(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543767
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置のためのゼロ位置感知システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
A61M5/315 550E
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-517283(P2018-517283)
(86)(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公表番号】特表2018-529469(P2018-529469A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】US2016055642
(87)【国際公開番号】WO2017066067
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2018年4月3日
(31)【優先権主張番号】62/240,717
(32)【優先日】2015年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ガンジッチ,ガブリエル
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−529492(JP,A)
【文献】
特開平06−296691(JP,A)
【文献】
特表2013−521832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置のゼロ位置を決定するための感知システムであって、
前記薬剤送達装置が、ハウジング、ねじ要素、および電子モジュールを含み、前記ねじ要素が、用量送達中に、投与位置からゼロ位置まで前記ハウジング内でねじ込み可能であり、
前記感知システムが、
第1の位置から第2の位置まで、前記ねじ要素に対して移動可能に取り付けられた少なくとも1つのアクチュエータ部材であって、押し面を含む前記少なくとも1つのアクチュエータ部材と、
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材の前記第1の位置から前記第2の位置への運動を阻止するように配置された付勢部材と、
前記ねじ要素が前記投与位置から前記ゼロ位置にねじ込まれると、前記押し面による周囲方向の当接のために前記ハウジング内に構築かつ配置される停止面であって、前記周囲方向の当接が、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を、前記付勢部材によって提供される抵抗に抗して前記第1の位置から前記第2の位置に回転させる、前記停止面と、
前記第2の位置で前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を認識するように適合された、前記電子モジュール内のセンサと
を備える、前記感知システム。
【請求項2】
前記ねじ要素が軸方向に延在し、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が、鍵止め要素と協働する第1及び第2のアクチュエータ部材を含み、前記鍵止め要素が、前記第1及び第2のアクチュエータ部材の間の相対回転運動を防止し、かつ相対軸方向運動を可能にする、請求項1に記載の感知システム。
【請求項3】
前記第1のアクチュエータ部材が、前記センサに対して軸方向に移動可能であり、前記第2のアクチュエータ部材が、前記センサに対して軸方向に固定され、前記第1のアクチュエータ部材が、前記第1のアクチュエータ部材に軸方向に従うフランジを備え、前記フランジが、前記押し面を含む、請求項2に記載の感知システム。
【請求項4】
薬剤送達装置のゼロ位置を決定するための感知システムであって、
前記薬剤送達装置が、ハウジング、ねじ要素、および電子モジュールを含み、前記ねじ要素が、用量送達中に、投与位置からゼロ位置まで前記ハウジング内でねじ込み可能であり、
前記感知システムが、
第1の位置から第2の位置まで、前記ねじ要素に対して移動可能に取り付けられた少なくとも1つのアクチュエータ部材であって、押し面を含む前記少なくとも1つのアクチュエータ部材と、
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材の前記第1の位置から前記第2の位置への運動を阻止するように配置された付勢部材と、
前記ねじ要素が前記投与位置から前記ゼロ位置にねじ込まれると、前記押し面による当接のために、前記ハウジング内に構築かつ配置される停止面であって、前記当接が、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を、前記付勢部材によって提供される抵抗に抗して前記第1の位置から前記第2の位置に移動させる、前記停止面と、
前記第2の位置で前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を認識するように適合された、前記電子モジュール内のセンサと
を備え、
前記付勢部材が、第1及び第2の端部を有するねじりばねを備え、前記第1の端部が、前記ねじ要素と係合し、前記第2の端部が、前記少なくとも1つのアクチュエータと係合する、前記感知システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が前記第1の位置にあるとき、前記ねじりばねが予圧付与され、前記少なくとも1つのアクチュエータ及び前記ねじ要素が、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が前記ねじりばねの予圧付与された付勢下で前記第1の位置を過ぎて移動するのを防止するために、協働する停止要素を含む、請求項4に記載の感知システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアクチュエータの前記停止要素が、前記少なくとも1つのアクチュエータの本体から延在するフランジの表面を備える、請求項5に記載の感知システム。
【請求項7】
前記押し面が、前記フランジ上に配設される、請求項6に記載の感知システム。
【請求項8】
薬剤送達装置のゼロ位置を決定するための感知システムであって、
前記薬剤送達装置が、ハウジング、ねじ要素、および電子モジュールを含み、前記ねじ要素が、用量送達中に、投与位置からゼロ位置まで前記ハウジング内でねじ込み可能であり、
前記感知システムが、
第1の位置から第2の位置まで、前記ねじ要素に対して移動可能に取り付けられた少なくとも1つのアクチュエータ部材であって、押し面を含む前記少なくとも1つのアクチュエータ部材と、
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材の前記第1の位置から前記第2の位置への運動を阻止するように配置された付勢部材と、
前記ねじ要素が前記投与位置から前記ゼロ位置にねじ込まれると、前記押し面による当接のために、前記ハウジング内に構築かつ配置される停止面であって、前記当接が、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を、前記付勢部材によって提供される抵抗に抗して前記第1の位置から前記第2の位置に移動させる、前記停止面と、
前記第2の位置で前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を認識するように適合された、前記電子モジュール内のセンサと
を備え、
前記少なくとも1つのアクチュエータが、前記ねじ要素の一部を取り囲むリング形状の本体を備える、前記感知システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアクチュエータが、第1及び第2のアクチュエータ部材を備え、前記第1及び第2のアクチュエータ部材のそれぞれが、リング形状の本体を備え、前記第2のアクチュエータの前記リング形状の本体の一部が、前記第1のアクチュエータの前記リング形状の本体内に嵌合する、請求項8に記載の感知システム。
【請求項10】
前記ねじ要素の前記停止要素が、開口部画定面を備える、請求項6に記載の感知システム。
【請求項11】
前記開口部画定面が、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が前記第1の位置から前記第2の位置に移動するとき、前記フランジが内部を移動する円弧状スロットを画定する、請求項10に記載の感知システム。
【請求項12】
前記センサが電気スイッチを含む、請求項1、4、および8のいずれか一項に記載の感知システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのアクチュエータが、前記少なくとも1つのアクチュエータが前記第2の位置に配設されるとき、前記電気スイッチを動作させる突出部を含む、請求項12に記載の感知システム。
【請求項14】
ねじ要素、ハウジング、および電子モジュールを有する薬剤送達装置のゼロ位置を感知する方法であって、
前記ハウジング内の前記ねじ要素を、用量送達中に投与位置からゼロ位置にねじ込むステップと、
前記ねじ要素を前記投与位置から前記ゼロ位置までねじ込む前記ステップ中に、少なくとも1つのアクチュエータ部材の一部を、前記薬剤送達装置のハウジング内の停止面に対して周囲方向に当接させ、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を、付勢部材によって提供される抵抗に対して第1の角度位置から第2の角度位置まで前記ねじ込みねじ要素の周りで回転させるステップと、
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が前記第2の角度位置に達するときに、前記電子モジュールのセンサで感知するステップと
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記電子モジュールが、前記ねじ要素の近位端に配設され、薬剤が前記薬剤送達装置の遠位端から外に送達される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が、第1のアクチュエータ部材及び第2のアクチュエータ部材を含み、前記第1のアクチュエータ部材及び第2のアクチュエータ部材が、それらの間で軸方向運動を可能にするが、回転運動をさせないように一緒に鍵止めされる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の角度位置における前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が、前記付勢部材からの付勢予圧付与下にある、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が、前記第1の角度位置から前記第2の角度位置へと前記ねじ要素に対して動くとき、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が、前記薬剤送達装置のハウジング内で回転しない、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ねじ要素、ハウジング、および電子モジュールを有する薬剤送達装置のゼロ位置を感知する方法であって、
前記ハウジング内の前記ねじ要素を、用量送達中に投与位置からゼロ位置にねじ込むステップと、
前記ねじ要素を前記投与位置から前記ゼロ位置までねじ込む前記ステップ中に、少なくとも1つのアクチュエータ部材を、前記薬剤送達装置のハウジング内の停止面に対して当接させ、前記少なくとも1つのアクチュエータ部材を、付勢部材によって提供される抵抗に対して第1の角度位置から第2の角度位置まで前記ねじ込みねじ要素の周りで移動させるステップと、
前記少なくとも1つのアクチュエータ部材が前記第2の角度位置に達するときに、前記電子モジュールのセンサで感知するステップと
を含み、
前記方法は、前記ねじ要素が前記投与位置から前記ゼロ位置に前記ハウジング内でねじ込まれるとき、前記電子モジュールを前記ねじ要素と共に移動させるステップを更に含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送達装置に関し、特に、薬剤送達装置の駆動機構のゼロ位置を決定するための感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な既知のタイプの装置が、流体薬剤を患者に送達するために使用される。これらのタイプの装置には、注射ペンが挙げられるが、これに限定されない。一部の注射ペンは、一番最近受けた注射ならびに他の過去の注射の量及び時間などの潜在的に有用性のある情報を使用者に提供するために、ペンの態様を監視する電子機器を内蔵する。
【0003】
ペン型注射器の電子機器が注入量を追跡するために使用されるとき、これは通常、その注射がいつ完了するかを検出する。この検出は、用量設定ダイヤルなどが慣例的に「ゼロ位置」と呼ばれる初期位置に戻った場合と一致し得る。「ゼロ位置」を感知する1つの方法は、位置1と位置0との間の装置の遷移中にのみ接触する2つの部分を有する注射ペンを設計し、この接触を検出し、それを装置電子回路のための電気信号に変換することである。しかしながら、電子装置がダイヤルの近位端にあるアクチュエータボタンの内部または近くに位置付けられ、接点がダイヤルの遠位端を含み、かつ電気リード線が電子装置から接点まで延在する場合など、最も利用可能な接点が電子機器から比較的遠く離れすぎていることがあり得る。
【0004】
したがって、従来技術のこれら及び他の欠点の1つ以上を克服することができるゼロ位置を感知するためのシステムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
その1つの形態では、本発明は、薬剤送達装置のゼロ位置を決定するための感知システムを提供する。薬剤送達装置は、ハウジングと、ねじ要素と、電子モジュールとを含む。ねじ要素は、用量送達中に、投与位置からゼロ位置までハウジング内でねじ込み可能である。感知システムは、第1の位置から第2の位置までねじ要素に対して移動可能であるように取り付けられた少なくとも1つのアクチュエータ部材であって、押し面を含む少なくとも1つのアクチュエータ部材と、少なくとも1つのアクチュエータ部材の第1の位置から第2の位置への動きを阻止するように構成された付勢部材と、ねじ要素が投与位置からゼロ位置にねじ込まれるとき、押し面による当接のために、ハウジング内に構築かつ配置された停止面であって、この当
接が少なくとも1つのアクチュエータ部材を、付勢部材によって提供される抵抗に対して第1の位置から第2の位置に移動させるように仕向ける停止面と、第2の位置で少なくとも1つのアクチュエータ部材を認識するように適合された電子モジュール内のセンサとを含む。
【0006】
その別の形態では、本発明はねじ要素と、ハウジングと、電子モジュールとを有する薬剤送達装置のゼロ位置を感知する方法を提供し、本方法は、ハウジング内のねじ要素を、用量送達中に投与位置からゼロ位置にねじ込むステップと、ねじ要素を投与位置からゼロ位置にねじ込むステップの間に、少なくとも1つのアクチュエータ部材を付勢部材によって提供される抵抗に対して第1の角度位置から第2の角度位置までねじ込みねじ要素の周りに移動させるように、薬剤送達装置のハウジング内の停止面に対して少なくとも1つのアクチュエータ部材を当接させるステップと、少なくとも1つのアクチュエータ部材が第2の角度位置に達するとき、電子モジュールのセンサで感知するステップとを含む。
【0007】
本発明の1つの利点は、薬剤送達装置のゼロ位置を感知するためのシステムが、それが設置される装置内のかなりの距離に延在する電気コネクタを必要としないように提供し得ることである。
【0008】
本発明の別の利点は、接点における接触に起因する動きを接点から離間された電子機器に伝達する薬剤送達装置のゼロ位置を監視するためのシステムが提供され得ることである。
【0009】
以下の本発明の実施形態の説明を添付の図面と併せて参照することにより、上記及び他の本発明の利点ならびに目的、及びこれらを達成する方法がより明らかとなり、かつ本発明それ自体もより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ゼロ位置感知システムが装備された薬剤送達装置の正面図であり、この装置は、ゼロ位置に配置されている。
【
図2】用量(dose)を送達するように設定された後の、
図1の装置の部分正面図である。
【
図3】選択部分が縦断面で示されている、
図1の装置の部分正面図である。
【
図4A】
図1の感知システムの1つのアクチュエータ部材の異なる斜視図である。
【
図5A】
図1の感知システムの別のアクチュエータ部材の異なる斜視図である。
【
図6】
図1の感知システムの付勢部材の斜視図である。
【
図7】ねじ要素に取り付けられた
図6の付勢部材を示す、一部が取り除かれた状態の
図1の装置の部分斜視図である。
【
図8】装置が容量を設定するように動作された後の感知システムを更に示す、一部が取り除かれた状態の、
図1の装置の部分斜視図である。
【
図9】以前に設定された用量を送達するように動作される装置の様々な段階における感知システムを更に示す、一部が取り除かれた状態の
図1の装置の部分斜視図である。
【0011】
対応する参照符号は、いくつかの図の全体を通して対応する部分を示す。図面は、本発明の実施形態を表すものであるが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明をより良く例示かつ説明するために、特定の特徴部は、図面のいくつかでは誇張または省略され得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1では、装置のゼロ位置を決定するための感知システムが有利に使用される薬剤送達装置が示されている。本装置は、用量を選択的に設定し、その後この設定用量を注入するために使用者により手動で扱われる、一般的に100で表示されたペン型薬剤注入装置である。このタイプの注入装置は周知であり、装置100の説明は、感知システムが様々に構成されたペン型薬剤注入装置において、その上異なる形状の注入装置及び他の薬剤送達装置において全般に使用するために適合され得ることの単に例示にすぎない。
【0013】
薬剤注入装置100は、装置の内部構成要素を支持するハウジングを含む。ハウジングは、その内部に装置の機械的駆動機構を保持する後部または近位のハウジング部分102を有するものとして示されている。前部または遠位のハウジング部分104は、薬剤で充填されたカートリッジ106を保持する。装置100を動作させることにより、使用者は、カートリッジ106内の薬剤を、ハウジング部分104の前端に取り付けられた針アセンブリ108を通して1つ以上の用量で送達させることができる。
【0014】
薬剤注入装置100は、
図1では、その「ゼロ位置」において示されている。このゼロ位置とは、例えば、装置の前の注入使用が適切に完了した直後に、装置が最初に使用者に提供されたときの、または装置が配置されたときの装置100の構成要素部分の機械的な配置を指す。用量表示部110で見ることができるダイヤルの番号「0」は、概して、装置がゼロ位置に配置されていることを示す。
【0015】
多くの既知の注入装置と同様に、
図1に示すように配置されたときに、装置100は、使用者がハウジング部分102に対して用量設定カラーまたはグリップ114を把持し回転させることにより用量を送達するように設定することができる。装置100の構成のために、この回転は、カラー114がハウジング部102から外方にねじ込まれる結果となり、使用者は、送達のための所望の用量が設定されるとき、カラーの回転を停止させることができる。そのような所望の設定用量は、用量表示部110で見ることができる数字を見ることにより決定することができる。
図2では、装置100は、用量表示部110内の「20」の存在によって認識可能なように、20単位の薬剤を送達するように使用者によって設定された後を示している。代替的に、または追加的に、設定された用量が、装置100の図示していない電子ディスプレイに表示されてもよい。
【0016】
その設定用量を送達するために、装置のハウジングを保持しながら、使用者は、カラー114により運ばれたボタン118の頂面116に押し込む力を加える。頂面116は、挿入されたスラスト軸受に起因するなど、ボタン118の残部に対して回転可能であるボタンキャップの一部である。この押し込む力は、最初に、ボタン118を軸方向にカラー114内に、シフトした下方位置まで更に移動させて、その後、押し込む力を継続させることが、カラー114をハウジング部分102に
図1に示す軸方向位置までねじ戻させる。カラー114がねじ戻ると、ボタン118は、カラー内のその下方にシフトした位置に留まり、カラー114と共にハウジング部分102に対してねじ込まれ、一方、装置100の駆動機構は、その出力部材をハウジング部分102から延び、カートリッジプランジャ122をカートリッジ106内で前方に進め、ニードルアセンブリ108を通して薬剤を放出させる。
【0017】
装置100のボタン118は、当技術分野において既知であるような1つ以上の様々な機能を提供することができる、
図3の350に概略的に示した電子モジュールを含む。電子モジュール350は、注入される用量を決定するために、例えば磁気的または光学的または聴覚的感知などを使用して、装置構成要素とインターフェースで接続することができる。電子モジュール350は、装置の状態を示す119におけるボタンの側に見える光ディスプレイ、または装置の端部にあり、表面116を通して見ることができるものなどの図示されていない電子ディスプレイなどの、時間または投与量などの注入データを示すディスプレイを制御することができる。電子モジュール350は、装置注入データを使用及び/または示す、携帯電話またはコンピュータもしくはクラウドデータベースなどの、スマートシステムとの無線通信を制御し得る。
【0018】
注入が完了した後に、使用者が頂面116からの押し込む力を取り除くと、ボタン118は、押し込み中に圧縮されたばね123によって提供される力のために、カラー114内を
図1に示す位置まで上方に戻り、装置100は再び
図1に示すように配置される。
【0019】
本明細書に記載されるゼロ位置感知システムは、薬剤送達中に、それらのハウジングに対してねじ込み運動を受ける異なる構成要素を有する様々に構成された装置と共に使用するように適合され得る。装置100の内部駆動機構がボタン118/カラー114の動きをカートリッジプランジャに係合する出力部材の前進に変換する特定の方法は、本発明の一部を形成せず、したがって本明細書では一般的にのみ記載されており、そのようなものは様々な既知の駆動機構のうちの1つによって提供することができる。
【0020】
ここで
図3〜8を参照すると、一般的に125で表示される感知システム、及び装置100の他の選択された部分が、更に詳細に示されている。感知システム125は、第1のアクチュエータ部材130と、第2のアクチュエータ部材135とを含む。2つの協働するアクチュエータ部材を使用することは、軸方向移動を考慮に入れるが、注入中の電子モジュール350と装置100のねじ要素との間の回転運動は考慮に入れない1つの方法を提供する。より複雑な接続連鎖が必要とされる場合、代替感知システムが、単一のアクチュエータ部材、または追加の相互作用アクチュエータ部材を使用するように適合され得る。
【0021】
アクチュエータ部材130は、中央開口部142を画定するリング状の本体140を有する成形プラスチックから形成された剛性のあるブッシングである。本体140は、リング状または円形である必要はないが、そのような形状は望ましい剛性を提供し、アクチュエータ部材135とのバランスの取れた相互作用を可能にする。本体140の内面146上にある直径方向に間隔を置いて配置された1対の戻り止め144は、開口部142内に嵌合するボタンハウジング152の垂下フランジ150にスナップ嵌合することを可能にする。フランジ150には、戻り止め144が摺動してアクチュエータ部材130を回転させるが、フランジ150及びハウジング152に対して軸方向に移動させないことが可能である開口部または溝(図示せず)が設けられている。内面146上の3つのリブ145は、製造における寸法の制御及び調整を容易にするために、ボタンハウジング152の垂下フランジ150との接触のための同一円周上に配置された接点を提供する。
【0022】
アクチュエータ部材130は、本体140の上部リム156の上方に突出する軸方向に直立した長方形のフランジ158を含む。フランジ158は、その中の開口部を通ってボタンハウジング152内で突出している。本体140の下端の切欠き部159は、システムが圧縮されるときに、ばね245の端部に対して空間を提供する。
【0023】
アクチュエータ本体140はまた、アクチュエータ部材135の相補的な特徴部と協働するための鍵特徴部を含む。これらの特徴は、本体140の底縁部162から上方に延在する2つの軸方向に延在するスロット160によって形成される鍵溝として示されている。スロット160は、本体140に直径方向に配設される。
【0024】
アクチュエータ部材135は、開放端の内部容積172を画定するリング状の本体170を有する成形プラスチックで形成された剛性のあるブッシングである。本体140と同様に、本体170はリング状または円形である必要はない。その軸方向高さに沿って、本体170の外側径方向周囲は、より大きい直径の基部領域174と、より小さな直径の上部領域176と、それらの間を移行するテーパ領域178とを含む。本体上部領域176は、アクチュエータ部材130の中央開口部142内に嵌合するように寸法決めされる。
【0025】
アクチュエータ部材135は、本体基部領域174の下縁部173の下方に突出する軸方向に垂下する長方形のフランジ180を含む。フランジ180は、環状スパニングセクション214の開口部190(
図8参照)を通って延在する。フランジ180の、軸方向に配向された縁部182は、アクチュエータ部材135の接触面または押し面として機能する。
【0026】
径方向に突出し、かつ軸方向に配向されたリブ194の形態の一対の鍵特徴部は、本体上部領域176及びテーパ領域178の外側径方向周囲に、ならびに上部領域176上に形成された支持延在部196上に配設される。リブ194は、アクチュエータ部材130及び135が互いに対して軸方向に移動可能であるが、装置100に組み立てられるときには一緒に回転可能に固定されるように、スロット160内に嵌合するように形作られ及び配置される。
【0027】
アクチュエータ部材135は、注入中にハウジング部分102におけるねじ込み運動で移動する装置の一部に取り付けられ、したがって、この部分は、ねじ要素と呼ばれる。一般的に210で表示されるねじ要素は、装置の組み立て中に互いに強固に相互接続された外側ピース及び内側ダイヤルねじピースとして
図3に示されている。ねじ要素210は、装置100内で軸方向に延在する。外側ピースは、カラー114と、円筒状の管部分212と、環状スパニングセクション214と、一般的に216で表示される、直立ハブ部分とを提供し、全てが一体的に形成されている。製造を容易にするために、カラー114ならびに他の外側ピース部分が別々に形成され、次いで管部分212に取り付けられてもよい。管部分212の外側径方向周囲上に螺旋状パターンで設けられた用量表示番号は、従来の方法で、用量表示110部内で見ることができる。
【0028】
ねじ要素210の内側ダイヤルねじピースは、外部ねじ山224を有する管220を含み、管220は、その近位端に、スパニングセクション214の相補的な開口部を通してぴったりと嵌合し、スパニングセクション214から上方に突出するハブ部216の角度付きフランジ225とラッチ係合でスナップ嵌合する延長部226を含む。ねじ山224は、管状支持体235の径方向内面に設けられた相補的ねじ山230と螺合する。
【0029】
管状支持体235は、ハウジング部分102の内壁に直接締結されるなど、ハウジング部分102の内部空洞内に回転可能に固定され、かつ軸方向に固定されて保持される。ねじ山224とねじ山230との係合は、一般的に用量設定中は一方向に、注入時には反対方向に回転するように、ねじ要素210のハウジング部分102に対するねじ込み運動をもたらす。
【0030】
ハブ部分216は、ねじりばね245のコイル250にその周りに嵌合する縮径部240を含む。ばね245の軸方向に延在するフィンガー252は、コイル250の底部コイルから垂下しており、リブ260及び262によって画定されたハブ部分216の凹部に嵌合する。径方向に突出するフィンガー254は、コイル250の上部コイルから延在し、アクチュエータ部材135の上部領域176を通して形成されたスロット270に嵌合する。ねじりばね245は、フィンガー252及び254がハブ部分の凹部及びスロット270内にそれぞれ捕捉されるとき、ハブ部216の周りのアクチュエータ部材135の、第1の角度位置から第2の角度位置への回転運動を阻止する感知システムの付勢部材として働く。代替的な実施形態では、この付勢は、アクチュエータ部材の回転に対する抵抗を提供するように構成された圧縮ばねなどの異なる付勢部材によって達成することができる。
【0031】
アクチュエータ部材本体170の内側表面274は、フランジ225及びリブ260、262を含むハブ部分216の外周部を収容するように設計されている。表面274から内側に突出する3つのリブ278は、アクチュエータ部材135が、それがハブ部分の周りを回転可能に旋回すると、ハブ部分216によって支持可能に接触する軸受面を提供するように働く。本体上部領域176から内側に突出する環状フランジ280は、ハブ部分216の上面244の周方向切欠き部によって形成された出っ張り部242によって支持される。アクチュエータ部材135は、フランジ280が出っ張り部242上を摺動するとき、異なる角度位置の間でハブ部分216上にて回転旋回することができる。
【0032】
アクチュエータ部材135は、使用時に、フランジ280が出っ張り部242とスラストワッシャ300との間に捕捉されているために、軸方向にそれと同様に動くように、ねじ要素210に有効に軸方向に固定されている。ワッシャ300は、注入動作中に装置部品の相対運動を測定して注入量を決定するために、電子モジュール350によって使用される磁石308を保持する磁石支持体306に対して、その反対側の端部で作用する圧縮スプリング302によって上面244に対して圧縮される。
【0033】
電子モジュール350は、ボタン118のハウジング152内に保護的に格納されている。電子モジュール350及びそのハウジング152は、ボタン118及びカラー114がスプライン109及び溝111を介して共に鍵止めされて軸線方向移動を可能にするが、それらの間の回転運動は不可能とするため、ねじ要素210で回転可能に固定される。電子モジュール350は、アクチュエータ部材130と協働してその回転位置を感知する、355で表示されるセンサ(
図8参照)を含む。1つの適切なセンサ355は、以下に更に記述されるように、アクチュエータ部材フランジ158がセンサ部材355に対してアクチュエータ部材130と共に回転旋回するときに、閉状態から開状態へ、または開状態から閉状態へなど、状態を変化させる電気スイッチである。代替的な実施形態では、またアクチュエータ部材内の任意の適切な適合において、センサ355として、例えば磁気または光センサの異なるタイプのセンサを使用することができる。
【0034】
電子モジュール350は、センサ355に加えて、再充電可能なバッテリまたはエナジーハーベスティングシステムなどの電力取得特徴部を含んでもよい。電子モジュール350はまた、ボタン118が注入間にカラー114内に押し込まれるときにカラー114の内部と係合することによって径方向内向きに駆動される押しスイッチ360によって動作されるカム運動可能スイッチ358を含むものとして
図3に示されおり、ここで、カム運動可能スイッチ358の動作は、ボタンが注入の開始中に押し下げられていることを電子モジュール350に示す。
【0035】
感知システム125が製造組立中に装置100内に設置されると、アクチュエータ部材135は、ねじりばね245を予圧付与状態に配置するようにねじ要素210に取り付けられる。この予圧付与は、フランジ180の縁部182が押圧されるか、または環状スパニングセクション214内の円弧状スロット190の角度をなす端部に対して、特にこのような円弧状スロット190を画定する表面191によって形成された角度をなす端部に対して保持するように、アクチュエータ部材135にトルクを与える。環状スパニングセクション214の下方に垂下する縁部182の部分は、アクチュエータ部材130を押してねじ要素210の周りを回転させるように適合された停止面に係合するように適合される。装置100の停止面は、管状支持体235上に設けられた垂直に配向された表面237として
図8に示されている。停止面237は、ねじ要素210が投与位置からほぼゼロ位置にねじ込まれたときに、押し面182によって最初は当接されるようにハウジング102内に配置される。停止面は、代替的な実施形態では、ハウジング部102の内側表面上に直接形成されるなど、別の方法でハウジング内に提供され得る。
【0036】
そのような最初の当接の後、ねじ要素210がゼロ位置に達するまでねじ込みを続けると、当
接は、電気スイッチ355が例えば開いている第1の角度位置から、電気スイッチ355が例えば閉じている第2の角度位置まで、ねじりばね245によるそのような移動に対する付勢または抵抗に対して、アクチュエータ部材130をねじ要素ハブ部分216の周囲で相対的に移動させる。スイッチ355の切り替えは、装置がゼロ位置に達したことを合図する。スイッチアクチュエータ部材135、したがってアクチュエータ部材130の、ねじ要素210及び電子モジュール350に対してスイッチ355を作動させるために必要とされる回転は、センサ355及びフランジ158の動作間隔の関数である。このような間隔は、好ましくは、装置100の機械的構成要素が、ゼロ位置または投与終了位置に達する前に、単回単位用量の分配にほぼ等しい量だけまだ移動しなければならないときに、注入中に押し面182が先ず停止面237と接触するような間隔である。
【0037】
感知システム125の構造は、用量注入中にどのように機能することができるかに関する以下の説明を考慮して更に理解されるであろう。具体的には、装置100に所望の用量が設定された後、及び上述のように頂面116に十分な押し込む力が加えられるとき、カラー114内へのボタン118の移動は、スロット160がリブ194上を更に滑り落ちるように、アクチュエータ部材130がアクチュエータ部材135に対して軸方向に移動することによって感知システム125において説明される。
図8は、投与中のアクチュエータ部材130及び135の軸方向の空間的関係を示し、
図9は、ボタンが注入中にカラー内に移動した後のアクチュエータ部材130及び135の軸方向の空間的関係を示す。
【0038】
頂面116への押し込む力が継続し、ねじ要素210、ならびにカラー114内に保持されたボタン118がハウジング102にねじ込まれると、感知システム125は、ゼロ位置に達したことを認識するであろうし、感知システムの回転シフトがねじ要素210の周りで開始するように、装置がそのゼロ位置に十分に近くにない限り、また十分に近くになるまで、ねじ要素を更に移動させるであろう。特に、ねじりばね245の予圧付与は、フランジ180がスロット190の端部に対して圧縮するように、ねじ要素210上のアクチュエータ部材135の角度位置を維持するために、またアクチュエータ部材135及び130の鍵止め関係と、ボタン118がねじ要素210と共に移動するという事実のために、アクチュエータ部材135及び130は、ねじ要素210及び電子モジュール350と共に移動する。この移動中、フランジ158は、スイッチ355から離れたままであり、結果として、電子モジュール350は、アクチュエータ部材130が装置100のゼロ位置に関連するその位置にないことを認識する。この時間中の感知システム125は、
図9に示すように構成される。
【0039】
頂面116上への押し込む力が、ねじ要素210に内向きにねじ込むよう仕向け続けると、ねじ要素の移動は、感知システム125の停止面237への接近をもたらす。
図10は、この注入点での装置100を示しており、ここではフランジ縁部182と停止面237との間に微小な角度をなす空隙362のみが残っており、装置100では、数字「1」が用量表示110に示されているときに、この配置が生じる。
【0040】
頂面116上への押し込む力が、ねじ要素210に内向きにねじ込むよう仕向け続けると、アクチュエータ部材135のハウジング部分102ならびにアクチュエータ部材130に対する更なるねじ込み運動が物理的に防止されるように、フランジ縁部182は停止面237に当接する。ねじりばね245によって提供される抵抗に打ち勝つのに十分な力で、ねじ要素210がハウジング部分102にねじ込まれ続けると、アクチュエータ部材135及び130は、ハブ部分216及びねじ要素210の残りの部分、ならびにボタン106に対して回転を受ける。この相対的な回転の間に、装置100が最終的にそのゼロ位置に達すると、センサ355がフランジ158と動作可能に接触し、これによりセンサ355が起動され、電子モジュール350は、装置100がゼロ位置に達したことを認識する。
図11は、装置動作のこのポイントにおける装置100を示す。次いで、電子モジュール350は、任意の適切な方法でその認識を使用し、それを使用者に通信することも可能であり得る。ねじ要素210の実際の押し込み、またはねじの移動は、環状スパニングセクション214を管状支持部235の上端部に底打ちすることによってなど、任意の既知の方法でハウジング102内に物理的に停止させることができ、この停止は、センサ355を介するゼロ位置認識が行われた後に可能な限り早く、許容範囲内にあるであろう。
【0041】
本発明は、好ましい設計を有するものとして示され、説明されたが、本発明は、本開示の精神及び範囲内で変更されてもよい。例えば、感知システムは、図示された実施形態に示されたものとは異なるねじ込み要素に取り付けることができる。したがって、本出願は、その一般的な原理を用いた、本発明のあらゆる変形、使用、または適合を網羅することが意図される。更に、本出願は、本発明が関係する技術分野における既知または慣例的な実施の範囲内に入る本開示からのそのような逸脱を網羅することが意図される。