(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、実施形態としての車両用モータ装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0012】
[1.構成]
本実施形態に係る車両用モータ装置(以下、単に「モータ装置」という)は、電気自動車やハイブリッド車のような電動車両に搭載され、バッテリに蓄えられた電気エネルギを機械エネルギに変換するものである。モータ装置(電気モータ式原動機)は、バッテリと電気的に接続されるとともに、車輪と機械的に接続されて、バッテリの電力から生成した回転力を車輪へと伝達する。
【0013】
図3に示すように、本モータ装置1は、車両駆動用の動力を生成するモータ部20と、図示しないバッテリからの直流電力を交流電力に変換してモータ部20へ供給するインバータ部30とを備える。モータ部20及びインバータ部30は、作動時に生じる電気抵抗や機械的な摩擦などによって発熱するため、モータ装置1にはこれらを冷却するための冷却装置4が付設される。
【0014】
冷却装置4は、ラジエータ4aと、ラジエータ4aとモータ装置1とを直列に接続する上流路4b及び下流路4cとを有し、ラジエータ4aとモータ装置1との間で冷却水(冷却媒体)を循環させることで、モータ装置1を冷却するものである。ラジエータ4aは、冷却水から熱を奪う放熱器であり、上流路4b及び下流路4cは、例えばパイプやホースなどで形成され、冷却水が流通する通路として機能する。
【0015】
冷却装置4のラジエータ4aで冷却された冷却水は、上流路4bを通ってモータ装置1へと供給され、モータ装置1から排出されると下流路4cを通じてラジエータ4aに再び流入して冷却される。モータ装置1の内部では、モータ部20及びインバータ部30の近傍に形成された冷却通路70を冷却水が流れることによって、モータ部20及びインバータ部30が冷却される。言い換えると、この冷却水は、冷却通路70を流れてモータ装置1のモータ部20及びインバータ部30を冷却する。
【0016】
以下、モータ装置1の構成を説明する。
図1は、モータ装置1の後述するポンプ50以外の部分を、軸心Oを通る鉛直面で切断した断面図である。なお、
図1では、後述のモータ部20の軸部21,インバータ部30,レゾルバ3,軸受5,6については、断面を示すハッチを省略して示している。
図2は、モータ装置1の斜視図であり、後述する上蓋部43は省略し、インバータ部30の制御回路部33を二点鎖線で示している。以下の説明では、重力の方向を下方とし、その逆方向を上方とする。モータ装置1は、
図1及び
図2に示す向き(上下方向)のまま車両に搭載される。
【0017】
図1及び
図2に示すように、モータ装置1は、モータ部20及びインバータ部30に加え、内部に複数の空間を有しモータ部20及びインバータ部30を収容する単一のケーシング40と、ケーシング40に固定されるポンプ50とを備える。本実施形態では、インバータ部30がケーシング40内の上部に設けられた空間62(以下、インバータ空間62という)に収容され、モータ部20がインバータ空間62の下方に設けられた空間61(以下、モータ空間61という)に収容される。
【0018】
まず、インバータ部30の構成について説明する。インバータ部30は、バッテリの電力を動力源として作動し、バッテリから供給された直流電力を、モータ部20を駆動するための交流電力に変換することで交流電力を生成し、この交流電力をモータ部20へと供給するものである。インバータ部30は、電力変換部31と、コンデンサ部32と、制御回路部33とを有する。
【0019】
電力変換部31は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と呼ばれるトランジスタやサイリスタ等のスイッチング素子を複数有し、これらのスイッチング素子をオンオフさせることで直流電力を交流電力に変換するものである。コンデンサ部32は、バッテリと電力変換部31とを接続する電気回路上に介装され、バッテリから供給される直流電力を平滑化するものである。制御回路部33は、制御基板として形成され、電力変換部31のスイッチング素子をオンオフ制御するものである。
【0020】
インバータ部30のうち、特に電力変換部31及びコンデンサ部32は、バッテリから流れ込む大電流によって発熱量が大きくなるため、高温になりやすい。このため、
図1に示すように、電力変換部31及びコンデンサ部32には、これらを冷却するための冷却通路70(後述の第一冷却部71及び第二冷却部72)が近設される。
【0021】
次に、モータ部20の構成について説明する。モータ部20は、インバータ部30で生成された交流電力を用いて回転子を回転させることで、図示しない車輪へと伝達される回転力を生成するものであり、三相交流モータを構成する部分である。
図1に示すように、モータ部20は、回転子として、軸部21と、軸部21の外周に固定されるとともに磁石25を内蔵したロータ鉄心24とを有する。さらに、モータ部20は、固定子として、ロータ鉄心24の外周面に沿って周方向に等間隔に配置された複数のステータ鉄心23と、各ステータ鉄心23に巻き付けられたコイル22とを有する。各ステータ鉄心23は、ケーシング40のモータ空間61を囲む内壁に対して固定されている。
【0022】
本実施形態の軸部21は、その軸心Oが水平方向に延びるように配置され、ケーシング40に固定された二つの軸受5,6によって回転可能に支持される。軸部21の一端部21a(
図1では左端部であり、以下「出力側端部21a」ともいう)は、ケーシング40の外側へ突設され、例えば図示しないギヤボックスを介して車軸に接続される。一方、軸部21の他端部21b(
図1では右端部であり、以下「センサ側端部21b」ともいう)は、モータ空間61内に設けられた後述の隆起部42bに収容される。このセンサ側端部21bには、軸部21の回転角を検出するレゾルバ3(回転角センサ)が装着されている。以下、軸部21の軸心O方向について、軸部21の一端部21aが配置される側を「一端側」ともいい、他端部21bが配置される側を「他端側」ともいう。
【0023】
レゾルバ3は、レゾルバロータ3aとレゾルバステータ3bと図示しない出力端子部とを有し、レゾルバステータ3bに対するレゾルバロータ3aの回転角を出力端子部から図示しない制御装置に出力するものである。レゾルバロータ3aは、軸部21のセンサ側端部21bの外周面に固定され、レゾルバステータ3bに対して相対回転可能に設けられて軸部21とともに回転する。レゾルバステータ3bは、レゾルバロータ3aの外周に配置され、隆起部42bに固定される。
【0024】
次に、ケーシング40の構造について詳述する。
図1及び
図2に示すように、ケーシング40は、その外観が略直方体形状に形成された箱型部品であり、本体部41と側蓋部42と上蓋部43とから構成される。ケーシング40の本体である本体部41は、上面視で矩形状の上面部全体が開放されるとともに、上縁部よりもやや下方に水平面状の隔壁部41a(壁部)を有する。本体部41は、この隔壁部41aによって内部の空間が上下二つの空間61,62に区画される。なお、本体部41は、軸部21の一端側の側面部に、軸部21の出力側端部21aが挿通される孔部が形成され、軸部21の他端側の側面部に、略円形の開口部が形成されている。これら孔部及び開口部は、下方の空間61(すなわちモータ空間61)を囲む側面部に設けられる。
【0025】
上蓋部43は、本体部41の開放された上面部を塞ぐ蓋部材であり、本体部41の上縁部に図示しないボルトで固定されることでケーシング40の上面部を成す。側蓋部42は、本体部41の開口部を塞ぐ蓋部材であり、本体部41の軸部21の他端側の側面部に複数の(
図2では六つの)ボルト7で固定されることで本体部41とともにケーシング40の側面部を成す。上蓋部43は、本体部41とともにインバータ部30が収容されるインバータ空間62を画設するものであり、側蓋部42は、本体部41とともにモータ部20が収容されるモータ空間61を画設するものである。
【0026】
図1に示すように、ケーシング40は、インバータ空間62及びモータ空間61として機能する空間に加え、これら空間61,62を囲む壁部の内部に形成された冷却通路70を有する。
【0027】
本実施形態のインバータ空間62は略直方体形状に形成されている。インバータ空間62には、インバータ部30の電力変換部31,コンデンサ部32及び制御回路部33が互いに隙間をあけて配置される。電力変換部31及びコンデンサ部32は、インバータ空間30とモータ空間20との間を仕切る隔壁部41aの上面に固定され、制御回路部33は、電力変換部31及びコンデンサ部32の上方に図示しないブラケットを介して固定される。なお、本実施形態では、電力変換部31が軸部21の他端側に配置され、コンデンサ部32が軸部21の一端側に配置される。
【0028】
本実施形態のモータ空間61は、水平方向に延びる軸心を有する略円柱形状に形成されている。モータ空間61には、モータ部20の軸心Oとモータ空間61の軸心とが略一致するようにモータ部20が収容される。モータ空間61の内径は、モータ部20の軸心Oを中心とした直径よりもやや大きく設定され、モータ空間61の軸方向長さは、モータ部20のロータ鉄心24,ステータ鉄心23及びコイル22の軸方向長さに、レゾルバ3が配置される空間を加えた長さに設定される。つまり、モータ空間61のうち、軸部21のセンサ側端部21bが収容される側には、レゾルバ3を配置するための空間(以下、周囲空間61aという)が設けられる。この周囲空間61aには、側蓋部42が配置される。
【0029】
側蓋部42は、円板状に形成された円板部42aと、円板部42aの中心部から略円錐台形状に隆起した隆起部42bと、隆起部42bの周方向の一部における径方向外側に設けられたポンプ収容部42cとを有する。円板部42aは、本体部41の開口部を塞ぐ部位であり、モータ空間61の内径よりもやや大きい直径を有するように形成され、モータ空間61の外側から本体部41に固定される。一方、隆起部42b及びポンプ収容部42cは、モータ空間61の周囲空間61a内に配置される。
【0030】
隆起部42bは、軸部21を軸支するとともにレゾルバ3を固定するための部位であり、軸心Oと同軸上に設けられる。隆起部42bには、軸部21を回転可能に支持する一方の軸受6と、レゾルバステータ3bとが固定される。隆起部42bの外径は、レゾルバ3の外径よりもやや大きく、且つモータ空間61の直径よりも十分小さく設定される。
【0031】
モータ空間61内であって、レゾルバ3の外周(すなわち、本体部41の円筒状の内壁面と、隆起部42bの外周面との間)には、周囲空間61aが存在する。この周囲空間61aは、レゾルバ3を軸部21の軸心O上に配置することで生じた空間であり、デッドスペースである。そこで、このデッドスペースである周囲空間61aを有効活用すべく、周囲空間61aには、冷却通路70に冷却水を送り込むポンプ50が配置される。本実施形態では、周囲空間61aにポンプ収容部42cが配置され、このポンプ収容部42cにポンプ50が配置される。つまり、ポンプ50は、ケーシング40に一体的に設けられる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、ポンプ50は、例えば電動のウォータポンプであり、冷却水をポンプ50内に取り入れる取入部52と、取入部52で取り入れられた冷却水を冷却通路70に送り込む吐出部51と、電力供給源と接続されるコネクタ部53と、固定用のフランジ部54とを有する。取入部52は、ケーシング40の外部に突設され、吐出部51は、ポンプ50の本体側面に突設されてケーシング40の外表面よりも内側(側蓋部42の円板部42a内)に配置される。コネクタ部53は、ポンプ50の本体側面の吐出部51とは逆側に突設される。また、フランジ部54は、ポンプ50をケーシング40に固定するための固定部であり、略楕円状に形成され、ポンプ50の本体側面と直交して設けられる。
【0033】
ポンプ収容部42cは、円板部42aから隆起部42bと同方向に凹設された部位であり、ポンプ50の外形に対応した形状に形成される。ポンプ収容部42cには、ポンプ50が部分的に嵌め込まれた状態で固定される。ポンプ収容部42cは、周囲空間61aの上部(すなわち隆起部42bの上方)に隆起部42bから連続して設けられ、隔壁部41aを介してインバータ部30に隣接配置される。なお、ポンプ収容部42cには、ポンプ50の吐出部51と対応した位置に、後述する冷却通路70の上流端部70aを成す図示しない開口部が設けられる。
【0034】
ポンプ50は、フランジ部54の長手方向が上下方向に略一致する状態で、ケーシング40の外側からポンプ収容部42cに嵌め込まれ、円板部42aに対して上下二箇所をボルト2,2で固定される。このとき、取入部52はケーシング40の外側に配置され、その突出方向が軸心Oと平行に設けられる。一方、吐出部51及びコネクタ部53は、ポンプ収容部42cに収容される。なお、
図3に示すように、吐出部51は冷却通路70の上流端部70aに接続され、取入部52は冷却装置4の上流路4bに接続される。
【0035】
冷却通路70は、モータ装置1の内部で冷却水の流路として機能する空間であり、隔壁部41aを含む壁部の内部に形成される。本実施形態の冷却通路70は、ポンプ収容部42cに開口した上流端部70a(
図3参照)から、
図2に示す本体部41の一側面(軸心Oと平行な鉛直面である側面)に開口した下流端部70bまで連続して設けられた一つの流路として形成されている。なお、下流端部70bの位置は特に限定されない。
【0036】
この冷却通路70には、電力変換部31を冷却するための第一冷却部71と、コンデンサ部32を冷却するための第二冷却部72と、モータ部20を冷却するための第三冷却部73とが含まれる。第一冷却部71は、電力変換部31の表面形状に沿うように、隔壁部41aの内部で電力変換部31の下面と平行な水平面状に延設される。同様に、第二冷却部72は、コンデンサ部32の表面形状に沿うように、隔壁部41aの内部でコンデンサ部32の下面と平行な水平面状に延設される。本実施形態では、第一冷却部71及び第二冷却部72が何れも、隔壁部41aの内部の上面寄りの位置に形成されている。
【0037】
また、第三冷却部73は、本体部41のモータ空間61を囲む壁部の内部でモータ部20の外周面に沿って円筒面状に形成される。
図1に示すように、第三冷却部73の上部は、隔壁部41aの内部の下面寄りであって、第一冷却部71,第二冷却部72の鉛直下方に設けられる。
【0038】
なお、ポンプ50がレゾルバ3の上方(周囲空間61aの上部)に配置されることで、冷却通路70の上流端部70aがケーシング40の比較的高い位置に設けられている。これにより、上流端部70aに送り込まれる冷却水は、比較的高い位置エネルギを有し、ポンプ50による吐出力に加えて、重力の作用によっても冷却通路70を流下する。また、インバータ部30がモータ空間61よりも上方に配置されているため、ポンプ50がレゾルバ3の上方に配置されることで、ポンプ50とインバータ部30との距離が近づき、
図3に示すポンプ50の吐出部51から第一冷却部71及び第二冷却部72までの各長さ(通路長さ)L1,L2も短くなる。
【0039】
冷却通路70の上流端部70aは、ポンプ50の吐出部51に接続され、冷却通路70の下流端部70bは、下流路4cに接続される。また、冷却通路70には、上流側から順に、第一冷却部71,第二冷却部72及び第三冷却部73が設けられる。つまり、第一冷却部71,第二冷却部72及び第三冷却部73は直列に設けられ、第二冷却部72は、ポンプ50の吐出部51を基準にして第一冷却部71の下流に配置される。これにより冷却通路70では、ポンプ50の吐出部51から第一冷却部71までの長さL1が、ポンプ50の吐出部51から第二冷却部72までの長さL2よりも短くなる。そのため、第一冷却部71には、ポンプ50の吐出部51から送り出された冷却水が、第二冷却部72に到達するよりも先に到達する。
【0040】
したがって、ラジエータ4aで冷やされた冷却水は、ポンプ50により冷却通路70に送り込まれ、最初に第一冷却部71を流通して電力変換部31を冷却する。次に、第二冷却部72を流通してコンデンサ部32を冷却し、その後、第三冷却部73を流通してモータ部20を冷却して、下流端部70bから下流路4cに排出される。これにより、ラジエータ4aを通過した直後の低温な冷却水が、第二冷却部72や第三冷却部73よりも先に第一冷却部71に供給されるため、電力変換部31の冷却性能が特に高められる。
【0041】
[2.効果]
(1)上記のモータ装置1によれば、モータ空間61内であってレゾルバ3の外周に存在する周囲空間61aにポンプ50を配置することで、周囲空間61aを効果的に利用して省スペース化を実現することができる。この周囲空間61aは、レゾルバ3をモータ部20の軸部21に装着することで生まれる空間であり、モータ空間61内におけるデッドスペースである。上記のモータ装置1では、このデッドスペースである周囲空間61aにポンプ50を配置したので、ケーシング40内のスペースを無駄なく活用することができ、スペース効率を高めることができる。
【0042】
また、モータ部20及びインバータ部30を収容するケーシング40内にポンプ50を配置したため、ポンプ50から送り出される冷却水をケーシング40内の冷却通路70に直接的に流し込むことができ、冷却水が受ける抵抗(通水抵抗)を低減させることができる。このため、モータ部20及びインバータ部30に対する冷却性能を向上させることができ、例えばポンプ50をサイズダウンさせることでコスト及び重量を削減しながら、従来と同等の冷却性能を得ることができる。
【0043】
さらに、モータ部20及びインバータ部30を収容するケーシング40内の空間にポンプ50を配置したため、モータ部20,インバータ部30及びポンプ50を複数のケーシングに分けて収容する場合に比べて、部品点数を削減することができる。具体的には、ケーシングだけでなく、ケーシングを車体に取り付けるためのブラケット,ポンプ50を固定するためのクリップ,モータ部20とインバータ部30とポンプ50との相互間に設けられるケーブルやホースなどの部品点数を削減することができる。このため、部品コストを低減することができる上に、軽量化を実現することができ、さらに組立作業が容易になることで組立コストを低減することもできる。
【0044】
(2)また、上記のモータ装置1によれば、ポンプ50が、車両搭載時にレゾルバ3の上方(すなわち、周囲空間61aの上部)に配置されるため、ポンプ50を比較的高い位置に配置することができ、冷却通路70に送り込まれる冷却水の位置エネルギを高めることができる。これにより、例えば冷却水が冷却通路70を下方に向かって流れる場合、重力が冷却水の流下を促進するように働くため、冷却性能を向上させることができる。また、ポンプ50を路面から離して配置することができるため、路面からの飛び石に対してポンプ50を保護することができる。
【0045】
(3)また、上記のモータ装置1によれば、インバータ部30が、内部に冷却通路70を有する隔壁部41aを介してポンプ50に隣接配置されるため、ポンプ50から冷却通路70に送り込まれた冷却水をまずインバータ部30に向けて流すことができる。そのため、モータ部20よりも高温になり易いインバータ部30の冷却性能を高めることができる。
【0046】
(4)また、上記のモータ装置1によれば、ポンプ50の吐出部51から第一冷却部71までの長さL1が、ポンプ50の吐出部51から第二冷却部72までの長さL2よりも短く設けられるため、冷却水がポンプ50の吐出部51から第一冷却部71に到達するまでに受ける抵抗を、第二冷却部72に到達するまでに受ける抵抗よりも小さくすることができ、電力変換部31の冷却性能をコンデンサ部32の冷却性能よりも高めることができる。したがって、コンデンサ部32よりも高温になり易い電力変換部31の冷却性能を特に高めることができ、インバータ部30の信頼性を向上させることができる。
【0047】
特に、ポンプ50が周囲空間61aに配置されるため、ポンプ50の吐出部51と冷却通路70の上流端部70aとを近づけることができ、ポンプ50の吐出部51から第一冷却部71までの長さL1を短くすることができる。これにより、冷却水がポンプ50の吐出部51から第一冷却部71に到達するまでに受ける抵抗をより低減させることができ、第一冷却部71に対してより低温な冷却水を供給することができる。したがって、インバータ部30の冷却性能を向上させることができる。
【0048】
(5)また、上記のモータ装置1によれば、第二冷却部72がポンプ50の吐出部51を基準にして第一冷却部71の下流に配置されるため、冷却通路70の構造の複雑化を抑制することができるとともに、インバータ部30の冷却性能を向上させることができる。
【0049】
(6)また、上記のモータ装置1によれば、モータ空間61よりも上方にインバータ空間62が設けられ、レゾルバ3よりも上方(周囲空間61aの上部)にポンプ50が配置されるため、ポンプ50とインバータ部30とを近づけて配置することができる。これにより、ポンプ50の吐出部51から第一冷却部71までの長さL1と、ポンプ50の吐出部51から第二冷却部72までの長さL2とを短くすることができるため、上述のように冷却水が第一,第二冷却部71,72に到達するまでに受ける抵抗を小さくすることができ、電力変換部31及びコンデンサ部32の冷却性能を高めることができる。
【0050】
[3.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上記実施形態では、冷却媒体として冷却水を例示したが、本モータ装置1に適用される冷却媒体は冷却水に限定されない。例えば、単なる水や不凍液であってもよいし、冷却オイルや空気であってもよい。
【0051】
また、上記したポンプ50の配置,構造,個数は変更可能である。ポンプ50は、少なくとも周囲空間61aに配置されていればよく、その具体的な位置は周囲空間61aの上部(レゾルバ3の上方)に限定されず、レゾルバ3の側方や下方であってもよい。また、上記にはポンプ50がポンプ収容部42cに嵌め込まれた状態で、フランジ部54が円板部42aに対して固定される例を示したが、例えばフランジ部54を省略して、ポンプ50の本体がポンプ収容部42cに対して固定されるようにしてもよい。また、これとは逆にポンプ収容部42cを省略して、ポンプ50がフランジ部54のみでケーシング40に対して固定されるようにしてもよい。さらに、例えば上記の周囲空間61aに複数のポンプを配置して、冷却通路70に送り込む冷却媒体の流量を増加させることで冷却性能を向上させるようにしてもよい。
【0052】
また、ケーシング40の形状や、モータ空間61及びインバータ空間62の形状,位置は、上記のものに限定されない。例えば、モータ空間及びインバータ空間が、何れも略直方体形状に形成されてもよいし、水平方向に並んで配置されてもよい。また、上記したインバータ部30の各部31〜33のレイアウトは一例であり、変更可能である。例えば、電力変換部31が軸部21の出力側端部21a側に配置され、コンデンサ部32がセンサ側端部21b側に配置されてもよいし、電力変換部31とコンデンサ部32とが、軸心Oに対して交差する方向に並んで配置されてもよい。あるいは、ケーシング40にインバータ空間を二つ又は三つ設け、電力変換部31,コンデンサ部32及び制御回路部33を別々の空間に配置してもよい。
【0053】
また、上記実施形態のモータ部20は、軸部21の軸心Oが水平方向に延びるように配置される場合を例示したが、軸部21の軸心Oが延びる方向は水平方向に限定されるものではなく、変更可能である。
また、本モータ装置の軸部に装着される回転角センサは、上記したレゾルバ3に限らず、例えばロータリエンコーダであってもよい。