した距離を規定距離として記憶する規定距離記憶部とを有している。
【0014】
規定距離走行部は、かご6内の運転盤7によって保守運転モードが設定され、乗り場釦が特殊操作されたとき、ドア閉信号を受け乗り場に停止していたかご6のドアが閉まり、自動で予め記憶されている規定距離走行させるようにしている。
【0015】
かご位置調整部は、前述の規定距離走行後も技術作業者がかご6を任意の位置に昇降させたい場合、乗り場釦1の操作によりかご6位置を微調整できるようにしている。
【0016】
昇降距離演算部は、この巻上機4の回転数に応じたパルスを出力させるエンコーダ5と、このエンコーダ5のかご6の乗場からの昇降距離を演算する。
【0017】
規定距離記憶部は、前述の規定距離走行に加え、技術作業者がかご6を微調整した後の昇降距離を昇降路8内の停止スイッチ2が押されたタイミングで記憶する。これにより次回から自動で記憶された距離昇降するようにしている。この規定距離記憶部は単なる記憶媒体ではなく、記憶媒体と当該記憶媒体に記録させる処理機能を有している。
【0018】
次にかご上保守点検モードでの動作処理を図2のフローチャートを用いて説明する。本実施形態では、エレベーターのかご6を中間階または最上階に停止させ、運転盤7のボックス内に格納されている保守スイッチが投入され(S1)、保守運転モードに設定することで(S2)、技術作業員以外はエレベーターを操作できない状態にする。
【0019】
次に、技術作業員によって乗り場釦が特殊操作され(S3)、乗り場釦1を点滅させることによって乗り場保守運転モードの設定が完了した(S4)ことを知らせる。そして、乗り場下釦が一定時間以上押されると(S5)、ドア閉じ信号によりエレベーターの扉が閉まり(S6)、制御盤3の規定距離走行部に信号が入力される。これにより、信号を受信した規定距離走行部は規定距離記憶部に記憶された距離かごを降させ、かごを停止する(S7)。また、規定距離走行部から出力された信号が前述の昇降距離演算部に入力され、エレベーターの走行開始からエンコーダ5の出力信号に基づいて昇降距離を演算する。規定距離走行部の信号により、自動走行して停止した位置がかご上乗り込みに適さなかった場合は(S8)、技術作業員による乗り場釦1の操作によりかご位置調整部に信号が入力され、かご位置を微調整して適切な位置へ昇降させる(S9)。技術作業員によって乗り場側の扉が開かれ、かご上停止スイッチ2が押されたタイミングで(S10)規定距離記憶部に信号が入力され、最終的な昇降距離が規定距離記憶部に記憶される(S11)。これにより次回から自動的にS11で記憶された距離昇降させることが可能となる。なお、規定距離記憶部には昇降距離ではなく、昇降路内のかご位置を記憶して、指定された位置で停止する様にしてもよい。
【0020】
以上をもって、かご上保守点検モードの動作処理が終了する。なお、上述した本実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1乗り場釦
2昇降路内停止スイッチ
3制御盤
4巻上機
5エンコーダ
6かご
7運転盤
8昇降路
9釣り合い錘
10主ロープ
図1
図2