(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0018】
なお、ここでは、「前」、「後」、「右」、及び、「左」の各方向は、本実施形態に係る媒体収納庫11を取り扱う作業者が
図4に示す媒体収納庫11を見たときの方向を意味している。各方向は、媒体収納庫11の運用に応じて適宜変更することができる。また、以下、「右」側に配置された構成要素と「左」側に配置された構成要素とを区別する場合に、各構成要素に与えられた符号の末尾に、「右」側を表す英文字「R」、又は、「左」側を表す英文字英文字「L」を付して説明する。
【0019】
<媒体収納庫を搭載する媒体取扱装置の構成>
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る媒体収納庫11を搭載する媒体取扱装置1の構成につき説明する。
図1は、媒体取扱装置1の構成を示す図である。
【0020】
媒体取扱装置1は、例えば、キャッシュディスペンサ(CD)や現金自動預け払い機(ATM)等である。ここでは、媒体取扱装置1がキャッシュディスペンサ(CD)である場合を想定して説明する。また、媒体が紙幣であるものとして説明する。
【0021】
図1に示すように、媒体取扱装置1は、紙幣を収納する収納ユニット2、及び、紙幣の束を搬送する束搬送ユニット3を有している。収納ユニット2は、搬送路8、媒体収納庫11、鑑別部12、集積部13、リジェクト収納庫15、取り込み収納庫16、出金口17、及び、シャッタ18を備えている。また、束搬送ユニット3は、搬送機構4として、上ベルト5a、下ベルト5b、ラッセル板6、及び、可動搬送ベルト7を備えている。
【0022】
搬送路8は、紙幣が搬送される通路である。搬送路8の周囲には、紙幣を搬送する搬送機構(図示せず)が配置されている。
媒体収納庫11は、紙幣を収納する収納庫である。
鑑別部12は、紙幣の金種や枚数、出金の可否等を鑑別する装置である。
集積部13は、媒体収納庫11から搬送された紙幣を集積する部位である。
リジェクト収納庫15は、媒体収納庫11から搬送された紙幣が鑑別部12で出金に適さないと鑑別された紙幣(リジェクト紙幣)を収納する収納庫である。
取り込み収納庫16は、出金口17に一定時間以上取り残されている紙幣を収納する収納庫である。
出金口17は、紙幣が媒体取扱装置1の外部へ放出される部位である。
シャッタ18は、出金口17を選択的に開放又は閉鎖する部材である。
【0023】
上ベルト5a及び下ベルト5bは、紙幣を上下方向から挟み込んで搬送する部材である。
ラッセル板6は、紙幣の後端よりも後方の位置から前方向に移動することによって、紙幣を前方向に押圧する部材である。
可動搬送ベルト7は、紙幣を搬送するとともに、前後方向に移動することによって、集積部13の上方に設けられた開口部13opと取り込み収納庫16の上方に設けられた開口部16opとを選択的に開放又は閉鎖する部材である。
【0024】
媒体取扱装置1は、紙幣の搬送ルートとして、出金ルート21、リジェクトルート22、集積ルート23、放出ルート24、及び、取り込みルート29を備えている。
出金ルート21は、各媒体収納庫11から出金口17までを結ぶルートである。
リジェクトルート22は、集積部13とリジェクト収納庫15との間の位置からリジェクト収納庫15までを結ぶルートである。
集積ルート23は、集積部13とリジェクト収納庫15との間の位置から集積部13までを結ぶルートである。
放出ルート24は、上ベルト5aと下ベルト5bとの間の位置から出金口17までを結ぶルートである。
取り込みルート29は、出金口17から取り込み収納庫16までを結ぶルートである。
【0025】
本実施形態では、媒体取扱装置1は、4つの媒体収納庫11を搭載している。以下、4つの媒体収納庫11を区別する場合に、上から順番に、「媒体収納庫11a,11b,11c,11d」と称する。
【0026】
ここでは、媒体収納庫11が「横型の媒体収納庫」である場合を想定して説明する。ここで、「横型の媒体収納庫」とは、紙幣の短手方向側辺(又は長手方向側辺)を上下方向に起立させた状態で、紙幣を前後方向に重ねて収納する構成になっている媒体収納庫を意味している。
【0027】
また、本実施形態では、リジェクト収納庫15及び取り込み収納庫16は、単一の収納庫によって構成されている。つまり、媒体取扱装置1は、単一の収納庫の内部を2つの空間に分割し、一方の空間をリジェクト収納庫15とし、他方の空間を取り込み収納庫16として用いている。
【0028】
また、本実施形態では、集積部13及びリジェクト収納庫15は、隣接して配置されている。搬送路8は、最下段の媒体収納庫11dの後方の位置から、媒体収納庫11c,11b,11aの後方、及び、鑑別部12の内部を通って、集積部13とリジェクト収納庫15との間の位置に達するように形成されている。搬送路8は、集積部13とリジェクト収納庫15との間の位置で集積部13側とリジェクト収納庫15側とに分岐している。
【0029】
また、上ベルト5a及び下ベルト5bは、図示せぬ駆動機構によって駆動されて走行する。同様に、ラッセル板6及び可動搬送ベルト7も、図示せぬ駆動機構によって駆動されて移動する。これらの部材を駆動する駆動機構の駆動源は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0030】
上ベルト5a及び可動搬送ベルト7は、上下方向に対向配置されており、互いの対向部分が密着するように配置されている。また、上ベルト5a及び下ベルト5bは、上下方向に対向配置されており、互いの対向部分が密着するように配置されている。一方、ラッセル板6及び可動搬送ベルト7は、ラッセル板6又は可動搬送ベルト7が移動しても互いに衝突しないように、互いを避ける形状に形成されている。
【0031】
上ベルト5aの長さは、可動搬送ベルト7と下ベルト5bとの合計の長さよりも長くなっている。上ベルト5aは、媒体取引装置1の前端付近と後端付近とに設けられた一組のローラ対によって張架されている。上ベルト5aを張架するローラ対のいずれか一方のローラは、回転駆動して上ベルト5aを走行させる駆動ローラとなっており、また、他方のローラは、上ベルト5aの走行に従動して回転する従動ローラとなっている。一方、可動搬送ベルト7は、媒体取引装置1の前側と後側とに設けられた一組のローラ対によって張架されている。ここでは、可動搬送ベルト7を張架するローラ対のいずれか一方のローラが駆動ローラとなっており、他方のローラが従動ローラとなっている場合を想定して説明する。ただし、可動搬送ベルト7を張架するローラ対の双方のローラは従動ローラにしてもよい。また、下ベルト5bは、媒体取引装置1の前端付近と開口部16opの手前付近とに設けられた一組のローラ対によって張架されている。ここでは、下ベルト5bを張架するローラ対のいずれか一方のローラが駆動ローラとなっており、他方のローラが従動ローラとなっている場合を想定して説明する。ただし、下ベルト5bを張架するローラ対の双方のローラは従動ローラにしてもよい。
【0032】
かかる構成において、媒体取扱装置1は、出金時に、以下のように動作する。
まず、媒体取扱装置1は、操作者からの指示に応じて、任意の金種の紙幣を該当金種の媒体収納庫11の中から搬送路8に順次繰り出し、繰り出した紙幣を鑑別部12で鑑別しながら、出金ルート21に沿って、集積部13とリジェクト収納庫15との間の位置まで搬送する。
【0033】
この後、媒体取扱装置1は、鑑別部12で出金に適さないと鑑別された紙幣(リジェクト紙幣)を、リジェクトルート22に沿ってリジェクト収納庫15側に搬送して、リジェクト収納庫15の内部に収納する。また、媒体取扱装置1は、鑑別部12で出金してもよいと鑑別された紙幣を、集積ルート23に沿って集積部13側に搬送して、集積部13の内部に収納する。
【0034】
集積部13の内部には、紙幣が集積されるステージ14が配置されている。媒体取扱装置1は、任意の枚数の紙幣の束が集積されると、ステージ14を上昇させる。このとき、可動搬送ベルト7は、ステージ14の上昇に合わせて開口部13opを開放する位置に移動する。また、ラッセル板6は、紙幣に衝突しない位置に退避している。
【0035】
媒体取扱装置1は、ステージ14を上昇させると、紙幣の後端よりも後方に位置させておいたラッセル板6を、ステージ14の上に集積されている紙幣の束が前方向に移動するように、上ベルト5a及び下ベルト5bを走行させるとともに、ラッセル板6を紙幣の後端よりも後方の位置から前方向に移動させる。これにより、媒体取扱装置1は、ラッセル板6で紙幣の束を前方向に押圧しながら、上ベルト5a及び可動搬送ベルト7の搬送機構、並びに、上ベルト5a及び下ベルト5bの搬送機構で紙幣の束を放出ルート24に沿って前方向に搬送する。
【0036】
このとき、紙幣の束は、ステージ14の上から可動搬送ベルト7の上に移動する。そして、紙幣の束は、上ベルト5aと可動搬送ベルト7との間を通過した後、上ベルト5aと下ベルト5bとの間を通過して、出金口17の近傍の位置まで搬送される。
【0037】
媒体取扱装置1は、紙幣の束を出金口17の近傍の位置まで搬送すると、シャッタ18を開放するとともに、上ベルト5a及び下ベルト5bを走行させる。これにより、媒体取扱装置1は、紙幣の束を前方向に搬送する。その結果、紙幣の束の一部分が、出金口17から外に突出した状態になる。これにより、顧客は、媒体取扱装置1から紙幣の束を受け取ることができる。
【0038】
媒体取扱装置1は、顧客が紙幣の束を受け取ったことを検知すると、シャッタ18を閉鎖して、次の取引に対応可能な状態になる。
ただし、媒体取扱装置1は、顧客が紙幣の束を受け取らずに、紙幣の束が出金口17に一定時間以上取り残されたときに、可動搬送ベルト7を後方に移動させて、開口部16opを開放させるとともに、紙幣の束が後方向に移動するように、上ベルト5a及び下ベルト5bを走行させる。これにより、媒体取扱装置1は、取り込みルート29に沿って、紙幣の束を装置の内部に取り込み、取り込まれた紙幣を取り込み収納庫16の内部に収納する。この後、媒体取扱装置1は、シャッタ18を閉鎖して、次の取引に対応可能な状態になる。
【0039】
<媒体収納庫の外部の構成>
以下、
図2を参照して、媒体収納庫11の外部の構成につき説明する。
図2は、媒体収納庫11の外部の構成を示す図である。媒体収納庫11は、内部に紙葉状の媒体(ここでは、紙幣)を収納する箱型の収納庫である。
【0040】
図2に示すように、媒体収納庫11の筺体31は、箱状に形成されている。その筺体31は、蓋部32と容器部33とを備えている。蓋部32は、筺体31の上側を構成する上部材であり、容器部33の上部分を覆っている。容器部33は、筺体31の下側を構成する下部材であり、内部に媒体(ここでは、紙幣)を収容している。
【0041】
蓋部32は、回動支点35によって回動自在に容器部33に取り付けられている。蓋部32は、回動支点35を中心にして、矢印A1の方向に回動することにより開き、また、矢印A2の方向に回動することにより閉じる。なお、
図2に示す例では、媒体収納庫11は、前面に、作業者によって把持される取っ手34を備えている。
【0042】
<媒体収納庫の内部の構成>
以下、
図3を参照して、媒体収納庫11の内部の構成につき説明する。
図3は、媒体収納庫11の内部の構成を示す図である。
図3は、媒体収納庫11の筺体31を
図2に示すX1−X1線に沿って切断して得られる断面の形状を示している。
【0043】
図3に示すように、媒体収納庫11の内部は、媒体収納庫11のセンタCLを中心にして、左右対称な構成になっている。媒体収納庫11は、内部に、紙幣を収納する空間(以下、「収納空間」と称する)SPを備えている。また、媒体収納庫11は、収容部33の内部の底に、収納空間SPの底を構成する平坦面36を備えている。平坦面36は、媒体(紙幣)を円滑に走行させるために形成されている。以下、平坦面36を「媒体走行面36」と称する。
【0044】
媒体収納庫11は、内部に、ロアガイド41、サイドガイド51、及び、アッパーガイド61を備えている。
ロアガイド41は、収納空間SPの底に配置され、かつ、収納空間SPの内部に収納される紙幣を下から支持するガイド部材である。ロアガイド41は、樹脂材によって形成することが可能であるが、好ましくは、一定以上の強度を確保するために、金属材によって構成されているとよい。
サイドガイド51は、収納空間SPの横に配置され、かつ、収納空間SPの内部に収納される紙幣の左右方向の位置を規定するガイド部材である。サイドガイド51は、樹脂材又は金属材によって構成されている。
アッパーガイド61は、収納空間SPの上方に配置され、かつ、紙幣の上下方向の位置を規定するガイド部材である。アッパーガイド61は、樹脂材又は金属材によって構成されている。
【0045】
ロアガイド41、サイドガイド51、及び、アッパーガイド61は、収納空間SPのサイズを規定している。本実施形態では、2つのロアガイド41R,41L、2つのサイドガイド51R,51L、及び、2つのアッパーガイド61R,61Lが、それぞれ、センタCLの右側と左側とに配置されている。ただし、ロアガイド41R,41Lは、一体の部材として構成することができる。
【0046】
本実施形態では、2つのロアガイド41R,41Lが、媒体走行面36よりも上に突出しないように、収納空間SPの底に固定設置されている。そして、右側のサイドガイド51Rが、収納空間SPの右側を規制するように、右側のロアガイド41Rの後記する下方平坦面43a(
図7(a)参照)の上に取り付けられている。また、左側のサイドガイド51Lが、収納空間SPの左側を規制するように、左側のロアガイド41Lの後記する下方平坦面43a(
図7(a)参照)の上に取り付けられている。
【0047】
右側のサイドガイド51Rは、後記するように、右側のロアガイド41Rに対して取り付け及び取り外しが容易な構成になっている。同様に、左側のサイドガイド51Lは、左側のロアガイド41Rに対して取り付け及び取り外しが容易な構成になっている。
【0048】
媒体収納庫11は、サイドガイド51R,51Lの左右方向の位置を調整(変更)可能なサイドガイド調整機構40を有している。サイドガイド調整機構40の詳細については、後記する。
【0049】
また、媒体収納庫11の内部の収納空間SPの上方には、アッパーガイド61を上下方向に配置可能な空間が確保されている。媒体収納庫11は、異なる長さの図示せぬ固定部材を用いることにより、アッパーガイド61の上下方向の位置を適宜変更することができる。
【0050】
このような媒体収納庫11は、収納空間SPの内部に収納される紙幣のサイズに合わせて、2つのサイドガイド51R,51Lの左右方向の位置、及び、2つのアッパーガイド61R,61Lの上下方向の位置を調整(変更)することが可能な構成になっている。
【0051】
容器部33は、収納空間SPの内部に、紙幣の短手方向側辺を上下方向に起立させた状態で、多数枚の紙幣を前後方向に重ねて収納する構成になっている。容器部33は、内部に、押板38(
図4参照)及び分離部39(
図4参照)を備えている。押板38は、紙幣を分離部39の方向に押圧する板状の部材である。分離部39は、出金時に、多数枚の紙幣を1枚ずつに分離する機構である。押板38は、紙幣の前方に配置されており、一方、分離部39は、紙幣の後方に配置されている。
【0052】
押板38は、図示せぬ付勢部材によって付勢されており、収納部SPに収納された各紙幣とともに分離部39の方向に移動する。分離部39は、押板38とともに移動してきた各紙幣を1枚ずつに分離して、図示せぬ開口部を介して搬送路8(
図1参照)に繰り出す。図示せぬ開口部は、容器部33の後端部分の下方付近に形成されている。
【0053】
図4に示す例では、押板38は、略T字状の形状を呈している。そして、押板38は、右側のサイドガイド51Rの上、2つのサイドガイド51,41Lの間、及び、左側のサイドガイド51Lの上に亘って延在するように配置されている。このような押板38は、図示せぬ付勢部材によって付勢されて分離部39の方向に向かって移動するときも、サイドガイド51,41Lに衝突することなく、移動することができる。
【0054】
<サイドガイド調整機構の全体の構成>
以下、
図4〜
図6を参照して、サイドガイド調整機構40の全体の構成につき説明する。
図4〜
図6は、それぞれ、サイドガイド調整機構40の全体の構成を示す図である。
図4は、右斜め上方向から見たサイドガイド調整機構40の構成を示している。
図5は、上方向から見たサイドガイド調整機構40の構成を示している。
図6は、右方向から見たサイドガイド調整機構40の構成を示している。なお、
図5及び
図6では、
図4に示す押板38及び分離部39を省略して示している。
【0055】
図4〜
図6に示すように、サイドガイド調整機構40は、複数個の調整用孔44と1乃至複数個の引っ掛け孔45とがロアガイド41に形成されており、また、突起部54(
図10(b)参照)と鉤状のフック部55(
図10(b)参照)とがサイドガイド51の下面52bに形成された構成になっている。
【0056】
「調整用孔44」は、サイドガイド51の左右方向の位置を調整するための孔である。調整用孔44は、前後方向に延在するとともに、左右方向に平行に並ぶように、ロアガイド41の後記する下方平坦部43(
図8(b)参照)に複数個形成されている。
「引っ掛け孔45」は、サイドガイド51を引っ掛けるための孔である。引っ掛け孔45は、左右方向に延在するように、ロアガイド41の後記する下方平坦部43(
図8(b)参照)に1乃至複数個形成されている。
「突起部54」は、調整用孔44に係合させるための部位である。突起部54は、前後方向に延在するとともに、サイドガイド51の下面52bから下方に突出するように、下面52bに1乃至複数個形成されている(
図10(b)参照)。
「フック部55」は、引っ掛け孔45(厳密には、引っ掛け孔45の周囲)に係合させるための部位である。フック部55は、左右方向に延在するとともに、サイドガイド51の下面52bから下方に鉤状に突出するように、下面52bに1乃至複数個形成されている(
図10(b)参照)。
【0057】
本実施形態では、「調整用孔44」は、下方平坦部43の上面43aから下面43bに貫通するように形成されている(
図8(b)参照)。ただし、「調整用孔44」は、下方平坦部43の厚さがサイドガイド51を十分に保持するだけの厚さになっている場合に、下方平坦部43の上面43aから下面43bに貫通しないように形成することができる。
【0058】
ここでは、収納空間SPに収納されることが予想される紙幣のサイズに応じて、例えば、2行9列の合計18個の調整用孔44(
図8(a)参照)がロアガイド41に形成されているものとして説明する。また、2行2列の合計4個の突起部54(
図10(c)参照)がサイドガイド51の下面52bに形成されているものとして説明する。
【0059】
各調整用孔44の左右方向の間隔は、各突起部54の左右方向の間隔に合わせて形成されている。つまり、左右方向の各調整用孔44は、突起部54の列数分(ここでは、2列分)で1組となる複数組の孔対を構成している。そして、左右方向の各組の調整用孔44同士の間隔は、左右方向の突起部54同士の間隔と同じ値に設定されている。
【0060】
このようなサイドガイド調整機構40は、サイドガイド51を左右方向にずらした場合に、各突起部54をいずれかの組の調整用孔44の中に選択的に挿入可能な状態になる。したがって、サイドガイド調整機構40は、サイドガイド51の左右方向の位置を調整(変更)することができる。
【0061】
ただし、調整用孔44や突起部54の行数や列数は、運用に応じて適宜変更することができる。また、これらの数を変更した場合に、各突起部54に対応する調整用孔44の孔対の組み合わせは、変化する。
【0062】
また、本実施形態では、「引っ掛け孔45」は、下方平坦部43の上面43aから下面43bに貫通するように形成されている(
図8(b)参照)。ここでは、3個の引っ掛け孔45がロアガイド41に形成されているものとして説明する(
図8(b)参照)。また、3個のフック部55がサイドガイド51の下面52bに形成されているものとして説明する(
図10(b)参照)。ただし、引っ掛け孔45やフック部55の個数は、運用に応じて適宜変更することができる。
【0063】
サイドガイド51は、突起部54を調整用孔44の中に挿入させた状態で、前後方向(
図6に示す例では、後方向)に摺動させることができる。そして、サイドガイド51は、このような操作を行うことにより、
図6に示すように、サイドガイド51のフック部55を、ロアガイド41の引っ掛け孔45と係合させることができる。
【0064】
このとき、サイドガイド調整機構40は、サイドガイド51の突起部54がロアガイド41の調整用孔44に係合することによって、サイドガイド51の左右方向の位置を規定する。
【0065】
また、このとき、サイドガイド調整機構40は、サイドガイド51の下面52b(
図10(b)参照)がロアガイド41の下方平坦部43の上面43a(
図8(a)参照)に当接するとともに、サイドガイド51のフック部55がロアガイド41の引っ掛け孔45に係合することによって、サイドガイド51の上下方向の位置を規定する。
【0066】
また、このとき、サイドガイド調整機構40は、サイドガイド51のフック部55の鉤部分の内側に形成された前端面がロアガイド41の下方平坦面部43の前端部分に突き当たることによって、サイドガイド51の前後方向の位置を規定する。
その結果、サイドガイド51は、ロアガイド41に強固に取り付けられる。
【0067】
<ロアガイドの詳細な構成>
以下、
図7〜
図8を参照して、ロアガイド41の詳細な構成につき説明する。
図7〜
図8は、それぞれ、ロアガイド41の構成を示す図である。
図7(a)〜
図7(c)は、それぞれ、左斜め上方向、前方向、左方向から見た、左側のロアガイド41Lの構成を示している。また、
図8(a)及び
図8(b)は、それぞれ、右斜め上方向から見た左側のロアガイド41Lの構成、及び、左側のロアガイド41Lを
図8(a)に示すX2−X2線に沿って切断して得られる断面の形状を示している。なお、右側のロアガイド41Rは、左側のロアガイド41Lの左右を逆にした構成になっている。
【0068】
図7〜
図8に示すように、ロアガイド41は、上下方向に高低差を付けて配置された2つの平坦面42a,43aを備えている。以下、平坦面42aを「上方平坦面42a」と称し、平坦面43aを「下方平坦面43a」と称する。また、上方平坦面42aが形成されている部位42を「上方平坦面部42」と称し、下方平坦面43aが形成されている部位43を「下方平坦面部43」と称する。
【0069】
上方平坦面42aは、ロアガイド41が収容部33の内部に配置されたときに、媒体走行面36と同一面になるように形成されている。上方平坦面42aは、紙幣と接触する媒体接触面として機能する。
【0070】
下方平坦面部43aは、上方平坦面42aよりも下方に配置されている。下方平坦面43aは、サイドガイド51が取り付けられるサイドガイド取付面として機能する。
【0071】
下方平坦面43aには、調整用孔44と引っ掛け孔45とが形成されている。
引っ掛け孔45の周囲には、下方平坦面43aの強度を補強するための補強部46が、下方平坦面43aから上方向に突出するように形成されている。本実施形態では、補強部46は、下方平坦面部43の引っ掛け孔45の周囲の部分を上方向に折り曲げることによって形成されているものとして説明する。補強部46の高さは、上方平坦面42aと下方平坦面部43aとの高低差(
図7(b)参照)よりも低くなっている。
【0072】
<サイドガイドの詳細な構成>
以下、
図9〜
図11を参照して、サイドガイド51の詳細な構成につき説明する。
図9〜
図10は、それぞれ、サイドガイド51の構成を示す図である。
図11は、サイドガイド51の端部の構成を示す図である。
図9(a)及び
図9(b)は、それぞれ、左斜め上方向から見た左側のサイドガイド51Lの構成、及び、左側のサイドガイド51Lの前端部分の構成を示している。また、
図10(a)〜
図10(d)は、それぞれ、上方向、右方向、下方向、
図10(b)に示す矢印A方向から見た左側のサイドガイド51Lの構成を示している。また、
図10(e)は、左側のサイドガイド51Lを
図10(a)に示すX3−X3線に沿って切断して得られる断面の形状を示している。また、
図11は、左側のサイドガイド51Lを
図10(a)に示すX4−X4線に沿って切断して得られる断面の形状を示している。なお、右側のサイドガイド51Rは、左側のサイドガイド51Lの左右を逆にした構成になっている。
【0073】
図9〜
図10に示すように、サイドガイド51は、水平方向に延在する水平部52と水平部52から垂直方向に突出する垂直部53とを備えており、略L字状の形状を呈している。
【0074】
水平部52の上面52aは、紙幣と接触する媒体接触面として機能する。また、水平部52の下面52bは、ロアガイド41の下方平坦面43aと当接するロアガイド当接面として機能する。
【0075】
紙幣は、水平部52の上面52aの上を走行する。本実施形態では、水平部52の上面52aには、紙幣との摩擦を軽減するための段差部(レール)が形成されている(
図9(b)参照)。また、紙幣は、垂直部53の収納空間SPに臨む側に形成された平坦面53aによって左右方向の位置が規制されている。以下、平坦面53aを「横方向規制面53a」と称する。
【0076】
水平部52の上面52aから下面52bまでの厚さは、ロアガイド41の上方平坦面42aと下方平坦面43aとの高低差(
図7(b)参照)と同等の厚さになっている。
垂直部53の高さは、押板38(
図4参照)に衝突しない高さになっている。
【0077】
本実施形態では、垂直部53の後端部分は、水平部52よりも長く形成されている(
図9(a)参照)。そして、垂直部53の後端部分は、分離部39(
図4参照)の内部に入り込むように配置される。これにより、媒体収納庫11は、分離部39が紙幣を搬送路8(
図1参照)に繰り出す際に、紙幣が垂直部53の横方向規制面53aよりも外側に出てしまい、その結果、紙幣が斜行してしまうことを防止している。そのため、媒体収納庫11は、紙幣を搬送路8(
図1参照)に良好な状態で安定して繰り出すことができる。
【0078】
水平部52の下面52bには、突起部54(
図10(b)参照)とフック部55(
図10(b)参照)とが形成されている。
突起部54の幅は、突起部54をロアガイド41の調整用孔44(
図7(b)参照)の中に挿入することができるように、調整用孔44の幅と同等か若干短い幅になっている。また、突起部54の長さと高さは、突起部54を調整用孔44に係合させることができる程度の長さと高さになっている。
一方、フック部55の幅は、フック部55をロアガイド41の引っ掛け孔45に係合させることができる程度の幅になっている。また、フック部55の長さは、フック部55を引っ掛け孔45の中に挿入させることができるとともに、フック部55を引っ掛け孔45に係合させることができる程度の長さになっている。また、フック部55の鉤部分の高さ(径)は、ロアガイド41の下方平坦面部43の厚さ(すなわち、
図7(b)に示す上面43aから下面43bまでの距離)と同等の高さになっている。
【0079】
サイドガイド51は、突起部54が調整用孔44の中に挿入された状態で、フック部55が引っ掛け孔45(厳密には、引っ掛け孔45の周囲部分)に係合することによって、ロアガイド41の下方平坦面43a(
図7(a)参照)の上に取り付けられる。
【0080】
サイドガイド51のフック部55の鉤部分の周囲には、ロアガイド41の補強部46(
図7(a)参照)を受け入れるための切欠部56(
図10(b)参照)が形成されている。切欠部56は、サイドガイド51の下面53bの左右方向の全域に亘って形成されている。切欠部56の長さと高さは、ロアガイド41の補強部46(
図7(a)参照)を受け入れることができる程度の長さと高さになっている。
【0081】
サイドガイド51は、前端部及び後端部のいずれか一方又は双方に、上下方向に回動する回動部57(
図9(b)及び
図11参照)を備えている。本実施形態では、回動部57がサイドガイド51の水平部52の前端部に設けられているものとして説明する。
【0082】
図11に示すように、回動部57は、薄肉状に形成されており、回動部57の周囲に形成された厚肉状の部位58を回動支点にして、上下方向(矢印A57a及び矢印A57bの方向)に回動する構成になっている。以下、部位58を「回動支点58」と称する。
【0083】
回動部57は、先端に、上方に突出する部位57aと、下方に突出する部位57bとを備えている。部位57aは、作業者が指等を引っ掛けて回動部57を操作する操作部として機能する。以下、部位57aを「操作部57a」と称する。部位57bは、その先端に形成された平坦面で周囲の部材と当接する当接部として機能する。以下、部位57bを「当接部57b」と称する。
【0084】
回動部57の周囲には、回動部57を保護するための保護部59が配置されている。保護部59は、板状に形成されている。保護部59は、作業者が回動部57の操作部57aを操作し易いように、先端側が低くなるように傾斜した形状になっている。サイドガイド調整機構40は、保護部59によって、意図せぬ外力が回動部57に加わることを防止して、保護部59が破損することを防止することができる。
【0085】
図11に示すように、容器部33の内部の底には、溝37a,37bが形成されている。溝37aは、回動部57の当接部57bが入り込む部位である。溝37aの前端側に形成された平坦面137は、回動部57の当接部57bの先端面に突き当たる突当部として機能する。溝37bは、フック部55等が入り込む部位である。容器部33の溝37aよりも前方の部分は、肉厚状の肉厚部33aとなっている。
【0086】
<サイドガイド調整機構の動作>
以下、主に、
図7(a)、
図10(b)、及び、
図11を参照して、サイドガイド調整機構40の動作につき説明する。
【0087】
サイドガイド調整機構40は、作業者が以下の操作を行うことにより、サイドガイド51の位置の調整や取り付けを容易に行うことができる。
【0088】
まず、作業者は、媒体収納庫11に収納される紙幣のサイズに応じて、サイドガイド51の突起部54に係合させる調整用孔44を複数個の中から選択し、突起部54を選択された調整用孔44の中に挿入させる。この状態では、回動部57の当接部57bは、容器部33の肉厚部33aの上に乗り上げた状態になっている。
【0089】
次に、作業者は、その状態で、サイドガイド51を前方向(
図11に示す矢印A51aの方向)に摺動させる。このとき、サイドガイド51のフック部55が、ロアガイド41の引っ掛け孔45と係合する。これによって、サイドガイド51は、ロアガイド41に取り付けられる。
【0090】
このとき、容器部33の肉厚部33aの上に乗り上げていた回動部57の当接部57bが、溝37aの中に入り込む。これにより、サイドガイド51は、回動部57の当接部57bの先端面が溝37aの平坦面137に突き当たる状態になる。また、サイドガイド51は、フック部55の鉤部分の内側に形成された前端面がロアガイド41の下方平坦面部43の前端部分に突き当たる状態になる。
【0091】
したがって、このとき、サイドガイド51は、回動部57の当接部57bの先端面とフック部55の鉤部分の内側の前端面とが同時に周囲の部材に突き当たった状態になる。そのため、サイドガイド51は、前後方向に移動させることが不能な状態になる。本実施形態では、サイドガイド調整機構40は、
図11に示す距離L55と距離L56とをほぼ同じ値に設定することによって、このような状態を実現している。なお、「距離L55」は、回動部57の当接部57bの先端面からフック部55の鉤部分の内側の前端面までの距離である。また、「距離L56」は、溝37aの平坦面137からロアガイド41の引っ掛け孔45の後端側の平坦面までの距離である。
【0092】
また、サイドガイド調整機構40は、作業者が以下の操作を行うことにより、サイドガイド51の取り外しを容易に行うことができる。ここでは、サイドガイド51がロアガイド41に取り付けられているものとして説明する。
【0093】
まず、作業者は、回動部57の操作部57aを矢印A57aの方向に回動させる。このとき、回動部57の当接部57bが回動支点58を中心にして矢印A57aの方向に回動する。これにより、回動部57の当接部57bの先端面が溝37aの平坦面137から離れる。その結果、サイドガイド51は、前後方向に移動させることが可能な状態になる。
【0094】
次に、作業者は、サイドガイド51を後方向(
図11に示す矢印A51aとは逆の方向)に摺動させる。このとき、サイドガイド51のフック部55とロアガイド41の引っ掛け孔45との係合が解除される。これによって、サイドガイド51は、ロアガイド41から取り外される。
【0095】
なお、サイドガイド調整機構40は、仮に、サイドガイド51の位置の調整や取り付けを行っていないときに、意図せぬ外力Fが回動部57に加わることがあったとしても、回動部57を矢印A57b(
図11参照)の方向に回動させる。矢印A57bの方向は、回動部57の当接部57bを溝部37aの平坦面137に食い込ませる方向である。そのため、サイドガイド調整機構40は、仮に、操作者が操作中に誤ってサイドガイド51に触れる等してしまうことがあったとしても、サイドガイド51がロアガイド41から外れることを防止することができる。
【0096】
このようなサイドガイド調整機構40は、サイドガイド51の突起部54をロアガイド41の調整用孔44に係合させることにより、サイドガイド51の左右方向の位置を規定している。また、サイドガイド調整機構40は、サイドガイド51のフック部55をロアガイド41の引っ掛け孔45に係合させることにより、サイドガイド51の上下方向の位置を規定している。また、サイドガイド調整機構40は、サイドガイド51の回動部57の当接部57bの先端面を容器部33の平坦面137に当接させることにより、サイドガイド51の前後方向の位置を規定している。これにより、サイドガイド調整機構40は、ドライバー等の工具を用いることなく、サイドガイド51の左右方向の位置の調整や取り付けを容易に行うことができる。
【0097】
このようなサイドガイド調整機構40は、換言すれば、以下のような構成になっている。
すなわち、ロアガイド41及びロアガイド41を支持する容器部33のいずれか一方又は双方は、サイドガイド51の左右方向の位置を規制する左右方向規制部(調整用孔44)と、サイドガイド51の上下方向の位置を規制する上下方向規制部(引っ掛け孔45)と、サイドガイド51の前後方向の位置を規制する前後方向規制部(容器部33の平坦面137)とを備える構成となっている。また、サイドガイド51は、左右方向規制部(調整用孔44)に係合する左右方向係合部(突起部54)と、上下方向規制部(引っ掛け孔45)に係合する上下方向係合部(フック部55)と、前後方向規制部(容器部33の平坦面137)に係合する前後方向係合部(回動部57の当接部57bの先端面)とを備える構成となっている。
【0098】
以上の通り、本実施形態に係る媒体収納庫11によれば、工具を用いることなく、サイドガイド51の位置の調整やサイドガイド51のロアガイド41への取り付けを容易に行うことができる。
また、媒体収納庫11によれば、サイドガイド51の位置の調整を可能な限り簡略化した構成になっているため、装置に関する知識のない人物であっても、サイドガイドの位置の調整や取り付けの作業時間を短縮したり、サイドガイドの取り付けミスを低減したりすることができる。
また、媒体収納庫11によれば、ねじ等の固定部材が不要であるため、部品の数を削減することができる。
【0099】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0100】
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、実施形態の構成に他の構成を追加したり、置き換えたりすることができる。また、本発明は、実施形態の構成から一部の構成を削除することができる。
【0101】
例えば、本発明は、キャッシュディスペンサ(CD)や現金自動預け払い機(ATM)等の現金取扱装置だけでなく、発券機や、その他の装置に利用することができる。
【0102】
また、例えば、ロアガイド41は、
図12に示すロアガイド41Aのように変形することができる。
図12は、変形例に係るロアガイド41Aの構成を示す図である。
図12に示すように、ロアガイド41Aは、前記した実施形態のロアガイド41(
図7(a)参照)と比較すると、前端部側に、延長部分47を備えており、突当用孔48が延長部分47に形成されている点で、相違している。突当用孔48の前端側に形成された平坦面は、容器部33の溝37aの平坦面137(
図11参照)の代わりに、回動部57の当接部57bの先端面に突き当たる突当部として機能する。サイドガイド調整機構40は、変形例に係るロアガイド41Aを用いることにより、溝37aを容器部33に形成しなくともよい構成にすることができる。
【0103】
また、例えば、前記した実施形態では、ロアガイド41R,41Lは、別体の部材として構成されている。しかしながら、ロアガイド41R,41Lは、一体の部材として構成することができる。
また、例えば、ロアガイド41は、容器部33と一体に形成することができる。