【文献】
小平剛央, 外1名,“応答曲面法を用いた複合領域最適化による自動車車体構造の軽量化検討”,電気学会研究会資料,日本,一般社団法人電気学会,2013年 9月25日,p.35-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち設計変数として定められた複数の入力パラメータと、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値として定められた複数の出力パラメータとの2種類のデータを対象とした構造体の近似モデルの作成方法であって、
コンピュータが、
前記複数種の設計変数および前記各設計変数の定義域、ならび前記複数種の特性値を設定する第1の工程と、
前記複数種の設計変数と前記複数種の特性値との間の非線形応答関係を定める第2の工程と、
前記第2の工程で定めた前記非線形応答関係を用いて、前記複数種の設計変数の値と前記特性値で構成される特性値空間での出力値を計算する第3の工程と、
前記特性値空間の少なくとも1つの出力値を設定し、前記設定された出力値における入力パラメータ値を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定し、追加出力値を取得する第4の工程と、
前記追加出力値と前記第3の工程で得られた出力値とを用いて特性値を目的関数として、近似モデルを作成する第5の工程と、
前記近似モデルを用いて、多目的最適化計算を実施する第6の工程とを実行することを特徴とする構造体の近似モデルの作成方法。
構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち設計変数として定められた複数の入力パラメータと、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値として定められた複数の出力パラメータとの2種類のデータを対象とした構造体の近似モデルの作成装置であって、
前記複数種の設計変数および前記各設計変数の定義域、ならび前記複数種の特性値を設定し、前記複数種の設計変数と前記複数種の特性値との間の非線形応答関係を定める条件設定部と、
前記非線形応答関係を用いて、前記複数種の設計変数の値と前記特性値で構成される特性値空間での出力値を計算し、前記特性値空間の少なくとも1つの出力値を設定し、前記設定された出力値における入力パラメータ値を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定し、追加出力値を取得し、前記追加出力値と前記特性値空間の前記出力値とを用いて特性値を目的関数として、近似モデルを作成し、作成した近似モデルを用いて、多目的最適化計算を実施する演算部と、
パレート解を抽出するパレート解探索部とを有することを特徴とする構造体の近似モデルの作成装置。
前記演算部は、前記特性値空間において、出力値が疎の領域を求めて、前記疎の領域から出力値を選択し、選択された出力値における入力パラメータ値を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定し、追加出力値を取得する請求項7に記載の構造体の近似モデルの作成装置。
前記演算部に、前記近似モデルに前記追加出力値と前記特性値空間の前記出力値を用いて検証計算を行わせ、前記検証計算の結果が所定の判定条件を満たす場合には、前記演算部で多目的最適化計算を実施させ、前記パレート解探索部でパレート解を抽出し、
前記検証の結果が所定の判定条件を満たさない場合には、前記演算部に別の追加出力値を取得させて、前記別の追加出力値を用いて近似モデルを更新させる制御部を有する請求項7〜9のいずれか1項に記載の構造体の近似モデルの作成装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の構造体の近似モデル作成方法、構造体の近似モデル作成装置、および構造体の近似モデル作成方法をコンピュータ等で実行するためのプログラムを詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の構造体の近似モデル作成方法に利用される構造体の近似モデル作成装置を示す模式図である。
本実施形態の構造体の近似モデル作成方法は、
図1に示す構造体の近似モデル作成装置10が用いられる。以下、構造体の近似モデル作成装置10のことを、近似モデル作成装置10という。
近似モデル作成装置10は、コンピュータ等のハードウェアを用いて構成される。上述のように本発明の近似モデル作成方法には、
図1に示す近似モデル作成装置10が用いられるが、近似モデル作成方法をコンピュータ等のハードウェアおよびソフトウェアを用いて実行することができれば近似モデル作成装置10に限定されるものではない。
【0019】
本実施形態では、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち設計変数として定められた複数の入力パラメータと、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値として定められた複数の出力パラメータの2種類のデータを組としたデータセットを対象としている。例えば、設計変数は、特性値空間(目的関数空間)で散布図等の可視化情報として表示される。
【0020】
近似モデル作成装置10は、処理部12と、入力部14と、表示部16とを有する。処理部12は、条件設定部20、モデル作成部22、演算部24、パレート解探索部26、メモリ28、表示制御部30および制御部32を有する。この他に図示はしないがROM等を有する。
処理部12は、制御部32により制御される。また、処理部12において条件設定部20、モデル作成部22、演算部24、パレート解探索部26はメモリ28に接続されており、条件設定部20、モデル作成部22、演算部24、およびパレート解探索部26のデータがメモリ28に記憶される。
以下に説明する構造体の近似モデルの作成方法において、処理部12の各部で種々の処理がなされる。以下の説明では制御部32により処理部12の各部で種々の処理がなされることの説明を省略しているが、各部の一連の処理は制御部32により制御される。メモリ28には、後述する各種の判定条件も記憶されている。制御部32がメモリ28から判定条件を読み出して、演算部24で得られた結果と比較し、判定結果に基づいて各部の動作を決定し、決定した動作に基づいて各部を動作させる。
【0021】
入力部14は、マウスおよびキーボード等の各種情報をオペレータの指示により入力するための各種の入力デバイスである。表示部16は、例えば、近似モデル作成方法で得られた結果等を表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。また、表示部16には各種情報を出力媒体に表示するためのプリンタ等のデバイスも含まれる。
【0022】
近似モデル作成装置10は、ROM等に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)を、制御部32で実行することにより、条件設定部20、モデル作成部22、演算部24、およびパレート解探索部26の各部を機能的に形成する。近似モデル作成装置10は、上述のように、プログラムが実行されることで各部位が機能するコンピュータによって構成されてもよいし、各部位が専用回路で構成された専用装置であってもよい。
【0023】
条件設定部20は、本実施形態の構造体の近似モデル作成方法により、パレート解を目的関数空間で散布図等の可視化情報として表示する際に必要な各種の条件、情報が入力され、設定する。各種の条件、情報は、入力部14を介して入力される。条件設定部20で設定する各種の条件、情報はメモリ28に記憶される。
【0024】
条件設定部20には、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち設計変数として定めた複数のパラメータが設定される。なお、設計変数のパラメータには、荷重および境界条件等のばらつき因子、ならびに製品の場合には、大きさおよび質量等の制約条件を設定してもよい。
また、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値(目的関数)として定めた複数のパラメータが設定される。特性値には、コスト等の物理的および化学的な特性値以外の、構造体および構造体を構成する材料を評価する指標を用いてもよい。
構造体および構造体を構成する材料は、構造体単体ではなく、構造体を構成するパーツ、構造体のアッセンブリ形態等の構造体を含むシステム全体、またはその一部を対象としてもよい。
【0025】
条件設定部20に設定される複数種の特性値は、評価しようとする物理量、すなわち、目的関数である。目的関数は、性能として好ましい方向があり、値が大きくなる、小さくなる、または所定の値に近づく等がある。また、目的関数については、上述の好ましい方向以外に、好ましい方向とは反対の好ましくない方向もある。
構造体がタイヤである場合、特性値はタイヤの特性値である。この場合、特性値としては、タイヤ性能として評価しようとする物理量であり、例えば、操縦安定性の指標となるスリップ角ゼロ近傍における横力であるCP(コーナリングパワー)、乗心地性の指標となるタイヤの1次固有振動数、転動抵抗の指標となる転がり抵抗、操縦安定性の指標となる横ばね定数、耐摩耗性の指標となるタイヤトレッド部材の摩耗エネルギー、燃費性能等が挙げられる。これ以外に、タイヤの物理量の例として、形状および寸法値がある。形状としては、例えば、断面形状である。寸法値としては、例えば、タイヤの幅、タイヤの外径等である。タイヤの物理量の例として、形状または寸法値に加えて、たわみ量、接地圧分布、転がり抵抗およびコーナリング特性等がある。
【0026】
設計変数は、構造体の形状、構造体の内部構造および材料特性等を規定するものである。タイヤの場合、設計変数は、タイヤの材料挙動、タイヤの形状、タイヤの断面形状、タイヤの固有振動モードおよびタイヤの構造のうち、複数のパラメータである。設計変数としては、例えば、タイヤのトレッド部におけるクラウン形状を規定する曲率半径、タイヤ内部構造を規定するタイヤのベルト幅寸法等が挙げられる。これ以外にも、例えば、トレッド部における材料特性を規定するフィラー分散形状、およびフィラー体積率等が挙げられる。
制約条件は、目的関数の値を所定の範囲に制約したり、設計変数の値を所定の範囲に制約するための条件である。
また、構造体がタイヤである場合、タイヤの負荷荷重、タイヤの転動速度を初めとする走行条件、タイヤが走行する路面条件、例えば、凹凸形状、摩擦係数等、車両の走行シミュレーションに用いるための車両諸元の情報等が設定される。
【0027】
また、条件設定部20に、複数種の設計変数と複数種の特性値との間の非線形応答関係を定めるための情報が設定される。この非線形応答関係には、例えば、FEM等の数値シミュレーション、理論式等が含まれる。
条件設定部20では、非線形応答関係により生成するモデル、そのモデルの境界条件、FEM等の数値シミュレーションする場合には、そのシミュレーション条件、シミュレーションにおける制約条件を設定する。更には、パレート解を得るための最適化条件、例えば、パレート解探索のための条件等を設定する。
【0028】
パレート解探索のための条件は、パレート解を探索するための手法、パレート解探索における各種条件である。本実施形態では、例えば、パレート解を探索するための手法として、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いることができる。一般に、特性値(目的関数)の増大と共に、遺伝的アルゴリズムの探索能力が低下することが知られている。それを解決する方法の一つが、個体数を増加させる方法である。
これ以外に、条件設定部20に設計変数の定義域を設定する。設計変数の定義域は、離散的な水準値でも、定数であってもよい。なお、複数種の設計変数があるため、全ての設計変数に対して、それぞれに離散的な水準値を設定し、残りの設計変数については定義域を定数として、設計変数の組合せをコンピュータが変更しながら特性値を算出し、後述するパレート解の抽出を行ってもよい。
【0029】
設計変数は、例えば、ラテンハイパーキューブ法(ラテン超方格法)を用いて、その値、例えば、設計値が条件設定部20により設定される。ラテンハイパーキューブ法は設計変数空間を離散的に満遍なく網羅するサンプル手法である。このため、設計変数空間において満遍なく設計値を設定することができる。ラテンハイパーキューブ法以外に、例えば、直交表、モンテカルロ法等を用いて設計変数の値を設定することもできる。
なお、複数種の設計変数があるため、一部の設計変数に対して、それぞれに離散的な水準値を設定し、残りの設計変数における定義域を定数として、後述するパレート解の抽出を行ってもよい。
多目的最適化計算に関しては、入力変数と出力変数の非線形関係(応答曲面)を用いて逐次的に探索する手法および最適化アルゴリズムに従い入力変数を変化させながら出力値を算出して探索する手法のどちらを用いてもよい。
【0030】
モデル作成部22は、設定された非線形応答関係に基づいて、各種の計算モデルを作成するものである。非線形応答関係は、上述のようにFEM等の数値シミュレーションが含まれており、この場合、モデル作成部22で、設計変数を表わす設計パラメータ、特性値を表わす特性値パラメータに応じたメッシュモデルが生成される。また、理論式等の場合にも、設計パラメータ、特性値パラメータに応じた理論式等が作成される。なお、構造体がタイヤの場合には、タイヤモデルが作成される。演算部24でタイヤモデルを用いてシミュレーション演算がなされる。
【0031】
なお、モデル作成部22で作成されるタイヤモデルは、条件設定部20で設定された各種類の設計パラメータを用いて作成されるが、タイヤモデルの作成には公知の作成方法を用いることができる。なお、タイヤモデルは、少なくとも、このタイヤモデルを転動させる対象である路面モデルも併せて生成する。また、タイヤが装着されるリム、ホイール、およびタイヤ回転軸を再現するものをタイヤモデルとしてもよい。また、必要に応じて、タイヤが装着される車両を再現するモデルをタイヤモデルに組み込んでもよい。この際、タイヤモデル、リムモデル、ホイールモデル、およびタイヤ回転軸モデルを、予め設定された境界条件に基づいて一体化したモデルを作成することもできる。
また、解析に用いるタイヤモデルの形態は、特に限定されるものではなく、溝のないスムースタイヤでも主溝のみのものでもパターン付きであってもよい。
【0032】
なお、モデル作成部22で作成されるタイヤモデルは、条件設定部20で設定された各種類の設計パラメータを用いて作成されるが、タイヤモデルの作成には公知の作成方法を用いることができる。
例えば、タイヤを複数の節点で構成される有限個の要素に分割して、タイヤモデルを作成する。粘弾性体として解析モデル化してもよいし、さらには剛体として解析モデル化してもよい。
タイヤモデルを構成する要素は、例えば、2次元平面では四辺形要素、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素、三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等のコンピュータで解析可能な要素とする。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標を用いて、2次元モデルでは2次元座標を用いて逐一特定される。
【0033】
これら各モデルは数値計算可能な離散化モデルであればよく、例えば、公知の有限要素法(FEM)に用いるための有限要素モデル等であればよい。なお、タイヤモデルを用いて、例えば、タイヤウエット性能を初めとするタイヤ性能を最適化するタイヤ設計案を求める場合等、路面モデルとタイヤモデルの他に、路面上に存在する介在物を再現するモデルを生成しておけばよい。例えば、介在物モデルとして、路面上の水、雪、泥、砂、砂利および氷等を再現する各種モデルを、数値計算可能な離散化モデルで生成しておけばよい。なお、路面モデルも、表面が平坦な路面を再現するモデルに限らず、必要に応じて、表面に凹凸を有する路面形状を再現するモデルであってもよい。
【0034】
演算部24は、モデル作成部22で作成された各種のモデルを用いて特性値を算出するものである。これにより、設計変数に対する特性値(出力値)が得られる。得られた特性値(出力値)は、メモリ28に記憶される。演算部24は、例えば、公知の有限要素ソルバーによるサブルーチンを実行することで機能するものである。
また、演算部24は、非線形応答関係を用いて、複数種の設計変数の値と特性値で構成される特性値空間での出力値(特性値)を計算する。そして、特性値で構成される特性値空間内で、少なくとも1つの出力値を設定し、設定された出力値における入力パラメータ値を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定し、追加出力値(追加サンプリング点)を取得し、追加出力値と特性値空間の出力値とを用いて、出力値である特性値を目的関数として、近似モデルを作成するものでもある。さらに、演算部24は、作成した近似モデルを用いて、多目的最適化計算を実施するものである。
上述の近似モデル(メタモデル)は、入出力の関係を近似する数学的モデルのことであり、パラメータを調整することにより、様々な入出力関係を近似できるものである。上述の近似モデルには、例えば、多項式モデル、クリギング、ニューラルネットワークおよび動径基底関数等を用いることができる。
【0035】
演算部24は、近似モデルに追加出力値と特性値空間の出力値を用いて交差検証等の検証計算を行うものでもある。
また、演算部24は、多目的最適化計算を実施して得られたパレート解を用いて、有限要素法を利用した実計算を実行させるものである。これ以外にも、演算部24は、近似モデルを用いることなく、有限要素法を用いて、設計変数と特性値の組合せで、特性値を算出するものである。
また、演算部24は、近似モデルを用いて多目的最適化計算を実施するものでもあり、多目的最適化計算結果からパレート解探索部26にて抽出したパレート解を用いて、規定した非線形関係を用いて実計算を実行させるものでもある。これ以外にも、演算部24は、近似モデルを用いることなく、有限要素法を用いて、設計変数と特性値の組合せで、特性値を算出するものでもある。多目的最適化計算手法としては、例えば進化計算手法の一つである遺伝的アルゴリズム(GA)を用いる。遺伝的アルゴリズムとしては、例えば、解集合を目的関数に沿って複数の領域に分割し、この分割した解集合毎に多目的GAを行うDRMOGA(Divided Range Multi-Objective GA)、NCGA(Neighborhood Cultivation GA),DCMOGA(Distributed Cooperation model of MOGA and SOGA)、NSGA(Non-dominated Sorting GA)、NSGA2(Non-dominated Sorting GA-II)、SPEAII(Strength Pareto Evolutionary Algorithm-II)法等の公知の方法を用いることができる。
【0036】
パレート解探索部26は、条件設定部20で設定されたパレート解探索の条件に応じて、演算部24で得られた近似モデルを用いた多目的最適化計算結果から、パレート解を探索し、パレート解を抽出するものである。得られたパレート解は、メモリ28に記憶される。
ここで、パレート解は、トレードオフの関係にある複数の特性値(目的関数)において、他の任意の解よりも優位にあるとはいえないが、より優れた解が他に存在しない解をいう。一般にパレート解は集合として複数個存在する。
パレート解探索部26は、例えば、パレートランキング法を用いてパレート解を探索する。
【0037】
パレート解探索部26では、例えば、ベクトル評価遺伝的アルゴリズム(Vector Evaluated Generic Algorithms:VEGA)、パレートランキング法、またはトーナメント法を用いた選択が行われる。遺伝的アルゴリズム(GA)以外にも、同じ進化計算手法として、例えば、焼きなまし法(SA)または粒子群最適化(PSO)を用いてもよい。
【0038】
本発明では、設計変数と特性値との間で定める非線形応答関係、すなわち、設計変数を用いて特性値を求める場合に利用されるものは、FEM等のシミュレーションに限定されるものではなく、上述のように理論式等を用いることもできる。
【0039】
表示制御部30は、条件設定部20に設定される設計変数、特性値等の各種のパラメータ、演算部24で得られた出力値およびパレート解を表示部16に表示させるものである。例えば、特性値の値、パレート解をメモリ28から読み出し、表示部16に表示させる。この場合、例えば、特性値を軸にとって、パレート解を散布図の形態で表示する。すなわち、特性値空間に設計変数を表示する。散布図以外にも、レーダチャートまたはバブルチャートの形態で表示することができる。
また、表示制御部30は、入力部14を介して入力される各種の情報、タイヤモデル、数値計算の結果、および最適解を表示部16に表示させることもできる。例えば、タイヤモデルをメモリ28から読み出し、表示部16に表示させる。
【0040】
制御部32は、上述のように、処理部12を制御するものであり、以下に示す近似モデル作成方法でなされる各種の工程を処理部12のモデル作成部22、演算部24、およびパレート解探索部26に行わせるものである。
近似モデル作成装置10では、形状または構造を変化させる際の入力ファイルにおいて、境界条件および解析ステップ等の共通した部分と節点座標値、補強材の配置角度および初期張力などの個々の形状によって異なる部分を分割し、共通部分に取り込むようなファイル形式を用いて自動化すること、すなわち、個別の情報をインクルードファイル化することにより、多数のタイヤ形状について検討を行う場合であっても容易にタイヤ形状の検討が可能である。
【0041】
次に、本実施形態の構造体の近似モデル作成方法の第1の例について説明する。
図2は、本発明の実施形態の構造体の近似モデル作成方法の第1の例を工程順に示すフローチャートである。
図3(a)は、設計変数の一例を示すグラフであり、(b)は、特性値1と特性値2の関係を示すグラフであり、(c)は、設計変数値の変更方法を模式的に示すグラフである。
【0042】
まず、
図2に示すように、対象となる構造体について設計変数、特性値(目的関数)、制約条件等の最適化条件を設定する(ステップS10)。例えば、構造体としては、サイズが195/65R15のタイヤが挙げられる。
設計変数として、例えば、タイヤの断面形状または構造を変化させる6つの設計変数φ1〜φ6を設定する。設計変数の設定方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ラテンハイパーキューブ法(ラテン超方格法)を用いて設計変数の設計値が設定される。この場合、例えば、
図3(a)に示すように設計変数空間において、設計変数の設計値が満遍なく設定される。
特性値としては、例えば、タイヤの物理特性としてタイヤ剛性、転がり抵抗、空気抵抗やコーナリング性能、摩擦エネルギー等がある。例えば、特性値1と特性値2の2つのタイヤ物理特性を目的関数として設定する。なお、特性値は2つ以上設定してもよい。
【0043】
設計変数(入力パラメータ)がタイヤの断面形状のパラメータであり、特性値(出力パラメータ)がタイヤ物理特性である2つの特性値である。タイヤの断面形状のパラメータ、2つの特性値が条件設定部20に設定される。例えば、特性値1は大きい値、特性値2は小さい値が要求される特性である。
本実施形態では、このような設定条件で近似モデル作成方法により、近似モデルが作成される。タイヤの断面形状のパラメータの値による特性値1および特性値2の変化を求める。
【0044】
次に、
図2に示すように、設計変数から特性値を求める際に用いる非線形応答を条件設定部20に設定する(ステップS12)。すなわち、設計変数と特性値との関係を定める。この非線形応答の種類は、例えば、メモリ28に記憶される。具体的には、タイヤの断面形状のパラメータと、特性値1および特性値2との関係を設定する。タイヤの断面形状のパラメータを入力とし、特性値1および特性値2を出力とした場合、設定する関係は、例えば、特性値1がタイヤの断面形状のパラメータを変数とする多項式等の非線形関数を用いて表現されるものである。また、特性値2がタイヤの断面形状のパラメータを変数とする多項式等の非線形関数を用いて表現されるものである。
【0045】
次に、ステップS12で設定された非線形応答関係を用いて、複数種の設計変数の値と特性値で構成される特性値空間での出力値を計算する。すなわち、設計変数を入力とした場合の出力である特性値を算出するサンプリング計算を実施する(ステップS14)。これにより、特性値1および特性値2で構成される特性値空間における設計変数の設計値の位置がわかる。
図3(b)に
図3(a)に示す設計変数の設計値を用いて得られた結果を、特性値1と特性値2の関係で示す。
図3(b)に示す符号40は、設定された非線形関係で得られた、特性値1と特性値2の組み合わせで表される出力値(サンプリング点)を示す。符号42は、複数の出力値40(サンプリング点)の中から選択された1つの特性値を示す。符号44は、選択された出力値42における入力パラメータ値(設計変数φ1〜φ6の値)を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定して設定された複数の出力値(サンプリング点)を示す。
【0046】
次に、
図3(b)に示す出力値40の中から、出力値42を1つ設定する。なお、出力値42は、出力値40の中から少なくとも1つ選択すればよく、複数選択してもよく、出力値40を全部、出力値42として選択してもよい。
なお、出力値42の設定方法は、特に限定されるものではなく、出力値40の中からランダムに設定することができる。
【0047】
本実施形態では、出力値42における入力パラメータ値を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定して、複数の出力値44を得る(ステップS16)。出力値44は、例えば、設計変数φ1〜φ6(入力パラメータ値)の組合せで表される値である。
図3(c)の出力値44における各設計変数φ1〜φ6の値を中央値として、設計変数φ1〜φ6にバラつきを与える。具体的には、設計変数φ1においては、点46aに対して所定の幅δの変動を許容する。設計変数φ2においては、点46bに対して所定の幅δの変動を許容する。設計変数φ3においては、点46cに対して所定の幅δの変動を許容する。設計変数φ4においては、点46dに対して所定の幅δの変動を許容する。設計変数φ5においては、点46eに対して所定の幅δの変動を許容する。設計変数φ6においては、点46fに対して所定の幅δの変動を許容する。
【0048】
出力値42の設計変数φ1〜φ6の各点46a〜46fにおいて、所定の幅δだけ設計変数を変動させた組合せを設定する。例えば、モンテカルロ法を用いて出力値42における設計変数の組合せに対して複数、例えば、10ケースの設計変数φ1〜φ6の組合せを作成し、出力値44を設定する。なお、追加する出力値の数は、10ケースに限定されることはなく、例えば、50ケースであってもよい。
【0049】
また、所定の幅δにおける設計変数φ1〜φ6それぞれの値は、値の間隔を等分割した値を用いてもよく、ガウス分布のような確率分布に基づいてそれぞれの設計変数値の分布を設定してもよい。例えば、ガウス分布を用いた設計変数の組合せによって出力される出力値44は、出力値42に近い値の出力値44が追加される確率が高くなる。また、これら各設計変数値はモンテカルロ法のようなランダムサンプリング手法を用いて組合せることが好ましい。
本発明において、摂動とは、複数種の設計変数で表される特性値において、中央値となる各設計変数の値に対して、所定の幅δの範囲内において値にバラツキを与えることを示す。これらの値の組合せを用いることによって、中央値として選択した設計変数の組合せに似た設計変数の組合せを取得できるため、その選択した設計変数の組合せが示す出力値近傍の出力値を得ることができる。
【0050】
次に、ステップS14で得られた出力値およびステップS16で追加した出力値を用いて近似モデルを作成する(ステップS18)。すなわち、設計変数と特性値の関係を近似モデルまたは近似式にて表す。
次に、演算部24で近似モデルを用いた多目的最適化計算を実施する(ステップS20)。次に、多目的最適化計算結果からパレート解探索部26にてパレート解を抽出し、パレート解を得る(ステップS22)。このようにして、近似モデルを用いてパレート解を得ることができる。なお、上述のように近似モデルを用いて得られたパレート解は、近似予測値である。
【0051】
ステップS16の追加出力値(追加サンプリング点)の取得方法について説明する。
追加出力値の取得については、演算部24でなされ、特性値空間において、出力値が疎の領域を求めて、疎の領域から出力値を選択し、選択された出力値における入力パラメータ値を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定し、追加出力値を取得することが好ましい。以下、より具体的に説明する。
図4(a)は、追加出力値の取得方法の第1の例を示すグラフであり、(b)は、追加出力値の取得方法の第2の例を示すグラフであり、(c)は、追加出力値の取得方法の第3の例を示すグラフである。
【0052】
ステップS16において、ステップS14で
図3(b)に示す特性値空間を、例えば、
図4(a)に示すように、全出力値の平均値Pb(以下、全出力値の平均値Pbのことを、単に平均値Pbという)を設定し、4つの領域D
1〜D
4に分ける。各領域D
1〜D
4は、いずれも四角形である。特性値空間での出力値の分布を調べ、各領域D
1〜D
4での出力値の密度を調べる。領域D
1〜D
4において、最も出力値の密度が低い領域に対して、出力値を少なくとも1つ設定して、出力値における入力パラメータ値を、上述のように摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定することで、追加出力値を得る。
領域D
1〜D
4のうち、領域D
1が最も出力値の密度が低く、領域D
1の出力値40のうち、少なくとも1つの出力値42を設定する。設定された出力値42における入力パラメータ値を摂動させて、複数の入力パラメータ値を設定し、出力値を追加する。
なお、領域D
1〜D
4を同じ面積にしておけば、各領域D
1〜D
4内の出力値の数を比較することで、容易に出力値が疎の領域を特定することができる。このため、平均値Pbは、設計変数空間における各中央値の組合せにより算出される出力値または基準とする値の組合せにより算出される出力値であることが好ましい。平均値Pbは、領域D
1〜D
4の面積がわかれば前述の出力値に限定されるものではない。
【0053】
これ以外にも、
図4(b)に示すように、平均値Pbを設定し、この平均値Pbを中心とした同心円状に領域D
11、D
21、D
31を分けてもよい。この場合、特性値空間での出力値の分布を調べ、各領域D
11、D
21、D
31での出力値の密度を調べる。領域D
11、D
21、D
31において、最も出力値の密度が低い領域に対して、特性値を追加する。領域D
11、D
21、D
31のうち、領域D
31が最も出力値の密度が低く、領域D
31の出力値40のうち、少なくとも1つの出力値42を設定する。設定された出力値42を用いて、上述のようにして出力値を追加し、追加出力値を取得する。
同心円状に領域D
11、D
21、D
31を分ける際、
図4(a)に示す領域D
1〜D
4と組み合わせてもよい。これにより、特性値空間において出力値が疎の領域をより高い精度で特定することができる。
図4(b)では、出力値が疎の領域は、領域D
31かつ領域D
1である。
また、
図4(c)に示すように、特性値空間を複数の同じ面積の領域Dに分けて、出力値が疎の領域を判定してもよい。この場合、領域D内に出力値が1つも存在しない場合には、出力値の疎密の対象から外す。領域Dのうち、領域D
40が最も出力値の密度が低い。領域D
40には出力値40が1つしかないが、その出力値40を出力値42として設定する。設定された出力値42を用いて、上述のようにして出力値を追加し、追加出力値を取得する。
【0054】
ステップS16において、特性値空間から、追加出力値を取得するための出力値を少なくとも1つ設定しているが、この設定方法について説明する。
ここで、特性値1および特性値2は要求される仕様等に応じて好ましい方向があり、好ましい方向としては、値が大きくなる、値が小さくなる、または所定の値に近づく等がある。
出力値を選択する場合、2つの特性値1、特性値2が好ましい方向の領域において、出力値の密度を高くすることが好ましい。これにより、パレート解に近傍における近似モデルの精度を向上させ、得られるパレート解の信頼性を向上させることができる。2つの特性値1、特性値2が好ましい方向の領域は、ステップS10において設定することができ、条件設定部20に設定される。
図5(a)は、基準点の設定方法の第1の例を示すグラフであり、(b)は、基準点の設定方法の第2の例を示すグラフであり、(c)は、基準点の設定方法の第3の例を示すグラフである。
【0055】
平均値Pbは、例えば、
図5(a)に示すように、設計変数空間における各中央値の組合せにより算出される出力値に設定すること、または
図5(b)に示すように、ステップS10で対象となる構造体について設計変数、特性値(目的関数)、制約条件等の最適化条件を設定する際に、特性値空間における平均値Pbを設定する。また、
図5(c)に示すように、平均値Pbを任意の点に設定する。
ここで、特性値1および特性値2は要求される仕様等に応じて好ましい方向があり、例えば、特性値1は値が大きい方が良い特性であり、特性値2は値が小さい方が良い特性である。
例えば、
図5(a)〜(c)のように基準点を設定した場合、平均値Pbに対して、設定する特性値の値を設定し、良い特性が得られる方向、悪い特性が得られる方向、所定の特性に収束する方向が、特性値の大小の組み合わせにより設定することができる。この設定は、入力部14を介して条件設定部20に設定することができる。
悪い特性が得られる方向とは、例えば、特性値1については、値が大きい方が良い特性であるが、値が小さい方に設定することであり、特性値2は値が小さい方が良い特性であるが、値が大きい方に設定することである。また、所定の特性に収束する方向とは、基準点から、特性値1について予め定められた値に向かう方向であり、基準点から特性値2について予め定められた値に向かう方向である。
【0056】
次に、本実施形態の構造体の近似モデル作成方法の第2の例について説明する。
図6は、本発明の実施形態の構造体の近似モデル作成方法の第2の例を工程順に示すフローチャートである。
図7は検証結果の一例を示すグラフである。
近似モデル作成方法の第2の例においては、近似モデル作成方法の第1の例と同様の工程について、その詳細な説明は省略する。
【0057】
近似モデル作成方法の第2の例は、近似モデル作成方法の第1の例に比して、作成した近似モデルを用いて検証計算をする工程(ステップS30)を有しており、検証計算の結果が、予め定められた判定条件を満たさない場合(ステップS32)、再度近似モデルを作成する点が異なり、それ以外の工程は、第1の例と同じ工程であるため、その詳細な説明は省略する。近似モデル作成方法の第2の例では、特性値空間の出力値(サンプリング点)における近似モデル精度を向上させることができ、これにより、最適化計算結果の精度を向上させることができる。
【0058】
近似モデル作成方法の第2の例では、ステップS30において、ステップS18で作成した近似モデルを用いて近似予測値を演算部24で計算する。また、演算部24で、近似モデルを用いることなく規定した非線形関係を用いて設計変数と特性値の組合せで、近似モデルの誤差を検証するために特性値を算出する実計算を実施する。
次に、ステップS30で得られた近似予測値と実計算値とを比較し、予め定められた判定条件に基づいて判定する(ステップS32)。
ステップS32において、判定条件を満たす場合、ステップS18で作成した近似モデルを用いて多目的最適化計算を実施する(ステップS34)。次に、多目的最適化計算結果からパレート解を抽出し、パレート解を得る(ステップS36)。ステップS34は、上述のステップS20と同じ工程であり、ステップS36は、上述のステップS22と同じ工程であるため、その詳細な説明は省略する。
【0059】
一方、ステップS32において、判定条件を満たさない、すなわち、サンプリング点における近似モデルの精度が予め定められた許容範囲内に収まらない場合、ステップS16に戻り、再度、追加出力値を取得し、近似モデルを作成する(ステップS18)。すなわち、近似モデルを更新する。
そして、更新した近似モデルを用いて、近似予測値を演算部24で計算する。すなわち、検証計算をする(ステップS30)。検証計算の結果をステップS32で判定条件に基づいて判定する。ステップS32の判定条件を満たすまで、追加出力値の取得(ステップS16)、近似モデルの作成(ステップS18)を繰り返し行う。
【0060】
ステップS32において、判定条件を満たさない場合における追加出力値の取得は、設定する出力値42を変えても、設定する出力値42を同じとして追加出力値の取得方法を変えてもよく、出力値42の設定方法は、特に限定されるものではない。
ステップS32の判定条件としては、例えば、実計算値と近似予測値との近似直線における傾き、相関係数、および決定係数等を用いることができる。また、各サンプリング点における誤差に閾値を与え、これを判定条件としてもよい。
近似予測値と実計算値とを比較する際、より具体的には、1点除外交差検証およびK−分割交差検証を用いることができ、例えば、1点除外交差検証を用いた場合、
図7に示す結果が得られる。
【0061】
次に、本実施形態の構造体の近似モデル作成方法の第3の例について説明する。
図8は、本発明の実施形態の構造体の近似モデル作成方法の第3の例を工程順に示すフローチャートである。
近似モデル作成方法の第3の例においては、近似モデル作成方法の第1の例と同様の工程について、その詳細な説明は省略する。
【0062】
近似モデル作成方法の第3の例は、近似モデル作成方法の第1の例に比して、抽出したパレート解(ステップS40)について実計算する工程(ステップS42)を有しており、実計算の結果が、予め定められた判定条件を満たさない場合(ステップS44)、すなわち、サンプリング点以外の特性値空間における近似モデルの精度が予め定められた許容範囲内に収まらない場合、再度近似モデルを作成する点が異なり、それ以外の工程は、第1の例と同じ工程であるため、その詳細な説明は省略する。近似モデル作成方法の第3の例では、パレート解の精度を確認する工程を設けることで、サンプリング点以外の特性値空間における近似モデルの精度が予め定められた許容範囲内であることを確認する工程が設けられ、最適化計算結果の精度を向上させることができる。
なお、ステップS40のパレート解を抽出する工程は、第1の例のステップS22のパレート解を得る工程と同じ工程であるため、その詳細な説明は省略する。
【0063】
近似モデル作成方法の第3の例では、ステップS40で得られたパレート解を用いて、パレート解の精度を確認するための確認計算として、実計算を行う(ステップS42)。ステップS42の実計算は、例えば、有限要素法を用いた特性値1、特性値2を計算する計算モデルに、ステップS40で得られたパレート解の設計変数値を入れて計算することである。
次に、ステップS42で得られた実計算値と、有限要素法を用いて算出された実計算値(以下、FEM実計算値という)を比較し、予め定められた判定条件に基づいて判定する(ステップS44)。ステップS44において判定条件を満たす場合、ステップS40で得られたパレート解を、最終的なパレート解として、パレート解を出力する(ステップS46)。
【0064】
一方、ステップS44において、判定条件を満たさない場合、ステップS16に戻り、再度、追加出力値を取得し、近似モデルを作成する(ステップS18)。すなわち、近似モデルを更新する。
そして、更新した近似モデルを用いて、多目的最適化計算をし(ステップS20)、パレート解を得る(ステップS40)。得られたパレート解を用いた実計算を行い(ステップS42)、実計算の結果をステップS44で判定条件に基づいて判定する。ステップS44の判定条件を満たすまで、追加出力値の取得(ステップS16)、近似モデルの作成(ステップS18)、多目的最適化の計算(ステップS20)、多目的最適化計算結果からのパレート解の抽出(ステップS40)およびパレート解を用いた実計算(ステップS42)を繰り返し行う。
【0065】
ステップS42での実計算に用いるパレート解は、ステップS40で得られた全てのパレート解でもよい。しかしながら、効率化の観点から、複数のパレート解のうち、端のパレート解、中央のパレート解など離散的に選択することが好ましい。
ステップS44の判定条件としては、例えば、誤差が用いられる。この誤差は、相対誤差でも実誤差であってもよい。また、複数のパレート解を用いる場合、それらの標準偏差または分散値を設定してもよい。
図9に示すように、パレート解Pに対して、例えば、3つのパレート解P
1、P
2、P
3を設定する。各パレート解P
1、P
2、P
3に対応した設計変数値を入力することによりFEM実計算値G
1、G
2、G
3を算出する。パレート解P
1、P
2、P
3と、FEM実計算値G
1、G
2、G
3との差d
1、d
2、d
3をそれぞれ求める。この場合、差d
1、d
2、d
3を判定条件として設定された誤差と比較して判定する。
【0066】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の構造体の近似モデル作成方法、構造体の近似モデル作成装置、およびプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の近似モデル作成方法の実施例について具体的に説明する。
本実施例では、以下に示す実施例1および比較例1、2ならびに基準例を用いて本発明の近似モデル作成方法の効果について確認した。
【0068】
本実施例では、タイヤの断面形状を設計変数とし、タイヤの物理特性である2つの特性値(目的関数)を設定した。ここでは、目的関数の望目特性として、特性値1を大きく、かつ特性値2を小さくするように設定し、多目的遺伝的アルゴリズムを用いた最適化計算結果からパレート解を抽出し、本発明の近似モデル作成方法の効果について確認した。
タイヤサイズ215/55R17のタイヤモデルを基準として、タイヤの断面形状に対して設計変数φ1〜φ6で表される入力値を設定した。なお、設計変数φ1〜φ6で表される入力値を、ラテンハイパーキューブ法(LHC)により100ケース設定した。
なお、近似モデルの精度を検証するため、設計変数およびその定義域、ならびに遺伝的アルゴリズムの個体数、世代数、および突然変異率といった計算条件は実施例1、比較例1、2ともにそれぞれ同一の値を用いた。
以下、実施例1および比較例1、2ならびに基準例について説明する。
【0069】
実施例1は、上述の100ケースでサンプリング計算を行った結果に加えて、そのサンプリング計算結果から得られた出力値の中から4点抽出した。抽出した4点の出力値50について、
図10(a)に示すように、設計変数φ1〜φ6について中央値を求めた。モンテカルロ法を用いて、設計変数φ1〜φ6の中央値により、変動幅を設計変数の定義域の±20%として設定し、その変動幅の中において値の組合せを変えることにより、追加サンプリング点として出力値52を50ケース設定した。その結果を
図11(a)に示す。
比較例1は、ラテンハイパーキューブ法で設定した100ケースだけとした。その結果を
図11(b)に示す。
比較例2は、実施例1と同様にして出力値を4点抽出した。抽出した4点について、
図10(b)に示すように、設計変数φ1〜φ6に対して抽出した4点の中における上限値と下限値の範囲を変動幅として設定し、その変動幅の中において設計変数の値の組合せを変えることにより、追加サンプリング点として出力値52を50ケース設定した。その結果を
図11(c)に示す。
実施例1、比較例2で用いた4点の出力値は、出力値の中で特性値1が大きく、かつ特性値2が小さくなる解を望目特性として定め、最も改善幅の大きい、すなわち、この後の最適化計算において算出されるパレート解に最も近いであろう4点である。
【0070】
基準例は、近似モデルを用いることなく、全て有限要素法を用いて特性値を計算したものである。この基準例の実計算結果を
図12に示す。
図12に示す実計算結果60が計算誤差のないことから、近似モデルの計算精度を確認するための基準として設定した。
【0071】
実施例1、および比較例1、2について、多項式を用いた近似モデルを作成し、最適化計算を行い、パレート解を抽出し、その結果を
図12に示す。
図12に示すように、実計算結果60と実施例1の結果62とは近い。一方、比較例1の結果64は、最も実計算結果60から遠い。比較例2は、実施例1と同じケース数であるが、比較例2の結果66は実施例1の結果62よりも実計算結果60から離れている。
実施例1は、比較例1、2に比して実計算結果60に近い精度を得ることができた。実施例1は、比較例3とケース数が略同じであるが、実施例1の方が高い精度が得られた。また、実計算結果60は近似モデルを用いておらず、実施例1に比して計算量が非常に多く、かつ計算時間も長い。このように本発明では、近似モデルの精度が高く、かつ計算量および計算時間を減らすことができる。