(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543775
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置における設定及び送達された用量の判定
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20190628BHJP
A61M 5/24 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
!A61M5/24
【請求項の数】24
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-563773(P2018-563773)
(86)(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公表番号】特表2019-506283(P2019-506283A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】US2017022869
(87)【国際公開番号】WO2017165207
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2018年8月29日
(31)【優先権主張番号】62/313,260
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・エイチ・バイアリー
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−517734(JP,A)
【文献】
特表2016−506845(JP,A)
【文献】
特表2014−520617(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/098421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置の動作によって設定された用量及び送達された用量の両方を判定するための検知システムであって、
前記検知システムは、
前記薬剤送達装置の第1の部材と、
前記薬剤送達装置の第2の部材であって、前記第1の部材に対して回転可能である、第2の部材と、
前記薬剤送達装置の動作によって設定された用量に比例して、用量設定中に前記第1の部材に対して回転可能な前記薬剤送達装置の第3の部材と、
前記薬剤送達装置の動作によって送達された用量に比例して、用量送達中に前記第1の部材に対して回転可能な前記薬剤送達装置の第4の部材とを備え、
前記第2の部材が、用量設定中に前記第4の部材ではなく、前記第3の部材と回転連結されて、用量設定中に前記第3の部材と共に回転し、
前記第2の部材が、用量送達中に前記第3の部材ではなく、前記第4の部材と回転連結されて、用量送達中に前記第4の部材と共に回転し、
前記検知システムがさらに、前記第1の部材と固着された第1のセンサ構成要素と、
前記第2の部材と固着された第2のセンサ構成要素とを備え、
前記第1及び第2のセンサ構成要素のうち、一方がセンサであり、他方がターゲットであり、
前記センサが、用量設定中に、前記センサに対する前記ターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第1の出力を生成するように動作可能であり、
前記センサが、用量送達中に、前記センサに対する前記ターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第2の出力を生成するように動作可能である、検知システム。
【請求項2】
前記第1の部材が、前記薬剤送達装置のハウジングであり、
前記第2の部材が、前記ハウジングに対して軸方向に固定される、請求項1に記載の検知システム。
【請求項3】
前記ハウジング及び前記第2の部材のうちの一方が、半径方向に延在するフランジを含み、
前記ハウジング及び前記第2の部材のうちの他方が、前記フランジを受容し、前記第2の部材を前記ハウジングに軸方向に固定する相補的な溝を含む、請求項2に記載の検知システム。
【請求項4】
前記第3及び第4の部材が、前記第2の部材に対して、設定位置と送達位置との間で一斉に軸方向に動く、請求項1に記載の検知システム。
【請求項5】
前記センサに動作可能に接続されて、前記センサからの前記少なくとも1つの第1の出力及び前記少なくとも1つの第2の出力を受信するコントローラをさらに備え、
前記コントローラが、前記受信された少なくとも1つの第1の出力から、前記薬剤送達装置の動作によって設定された用量を判定するように構成されており、
前記コントローラが、前記受信された少なくとも1つの第2の出力から、前記薬剤送達装置の動作によって送達された用量を判定するように構成されている、請求項1に記載の検知システム。
【請求項6】
前記コントローラが、用量設定中の前記第1及び第2の部材の開始及び終了相対位置に対応する前記センサからの2つの別個の第1の出力を受信し、前記設定された用量をそこから判定するように構成されており、
前記コントローラが、さらに、用量送達中の前記第1及び第2の部材の開始及び終了相対位置に対応する前記センサからの2つの別個の第2の出力を受信し、前記送達された用量をそこから判定するように構成されている、請求項5に記載の検知システム。
【請求項7】
前記第4の部材が、用量設定中に前記第1の部材に対して動かないように固定され、
前記第3の部材が、用量送達中に前記第1の部材に対して動かないように固定される、請求項1に記載の検知システム。
【請求項8】
用量設定中に前記第2の部材を前記第3の部材と連結させる第1の連結システムと、
用量送達中に前記第2の部材を前記第4の部材と連結させる第2の連結システムと、をさらに備える、請求項1に記載の検知システム。
【請求項9】
前記第1の連結システムが、第1の方向における、前記第2の部材に対する前記第3の部材の軸方向運動時に前記第2の部材を前記第3の部材と連結させるように構成されており、
前記第2の連結システムが、前記第1の方向と反対の第2の方向における、前記第2の部材に対する前記第4の部材の軸方向運動時に前記第2の部材を前記第4の部材と連結させるように構成されている、請求項8に記載の検知システム。
【請求項10】
前記第3及び第4の部材が、前記第2の部材に対して、設定位置と送達位置との間で一斉に軸方向に動く、請求項9に記載の検知システム。
【請求項11】
前記第2の部材が、前記第3の部材と第4の部材との間に軸方向に位置付けられる、請求項10に記載の検知システム。
【請求項12】
前記第1の連結システムが、前記第2の部材に対する前記第3の部材の軸方向運動時に係合または離脱する前記第2及び第3の部材上の互いに対面するスプラインを備え、
前記第2の連結システムが、前記第2の部材に対する前記第4の部材の軸方向運動時に係合または離脱する前記第2及び第4の部材上に互いに対面するスプラインを備える、請求項11に記載の検知システム。
【請求項13】
薬剤送達装置の動作によって設定された用量及び送達された用量の両方を判定するための前記薬剤送達装置であって、
第1の部材と、
前記第1の部材に対して回転可能な第2の部材と、
前記薬剤送達装置の動作によって設定された用量に比例して、用量設定中に前記第1の部材に対して回転可能な第3の部材と、
前記薬剤送達装置の動作によって送達された用量に比例して、用量送達中に前記第1の部材に対して回転可能な第4の部材とを備え、
前記第2の部材が、用量設定中に前記第4の部材ではなく、前記第3の部材と回転連結されて、用量設定中に前記第3の部材と共に回転し、
前記第2の部材が、用量送達中に前記第3の部材ではなく、前記第4の部材と回転連結されて、用量送達中に前記第4の部材と共に回転し、
前記薬剤送達装置がさらに、
前記第1の部材と固着された第1のセンサ構成要素と、
前記第2の部材と固着された第2のセンサ構成要素とを備え、
前記第1及び第2のセンサ構成要素のうち、一方がセンサであり、他方がターゲットであり、
前記センサが、用量設定中に、前記センサに対する前記ターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第1の出力を生成するように動作可能であり、
前記センサが、用量送達中に、前記センサに対する前記ターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第2の出力を生成するように動作可能である、薬剤送達装置。
【請求項14】
ハウジングを含み、
前記第1の部材が、前記ハウジングであり、
前記第2の部材が、前記ハウジングに対して軸方向に固定される、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記ハウジング及び前記第2の部材のうちの一方が、半径方向に延在するフランジを含み、
前記ハウジング及び前記第2の部材のうちの他方が、前記フランジを受容し、前記第2の部材を前記ハウジングに軸方向に固定する相補的な溝を含む、請求項14に記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
前記第3及び第4の部材が、前記第2の部材に対して、設定位置と送達位置との間で一斉に軸方向に動く、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
前記センサに動作可能に接続されて、前記センサからの前記少なくとも1つの第1の出力及び前記少なくとも1つの第2の出力を受信するコントローラをさらに備え、
前記コントローラが、前記受信された少なくとも1つの第1の出力から、前記薬剤送達装置の動作によって設定された用量を判定するように構成されており、
前記コントローラが、前記受信された少なくとも1つの第2の出力から、前記薬剤送達装置の動作によって送達された用量を判定するように構成されている、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
前記コントローラが、用量設定中の前記第1及び第2の部材の開始及び終了相対位置に対応する前記センサからの2つの別個の第1の出力を受信し、前記設定された用量をそこから判定するように構成されており、
前記コントローラが、さらに、用量送達中の前記第1及び第2の部材の開始及び終了相対位置に対応する前記センサからの2つの別個の第2の出力を受信し、前記送達された用量をそこから判定するように構成されている、請求項17に記載の薬剤送達装置。
【請求項19】
前記第4の部材が、用量設定中に前記第1の部材に対して動かないように固定され、前記第3の部材が、用量送達中に前記第1の部材に対して動かないように固定される、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
用量設定中に前記第2の部材を前記第3の部材と連結させる第1の連結システムと、
用量送達中に前記第2の部材を前記第4の部材と連結させる第2の連結システムと、をさらに備える、請求項13に記載の薬剤送達装置。
【請求項21】
前記第1の連結システムが、第1の方向における、前記第2の部材に対する前記第3の部材の軸方向運動時に前記第2の部材を前記第3の部材と連結させるように構成されており、
前記第2の連結システムが、前記第1の方向と反対の第2の方向における、前記第2の部材に対する前記第4の部材の軸方向運動時に前記第2の部材を前記第4の部材と連結させるように構成されている、請求項20に記載の薬剤送達装置。
【請求項22】
前記第3及び第4の部材が、前記第2の部材に対して、設定位置と送達位置との間で一斉に軸方向に動く、請求項21に記載の薬剤送達装置。
【請求項23】
前記第2の部材が、前記第3の部材と第4の部材との間に軸方向に位置付けられる、請求項22に記載の薬剤送達装置。
【請求項24】
前記第1の連結システムが、前記第2の部材に対する前記第3の部材の軸方向運動時に係合または離脱する前記第2及び第3の部材上に互いに対面するスプラインを備え、
前記第2の連結システムが、前記第2の部材に対する前記第4の部材の軸方向運動時に係合または離脱する前記第2及び第4の部材上に互いに対面するスプラインを備える、請求項23に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達装置に関し、より具体的には、薬剤送達装置内の検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ペン型注射器、注入ポンプ、及び注射器を含む様々な薬剤送達装置が、薬剤の定期的な送達のために一般的に使用される。患者の健康状態が危機に瀕しているような時点で、適切な量の薬剤を供給することが重要である。多くの場合、適切な量の薬剤を正確に送達できなければ、患者に深刻な影響が生じる可能性がある。
【0003】
適切な量の薬剤の送達は、薬剤送達装置による実際の投薬が正確であることを必要とする。本明細書で使用される「投薬」という用語は、用量を送達する、すなわち用量を設定し、その設定用量を送達するという2つの重要な段階を指す。正確な用量が確実に送達されるには、投薬のこれら両方の重要な段階において薬剤送達装置が適切に機能することが必要である。
【0004】
薬剤送達装置は、一般に、種々の部材が回転するか、または互いに対して平行移動する機械システムを利用する。ほとんどの場合、部材間のこれらの相対運動は、装置の動作によって設定及び/または送達された用量に比例する。したがって、当技術分野では、設定及び/または送達された用量を評価するために、薬剤送達装置の部材の相対運動を正確に測定する信頼性の高いシステムを提供するように努めている。このようなシステムは、薬剤送達装置の第1の部材と固着され、装置の第2の部材に固着された検知される構成要素の相対運動を検出するセンサを含み得る。先行技術は、光学システム、触覚システム、電気システム、及び磁気システムを含む検知領域を通る物体の動きに基づく様々な検知システムを記載している。
【発明の概要】
【0005】
その1つの形態では、本発明は、薬剤送達装置の動作によって設定された用量及び送達された用量の両方を判定するための検知システムを提供し、本検知システムは、薬剤送達装置の第1の部材と、第1の部材に対して回転可能である薬剤送達装置の第2の部材と、薬剤送達装置の動作によって設定された用量に比例して、用量設定中に第1の部材に対して回転可能な薬剤送達装置の第3の部材と、薬剤送達装置の動作によって送達された用量に比例して、用量送達中に第1の部材に対して回転可能な薬剤送達装置の第4の部材とを備え、第2の部材は、用量設定中に第4の部材ではなく第3の部材と回転連結されて、用量設定中に第3の部材と共に回転し、第2の部材は、用量送達中に第3の部材ではなく第4の部材と回転連結されて、用量送達中に第4の部材と共に回転し、本検知システムはさらに、第1の部材と固着された第1のセンサ構成要素と、第2の部材と固着された第2のセンサ構成要素とを備え、第1及び第2のセンサ構成要素のうちの1つは、センサであり、センサ構成要素の他方は、ターゲットであり、センサは、用量設定中に、センサに対するターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第1の出力を生成するように動作可能であり、センサは、用量送達中に、センサに対するターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第2の出力を生成するように動作可能である。
【0006】
その別の形態では、本発明は、薬剤送達装置の動作によって設定された用量及び送達された用量の両方を判定するための薬剤送達装置を提供し、本薬剤送達装置は、第1の部材と、第1の部材に対して回転可能である第2の部材と、薬剤送達装置の動作によって設定された用量に比例して、用量設定中に第1の部材に対して回転可能な第3の部材と、薬剤送達装置の動作によって送達された用量に比例して、用量送達中に第1の部材に対して回転可能な第4の部材とを備え、第2の部材は、用量設定中に第4の部材ではなく第3の部材と回転連結されて、用量設定中に第3の部材と共に回転し、第2の部材は、用量送達中に第3の部材ではなく第4の部材と回転連結されて、用量送達中に第4の部材と共に回転し、本薬剤送達装置はさらに、第1の部材と固着された第1のセンサ構成要素と、第2の部材と固着された第2のセンサ構成要素とを備え、第1及び第2のセンサ構成要素のうちの1つは、センサであり、センサ構成要素の他方は、ターゲットであり、センサは、用量設定中に、センサに対するターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第1の出力を生成するように動作可能であり、センサは、用量送達中に、センサに対するターゲットの回転を検出し、それに相関する少なくとも1つの第2の出力を生成するように動作可能である。
【0007】
本発明は、薬剤送達装置内の部材の相対回転運動を検出するための検知システムを提供する。検知システムは、設定及び送達用量に比例するように、用量設定中及び用量送達中に互いに対して動く薬剤送達装置の部材と共に使用される。検知システムは、第1の部材に固着された第1のセンサ構成要素と、第1の部材に対して回転可能な第2の部材に固着された第2のセンサ構成要素とを含む。第2の部材は、用量設定中に、設定された用量に比例して第1の部材に対して回転する第3の部材と連結される。第2の部材は、用量送達中に、送達された用量に比例して第1の部材に対して回転する第4の部材と連結される。設定及び送達用量は、検出された相対回転運動に基づいて、判定される。
【0008】
本発明の1つの利点は、薬剤送達装置によって設定及び送達されている薬剤の量の正確で信頼性の高い評価を提供する検知システムが提供され得ることである。
【0009】
本発明の別の利点は、個々の部品をほとんど必要とせず、コンパクトであり、様々な薬剤送達装置に容易に適合される検知システムが提供され得ることである。
【0010】
本発明のさらなる目的、特徴、及び実施形態は、本明細書に提供される発明を実施するための形態及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上述した、かつ他の利点及び目的、ならびにそれらを達成する手法は、添付の図面と共に考慮される本発明の実施形態の以下の記述を参照することによって、より明らかになり、かつ本発明自体がよりよく理解されるであろう。
【0012】
【
図1】用量設定中の第1の位置にある検知システムの概略図である。
【
図2】用量送達中の第2の位置にある
図1の検知システムの概略図である。
【
図3】設定位置にある検知システムの部分断面図である。
【
図4】
図3の検知システムの一部の拡大斜視図である。
【
図5】送達位置にある
図3の検知システムの部分断面図である。
【
図6】
図5の検知システムの一部の拡大斜視図である。
【
図7】
図3の検知システムを組み込んだ薬剤送達装置の平面図である。
【
図8】部分断面図にある
図7の薬剤送達装置の平面図である。
【0013】
対応する参照文字は、いくつかの図を通して対応する部品を示す。図面は本発明の実施形態を表しているが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明をより良く例示し、かつ説明するために、図面の一部において、ある特定の特徴が誇張されるか、または省略されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の原理の理解を促進する目的で、図面に例示されている例を参照し、特定の言語を使用してこれらを記載する。しかしながら、これによって本発明の範囲が限定されるものではないことを理解されたい。記載される実施形態における任意の改変及びさらなる修正、ならびに本明細書に開示される概念のさらなる適用は、当業者に通常起こるように企図される。これらの概念の例が詳細に示されているが、明瞭化のためにいくつかの特徴及び詳細が省略されていることは明らかであろう。
【0015】
本発明は、概して、薬剤送達装置によって設定された用量及び送達された用量の両方を判定するための検知システムに関する。それらの量は、薬剤送達装置の部材間の相対回転運動の測定に基づいて判定され、測定された動きは、設定された用量及び送達された用量に相関する。薬剤送達装置は、ペン型注射器、注入ポンプ、及び注射器などの薬剤の用量を設定及び送達するために使用される任意の装置であり得る。薬剤は、このような薬剤送達装置によって送達され得るタイプのいずれかであり得る。
【0016】
検知システムは、薬剤送達装置の第1の部材と固着された第1のセンサ構成要素と、薬剤送達装置の第2の部材と固着された第2のセンサ構成要素とを含む。第2の部材は、用量設定中及び用量送達中の両方において第1の部材に対して自由に回転する。
【0017】
用量設定中、第2の部材は、薬剤送達装置によって設定された用量に比例する程度に第1の部材に対して回転する第3の部材と連結される。したがって、用量設定中の第1のセンサ構成要素に対する第2のセンサ構成要素の回転は、設定された用量に比例する第1及び第3の部材の相対回転に相関する。この相対回転は、設定された用量を判定するために使用される。
【0018】
用量送達中、第2の部材は、薬剤送達装置によって送達される用量に比例する程度に第1の部材に対して回転する第4の部材と連結される。したがって、用量送達中の第1のセンサ構成要素に対する第2のセンサ構成要素の回転は、送達された用量に比例する第1及び第4の部材の相対回転に相関する。この相対回転は、送達された用量を判定するために使用される。
【0019】
図1及び
図2を参照すると、第1の部材12と、軸16の周りを第1の部材12に対して回転可能である第2の部材14とを備える検知システム10が示される。第3の部材18は、設定された用量に比例して、軸16の周りを第1の部材12に対して回転する。第4の部材20は、送達された用量に比例して、軸16の周りを第1の部材12に対して回転する。第1の部材12には第1のセンサ構成要素22が固着される。第2の部材14には、第1の部材12と第2の部材14との間の相対回転中、第1のセンサ構成要素22によって検知されるように位置付けられる第2のセンサ構成要素24が固着される。
【0020】
図1には、用量設定中に動作しているときの検知システムが概略的に示される。第2の部材14は、第3の部材18と連結されて、用量設定中に第3の部材と共に回転する。この手法において、第2の部材14の回転は、設定された用量に比例し、第1の部材12に対するこの回転は、センサ構成要素22及び24の動作によって検出され得る。第4の部材20は、典型的には、用量設定中に第1の部材に対して回転しないように固定される。
図2に示されるように、検知システム10は、用量送達中、代わって第4の部材20と連結されて、第4の部材と共に回転する第2の部材14を有する。したがって、第2の部材14は、送達された用量に比例して、用量送達中に回転し、この回転は、センサ構成要素によって検出され得る。第3の部材18は、典型的には、用量送達中に第1の部材に対して回転しないように固定される。
【0021】
検知システムは、薬剤送達装置の部材と固着されるセンサ構成要素を使用する。本明細書で使用される「固着された」という用語は、システム動作に必要な程度に、センサ構成要素の位置を薬剤送達装置の関連部材に固定する任意の手法を包含する。例えば、センサ構成要素は、関連部材上に直接位置付けられ得るか、その内部に受容され得るか、それに取り付けられ得るか、またはそれと一体化され得る。あるいは、センサ構成要素を部材と間接的に接続させる1つ以上の他の構成要素が存在し得る。部材が用量設定及び送達中に互いに対して動くと、センサ構成要素が、固着によって、薬剤送達装置の部材と一斉に動かされるか、またはそれに比例して動かされる場合、それらがそれぞれの部材に十分に「固着される」ことが当業者によって理解されよう。
【0022】
検知システムは、第2の部材が第3の部材または第4の部材のいずれかと交互に連結されて動作する。本明細書で使用される「連結される」という用語は、他の部材が回転すると、1つの部材が別の部材と一斉にまたはそれに比例して回転するように固着された任意の手法を包含する。連結システムは、例えば、スプライン、ギア、または部材間の摩擦係合を通して提供される接続、または部材を間接的に連結させる他の構成要素によって提供される同様の接続を含み得る。
【0023】
検知システムは、第1センサ構成要素と、第2のセンサ構成要素とを備える。一方のセンサ構成要素はセンサであり、他方は、本明細書ではターゲットと称される。「センサ」という用語は、ターゲットの相対回転位置を検出することができる任意の構成要素を指す。「ターゲット」は、センサに対して動く任意の構成要素であり、センサは、センサに対するターゲットの回転位置を検出することができる。したがって、センサは、ターゲットの位置を監視し、ターゲットの相対回転運動を表す出力を提供することができる。
【0024】
センサは、典型的には、検知領域内のターゲットの位置に関連して変化する検知パラメータの特徴を検出する。ターゲットは、検知パラメータに直接または間接的に影響を及ぼすように、検知領域内に延在するか、またはそれに影響を与える。ターゲットのそれぞれの異なる位置は、センサの検知パラメータにおける関連する影響を有する検知領域における独特の影響を提示する。したがって、ターゲットの異なる位置は、センサとターゲットとの相対位置の特徴である、検知パラメータの値をもたらす。
【0025】
本発明は、2つの相対的に回転する部材の動きを検出することができる任意の原理に基づいて動作する、既知の様々な検知技術のいずれかと共に有用である。このような技術は、例えば、1つの構成要素の位置を別の構成要素に対して示す、グレースケール測定を含むが、これに限定されない触覚的、光学的、または電気的測定に基づく技術を含み得る。このような技術はまた、検知領域に課され、領域内のターゲットの位置に基づいて改変される磁場または電場などの領域に関連する検知パラメータの測定も含み得る。領域の改変は、検知領域内のターゲットの位置と直接関連して検知パラメータを変化させる。このような実施形態では、例えば、検知パラメータは、キャパシタンス、コンダクタンス、抵抗、インピーダンス、または電圧であり得る。好適な検知技術は、磁気センサを使用する。例えば、磁気抵抗型センサでは、印加された磁場の歪みは、センサ構成要素の素子の抵抗の特徴的な変化をもたらす。同様に、ホール効果センサは、印加磁場における歪みに起因する電圧の変化を検出する。
【0026】
有利な検知システムは、非接触システムであるため、構成要素が、それらの間の反復的な接触に起因する摩耗による劣化の影響を受けない可能性がある。さらに、好適なシステムは、能動構成要素と受動構成要素との組み合わせを、能動構成要素として動作するセンサと共に含み得る。この手法において、両方の構成要素を電源またはコントローラなどの他のシステム要素と接続させる必要はない。
【0027】
センサ構成要素は、相対回転運動を検出し、動きが判定され得る関連出力を生成する。一般に、センサは、センサに対するターゲットの回転位置を検出し、それに相関する少なくとも1つの第1の出力を生成するように用量設定中に動作可能であり得る。センサはまた、センサに対するターゲットの回転位置を検出し、それに相関する少なくとも1つの第2の出力を生成するように用量送達中にも動作可能であり得る。コントローラは、センサに動作可能に接続され、センサから少なくとも1つの第1の出力及び少なくとも1つの第2の出力を受信する。コントローラは、出力から、薬剤送達装置の動作によって設定された用量及び送達された用量を判定するように構成されている。一実施形態では、センサは、用量設定中及び用量送達中の回転部材の相対的な開始及び停止位置に関する出力を提供する。あるいは、センサは、用量設定中及び/または用量送達中のターゲットに対するセンサの全体的な回転を示す単一の出力を提供し得る。
【0028】
さらなる例示の目的のために、本発明の構成及び動作は、糖尿病の治療のためのインスリンの送達のために使用されるペン型注射器などのペン型注射器の形態の薬剤送達装置に関連して記載される。用量設定中及び用量送達中、装置の種々の部材が互いに対して回転することが一般的である。これらの部材は、薬剤送達装置の設計に応じて変化し、例えば、ハウジング、用量ノブ、ダイヤルスリーブ、駆動スリーブ、投薬ナット、及び/またはピストンロッドを含み得る。しかしながら、以下の実施例の使用によって本発明の範囲が限定されるものではないことが理解されよう。本発明は、構成要素部材の相対回転運動が設定された用量及び送達された用量の両方を示す多種多様な薬剤送達装置に関連して有用である。
【0029】
例として、検知システム40は、軸46の周りをハウジングに対して回転可能であるバレル44が受容されるハウジング42を含み得る。バレル44は、バネ48及びクリッカー50によって、近位方向(
図3において右側)に偏向される。バレル44は、バレルが近位位置にあるときにハウジング42の肩部54に当接するフランジ52を含む。この位置において、バレル44上の円周方向に間隔を置かれた歯56は、バレル及びハウジングの相対回転中にハウジング42の円周溝58内に受容され、自由に動く。
【0030】
バレル44は、バレル歯56がハウジング42の相補的に位置付けられた歯60によって受容されて、バレルをハウジングに対して回転しないようにロックするように、遠位方向に動かされる別の位置を有する。代わりに、バレルは、ハウジング42にキー止めされたクリッカー50の歯の内部の底部にあるバレル上の歯によってロックされ得る。
【0031】
ダイヤルスリーブ62は、バレル44内に受容される。ダイヤルスリーブ62上のキー64は、バレル44内の長手方向のキー溝66内に受け入れられる。これによって、ダイヤルスリーブはバレルに対して軸方向に動くことができるが、2つの部材間の相対回転は防止される。ダイヤルスリーブは、駆動スリーブ74の雄ねじ72内に係合するタブ68及び70を含む。駆動スリーブ74に対するダイヤルスリーブ62の回転は、タブ68及び70がネジ72に沿って進むにつれてダイヤルスリーブを軸方向に動かす。
【0032】
駆動スリーブの回転は、駆動部材を動かして、設定用量を送達するために使用される。一実施形態では、例えば、駆動スリーブ74は、雌ねじを有し、ハウジング42内に軸方向に固定される駆動ナット(図示せず)と連結される。以下に記載されるように、駆動ナットの雌ねじは、駆動部材の雄ねじに係合する。この実施形態では、駆動スリーブの回転は駆動ナットを回転させ、駆動部材を遠位方向に前進させて設定用量を投与する。駆動スリーブ74の回転運動を使用して駆動部材を前進させるための種々の他の方法も当技術分野において周知されていることが理解されよう。
【0033】
前述の装置に関する用量の設定は以下のように行われる。バレル44は最初、ハウジング42に対して近位位置にあり(
図3)、歯56が円周溝58内で自由に回ると回転する。駆動スリーブ74は、ハウジング42に対して相補的スプライン(図示せず)によって回転可能に固定される。用量設定中、ダイヤルスリーブ62は回転し、駆動スリーブ74を螺旋状に上げる。バレル及びダイヤルスリーブのキー接続によって、バレル44はダイヤルスリーブ62と一斉に回転する。しかしながら、同時に、バレル44は、フランジ52が肩部54に対して受容されるという点では、ハウジングに対して近位方向に動くことが防止される。したがって、薬剤送達装置によって設定された用量を表す、用量設定中のバレルとハウジングとの間の相対回転運動が存在する。この回転運動は、検出システム40によって検出される。
【0034】
設定用量を送達するために、ダイヤルスリーブ62は、手動で遠位方向に押される。ダイヤルスリーブタブ68及び70の駆動スリーブねじ72との摩擦係合は、最初は相対回転を防止するのに十分であり、ハウジングに対して回転することなくドライブスリーブ74をダイヤルスリーブと共に前進させる。駆動スリーブ74の外向きに延在するフランジ76は、バレル44の内側肩部78に隣接して載置され、したがって、バレル44も遠位方向に動く。この動きによって、バレル歯56がハウジング歯60と係合する。その結果、ハウジング42に対する駆動スリーブ74及びバレル44のさらなる遠位運動が防止される。さらに、バレル44及びキー止めされたダイヤルスリーブ62もまた、ハウジング42に対して回転しないようにロックされる。しかしながら、ダイヤルスリーブ62は、キー64がキー溝66に沿って進むと、バレル44に対して遠位方向に自由に動く。また、駆動スリーブ62のこの最初の遠位運動によって、用量設定中にスプライン固定駆動スリーブ74がハウジング42に対して回転するのを解除し、したがって、駆動スリーブはハウジングに対して自由に回転する。
【0035】
この時点で、ダイヤルスリーブ62は、ハウジング42に対して遠位方向に自由に動くが、回転せず、駆動スリーブ74は、ハウジング44に対して自由に回転するが、遠位方向には動かない。したがって、ダイヤルスリーブ62にさらに加えられる力は、タブ68及び70と駆動スリーブねじ72との間の摩擦係合を克服し、駆動スリーブ74は、ダイヤルスリーブが非回転方向に前進するにつれてハウジング42に対して回転する。駆動スリーブのこの回転は、駆動ナットの回転及び駆動部材の前進をもたらし、前述のように用量を送達する。このように、用量送達中、駆動スリーブ74は、薬剤送達装置によって送達された用量を表す程度にハウジング42に対して回転する。
【0036】
薬剤送達装置は、送達された用量に比例して互いに対して回転するが、用量が送達されないときにも回転する部材を含むことがある。このような状況では、検知システムは、設定もしくは送達された用量に相関する相対回転のその部分のみを測定することによって、または全回転量を測定し、それを、投薬に相関しない既知の回転量分低減することによって、これを説明するように構成され得る。この状況は、例えば、コントローラにプログラムされた数学的または他の補償方法によっても適応され得る。いずれにしても、原理は、検知システムが、投薬を示す部材のその相対的な回転運動に関連する用量設定または用量送達の量を判定するのと同じである。
【0037】
検知システム40は、ハウジング42と固着されたセンサ80をさらに含む。ターゲット82は、軸46の周りをハウジング42に対して回転可能であるクラッチ84に固着される。クラッチ84は、ハウジング42の内壁の溝88内に受容される円周フランジ86によってハウジング42に対して軸方向に固定され得る。これによって、薬剤送達装置の全ての動作中、ターゲット82はセンサ80の直接向かい合う正しい位置に維持される。フランジがハウジングから外向きに延在し、溝がクラッチ84の外壁に形成されるとこれらの特徴が逆になることが理解されよう。
【0038】
あるいは、用量設定及び用量送達の両方の間にセンサ80がターゲット82を検知するように動作可能のままであれば、クラッチ84をハウジング42と軸方向に固定する必要はない。さらに別の実施形態では、センサ80は、ハウジング42に対して軸方向に移動可能であり得、かつ/またはターゲット82は、クラッチ84に対して軸方向に移動可能であり得るが、但し、やはり、センサ80が用量設定及び用量送達の両方の間にターゲット82を検知するように動作可能なままであることが条件である。
【0039】
バレル44及び駆動スリーブ74が第1の位置にある間、用量が設定され得る検知システム40が
図3及び
図4に示される。この位置において、バレル44は、クラッチ84のスプライン92と係合するスプライン90を含む。用量設定は、駆動スリーブ74に対して、したがって、ハウジング42に対してもダイヤルスリーブ62を回転させることによって達成される。バレル44は、ハウジング42に対してダイヤルスリーブにキー止めされ、それと一斉に回転する。クラッチ84及びターゲット82は、バレル44と連結され、したがって、用量設定中にハウジング42に対しても回転する。用量設定中のハウジング42に対するクラッチ84の回転は、薬剤送達装置によって設定された用量に正比例する。センサ80に対するターゲット82の対応する回転運動は、設定された用量の指標として検出される。
【0040】
図5及び
図6を参照すると、クラッチ84は第2の位置に示され、その間に用量が供給され得る。この状態は、ダイヤルスリーブ62がバレル歯56をハウジング歯60と係合させるのに必要な短い距離だけ前進して、バレルをハウジング42に対して回転しないようにロックするという移行の後に得られる。同じ動きで、駆動スリーブ74とハウジング42とのスプライン接続が解除され、駆動スリーブはハウジング42に対して自由に回転する。
【0041】
この移行運動はまた、クラッチ84に対してバレル44及び駆動スリーブ74の位置を変更する。例えば、
図6に示されるように、バレルスプライン90は、それらをクラッチスプライン92から離脱する距離だけ遠位方向に動く。したがって、クラッチ84は、バレルとは独立して自由に回転する。同時に、駆動スリーブ74上のスプライン94が遠位方向に動き、ここで、クラッチ84上の第2スプライン96と係合して駆動スリーブ及びクラッチを回転連結する。したがって、駆動スリーブとハウジングとの間の相対回転は、ターゲット82とセンサ80との間の対応する相対回転をもたらす。用量送達中のハウジング42に対するクラッチ84の回転は、薬剤送達装置によって送達された用量に正比例する。センサ80に対するターゲット82の対応する回転運動は、送達された用量の指標として検出される。
【0042】
したがって、ターゲットは、交互に、用量設定中に1つの部材と連結し、用量送達中に異なる部材と連結する。記載される実施形態では、これは、用量設定中にクラッチがバレルに連結され、用量送達中に駆動スリーブと連結されることによって生じる。しかしながら、検知システムは、代わりに、用量設定及び用量送達それぞれに必要とされる相対回転を提供するどのような部材とクラッチをも連結させるように構成できることが理解されよう。
【0043】
連結がそれぞれの部材によって担持された互いに対面するスプラインによって達成される実施形態が示される。しかしながら、前述されるように、部材は、部材を一緒に回転させる任意の他の手法で連結され得る。例えば、連結は、ギア、スプライン、摩擦連結などを含む様々な機械システムを備え得る。例えば、他の技術分野では、流体せん断連結及び他の摩擦連結が、一緒に回転するように意図された2つの部材を連結するのに有用であることが周知されている。さらに、連結は、一方の部材を他方の部材に直接回転可能に接続する必要はないが、代わりに、完全に別個の構成要素が回転のための部材を間接的に連結し得る。
【0044】
示された態様では、連結は、部材の相対的な軸方向運動の結果として達成される。前述の実施形態では、例えば、バレル44の近位方向における軸方向運動によって、バレルスプライン90が第1のクラッチスプライン92内に位置付けられ、バレルをクラッチ84と回転連結する。同時に、駆動スリーブ74の対応する近位運動によって、駆動スリーブスプライン94が第2のクラッチスプライン96から引き出されて、駆動スリーブをクラッチ84との回転連結から切り離す。用量送達の前段階としての遠位方向の軸方向運動は、逆の効果を有する。したがって、用量設定中に動作可能な連結システムは、クラッチに対するバレルの軸方向運動の結果として、クラッチとバレルとを連結するように作用する。同様に、用量送達中に動作可能な連結システムは、クラッチに対する駆動スリーブの軸方向運動時にクラッチを駆動スリーブと連結するように作用する。一実施形態では、バレル及び駆動スリーブは、設定位置と送達位置との間で一斉に軸方向に動き、クラッチとの連結及び切り離しを実現する。
【0045】
ここで
図7〜
図8を参照すると、検知システムを組み込んだ薬剤送達装置の一例が示される。装置は、用量を選択的に設定し、次いで、その設定用量を送達するためにユーザによって手動で取り扱われるペン型送達装置100を備える。この一般的なタイプの送達装置は周知されており、本明細書における装置100の記述は単なる例示である。検知システムは、この記載される実施形態との使用において示されるが、構成部材の相対運動が設定及び送達された用量を示す種々に構成された薬剤送達装置における使用のために容易に適応可能である。
【0046】
薬剤送達装置100は、装置の内部構成要素を支持するケーシング102を含む。ケーシングは、ハウジング42及びカートリッジ保持器106を有すると示される。ハウジング42は、
図3〜
図6に関して前述されるような、薬剤の用量を設定及び送達するように動作される機械的駆動機構を保持する。カートリッジ保持器106は、装置によって送達される薬剤で充填されたカートリッジ108を保持する。カートリッジ保持器106は、カートリッジ保持器106の近位端部にあるリング部分116上の雌ねじ114と噛み合う、ハウジング42の突出したカラー部分112上の雄ねじ110を介してハウジング42に着脱可能に取り付け可能である。バヨネット嵌合などの、ねじ110及び114以外の好適な着脱可能な取り付け要素は、当技術分野では既知であり、むしろ普通に用いられ得る。
【0047】
カートリッジ保持器106は、カートリッジ108を取り外し可能に受容するのに適した内部空洞118を含み、これによって、カートリッジがそこに挿入され、次いで、消耗して同様の設計の新しいカートリッジと交換されるときにそこから取り外される。カートリッジ保持器106の開口部120は、カートリッジの内容物の可視性を可能にする。
薬剤カートリッジ108は、摺動可能なプランジャまたはピストン124によって一端部が封止され、クリンプリング128によって保持された隔壁126によって他端部が封止された薬剤で充填された内部リザーバを有する本体122を含む従来の設計のものである。
【0048】
針アセンブリ130は、カートリッジ保持器106の雄ねじを切った近位端部132に着脱可能に取り付け可能であり、そのように取り付けられたときに、隔壁126を突き刺す。針が通って延在する突き刺された隔壁は、本体122のリザーバ内の薬剤の分注中の出口として機能し、薬剤は、装置100の動作によって針アセンブリ130を通して送達される。カートリッジ108は、装置100の目的に応じて、複数回分の用量、または1回分の用量の薬剤を保持し得る。
【0049】
薬剤送達装置100は、
図7において、装置が任意の用量の送達のために設定されていない「ゼロ位置」にあることが示されている。
図8において、送達のために用量を設定するように操作された後の装置100が配置される。
【0050】
薬剤送達装置100は、概して134で示される駆動部材の前方への前進を制御する、手動動力用量送達機構を含む多くのこのような装置の典型である。駆動部材134は、カートリッジ本体122内を前進し、プランジャ124と直接係合し、それを前進させる。用量送達機構は、ダイヤルスリーブ62を介してハウジング42内の機械的駆動アセンブリに接続された用量ノブ136を含む。用量ノブ136が使用者によって送達のための用量を設定するように回されると、用量ノブ136及びダイヤルスリーブ62は、ハウジング42から一緒にねじ出される。使用者が用量ノブ136の近位端部140に押し込み力を加えると、用量ノブ136及びダイヤルスリーブ62のハウジング42への結果的な前方移動は、機械的駆動アセンブリによって、駆動部材134のより小さな動きに変換され、ハウジング42からカートリッジ本体122の内部に送られる。
【0051】
駆動部材134は、カートリッジプランジャ124に直接係合する前方端部142と、ハウジング42内から軸方向に延在するシャフト144とを含む2つの部品で形成される。シャフト144は、雄ねじ146を有し、機械駆動アセンブリと係合して、ハウジング42から押し出される。前方端部142は、シャフト144に取り付けられる拡大した足の形態で提供される。
【0052】
コントローラ148(
図8)は、センサからの出力を受信するように検知システムに動作可能に接続される。コントローラは、プロセッサ、電源、メモリ、マイクロコントローラなどのような従来の構成要素を含み得る。コントローラ148は、薬剤送達装置上に位置すると
図8に示される。あるいは、コントローラの全部または一部は、コンピュータ、スマートフォン、または他の装置の手段によって、別個に提供され得る。次いで、有線または無線接続などによって、適時にコントローラ構成要素をセンサと動作可能に接続する手段が提供される。
【0053】
コントローラは、用量設定及び用量送達のそれぞれの間に、センサからの少なくとも1つの出力を受信するように構成されており、そこから、薬剤送達装置の動作によって設定された用量及び送達された用量が判定され得る。1つのアプローチでは、センサは、用量設定中及び用量送達中の開始及び終了相対回転位置に対応する出力を提供する。開始位置及び終了位置は、保存されたテーブルとの比較などによって、設定及び送達された用量を判定するために使用される。別の態様では、センサは、循環応答におけるピークなどの識別可能な標識の通過を「計数する」ことによって、用量設定相及び/または用量送達相の開始から終了までの相対回転運動を検出し得、これは、用量の全単位または半単位に対応し得る。特定のセンサ出力を用量判定に変換する一般的な方法が当技術分野において周知されており、本発明によって企図される。特許請求される検知システムは、これに関するいずれの特定の方法にも限定されない。
【0054】
判定された設定用量及び送達用量は、薬剤送達装置によって記録され、患者に表示され得る。用量設定が許容範囲外にある場合に警報を発し得る。同様に、送達された用量が、設定された量に対応しない場合、警報を発し得、それは、例えば、設定用量の全てが送達されなかったこと、あるいは装置が機能していなかったという表示であり得る。
【0055】
検知システムは相対運動を測定するため、センサ及びターゲットが関連する特定の部材は完全に可逆的である。しかしながら、2つのセンサ構成要素の配置は、利用可能であるスペースなどの他の要因にある程度左右され得る。センサをハウジング上に位置付けることは、判定された設定用量及び送達用量を受信し、処理し、表示し、記録するために使用される電源へのその接続及び電子機器とのその接続を容易にするのに有利である。典型的な実施形態では、センサはハウジングなどの外側部材と固着され、ターゲットは反対に内側部材と固着される。しかしながら、本発明の任意の実施形態について、センサ及びターゲットの配置を逆にすることができることが当業者によって理解されよう。
【0056】
本発明は、図面及び前述において詳細に例示及び記載されてきたが、これらは例示的なものであり、本質的に限定するものではないと考えられるべきである。本明細書に含まれる特許請求の範囲によって規定される本発明の真意の範囲内にある全ての変更物、同等物、及び修正物は、保護されることが望ましい。