(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
四本の木製角柱状の柱材が、直交する二方向に二本ずつ配置されていると共に、前記直交する二方向それぞれにおいて、隣接している前記柱材間に一定の間隙を有する柱材集合体を、縦方向に接続するための接続金具であり、
平板状の第一ベースプレートと、
該第一ベースプレートと平行な平板状の第二ベースプレートと、
該第二ベースプレート及び前記第一ベースプレートそれぞれの外周より内側で、前記第二ベースプレートと前記第一ベースプレートとの間に介設されている角筒体と、
前記第二ベースプレートから立設している下部プレート、及び、該下部プレートの両端から延出している一対の縦長プレートを有し、上方に開放したコ字形を呈している平板状の保持プレートの四枚が、二枚ずつ平行に間隔をあけた状態で井桁状に直交していることにより、前記縦長プレートの二枚ずつが直角をなしている柱材保持部が四カ所形成されている保持体と、
を具備することを特徴とする木材の接続金具。
木製角柱状の横架材の二本が直交して接合されており、それぞれの前記横架材に直交する木製角柱状の柱材の四本からなる柱材集合体が、四本の前記柱材それぞれの隣接する二側面のうち一方を二本の前記横架材の一方に当接させ、前記二側面のうち他方を前記横架材の他方に当接させた状態で、二本の前記横架材の直交部分を取り囲んでいる構造の木造構造体の前記柱材集合体が、請求項1または請求項2に記載の木材の接続金具に接続されている木材の接続構造であり、
前記柱材集合体を構成する四本の前記柱材のそれぞれは、四カ所の前記柱材保持部の一つに保持されており、一つの前記柱材において隣接している二側面は、該柱材を保持している前記柱材保持部を構成している二枚の前記縦長プレートにそれぞれ当接している
ことを特徴とする木材の接続構造。
請求項1または請求項2に記載の木材の接続金具が上端に接続された前記柱材集合体と、請求項1または請求項2に記載の木材の接続金具が下端に接続された他の前記柱材集合体とが、それぞれの前記第一ベースプレートを当接させて接続されている
ことを特徴とする請求項3に記載の木材の接続構造。
【背景技術】
【0002】
本出願人は過去に、木製角柱状の横架材の二本が直交して接続されており、それぞれの横架材に直交する木製角柱状の柱材の四本からなる柱材集合体が、四本の柱材それぞれの隣接する二側面のうち一方を二本の横架材の一方に当接させ、隣接する二側面のうち他方を横架材の他方に当接させた状態で、二本の横架材の直交部分を取り囲んでいる構造の木造構造体を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
このような構成の木造構造体では、強固に接合された四本の柱材により形成されている柱材集合体が全体として荷重を受けるため、耐荷重性が高い。また、それぞれ柱材によって両側から挟み込まれた状態で二本の横架材が接合されているため、横架材同士の接合部及び柱材と横架材との接合部における剛性が高い。そのため、木材の利点、例えば、優れた断熱性、調湿性、高い耐比重強度(強度の割に軽い)、加工の容易性、などの利点を活かしつつ、鉄骨構造(S造)や鉄筋コンクリート構造(RC造)で採用されているラーメン構造に近い靭性を有し、外力により変形しても損壊しにくい高強度の建築物を構築することができる。
【0004】
本出願人は、また、上記の木造構造体を用いた大型木造建築物の開発を進める中で、上記の木造構造体を「横方向」に接続するために、横架材同士を高強度に接続できる接続金具を提案している(特許文献2参照)。この接続金具で接続された横架材は、同一サイズの接続されていない一本の木材以上の強度を有している。これにより、大型木造建築物として、大きな開口部を有する木造建築物を構築することができる。
【0005】
本発明は、このような開発の延長上にあるものであり、上記の木造構造体を「縦方向」に接続する技術、すなわち、四本の柱材からなる柱材集合体と基礎とを接続し、或いは、柱材集合体同士を縦方向に接続する接続金具、及び、該接続金具を使用した接続構造に関するものである。縦方向に延びる柱材には、地震などにより横方向に変位させようとする外力が作用したときに、変形はしても脆性的に破壊しないことが要請される。脆性的に破壊してしまうと、建築物の居住者等が避難するための時間を確保できないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、本発明は、四本の木製の柱材からなる柱材集合体を、脆性的な破壊が抑制された高い強度で、基礎または他の柱材集合体に縦方向に接続できる木材の接続金具、及び、該接続金具を使用した木材の接続構造の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる木材の接続金具(以下、単に「接続金具」と称することがある)は、
「四本の木製角柱状の柱材が、直交する二方向に二本ずつ配置されていると共に、前記直交する二方向それぞれにおいて、隣接している前記柱材間に一定の間隙を有する柱材集合体を、縦方向に接続するための接続金具であり、
平板状の第一ベースプレートと、
該第一ベースプレートと平行な平板状の第二ベースプレートと、
該第二ベースプレート及び前記第一ベースプレートそれぞれの外周より内側で、前記第二ベースプレートと前記第一ベースプレートとの間に介設されている角筒体と、
前記第二ベースプレートから立設している下部プレート、及び、該下部プレートの両端から延出している一対の縦長プレートを有し、上方に開放したコ字形を呈している平板状の保持プレートの四枚が、二枚ずつ平行に間隔をあけた状態で井桁状に直交していることにより、前記縦長プレートの二枚ずつが直角をなしている柱材保持部が四カ所形成されている保持体と、を具備する」ものである。なお、接続金具は「金具」との名称通り、金属製である。
【0009】
本構成の接続金具が接続対象とする柱材集合体は、直交して接合された二本の横架材に、その直交部分を取り囲むように接合されている柱材集合体である。そのため、柱材集合体を構成している四本の柱材は、「直交する二方向に二つずつ配置されている」構成、すなわち、2×2の構成である。また、対向する二本の柱材間に、それぞれ横架材を挟み込んでいるため、横架材のない部分では、二本の柱材間に横架材の厚さに相当する間隙を有している。つまり、「前記直交する二方向それぞれにおいて、隣接している前記柱材間に一定の間隙を有する」における「直交する二方向それぞれ」に有する「間隙」は、直交している二本の横架材それぞれの厚さに相当する間隙である。
【0010】
本構成の接続金具における保持体は、それぞれ上方に開放したコ字形である平板状の保持プレートを井桁状に接合したものである。これにより、それぞれの保持プレートにおいて、コ字形の両端で延出している縦長プレートは合計で八枚あり、その二枚ずつが直交して形成している柱材保持部を四カ所備えている。これにより、四カ所の柱材保持部それぞれに四本の柱材を一本ずつ保持させることができ、その際、それぞれの柱材において隣接する二側面を、柱材保持部を構成している二枚の縦長プレートにそれぞれ当接させることができる。従って、柱材保持部に柱材を保持させた状態で、縦長プレートと柱材とをボルトやビスで締結することにより、接続金具に対して柱材集合体を強固に接続することができる。
【0011】
そして、下部プレートが第二ベースプレートから立設していることから、保持体は第二ベースプレートに接合されているものであるが、本構成では、第二ベースプレートとは別に第一ベースプレートを備えている。すなわち、ベースプレートは二層構造であり、これら二枚のベースプレートは、それぞれの外周より内側で角筒体によって連結されている。仮に、ベースプレートが、第二ベースプレートの一枚のみであったとすると、柱材集合体を基礎に接続するためにアンカーボルトを打ち込むためのスペース、或いは、縦方向に柱材集合体同士を連結するために、ボルト等で締結するためのスペースが、第二ベースプレート上に必要となる。そのため、第二ベースプレートの面積を、柱材集合体の断面積より大きくする必要がある。つまり、第二ベースプレートが、柱材集合体の端部から張り出すこととなり、建築物の柱材としては外観が良くない。
【0012】
これに対し、本構成では、ベースプレートが二層構造であり、両ベースプレートより内側で角筒体によって連結されている。従って、第一プレートにおいて角筒体の側面より外側の部分を、アンカーボルトを打ち込むためのスペース、或いは、ボルト等で締結するためのスペースとして使用することができる。そのため、第二ベースプレート及び第一ベースプレートのサイズを、柱材集合体からはみ出さないサイズに設定することが可能となり、柱材集合体を建築物の柱材として外観の良いものとすることができる。
【0013】
また、仮に、二枚のベースプレートが、中実の部材や多数のリブで連結されているとすると、ガッチリとした剛体となり、建築物に外力が作用した際に、この部分は変形することができない。外力が作用した際に変形できない構造体は、脆性的に破壊してしまう。これに対し、本構成では、二枚のベースプレートが角筒体という、靭性材料である金属で形成された“中空”の部材で連結されている。そのため、建築物に外力が作用した際に、角筒体は柱材集合体の回転を抑制しつつ、変形することができ、柱材集合体が傾くように変位することを許容する。そして、接続金具に接続されている柱材集合体では、四本の柱材の何れにおいても、隣接する二側面それぞれに縦長プレートが当接している。
【0014】
従って、柱材集合体がどの方向に傾いたとしても、その傾きに伴い発生する引張応力に、八枚の縦長プレートの何れかが抗する。縦長プレートを構成する金属材料は引張応力に対する耐性が高いため、柱材集合体の傾きにある程度追随して変形しつつ、外力に抗する。つまり、本構成の接続金具は、外力が作用した際の柱材集合体の傾きをある程度許容し、接続金具自体もその傾きに追随してある程度変形しつつ、外力に抗する。そのため、接続金具は、木材の脆性的な破壊を抑制しつつ、高い強度で柱材集合体を縦方向に接続することができる。
【0015】
本発明にかかる木材の接続金具は、上記構成に加え、
「前記第一ベースプレート及び前記第二ベースプレートは、それぞれ前記角筒体の内部と連通する貫通孔部を有する」ものとすることができる。
【0016】
柱材集合体を構成する四本の柱材は、対向する二本の柱材間に間隙を有している。つまり、柱材集合体は、長軸方向に貫通する内部空間を有している。本構成では、角筒体を介して連結されている第一ベースプレート及び第二ベースプレートが、それぞれ角筒体の内部に連通する貫通孔部を有しているため、柱材集合体が接続金具に接続されると、柱材集合体の内部空間と接続金具の内部空間とが連通する。
【0017】
従って、電気配線、アンテナ線、電話線などの電気コード類や水の配管を、基礎から接続金具を介して柱材集合体の内部空間に導入し、更に、柱材集合体の長軸方向に沿って、その内部空間内に配設することができる。
【0018】
次に、本発明にかかる木材の接続構造(以下、単に「接続構造」と称することがある)は、
「木製角柱状の横架材の二本が直交して接合されており、それぞれの前記横架材に直交する木製角柱状の柱材の四本からなる柱材集合体が、四本の前記柱材それぞれの隣接する二側面のうち一方を二本の前記横架材の一方に当接させ、前記二側面のうち他方を前記横架材の他方に当接させた状態で、二本の前記横架材の直交部分を取り囲んでいる構造の木造構造体の前記柱材集合体が、上記に記載の木材の接続金具に接続されている木材の接続構造であり、
前記柱材集合体を構成する四本の前記柱材のそれぞれは、四カ所の前記柱材保持部の一つに保持されており、一つの前記柱材において隣接している二側面は、該柱材を保持している前記柱材保持部を構成している二枚の前記縦長プレートにそれぞれ当接している」ものである。
【0019】
「横架材」は、梁または桁を指している。また、横架材及び柱材は、それぞれ「木製角柱状」であるが、長軸方向に直交する断面の形状は正方形であっても長方形であっても良い。
【0020】
本構成の接続構造は、上記構成の接続金具に柱材集合体が接続された構造である。第一ベースプレートを基礎に固定することにより、或いは、後述するように、それぞれ接続金具に接続された二つの柱材集合体の第一ベースプレート同士を連結することにより、脆性的な破壊が抑制された高い強度で、柱材集合体を縦方向に接続することができる。
【0021】
本発明にかかる接続構造は、上記構成に加え、
「上記に記載の木材の接続金具が上端に接続された前記柱材集合体と、上記に記載の木材の接続金具が下端に接続された他の前記柱材集合体とが、それぞれの前記第一ベースプレートを当接させて接続されている」ものとすることができる。
【0022】
これは、柱材集合体同士が縦方向に接続された接続構造である。二つの柱材集合体同士を縦方向に接続するとき、上層の柱材集合体の下端に接続される接続金具と、下層の柱材集合体の上端に接続される接続金具とは、上下に反転した関係とする。これにより、二つの接続金具の第一ベースプレート同士を当接させた状態で、二つの接続金具を介して、二つの柱材集合体を縦方向に接続することができる。
【0023】
従って、本構成の接続構造によれば、脆性的な破壊が抑制された高い強度を有する“高層”の建築物を、木製の柱材及び横架材からなる木造構造体によって構築することができる。また、接続金具に接続された木造構造体を工場で製造しておき、現場で接続金具同士を連結することにより、容易な作業で効率的に、高層の大型木造建築物を構築することができる。
【0024】
更に、柱材集合体が縦方向に接続されるに当たり、接続金具を介して接続されることにより、接続される柱材集合体を、異なるサイズとすることが可能である。例えば、上層の柱材集合体を構成する柱材より、下層の柱材集合体を構成する柱材に太い木材を使用することにより、耐荷重性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の効果として、四本の木製の柱材からなる柱材集合体を、脆性的な破壊が抑制された高い強度で、基礎または他の柱材集合体に縦方向に接続できる木材の接続金具、及び、該接続金具を使用した木材の接続構造を、提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態である接続金具1、接続金具1を使用した接続構造、及び、該接続構造を使用した建築物5について、
図1乃至
図8を用いて説明する。
【0028】
まず、接続金具1の構成について説明する。接続金具1は、主に
図1に示すように、ベースプレート50と、他のベースプレート20と、ベースプレート20,50の間に介設されている角筒体40と、それぞれ下部プレート11a,11b及び一対の縦長プレート12a,12bからなる保持プレート10a,10bの四枚で構成され、ベースプレート20に接合されている保持体10と、ベースプレート20の外周近傍から立設された第二縦長プレート30a,30bと、を具備している。なお、ベースプレート50が本願発明の「第一ベースプレート」に相当し、ベースプレート20が「第二ベースプレート」に相当する。
【0029】
より詳細に説明すると、ベースプレート50は外形が正方形の平板状であり、中心に正方形の貫通孔部53が穿設されている。貫通孔部53の二対の内周辺は、ベースプレート50の二対の外周辺とそれぞれ平行である。ベースプレート50において、貫通孔部53の外周縁部には、ボルトを通すための孔部59が複数貫設されている。
【0030】
角筒体40は断面の外形が正方形であり、ベースプレート50の貫通孔部53に丁度嵌め込まれるサイズである。角筒体40は、下端側が貫通孔部53に嵌め込まれた状態で、溶接によりベースプレート50と一体化されている。
【0031】
ベースプレート20は、外形がベースプレート50と同サイズの正方形である。従って、角筒体40の外形の正方形は、ベースプレート20,50双方の外形の正方形より小さい。また、ベースプレート20の中心には、ベースプレート50の貫通孔部53より小さい正方形の貫通孔部23が穿設されている。更に、ベースプレート20には、外周辺に沿って細長い長方形のスリット25が貫設されている。このスリット25は、ベースプレート20の一辺当たり二つ、計八つが形成されている。ベースプレート20は、その裏面に角筒体40の上端が溶接によって接合されることにより、ベースプレート50と平行に、且つ、平面視(真上から見た視野)でベースプレート50と重なるように、角筒体40及びベースプレート50と一体化されている。
【0032】
保持体10を構成する四枚の保持プレート10a,10bは、それぞれ横長の長方形の下部プレート11a,11bの両端から、それぞれ縦長の長方形で同一の大きさの一対の縦長プレート12a,12bが延出していることにより、全体としてコ字形を呈している平板状のプレートである。保持プレート10a,10bそれぞれにおいて、下部プレート11a,11bと縦長プレート12a,12bとの境界はなく、全体として一体のプレートである。四枚のうち二枚の保持プレート10aは、下部プレート11aにおいてコ字形が開放している側とは反対側の辺で開口しているスリット15aを二つ有しており、二つのスリット15aはそれぞれ一対の縦長プレート12aの内側の辺の延長上にある。他の二枚の保持プレート10bは、下部プレート11bにおいてコ字形が開放している側の辺で開口しているスリット15bを二つ有しており、二つのスリット15bはそれぞれ一対の縦長プレート12bの内側の辺の延長上にある。
【0033】
従って、二枚の保持プレート10aを平行に、二つのスリット15b間の距離に相当する間隔をあけた状態とすると共に、二枚の保持プレート10bを平行に、二つのスリット15a間の距離に相当する間隔をあけた状態で、スリット15bを介して下部プレート11bをスリット15aに挿入すると共に、スリット15aを介して下部プレート11aをスリット15bに挿入することにより、四枚の保持プレート10a,10bが井桁状となる。この状態で、四枚の保持プレート10a,10bが溶接で接合されることにより、保持体10が形成される。このような保持体10では、保持プレート10a,10bが直交していることにより、それぞれ隣接して直角をなす縦長プレート12a,12bからなる柱材保持部17が、四カ所形成されている。
【0034】
また、保持体10は、二枚の保持プレート10aそれぞれの下部プレート11a、及び、二枚の保持プレート10bそれぞれの下部プレート11bによって形成された角筒部を中央に有している。保持体10の下端がベースプレート20の上面に溶接によって接合されることにより、角筒部の内部空間13(
図4(a)参照)は、ベースプレート20の貫通孔部23と連通する。つまり、接続金具1では、ベースプレート50の貫通孔部53、角筒体40の内部空間43、ベースプレート20の貫通孔部23、及び、保持体10の角筒部の内部空間13が連通することにより、接続金具1の全体を貫通する空間が形成されている。
【0035】
第二縦長プレート30a,30bは計八枚あり、その幅長さ及び厚さはベースプレート20のスリット25に丁度嵌め込まれるサイズである。八枚のうち四枚の第二縦長プレート30aは、ベースプレート20における一対の辺に沿って形成されたスリット25に挿入されて、保持プレート10aの縦長プレート12aと対面する。残りの四枚の第二縦長プレート30bは、ベースプレート20における他の一対の辺に沿って形成されたスリット25に挿入されて、保持プレート10bの縦長プレート12bと対面する。なお、第二縦長プレート30a,30bは縦長の略長方形であるが、上端の外形は円弧状に形成されている。
【0036】
接続金具1の構成のうち、ベースプレート50、角筒体40、ベースプレート20、及び保持体10は、
図2に示すように予め一体化されている。一方、第二縦長プレート30a,30bは、柱材集合体6を接続金具1に接続する際に、ベースプレート20と一体化される。
【0037】
ここで、柱材集合体6は木造構造体70の構成である。木造構造体70は、
図7(a)〜(c)に示すように、木製角柱状の二本の横架材71,72が直交して接合されており、横架材71,72それぞれに直交する木製角柱状の柱材60の四本が、それぞれ隣接する二側面のうち一方を横架材71に当接させ他方を横架材72に当接させた状態で、横架材71,72の直交部分を取り囲んでいる構造である。それぞれの柱材60には、横架材71に直交する方向の貫通孔95と、横架材72に直交する方向の貫通孔96とが、干渉を避けて異なる高さに形成されている。従って、横架材71または横架材72を挟み込んでいる二つの柱材60同士を、貫通孔95,96に通したボルトとナットで締結することにより、横架材71,72を介して四本の柱材60を一体化し、柱材集合体6とすることができる。
【0038】
横架材71及び横架材72は、それぞれの接合部を“相欠き”とすることにより、一方の横架材の相欠き部の端面を他方の横架材の側面に当接させることによって、直交状態で接合することができる。或いは、一方の横架材を切断し、切断部の端面を他方の横架材の側面に当接させることによって、直交状態で接合することができる。なお、
図7(a)は、横架材71,72それぞれが直交部を越えて長く延びて十字形を形成している形態であり、建築物の平面空間における内部に位置させる木造構造体70である。
図7(b)は、横架材71と横架材72とでT字形を形成している形態であり、建築物の平面空間において角部を除く外周部に位置させる木造構造体70である。
図7(c)は、横架材71と短い横架材72とでL字形を形成している形態であり、建築物の平面空間における角部に位置させる木造構造体70である。
【0039】
何れの木造構造体70においても、柱材集合体6の構成は同一であり、四本の木製角柱状の柱材60が、直交する二方向に二本ずつ配置されており、直交する二方向のうち一方向で隣接している柱材60間に、横架材71の太さに等しい間隙を有すると共に、直交する二方向のうち他方向で隣接している柱材60間に、横架材72の太さに等しい間隙を有している。ここでは、四本の柱材60は長軸方向に直交する断面が同一サイズの正方形であり、横架材71,72は長軸方向に直交する断面が同一サイズの長方形である場合を例示している。従って、本実施形態では、柱材集合体6の外形の四角形、すなわち、柱材集合体6を構成する四本の柱材60の外周面を延長して形成される四角形は、正方形である。そして、上述したベースプレート50,20の外形の正方形は、この柱材集合体6の外形の正方形と同一の大きさに設定されている。
【0040】
上記構成の接続金具1に上記構成の柱材集合体6を接続するには、柱材集合体6を構成する四本の柱材60のそれぞれを、四カ所の柱材保持部17の一つに保持させる。その際、それぞれの柱材保持部17において直角をなしている二枚の縦長プレート12a,12bを、柱材60において隣接している二側面にそれぞれ当接させる。
【0041】
この状態で、
図4(a)に示すように、八枚の第二縦長プレート30a,30bのうち四枚の第二縦長プレート30aが、それぞれ柱材60を介して縦長プレート12aと対面するように、その下部をスリット25に挿入すると共に、その側面を柱材60に当接させる。また、他の四枚の第二縦長プレート30bが、それぞれ柱材60を介して縦長プレート12bと対面するように、その下部をスリット25に挿入すると共に、その側面を柱材60に当接させる。柱材60は、第二縦長プレート30a,30bをそれぞれ当接させる部分が、表面からスリット25の奥辺の深さまで、第二縦長プレート30a,30bの形状に予め切削されている。これにより柱材60の表面に当接させている第二縦長プレート30a,30bが、ベースプレート20の外周より内側に形成されているスリット25に挿入されているものでありながら、柱材60の表面をベースプレート20の外周と同一面とし、外観の良いものとすることができる。
【0042】
そして、スリット25に挿入された第二縦長プレート30a,30bの下部は、ベースプレート20の裏面側から溶接してベースプレート20に固定する。上述したように、角筒体40の外形の正方形はベースプレート20の外形の正方形より小さいため(角筒体40はベースプレート20の外周より内側にあるため)、ベースプレート20の周辺に沿って形成されたスリット25の下方には、ベースプレート50との間に空間が存在する。そのため、この空間において、第二縦長プレート30a,30bをベースプレート20の裏面側から溶接する作業を行うことができる。
【0043】
更に、第二縦長プレート30a,30bには、上端近傍に孔部39が貫設されており、この孔部39と同じ高さとなるように、縦長プレート12a,12bには孔部19が貫設されている。そこで、第二縦長プレート30a,30bの孔部39に通したボルトを、柱材60を貫通させ、対面している縦長プレート12a,12bの孔部19にも通した上でナットを留め付ける。すなわち、
図4(b)に二点鎖線L1で示すように、柱材60を介して対面している縦長プレート12aと第二縦長プレート30aとは、同一のボルトで締結する。同様に、柱材60を介して対面している縦長プレート12bと第二縦長プレート30bとは、同一のボルトで締結する。
【0044】
ここで、第二縦長プレート30aと第二縦長プレート30bとは、異なる長さに形成されている。これは、第二縦長プレート30a,30bは、同一の柱材60の隣接する二側面に対面させるものであるため、それぞれが対面する縦長プレート12a,12bと締結させるためのボルトを、干渉を避けて異なる高さで直交させるためである。
【0045】
また、第二縦長プレート30a,30bには、それぞれ第二縦長プレート30a,30bと締結するためのボルトを通す孔部19より高く、上端に近い位置に孔部19hが貫設されている(
図2参照)。これらの孔部19hを介して柱材60を貫通させたボルトは、平板状の小プレート32a,32bの孔部に通した上でナットを留め付ける。すなわち、
図4(b)に二点鎖線L2で示すように、柱材60を介して対面している縦長プレート12aと小プレート32aとをボルトで締結する。同様に、柱材60を介して対面している縦長プレート12bと小プレート32bとをボルトで締結する。これにより、柱材60に当接させた第二縦長プレート30a,30bが、縦方向の全長にわたり柱材60にしっかりと固定された状態となる。
【0046】
なお、小プレート32a,32bは、外形が円形のプレートである。また、柱材60は、小プレート32a,32bをそれぞれ当接させる部分が、小プレート32a,32bの厚さ分、その形状に予め切削されている。これにより、柱材集合体6の外側から柱材60に当接させる小プレート32a,32bが目立ちにくく、外観の良いものとなる。
【0047】
以上により、
図3及び
図4に示すように、木造構造体70の柱材集合体6が、接続金具1に接続された接続構造が構築される。本実施形態の接続構造では、柱材集合体6を構成する四本の柱材60のそれぞれは、四カ所の柱材保持部17の一つに保持されており、一つの柱材60の隣接する二側面は、その柱材60を保持している柱材保持部17を構成している二枚の縦長プレート12a,12bにそれぞれ当接した状態で固定されている。また、本実施形態の接続構造では更に、ベースプレート20の外周近傍から立設された第二縦長プレート30a,30bが、柱材60を介してそれぞれ縦長プレート12a,12bと対面しており、対面している縦長プレート12aと第二縦長プレート30a、及び縦長プレート12bと第二縦長プレート30bは、同一のボルトで締結されている。なお、
図4は
図3の断面図に相当し、
図4(a)はY−Y線で切断した横断面図であり、
図4(b)はX−X線で切断した縦断面図である。
【0048】
上記のように、木造構造体70を構成する柱材集合体6の下端を接続金具1に接続した状態で、ベースプレート50の孔部59に通したアンカーボルトを基礎に打ち込むことにより、
図6に示すように、柱材集合体6を基礎Bに接続することができる。接続金具1は、ベースプレート20とは別にベースプレート50を備えている二層構造であり、これら二枚のベースプレート20,50は、それぞれの外周より内側で角筒体40によって連結されている。そのため、ベースプレート20の外周を柱材集合体6の外周面と同一面として外観の良いものとした上で、ベースプレート50において角筒体40の側面より外側の部分を、アンカーボルトを打ち込むためのスペースとして使用することができる。
【0049】
また、柱材集合体6同士を縦方向に接続する場合は、
図5に示すように、上層となる柱材集合体6の下端を接続する接続金具1と上下を反転させた関係にある接続金具1に、下層となる柱材集合体6の上端を接続する。そして、二つの接続金具1のベースプレート50同士を重ね合わせ、それぞれの孔部59に通したボルトをナットで留め付けることにより、二つの接続金具1を介して柱材集合体6同士を縦方向に接続することができる。なお、
図5では、柱材集合体6、第二縦長プレート30a,30、及び小プレートの図示を省略している。
【0050】
このように、上下を反転させた二つの接続金具1が、それぞれのベースプレート50同士を重ね合わせて一体化された状態を「接続金具2」と称すると、接続金具2を介する柱材集合体6同士の接続は、
図6に示すように、階層の途中で行う。階層の途中は、横架材の直交部に比べて、外力が集中しにくいためである。ここでは、三階の中途高さで、接続金具2を介して柱材集合体6同士が縦方向に接続されている場合を例示している。
【0051】
以上のように、接続金具1,2により柱材集合体6を縦方向に接続した接続構造では、二枚のベースプレート50,20が角筒体40という中空の部材で連結されている。そのため、外力が作用した際に、角筒体40は柱材集合体6の回転を抑制しつつ変形し、柱材集合体6が傾くように変位することを許容する。そして、柱材集合体6を構成する柱材60には、それぞれの側面に添わせた状態で縦長プレート12a,12bが固定されているため、柱材集合体6がどの方向に傾いたとしても、その傾きに伴い作用する引張応力には、八枚の縦長プレート12a,12bの何れかが柱材60と共に傾きつつ抗する。例えば、
図4(b)において、柱材集合体6が紙面左側に傾いた場合、左側の柱材60に右側から当接している縦長プレート12aが、引張応力に抗することとなる。
【0052】
加えて、柱材集合体6の傾きに伴って縦長プレート12a,12bが傾いた場合、縦長プレート12a,12bの孔部19を介して柱材60を貫通しているボルトの何れかに対して、浮き上がらせるような力が作用する。例えば、
図4(b)において、柱材集合体6が紙面左側に傾いた場合、右側の柱材60に左側から当接している縦長プレート12aを固定しているボルト(図示、二点鎖線L1)に、右の端部側を浮き上がらせるような力が作用する。これに対し、本実施形態では、柱材60を介して対面している縦長プレート12aと第二縦長プレート30aとが、同一のボルトで締結されており、第二縦長プレート30aの下端はベースプレート20に固定されているため、ボルトを浮き上がらせるように作用する力に、第二縦長プレート30aが抗することとなる。このようなボルトの浮き上がりを抑制する作用は、柱材60を介して対面している縦長プレート12bと第二縦長プレート30bについても、同様である。
【0053】
このように、接続金具1,2は、外力が作用した際の柱材集合体6の傾きをある程度許容し、靭性材料で形成された接続金具1,2自体もその傾きに追随してある程度変形しつつ、外力に抗する。そのため、接続金具1,2は、木材の脆性的な破壊を抑制しつつ、高い強度で柱材集合体6を縦方向に接続することができる。
【0054】
また、接続金具1,2を使用した接続構造では、柱材集合体6の外側に表れる第二縦長プレート30a,30b及び小プレート32a,32bが目立たないように、柱材60の表面を切削して埋設している。仮に、柱材60に埋設されたプレートが角部を有する形状であると、外力によって柱材60が傾いたときにプレートの角部に応力が集中し、柱材60に亀裂を生じさせる原因となりやすい。これに対し、本実施形態では、第二縦長プレート30a,30bの上端の外形を円弧状としていると共に、小プレート32a,32bの外形を円形としているため、上記のような応力集中が生じず、柱材60に亀裂が発生しにくい利点を有している。
【0055】
更に、接続金具1,2では、ベースプレート50の貫通孔部53、角筒体40の内部空間43、ベースプレート20の貫通孔部23、及び、保持体10の角筒部の内部空間13が連通していることにより、全体を貫通する空間を有しており、その空間は柱材集合体6の内部空間と連通している。従って、電気配線、アンテナ線、電話線などの電気コード類や水の配管を、基礎から接続金具1を介して柱材集合体6の内部空間に導入することができ、柱材集合体6に沿って、その内部空間に配設することができる。加えて、柱材集合体6の内部空間に配設された電気コード類などは、接続金具2を介して、更に上層の柱材集合体6の内部空間まで導くことができる。
【0056】
なお、
図6に示す建築物5では、柱材集合体6を構成している四本の柱材60を、柱材集合体6の内部空間において連結体80で連結している。この連結体80は、
図8に示すように、それぞれ断面コ字形である二つの連結片81,82を、直交させて重ね合わせた状態で接合したものである。直交する連結片81,82それぞれの側面を、四本の柱材60それぞれにおいて、柱材集合体6の内部空間に面している二側面に当接させた状態で、連結体80を柱材60に対して固定する。このような連結体80を柱材集合体6の複数箇所に設けることにより、柱材60のねじれや曲がりが有効に抑制される。この連結体80も中央に貫通孔部83を有しているため、接続金具1,2を介して柱材集合体6の内部空間に配設される電気コード類の経路を遮ることなく、貫通孔部83に通すことができる。
【0057】
また、
図6に示す建築物5では、木造構造体70の構成を、横架材の長さを短く設定した「腕出しタイプ」とし、木造構造体70の横架材を、接合金具90を介して他の横架材75と横方向に接続している。このような「腕出しタイプ」の木造構造体70とすることにより、木造構造体70の製造、及び、木造構造体70における柱材集合体6の接続金具1への接続を工場内で行っておくことができ、建築物5の建築現場では、木造構造体70の横方向及び縦方向の接続のみを施工すれば足りる。従って、脆性的な破壊が抑制された高強度の大型木造建築物を、簡易な作業で効率よく構築することができる。
【0058】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0059】
例えば、
図6では、接続金具2を介して同じ太さの柱材集合体6が縦方向に接続されている場合を例示した。これに限定されず、下層の柱材集合体が上層の柱材集合体より太さが大きい柱材からなる設定とすることができる。この場合、接続金具の大きさは、接続される柱材集合体の大きさに応じた設定とし、上層の柱材集合体の下端が接続される接続金具より、下層の柱材集合体の上端が接続される接続金具の方を大型とする。接続金具を介して柱材集合体同士が接続される接続構造であるため、このように、接続される柱材集合体同士のサイズを異なる設定とすることが、容易である利点を有している。
【0060】
また、上記では、接続金具1においてベースプレート20,50の間に介在させる角筒体40を、ベースプレート50の貫通孔部53に嵌め込んで固定するに当たり、ベースプレート50の両面のうち外側の面と、角筒体40の端面とを同一面とする場合を図示により例示した(
図4(b),
図5参照)。これに限定されず、二つの接続金具1を連結する場合、
図9に示すように、下層側となる接続金具1では、角筒体40の端部をベースプレート50の外側の面より突出させると共に、その突出させた長さ分だけ、上層側となる接続金具1では、角筒体40の端面がベースプレート50の外側の面より内側に位置させるように固定することができる。これにより、二つの接続金具1それぞれのベースプレート50同志を、それぞれの外側の面を当接させた状態で連結する際、角筒体40を内側に位置させた方の接続金具1の貫通孔部53によって、他方の接続金具1の角筒体40の突出部分が案内される。そのため、ずれを防止して容易に位置決めすることができ、作業効率良く二つの接続金具1を連結することができる。