【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、プリントヘッド冷却器の機能を判定するための方法によって実現される。当該方法は、
a)プリントヘッドの面と熱接触する(thermal contact)第1の面を含むプリントヘッド冷却器を作動させる工程と、
b)プリントヘッドに所定量の熱を提供する工程と、
c)プリントヘッドの温度Tを測定する工程と、
d)測定された温度Tに基づいてプリントヘッド冷却器の機能を判定する工程と、
を含み、
所定量の熱は、プリントヘッド内に存在する液体に少なくとも1つの非噴射(non-jetting)パルスを適用することによって提供される。
【0006】
インクジェットプリンタでは、プリントヘッドによってインクの液滴が受容媒体に適用され得る。プリントヘッドは液滴を吐出し、受容媒体に所定のパターンの液滴を適用することによって画像が形成され得る。いくつかの種類のプリントヘッドが知られており、そのうち圧電プリントヘッド及びサーマルプリントヘッドが最も一般的なプリントヘッドである。どちらの種類のプリントヘッドでも、インクの液滴を吐出するにはプリントヘッドにエネルギーを提供する必要がある。提供されるエネルギーの一部は液滴の運動エネルギーに変換され得るが、他の部分は熱エネルギーに変換され得る。プリントヘッドを動作させる際に生成される熱エネルギーはプリントヘッドの温度の上昇をもたらし得る。インクの粘度、圧電素子の特性等の噴射プロセスのパラメータは温度によって左右され得るため、プリントヘッドの温度の変化は望ましくない。温度を一定に保つために、プリントヘッドはプリントヘッド冷却器を備え得る。プリントヘッド冷却器はプリントヘッドと熱接触し得る。プリントヘッド冷却器は第1の面を含み得る。第1の面はプリントヘッドの面と熱接触し得る。例えば、プリントヘッドの内部で移動する流体のエネルギー散逸によってプリントヘッド内で熱が生成された場合、プリントヘッドの温度は上昇し得る。これは、熱エネルギーをプリントヘッドから冷却手段に移すための駆動力を提供する。
【0007】
冷却手段は任意の好適な冷却手段であり得る。例えば、冷却手段は、冷却液を用いてプリントヘッドから熱エネルギーを除去するように構成され得る。任意の好適な冷却液、例えば、水、緩衝用水、グリセロール、アルコール又はその混合物が用いられ得る。あるいは、プリントヘッドを冷却するために空気等の気体を用いてもよい。プリントヘッド冷却器は金属等の熱伝導材を含み得る。プリントヘッド冷却器の、プリントヘッドと熱接触する少なくとも1つの面が熱伝導材で構成され、それによってプリントヘッドとプリントヘッド冷却器との間で効率的な伝熱が行われるようにすることが好ましい。それに加えて、プリントヘッド冷却器の形状をプリントヘッドの形状に適合させて、プリントヘッドとプリントヘッド冷却器との間に十分な接触面ができるようにして、プリントヘッドとプリントヘッド冷却器との間で良好な伝熱を可能にしてもよい。任意で、プリントヘッド冷却器はプリントヘッドとプリントヘッド冷却器との間の接触を最適なものにするためにフレキシブルな形状の面を含んでもよい。
【0008】
冷却手段が適切に機能していれば、冷却手段は作動時にプリントヘッドの温度を所定の温度範囲内で維持し得る。しかしながら、冷却手段が適切に機能しない場合、冷却手段はプリントヘッドの温度の上昇を防止することができないことがある。あるいは、冷却手段が冷却し過ぎると、プリントヘッドの温度は所定の温度範囲よりも低い温度に低下し得る。
【0009】
上記の方法の工程a)では、プリントヘッド冷却器が作動される。例えば、プリントヘッド冷却器が冷却液を用いる冷却器の場合、冷却液が冷却器を流れ得る。プリントヘッド冷却器が作動されると、プリントヘッド冷却器はプリントヘッド及びプリントヘッド内に収容されているインク等の流体からある量の熱を除去し得る。プリントヘッド冷却器による熱の除去はプリントヘッドの温度に影響を及ぼし得る。なお、冷却手段によって除去される熱の量がゼロの場合がある。これは、プリントヘッド冷却器が全く機能しない場合、例えば冷却液の流路が塞がれている場合に生じ得る。
【0010】
工程b)では、所定の量の熱がプリントヘッドに提供される。所定量の熱は、プリントヘッド内に存在する液体に少なくとも1つの非噴射パルスを適用することによって提供される。プリントヘッドの作動手段は流体の液滴を噴射するためのパルスを提供し得る。これらのパルスは受容媒体に画像を提供するのに用いられ得る。それに加えて、プリントヘッドの作動手段は非噴射パルスも提供し得る。非噴射パルスは流体の液滴を噴射しないように構成されたパルスであり得る。非噴射パルスが流体に適用されると、流体内で運動が起こり得る。例えば、非噴射パルスが適用されるとノズル内又はノズルの近傍に位置する流体のメニスカスが振動し得る。非噴射パルスはインクの液滴を噴射しないように構成されているため、非噴射パルスが適用された場合にはプリントヘッド環境にインクが提供されない。そのため、非噴射パルスが適用されてもプリントヘッド環境は汚染されない。例えば、プリントヘッドの近傍では受容媒体にインクの液滴が提供されない。さらに、印刷装置の周囲の部品、例えば他のプリントヘッドは非噴射パルスを適用する場合に汚染されない。その結果、プリントヘッド冷却器の機能を判定するためにプリントヘッドを印刷装置から取り外す必要がない。
【0011】
非噴射パルスを適用することによって流体内で生成される運動は流体内で熱を生成する。例えば、摩擦が運動の減衰をもたらし、運動エネルギーが熱エネルギー(熱)に変換され得る。それに加えて、非噴射パルスを適用する際に作動手段内で熱が生成され得る。
【0012】
流体内で生成される熱は流体の加熱をもたらし、ひいてはプリントヘッドの加熱をもたらし得る。非噴射パルスはプリントヘッド及びプリントヘッド内の流体に所定量の熱を提供し得る。プリントヘッド及び流体の熱特性は既知であり得る。
【0013】
非噴射パルスはプリントヘッドの作動手段を用いて提供され得る。例えば、作動手段は圧電素子を含み得る。プリントヘッドは液滴を噴出することができるように作動手段を備え得る。そのため、本発明に係る方法を適用するのに追加のヒーターが必要にならない。
【0014】
工程c)では、プリントヘッドの温度Tが測定される。温度は好適な温度測定手段を用いて測定され得る。例えば、温度は温度計又は熱電対を用いて測定され得る。あるいは、プリントヘッドの温度は高温計を用いて測定され得る。
【0015】
工程d)では、測定された温度Tに基づいてプリントヘッド冷却器の機能が判定され得る。
【0016】
工程b)で提供される所定量の熱はプリントヘッドの温度の上昇をもたらし得る。実際の温度の上昇はプリントヘッドに供給される熱の量に加えて、冷却によってプリントヘッドから除去される熱の量に左右され得る。プリントヘッドに提供される熱は所定量の熱であるため、プリントヘッドの温度の上昇は冷却によってプリントヘッドから除去される熱の量の情報を提供し、ひいてはプリントヘッド冷却器の機能についての情報を提供する。
【0017】
プリントヘッドの測定された温度Tは少なくとも1つの基準温度T
refと比較される。少なくとも1つの基準温度T
refは好適に選択され得る。例えば、T
refは、例えばプリントヘッド冷却器をオンにしてプリントヘッドを動的に冷却せずにプリントヘッドに所定量の熱を適用した後のプリントヘッドの温度であり得る。この場合、測定された温度Tが基準温度T
refよりも低い場合、プリントヘッド冷却器は少なくも部分的に機能していると結論付けられ得る。
【0018】
あるいは又はそれに加えて、T
refは作動中のプリントヘッドの温度であり、プリントヘッドは全開で(fully)機能するプリントヘッド冷却器を備える。この場合、測定された温度Tが基準温度T
refよりも高い場合、プリントヘッド冷却器が全開で機能していないと結論付けられ得る。
【0019】
プリントヘッド冷却器がどの程度機能しているかを判定するために、測定された温度Tは2つ以上の基準温度と比較され得る。
【0020】
所定量の熱を適用した後のプリントヘッドの温度は1つの位置又は複数の位置で測定され得る。後者の場合、プリントヘッド冷却器が局所的に機能しているかを判定するために、複数の位置で測定された温度のそれぞれが少なくとも1つの基準温度T
refと比較され得る。
【0021】
一実施形態では、測定された温度Tを複数の基準温度と比較することによってプリントヘッド冷却器の機能が工程d)で判定される。
【0022】
複数の基準温度は多数の基準温度を含み得る。複数の基準温度の一例としては、最高温度T
ref max、高温T
ref high及び低温T
ref lowを含み、T
ref low<T
ref high<T
ref maxである一連の基準温度が挙げられる。最高温度T
ref maxは所定量の熱が適用されているが冷却されていないプリントヘッドの温度であり得る。そのため、工程c)において、測定された温度T=T
ref maxである場合、プリントヘッド冷却器が全く機能していないと工程d)で結論付けられ得る。
【0023】
高温T
ref highはプリントヘッドが適切に機能することができる最高温度であり得る。低温T
ref lowはプリントヘッドが適切に機能することができる最低温度であり得る。そのため、工程c)において、T
ref lowとT
ref highとの間の温度が検出された場合、プリントヘッド冷却器は適切に機能していると工程d)で結論付けられ得る。工程c)において、測定された温度TがT
ref lowよりも低い場合、プリントヘッド冷却器は冷しすぎるという意味で故障していると工程d)で判定され得る。これは、例えばプリントヘッド冷却器が冷却液を用い、その冷却液の温度が低すぎるといった状況で起こり得る。
【0024】
工程c)で測定された温度TがT
ref highとT
ref maxとの間である場合、プリントヘッド冷却器は全開で機能していないと工程d)で判定され得る。
【0025】
一実施形態では、プリントヘッド冷却器は第1の所定の期間Δt
1作動される。プリントヘッド冷却器によってプリントヘッドから除去される熱の量はプリントヘッド冷却器が作動される時間によって左右され得る。プリントヘッド冷却器が作動する時間が長いほど、より多くの熱が除去され得る。プリントヘッドから除去される熱の量はプリントヘッドの温度に影響を及ぼし得る。従って、プリントヘッド冷却器はプリントヘッドの機能を正確に判定するために第1の所定の期間Δt
1作動され得る。
【0026】
一実施形態では、プリントヘッドの温度Tは、所定量の熱を適用した後に第2の所定の期間Δt
2経過してから測定される。所定量の熱はプリントヘッド又はプリントヘッド内の流体に局所的に適用され得る。何ら理論に縛られることを望むものではないが、温度はプリントヘッド全体で均一には上昇しないものと考えられる。所定の量の熱を適用した後に第2の所定の期間Δt
2待つことによって、プリントヘッド全体で熱が放散されて、プリントヘッド全体で温度がより均一なものになり得る。
【0027】
一実施形態では、(所定の期間Δtの間に)プリントヘッドの温度が少なくとも2度測定される。
【0028】
2回以上の測定が行われれば、プリントヘッドの機能はより正確に判定され得る。例えば、プリントヘッドの温度は異なる時間間隔で測定され得る。その場合、プリントヘッドの温度は時間関数として観察され得る。
【0029】
プリントヘッドの温度Tはプリントヘッド内の複数の位置で判定され得る。異なる位置で温度Tを判定することによって、プリントヘッド冷却器の局所的な故障が検出され得る。温度Tを複数の位置で測定する場合、温度Tは複数の位置のそれぞれで1度測定してもよいし複数回測定してもよい。あるいは、複数の位置のうちの少なくとも1つの位置では温度Tが1度測定され、複数の位置のうちの少なくとも別の1つの位置では、温度Tが複数回測定され得る。
【0030】
一実施形態では、プリントヘッド冷却器は、第2の面と、第1の面及び第2の面の間に設けられた冷却液が流れるための冷却液流路とをさらに含む。
【0031】
プリントヘッド冷却器の第1の面はプリントヘッドと接触し得る。この第1の面を通じて、プリントヘッド冷却器とプリントヘッドとは熱伝導性接触し合い得る。プリントヘッドからプリントヘッド冷却器に熱が流れてプリントヘッドから熱が除去されることによってプリントヘッドの温度が低下する。プリントヘッド冷却器は第2の面をさらに含み得る。第2の面はプリントヘッドの面と接触していてもよいし接触していなくてもよい。プリントヘッド冷却器の第1の面と第2の面との間には冷却液流路が設けられ得る。冷却液流路は冷却液を収容するとともに冷却液が流れるように構成され得る。冷却液は、例えば水;食塩水等の水溶液;有機溶剤;又はグリセロール等の水と有機溶剤との混合物を含み得る。冷却液が流れることはプリントヘッド等の物体を冷却するのに効率的な方法である。冷却液流路は冷却液入口及び冷却液出口を備え得る。冷却液入口及び冷却液出口を通じて冷却液流路は冷却液貯蔵部と連通し得る。
【0032】
さらなる実施形態では、冷却液の温度及び冷却液の流量が制御される。
【0033】
冷却液を用いるプリントヘッド冷却器によって除去される熱の量は、例えば冷却液の流量に加えて冷却液の温度によって左右され得る。冷却液の流れが多いほど、より多くの熱がプリントヘッドから除去され得る。冷却液の温度が低いほど、より多くの熱がプリントヘッドから除去され得る。そのため、プリントヘッド冷却器の機能は冷却液の流量及び温度に左右され得る。そのため、本発明に係る方法を行う場合に測定される温度Tは冷却液の流れ及び温度に左右され得る。従って、冷却液の温度及び/又は冷却液の流量が制御され得る。
【0034】
本発明のさらなる態様では、プリントヘッド及びプリントヘッド冷却器のアセンブリが提供される。プリントヘッドはインクを収容するように構成されたインク室と、該インク室内のインクに非噴射パルスを適用するように構成された作動手段とを含み、プリントヘッド冷却器は作動時にプリントヘッドの面と熱接触する第1の面を含み、当該アセンブリはプリントヘッドの温度を測定するための温度測定手段をさらに含み、当該アセンブリは本発明に係る方法を行うための制御手段をさらに含む。
【0035】
そのため、本発明に係るプリントヘッド及びプリントヘッド冷却器のアセンブリは本発明に係る方法を行うように構成されている。温度測定手段は従来の温度測定手段であり得る。温度測定手段の既知の非限定的な例としては温度計、熱電対及び高温計が挙げられる。プリントヘッド及びプリントヘッド冷却器のアセンブリは1つの温度測定手段を備えていてもよいし、あるいは複数の温度測定手段を備えていてもよい。
【0036】
制御手段は好適な制御手段、例えばコンピュータであり得る。制御手段は、本発明に係る方法をコンピュータに行うよう命令するためのコンピュータプログラム命令を保持する好適なコンピュータ可読媒体を含み得る。
【0037】
一実施形態では、プリントヘッド冷却器は第2の面と、第1の面及び第2の面の間に設けられた冷却液が流れるための冷却液流路とをさらに含む。
【0038】
そのため、この実施形態に係るアセンブリは本発明の一実施形態に係る方法を行うように構成されている。