(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シートの着座状態において、前記線状部材の前記直線部の下方には、前記シートバックフレームの左右の側部同士を連結する第2線状部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用シートのシートフレーム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<<本発明の一実施形態に係る車両用シートの概略構成>>
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る車両用シートについて図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明において、前後方向とは、車両の前後方向(全長方向)を意味し、車両用シートの前後方向に相当する。また、幅方向とは、車両の左右方向(横幅方向)を意味し、車両用シートの幅方向に相当する。
また、幅方向の外側とは、シートSが搭載される車両のドアに近い側のことであり、幅方向の内側とは、車両のドアから離れている側のことである。
また、以下に説明する各部材の位置や姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが使用状態、すなわち、着座状態にあるときの位置や姿勢等であることとする。
【0024】
本実施形態に係る車両用シート(以下、単にシート)Sは、車両の後部座席を構成するものであり、本実施形態では
図1に示すように幅方向において2つ並んで配置されている。幅方向に2つ並んだシートSについては、その横幅(幅方向における長さ)が異なっており、本実施形態では横幅の比が約4:6に設定されている。ただし、これに限定されるものではなく、横幅の比は任意に設定可能であり、例えば5:5であってもよい。
【0025】
幅方向に2つ並んだシートSは、それぞれ着座部S1を備え、着座部S1は、乗員が着座するシートクッション1、乗員を背側から支えるシートバック2及び乗員の頭部を支えるヘッドレスト3からなる。また、
図2等に示すように、各シートSの後方には車体フロアTに形成された凹型の収納スペースT1が設けられている。この収納スペースT1の内部が収納位置に相当し、各シートSは、収納スペースT1に収納可能となるように構成されている。
【0026】
シートSの収納動作について概説すると、シートSが収納前の状態、すなわち、
図2に図示の着座可能状態にあるときに乗員が、入力部としての
図1の操作ストラップStを引っ張ると、矢印A1方向にシートバック2が前傾して着座部S1が折り畳まれるようになる。その後、折り畳まれた着座部S1は、矢印A2方向に向かって、後方に沈み込む方向へ移動する。そして、最終的には、
図3に示すように収納スペースT1内にシートS全体が格納される。
【0027】
そして、シートSは、
図2に示すように、上記の収納動作を実現するため、着座部S1の下部に、移動装置としてのシート収納機構4を備えている。このシート収納機構4は、着座部S1を収納スペースT1内に向けて移動させるための機構であり、
図2等に図示の支持脚としてのフットリンク10及び回動リンク20を主たる構成要素として備えている。
【0028】
フットリンク10は、車体フロアTとシートクッション1との間に配置され、シートクッション1を含む着座部S1を支持する。このフットリンク10は、不図示のロック機構を下端部に備えており、車体フロアT上に取り付けられたストライカT2に係合する。フットリンク10がストライカT2に係合していることにより、着座部S1が着座可能位置に位置した状態でロックされる。反対に、フットリンク10とストライカT2との係合状態が解除されると、着座部S1を含むシートS全体は、移動自在となり、収納スペースT1内に向かって移動することが可能となる。
【0029】
フットリンク10とストライカT2との係合状態は、不図示のロック解除機構により解除され、当該ロック解除機構は、シートバック2が前傾して所定位置に至ったときに作動する。
【0030】
回動リンク20は、長尺状の部材であり、その延出方向一端部(上端部)がシートクッション1の骨格をなす不図示のシートクッションフレームに連結している。また、回動リンク20の延出方向他端部(下端部)は、車体フロアTに対して回動自在に軸支されている。そして、フットリンク10とストライカT2との係合状態が解除された状態において、回動リンク20が後傾するように回動すると、着座部S1が収納スペースT1内に向かって移動するようになる。すなわち、回動リンク20は、着座可能位置と収納位置との間で着座部S1を移動させるために車体フロアTに対して回動する。
【0031】
<<シートバックフレーム2a>>
次に、シートバック2の骨格をなすシートバックフレーム2aの構成について
図4〜
図7を参照しながら詳しく説明する。
シート収納機構4は、
図4に示すように、後部座席を構成し横幅の異なる2つのシートSのそれぞれに対して個別に設けられている。ここで、横幅が短いシートSに設けられたシートバックフレーム2aと横幅が長いシートSに設けられたシートバックフレーム2aとでは、
図8の補助枠部材51sが更に設けられている等、若干の相違があるものの、基本的な構成については同様である。以下、横幅が短いシートSのシートバックフレーム2aを主要に説明する。
【0032】
図1〜
図3のシートバック2は、
図5〜
図7に示すシートバックフレーム2aに、公知のクッションパッドが載置され、更に公知の表皮材で被覆することにより構成される。
シートバックフレーム2aは、略矩形でシートバック2の外形を形成する枠部材51,枠部材51の側部に沿って上下方向に延在するサイドフレーム54,55,枠部材51によって形成される矩形の領域を閉じるように張り渡されるパンフレーム60を主要構成要素としている。
枠部材51は、金属性パイプが屈曲されて略矩形に形成された枠状体からなり、車両内側及び外側でそれぞれ上下方向に延在する縦枠部としての内枠部51i,外枠部51oと、内枠部51i,外枠部51oの上端及び下端を架橋する横枠部としての上枠部51a,下枠部51bとを備えている。
【0033】
上枠部51aの車両外側端部は、斜め下方に屈曲されて、上枠部51a及び外枠部51oに対して斜めに延びる上外側傾斜部51cが形成されている。また、上枠部51aの車両内側端部は、上外側傾斜部51cよりも小さな角度で斜め下方に屈曲されて、上枠部51a及び内枠部51iに対して斜めに延びる上内側傾斜部51dが形成されている。
下枠部51bの内側端部は、斜め上方に屈曲されて、下枠部51b及び内枠部51iに対して斜めに延びる下内側傾斜部51eが形成されている。
【0034】
上枠部51aは、長さ方向の2箇所が潰し加工され、この潰し加工された位置に、一対のヘッドレストピラー31を挿通するための一対のブラケット52が溶接固定されている。ヘッドレストピラー31は、
図5に示すように、シート上下方向において、下内側傾斜部51eが設けられた位置まで延出している。
また、上内側傾斜部51dの上枠部51a寄りの位置には、潰し加工されて前方の面が略平面状となった平面部51fが形成され、平面部51fの上面には、細いパイプが略楕円環状に曲げ加工されてなる楕円環状体53が溶接固定されている。
【0035】
内枠部51i,外枠部51oは、それぞれ、シートバック2の車両内側及び車両外側に配置されている。
内枠部51i及び外枠部51oのシート外側端部には、それぞれ内枠部51i及び外枠部51oに沿って、サイドフレーム54,55が溶接固定されている。サイドフレーム54は、車両内側、サイドフレーム55は、車両外側に位置する。
サイドフレーム54,55は、板金をプレス加工して成形されてなり、それぞれ、シート前後方向に延びる板状の側部54a,55aと、側部54a,55aの前端がシート内側に向かって屈曲された前縁部54b,55bと、側部54a,55aの後端がシート内側に向かって屈曲された後縁部54c,55cを備え、それぞれ、前縁部54b,55bと、側部54a,55aと、後縁部54c,55cとで、内枠部51i及び外枠部51oのシート外側の面を包み込むように配置されている。
後縁部54c,55cは、
図5〜
図7に示すように、それぞれ、上方及び下方に、シート内側に向かって張り出した略矩形の張り出し部54cu,54cl,55cu,55clをそなえている。張り出し部54cu,54cl,55cu,55clは、内枠部51i,外枠部51oとパンフレーム60との間に挟持され、内枠部51i,外枠部51o及びパンフレーム60にそれぞれ溶接固定されている。
【0036】
また、サイドフレーム54,55の下端は、枠部材51よりも下方まで延出し、枠部材51よりも下方の位置に、不図示の軸孔が形成されている。この不図示の軸孔には、シートSの収納時にシートバック2をシートクッション1に対して折り畳む際、及びシートバック2のシートクッション1に対する角度を変更するリクライニング時において、シートクッション1に対してシートバック2を回動させる回動軸56が取り付けられている。
【0037】
車両外側のサイドフレーム55の側部55aの不図示の軸孔には、
図6,
図7に示すように、シート外側に向かって張り出すように、リクライニング装置としてのリクライニングユニットLが固定されている。リクライニングユニットLは、シートバック2のシートクッション1に対する角度を変更させるための装置である。
車両外側のサイドフレーム55の側部55aのシート外側の面には、
図5〜
図7に示すように、剛性向上部材57が溶接固定されている。剛性向上部材57は、長尺の単一の金属性のワイヤが、略C字状に曲げ加工されてなり、上端57uが、側部55a外側面の上端近傍に溶接固定され、下端57lが、側部55a外側面の中央下寄りの位置に固定されている。剛性向上部材57は、上端57u及び下端57lの間の突出部57aが、
図6に示すように、シート左右方向の外側に向かって、側部55aから垂直に張り出している。
突出部57aの側部55aからの張り出し幅は、リクライニングユニットLの側部55aからの張り出し幅よりも若干小さく形成されており、突出部57aのシート左右方向外側の端部は、リクライニングユニットLのシート左右方向外側の端部よりも若干シート左右内側に配置されている。
シート外側のサイドフレーム55は、剛性向上部材57と外枠部51oにより挟持されている。
【0038】
パンフレーム60は、金属性の略板体からなり、外形が、枠部材51によって形成される略矩形の形状と略等しい形状に形成され、枠部材51の後面を閉じるように張り渡されている。
パンフレーム60の上方は、サイドフレーム54,55の上端よりも若干上方の部分において、枠部材51のうち、上外側傾斜部51cから上枠部51aを経て上内側傾斜部51dに至るまでの部分に溶接固定されている。
また、パンフレーム60の左右両端側は、
図6,
図7に示すように、前面がサイドフレーム54,55の後縁部54c,55cの張り出し部54cu,54cl,55cu,55clの後面に溶接固定されている。
【0039】
パンフレーム60の下端側は、円筒形状の下枠部51bの後面の形状に沿うように、シート後方からシート前方に向かって湾曲し、湾曲したところで、下枠部51bの後面に溶接固定されている。
パンフレーム60の下端側は、下枠部51bに溶接固定された前方下端から、再度下方に延出して、その下端が、円柱形状の回動軸56の後面の形状に沿うように、シート後方からシート前方に向かって湾曲し、湾曲したところで、回動軸56の後面に溶接固定されている。パンフレーム60下端側において、シート後方からシート前方に向かって湾曲した部分が、特許請求の範囲の折返し部の屈曲部、湾曲した部分の先端がシート前方に向かって延出した部分が特許請求の範囲の折返し部の延出部に該当する。
パンフレーム60の下端は、回動軸56よりもシート前方に位置している。
また、パンフレーム60の下端側の、下枠部51bに溶接固定された位置に連続した位置には、シート幅方向の一部に、ビード60bが2箇所に形成されている。
【0040】
パンフレーム60の前面には、内枠部51iと外枠部51oとを橋渡すように、補強用の上方線状部材61,下方線状部材62が溶接固定されている。
上方線状部材61,下方線状部材62は、円柱形の直線状の金属性のワイヤの両方の端部61e,62eが、同じ方向に直角に屈曲された略コ字状からなり、両方の端部61e,62eが、それぞれ、内枠部51i及び外枠部51oのシート内側の面に溶接固定されている。
また、両端部の間の直線状の部分は、数箇所で、パンフレーム60の前面に溶接固定されている。
【0041】
上方線状部材61の両方の端部61eは、サイドフレーム54,55の上端より若干下側の位置において、内枠部51i及び外枠部51oに溶接固定されている。
そして、左右のサイドフレーム54,55も、両方の端部61eが溶接固定されている位置と、同じ高さの位置で、内枠部51i及び外枠部51oに溶接固定されている。
従って、内枠部51i及び外枠部51oには、シート内側の面が上方線状部材61の端部61eと溶接固定されている位置のシート外側の面に、サイドフレーム54,55が溶接固定されている。
更に、サイドフレーム55には、内面に、内枠部51iが溶接固定されている位置のシート外側の面において、剛性向上部材57の上端57uが溶接固定されている。
このように、上方線状部材61の両方の端部61e,サイドフレーム54,55,剛性向上部材57の上端57uが、長さ方向における同じ位置で溶接固定され、溶接固定位置が、同じ部材のシート内外の面に配置されているため、剛性を向上することができる。
【0042】
また、上方線状部材61の両方の端部61eは、サイドフレーム54,55の後縁部54c,55cの張り出し部54cu,54cl,55cu,55clが形成されていない位置において、外枠部51o,内枠部51iに溶接されている。また、下方線状部材62の両方の端部62eは、サイドフレーム54,55の後縁部54c,55cの上下の張り出し部54cu,54cl及び55cu,55clの間において、外枠部51o,内枠部51iに溶接されている。従って、サイドフレーム54,55の後縁部54c,55cと上方線状部材61,下方線状部材62との干渉が抑制される。
【0043】
上方線状部材61と下方線状部材62の長さ方向の中央に挟まれた位置には、パンフレーム60前面に、乗員による操作ストラップStの操作をシート収納機構4に伝達するための伝達装置としての可動ユニット63が設けられている。
可動ユニット63は、
図7に示すように、パンフレーム60前面に固定された補強板64と、補強板64及びパンフレーム60に設けられた軸孔に挿通された回動軸65と、回動軸65を中心として回動可能な長尺板状の第一アーム66と、第一アーム66の回動軸65逆側の端部に、第一アーム66に対して回動可能に連結された長尺の第二アーム67と、第二アーム67の第一アーム逆側の端部に取り付けられた操作ストラップStと、第一アーム66の回動軸65近傍の外側面に固定されたケーブルCbと、を備えている。
第二アーム67は、
図7に示すように、上枠部51aに固定された楕円環状体53を通されて、
図1に示すように、操作ストラップStがシートバック2上端に突出するように配置されている。
【0044】
可動ユニット63は、乗員によって操作ストラップStが上方へ引かれると、第二アーム67が上方へ移動して第一アーム66を、
図7の前面視において時計回りに回転させ、第一アーム66の回動軸65周りに固定されたケーブルCbが引かれることにより、シート収納機構4を稼働させる。
補強板64は、上辺64u及び下辺64lがシート幅方向に延びる略台形状からなり、上辺64uが、上方線状部材61の下端に、下辺64lが、下方線状部材62の上端に当接している。
また、可動ユニット63は、パンフレーム60のうちビードが設けられていない平面部68に設けられており、パンフレーム60には、補強板64の周囲に、平面部68よりもシート前方に向かって突出するビード部としてのビード69が複数設けられている。
【0045】
上方線状部材61と下方線状部材62は、
図5に示すように、ヘッドレストピラー31と垂直に交差している。また、可動ユニット63は、シート幅方向において、一対のヘッドレストピラー31に挟まれた位置に配置されている。
【0046】
パンフレーム60には、上方線状部材61と下方線状部材62との間を掛け渡すように、ガイド線状部材70が固定されている。
ガイド線状部材70は、円柱状の直線状の金属性のワイヤの両方の端部70eが、同じ方向に直角に屈曲された略C字状からなる。ガイド線状部材70の上方の端部70eは、下面が上方線状部材61の上面に当接するように、パンフレーム60の前面に溶接固定され、下方の端部70eは、上面が下方線状部材62の下面に当接するように、パンフレーム60の前面に溶接固定されている。
【0047】
ガイド線状部材70の両方の端部70eの間の直線部70sは、上端側及び下端側が、上方線状部材61及び下方線状部材62のパンフレーム60逆側の面に当接しており、パンフレーム60との間に、上方線状部材61及び下方線状部材62の厚み分の隙間を持って配置されている。つまり、上方線状部材61及び下方線状部材62は、パンフレーム60とガイド線状部材70の直線部70sとで挟持されている。
直線部70sは、シート幅方向において、楕円環状体53のシート内側の端部と略同じ位置に、上下方向に延びるように配置されており、第二アーム67を取付けたときに、第二アーム67が沿って摺動するスライドガイドとしての役割を果たす。
なお、第一アーム66は、パンフレーム60と直線部70sとの間の隙間に挿通されている。
【0048】
図8は、後部座席を構成し横幅の異なる2つのシートSのうち、横幅が長いシートSに設けられたシートバックフレーム2aを示す図である。
横幅が長いシートSに設けられたシートバックフレーム2aでは、上枠部51aと下枠部51bとを橋渡す補助枠部材51sが設けられ、補助枠部材51sと外枠部51oとに挟まれた領域は、
図5〜
図7の横幅が短いシートSのシートバックフレーム2aの構成と同様である。