特許第6543945号(P6543945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543945
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20190705BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20190705BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20190705BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190705BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190705BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20190705BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20190705BHJP
   A61K 31/245 20060101ALI20190705BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20190705BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   A61K8/67
   A61K8/44
   A61K8/06
   A61K8/34
   A61Q19/00
   A61K9/127
   A61K47/08
   A61K31/245
   A61K31/455
   A61P17/00
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-20794(P2015-20794)
(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-65032(P2016-65032A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2018年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-24345(P2014-24345)
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-208765(P2014-208765)
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 真理子
(72)【発明者】
【氏名】松土 有紀子
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−230081(JP,A)
【文献】 特開2002−154915(JP,A)
【文献】 特開2003−226635(JP,A)
【文献】 特開2010−275206(JP,A)
【文献】 特開2001−072603(JP,A)
【文献】 特開平05−331050(JP,A)
【文献】 特開2015−178494(JP,A)
【文献】 特開2004−155708(JP,A)
【文献】 BASF UVフィルターセミナー2010配布資料,BASFジャパン株式会社,2010年 3月 5日,p.10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 31/00− 31/80
A61K 9/127
A61K 47/08
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ニコチン酸ベンジルエステル、及びアミノ安息香酸エチルエステルから選ばれる少なくとも1種のエステル系化合物、及び(b)イソステアリルグリセリルエーテルを含有することを特徴とする油中水型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル系化合物を含有する乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル系化合物のうちステロイド骨格を有する化合物は、微量で高い生理活性を示すことが知られており、副腎皮質ホルモンは湿疹(アトピー性皮膚炎など)、痒疹(汗疹、じんましん、虫刺されなど)、皮膚炎、乾癬、膿疱などの治療に用いられている。ステロイド化合物は骨格上に二重結合を導入したり、置換基を様々に変化させることで作用を増強することなどが行われている。このためステロイド化合物は様々な誘導体が存在するが、エステル誘導体としては例えば、17位または21位にヒドロキシル基を有するステロイドがアセチル化やバレリル化されたものが挙げられる。これらのエステル系ステロイドは貯蔵中に加水分解するため、長期安定性に乏しく、十分な効果を発揮できないことが課題となっている。
【0003】
製剤中におけるステロイドの安定性改善に関する先行技術として、クロタミトン及び界面活性剤を配合したパップ剤(特許文献1)や、アクリル酸重合物を含有させた無水の外用剤組成物(特許文献2)が知られている。これら文献にはエステル系ステロイド化合物の例も記載されている。しかしながら、クロタミトンの多量配合は使用感や製剤安定性を悪化させることがあるため、多量の配合は好ましくない。また、無水の外用剤組成物は、水分を含まないため製剤の伸びが悪いなど、使用感が好ましくない場合がある。
【0004】
また、エステル系ステロイド化合物のうち、吉草酸酢酸プレドニゾロンについては、O/W乳化系において分解するという問題点が知られている。この問題の解決法として、これまでにいくつか検討がなされている。例えば、吉草酸酢酸プレドニゾロン、極性油分を含む油分、非イオン性及び/またはイオン性界面活性剤、及び分子内に2個以上の水酸基を有する多価アルコールとで調整した水中油型皮膚外用医薬乳化製剤(特許文献3)、吉草酸酢酸プレドニゾロン、ワセリン及びヒドロキシプロピルセルロースを含有するO/W型乳化製剤(特許文献4)である。
【0005】
エステル系ビタミンA誘導体は、ニキビ治療やシワ、タルミの予防を目的として、美容液、乳液、クリームなどの皮膚外用剤に配合されている。パルミチン酸レチノールはレチノールと比べて安定性が高いが、酸素や紫外線により変質する欠点を有しており、いまだ安定性に課題を有している。
製剤中におけるエステル系ビタミンA誘導体の安定性改善に関する先行技術として、パルミチン酸レチノール、リン酸L−アスコルビルマグネシウム及び酢酸dl−α−トコフェロールを配合した貼付剤(特許文献5)や、パルミチン酸レチノールとアスタキサンチンを配合した乾燥リポソーム製剤(特許文献6)が知られている。しかしながら、貼付剤は厚みがあるため適用箇所から剥がれやすいといった欠点があり、適用箇所も限られる。また、乾燥リポソーム製剤は、調製方法が複雑で特定の機器が必要となるため、応用できる施設が限られる。
【0006】
メラニン還元作用をもつビタミンC(L−アスコルビン酸)は水溶性であり、水溶液中のビタミンCは、大気中の酸素や酸化剤等によって容易に酸化され、紫外線や熱により酸化反応が促進されるため、生理活性が失われやすいという性質を有している。これに対し、経皮吸収性に優れ、製剤へ安定に配合しやすいエステル系のビタミンC誘導体が提案されている。エステル系ビタミンC誘導体は、製剤化の応用範囲が広く、乳化製剤への配合が可能である。しかしながら、エステル系ビタミンC誘導体も安定性の確保が十分でなく、経時的に変色し、安定性が著しく悪化するという性質があり、安定性の向上が求められている。
製剤中におけるエステル系ビタミンC誘導体の安定性改善に関する先行技術として、アスコルビン酸リン酸エステル、ガム質及びセルロース系高分子を配合した皮膚用化粧料(特許文献7)が知られている。しかしながら、ガム質およびセルロース系高分子の多量配合は、ベタツキなどが生じ使用感が好ましくない場合がある。
【0007】
ケイ皮酸誘導体及びベンゾイル誘導体は、古くから紫外線吸収剤として使用されており、その安定性改善に関する検討が行われているが(特許文献8、9)、アルキルグリセリルエーテルやポリグリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせによる安定化作用について検討された例は無い。
【0008】
ニコチン酸誘導体は、局所刺激作用を持ち、皮膚に温感刺激を与え、血行を促すことから、外用薬の血行促進成分として使用されており、成分の安定性に課題があることが知られているが(特許文献10)、アルキルグリセリルエーテルやポリグリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせによる安定化作用について検討された例は無い。
【0009】
アミノ安息香酸アルキルエステルは、鎮痛・鎮痒薬として古くから使用されており、成分の安定性に課題があることが知られているが(特許文献11)、アルキルグリセリルエーテルやポリグリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせによる安定化作用について検討された例は無い。
【0010】
一方、イソステアリルグリセリルエーテルは古くから皮膚化粧料の乳化剤として使用されているが(特許文献12)、エステル系のステロイド化合物、レチノールパルミチン酸エステル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ニコチン酸ベンジルエステル、又はアミノ安息香酸エチルに対する安定化作用について検討された例はない。
【0011】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、古くから化粧品の分野をはじめ、様々な分野で使用されている界面活性剤であるが(特許文献13、14)、エステル系のステロイド化合物に対する安定化作用について検討された例はない。
【0012】
今までに、エステル系のステロイド化合物とイソステアリルグリセリルエーテル又は特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する乳化組成物、又は、レチノールパルミチン酸エステル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ニコチン酸ベンジルエステル、又はアミノ安息香酸エチルとイソステアリルグリセリルエーテルを含有する乳化組成物について、報告された例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4456679号公報
【特許文献2】特開2001−233772号公報
【特許文献3】特開2011−68691号公報
【特許文献4】特開2008−297212号公報
【特許文献5】特開2007-302608号公報
【特許文献6】特開2010-13419号公報
【特許文献7】特許3242398号公報
【特許文献8】特許第4091746号公報
【特許文献9】特許第5540243号公報
【特許文献10】特許第4133740号公報
【特許文献11】特開平10-306040号公報
【特許文献12】特開昭56−39033号公報
【特許文献13】特開昭61−37710号公報
【特許文献14】特開昭61−52249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、エステル系化合物について、経時的な分解又は含量低下を顕著に抑制し、製品価値の高い乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、HLB7.0以下の親油性界面活性剤と組み合わせて油中水型乳化組成物とすると、エステル系化合物の経時的な含量低下が抑えられることを見出した。さらに、イソステアリルグリセリルエーテル及び/又は特定のポリグリセリン脂肪酸エステルが、エステル系ステロイド化合物、エステル系ビタミンA誘導体、エステル系ビタミンC誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾイル誘導体、ニコチン酸誘導体、又はアミノ安息香酸アルキルエステルの経時的な含量低下が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
かかる知見により得られた本発明の態様は以下の通りである。
(1)(a)エステル系化合物、及び(b)HLB7.0以下の親油性界面活性剤を含有することを特徴とする油中水型乳化組成物、
(2)(b)成分がHLB5.5以下の親油性界面活性剤である(1)に記載の乳化組成物、
(3)(a)成分が、エステル系ステロイド化合物、エステル系ビタミンA誘導体、エステル系ビタミンC誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾイル誘導体、ニコチン酸誘導体、及びアミノ安息香酸アルキルエステルの群から選ばれる少なくとも1種のエステル系化合物である、(1)又は(2)のいずれかに記載の乳化組成物、
(4)(a)エステル系ステロイド化合物がヒドロコルチゾン酢酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル、及びプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種である、(3)に記載の乳化組成物、
(5)(b)成分がアルキルグリセリルエーテル、及び/又は、モノオレイン酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル、及びジイソステアリン酸ポリグリセリルからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸エステルである(2)に記載の乳化組成物、
(6)(a)成分が、レチノールパルミチン酸エステル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ニコチン酸ベンジルエステル、及びアミノ安息香酸エチルの群から選ばれる少なくとも1種のエステル系化合物であり、(b)成分が、アルキルグリセリルエーテルである、(3)に記載の乳化組成物、
(7)アルキルグリセリルエーテルが、イソステアリルグリセリルエーテル、グリセリンモノステアリルエーテル及びモノオレイルグリセリルエーテルの群から選ばれる少なくとも1種である、(5)又は(6)のいずれかに記載の乳化組成物、
である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、エステル系化合物の経時的な分解を顕著に抑制し、エステル系化合物の安定性を向上することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で用いるエステル系ステロイド化合物は、医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。エステル系ステロイド化合物の例としては、例えば、ベタメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、クロベタゾールプロピオン酸エステル、デキサメタゾン吉草酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル、ジフルコルトロン吉草酸エステル、クロベタゾン酪酸エステル、プロピオン酸デプロドン、ジフルプレドナートなどを挙げることができ、これらのエステル系ステロイド化合物を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。本発明のエステル系ステロイド化合物は、好ましくはヒドロコルチゾン酢酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルである。本発明で配合するエステル系ステロイド化合物は、外用組成物として配合される一般的な量を配合することができ、具体的には、本発明の乳化組成物全体に対して0.01〜1.0質量%であり、好ましくは0.025〜0.5質量%がステロイドの薬理効果及び安全性の観点から望ましい。
【0019】
本発明で用いるエステル系ビタミンA誘導体の例としては、例えばレチノールパルミチン酸エステルが挙げられる。本発明のエステル系ビタミンA誘導体の配合量としては、本発明の乳化組成物全体に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0020】
本発明で用いるエステル系ビタミンC誘導体の例としては、例えばテトラヘキシルデカン酸アスコルビルが挙げられる。本発明のエステル系ビタミンC誘導体の配合量としては、本発明の乳化組成物全体に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0021】
本発明で用いるケイ皮酸誘導体の例としては、例えばメトキシケイヒ酸エチルヘキシルが挙げられる。本発明のケイ皮酸誘導体の配合量としては、本発明の乳化組成物全体に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0022】
本発明で用いるベンゾイル誘導体の例としては、例えばt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンが挙げられる。本発明のベンゾイル誘導体の配合量としては、本発明の乳化組成物全体に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0023】
本発明で用いるニコチン酸誘導体の例としては、例えばニコチン酸ベンジルエステルが挙げられる。本発明のニコチン酸誘導体の配合量としては、本発明の乳化組成物全体に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0024】
本発明で用いるアミノ安息香酸アルキルエステルの例としては、例えばアミノ安息香酸エチルが挙げられる。本発明のアミノ安息香酸アルキルエステルの配合量としては、本発明の乳化組成物全体に対して0.01〜10質量%が好ましい。
【0025】
本発明のHLB7.0以下の親油性界面活性剤としては、例えばアルキルグリセリルエーテルや、モノオレイン酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。HLB7.0以下の親油性界面活性剤の含有量は、本発明のエステル系化合物1質量部に対して0.0005〜1000質量部であり、好ましくは0.05〜500質量部が望ましい。
本発明のアルキルグリセリルエーテルの例としては、イソステアリルグリセリルエーテル、グリセリンモノステアリルエーテル、又はモノオレイルグリセリルエーテルが挙げられる。イソステアリルグリセリルエーテルは、ペネトールGE-IS(商品名:花王株式会社製)等の市販品を利用することができる。グリセリンモノステアリルエーテルは、NIKKOL バチルアルコール 100(商品名:日光ケミカルズ株式会社製)等の市販品を利用することもできる。モノオレイルグリセリルエーテルは、NIKKOL セラキルアルコール(商品名:日光ケミカルズ株式会社製)等の市販品を利用することもできる。
本発明のアルキルグリセリルエーテルの含有量は、本発明のエステル系化合物1質量部に対して0.0005〜1000質量部であり、好ましくは0.05〜500質量部が望ましい。
【0026】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばモノオレイン酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル、又はジイソステアリン酸ポリグリセリルが挙げられる。モノオレイン酸ポリグリセリルは、NIKKOL DGMO-CV(商品名:日光ケミカルズ株式会社製)、EMALEX MOG−2(商品名:日本エマルジョン株式会社製)等の市販品を利用することもできる。縮合リシノレイン酸ポリグリセリルは、NIKKOL Hexaglyn PR−15、NIKKOL Decaglyn PR−20(商品名:日光ケミカルズ株式会社)等の市販品を利用することもできる。ジイソステアリン酸ポリグリセリルは、EMALEX DISG−2EX(商品名:日本エマルジョン株式会社)、コスモール 42V(商品名:日本オイリオグループ株式会社)等の市販品を利用することもできる。これらポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量はいずれも、本発明のエステル系ステロイド化合物1質量部に対して0.0005〜1000質量部であり、好ましくは0.05〜500質量部が望ましい。
【0027】
また、本発明の乳化組成物は、本発明の効果の点から、油中水型である。また、患部を保護する作用があり、水中油型に比べ水に強く落ちにくい利点も持つ。
【0028】
剤型としてはクリーム、乳液等が挙げられる。適用箇所に特に制限はないが、皮膚、頭皮、爪、粘膜等の外用が好ましい。
【0029】
本発明の乳化組成物には、通常乳化組成物で用いられる任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。このような任意成分としては、低級アルコールや多価アルコール等の溶解補助剤、炭化水素、グリセリン脂肪酸エステル、ワックス成分、界面活性剤、抗酸化剤、乳化安定剤、ゲル化剤、粘着剤等、各種動植物からの抽出物、pH調整剤、防腐剤、キレート剤、香料、色素、液化ガスなどが挙げられる。
【0030】
また、本発明の乳化組成物中には、例えば抗菌剤、殺菌剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、組織修復剤、鎮痒剤、保湿剤、血管収縮剤、抗アレルギー剤、清涼化剤、酸素除去剤、ビタミン、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤などの薬効成分などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。
【0031】
本発明の乳化組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。通常、それぞれの成分を適切な製造機で均一なペースト状の乳化組成物となるように混合して製造することができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例、比較例及び試験例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例等に限定されるものではない。
【0033】
実施例1〜13及び比較例1
(各乳化組成物の調製法)
下記の表1〜3に示す処方に従い、各成分を秤量し、エステル系化合物、イソステアリルグリセリルエーテル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル(NIKKOL MGS−DEXV(商品名:日光ケミカルズ株式会社))、又はポリグリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィンからなる油相を約80℃に加温した。カルボキシビニルポリマー、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸メチル、水酸化ナトリウム及び適宜精製水を加えて水相とし、約80℃に加温後、ディスパミキサーをかけながら油相に添加した。攪拌後、冷却して実施例1〜13の油中水型乳化組成物及び比較例1の水中油型乳化組成物を得た。
【0034】
(試験例1:安定性試験)
実施例1〜4及び比較例1について、65℃及び5℃で14日間保管した後にヒドロコルチゾン酢酸エステルの含有量を液体クロマトグラフ法(測定装置:Waters module、UV/VIS検出器(日本ウォーターズ(株))にて測定した。含有率の値は、5℃14日間保管後のヒドロコルチゾン酢酸エステルの含有量を100%とし、これに対する65℃14日間保管後のヒドロコルチゾン酢酸エステルの含有率を算出した。結果を表1〜2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
結果から明らかなように、イソステアリルグリセリルエーテル、モノオレイン酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル又はジイソステアリン酸ポリグリセリルを配合した実施例1〜4は、他の親油性界面活性剤を配合した比較例1と比較してヒドロコルチゾン酢酸エステルの分解を顕著に抑制した。また、本結果から、イソステアリルグリセリルエーテル、モノオレイン酸ポリグリセリル、縮合リシノレイン酸ポリグリセリル又はジイソステアリン酸ポリグリセリルは、他のエステル系ステロイドの経時的な分解又は含量低下も抑制できることが推察される。
【0039】
実施例14〜18及び比較例2〜3
(各乳化組成物の調製法)
下記の表4に示す処方に従い、各成分を秤量し、エステル系ステロイド、イソステアリルグリセリルエーテル、グリセリンモノステアリルエーテル、又はモノオレイルグリセリルエーテル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル(NIKKOL MGS−DEXV(商品名:日光ケミカルズ株式会社))、流動パラフィンからなる油相を約80℃に加温した。カルボキシビニルポリマー、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸メチル、水酸化ナトリウム及び適宜精製水を加えて水相とし、約80℃に加温後、ディスパミキサーをかけながら油相に添加した。攪拌後、冷却して実施例14〜18の油中水型乳化組成物及び比較例2〜3の水中油型乳化組成物を得た。
【0040】
(安定性試験)
試験例1と同様の方法により、測定した。含有率の値は、5℃14日間保管後のエステル系ステロイドの含有量を100%とし、これに対する65℃14日間保管後のエステル系ステロイドの含有率を算出した。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
結果から明らかなように、イソステアリルグリセリルエーテルを配合した実施例14〜15は、他の親油性界面活性剤を配合した比較例2〜3と比較してエステル系ステロイドの分解を顕著に抑制した。
【0043】
実施例19及び比較例4
(各乳化組成物の調製法)
下記の表5に示す処方に従い、各成分を秤量し、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、イソステアリルグリセリルエーテル、自己乳化型ステアリン酸グリセリル(NIKKOL MGS−DEXV(商品名:日光ケミカルズ株式会社))、流動パラフィン、パルミチン酸デキストリンからなる油相を約80℃に加温した。カルボキシビニルポリマー、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸メチル、水酸化ナトリウム及び適宜精製水を加えて水相とし、約80℃に加温後、ディスパミキサーをかけながら油相に添加した。攪拌後、冷却して実施例19の油中水型乳化組成物及び比較例4の水中油型乳化組成物を得た。
【0044】
(安定性試験)
試験例1と同様の方法により、測定した。含有率の値は、5℃3日間保管後のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの含有量を100%とし、これに対する65℃3日間保管後のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの含有率を算出した。結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
結果から明らかなように、イソステアリルグリセリルエーテルを配合した実施例19は、他の親油性界面活性剤を配合した比較例4と比較してテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの分解を顕著に抑制した。
【0047】
実施例20〜31
(各乳化組成物の調製法)
下記の表6に示す処方に従い、各成分を秤量し、エステル系化合物、イソステアリルグリセリルエーテル、流動パラフィンからなる油相を約80℃に加温した。カルボキシビニルポリマー、濃グリセリン、パラオキシ安息香酸メチル、水酸化ナトリウム及び適宜精製水を加えて水相とし、約80℃に加温後、ディスパミキサーをかけながら油相に添加した。攪拌後、冷却して実施例20〜31の油中水型乳化組成物を得た。
【0048】
【表6】
【0049】
(安定性試験)
試験例1と同様の方法により、実施例25、27及び30について測定した。含有率の値は、5℃3日間保管後のメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、レチノールパルミチン酸エステルの含有量を100%とし、これに対する65℃3日間保管後の各成分の含有率を算出した。結果を表7に示す。
【0050】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により、エステル系化合物の安定性を向上した乳化組成物の提供が可能となった。本乳化組成物は、医薬品・医薬部外品・化粧品等の乳化組成物として有用である。