特許第6543607号(P6543607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 37度株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6543607-水素発生剤並びに水素発生剤構造体 図000002
  • 特許6543607-水素発生剤並びに水素発生剤構造体 図000003
  • 特許6543607-水素発生剤並びに水素発生剤構造体 図000004
  • 特許6543607-水素発生剤並びに水素発生剤構造体 図000005
  • 特許6543607-水素発生剤並びに水素発生剤構造体 図000006
  • 特許6543607-水素発生剤並びに水素発生剤構造体 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543607
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】水素発生剤並びに水素発生剤構造体
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/06 20060101AFI20190628BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20190628BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20190628BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20190628BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C01B3/06
   A61K8/25
   A61Q19/02
   A23L2/00 V
   A23L2/00 F
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-234725(P2016-234725)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-90442(P2018-90442A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2017年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】515052718
【氏名又は名称】37度株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】野村 謙太郎
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−187595(JP,A)
【文献】 特開2009−120579(JP,A)
【文献】 特開2008−189490(JP,A)
【文献】 特開2011−026211(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/096857(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/06
A23L 2/00
A23L 2/52
A61K 8/25
A61Q 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定液体と反応することで水素を発生する水素発生パウダーと、
前記水素発生パウダーを入れた破断容易な第一膜からなる水素発生剤カプセルと、
水素発生パウダーと反応しない液体である非反応液体と水素発生剤カプセルとを入れた破断容易な第二膜からなるマクロカプセルと、
からなる水素発生剤。
【請求項2】
前記第二膜は所定液体を不透過である海藻成分から構成される請求項1に記載の水素発生剤。
【請求項3】
前記第一膜はシリコンポリマーであり、前記非反応液体はシリコンオイルである請求項1又は2に記載の水素発生剤。
【請求項4】
水素発生パウダーはシリカハイドライドパウダーである請求項1から3のいずれか一に記載の水素発生剤。
【請求項5】
前記第二膜の内面には凹凸構造が備えられている請求項1から4のいずれか一に記載の水素発生剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の水素発生剤と、前記所定液体とを満たした水素発生剤構造体。
【請求項7】
満たされた水素発生剤と前記所定液体とを同時に外部吐出させるためのパイプを有する請求項6に記載の水素発生剤構造体。
【請求項8】
前記パイプには、このパイプに流れる水素発生剤の第一膜と第二膜とを破断する破断手段が設けられている請求項7に記載の水素発生剤構造体。
【請求項9】
前記パイプに満たされている水素発生剤と前記所定液体とを同時に送り込むためのポンピング機能を有するポンピング手段を備えた請求項7又は8に記載の水素発生剤構造体。
【請求項10】
前記所定液体は水を含む化粧料である請求項6から9のいずれか一に記載の水素発生剤構造体。
【請求項11】
前記所定液体は水を含む飲食料である請求項6から9のいずれか一に記載の水素発生構造体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素発生剤並びに水素発生剤構造体に関し、特に、美容用途、飲食用途などに利用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素の還元作用に世間の注目が集まり、水素水などが小売店で見かけるようになった。水素を体内に取り込むことで血中の活性酸素を中和したり、胃腸内の細菌叢に働きかけて健康になる、などの効果がうたわれている。
【0003】
また化粧、美容の分野では還元効果によってシミやそばかすを薄くしたり、除去できることが期待されている。そこで、皮膚などの対象物に直接水素を接触させるために、水と反応して水素を発生する物質を含有させた紙や布が提案されている(特許文献1)。しかしながら、空気との接触面積が広いために保管中に空気中の水分と反応して徐々に水素が消滅してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−19635
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素の効果は注目されているが、水素は反応性が高い物質なので体内に取り込もうとしても体内に届く前に空気と反応して消滅しやすい。また、高濃度の水素を機械によって製造して直接体内や体表面に接するようにすることも考えられるが機械装置は高価であり日常的に一般家庭で利用するのは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第一の発明として、所定液体と反応することで水素を発生する水素発生パウダーと、前記水素発生パウダーを入れた破断容易な第一膜からなる水素発生剤カプセルと、水素発生パウダーと反応しない液体である非反応液体と水素発生剤カプセルとを入れた破断容易な第二膜からなるマクロカプセルと、からなる水素発生剤を提供する。
【0007】
第二の発明として、前記第二膜は所定液体を不透過である海藻成分から構成される第一の発明の水素発生剤を提供する。
【0008】
第三の発明として、前記第一膜はシリコンポリマーであり、前記非反応液体はシリコンオイルである第一の発明または第二の発明の水素発生剤を提供する。
【0009】
第四の発明として、水素発生パウダーはシリカハイドライドパウダーである第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の水素発生剤を提供する。
【0010】
第五の発明として、前記第二膜の内面には凹凸構造が備えられている第一の発明から第四の発明のいずれか一に記載の水素発生剤を提供する。
【0011】
さらに、第六の発明として、第一の発明から第五の発明のいずれか一に記載の水素発生剤と、前記所定液体とを満たした水素発生剤構造体を提供する。
【0012】
第七の発明として、満たされた水素発生剤と前記所定液体とを同時に外部吐出させるためのパイプを有する第六の発明の水素発生剤構造体を提供する。
【0013】
第八の発明として、前記パイプには、このパイプに流れる水素発生剤の第一膜と第二膜とを破断する破断手段が設けられている第六の発明または第七の発明の水素発生剤構造体を提供する。
【0014】
第九の発明として、前記パイプに満たされている水素発生剤と前記所定液体とを同時に送り込むためのポンピング機能を有するポンピング手段を備えた第六の発明から第八の発明のいずれか一に記載の水素発生剤構造体を提供する。
【0015】
第十の発明として、前記所定液体は水を含む化粧料である第六の発明から第九の発明のいずれか一に記載の水素発生剤構造体を提供する。
【0016】
第十一の発明として、前記所定液体は水を含む飲食料である第六の発明から第十の発明のいずれか一に記載の水素発生構造体を提供する。
【0017】
以上の構成をとることによって本件発明では体内に届ける瞬間、又は体表面に接する瞬間に水素を発生可能としたので安価で日常的に水素を用いた健康促進や美容促進が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1の水素発生剤を示す概念図
図2】実施形態1の第二膜の内面の凹凸構造の一例を示す概念図
図3】実施形態2の水素発生剤構造体を示す概念図
図4】実施形態2の水素発生剤構造体を示す概念図
図5】実施形態2のパイプに設けた破断手段の一例を示す概念図
図6】実施形態2の水素発生剤構造体を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に発明を実施するための形態を説明する。なお、本件発明はこれから記載する実施形態に限定して解釈されるべきものでない。なお、実施形態と請求項の関係は次の通りである。実施形態1は、主に請求項1から請求項5などに関する。実施形態2は、主に請求項7及び請求項11などに関する。
<実施形態1>
【0020】
実施形態1は水素発生剤について記載する。
<構成>
【0021】
図1は、本実施形態の水素発生剤を示す概念図である。本実施形態は、水素発生パウダー(0101)と、水素発生パウダーを入れた水素発生剤カプセル(0102)と、水素発生剤カプセルとを入れたマクロカプセル(0103)と、からなる水素発生剤(0100)である。
【0022】
「水素発生パウダー」は、所定液体と反応することで水素を発生する。
「水素発生剤カプセル」は、水素発生パウダーを入れた破断容易な第一膜からなるカプセルである。
【0023】
「マクロカプセル」は、水素発生パウダーと反応しない液体である非反応液体と水素発生剤カプセルとを入れた破断容易な第二膜からなるカプセルである。
<各構成の説明>
【0024】
「水素発生パウダー」(0101)は、所定の液体と反応して水素を発生する。所定の液体は、人体に無害である必要がある。一般的には人体に有益な成分を含む水溶液である。水素発生パウダーはすでに公知技術であり、どのような水素発生パウダーを利用してもよい。ただし、このパウダーが水溶液と反応した結果生成される生成物も人体に無害である必要がある。無害の意味は、利用目的が食用の場合には体内に取り込んでも害がないことであり、体表面に接する用途の場合には体表面に対して無害であることを意味する。水素発生パウダーという表現を用いているが乾燥している状態を指すものでなく、元来乾燥状態の物であっても、液体に混ぜて液状、ゲル状であるものを含む趣旨である。また微粒であるがサイズは反応性を高めるために数ミクロン径から数百ミクロン径程度である。水素発生パウダーとして具体的にはシリカハイドライドパウダーを挙げることができる。このシリカハイドライドパウダーは水と反応して水素ガスを発生する。
【0025】
「水素発生剤カプセル」(0102)は、水素発生パウダーを入れた破断容易な第一膜からなるカプセルである。破断容易性と水素発生パウダーの保持性とを両立させたものでなければならない。破断容易とするのは、利用しようとするまさにその瞬間に水素が発生するように仕組むためである。したがって人の通常の力で破断する程度の破断容易性を有しなければならない。例えば指ですりつぶせる程度の破断容易性である。一方、水素発生剤は、容器等に入れて運搬するのが一般的であるから輸送時の振動等で破断する程度に弱いと駄目である。つまり、運搬の振動程度では破断しない程度の強さが必要である。また、第一膜の材料も水素発生剤などと同様に人体に有害であってはならない。第一膜の厚さは数十ミクロン程度から数百ミクロン程度である。具体的には美容用途などの場合にはシリコンポリマー膜を挙げることができる。厚さは30ミクロンから50ミクロン程度である。なお、シリコンポリマーは食べても無害なので食用の場合にも利用できる。
【0026】
「マクロカプセル」(0103)は、水素発生パウダーと反応しない液体である非反応液体(0104)と水素発生剤カプセルとを入れた破断容易な第二膜からなるカプセルである。このように構成することで水素発生パウダーは二重に保護されていることとなる。これは水素の有する反応性のためである。つまり、外部から反応性の液体が水素発生パウダーに接触しないように構成しているのである。マクロカプセル内に包含させる水素発生剤カプセルの数は数百から数千程度である。したがってマクロカプセルは相対的に大型のものとなるが、人の手でつぶせる程度の大きさである。例えば数ミリ径から10ミリ程度である。マクロカプセルは水素発生パウダーと非反応性の液体で満たされているがこれも水素の有する反応性のためで水素発生パウダーをカプセルの壁面と液体の両者で保護構成したものである。第二膜は所定液体を不透過である海藻成分から構成することが考えられる。具体的には海藻をすりつぶしていったん乾燥させ、その成分を再度水で溶いて準備することができる。具体的な海藻成分としては、アルギン酸カルシウムやアルギン酸バリウムなどを使用することができる。
【0027】
非反応性液体は、シリコンオイルを採用することが可能である。シリコンオイルは知られているすべての水素発生パウダーに反応しないからである。またシリコンオイルは人体に無害である。またシリコンオイルなどの非反応性の液体に加えてビタミン成分やミネラル成分を付加することも考えられる。発生する水素との協働作用によってより効果的に人体に働きかけるためである。
【0028】
図2は、本実施形態の第二膜の内面の凹凸構造の一例を示す概念図である。第二膜は、その内面に凹凸構造(0205)が設けられていてもよい。図2(a)は、凹凸構造が網目状である例であり、図2(b)は複数の山状の凹凸を有する例であるが、これらの例に限定されないのは勿論である。凹凸構造は、マクロカプセル内で水素発生剤カプセル(0201)が揺動するのを防止する役割を果たす。水素発生剤カプセルが揺動すると相互に摩擦を起こし、第一膜がすり減って内部収容している水素発生パウダーが漏れ出てしまうからである。凹凸構造は第二膜と同じ成分で構成されていてもよいし、第一膜と同じ成分で構成されていてもよい。またいずれとも異なる成分で構成されていてもよい。
<実施形態2>
【0029】
実施形態2は、水素発生剤構造体について記載する。
<構成>
【0030】
図3は、本実施形態の水素発生剤構造体を示す概念図である。本実施形態の水素発生剤構造体(0310)は、実施形態1の水素発生剤(0300)と、水素発生パウダーと反応して水素を発生可能な所定液体(0311)とを満たしたものである。形態は、密閉形態が好ましく、ボトルや袋状の物である。ただし、外部から加えられる力が水素発生剤に不必要に加えられないような構造をとる必要がある。
<具体的な構造>
<外部吐出パイプ>
【0031】
具体的な構造の一つとして、満たされた水素発生剤と前記所定液体とを同時に外部吐出させるためのパイプを有する構成が考えられる。これは、外部吐出の瞬間に水素発生パウダーが所定液体と反応して水素を発生させるためである。吐出は人力で行うものであってもよいし、モーター等を駆動して吐出するように構成するものであってもよい。
【0032】
図4は、本実施形態の水素発生剤構造体を示す概念図である。水素発生剤構造体は、外部吐出させるためのパイプ(0412)を有している。図示するように、手で水素発生剤構造体に力を加えて内容物を押し出すことで、パイプから水素発生剤(0400)及び水素発生パウダーと反応して水素を発生可能な所定液体(0411)が吐出できる構造となっている。使い方としては、パイプから吐出されたのちに手ですりつぶすような使い方がある。
<破断手段>
【0033】
さらに、前記パイプには、このパイプに流れる水素発生剤の第一膜と第二膜とを破断する破断手段が設けられている構成が考えられる。このような構成であれば手ですりつぶすまでもなく、吐出の瞬間にパイプにて膜破断が行われると便利だからである。
【0034】
図5は、本実施形態のパイプに設けた破断手段の一例を示す概念図である。図5(a)は、パイプの取込口は水素発生剤を破断することなく取り込むことができる大きさであるが、吐出方向(0521)を矢印で示したが、吐出側で水素発生剤が通過できないようパイプを細くするという破断手段を設けた例である。水素発生剤は細いパイプを通過する際に、その第一膜と第二膜とが破断され水素を発生可能な所定液体と水素発生パウダーが接触するので、外部吐出の瞬間に水素が発生することになる。図5(b)は、パイプの途中に格子状の破断手段を設けて、水素発生剤が格子状の破断手段を通過する際に第一膜と第二膜が破断される例である。図5(c)は、パイプの太さは一定であるが、パイプの内部にリング状の破断手段を設けて、水素発生剤がリング状の破断手段を通過する際に第一膜と第二膜が破断される例である。
<ポンピング機能>
【0035】
さらに前記パイプに満たされている水素発生剤と前記所定液体とを同時に送り込むためのポンピング機能を有するポンピング手段を備えることが考えられる。ポンピング機能は前述のように手で押し出すものでも、モーター駆動の物でもよいが容器内に圧力差を設けて容器内の所定液体と所定液体中に包まれて存在するマクロカプセルとが同時にパイプに流入するように構成する。したがってパイプの径はマクロカプセルとの関係で定められる。
圧力差が大きくなるとマクロカプセルの破断につながるので圧力差はマクロカプセルの破断を誘引しない程度の圧力差である。
【0036】
図6は、本実施形態の水素発生剤構造体を示す概念図である。図示するようにポンピング機能により容器内の圧力が上がり、容器内の液面が押し下げられて容器内の所定液体と所定液体中に包まれて存在するマクロカプセルとが同時にパイプに流入する。パイプから吐出する所定液体とマクロカプセルを手ですりつぶすような使い方もあるが、上述したようにパイプに破断手段を設け吐出の瞬間にパイプにて膜破断が行われる構成とすることもできる。
<所定液体の種類>
【0037】
所定液体の種類は、用途が肌の美容等である場合には水を含む化粧料であってもよい。また、用途が食用飲用である場合には、前記所定液体は水を含む飲食料であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
0100、0300、0400 水素発生剤
0101、0201 水素発生パウダー
0102 水素発生剤カプセル
0103 マクロカプセル
0104 非反応液体
0205 凹凸構造
0310 水素発生剤構造体
0311、0411 水素発生パウダーと反応して水素を発生可能な所定液体
0412 外部吐出させるためのパイプ
0521 吐出方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6