(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543634
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】油噴射式圧縮機の油中の凝縮物を防止する方法及び該方法が適用される圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
F04B49/02 311
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-545791(P2016-545791)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-504754(P2017-504754A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】BE2015000002
(87)【国際公開番号】WO2015103678
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】61/925,902
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】2014/0095
(32)【優先日】2014年2月13日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】デジロン アンドリース ヤン エフ
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴォシュ ケネス アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】クーケルバーグズ ジョエリ
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−012093(JP,A)
【文献】
特開昭58−088489(JP,A)
【文献】
特開平11−201039(JP,A)
【文献】
実開平06−049788(JP,U)
【文献】
特開平09−287580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/02
F04B 39/16
F04C 18/16
F04C 28/06
F04C 28/28
F04C 29/02
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油噴射式圧縮機(1)の油中の凝縮物を防止する方法であって、
前記圧縮機(1)は、
制御された入口弁(7)によって閉鎖することができる入口(6)と、出口(10)とを有する油噴射式圧縮機要素(2)と、
前記圧縮機要素(2)の駆動装置(5)と、
前記圧縮機要素(2)の前記出口(10)に接続される入力部と、圧縮ガスのための民生用ネットワーク(16)を接続することができる出力部とを有する油分離器(13)を備える油回路(20)であって、前記油分離器(13)は、前記圧縮ガスから分離された前記油(21)を回収しかつ前記油を前記圧縮機要素(2)に噴射することができる圧力容器(12)を備える油回路(20)と、
前記民生用ネットワーク(16)の圧力(p)が設定最大値(pmax)に到達した場合に前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)が設定停止プログラム(34)によって停止されるようになっている、前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置のための制御装置(28)と、を備え、
前記民生用ネットワーク(16)の圧力(p)が前記設定最大値(pmax)に到達した場合に、前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)が停止される前に、
前記圧縮ガス又は前記油の温度(T)を判定するステップと、
前記温度(T)が、可能な限り前記油中の凝縮物を防止するために決定又は計算された設定最小値(Tmin)よりも高い場合、前記設定停止プログラム(34)により前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)を停止するステップと、
前記温度(T)が、前記決定又は計算された設定最小値(Tmin)よりも低い場合、前記駆動装置(5)は直ちに停止されず、前記決定又は計算された設定最小温度(Tmin)に到達するまで前記温度(T)を上昇させる目的で、ガスを圧縮し続けて前記圧縮ガスを前記油分離器(13)から再循環管(30)を経由して前記圧縮機要素(2)の前記入口(7)に再循環させるために、前記制御装置(28)の再循環プログラム(35)によって入口弁(7)を開いた状態に駆動し続け、次に、前記設定停止プログラム(34)に従って、設定最小温度(Tmin)に到達したときから開始される設定最小周期(t’min)の後で及び/又は設定最小温度(Tmin)に到達したときから開始される任意の停止遅延でもって、前記駆動装置(5)を停止し、さらに、前記再循環プログラム(35)の実行中に、前記圧縮ガス又は前記油の温度(T)が、前記設定最大値(pmax)に到達したときから開始される設定最大周期(tmax)後に前記最小温度(Tmin)に到達しなかった場合、前記設定停止プログラム(34)によって前記駆動装置(5)を停止するためのステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記再循環プログラム(35)の前記実行中に、前記圧縮ガス又は前記油の温度(T)が前記設定最大周期(tmax)後に前記最小温度(Tmin)に到達しなかった場合、前記設定停止プログラム(34)が実行され、この状態が何回発生したかを指示するエラーカウンタ(f)が増分される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記設定最小周期(t’min)は、約10秒に設定される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記設定最大周期(tmax)は、約600秒に設定される、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記油分離器(13)は、最小圧力値(pmin)に設定された最小圧力弁(17)を備え、前記再循環プログラム(35)の間、前記圧力容器内の圧力は、前記最小圧力弁(17)が設定された前記圧力値(pmin)よりも低い値で制御される、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記最小圧力弁(17)の前記設定圧力値(pmin)を下回る前記油分離器(13)内の圧力の制御は、前記圧縮ガスが、前記油分離器(13)から較正絞り弁(32)を通って前記圧縮機要素(2)の前記入口(7)に再循環することを可能にすることによって行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記再循環プログラム(35)の実行中、前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)は、前記温度(T)が前記温度の前記決定又は計算された設定最小値(Tmin)よりも高い設定最大温度(Tmax)よりも高い場合に直ちに停止される、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記設定最小温度(Tmin)は、測定された周囲温度及び相対湿度に基づいて計算される凝縮温度に基づいて、周期的に又はリアルタイムで判定される、請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記再循環プログラム(35)に使用される前記温度(T)は、前記圧縮機要素(2)の前記出口(10)で測定又は判定される前記圧縮ガスの温度である、請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記温度調整弁(25)が設定された前記温度(T25)よりも前記油の前記温度が高い場合、前記油は、前記油回路(20)の温度調整弁(25)によって油冷却器(27)を通って迂回して案内され、前記設定最小温度(Tmin)は、前記温度調整弁(25)設定された前記温度(T25)未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記設定最大温度(Tmax)は、前記決定又は計算された設定最小温度(Tmin)よりも5℃〜20℃だけ高い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)は、可変速度(n)の駆動装置であり、前記再循環プログラム(35)の間、前記速度(n)は、約2,100回転/分数である設定最小値(nmin)に低減される、請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記再循環プログラム(35)の終了後、前記再循環管(30)は閉鎖され、次に、前記駆動装置(5)は所定の停止遅延を伴ってオフとなり、前記停止遅延は、約2秒である、請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮機(1)は、前記圧縮ガスを前記油分離器(13)から環境に放出する閉鎖可能な放出分岐管(18)を備え、前記駆動装置(5)を停止した後、前記圧縮ガス又は前記油の前記温度(T)が前記設定最小値(Tmin)よりも高いか否かが確認され、高くない場合、前記放出分岐管(18)が開放されてガスを放出するようになっている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記設定停止プログラム(34)は、前記民生用ネットワークの前記最大圧力値に到達した場合、前記圧縮機要素(2)の前記速度(n)を設定最小値(nmin)に低減することから成り、その後、前記圧縮ガス又は前記油の前記温度(T)が前記決定又は計算された設定最小値(Tmin)よりも高い場合には、設定最小周期(t’min)の後で、前記駆動装置(5)はオフになる、請求項1乃至14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
油噴射式圧縮機であって、
制御された入口弁(7)によって閉鎖することができる入口(6)と、出口(10)とを有する油噴射式圧縮機要素(2)と、
前記圧縮機要素(2)の駆動装置(5)と、
前記圧縮機要素(2)の前記出口(10)に接続される入力部と、圧縮ガスのための民生用ネットワーク(16)を接続することができる出力部とを有する油分離器(13)を備える油回路(20)であって、前記油分離器(13)は、前記圧縮ガスから分離された前記油(21)を回収しかつ噴射管(23)を介して前記油を前記圧縮機要素(2)に噴射することができる圧力容器(12)を備える油回路(20)と、
前記民生用ネットワーク(16)の圧力(p)を判定する圧力センサ(29)と、
前記民生用ネットワーク(16)の圧力(p)が設定最大値(pmax)に到達した場合に、前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)が、設定停止プログラム(34)に従って停止されるようになっている、前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)のための制御装置(28)と、を備え、
前記油噴射式圧縮機(1)は、前記圧縮ガス又は前記油の温度(T)を判定する温度プローブ(33)と、前記圧縮機要素の前記入口(6)に前記油分離器(13)を接続する再循環管(30)と、を備え、前記再循環管(30)は、絞り弁(32)と、前記制御装置(28)に接続された、制御された常閉の閉鎖可能な再循環弁(31)とが組み込まれており、前記制御装置(28)によって、前記民生用ネットワーク(16)が前記設定最大圧力(pmax)に到達した場合に、前記圧縮機要素(2)の前記駆動装置(5)が停止される前に、前記再循環弁(31)が、前記温度プローブ(33)によって測定された前記温度(T)が設定最小値(Tmin)よりも低い場合に開くように、及び、前記駆動装置(5)が、前記温度(T)が前記最小値(Tmin)に到達するまで、又は設定最大周期(tmax)が経過するまで作動を続け、その後、前記駆動装置(5)が停止するようになっており、さらに、前記設定停止プログラム(34)に従って、設定最小温度(Tmin)に到達したときから開始される設定最小周期(t’min)の後で及び/又は設定最小温度(Tmin)に到達したときから開始される任意の停止遅延でもって、前記駆動装置(5)を停止し、さらに、前記再循環プログラム(35)の実行中に、前記圧縮ガス又は前記油の温度(T)が、前記設定最大値(pmax)に到達したときから開始される設定最大周期(tmax)後に前記最小温度(Tmin)に到達しなかった場合、前記設定停止プログラム(34)によって前記駆動装置(5)が停止するようになっている、油噴射式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油噴射式圧縮機の油中の凝縮物を防止する方法に関する。より具体的には、本発明は可変速度の油噴射式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
当該圧縮機は、例えば、ハウジングの軸受に取り付けられ、かつ、負荷の関数である可変速度で駆動装置によって駆動される2つの噛み合ったロータースクリューを有するスクリュー圧縮機要素の形態の圧縮機要素を備える。
【0003】
さらに、当該圧縮機は、ロータースクリューを潤滑及び冷却すると共に、ローター自体の間及びローターとハウジングとの間の隙間をシールするために油を圧縮機要素に噴射するために設けられた油回路を備える。
【0004】
噴射された油は、圧縮ガス中の油滴ミストとして圧縮機要素を離れ、民生用ネットワークに供給される前に、油を分離して回収しかつ随意的に冷却後に油を再び圧縮機要素に噴射するために油分離器を通過する。
【0005】
この形式の公知の圧縮機は、下流の民生用ネットワークでの要求流量及び要求圧力の関数として速度を制御する制御装置を含む。民生用ネットワークでの圧力が設定値に到達した場合、前述の制御装置は、圧縮機要素が特定の停止プログラムに従って停止するのを助け、それによって、圧縮機要素の速度は、設定最小速度に低減され、最小速度に到達した場合に圧縮機要素の駆動装置はオフとなる。
【0006】
圧縮機要素から流出しかつ分離器を通過する圧縮ガスは、油滴に加えて大量の水蒸気を含有する。
【0007】
問題は、圧縮機要素の出口において圧縮ガスの温度が例えば低負荷状態で十分に高くない場合及び圧縮機要素が停止した場合、圧縮ガス中の水蒸気が凝縮して油に取り込まれるので、圧縮機要素が再始動した場合に損傷が発生する可能性があるというリスクがある点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前記の問題点及び他の問題点の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、油噴射式圧縮機の油中の凝縮物を防止する方法であって、圧縮機は、制御された入口弁によって閉鎖することができる入口と、出口とを有する油噴射式圧縮機要素と、圧縮機要素の駆動装置と、圧縮機要素の出口に接続される入力部と、圧縮ガスのための民生用ネットワークに接続することができる出力部とを有する油分離器を備える油回路であって、油分離器は、圧縮ガスから分離された油を回収しかつ油を圧縮機要素に噴射することができる圧力容器を備える油回路と、民生用ネットワークの圧力が設定最大値に到達した場合に圧縮機要素の駆動装置が設定停止プログラムによって停止されるようになっている、圧縮機要素の駆動装置のための制御装置と、を備え、民生用ネットワークの前記最大圧力に到達した場合に圧縮機要素の駆動装置が停止される前に、
−圧縮ガス又は油の温度を判定するステップと、
−温度が、可能な限り油中の凝縮物を防止するために決定又は計算された設定最小値よりも高い場合、設定停止プログラムによる圧縮機要素の駆動装置を停止するステップと、
−温度(T)が、決定又は計算された設定最小値よりも低い場合、駆動装置は直ちに停止されず、決定又は計算された設定最小温度に到達するまで温度を上昇させる目的で、ガスを圧縮し続けて圧縮ガスを油分離器から再循環管を経由して圧縮機要素の入口に再循環させるために、制御装置の再循環プログラムによって入口弁を開いた状態に駆動し続け、次に、設定停止プログラムに従って場合により設定最小周期の後で及び/又は任意の停止遅延でもって、又は最大周期後に最小温度に到達しなかった場合に設定最大周期の終了後に駆動装置を停止するステップと、を含む。
【0010】
本方法により、圧縮機要素は、これまでのように民生用ネットワークの設定作動圧に到達した場合に直ちに停止せず、最初に、圧力容器の油の温度が油中に凝縮物が存在しないように十分であるか否かを確認する。温度が不十分な場合、再循環プログラムをまず完了させ、その間に、圧縮機要素は、ガスを圧縮し続けるために最小速度で作動し続け、このガスは圧縮後に再度圧縮されるように圧力容器から圧縮機要素の入口に案内される。
【0011】
従って、再循環プログラムの間、このガスは常に再圧縮され、圧力容器に対する回路中を流れ、圧縮ガスは加熱され、それと共に圧力容器内の油も加熱される。
【0012】
油中の全ての湿分が蒸発するまで十分に加熱されると、停止プログラムは終了して、圧縮機を通常の方法で停止させるが、必要であれば、所定の遅延を伴うことができ、遅延の間、圧縮機要素は、油の均一な加熱を保証するために再循環で作動し続ける。
【0013】
実際には、油が十分に加熱されたことは、圧縮機要素の出口で測定又は判定される圧縮ガスの温度に基づいて容易に評価することができ、この温度は、圧力容器内の油の温度の良好な指示をなす。
【0014】
それ以上では油中のさらなる凝縮物のリスクがない最小温度は、主として凝縮温度に左右される。設定最小温度が高いほど、油中の凝縮物の存在のリスクが低い。
【0015】
最小温度の値は、全ての点で温度調整弁が設定された温度よりも低い決定又は計算された値であり、これは一般的に存在し、これによって確実に、油が低温の場合、例えば始動時、油は直接的に圧縮機要素に噴射され、油が昇温された場合、油は最初に圧力タンクから油冷却器に迂回して案内される。
【0016】
実際には、このことは、少なくともサーモスタットが存在する限りにおいて、最小温度ができるだけ高いが温度調整弁の温度よりも低い値に設定されることを意味し、実際には、この温度は、60℃〜90℃、例えば、約70℃である。
【0017】
また、最小温度は、凝縮温度に基づいてリアルタイムで判定することができ、凝縮温度は、例えば、測定された周囲温度及び相対湿度に基づいてリアルタイムで計算することができる。
【0018】
再循環プログラムに組み込まれた保護機能は、所望の最小温度に到達することができない場合、それにもかかわらず圧縮機が設定最小周期後に停止することを保証する。
【0019】
別の保護機能は、油の加熱が再循環プログラムの間で早過ぎる場合、設定最大温度に到達した場合に駆動装置は直ちに停止するのを保証する。
【0020】
好ましくは、圧縮ガスは、圧力容器の最小圧力弁が設定された圧力よりも低い圧力を圧力容器内で得るために、再循環プログラムの間に較正済み絞り弁に再循環され、その目的は、一方では圧縮ガスがこの段階で民生用ネットワークに供給されるのを防止するためであり、他方では圧縮機要素への油噴射のために最小内圧を保証するためである。
【0021】
再循環プログラムの完了後、再循環管は再度閉鎖され、駆動装置は、設定された停止遅延後に停止され、この停止遅延は、入口弁の制御に必要な十分な圧力が通常通りに圧力容器で得られることを保証する。
【0022】
また、本発明は、本発明の方法を実行できるように構成された圧縮機に関し、この圧縮機は、制御された入口弁によって閉鎖することができる入口と、出口とを有する油噴射式圧縮機要素と、圧縮機要素の駆動装置と、圧縮機要素の出口に接続される入力部と、圧縮ガスのための民生用ネットワークを接続することができる出力部とを有する油分離器を備える油回路であって、油分離器は、圧縮ガスから分離された油を回収しかつ噴射管を介して油を圧縮機要素に噴射することができる圧力容器を備える油回路と、民生用ネットワークの圧力を判定する圧力センサと、民生用ネットワークの圧力が設定最大値に到達した場合に、圧縮機要素の駆動装置が、設定停止プログラムに従って停止されるようになっている、圧縮機要素の駆動装置のための制御装置と、を備え、圧縮機は、圧縮ガス又は油の温度を判定する温度プローブと、圧縮機要素の入口に油分離器を接続する再循環管とを備え、再循環管は、絞り弁と、制御装置に接続された、制御された常閉の閉鎖可能な再循環弁とが組み込まれており、制御装置によって、民生用ネットワークが最大圧力に到達した場合に圧縮機要素の駆動装置が停止される前に、再循環弁が、温度プローブによって測定された温度が設定最小値よりも低い場合に開くように、及び、駆動装置が、温度が最小値に到達するまで、又は設定最大周期が経過するまで作動を続け、その後駆動装置が必要であれば遅延を伴って停止するようになっている。
【0023】
本発明の特性をより良好に示す目的で、油噴射式圧縮機の油中の凝縮物を防止する本発明による方法の好適な用途、及び、本方法が適用される当該圧縮機の好適な用途を、添付図面を参照して、非制限的に実施例として以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による停止時の油噴射式圧縮機の概略図である。
【
図2】従来の油噴射式圧縮機の停止プログラムを示す。
【
図3】
図2に類似した図であるが本発明による圧縮機の停止プログラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す装置は、本発明による油噴射式スクリュー圧縮機1に関し、2つの噛み合ったヘリカルローター4が駆動装置5によって駆動される、ハウジング3を有する公知のスクリュー式圧縮機要素2を備える。
【0026】
圧縮機要素2は、制御可能な入口弁7によって閉鎖することができる入口6が備え、それにより、入口6は、環境からガス、この場合は空気を引き込む吸気管8によって入口フィルタ9に接続される。
【0027】
また、圧縮機要素2は、出口10と、この出口に接続された圧力管11とを備え、圧力管は、油分離器13の圧力容器12を介して、並びに圧力管14及び冷却器15を介して下流側民生用ネットワーク16に接続され、様々な空圧工具又は本明細書には示されていない類似のものに供給するようになっている。
【0028】
圧力容器12の吐出部において、圧力管14には最小圧力弁17が付加されており、これは圧力容器12の圧力が設定最小値pminに到達した場合にのみ開放する。
【0029】
放出分岐管18は、圧力容器12に設けられており、この分岐管18は、入口6の位置に開口しており、通常はばねによって閉鎖状態に維持されるばね付勢式の制御可能な電気弁の形態の放出弁19によって閉鎖することができる。
【0030】
スクリュー圧縮機1は、潤滑及び/又は冷却、及び/又は、ローター4自体の間の及びローター4とハウジング3との間のシールを目的として、圧力容器12の圧力の影響を受けて、圧力容器12から圧力容器12内の揚水管22及び噴射管23を経由して圧縮機要素2に油21を噴射するための油回路20を備える。
【0031】
圧力容器12から噴射管23に運ばれる油21は、圧力容器12からの油21を冷却するために、油フィルタ24及び温度調整弁25、及び分岐管26を経由して、油冷却器27を通って迂回して案内することができる。
【0032】
図示の実施例において、厳密には必要ではないが、冷却された油は、圧縮機要素2に噴射される前に、駆動装置5の冷却のためにこの駆動装置5に案内される。
【0033】
この場合、駆動装置5は、民生用ネットワーク16の負荷の関数として、より具体的には民生用ネットワーク16から取り去られるガスの圧力及び流量の関数として制御される可変速度nの駆動装置である。
【0034】
この駆動装置5は、民生用ネットワーク16の前記の圧力の関数として電気又は電子制御装置28によって公知の方法で制御され、圧力は、例えば、圧力センサ29又は類似のものによって求める。
【0035】
また、制御装置28は、放出弁19の開閉制御を保証する。
【0036】
また、本発明は、圧縮機1が再循環管31を備えることを特徴としており、再循環管31は、圧力タンク12を圧縮機要素2の入口6に接続し、かつばね付勢された常閉の電気弁の形態の再循環弁31によって閉鎖することができる。
【0037】
再循環管30には、再循環弁31が開放された場合に、圧力タンク12の圧力、最小圧力弁17の設定最小圧力pminよりも低い圧力となるように計算された較正済み絞り弁32が存在する。
【0038】
この再循環弁31は、制御装置28に接続されており、主として前記の圧力センサ9によって測定された圧力pの関数として及び圧縮機要素2の出口10での又はこの出口の圧縮ガスの温度Tの関数として再循環弁31を制御するようになっており、この温度Tは、例えば、信号が制御装置28にフィードバックされる温度センサ33を使用して測定される。
【0039】
本発明による方法を以下のように説明することができる。
【0040】
駆動装置5を始動させる場合、圧縮機1は、
図1に示すような始動状態にあり、入口弁7は開放され、放出弁19及び再循環弁31は、両方とも放出管18及び再循環管30を遮断するために閉鎖されている。さらに、圧力タンク12は、油12で部分的に満たされる。
【0041】
作動中、水蒸気が存在している空気は、環境から入口8を通って引き込まれて圧縮機要素2で圧縮される。
【0042】
次に、圧力容器12内の圧力は上昇を開始し、油21が圧力タンク12から噴射管23を通って圧縮機要素2に確実に噴射され、油は、その温度及び温度調整弁25の位置に応じて、油冷却器27を迂回するように、噴射管23に直接流れる。温度調整弁25は、例えば70℃である温度T25に設定される。
【0043】
圧縮空気内に存在する油は、油分離器13で分離されて圧力タンク12に回収される。
【0044】
圧力タンク12が前記の最小圧力、つまり、民生用ネットワーク16の逆圧に打ち勝つのに十分な圧力に到達するとすぐに最小圧力弁17が開放し、圧縮空気は、冷却器15での事前冷却の後に民生用ネットワークに供給される。
【0045】
民生用ネットワークの圧力pは、圧力プローブ29で測定され、その信号が制御装置28に送られる。
【0046】
民生用ネットワークの圧力pが設定値pmaxに到達するとすぐに、制御装置28は、指定の停止プログラム34に従って駆動装置を停止する信号を与える。
【0047】
再循環を備えていない従来の圧縮機の場合、駆動装置の速度nは、設定最小速度nminに減速され、この最小速度nminに到達するとすぐに駆動装置は完全に停止され、この速度は、例えば0〜10,000回転/分、例えば、2,100回転/分である。
【0048】
これは、
図2に概略的に示されており、
図1の状態からのステップAの開始後、ステップBにおいて民生用ネットワークの圧力pを、繰り返して又は連続的に測定して設定最大圧力pmaxと比較し、その後、圧力pがpmaxより大きくなるとすぐに、ステップCにおいて停止プログラムを開始する。
【0049】
本発明の場合、追加の再循環プログラム35が、
図3に概略的に示すようにステップBとステップCの間で実行される。従って、この再循環プログラム35は、圧力pがpmaxに等しくなるとすぐに開始される。
【0050】
この再循環プログラム35の間では、ステップDにおいて、温度Tを連続的に又は繰り返して測定し、設定最低温度Tminと比較するが、この最低温度を上回ると油中の凝縮物のリスクがない。
【0051】
温度TがTminよりも低い場合、駆動装置5の速度は、設定最小値nminに低減されて、
図3のフロー図のステップEに示すように再循環弁21が開放される。
【0053】
従って、圧縮機要素2は、最小速度で空気の圧縮を続けるので、この圧縮空気は、圧力容器12から再循環管18及び絞り弁32を通って入口6までフィードバックされ、再度、圧縮機要素2に引き込まれて圧縮される。
【0054】
絞り弁は、この状態において、最小圧力弁が設定される圧力値pmnを下回る圧力が圧力タンク12内で達成されるよう意図されており、圧縮空気は、民生用ネットワークに漏出できない。
【0055】
従って、この空気は、
図4において矢印Qで示すような回路を辿って流れ、結果的に再度引き込まれて圧縮されるので、この空気の温度が上昇して、やはり圧力タンク12内の油21の温度がTminに到達するまで上昇する。
【0056】
Tminに到達すると、次に、ステップDからステップCに進み、再循環のない従来の圧縮機と同様に、停止プログラム34が始まる。
【0057】
停止プログラム中、駆動装置はオフとなり、再循環弁21は、再び閉鎖されて開始位置に戻る。
【0058】
再循環プログラムに使用される温度Tは、好ましくは圧縮機要素の出口で測定又は判定された圧縮ガスの温度である。
【0059】
それを上回ると油中に凝縮物が存在するリストがないか又は最小である吐出部の温度は凝縮温度に左右され、これは圧縮機1が作動する環境変数に左右される。
【0060】
設定温度Tminが高いほど、そのリスクは低くなる。全ての場合において、Tminは、少なくとも温度調整弁25が存在する限りにおいて、温度調整弁25が設定される温度T25よりも低いことが必要であり、油を昇温させる再循環フェーズ中に、油は油冷却器27に送られない。
【0061】
次に、最小温度Tminは、好ましくは、温度調整弁25が設定される前述の温度T25を下回って、例えば70℃を少し下回って、できるだけその近くに設定される。
【0062】
実際には、この温度Tminは、60℃〜90℃である。
【0063】
圧縮機は、温度調整弁25の代わりに、電子制御式混合弁を備えることもでき、その場合、温度調整弁25が設定される温度を考慮する必要はない。
【0064】
様々な場所で、例えば、圧力タンク内の油21の温度を測定して対応するTminを設定することは排除されない。
【0065】
図5は、
図3のようなフロー図であるが、以下に説明するような追加の保護を備えたフロー図である。
【0066】
制御装置28において再循環プログラムの最大周期tmaxが設定される。最小温度Tminに到達していない限りにおいて、方法ステップFの間、再循環プログラム35の開始からの再循環プログラム35の持続時間が設定最大周期を超えていないか否かを確認する。
【0067】
この周期tmax内で温度Tminに到達しなかった場合、これは、周囲温度が所望の温度Tminに到達するには低すぎるか、又は圧縮機1の冷却能力が高すぎるという指示である可能性がある。
【0068】
この場合、最大周期tmaxに到達した後、再循環プログラムが停止され、直ちに停止プログラムを開始するためにステップCに進み、エラーカウンタfが1だけ増分され、このエラーカウンタはこの状態が何回発生したかを指示する。
【0069】
前述の最大周期tmaxは、例えば0〜40分、好ましくは約600秒に設定される。
【0070】
再循環プログラム中に温度Tが設定値Tminに到達した場合、その時点でタイマが起動してTminに到達してからの時間t’を記録し、圧力容器12内の油21の均一な加熱を保証するために、ステップCで駆動装置5を停止する前に、ステップGにおいて再循環プログラムを設定最小周期t’minにわたって継続させる。
【0071】
前述の最小周期t’minは、例えば0〜60秒、好ましくは約10秒に設定される。
【0072】
周期t’minの間、温度Tはさらに監視され、駆動装置5は、温度Tの上昇が速すぎて圧縮機を時間内に停止することができない場合である、Tminよりも高い設定最大温度Tmaxに到達するか又は超えた場合に直ちに停止される。このことは
図5のステップHに示す。
【0073】
設定最大温度Tmaxは、例えば、前述の設定最小温度Tminよりも5℃〜20℃だけ高い値に、好ましくは、この設定最小温度Tminよりも10°Cだけ高い値に、結果として例えば80℃に設定される。
【0074】
再循環プログラム35の終了時、再循環弁31は、停止プログラム34が始まる前に閉鎖される。
【0075】
停止プログラム34の間、本発明の特定の態様によれば、駆動装置5は、再循環弁31の閉鎖後、所定の停止遅延Δtを伴ってオフにすることができる。その結果、駆動装置5は、この停止遅延Δtの間に最小速度nminで動作を継続するが、この遅延時間は、0〜40秒、好ましくは約2秒である。
【0076】
この停止遅延Δtの目的は、入口弁7を通常通り閉鎖できるようにするために、圧力容器12内に、制御圧として機能することができる十分な圧力が形成されるのを保証することである。
【0077】
本発明の別の態様によれば、再循環弁31が閉鎖された後でかつ駆動装置5がオフになる前に、制御装置28は、最初に温度Tが設定最小温度Tminよりも高いか否かを確認し、高くない場合、放出弁19を開放して圧縮機1から蒸発した凝縮物を除去するようになっている。
【0078】
付加的な保護は、民生用ネットワーク16の圧力pが前述の値pmaxよりも高く設定された設定値pstopを上回った場合、圧縮機を直ちに停止することで構成することができ、これは、例えば、再循環弁31が閉鎖された場合に発生する可能性があり、この場合、空気は再循環できなくなり、結果的に最小圧力弁17を通って民生用ネットワークに漏出することになり、民生用ネットワーク16の圧力pは、非意図的にpmaxを超える可能性がある。
【0079】
前述の実施例は、終始、可変速度の駆動装置5を有する圧縮機要素2に関するが、本発明は、一定速度の圧縮機要素2に使用することができる。
【0080】
本発明は、一例として説明されかつ図面に示された実施形態に限定されるものではなく、本発明による方法及び圧縮機は、本発明の範囲から逸脱することなく全ての種類の変形例で実現することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 油噴射式スクリュー圧縮機
2 圧縮機要素
3 ハウジング
4 ローター
5 駆動装置
6 入口
7 入口弁
8 吸気管
9 入口フィルタ
10 出口
11 圧力管
12 圧力容器
13 油分離器
14 圧力管
15 冷却器
16 下流の民生用ネットワーク
17 最小圧力弁
18 放出分岐管
19 放出弁
20 油回路
21 油
22 揚水管
23 噴射管
24 油フィルタ
25 温度調整弁
26 分岐管
27 油冷却器
28 制御装置
29 圧力センサ
30 再循環管
31 再循環弁
32 絞り弁
33 温度センサ