【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、固体剤が中空コアを有する、患者の皮膚中への挿通のための固体剤が提供される。
【0015】
好ましくは、固体剤は皮膚中へ当該固体剤の送出を可能にする形状を有するものであるが、但し、その形状は、円錐形、円錐台形、円筒形、または直平行六面体である。
【0016】
オプションであるが、固体剤は近位端と遠位端を含み、そして固体剤の遠位端はテーパ状である。固体剤は、1を超えるアスペクト比を持つように引き延ばすこともできる。
【0017】
好ましくは、固体剤は少なくとも1種の有効成分を含む。
【0018】
オプションであるが、固体剤は少なくとも1種の賦形剤を含む。1つの実施形態に基づけば、固体剤は有効成分から成る。好ましくは、固体剤の長さは1000ミクロン未満である。
【0019】
オプションであるが、錠剤は、長さ10ミクロンから20mmの間にある。オプションであるが、固体剤は、生分解性高分子または炭水化物で被覆される。本発明に基づけば、固体剤は可溶性または生分解性であることが可能である。
【0020】
本発明のさらなる様相に基づけば、ここに規定される固体剤の皮膚挿通用の固体剤キャリアが提供され、そこでは固体剤キャリアは、近位部および遠位部を含み、そこでは固体剤はキャリアの遠位部上にまたはその周囲に据え付けられることができ、かつそこでは皮膚中への固体剤の挿通を可能にするため、キャリアの遠位部が皮膚の表面を貫入することができる。
【0021】
1つの実施形態では、キャリアは、固体剤の挿通を助ける挿通メカニズムをさらに含み、その挿通メカニズムはキャリアに対し移動するのに適合しており、キャリアが皮膚に押し込まれるにつれ、固体剤が皮膚から遠ざかる移動に対して抵抗を与える作用を行う。オプションであるが、挿通メカニズムはキャリアの周りを部分的にまたは全面的に包むスリーブである。
【0022】
好ましくは、キャリアの近位部は円筒形状を有し、遠位部は皮膚に貫入することができる。より好ましくは、固体剤キャリアが針である場合である。
【0023】
オプションだが、固体剤キャリアは、一回または複数回の投薬を連続的にまたは同時に送出することができる。
【0024】
好ましくは、固体剤キャリアは、キャリアの遠位部上にまたはその周囲に据え付けられる固体剤をさらに含む。
【0025】
本発明のさらなる様相に基づけば、固体剤の皮膚挿通のための機器が提供されるが、但し、前記機器はここに規定される固体剤キャリアを含む。
【0026】
好ましくは、本発明に係る機器は、固体剤キャリアを含む下部を含み、ユーザが機器を皮膚に圧入することを可能にするための上部を含む。機器の下部は、さらにプラットフォームを含むことができるが、但し、固体剤キャリアは前記プラットフォームに接続され、また、前記プラットフォームは、皮膚中への固体剤キャリアの貫入の最大深度を設定することを目的としている。
【0027】
1つの実施形態では、機器は、1つ以上の空洞を含む外側ケースをさらに含み、また、機器の上部はさらに1つ以上の凸部を含むが、但し、空洞は、機器が皮膚に押し込まれるにしたがい当該機器の動きに抵抗を与えるように、凸部を受け止める。オプションであるが、外側ケースは、皮膚に対して据え付けられ、挿通を確実にするために機器に印加される圧力を固定する手段を提供する底面リブをさらに含む。
【0028】
さらに1つの実施形態では、機器は、1つ以上の固体剤を運ぶ1つ以上の固体剤キャリアを含む。もう1つの実施形態では、機器は一回使用の使い捨てユニットである。
【0029】
本発明のさらなる様相に基づけば、次のステップを含む、ここに規定される固体剤を製造する方法が提供される。すなわち、
(i)固体剤成分を供給すること、また、
(ii)固体剤を形作ること。
好ましくは、形成ステップは、湿式キャスト成形、直接圧縮成形、または押し出しから選ばれた方法を使用することを含む。
【0030】
オプションであるが、形成ステップは、複数部からなるツールを使用した圧縮成形を含む。この方法には、固体剤の中空コアを形成するステップも含むことができる。オプションであるが、その方法は、以下のステップを含む。すなわち、
(i)固体剤成分を複数部からなるダイ中に配置すること、
(ii)ピンからなるパンチ部分をそのダイ部分に圧入し、固体剤の中空コアを形成すること、
(iii)オプションであるが、ピンまたはダイ複数部のいずれかを回転させること、および
(iv)ダイから形成された固体剤を射出させること。
【0031】
本発明のもう1つの様相に基づけば、次のステップを含み、ここに規定される固体剤を製造するさらなる方法が提供される。すなわち、
(i)潤滑剤で固体剤キャリアを被覆すること、
(ii)液体、ペースト、または混合物の形をしている固体剤成分で固体剤キャリアを被覆すること、および
(iii)固体剤を形成するためにコーティングを乾燥させること。
【0032】
本発明のさらなる様相では、ここに規定される、次のステップを含む機器を用いて、人間または動物に固体剤を経皮的に送出する方法が提供される。すなわち、
(i)人間または動物の皮膚中へ、少なくとも1つの固体剤を運ぶキャリアを圧入すること、
(ii)所望の深さへの皮膚にキャリアと固体剤を押し込むこと、および
(iii)人間または動物の中に固体剤を残すためにキャリアを引き戻すこと。
【0033】
オプションであるが、キャリアを用いて複数の固体剤が連続的にまたは同時に送出される。
【0034】
このフォームの固体剤は、皮膚を突き刺しするために角度または鋭さについて何らかの特定の制限を要求する固体剤の先端なしに、かつ皮膚中に圧入されたときに経験するであろう圧縮力に耐える機械的強度なしに、皮膚挿通を可能にする。自身固有の先端鋭さに頼って、皮膚中に直接挿通された固体剤は、先端において破壊しがちであり、鈍い先端となって皮膚上の重大な外傷に結果すると同時に、患者に対しては、不十分で不正確な投薬量を潜在的にもたらす。
【0035】
このタイプの固体剤の主たる利点は、中空コアが固体剤の表面で経験されるであろう急速なバイオファウリングを経験しそうでないということであり、(および、バイオファウリングによってドリフトが観測される連続的なぶどう糖監視に使用されるぶどう糖センサのような針について経験されるように)、これにより、例えば、保持された放出プロフィールが数日または数週間望まれる場合に、薬剤放出の一貫性についてのさらなる洗練化に導く。
【0036】
当業者であれば、調剤投薬量フォームを記述するための用語「固体剤」を理解するであろう。より具体的には、この用語は、1つ以上の有効成分からなり、顕著に固体である質量として形成される投与量を記述するために使われる。しかし、そこには賦形剤も含まれて良く、その賦形剤とは、接着剤、可溶性を増強する薬剤、浸透性を増強する薬剤として働く溶液や、所望の急速なまたは保持された放出プロファイルを達成するために要求されるであろう他の液体などである。固体剤は、直接圧縮、造粒処理またはマイクロ成形およびマイクロ複製技術によるタブレット製造のために確立され文書化された広範囲な賦形剤からなっていても良い。
【0037】
本発明者は、用語「有効成分」によって、治療効果または美容効果を有する生物活性物質を意味する。生物活性物質には、小さな分子、タンパク質、およびペプチドが含まれ得る。特に、有効成分は、ワクチン、(ボツリヌス毒素のような)化粧用薬剤、(オピオイド鎮痛剤、トリプタン、および非ステロイド性抗炎症薬のような)鎮痛剤、(ヒト成長ホルモンまたはヒドロコーチゾンのような)ホルモン、ビタミン、麻酔薬、抗高圧症薬および避妊薬の中からから選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
所望形状の固体剤を製造するために、湿式キャスト成形技術が使用されても良い。特に、適切な型が使用されても良い。その場合は、ウェットな質量が乾燥されることが続き、あるいは中空円筒形として押し出されることが続き、さらに必要な長さに切断されることが続く。湿式キャスト成形または押し出しを使うことの一つの利点は、乾燥時に固体質量がある量の収縮をこうむることになることであり、これは処理条件と調剤組成の与えられたセットに対して両立することである。こうして良好な許容誤差を持った高精度の工具の必要性が減じられる。なぜならば、少しだけ大きい固体剤が調剤されても良く、制御された収縮のおかげで乾燥時により小さい固体剤寸法となるからである。
【0039】
固体剤は、固体剤キャリアによる送出に適しているどのような寸法であっても良く、このため、例えば、固体剤キャリアが針であるならば、固体剤はその針の寸法によって制限されることになる。寸法も、固体剤がその機械的特性を保持することを可能にする固体剤を製造するために使用される方法により課される物理的限界によっても制限されるが、寸法は0.1mmの固体剤壁厚さの領域にあっても良い。いくつかの実施形態では、固体剤は、1000ミクロン未満の寸法であっても良く、あるいは好ましくは、長さが約10ミクロンから20mmの間の寸法である。好ましくは、固体剤はペレットの形をしている。
【0040】
患者に服用させる有効成分の投薬量が大きすぎる場合、複数の固体剤を投与することができ、および複数の固体剤キャリアについて要求されれば、そうである。
【0041】
本発明のいくつかの実例では、最小寸法の固体剤は、上に記述されたキャスト成形または押し出しの技術とは完全に異なっているプロセスを用いて、実際に製造されても良い。
【0042】
固体剤を形成するための代替方法は、次のステップを用いて記述できる。
(i)潤滑剤で固体剤キャリアを被覆すること、
(ii)液体、ペースト、または混合物の形をしている投薬成分で固体剤キャリアを被覆すること、また
(iii)固体剤を形成するためにコーティングを乾燥させること。
【0043】
上で記述された方法の潤滑剤の目的は、固体剤が固体剤キャリアに固着するのを防ぐことである。使用することができる潤滑剤は、下記に述べられる。コーティングは空気により乾燥させることができるか、または熱風乾燥技術を用いて乾燥させることができる。
【0044】
上記の方法を使用する場合、シュラウドは固体化される固体剤キャリアの周囲に形成される。シュラウドは、好ましくは10ミクロン〜20ミクロンの厚さを有している。しかし、シュラウドは、直接圧縮技術を用いて製造される固体剤よりはるかに細くかつ小さくできる。この技術の重要な利点は、非常に細い固体剤を製造できるということである。
【0045】
本発明に基づけば、使用することができる潤滑剤、反粘着剤、および滑剤は、調剤物およびタブレット化の分野で働く当業者にとってよく知られている。潤滑剤の実施例は、鉱油、粉体潤滑剤、および滑剤のようなオイルベースの潤滑剤を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、潤滑剤は、マグネシウムステアリン酸塩、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素化植物油(例えば、Sterotexa、Lubritaba、およびCutinaa)、鉱油、ポリエチレングリコール(例えばPEG 4000 - 6000)、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリルパルミトステアラート(Precirola)、グリセリルベヘナート(Compitrol 888a)およびステアリルフマル酸ナトリウムの1つ以上から選ばれる。
【0046】
好ましくは、反粘着剤および滑剤は、滑石またはいぶされた二酸化ケイ素から選ばれる。
【0047】
固体剤も薬剤のみから構成されても良い。ここにその薬剤は、中空コアを備えた固体剤に変換される適切な特性を備えた固体である。固体剤の形状は、中空円錐、中空円筒、中空球体、中空長方形、中空円錐台、中空直平行六面体、または実際は1つ以上の面を備えた任意の形状を含んで良い。固体剤が大きい場合にはそれは好ましいであろう。例えば、動物への投薬には、固定剤は長さが数ミリメートルになるであろう。さらに、固定剤は引き延ばされても良く、つまり、1を超えるアスペクト比を持っていても良い。本発明に基づいた固体剤は、どんな鋭い角も含んでいない先端(最初に皮膚に入る部分)を含んでも良い。その代り、丸みをおびた端部または不規則な形状の端部を有しても良い。
【0048】
ここに使用されたように、用語の「空洞」は固体剤の近位端から遠位端に拡がる空洞を意味するために使用される。空洞は、固体剤の近位端から遠位端まで部分的にまたは全面的に拡がることができる。好ましくは、中空コアは、完全に固体剤の近位端から遠位端まで拡がる。
【0049】
本発明の目的は、固体剤のエントリに対して、先端が大きな摩擦力または妨害を与えるのを防ぐことである。固体剤の寸法はサブミリメートルから10mm超まで変化して良い。好ましくは、固体剤の直径が、10ミクロン〜約20mm、または約0.01mm〜15mmであり、より好ましくは、0.5mm〜10mmであり、さらにより好ましくは、1mm〜5mmである場合である。1つの実施形態では、固体剤は円錐形の形状を持っており中空である。好ましくは、固体剤は、円錐の頂点で0.5mmの外幅および長さ0.8mmを持っている。サブミリメートルの固体剤は、好ましくは極微針製造のために広く使用されているマイクロ成形技術を用いて調剤され、より大きな寸法の固体剤は、好ましくはより従来的な圧縮技術を用いて調剤される。
【0050】
固体剤の製造プロセスのために、圧縮または加圧成形技術が使用される場合、複数部からなるツールがサブ7〜8mmの長さ範囲中の寸法を有する固体剤に特に使用されることは望ましいであろう。この寸法範囲およびそれより下の固体剤は、型工具から取り外すことが困難であることがわかっている。型工具が内部表面上で電気研磨されている場合は、摩擦の低減は急速になくなり、固体剤は、容易にツールから射出することができない。
【0051】
さらに、ピンは固体剤の中空コアを形成するために使用することができる。また、圧縮中の型空洞および/またはピンの回転(反対の方向に)により、滑らかな表面特性を持った固体剤の形成が容易になり、その固体剤は圧縮による形成の後、ツールから容易に射出されることも実証済みである。
【0052】
さらに、ダイが所望の空洞を形成するために完全に閉じる前に、固体剤のための固体質量が(複数部からなる)ダイの中に配置される際に、増強された機械的特性がより良い圧縮によって達成される。その後、ダイセクションが固体剤壁空洞を形成するため閉じるにつれ、ピンを備えたパンチセクションはダイセクションへ同時に圧入される。それらが固体剤用の空洞を形成するために閉じるときには、ダイの複数部は回転していても良い。
【0053】
本発明のさらなる実施形態は、それによって固体剤が、生分解性高分子、炭水化物、または高レベルの頑丈さおよび圧縮力に対する抵抗を与える他の材料で被覆されるものであり、その抵抗は、固体剤が皮膚を通過するとき経験されるであろうどのような抵抗でも良い。タブレットコーティングのタイプは当業者に公知のはずであり、糖衣および膜コーティングを含むことができる。そのようなコーティングは、薬剤をタブレット化する分野で既に実施されており、そのコーティングは、タブレットの破砕性を減ずるか、または制御または維持された離型性をタブレットに分け与えるものであり、同じ原理が本発明に適用され得る。
【0054】
本発明のさらなる実施形態に基づけば、先端領域の破損を防ぐために、固体剤はテーパ状であっても良く、これ故に遠位端(別の言い方をすれば、最初に皮膚に入る固体剤の部分である先端として知られる)に向かって徐々に細くなっていて良い。
【0055】
固体剤は、50ミクロン未満へ、より好ましくは10ミクロン未満へテーパ状になっていて良い。固体剤は、キャリアの突出部分が入った後に、皮膚中に挿通されても良い。この場合は、固体剤の近位部がキャリア上で静止している平坦な端部によって提供されるキャリアの上側へさらに固体剤が移動することへの抵抗が生じる。望むのなら、キャリアに対し移動可能なキャリアの周りのスリーブであっても良い挿通メカニズムを用いて、それが皮膚中にさらに押し込まれても良く、ここにそのスリーブはキャリアの周りを部分的にまたは全面的に包んでも良い。この場合、キャリアが皮膚中に押し込まれるときに、スリーブは、固体剤の皮膚から遠ざかる移動に対し抵抗を与えるように作用するであろう。
【0056】
固体剤キャリアは、針のような顕著に円筒状の形状である注射装置であっても良く、それは皮膚を貫入するために必要な鋭さを持っている先端部分を備えており、それは尖っているか平坦である。キャリアは、ランセットのような平面壁であっても良く、あるいは、人間または動物の皮膚に挿通される目的のために、中空の固体剤がキャリアの上に配置されることを可能にするのに必要な物理的寸法を提供する壁輪郭線のある組み合わせであっても良い。単一または複数の固体剤が、単一の機器から単一の運動で、要求により連続的にまたは同時に送出されても良い。つまり、機器は1つ以上のキャリアを有しても良い。
【0057】
本発明によれば、固体剤キャリアは直径が約0.1mmから約1mmまであり得る。いくつかの実施形態では、キャリアは > 1mmの直径より大きな直径を持つことができ、例えば、動物ワクチンについては、2〜3mmの直径でありえる。キャリアからなるキャリアは、金属(例えば、ステンレス鋼)を含むことができる。その代わりとして、キャリアはセラミックスまたは高分子材料で構成することができる。
【0058】
当業者が理解するであろうように、固体剤を備えた固体剤キャリアを皮膚中に押し込むため、臨床医または患者それ自身によっても要求される力は、固体剤キャリアの寸法および固体剤の寸法によって異なる。
【0059】
固体剤が大きいほど、力は大きく必要となる(例えば > 20N)。より少量の固体剤がより小さいキャリア上で運ばれる場合には、一般により小さな力が必要とされる。0.01mmのシュラウド厚さを有する a < 0.1mmの針の場合は、力が < 5Nである。しかし、他の要因も、人間または動物の患者の皮膚厚さや粗さのように、適用されるべき力に影響を及ぼし得る。したがって、非常に粗く表面模様のついた皮膚では、力は数倍に増加されても良い。しかし、本発明は、当技術(米国特許出願2011/0313348に述べられていたような技術)の中で既知である、尖っているまたは形作られた固体剤の直接的挿通にとって必須である非常に大きな力は要求しない。