(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543753
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】プラズマを使用して固体材料および材料の溶液前駆体液滴を高密度化および球状化する方法
(51)【国際特許分類】
C01F 17/00 20060101AFI20190628BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20190628BHJP
C01B 13/14 20060101ALI20190628BHJP
C01B 13/28 20060101ALI20190628BHJP
H05H 1/30 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
C01F17/00 B
B01J19/08 K
C01B13/14 B
C01B13/28
C01B13/14 A
H05H1/30
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-148459(P2018-148459)
(22)【出願日】2018年8月7日
(62)【分割の表示】特願2016-567676(P2016-567676)の分割
【原出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2019-5748(P2019-5748A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】515084719
【氏名又は名称】アマスタン・テクノロジーズ・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カマル・ハディディ
(72)【発明者】
【氏名】マッカルーフ・レジダル
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−508166(JP,A)
【文献】
特表2012−521617(JP,A)
【文献】
特開平09−157542(JP,A)
【文献】
特表2009−534183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00 − 13/36
C01F 17/00
B01J 19/08
H05H 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面被膜用供給材料とともに粉末粒子からなる供給材料を噴射した後にプラズマからの排出ガスから抽出される、マイクロ波プラズマを使用して不動態化された球状高密度粉末生成物粒子を生成する方法であって、
a)供給材料を、材料フィーダを介して、軸対称マイクロ波プラズマトーチ内に軸方向に導入することと、
b)前記供給材料を軸対称の層流同伴流を使用して同伴することと、
c)前記供給材料を軸対称の層流冷却流を使用してマイクロ波プラズマの方に導くことと、
d)前記供給材料の次に不動態化材料を導入することと、
e)前記供給材料および前記表面被膜用供給材料を、マイクロ波生成プラズマ内で処理することと、
f)前記排出ガスから粉末生成物を抽出することと
を含む、不動態化された球状高密度粉末生成物粒子を生成する方法。
【請求項2】
前記不動態化材料が、気相材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不動態化材料が、霧状液体材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成物粒子が、球状であり、シェル−コア構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
コア構造が、供給材料で作られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
シェル構造が、被膜用供給材料で作られる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
表面被膜用供給材料とともに粉末粒子からなる供給材料を噴射した後にプラズマからの排出ガスから抽出される、マイクロ波プラズマを使用して不動態化された球状高密度粉末生成物粒子を生成する方法であって、
a)供給材料を、材料フィーダを介して、軸対称マイクロ波プラズマトーチ内に軸方向に導入することと、
b)前記供給材料を軸対称の層流同伴流を使用して同伴することと、
c)前記供給材料を軸対称の層流冷却流を使用してマイクロ波プラズマの方に導くことと、
d)前記供給材料をマイクロ波生成プラズマ内で処理することと、
e)マイクロ波エネルギーインプットの下流にあるプラズマ排出パース内に不動態化材料を導入することと、
f)前記プラズマ排出ガスから被覆された粉末生成物を抽出することと
を含む、不動態化された球状高密度粉末生成物粒子を生成する方法。
【請求項8】
前記不動態化材料が、気相材料である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記不動態化材料が、霧状液体材料である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記生成物粒子が、球状であり、シェル−コア構造を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
コア構造が、供給材料で作られる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
シェル構造が、被膜用供給材料で作られる、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高密度球状生成物を生成するように供給材料を取得し、処理する方法を対象とする。供給材料は、セラミックもしくは金属材料を含む、スプレードライ技術からの粉末粒子、または溶液前駆体液滴からなる。より詳細には、本発明は、高密度球状生成物を生成するように材料を処理する間に層流パターンを作り出すことができるマイクロ波プラズマトーチを使用する方法を対象とする。トーチ内の均一な温度プロファイルの軸対称高温ゾーンにおける層流は、均質な材料分布による均一な球状粒子の生成を可能にし、それによって、最終生成物が優れた特徴を持つようになる。
【背景技術】
【0002】
工業粉末を作製するときの最も重要な態様のうちの1つは、球状化プロセスである。球状化プロセスによって、スプレードライおよび焼結技術により生成される粉末、または従来の粉砕方法により生成される角張った粉末が球体に変形される。球状粒子は、より均質な形状であり、より高密度であり、孔がより少なく、より高い流動性をもたらし、より低い脆砕性を持つ。これらの特徴は、粉末を、射出成形、被膜の溶射などの適用に優れたものにし、またニアネットシェイプを有する部分をもたらす。
【0003】
現在の球状化方法には、1978年2月28日発行の米国特許第4076640号に記載の熱アークプラズマを用いる方法、および、2005年7月19日発行の米国特許第6919527号に記載の無線周波数生成プラズマを用いる方法がある。しかし、これら2つの方法には、無線周波数プラズマの特徴および熱アークプラズマの特徴に起因する制限がある。
【0004】
熱アークプラズマの場合、2つの電極間で電気アークが生成され、次いで、それがプラズマガスを使用してプラズマチャネルから吹き飛ばされる。次いで、粉末が側部からプラズマプルーム内へと垂直にまたはある角度で噴射される。粉末は、プラズマプルーム内で高温のプラズマに曝され、その後の処理の間にフィルタに球体として収集される。熱アークプラズマの問題としては、電極の高い温度が電極のエロージョンを引き起こし、それによって、電極材料によるプラズマプルームの汚染が引き起こされ、結果的に、処理されるべき粉末が汚染されることになる。さらに、熱アークプラズマプルーム内の温度勾配は、本質的に一様でない。よって、側部からプラズマプルーム内に粉末を噴射すると、粉末は、一様でない温度勾配に曝され、それによって均質でないサイズ、密度または多孔度の粒子が生成されることになる。
【0005】
無線周波数プラズマによる球状化の場合、プラズマは、雰囲気圧力での誘導により誘電性円筒体内に生成される。無線周波数プラズマは、プラズマ中への無線周波数エネルギーの低いカップリング効率(coupling efficiency)、ならびに、アークおよびマイクロ波生成プラズマに比べて低いプラズマ温度を有することが知られている。無線周波数プラズマにおいてプラズマを生成する役割を果たす磁場は、不均一なプロファイルであり、それによって、一様でない温度勾配が引き起こされ、したがって、粒子の熱処理が不均質になる。これは、最終生成物のサイズ、微細構造および密度または多孔度の不均質性を引き起こす。
【0006】
したがって、高い純度の汚染のない均質な球状粒子になるように、処理されるすべての供給材料について均質かつ均一な高温熱経路をもたらす必要がある。しかし、そうした方法は報告されていない。
【0007】
したがって、上記より、当業界において、本明細書に記載され上述された欠点および限界を克服する必要があることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4076640号明細書
【特許文献2】米国特許第6919527号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0173641号明細書
【特許文献4】国際公開第2014/052833号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
セラミック材料の幾何学的に不均一な粉末粒子および溶液前駆体液滴を球状化し高密度化するのに、層流パターンを生成することができるマイクロ波生成プラズマトーチ装置を使用することによって、従来技術の欠点が克服され、さらなる利点がもたらされる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、加圧された粉末フィーダが、プラズマチャンバ内に粉末粒子を軸方向に噴射するのに使用される。粉末粒子は、プラズマチャンバ内において層流ガス流パターン内で同伴され、マイクロ波生成プラズマ内の均一な温度プロファイルに曝されることによって均一な熱処理を受ける。その結果、均一な密度を有する球状の真珠様粒子になる。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、溶液前駆体液滴を噴射するのに液滴作製装置または霧化装置が使用される。溶液前駆体液滴は、層流ガス流パターン内で同伴され、マイクロ波生成プラズマ内の均一な温度プロファイルに曝されることによって均一に熱処理され、それによって均一な密度を有する球状の真珠様粒子が生成される。
【0012】
本発明の他の特徴は、米国特許出願第13445947号によるマイクロ波生成プラズマを使用することである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、均一なサイズおよび形状を有し均質な材料分布を特徴とする高密度球状粒子になるように、マイクロ波生成プラズマにより処理されるべき供給材料に、乱流の影響がない層流環境をもたらすことである。
【0014】
本発明の他の目的は、生成物に、改善された熱特性、改善された耐腐食摩耗性、および界面応力に対するより高い耐性をもたらすように、材料のプラズマ処理を向上させることである。
【0015】
さらなる特徴および利点は、本発明の技術により実現される。本発明の他の実施形態および態様は、本明細書に詳細に記載され請求される本発明の一部としてみなされる。
【0016】
本発明の様々な実施形態によって満足される望ましい目的の本明細書での列挙は、これらの目的のいずれかまたはすべてが、本発明の最も一般的な実施形態において、またはそのより具体的な実施形態のいずれかにおいて、個別的か集合的のどちらかで、必須の特徴として存在していることを暗示または示唆しているわけではない。
【0017】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部で具体的に指摘され、明確に請求される。しかし、本発明は、構成および実施方法の両方について、そのさらなる目的および利点とともに、添付図面と併せて以下の説明を参照すれば、最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】米国特許出願公開第2008/0173641A1号に記載のマイクロ波生成源、米国特許出願第13445947号に記載されるような誘電性プラズマトーチ、および、本発明による、粉末粒子を分配する粉末フィーダまたは溶液液滴を分配する溶液前駆体リザーバのような材料フィーダを使用する、高密度球状粒子の作製に使用される装置の好ましい一実施形態を示す図である。
【
図2a】スプレードライ粉末が噴射された後にマイクロ波プラズマ処理されることによって得られる高密度球状MgO−Y
2O
3粒子の図である。
【
図2b】スプレードライ粉末が噴射された後にマイクロ波プラズマ処理されることによって得られる高密度球状MgO−Y
2O
3粒子の図である。
【
図3】噴霧装置を使用して液滴を霧化する方法の図である。
【
図4】霧状にする噴射装置の使用による7YSZ前駆体液滴の噴射後の、直径20から38マイクロメートルの高密度球状化された7重量%Y
2O
3−ZrO
2(7YSZ)セラミック粒子の図である。
【
図5】霧状にする噴射装置の使用による7YSZ前駆体液滴の噴射後の、直径38から53マイクロメートルの高密度球状化された7YSZセラミック粒子の図である。
【
図6】液滴作製装置を使用した9YSZ前駆体液滴の噴射後の、直径15から35マイクロメートルの高密度球状化された8YSZセラミック粒子の図である。
【
図7】プラズマゾーン内における供給材料の速度および滞留時間を制御する追加の処理プラズマガスを含む(consisting of)、一変形実施形態の図である。
【
図8】プラズマトーチの中央管または中間管を介したガスまたは霧の形態の不動態化供給材料の追加を含む、一変形実施形態の図である。
【
図9】プラズマゾーンの後に、球状生成物粒子を被覆するように不動態化供給材料を導入するための1つまたは複数の注入口の追加を含む、一変形実施形態の図である。
【
図10a】対応して混合されたスプレードライ粉末の噴射後の、直径10から50マイクロメートルのアルミナ−チタニアと酸化コバルトの高密度球状化された混合セラミック粒子の図である。
【
図10b】対応して混合されたスプレードライ粉末の噴射後の、直径10から50マイクロメートルのアルミナ−チタニアと酸化コバルトの高密度球状化された混合セラミック粒子の図である。
【
図11】粉末フィーダを使用した固体粉末の噴射による球状化方法の図である。
【
図12】噴霧ノズルを使用した液滴の霧の噴射による球状化方法の図である。
【
図13】周波数駆動の液滴作製装置を使用した連続的な流れの均一な液滴の噴射による球状化方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、マイクロ波放射生成装置1と、プラズマチャンバ2と、誘電性シースプラズマトーチ3と、粉末フィーダまたは溶液前駆体噴射装置4とを含む、高密度球状生成物を生成するための装置が図示されている。米国特許出願公開第2008/0173641A1号に記載のマイクロ波放射生成装置1は、2およびプ3と組み合わされる。プラズマチャンバ2および誘電性シースプラズマトーチ3はともに米国特許出願第13445947号に記載されている。粒子フィーダ4は、加圧源5を含む噴射装置であり、固体粉末粒子6を誘電性プラズマトーチ3に供給することができる。粉末噴射が使用されるとき、粒子6は、スプレードライ技術または他の技術による生成物であり得る。あるいは、粒子6は、噴霧器、または高周波電気機器により作動される液滴作製装置を使用して噴射される溶液前駆体の液滴であることもある。加圧源7および8は、粒子6を軸11に沿ってプラズマ14の方に向かって同伴し加速するインプットとしての処理ガスを3に導入するのに使用される。まず、粒子6は、環状間隙9の中に作り出される中心の層流ガス流10を使用した同伴によって加速される。環状間隙12の中に作り出される冷却層流13は、固体粉末供給または霧状噴射の場合、毎時100標準立方フィート以上で流れ、誘電性トーチ3の内壁に層状シースをもたらし、内壁がプラズマ14からの熱放射により溶融しないようにする。高流量は、やはりまた、粒子6を、プラズマ付着(attachment)が起こり得る誘電性トーチ3の内壁に到達させないようにするのに必要である。比較的遅いガス流は、粒子の流れがより均一で軸11近くに流れるので、液滴作製噴射装置を使用する場合に必要とされる。粒子6は、層流10および13によってマイクロ波プラズマ14の方に向かって導かれ、そこで均質に熱処理されて高密度球状生成物粒子15になる。スプレードライのセラミック固体粒子6または溶液前駆体材料の液滴の高密度球状化は、高密度球状粒子15を生成するように安定したマイクロ波生成プラズマ14を維持することができる適切な実験パラメータを選択することによって達成される。これらのパラメータは、1のマイクロ波電力、軸11に沿った粉末粒子または溶液前駆体液滴の噴射流量、層流同伴流10のキャリアガス流量、誘電性シーストーチ3内の層流冷却流13、プラズマ15内の加熱速度、およびプラズマ15から出たときの10
3℃/秒以上の冷却速度である。
【0020】
図2を参照すると、この方法は、INFRAMAT Corporationからのスプレードライ技術によって得られる、市販のマグネシア−イットリア(MgO−Y
2O
3)固体粉末粒子から作られる球状粒子6に適用される。粒子6は、INFRAMAT粉末の場合、閉じたまたは半球状の形態を持ち、低密度、多孔質であり、脆い粒子である。加圧源5からの低圧ガス流(<20PSI)を含むリザーバを含む粉末フィーダ4は、粒子6のための流動床をもたらす。粒子6は、粉末フィーダ4を通ってプラズマトーチ3の入口の方に向かうガス流によって動かされる。粒子6は、最初は、38マイクロメートル(μm)から73μmの範囲の直径である。噴射前に小粒子(直径37μm未満の粒子)を除去することによって、高温ゾーンの上における任意の材料再循環が低減する。また、(75μmよりも大きな)大粒子の除去によって、収集される粒子生成物の直径範囲が減少される。この分類作業を行うのに、メッシュサイズ400(38μm)および200(74μm)の篩が使用される。粒子6は、次いで、軸11に沿って、層流ガス流10によって、マイクロ波プラズマ14の方に向かって、最小距離2(2)インチを同伴され加速される。層流10は、粒子6の流路を軸11に可能な限り近い円筒形領域にさせるのに重要である。プラズマ14への貫入は、粒子6の方向的な経路(directional path)が軸11に沿ってプラズマ14の中心になるように達成される。粒子6は、部分的に、プラズマ火炎14の頂部に達する前に、4分の3インチの最小距離を第2の層流ガス流13によって再び加速される。層流13の主な働きは、プラズマを収容する誘電性管シース3の十分な冷却を確実にすることである。層流13は、誘電性プラズマトーチ3の外管の長さの残りの部分にわたって進むのに十分に高速(high)である必要がある。プラズマ14の均一な温度プロファイルとともに、軸対称の層流ガス流10および13を組み合わせた処理手段は、粒子6が、
図2aに示される高密度球状生成物15を得るように容量測定的に熱処理されることを確実にする。
図2bの定規の2つの大きな目盛は、100マイクロメートルに相当し、粒子15の直径が、15マイクロメートルから50マイクロメートルの範囲に入ることを示している。高密度球状粒子6は、「真珠」様のテクスチャおよび形態を呈する。
【0021】
図3を参照すると、粒子6は、溶液前駆体噴射のための噴霧装置16を使用して生成される。噴霧装置16は、一緒に溶合された2本の同心の石英管17および18からなる。ステンレス鋼加圧タンク内の7YSZ溶液前駆体またはイットリウムを3%から20%の範囲の任意の他の重量濃度を含むものが、管17の注入口19に導入される。溶液前駆体の噴射流量は、毎分4ミリリットルのオーダーであり、ガスタンク圧力は、約20ポンド/平方インチ(PSI)である。管18の長さは、2インチ以上かつ1フィートを超えない長さである。インプット管20を介して、加圧ガス源21は、霧化ガス流22を、噴霧装置16内の同心の管18と管17との間の環状間隙に押し込む。噴射された溶液前駆体は、オリフィス23から出て、そこでガス流22によって霧化され、液滴粒子6のエーロゾルとして管18のオリフィス24から出る。オリフィス23とオリフィス24との間の距離は、1ミリメートル(mm)を超えてはならない。管18の端部は、先細りしており、それによって、ガス流22は、90度に近い角度で、溶液前駆体の噴流に入る。粒子6は、出た後、やはりまた
図1に見られるように、誘電性プラズマトーチ3内を層流10によって同伴され、その後、誘電性プラズマトーチ3内の軸対称の熱処理手段に達し、プラズマ14内において容積測定的に加熱される。
【0022】
図4および
図5を参照すると、噴霧装置16を使用した7YSZ溶液前駆体の霧化による、高密度球状化された7YSZ生成物粒子15が図示されている。粒子15は、「真珠」様テクスチャおよび形態を呈する。粒子15は、635(20μm)、400(38μm)、および270(53μm)のメッシュサイズをそれぞれ有する篩による後で行われる分類後に、
図4(20から38μm)および
図5(38から53μm)に示されるように、測定すると、約20マイクロメートル(μm)から53マイクロメートル(μm)の範囲の直径になる。
【0023】
さらに他の実施形態では、霧状前駆体液滴の生成に、噴霧装置とは異なるフィーダが使用され得る。この場合、圧電駆動の液滴作製装置が使用され、それによって8重量%YSZの均一な液滴のストリーム噴流が生成され、次いで、それが、
図1において上述したマイクロ波プラズマ装置のプラズマ高温ゾーン内に噴射される。この液滴作製装置は、WO2014052833A1に記載されている。
図6を参照すると、光学顕微鏡を使用した測定において15から35マイクロメートルの範囲のサイズの球状高密度8YSZ生成物粒子が生成されている。
図6には、50マイクロメートルの目盛りが含まれている。これらの球体は、球状高密度粒子に流動性を高める滑らかな表面があることを示す真珠様である。
【0024】
さらに他の実施形態では、粉末粒子物質をプラズマ内へと同伴し、粉末粒子物質の速度およびプラズマ内における滞留時間を制御するように、同伴ガスが中央供給管に加えられる。同伴ガスは、粉末粒子物質の処理の目的に適合するように選択され得る。例えば、処理される材料が酸化または還元されないようにする必要がある場合、アルゴンのような不活性ガスが選択され得る。球状化されるべき材料が酸化されるべき場合は、酸素ガスが使用され、還元されるべき場合は、水素またはアンモニアが使用され得る。
【0025】
図7を参照すると、加圧源25は、追加の同伴ガスを、供給粒子6を含む粉末フィーダ4の出口ノズル27と連通する管注入口(tube inlet)26に導入するのに使用される。供給粒子6は、プラズマトーチ3内の中央管28内で加速される。噴射されるガス25の流量は、プラズマゾーン内におけるこれらの粒子の溶融状態を最適化するように、噴射される粒子粉末のサイズおよび形態に従って決定される。追加ガス25は、注入口26と粉末フィーダ出口ノズル27およびプラズマトーチ3の中央管28との連通の仕方を明白に変えることにより、供給粒子6の流れの方向と同一線上になるように噴射可能であることが当業者には知られている。
【0026】
さらに他の実施形態では、不動態化を誘導する流体が、球状粉末を不動態化および/または被覆するようにプロセスに加えられる。不動態化流体は、ガス状溶液か霧状溶液のどちらかであってよい。
図8を参照すると、加圧源25は、気相形態の不動態化流体29を、供給粒子6を含む粉末フィーダ4の出口ノズルフィーダ27と連通する注入管26に導入するのに使用される。
図8を再び参照すると、不動態化材料29は、霧化ガス源30および噴霧装置31を使用して霧として、供給粒子6を含む粉末フィーダ4の出口ノズルフィーダ27と連通する注入管26に導入され得る。不動態化材料と供給粒子の混合物は、中央管28内を一緒に移動してプラズマゾーンの方に向かい、そこで不動態化材料と供給粒子6が化学反応する。
【0027】
図8を参照すると、さらに、不動化を誘導する流体32が、プラズマトーチ3の中間管34と連通する注入管33から加えられ得る。不動態化流体32は、加圧ガス源35を使用してガスとして、または霧化ガス36と噴霧装置37の組み合わせを使用して霧として導入される。不動態化材料32と供給粒子6の混合物は、中間管34内において、中心管28の出口端のところで一緒に混合され、一緒に同伴されてプラズマゾーンの方に向かい、そこで不動態化材料32と供給粒子6が化学反応する。
【0028】
さらに他の実施形態では、不動態化流体は、マイクロ波噴射ポートの後、すなわちプラズマ高温ゾーンの下流に配置される追加の噴射ポートを介してプロセスの中に噴射される。この場合、粉末は、最初に、球状化され、次いで、ガスまたは霧状溶液の形態であってよい不動態化流体に曝される。本発明の目的は、コア−シェル様の微細構造の球状粒子生成物を生成する手段を提供することである。
図9aを参照されたい。不動態化流体材料は、気相または霧状液滴としてプラズマガス排出チャンバ39の注入口38内に噴射され、プラズマ処理された粒子15上に堆積し、それによって被覆された粒子40が生成される。不動態化流体材料は、段落[0026]および[0027]に記載の手段を用いてガスまたは霧状液滴として導入され得る。第2の管注入口41、また、たとえ多数の注入管でも、同じ不動態化流体材料、または異なる被膜用流体材料の組み合わせの導入に使用可能である。当業者には、排出チャンバ39へのこれらの注入口の数は、用途に応じて、所望の不動態層または被膜層についての複合的な混合に適合するように増加させることができることが明らかである。
図9bを参照すると、球状コア15およびシェル様不動態被膜42を含む、不動態化または被覆された粒子40が拡大して図示されている。
【0029】
段落[0020]に記載されるような方法は、
図10aに示される市販のアルミナ−チタニアと酸化コバルトの粉末の混合物で作られる球状粒子に適用された。この混合物は、スプレードライ技術によって得られる、平均37マイクロメートルの直径の、アルミナ−チタニア(Al
2O
3−13TiO
2)80重量%と酸化コバルト(CoO)20重量%の凝集粉末粒子からなる。背景にある白色の目盛が付いたスケール(定規)は、2つの長い目盛棒の間が100マイクロメートルを示し、2つの連続する小さな目盛棒の間の距離は10マイクロメートルである。
図10bは、マイクロ波プラズマによる処理の後の球状高密度生成物粒子を示している。図面から、生成物粒子の大部分が10ミクロンから50ミクロンの範囲の直径サイズの真珠様テクスチャを呈することが見られる。
【0030】
無電極マイクロ波生成プラズマは、多種多様な材料の精製に使用され得る。アークプラズマ法のように、プラズマを生成するための電極があると、処理材料が溶融しながら飛行する間に不純物が導入される。不純物は、電極材料でできている。というのも、アークプラズマの高い動作温度により、電極が摩滅するからである。本方法において使用されるマイクロ波プラズマの生成には電極がいらないので、汚染がなくなり、高純度の処理済み材料の生成が実現する。
【0031】
図11を参照すると、高密度球状粒子は、図に記載の手順に従って作製される。処理されるべき粉末粒子は、まず篩分けされ、それらの直径に従って分類され、最小直径20μm、最大直径74μmにされる。それによって、プラズマチャンバの高温ゾーンの上で軽い粒子が再循環しなくなり、さらに、プラズマ内に存在する処理エネルギーが、確実に、粒子の溶融に十分になる。次いで、この粉末は、20ポンド/平方インチ(PSI)を超えない比較的低い加圧空気源を使用して、流動床が導かれる粉末フィーダ内である、内側チャンバ内に配置される。粉末がより良く流動するように、粉末フィーダは、20ポンド/平方インチ(PSI)の最小圧力を有する他の加圧空気源によって作動されるシェーカを使用して絶えず振り動かされる。粉末は、プラズマ処理の中に粒子をコンスタントに噴射することを可能にする圧力を受けて、粉末フィーダ内部から誘電性プラズマトーチの供給管の入口の方に向かって運ばれる。この前に、
図11の右側を参照すると、マイクロ波放射が、誘電性プラズマトーチがそこに配置され導波管に対して垂直方向に置かれるプラズマチャンバの方に向かって、導波管に導入される。2つの環状流であって、一方が、噴射粒子の同伴のためであり、他方の流れが、プラズマからの高熱の作用下でプラズマトーチの外管の内壁が溶融するのを防ぐ、2つの環状流が導入される。両方の流れが所定の位置に導入されると、プラズマは、誘電性プラズマトーチ内で点火される。同伴流と冷却流の適切な組み合わせは、プラズマを安定化するように選択される。さらに、これらの同伴流および冷却流は、プラズマの方に向かう粒子の円滑な流通を可能にし、チャンバの高温ゾーンの上に粉末の再循環および逆流を作り出す恐れのある乱流を回避するように選択される。さらに、これらの同伴流および冷却流は、軸11から径方向外方向の熱経路のあらゆる不均一性を最小にするように選択される。粒子は、今や高温ゾーンに存在するプラズマに到達すると、高温ゾーン内で、プラズマの均一な温度プロファイルとともに粒子についての均一な熱経路を特徴とする、均一な溶融状態にされる。粒子は、容量測定的かつ均一に処理され、プラズマの出口ノズルの下の雰囲気による急速冷却チャンバ内へと出る。生成物は、固化後、ナイロンもしくはステンレス鋼のフィルタに集められる、またはいくつかの応用例では蒸留水中で冷却され、そして、その微細構造ならびに機械的、光学的および熱的な特性について分析される。
【0032】
図12を参照すると、溶液液滴を使用して高密度球状粒子を生成する手順が図示されている。まず、反応物の指定された割合に従って所望の化学組成物が混合される。その後、その混合されたものが、反応物の均質な分子混合物を得るように十分に撹拌される。次いで、その溶液がステンレス鋼タンクに注がれる。空気が加圧空気源の使用によりタンク内に噴射され、それによって、溶液が噴霧器に類似の噴射ノズルの方に向かって押され、噴霧器の中央供給管内に噴射され、噴流として出現する。それと同時に、他の加圧源の使用により、空気が噴霧器の同心の外管に押し込まれ、垂直方向に溶液噴流に貫入する。その結果、その空気が噴流を霧化し、様々な直径サイズの液滴が混ざり合ったものにし、それらをプラズマの方に導く。その前に、
図12の右側を参照すると、プラズマに点火する手順が、
図11について言及した段落に記載されるように繰り返される。マイクロ波放射は、誘電性プラズマトーチがそこに配置され導波管に対して垂直に置かれるプラズマチャンバの方に向かって、導波管に導入される。2つの環状流であって、一方が、噴射された粒子の同伴のためであり、他方の流れが、プラズマからの高熱の作用下でプラズマトーチの外管の内壁が溶融するのを防ぐための、2つの環状流が導入される。両方の流れが所定の位置に導入されると、プラズマは、誘電性プラズマトーチ内で点火される。同伴流と冷却流の適切な組み合わせは、プラズマを安定化するように選択される。さらに、これらの流れは、プラズマの方に向かう液滴の円滑な流通を可能にし、プラズマチャンバの高温ゾーンの上に粉末の再循環および逆流を作り出す恐れのある乱流を回避し、ならびに、熱経路内における破裂を回避するように選択される。液滴は、今や高温ゾーンに存在するプラズマに到達すると、高温ゾーン内で、プラズマの均一な温度プロファイルとともに均一な熱経路を特徴とする、均一な溶融状態にされる。液滴は、酸化還元反応によって生成される溶媒物質が燃焼除去されるため、容量測定的かつ均一に処理される。処理された粒子は、プラズマの出口ノズルの下の雰囲気による急速冷却チャンバ内へと出る。生成物は、固化後、フィルタに集められ、またはいくつかの応用例では蒸留水中で冷却され、そして、その微細構造ならびに機械的、光学的および熱的な特性について分析される。
【0033】
図13を参照すると、液滴作製装置を使用して生成される均一な溶液前駆体液滴を使用して高密度球状粒子を生成する手順が図示されている。まず、指定された割合の反応物を混合することによって、所望の溶液の化学組成物が準備される。その後、溶液は、反応物の均質な分子混合物を得るように、十分に撹拌される。次いで、溶液は、蠕動ポンプまたは加圧タンクによって液滴作製装置のリザーバ内に圧送される。リザーバが満杯になったら、圧電変換器がアクティブ化され、リザーバ中の液体溶液に適当な摂動が与えられる。摂動がレイリーの分解則(Rayleigh’s breakdown law)を満足すると、溶液は、毛細管ノズルを通って、圧電による所与の駆動周波数に対して一定の速度で出る均一な液滴の連続的な流れとして出現する。液滴の流れの性質は、バーストモードまたは偶発的なモードではなく、均一な液滴の噴流の形態であるように、モニターされる。この液滴の流れは、次いで、誘電性プラズマトーチの供給管内に噴射され、そこで同じプラズマ処理を受け、その後、
図11および
図12について言及する段落に記載されるような高密度球状粒子の集合体へと変形される。
【0034】
例1:MgO−Y
2O
3スプレードライ粒子の球状化
図2を参照すると、この方法は、Inframat Corporationからのスプレードライ技術によって得られる市販のマグネシア−イットリア(MgO−Y
2O
3)固体粉末粒子から作られる球状粒子に適用された。高密度球状粒子は、「真珠」様テクスチャおよび形態を呈する。
【0035】
例2:霧状7YSZ溶液前駆体の球状化
図4および
図5を参照すると、この方法は、噴霧器を使用した7重量%イットリア安定化ジルコニア(7YSZ)溶液前駆体の霧状液滴の噴射から高密度球状粒子を直接生成するのに適用された。
【0036】
例3:8YSZ溶液前駆体の均一な液滴のストリーム噴流についての球状化
図6を参照すると、この方法は、高周波圧電駆動の液滴作製装置を使用した8重量%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)溶液前駆体の均一な液滴の噴射から高密度球状粒子を直接生成するのに適用された。
【0037】
例4:アルミナ−チタニア(Al
2O
3−13TiO
2)と酸化コバルト(CoO)の混合物の粉末粒子の球状化
図10を参照すると、この方法は、スプレードライ技術によって得られるアルミナ−チタニア酸化物(Al
2O
3−13TiO
2)80重量%と酸化コバルト(CoO)20重量%からなる混合物の凝集粉末粒子から作られる球状粒子に適用された。高密度球状粒子は、「真珠」様テクスチャおよび形態を呈する。