特許第6543885号(P6543885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6543885電極、その電極を用いた電気二重層キャパシタ、及び電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543885
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】電極、その電極を用いた電気二重層キャパシタ、及び電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/24 20130101AFI20190705BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20190705BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20190705BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20190705BHJP
【FI】
   H01G11/24
   H01G11/42
   H01G11/40
   H01G11/86
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-31069(P2014-31069)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-5721(P2015-5721A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2017年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-31574(P2013-31574)
(32)【優先日】2013年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-107508(P2013-107508)
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】堀井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石本 修一
(72)【発明者】
【氏名】爪田 覚
【審査官】 上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−181229(JP,A)
【文献】 特開2007−160151(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0111279(US,A1)
【文献】 特開2003−297695(JP,A)
【文献】 特開2010−087302(JP,A)
【文献】 特開2006−032371(JP,A)
【文献】 特開2007−320842(JP,A)
【文献】 特開2009−246306(JP,A)
【文献】 特開平08−306591(JP,A)
【文献】 特開2008−066053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/24
H01G 11/40
H01G 11/42
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質化処理した平均粒子径が100nm未満の炭素粉末と、繊維状炭素と、を分散させた溶液の溶媒を除去して得られた電極であって、
前記多孔質化処理した炭素粉末における孔のうち、メソ孔の占める割合が15〜52%の範囲であることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記炭素粉末の比表面積が600〜2000m/gであることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記炭素粉末の導電率が20〜1000S/cmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極。
【請求項4】
炭素粉末と繊維状炭素とが高分散され、その電極密度が0.48g/cc以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電極。
【請求項5】
前記繊維状炭素は、炭素粉末と繊維状炭素の合計量に対して10〜20重量%含有されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電極。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの電極を、スルホランと、スルホラン骨格に側鎖を有するスルホラン化合物又は鎖状スルホンとの混合物に含浸させたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかの電極を集電体の上に形成した電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
メソ孔の占める割合が15〜52%の範囲であり、多孔質化処理した平均粒径が100μm未満の炭素粉末と、繊維状炭素とを溶媒中に分散させる分散工程と、
前記分散工程で得られた溶液の溶媒を除去して炭素粉末/繊維状炭素シートを得るシート電極形成工程と、
を備えることを特徴とする電極の製造方法。
【請求項9】
前記シート電極形成工程は、前記溶液を濾過することにより溶媒を除去することを特徴とする請求項8に記載の電極の製造方法。
【請求項10】
前記炭素粉末は、カーボンブラックを賦活処理したものであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料を利用した電極、該電極を用いた電気二重層キャパシタ、及び電極の製造方法に関する。特に、炭素材料としては、炭素粉末及び繊維状炭素を利用する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気二重層キャパシタは、一対の電極と、この間に存在するセパレータと、それぞれの電極の集電層とから構成される。電気二重層キャパシタに使用される代表的な電極には、炭素粉末や繊維状炭素などの炭素材料が用いられている。
【0003】
この電気二重層キャパシタに使用される電極の製造方法は、代表的な電極の材料である活性炭粉末に、アセチレンブラック等の導電性物質及びポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン樹脂等の樹脂をバインダーとして添加して混合した後、加圧成型してシート状の分極電極を形成する方法が知られている。またこの他には、この混合物を溶媒に含ませ集電体に塗布する方法(コーティング法)が挙げられる。
【0004】
このような電気二重層キャパシタは、活性炭の表面の官能基による反応が原因と思われる高温放置中の容量の低下という問題点がある。この問題点を解決すべく提案がなされているが、充分ではない。一方、カーボンナノチューブはこのような官能基が少ないため、活性炭に比べて寿命特性が良好であるという知見がある。
【0005】
そこで、大容量化を目的として、活性炭とカーボンナノチューブと樹脂系バインダーを混合した後、加圧成型して形成したシート状の分極性電極を用いた試みがある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−237149号公報
【特許文献2】特開2000−124079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような電気二重層キャパシタの電極では、加圧成型する際や、活性炭粉末などの混合溶液を集電体に塗布する場合に、樹脂系のバインダーを用いている。しかしながら、樹脂系のバインダーは、電極の低抵抗化の面では、不純物として作用するため、樹脂系のバインダーを使用し得られる電極は、高抵抗となってしまう問題点がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、炭素粉末と繊維状炭素を混合した電極において、電気抵抗を小さくした電極、その電極を用いた電気二重層キャパシタ、及び電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明の電極は、多孔質化処理した平均粒子径が100nm未満の炭素粉末と、繊維状炭素と、を分散させた溶液の溶媒を除去して得られた電極であって、前記多孔質化処理した炭素粉末における孔のうち、メソ孔の占める割合が5〜5%の範囲であることを特徴とする。また、溶液を濾過して溶媒を除去しても良い。炭素粉末と繊維状炭素を混合した溶液から溶媒を除去して得られた電極においては、繊維状炭素がバインダー的な役割を果たす。繊維状炭素は、樹脂系のバインダーと併用し使用することも可能であるので、樹脂系のバインダーを用いる場合にでも、樹脂系バインダーを電気抵抗に対して影響が出にくい割合で用いることが可能であり、樹脂系バインダーの電気抵抗への影響を排除することが可能であるため、得られる電極の電気抵抗を小さくすることが可能である。
【0010】
前記炭素粉末の比表面積が600〜2000m/gであっても良い。前記炭素粉末の導電率が20〜1000S/cmであっても良い。
【0011】
炭素粉末と繊維状炭素とが高分散され、その電極密度が0.48g/cc以上とすることもできる。
【0012】
前記繊維状炭素は、炭素粉末と繊維状炭素の合計量に対して10〜0重量%含有することもできる。
【0013】
また、この電極をスルホランと、スルホラン骨格に側鎖を有するスルホラン化合物又は鎖状スルホンとの混合物に含浸した電気二重層キャパシタや、この電極を集電体の上に形成した電気二重層キャパシタも本発明の一態様である。
【0014】
さらに、前記の目的を達成しうるため、本発明の電極の製造方法は、以下の工程を含むものである。
(1)メソ孔の占める割合が5〜5%の範囲であり、多孔質化処理した平均粒径が100μm未満の炭素粉末と、繊維状炭素とを溶媒中に分散させる分散工程。
(2)前記分散工程で得られた溶液の溶媒を除去することで、炭素粉末/繊維状炭素シートを得るシート電極形成工程。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メソ孔の占める割合が5〜55%の範囲である炭素粉末と繊維状炭素を混合した溶液の溶媒を除去して得られた電極においては、内部抵抗を低くすることができ、電気抵抗が小さい優れた電極およびその電極を用いた電気二重層キャパシタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る電極の製造工程を示すフローチャートである。
図2】ミキサーで炭素粉末と繊維状炭素とを分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×1.00k)像である。
図3】ミキサーで炭素粉末と繊維状炭素とを分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×4.00k)像である。
図4】ジェットミキシングで炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×1.00k)像である。
図5】ジェットミキシングで炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×4.00k)像である。
図6】超遠心処理で炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×1.00k)像である。
図7】超遠心処理で炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×4.00k)像である。
図8】ボールミルで炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×1.00k)像である。
図9】ボールミルで炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シートのSEM(×4.00k)像である。
図10】本実施形態に係るコイン形電気二重層キャパシタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施する形態について、説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
【0018】
本実施形態の電極は、図1に示すように、次の(1)(2)の工程により製造される。
(1)炭素粉末と、繊維状炭素とを溶媒中に分散させる分散工程。
(2)前記分散工程で得られた溶液の溶媒を除去することで、炭素粉末/繊維状炭素シート電極を得るシート電極形成工程。
以下では、(1)(2)の工程について詳述する。
【0019】
(1)分散工程
分散工程では、炭素粉末と繊維状炭素とを溶媒中に分散させる。
【0020】
本実施形態で使用する炭素粉末は、電極の主たる容量を発現するものである。炭素粉末の種類としては、やしがら等の天然植物組織、フェノール等の合成樹脂、石炭、コークス、ピッチ等の化石燃料由来のものを原料とする活性炭、ケッチェンブラック(以下、KB)、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノホーン、無定形炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、活性炭、メソポーラス炭素などを挙げることができる。
【0021】
また、炭素粉末は賦活処理や開口処理などの多孔質化処理を施して使用するのが好ましい。炭素粉末の賦活方法としては、用いる原料により異なるが、通常、ガス賦活法、薬剤賦活法などの従来公知の賦活処理を用いることができる。ガス賦活法に用いるガスとしては、水蒸気、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、塩化水素、酸素またはこれらを混合したものからなるガスが挙げられる。また、薬剤賦活法に用いる薬剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;ホウ酸、リン酸、硫酸、塩酸等の無機酸類;または塩化亜鉛などの無機塩類などが挙げられる。この賦活処理の際には必要に応じて炭素粉末に加熱処理が施される。なお、これらの賦活処理以外にも炭素粉末に孔を形成する開口処理を用いても良い。
【0022】
また、炭素粉末は比表面積が、600〜2000m/gの範囲にあるものが望ましい。炭素粉末はその一次粒子の平均粒子径としては10μm未満が望ましく、その中でも特に100nm未満が望ましく、さらには50nm以下が望ましい。炭素粉末の平均粒子径が100nm未満であると、極めて小さい粒子径であるため拡散抵抗が低くその導電率は高い。また多孔質化処理による比表面積が大きいため高容量発現効果を期待することができる。炭素粉末の平均粒子径が100nmより大きいと、炭素粉末の粒子内のイオン拡散抵抗が大きくなり、結果として得られるキャパシタの抵抗が高くなってしまう。一方炭素粉末の凝集状況を考慮すると、平均粒子径は5nm以上が好ましい。なお、平均粒子径が100nm未満とした極めて小さな炭素粉末を個々に連結(数珠つなぎ状)した形態をとることで導電率の向上が得られる。炭素粉末としては特に賦活したカーボンブラックが好ましい。また、炭素粉末の平均粒子径としては10μm未満の場合にでも、分散方法として後述する超遠心処理及びジェットミキシングによる処理により、本発明の効果を奏することが可能である。
【0023】
また、炭素粉末の導電率は、20〜1000S/cmの範囲が好ましい。このような高導電率とすることで、得られた電極をより低抵抗とすることができる。この炭素粉末の導電性を評価する方法として、次の圧縮時導電率で測定する。ここで、圧縮時導電率とは、炭素粉末を断面積A(cm)の電極間に挟んだ後、これに一定荷重をかけて圧縮して保持した時の厚さをh(cm)とし、その後電極の両端に電圧をかけて電流を測定して圧縮された炭素粉末の抵抗R(Ω)を求めて、次の計算式(1)を用いて算出した値である。
【0024】
圧縮時導電率( S / c m ) = h / ( A × R )・・・・式(1)
式(1)中、Aは電極の断面積(cm2)を示し、hは炭素粉末を電極間に挟みこれに一定荷重をかけて体積が変化しなくなるまで圧縮して保持した時の厚さ(cm)を示し、Rは圧縮された炭素粉末の抵抗(Ω)を示す。
【0025】
なお、測定に用いる炭素材料の重量は、圧縮されて電極間に保持される量であればよく、また、圧縮時の荷重は、炭素粉末の形状破壊が起こらない程度でかつ炭素粉末の体積変化がない程度にまで圧縮できる荷重であればよい。
【0026】
さらに、炭素粉末の孔のうちメソ孔(直径2〜50nm)の占める割合が5〜55%の範囲が好ましい。メソ孔の占める割合が5%未満の場合は、抵抗の低減が見込めにくいという問題があり、メソ孔の占める割合が55%超の場合は、製造しにくいという問題がある。一般的な活性炭では、ミクロ孔(直径2nm未満)の割合が95%以上であるのに対し、炭素粉末の平均粒子径が100nm未満の炭素粉末は、メソ孔(直径2〜50nm)、マクロ孔(直径50nm超)の割合が、比較的多くなる。
【0027】
一般的な活性炭では、表面積を大きくするために平均粒子径をミクロンレベルと大きいものを用い、且つ細かな径(ミクロ孔)をたくさん設けている。粒子の内部に多数の孔が空いており、この粒子の内部表面の面積が粒子全体の約8割の面積(比表面積)となる。粒子の孔の深部まで電解液中のイオンが入り込まなければならず、拡散抵抗が高くなりやすい傾向があり、この活性炭では抵抗を下げにくい。
【0028】
これに対して、炭素粉末の平均粒子径が1μm未満の場合、特には100nm未満の場合は、極めて小さい径であるため、粒子の孔の深部までの距離が短く電解液中のイオンが移動しやすい。よって、拡散抵抗が低く、その導電率は高くなる。また多孔質化処理により比表面積が大きい。特に、この小さい粒子径で且つ比較的大きめの孔(メソ孔)の占める割合を上述の5〜55%のように増やすことでイオンがより移動しやくなり拡散抵抗をさらに低減することができる。
【0029】
本実施形態で使用する繊維状炭素は、繊維と繊維の間に極めて小さいナノサイズの炭素粉末を効率的に絡めることができるものであり、抄紙成型の際のバインダー的な役割を担う。繊維状炭素の種類としては、カーボンナノチューブ(以下、CNT)、カーボンナノファイバ(以下、CNF)などの繊維状炭素を挙げることができる。なお、この繊維状炭素に対しても、繊維状炭素の先端や壁面に穴をあける開口処理や賦活処理を用いても良い。
【0030】
繊維状炭素として使用するCNTは、グラフェンシートが1層である単層カーボンナノチューブでも、2層以上のグラフェンシートが同軸状に丸まり、チューブ壁が多層をなす多層カーボンナノチューブ(MWCNT)でもよく、それらが混合されていてもよい。また、CNTのグラフェンシートの層数が少ないほど、CNT自身の容量密度が高いため、層数が50層以下、好ましくは10層以下の範囲のCNTが容量密度の点から好ましい。
【0031】
繊維状炭素の外径は1〜100nm、好ましくは2〜70nm、さらには3〜40nmの範囲にあることが望ましい。また、繊維状炭素の長さは50〜1000μm、好ましくは70〜500μm、さらには100〜200μmの範囲にあるものが好ましい。
【0032】
また、繊維状炭素の比表面積は100〜2600m/g、好ましくは200〜2000m/gの範囲にあるものが望ましい。比表面積が2600m/gより大きいと形成されたシート電極が膨張しやすくなり、100m/gより小さいと所望の電極密度が上がりにくくなる。
【0033】
なお、炭素粉末や繊維状炭素の平均粒子径や外形は、ASTMD3849−04(ASTM粒子径とも言う)によって測定した。
【0034】
炭素粉末と繊維状炭素の含有率は、炭素粉末と繊維状炭素の合計量に対し、繊維状炭素が5〜50重量%、特には10〜30重量%含有されていることが好ましい。繊維状炭素が50重量%を超えると、電解液含浸時に電極自体が膨れてしまい、外装ケースを圧迫し、ケース膨れが生じやすくなってしまう。また、繊維状炭素が5重量%より少ないと炭素粉末の凝集体が大きくなり、内部抵抗が上昇する傾向がある。なお、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を含んでいても良い。例えば、分散剤や他のバインダーなどが挙げられる。
【0035】
本実施形態で炭素粉末と繊維状炭素とを分散させる溶媒としては、メタノール、エタノールや2−プロパノールなどのアルコール、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド系溶媒、水、これらの溶媒を単独で使用するものや2種類以上を混合するものなどの各種溶媒を使用することができる。またこの溶媒中には分散剤などの添加剤を加えてもよい。
【0036】
本実施形態の分散工程では、溶媒中に炭素粉末と繊維状炭素とを加えて、混合した混合溶液に対して、分散処理を行う。分散処理を行うことで、混合溶液中の炭素粉末と繊維状炭素とを細分化及び均一化し、溶液中に分散させる。つまり、分散処理前の混合溶液中の繊維状炭素は、炭素繊維同士がからみあった状態(バンドル状)である。分散処理を行うことにより、繊維状炭素のバンドルが解れ、繊維状炭素が溶液中に分散する。分散方法としては、ミキサー、ジェットミキシング(噴流衝合)、または、超遠心処理、その他超音波処理などを使用する。なかでも炭素粉末と繊維状炭素の高分散化や得られたシート電極の電極密度の向上を考慮すると、分散方法としては、ジェットミキシング又は超遠心処理が好ましい。このようなジェットミキシング又は超遠心処理を用いることで、炭素材料の凝集体が細分化されるとともに小さい粒子径である炭素材料の凝集が抑制され、内部抵抗の低い電極を得ることができる。
【0037】
ミキサーによる分散方法では、炭素粉末と繊維状炭素とを含む混合溶液に対して、ビーズミル、ロッドミル、ローラミル、攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ボールミル、ホモジナイザー、ホモミキサーなどにより、物理的な力を加え、溶液中の炭素粉末と繊維状炭素とを撹拌することにより細分化する。炭素粉末に対して外力を加えることで、凝集した炭素粉末を細分化及び均一化するとともに、絡み合った繊維状炭素を解すことができる。中でも粉砕力が得られる遊星ミル、振動ミル、ボールミルが好ましい。
【0038】
ジェットミキシングによる分散方法では、筒状のチャンバの内壁の互いに対向する位置に一対のノズルを設ける。炭素粉末と繊維状炭素とを含む混合溶液を、高圧ポンプにより加圧し、一対のノズルより噴射してチャンバ内で正面衝突させる。これにより、繊維状炭素のバンドルが粉砕され、分散及び均質化することができる。ジェットミキシングの条件としては、圧力は100MPa以上、濃度は5g/l未満が好ましい。
【0039】
超遠心処理による分散方法では、炭素粉末と繊維状炭素とを含む混合溶液に対して超遠心処理を行う。超遠心処理は、旋回する容器内で混合溶液の炭素粉末及び繊維状炭素にずり応力と遠心力を加える。
【0040】
超遠心処理は、例えば、開口部にせき板を有する外筒と、貫通孔を有し旋回する内筒からなる容器を用いて行うことができる。この容器の内筒の内部に混合溶液を投入する。内筒を旋回することによって、その遠心力で内筒内部の炭素粉末と繊維状炭素が内筒の貫通孔を通って外筒の内壁に移動する。この時炭素粉末と繊維状炭素は内筒の遠心力によって外筒の内壁に衝突し、薄膜状となって内壁の上部へずり上がる。この状態では炭素粉末と繊維状炭素には内壁との間のずり応力と内筒からの遠心力の双方が同時に加わり、混合溶液中の炭素粉末及び繊維状炭素に大きな機械的エネルギーが加わることになる。
【0041】
この超遠心処理においては、混合溶液中の炭素粉末及び繊維状炭素にずり応力と遠心力の双方の機械的エネルギーが同時に加えられることによって、この機械的なエネルギーが、混合溶液中の炭素粉末及び繊維状炭素を均一化及び細分化させる。
【0042】
なお、分散処理は炭素粉末と繊維状炭素とを混合した混合溶液に対して行うことが好ましいが、別途繊維状炭素を投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、バンドルが解けた繊維状炭素を得、この繊維状炭素と炭素粉末とを混合して混合溶液を得ても良い。また、別途炭素粉末を投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、細分化した炭素粉末を得、この炭素粉末と繊維状炭素とを混合して混合溶液を得ても良い。さらには、別途繊維状炭素を投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、バンドルが解けた繊維状炭素を得、同じく別途炭素粉末を投入した溶液を準備し、この溶液に対して分散処理を行い、細分化した炭素粉末を得、これらの繊維状炭素と炭素粉末とを混合して混合溶液を得てもよい。これらの混合溶液についても、分散処理を施すと良い。
【0043】
また、このシート電極には、各種の添加剤等を含有しても良い。例えば、無定形シリカアルミナ又は無定形シリカマグネシアなどの固体酸やガス吸収剤などが挙げられる。
【0044】
(2)シート電極形成工程
シート電極形成工程では、分散工程を経た混合溶液の溶媒を除去することで、炭素粉末/繊維状炭素シート電極を得る。混合溶液の溶媒を除去する方法としては、混合溶液を抄紙成型を含む濾過する方法などを利用することができる。
【0045】
混合溶液の溶媒を除去する方法の一例である抄紙成型では、ガラス繊維の不織布、あるいは、有機系不織布(ポリテトラフルオロエチレンやポリエチレンなど)または金属製繊維の不織布などの濾紙を使用し、混合溶液を減圧濾過及び乾燥することで、混合溶液中の溶媒を除去して炭素粉末/繊維状炭素のシート電極を得る。この濾紙上に炭素粉末と繊維状炭素が堆積しシート電極が得られる。このシート電極は、繊維状炭素と繊維状炭素との間隔が2μm以下となる。炭素粉末は、2μm以下の間隔の繊維状炭素に分散し、担持する。シート電極を濾紙から剥離して使用することが好ましい。
【0046】
図2は、分散工程において、ミキサーで炭素粉末(カーボンブラック)と繊維状炭素(CNT)とを分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×1.00k)像であり、図3は、この炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×4.00k)像である。
図4は、ジェットミキシングで、炭素粉末(カーボンブラック)と繊維状炭素(CNT)とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×1.00k)像であり、図5は、この炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×4.00k)像である。
図6は、超遠心処理で、炭素粉末(カーボンブラック)と繊維状炭素(CNT)とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×1.00k)像であり、図7は、この炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×4.00k)像である。
図8は、ボールミルで、炭素粉末(カーボンブラック)と繊維状炭素(CNT)とを高分散させた溶液中から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×1.00k)像であり、図9は、この炭素粉末/繊維状炭素シート電極のSEM(×4.00k)像である。
【0047】
図2,4,6,8に示すように、炭素粉末/繊維状炭素シート電極においては、繊維状炭素が炭素粉末を絡めて担持している。ミキサーによる分散処理を行った混合溶液から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極、ボールミルによる分散処理を行った混合溶液から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極、ジェットミキシングによる分散処理を行った混合溶液から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極、超遠心処理による分散処理を行った混合溶液から作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極の順で、シート電極表面の形状も緻密になることがわかる。
【0048】
また、図3に示すように、ミキサー(ホモジナイザー)により分散させた溶液から作成した炭素粉末/繊維状炭素シート電極においては、繊維状炭素(CNT)が疎らで、繊維状炭素(CNT)同士の間隔も広い。すなわち、ミキサーによる分散処理では、バンドル状の繊維状炭素(CNT)のバンドルが解ける量が少ないため、繊維状炭素(CNT)CNTがまばらとなり、CNT同士の隙間が大きくなる。このため炭素粉末が均一に繊維状炭素に分散担持されにくい。
【0049】
図3においては、CNT(1)とCNT(2)との隙間Aなど、CNT同士の距離が短い部分もあるが、領域Bのように、CNTがSEM像で観察されない領域が存在する。このような領域Bにおいては、少なからずCNTとCNTとの隙間Cが2μmを超える。つまり、CNTは十分に分散しておらず、疎らであることが分かる。また、炭素粉末の細分化も十分に行われず、炭素粉末の凝集体も3μmを超える大きな状態で存在する。まばらなCNTに対して、大きな凝集体の炭素粉末が担持するため、炭素粉末がCNTに均一に分散担持されず、電極容量や内部抵抗の改善がされにくい。領域BのCNTとCNTとの隙間は、SEM像で観察し、CNTが存在しない領域の最大直線距離として計算した。
【0050】
一方、図5,7,9に示すように、ジェットミキシング、超遠心処理、または、ボールミルによる分散処理により分散させた溶液から作成した炭素粉末/繊維状炭素シート電極においては、繊維状炭素(CNT)が密で、繊維状炭素(CNT)同士の間隔も狭い。すなわち、ジェットミキシング、超遠心処理、または、ボールミルによる分散処理では、バンドル状の繊維状炭素(CNT)のバンドルが十分に解けるため、繊維状炭素(CNT)の網目状も密となる。また、炭素粉末自体もジェットミキシング、超遠心処理、または、ボールミルによる分散処理によって、その炭素粉末の凝集状態が崩れ、小さな凝集体に細分化される。密な網目状の繊維状炭素には、炭素粉末が細分化された凝集体の状態で担持され、炭素粉末と繊維状炭素が均一に分散されている。
【0051】
図5,7,9においては、CNTとCNTとの隙間が2μm以下であり、2μmを超える隙間は確認できなかった。炭素粉末(カーボンブラック)は、3μm以下の小さな凝集体として網目状の繊維状炭素(CNT)に分散して担持するので、炭素粉末を高分散させることができる。
【0052】
なお、SEM像については、図2から図9と同様の条件でシート電極をそれぞれ無作為に3箇所撮影したものを観察したところ、いずれにおいても上記の形態が得られていることを確認した。
【0053】
このシート電極では、バインダー的な役割を担う繊維状炭素を用いた混合溶液の濾過によってシート電極を作製することで樹脂系バインダーの添加量を抑制して抵抗を低減し、さらには炭素粉末の平均粒子径を100nm未満と極めて小さい粒子径とすることで、炭素粉末自体の拡散抵抗を低減し、シート電極の抵抗をさらに低減させることができる。また、炭素粉末として極めて小さい粒子径を用いているため、炭素粉末が凝集しやくなり、これにより得られるシート電極は低密度の傾向となる。しかしながら、混合溶液中での炭素粉末と繊維状炭素とをジェットミキシングや超遠心処理などの分散手法を用いて高分散させることで、シート電極を緻密・均質な形態として電極密度を高め、従来のミクロンサイズの炭素粉末を用いた電極と同等レベルの容量を得ることができる優れたシート電極を実現できる。
【0054】
このシート電極形成工程で作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極は、集電体と同じサイズに切り取られ、集電体となるエッチング処理したアルミニウム箔の上に載せられ、箔およびシート電極の上下方向からプレスし、シート電極をアルミニウム箔の凹凸面に食い込ませて一体化することで電極が作製される。集電体としては、アルミニウム箔に限らず、白金、金、ニッケル、チタン、鋼、カーボンなどの導電材料を使用することができる。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状などの任意の形状を採用することができる。また集電体の表面はエッチング処理などによる凹凸面を形成してもよく、またプレーン面であってもよい。一体化については、前述のプレスでもよく、また導電性接着剤を用いても良い。なお、炭素粉末/繊維状炭素シート電極は、必要に応じて、集電体と一体化する前にプレスなどによる平坦化処理を施しても良い。
【0055】
集電体の表面には、リン酸系皮膜や非絶縁性の酸化物膜などを形成してもよい。リン酸系皮膜としては、リン酸水溶液で集電体の表面を処理することで形成できる。また非絶縁性の酸化物膜としては、熱化学気相成長法等を用いて酸化ケイ素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する。非絶縁性の酸化物膜としては、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等から成る酸化物膜を挙げることができるが、なかでも酸化ケイ素から成る酸化物膜がより好ましい。これらの酸化物膜の絶縁性は低く、集電体の電気的特性にほとんど影響を与えない。
【0056】
シート電極と集電体との一体化については、前述のプレスでもよく、また導電性接着剤(例えばカーボン材料などを使用)などを用いたアンダーコート層を用いても良い。なお、炭素粉末/繊維状炭素シート電極は、必要に応じて、集電体と一体化する前にプレスなどによる平坦化処理を施しても良い。
【0057】
次に、このシート電極の状態について検討する。炭素材料及び繊維状炭素を分散した混合溶液を濾過・乾燥して作製した炭素粉末/繊維状炭素シート電極を、所定の溶液に分散した際の粒度分布(50%累積値:D50(メジアン径)、90%累積値:D90)を検討したところ、単一のピークを有している所謂正規分布を示し、粒度分布のD90/D50が2.5以下を示す構成が好ましいことが分かった。つまり、この範囲の炭素粉末/繊維状炭素シート電極とすることで、均一の表面状態及び高密度となる。また、D90を110μm未満とすることで、先鋭な粒度分布が得られ、均一の表面状態及び高密度な炭素粉末/繊維状炭素シート電極を得ることができる。D90の下限は、1μm以上であり、最適範囲は、1〜50μmである。なお、粒度分布は、炭素粉末/繊維状炭素シート電極(1cm)をイソプロピルアルコール(IPA)溶液に投入し、ホモジナイザー(24000rpm、5分間)を使用して分散させた状態で、粒度分布を測定した(粒度分布の測定方法)。
【0058】
図10は電気二重層キャパシタの一例として、炭素粉末/繊維状炭素を用いたシート電極をコイン形セルに適用したコイン形電気二重層キャパシタの断面図である。コイン形電気二重層キャパシタは、負極ケース1、電解質2、電極3、セパレータ4、電極5、正極ケース6、ガスケット7からなる。
【0059】
電極3及び電極5は、本実施形態の炭素粉末/繊維状炭素シート電極である。このシート電極3及びシート電極5は、導電性樹脂接着剤などを用いたアンダーコート層やプレス圧着等により、負極集電体を兼ねる負極ケース1及び正極集電体を兼ねる正極ケース6に固定されるとともに電気的に接続される。
【0060】
負極ケース1は外側片面をNiメッキしたステンレス鋼製の板を絞り加工したものからなり、負極端子(負極集電体)を兼ねる。また、正極ケース6はセルケース本体となる外側片面をNiメッキしたステンレス鋼もしくはAl、Ti等の弁作用金属等からなり、正極端子(正極集電体)を兼ねる。
【0061】
負極ケース1および正極ケース6としては、SUS316、316Lや二層ステンレス等のMo含有ステンレス鋼やAl、Ti等の弁作用金属が耐食性が高く好適に用いることが出来る。また、ステンレス鋼とAiやTi等の弁作用金属を冷間圧延等で圧着接合して貼り合せたクラッド材を、弁作用金属側をセルの内側面にして用いると、高電圧印加に対する耐食性が高く、且つ封口時の機械的強度が高く、封口の信頼性の高いセルが得られるので特に好ましい。
【0062】
なお、負極ケース1および正極ケース6は、前述の集電体として記載した材料を用いてもよく、またその形態を適用しても良い。
【0063】
セパレータ4はセルロース系セパレータ、合成繊維不織布系セパレータやセルロースと合成繊維を混抄した混抄セパレータなどが使用できる。ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、セラミクスやガラス等々の繊維からなる不織布やクラフト紙、マニラ紙、エスパルト紙、これらの混抄紙あるいは多孔質フィルム等を好適に用いることが出来る。リフローハンダ付けを行なう場合には、熱変形温度が230℃以上の樹脂を用いる。例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂やセラミクス、ガラス等を用いることが出来る。
【0064】
電極3、電極5およびセパレータ4に含浸される電解質2としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルイソプロピルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソブチルスルホンなどの鎖状スルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ニトロメタン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、水又はこれらの混合物を使用することができる。特に、電解質2として、スルホランと、スルホラン骨格に側鎖を有するスルホラン化合物又は鎖状スルホンとの混合物を溶媒とした場合には、電気二重層キャパシタの電極容量の時間経過による影響を低減することができる。スルホラン化合物は、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドの環状スルホン構造を有し、例えば、スルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホラン骨格にアルキル基の側鎖を有する化合物、又はこれらの混合物である。鎖状スルホンは、2つのアルキル基がスルホニル基に結合して鎖状構造を有し、例えば、エチルイソプロピルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソブチルスルホン等を挙げることができる。
【0065】
また、電解質としては、第4級アンモニウム塩またはリチウム塩からなる群から選ばれる一種以上の電解質が含有されている。第4級アンモニウムイオンやリチウムイオンを生成し得る電解質であれば、あらゆる第4級アンモニウム塩またはリチウム塩を用いることができる。第4級アンモニウム塩およびリチウム塩からなる群より選ばれる一種以上を用いることがより好ましい。特に、エチルトリメチルアンモニウムBF、ジエチルジメチルアンモニウムBF、トリエチルメチルアンモニウムBF、テトラエチルアンモニウムBF、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムBF、エチルトリメチルアンモニウムPF、ジエチルジメチルアンモニウムPF、トリエチルメチルアンモニウムPF、テトラエチルアンモニウムPF、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムPF、テトラメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、エチルトリメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、ジエチルジメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、トリエチルメチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラエチルアンモニウムビス(オキサラト)ボレート、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムビス(オキサラト)ボレート、テトラメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、エチルトリメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、ジエチルジメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、トリエチルメチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、テトラエチルアンモニウムジフルオロオキサラトボレート、スピロ−(N,N’)−ビピロリジニウムジフルオロオキサラトボレート、LiBF、LiPF、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、メチルエチルピロリジニウムテトラフルオロボレート等が好ましい。
【0066】
また、電解質には、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、リン酸類及びその誘導体(リン酸、亜リン酸、リン酸エステル類、ホスホン酸類等)、ホウ酸類及びその誘導体(ホウ酸、酸化ホウ酸、ホウ酸エステル類、ホウ素と水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物との錯体等)、硝酸塩(硝酸リチウム等)、ニトロ化合物(ニトロ安息香酸、ニトロフェノール、ニトロフェネトール、ニトロアセトフェノン、芳香族ニトロ化合物等)等があげられる。添加剤量は、導電性の観点から好ましくは電解質全体の10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。
また、電解質には、ガス吸収剤を含有してもよい。電極からの発生するガスの吸収剤として、電解質の各成分(溶媒、電解質塩、各種添加剤等)と反応せず、かつ、除去(吸着など)しないものであれば、特に制限されない。具体例としては、例えば、ゼオライト、シリカゲルなどが挙げられる。
【0067】
ガスケット7は電解質2に不溶性耐食性且つ電気絶縁性のある樹脂を主体とするものであり、負極ケース1と正極ケース6の間に介在し、負極と正極との間の電気的絶縁性を保つと同時に、正極ケース開口縁部が内側に折り曲げられ、カシメられることに依って、セル内容物を密封、封止している。
【0068】
ガスケット7は、通常ポリプロピレンやナイロン等の樹脂が用いられるが、リフローハンダ付けを行なう場合には、熱変形温度が230℃以上の樹脂を用いる。例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、また、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等々が使用できる。また、これらの材料に30重量%程度以下の添加量でガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を添加したものを好適に用いることが出来る。
【0069】
(3)電極の電極密度
本発明に係る電極は、その電極密度を0.48g/cc以上とすることにより、電極容量において良好な結果が得られる。
【0070】
なお、本明細書に記載の「電極密度」とは、炭素粉末と繊維状炭素とを濾過して得られたシート電極の単位体積当たりの質量とする。具体的には、シート電極の1cmにおけるシート電極の厚み領域(体積)において、電極材料を含む固形分の重さを該体積で除した値とする。
【0071】
(4)本発明に係る電極の適用形態
本発明に係る電極及び電極の製造方法は、電気二重層キャパシタに限らず、リチウムイオンキャパシタなどの電気化学キャパシタなど、各種キャパシタや二次電池などの蓄電デバイスに適用することができる。
また、本発明に係る電極及び電極の製造方法は、コイン型の電気二重層キャパシタに限らず、ラミネートフィルムを用いて熱封止したラミネート型に適用してもよく、また、正極電極及び負極電極の間にセパレータを介して巻回した円筒型素子や正極電極及び負極電極の間にセパレータを介して積層した積層型素子を使用した各種キャパシタや二次電池などの蓄電デバイスにも適用できる。
本発明に係る電極及び電極の製造方法は、電気二重層キャパシタに限らず、リチウムイオンキャパシタなどの電気化学キャパシタなど、各種キャパシタや二次電池などの蓄電デバイスに適用することができる。
また、本発明に係る電極及び電極の製造方法は、コイン型の電気二重層キャパシタに限らず、ラミネートフィルムを用いて熱封止したラミネート型に適用してもよく、また、正極電極及び負極電極の間にセパレータを介して巻回した円筒型素子や正極電極及び負極電極の間にセパレータを介して積層した積層型素子を使用した各種キャパシタや二次電池などの蓄電デバイスにも適用できる。
【実施例】
【0072】
[第1の特性比較]
本発明のシート電極を用いた電気二重層キャパシタの特性を確認する。本実施例及び比較例では、以下の条件により電極を作成し、当該電極を用いて電気二重層キャパシタを作成して各種特性を測定した。本特性比較で使用する実施例1〜8、及び、比較例1、従来例1は、次の方法により作製した。
【0073】
(混合溶液の作製)
まず、実施例1〜4の混合溶液としては、水蒸気賦活処理した平均粒子径12nmのカーボンブラック(以下、CB)を電極内の炭素粉末と繊維状炭素との合計量に対して80wt%となるように計り取る。次に、外径20nm、長さ150μmの繊維状炭素としてCNTを、電極内のCBとCNTとの合計量に対して20wt%となるように計り取る。CBとCNTとは、合計50mgとなるようにする。合計50mgのCBとCNTを、50mlのメタノールと混合させて混合溶液を作製した。
また、実施例5〜8の混合溶液としては、実施例1〜4のCBに替えて水蒸気賦活処理した平均粒子径40nmのケッチェンブラック(以下、KB)を電極内の炭素粉末と繊維状炭素との合計量に対して80wt%となるように計り取る。次に、実施例1〜4と同様の外径20nm、長さ150μmのCNTを、電極内のKBとCNTとの合計量に対して20wt%となるように計り取る。KBとCNTとは、合計50mgとなるようにする。合計50mgのKBとCNTを、50mlのメタノールと混合させて混合溶液を作製した。
【0074】
(実施例1,実施例5)
実施例1,5では、上記の混合溶液に対して、遠心力200000N(kgms−2)で5分間、超遠心分散処理による分散処理を行い、炭素粉末/繊維状炭素/メタノール分散液を作製した。この分散液をPTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧濾過し、抄紙成型した炭素粉末/繊維状炭素シート電極を得た。これをアルミニウム板の上に載せ、別のアルミニウム板で挟み、板の上下方向から10tcm−2の圧力で1分間プレスし、炭素粉末/繊維状炭素シート電極を得た。この炭素粉末/繊維状炭素シート電極をアルミニウム板から剥離し、集電体と同じサイズに切り分け、集電体となるステンレス鋼板の上に導電性接着剤により貼り付け、常圧下120℃にて1時間乾燥し、2枚の電極体を得、セルロース系セパレータを介して電気二重層キャパシタ素子を作製した(電極面積:2.1cm)。そして、1M(=1mol/dm)の四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを含むプロピレンカーボネート溶液を電解液として素子に含浸した後、ラミネートフィルムを用いて熱封止し、評価用セル(電気二重層キャパシタ)を作製した。
【0075】
(実施例2,実施例6)
実施例2,6では、上記混合溶液に対して、ジェットミキシングにて200MPa,0.5g/lの圧力及び濃度で3回の分散処理を行い、炭素粉末/繊維状炭素/メタノール分散液を作製した以外は実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
【0076】
(実施例3,実施例7)
実施例3,7では、上記混合溶液を、ミキサーで約30秒間撹拌して分散処理を行い、炭素粉末/繊維状炭素/メタノール分散液を作製した以外は実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
【0077】
(実施例4,実施例8)
実施例4,8では、上記混合溶液を、ボールミルで約300秒間撹拌して分散処理を行い、炭素粉末/繊維状炭素/メタノール分散液を作製した以外は実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
【0078】
(比較例1)
比較例1では、上記混合溶液を変更して実施例3と同様の方法で評価用セルを作製した。具体的には、水蒸気賦活処理した平均粒子径1μmの活性炭(原料:やしがら)を電極内の活性炭とCNTとの合計量に対して80wt%となるように計り取る。次に、外径20nm、長さ150μmの繊維状炭素としてCNTを、電極内の活性炭とCNTとの合計量に対して20wt%となるように計り取る。活性炭とCNTとは、合計50mgとなるようにする。合計50mgの活性炭とCNTを、50mlのメタノールと混合させて作製した混合溶液を用いた。
【0079】
(従来例1)
従来例1では、本発明の濾過によるシート電極ではなく、コーティング法による電極を作製した。具体的には、水蒸気賦活処理した平均粒子径1μmの活性炭(原料:やしがら)と、ケッチェンブラック(以下、KB)を電極内の炭素粉末と樹脂バインダーとの合計量に対して95wt%となるように計り取る。次に、樹脂バインダーとしてPTFEを、電極内の活性炭とPTFEとの合計量に対して5wt%となるように計り取る。活性炭とPTFEとは、合計50mgとなるようにする。合計50mgの活性炭とPTFEを、50mlのメタノールと混合させて作製した混合溶液を用いている。この混合溶液を、集電体となるステンレス鋼板の上に塗布し、常圧下120℃にて1時間乾燥し、2枚の電極体を得、セルロース系セパレータを介して電気二重層キャパシタ素子を作製した(電極面積:2.1cm)。そして、1M(=1mol/dm)の四フッ化ホウ酸テトラエチルアンモニウムを含むプロピレンカーボネート溶液を電解液として素子に含浸した後、ラミネートフィルムを用いて熱封止し、評価用セル(電気二重層キャパシタ)を作製した。
【0080】
表1において、実施例1〜8、比較例1及び従来例1のシート電極及びコーティング電極の分散方法、バインダー又は繊維状炭素の割合、電極内のカーボンブラックの割合、電極密度、評価用セルの電極容量、内部抵抗、低温特性及びメソ孔の割合を示した表である。実施例1〜3、比較例1及び従来例1の評価用セルについて、電極容量及び内部抵抗は、3Vで30分間電圧印加後の測定結果を示す。低温特性は、20℃及び−30℃のそれぞれの環境下で評価用セルの電極容量を測定し、その容量の比(−30℃での容量/20℃での容量)×100%の値とした。メソ孔の割合は、窒素ガス吸着法で行った。
【表1】
【0081】
表1からは、実施例1〜8、及び、比較例1、従来例1の各特性を比較すると、バインダーとしてPTFEを使用したコーティング電極である従来例1では、活性炭の粒子径が大きいため電極密度及び電極容量が比較的高い値を示している。しかし、樹脂系のバインダーを用いているため、その樹脂バインダーを少量としたにもかかわらず、内部抵抗及び低温特性が劣化している値となった。従来例1において、内部抵抗の上昇の原因としては、活性炭におけるメソ孔の占める割合が1.5%であり、活性炭の内部に電解液中のイオンが入り込みにくく拡散抵抗が高くなる点も影響している。また、本発明と同様に混合溶液を濾過した比較例1については、電極密度及び電極容量が高い値を示している。しかし、メソ孔の占める割合が1.5%であり、平均粒径が大きな活性炭を使用しているため、樹脂バインダーを使用していないにもかかわらず拡散抵抗が上がり、内部抵抗や低温特性が劣化している値となった。
【0082】
これに対して、平均粒子径12nmのCBと、外径20nm、長さ150μmのCNTとを分散させた混合溶液を濾過した実施例1〜4では、CBのメソ孔の割合は、15%である。実施例1〜4では、平均粒子径12nmのCBを使用しているが、CBのメソ孔の割合を15%とすることで、このCBの内部まで電解液中のイオンが入り込みやすく、拡散抵抗が低くなる。これにより、比較例1、従来例1と比較して内部抵抗及び低温特性が極めて優れた値となる。
【0083】
同様に、平均粒子径40nmのKBと、外径20nm、長さ150μmのCNTとを分散させた混合溶液を濾過した実施例5〜8では、KBのメソ孔の割合は、52%である。実施例5〜8では、平均粒子径40nmのKBを使用しているが、KBのメソ孔の割合を52%とすることで、このKBの内部まで電解液中のイオンが入り込みやすく、拡散抵抗が低くなる。これにより、比較例1、従来例1と比較して内部抵抗及び低温特性が極めて優れた値となる。
【0084】
特に、分散工程を超遠心処理により行った実施例1,5の電極密度は0.62g/cc、0.56g/ccであり、ジェットミキシングを行った実施例2,6の電極密度は0.55g/cc、0.50g/ccであり、ボールミルにより行った実施例4,8の電極密度は0.60g/cc、0.54g/ccであり0.50g/cc以上の高密度となる。すなわち、炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させた実施例1,2,4〜6,8については、内部抵抗及び低温特性が良好であるとともに電極密度が高密度となり、ミキサーで分散させた実施例3,7に比べて電極容量が大幅に向上していることが分かる。
【0085】
次に、実施例1,5と比較例1の電極に用いた炭素材料をそれぞれ分析したら次のような状況であった。測定方法は窒素ガス吸着法で行った。比表面積はBET法で算出した。
【表2】
【0086】
表2において、実施例1,5と比較例1の各特性を比較すると、内部抵抗や低温特性が劣化した比較例1は、実施例1,5と比較して、メソ孔が占める割合が低いことがわかる。一方、内部抵抗及び低温特性が極めて優れた値となった実施例1,5では、孔サイズが大きいメソ孔が占める割合が増えることにより、抵抗が低減されることが分かる。メソ孔の占める割合が5〜55%の範囲の場合、内部抵抗及び低温特性が極めて優れた値となる。
【0087】
以上のように本特性比較においては、平均粒子径が12nm及び40nmの炭素粉末について特性比較を行ったが、平均粒子径が10μm未満の炭素粉末を使用した場合にでも、メソ孔の占める割合が5〜55%とすることで、優れた電極容量並びに低内部抵抗のシート電極を作成することが可能である。
【0088】
[第2の特性比較]
第2の特性比較では、分散工程を超遠心処理により行った実施例1の混合溶液に含まれる炭素粉末とCNTの割合を変化させて電極を作成し、当該電極を用いて電気二重層キャパシタを作成して各種特性を測定した。なお、炭素粉末のメソ孔の割合は、いずれも15%である。
【0089】
(実施例1−1〜実施例1−6)
前記実施例1に記載の評価用セルと同様に作製した。但し、混合溶液に含まれるCBとCNTの割合を表5のとおり変更している。
【0090】
表3は、実施例1−1〜実施例1−6のシート電極の分散方法、電極内の繊維状炭素の割合、電極内の炭素材料の割合、電極密度、評価用セルの電極容量、内部抵抗及びケース膨れ状況を示した表である。なおケース膨れ状況については、電圧印加前の評価用セルの厚みを規準とし、3Vで30分間電圧印加後の厚みと比較し、20%超膨れたものを「×」、20〜10%の範囲で膨れたものを「△」、10%未満で膨れたものを「○」として評価した。
【表3】
【0091】
表3からは、実施例1−1〜実施例1−6の各特性を比較すると、いずれの実施例においても電極密度及び静電容量について良好な結果が得られていることがわかる。内部抵抗については、CNTの割合が10wt%以上の実施例1−2〜1−6が実施例1−1に比べて良好な結果となった。またケースの膨れ状況については、CNTの割合が30wt%以下の実施例1−1〜1−4が、実施例1−5、1−6に比べて良好な結果となった。また、電極密度においては、いずれの実施例においても、表1に記載のミキサーにて分散させた実施例3と比較して電極容量について良好な結果が得られている。
【0092】
[第3の特性比較]
第3の特性比較では、超遠心処理による分散工程により、炭素粉末と繊維状炭素とを高分散させて作成した電極を、表4に記載の電解液に含浸して電気二重層キャパシタを作成して各種特性を測定した。
【0093】
(実施例1−7〜実施例1−10)
前記実施例1に記載の評価用セルと同様に作製した。但し、電気二重層キャパシタ素子を含浸させる電解液を、実施例1−7では1.4M(=1.4mol/dm)のTEMABF(四フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム)を含むSLF(スルホラン)とEiPS(エチルイソプロピルスルホン)に変更した。同様に、実施例1−8では1.4MのTEMABFを含むSLFと3−MeSLF(3−メチルスルホラン)に、実施例1−9では1.4MのTEMABFを含むSLFに、実施例1−10では1.4MのTEMABFを含むPC(プロピレンカーボネート)に変更した。
【0094】
表4は、実施例1−7〜実施例1−10のシート電極の分散方法、電解液の種類、電極内の繊維状炭素の割合、電極内の炭素材料の割合、評価用セルの電極容量、低温特性及び500時間後の容量維持率を示した表である。電極容量は、3.5Vで30分間電圧印加した後の測定結果を示す。容量維持率は、3.5Vで30分間電圧印加した後の電極容量と、3.5Vで500時間電圧印加した後の電極容量を測定し、その容量の比(500時間電圧印加した後の容量/30分間電圧印加した後の容量)×100%の値とした。低温特性は、20℃及び−30℃のそれぞれの環境下で評価用セルの電極容量を測定し、その容量の比(−30℃での容量/20℃での容量)×100%の値とした。なお、炭素粉末のメソ孔の割合は、いずれも15%である。
【表4】
【0095】
表4からは、実施例1−7〜実施例1−10の各特性を比較すると、電解液にスルホラン、スルホラン化合物又は鎖状スルホンを使用しない実施例1−10においては500時間後の容量維持率が極端に低減している。また、電解液にスルホランを使用した実施例1−9では、低温特性が測定不能となった。一方、電解液にスルホランと鎖状スルホンであるEiPSを使用した実施例1−8、スルホランとスルホラン骨格に側鎖を有するスルホラン化合物である3−MeSLFを使用した実施例1−9では、500時間後の容量維持率が95%と、時間経過による電極容量の低下が少なく抑えられると共に、80%以上の良好な低温特性を示した。本特性比較では、超遠心分散処理による分散方法を使用したが、ジェットミキシング、及びボールミルによる分散方法を使用した場合にでも、電解液としてスルホランと、スルホラン骨格に側鎖を有するスルホラン化合物又は鎖状スルホンを使用することで、同様の効果を奏することが可能となる。
【0096】
以上のように電気二重層キャパシタ素子を含浸させる電解液としてスルホランと、スルホラン骨格に側鎖を有するスルホラン化合物又はスルホランと鎖状スルホンとを組み合わせて使用することより、低温特性と長時間経過後の容量維持率との点で優れた電気二重層キャパシタを作製することが可能となる。
【符号の説明】
【0097】
1 …負極ケース
2 …電解質
3 …電極
4 …セパレータ
5 …電極
6 …正極ケース
7 …ガスケット

図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10