(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解析部は、前記撮影部によって撮影された、前記第2の模様パターンの位置を基準位置とし、前記基準位置と前記第1の模様パターンの三次元座標との比較に基づいて、前記タイヤの表面の三次元形状を解析する
請求項1または2に記載のタイヤ解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者に自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるタイヤ解析装置を含むタイヤ解析システムを示す構成図である。
図2は、
図1に示したタイヤ解析システムのタイヤ解析装置の機能を示すブロック図である。これらの図において、
図1は、タイヤ解析システムの全体構成を模式的に示し、
図2は、タイヤ解析装置の主たる機能を示している。
【0024】
本実施形態にかかるタイヤ解析システム1は、所定条件を入力したときのタイヤ形状の変化又はタイヤの表面の歪みの変化を測定することにより、タイヤの挙動解析(タイヤの応答性評価)を行うシステムに適用される。タイヤ解析システム1は、タイヤ試験機2と、撮影装置3と、タイヤ解析装置4とを備える(
図1参照)。
【0025】
タイヤ試験機2は、試験タイヤ10に試験条件を付与する装置である。
図1の構成では、タイヤ試験機2は、支持装置21と、駆動装置22とを有する。支持装置21は、試験タイヤ10を回転可能に支持する装置であり、試験タイヤ10を装着するリム211を有する。駆動装置22は、試験タイヤ10に駆動力を付与する装置であり、試験タイヤ10を駆動するモータ222と、モータ222を駆動制御するモータ制御装置223とから構成される。なお、以下の説明では、試験タイヤ10を単に「タイヤ10」と呼ぶことがある。
【0026】
このタイヤ試験機2では、支持装置21が、試験タイヤ10をリム211に装着して支持し、試験タイヤ10を駆動装置22の透明板221の一主面である上面221Uに押圧して試験タイヤ10に荷重を付与する。また、支持装置21が、リム211を変位させて試験タイヤ10と透明板221との位置関係を調整することにより、試験タイヤ10にスリップ角又はアングル角を付与する。また、駆動装置22は、モータ制御装置223によりモータ222を駆動してリム211を所定角度回転させることができる。これにより、車両走行時におけるタイヤの転動状態が、透明板221の表面を路面として再現される。また、支持装置21及び駆動装置22が、荷重、回転速度、スリップ角、アングル角などを調整することにより、試験条件を変更できる。
【0027】
透明板221は、光を透過する性質を有する光透過板である。透明板221は光を100%透過しなくてもよく、透明板221を介してタイヤの表面を撮影することができる光透過率を有していればよい。透明板221は、例えば、アクリル樹脂製の平面板又はガラス製の平面板である。タイヤ10と平面板との接触状態を撮影して画像解析するので、より現実に近いタイヤの接地状態を解析することができる。
【0028】
撮影装置3は、一対のカメラ31a及び31bと、光源である照明用ランプ32を有する。カメラ31a及び31bは、タイヤ10を撮影する撮影部であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。カメラ31aおよび31bは、透明板221を介してタイヤ10を撮影する。カメラ31a及び31bは、透明板221の他主面である下面221Dから、透明板221を介して試験タイヤ10を撮影する。また、一対のカメラ31a及び31bは、試験タイヤ10を相互に異なる方向から撮影できる位置に配置される。これらのカメラ31a及び31bは、試験タイヤ10を左右方向から同時に撮影して、タイヤ画像(試験タイヤ10のデジタル画像データ)を生成する。カメラ31aの撮影方向である視線311aと、カメラ31bの撮影方向である視線311bとがなす角度θは、例えば28.6度以上68.2度以下である。複数のカメラの撮影方向同士がなす角度θをこの範囲に設定することにより、精度の高い三次元形状を得ることができる。照明用ランプ32は、カメラ31a及び31bの撮影範囲を照らすランプであり、例えば、ハロゲンランプにより構成される。これらの照明用ランプ32は、常時点灯タイプであってもよいし、フラッシュ点灯タイプであってもよい。
【0029】
タイヤ解析装置4は、例えば、所定の解析プログラムをインストールしたPC(Personal Computer)であり、撮影装置3から入力されるタイヤ10の画像を処理してタイヤ10の三次元形状を解析する処理を行う(
図2参照)。タイヤ10の三次元形状を解析する処理は、タイヤ10の画像に基づき、タイヤ10の三次元形状を算出する処理を含む。
【0030】
図2に示すように、本実施形態にかかるタイヤ解析装置4は、解析部41と、角度算出部42とを有している。解析部41は、撮影装置3によって撮影した画像について解析処理を行って三次元形状を得ることができる。解析部41は、画像平滑部411と、輝度分布取得部412と、間引き処理部413と、モアレ縞作成部414と、位相分布算出部415と、アンラッピング処理部416と、三次元形状算出部417とを備えている。角度算出部42は、透明板221の傾斜角度を算出する。
【0031】
(解析部)
画像平滑部411は、撮影装置3によって撮影した画像を平滑化する。画像平滑部411は、縦方向及び横方向にそれぞれ平滑化処理する。
【0032】
輝度分布取得部412は、画像平滑部411が平滑化した画像から、輝度分布を示す画像を得る。間引き処理部413は、輝度分布を示す画像について一定画素数で間引き処理を行う。モアレ縞作成部414は、間引かれていない画素の輝度情報を用いて、間引かれている画素の輝度について線形補間を行ってモアレ縞を作成する。位相分布算出部415は、モアレ縞に基づいて第1の模様パターンの位相分布を算出する。アンラッピング処理部416は、アンラッピング処理した位相分布を作成する。三次元形状算出部417は、各カメラによる撮影画像の位相分布と各カメラの視線(撮影方向)とに基づいて、タイヤ10の第1の模様パターンが形成された部分の三次元形状を算出する。三次元形状算出部417は、カメラの視線、つまりカメラ31aとカメラ31bとタイヤ10(透明板221)との相対位置に基づいてカメラ31a、31bのそれぞれで取得した撮影画像の位相分布を視線データとして利用することで三次元形状を得る。
【0033】
(模様パターン)
図3は、第1の模様パターンの例を示す図である。
図3に示すように、第1の模様パターンM1は、例えば、格子模様のパターンである。格子模様を構成する孔の形状は正方形、矩形、三角形、星形のいずれであってもよい。同じ形状の孔が規則的に並んでいることが好ましい。ただし、格子模様のパターンは、同じ形状の孔に限定されることはなく、例えば三角形の孔と逆三角形の孔とが規則的に並んでいるものであってもよい。
【0034】
本実施形態では、孔の形状が正方形である、正方格子の模様パターンを第1の模様パターンとして利用する。その格子の大きさHHは、正方一辺0.5mm以上2.5mm以下、格子間隔KKは水平方向、垂直方向ともに1mm以上5mm以下であることが好ましい。なお、第1の模様パターンM1を構成する形状(例えば、正方格子)の少なくとも1つが第1の模様パターンM1の端で途切れることなく(例えば、第1の模様パターンM1上に完全な形の正方格子が少なくとも1つ存在)、なおかつ第1の模様パターンM1の水平方向、および垂直方向の長さがともに格子間隔KKの2倍以上の長さであれば、格子の大きさHH及び格子間隔KKはともに任意の値でよい。
【0035】
第1の模様パターンM1は、両面テープを用いてタイヤの表面に貼付されたシート状になっていてもよい。また、第1の模様パターンM1は、タイヤの表面に直接描かれたものであってもよい。例えば、第1の模様パターンM1は、白色インクのペンで、タイヤの表面に描かれたものであってもよい。
【0036】
図4は、透明板221の下側すなわち撮影する方向からみたタイヤ10の外形の例を示す図である。
図4に示すように、タイヤ10は、表面に形成された第1の模様パターンM1を有している。図中の破線Hはタイヤ10の接地中心を示す。
【0037】
第1の模様パターンM1が形成された部分を透明板221に接触させると、タイヤ10の表面のうち、透明板221に接触している部分及びその部分の周辺が変形する。これにより、タイヤ10が路面に接地した状態を再現することができる。以下、タイヤ10が透明板221に接触した状態を、接地と呼ぶことがある。
【0038】
タイヤ10の表面が変形すると、その表面に形成された第1の模様パターンM1も変形する。変形する第1の模様パターンM1を、透明板221の下側から撮影して解析することにより、タイヤ10の接地状態での三次元形状を算出できる。
【0039】
タイヤ10を回転させずに、第1の模様パターンM1が形成された部分を透明板221に押付けて接触させた場合、タイヤ10が回転していない静的な接地状態での三次元座標を取得できる。また、タイヤ10の第1の模様パターンM1が形成された部分を透明板221に接触させた状態で支持装置21によってタイヤ10を所定角度回転させれば、タイヤ10が回転する動的な接地状態での三次元形状を算出できる。
【0040】
(座標系)
図5は、本実施形態にかかるタイヤ解析システムのタイヤ解析装置における座標系を説明する図である。
図5に示すように、X座標は、タイヤ10の接地中心点を通るタイヤ進行方向に沿った座標である。
図5の右側方向はX座標の正の絶対値が大きい。Y座標は、タイヤ幅方向に沿った座標である。
図5の奥側方向はY座標の負の絶対値が大きく、手前方向はY座標の正の絶対値が大きい。Z座標は、タイヤ10の接地中心点を通るタイヤ半径方向に沿った座標である。Z座標は、透明板221の厚さ方向に沿った座標でもある。透明板221の上面221U側方向はZ座標の負の絶対値が大きく、下面221D側方向はZ座標の正の絶対値が大きい。
【0041】
(撮影画像の例)
図6は、タイヤ10の表面に形成された第1の模様パターンM1を撮影した画像(撮影画像)の例を示す図である。
図6において、撮影した画像には、第1の模様パターンM1に対応する格子模様が含まれている。
図6中のタイヤ周方向は、タイヤ10の接地端に向かう方向である。
図6中のタイヤ幅方向は、タイヤ10の接地中心に沿ってショルダー部へ向かう方向である。
【0042】
図7Aは、三次元形状の測定結果の例をグレースケールによって示すコンター図である。
図7Bは、
図7Aにおいてグレースケールで示す三次元形状の測定結果の指標を示す図である。
図7A中のタイヤ周方向は、タイヤ10の接地端に向かう方向である。
図7Aに示す三次元形状の測定結果は、第1の模様パターンM1を撮影した画像について解析部41が解析処理を行うことによって得られる。
【0043】
図7Bは、色が濃いほどタイヤ10が透明板221に接近している(すなわちタイヤ径方向の座標Zがプラスの方向である)ことを示し、色が薄いほどタイヤ10が透明板221から離れている(すなわちタイヤ径方向の座標Zがマイナスの方向である)ことを示す。したがって、
図7Aを参照すると、タイヤ10と透明板221との距離はタイヤ幅方向に沿って接地中心からショルダー部に向かうにしたがって大きくなっていくことが理解できる。なお、
図7Aにおいて、第1の模様パターンM1の端部において、色が濃い部分又は色が薄い部分が多いのは、サンプリングモアレ法の解析の制約につき、第1の模様パターンM1の端から模様1周期以内の領域では形状解析の精度が保障されないためである。すなわち、間引き処理して線形補間を行うために模様の1周期だけ離れた画素同士の輝度を参照する場合、画像内の第1の模様パターンM1の端から模様1周期以内の領域では第1の模様パターンM1の外(第1の模様パターンM1以外の領域)の画素の輝度を参照することになり、線形補間を正しく行えず、形状解析の精度を保障できない。
【0044】
(解析部の処理)
図6に示す第1の模様パターンM1を撮影した画像から、
図7Aに示す三次元形状の測定結果を得るために、解析部41は解析処理を行う。本実施形態にかかる解析部41では、撮影した画像に基づいて測定を行う非接触形状測定手法として、サンプリングモアレ法を用いる。サンプリングモアレ法は、二次元格子を形成した物体の撮影画像を所定画素おき(X画素おき)にサンプリングし、形状を測定する手法である。本実施形態では、サンプリングモアレ法のうち、間引き選択型サンプリングモアレ法を用いる場合について説明する。間引き選択型サンプリングモアレ法は、サンプリングモアレ法において、撮影画像の画素ごとに、解析に最適な間引き数の位相分布を参照する方法である。
【0045】
サンプリングモアレ法では、例えば、撮影した画像について、一定方向(例えば、垂直方向)に平滑化し、平滑化した画像の間引き処理及び線形補間処理を行ってモアレ縞画像を得て、位相分布を利用して2つのカメラ間の画面内の対応する点を探索する。
【0046】
ここで、サンプリングモアレ法におけるモアレ縞の生成及び位相分布の算出の例について、
図8を参照しながらより詳細に説明する。
図8は、サンプリングモアレ法におけるモアレ縞の生成について説明するための図である。
図8は、日本実験力学会講演論文集,No10(2010)「サンプリングモアレ法を用いた三次元形状・ひずみ分布の動的計測手法の精度評価」より引用、改変したものである。
図8に示す例は、「4」という間引き数を用いて、間引き一律型サンプリングモアレ法によってモアレ縞を生成する例である。
【0047】
ステップS11では、解析部41が、第1の模様パターンM1を含むタイヤ10の表面の撮影画像について、垂直方向(縦方向)に平滑化した画像を得る。以下は、垂直方向に平滑化した場合の処理について説明するが、水平方向(横方向)に平滑化した場合も同様の処理となる。
【0048】
ステップS12では、解析部41が、平滑化した画像から、1ラインを抽出し、輝度分布を示す画像90を得る。
【0049】
ステップS13では、解析部41が、1枚の画像90について、4画素ごとに間引くことにより、画像91a〜91dという4個の画像が生成される。画像91a〜91dは、それぞれ、間引きを開始する画素が異なる。画素を間引くことによって生成される画像の数は、間引き数と一致する。例えば、間引き数が「4」の場合は4個の画像が、間引き数が「5」の場合は5個の画像が、それぞれ生成される。
【0050】
ステップS14では、解析部41が、画像91a〜91dのそれぞれについて、間引かれた画素が設定されていない画素の輝度を、間引かれていない画素が設定されている画素の輝度を用いた線形補間によって設定する処理が施される。これにより、モアレ縞92a〜92dが得られる。
【0051】
ステップS15では、解析部41が、モアレ縞92a〜92dの輝度を、以下の式(1)に当てはめることにより、間引き数に対応する位相分布における画素位置(k)に対応する位置の位相σが得られる。
【0053】
ここで、Xは、間引き数であり(Xは自然数)、I(k)はk枚目(kは自然数)のモアレ縞の輝度を示す。
図8に示す例において、モアレ縞92a、92b、92c、92dはそれぞれ1番目、2番目、3番目、4番目のモアレ縞に相当する。
【0054】
モアレ縞92a〜92dを参照しながら式(1)を用いてそれぞれの画素位置に対応する位相値を算出することにより、画像90を「4」という間引き数で間引いた場合の位相分布93を算出することができる。
【0055】
モアレ縞の位相分布93と参照格子の位相分布94とを演算することによって、位相が−πからπまでの周期性を有する第1の模様パターンM1の位相分布95を得ることができる。位相分布95は、πでラッピングして−πに戻るラッピング型の位相分布である。
ステップS16では、解析部41が、アンラップされた位相分布を作成する。例えば、0から14πの範囲にアンラッピング処理した位相分布96を作成する。位相分布96は、
図7Aを参照して説明した三次元の測定結果に対応する。
【0056】
三次元形状算出部417は、各カメラによる撮影画像の位相分布と各カメラの視線(撮影方向)とに基づいて、タイヤ10の三次元形状を算出する。三次元形状算出部417は、カメラの視線、つまりカメラ31aとカメラ31bとタイヤ10(透明板221)との相対位置に基づいてカメラ31a、31bのそれぞれで取得した撮影画像の位相分布を視線データとして利用することで三次元形状を得る。
【0057】
図9は、選択型サンプリングモアレ法を説明するためのフローチャートである。
【0058】
ステップS201では、解析部41の画像平滑部411が、溝底表面の撮影画像について、垂直方向(縦方向)に平滑化した画像を得る。この処理は、先述した
図8のステップS11と同様である。
【0059】
ステップS202では、解析部41の輝度分布取得部412が、平滑化した画像から、1ラインを抽出し、輝度分布を示す画像を得る。この処理は、先述した
図8のステップS12と同様である。
【0060】
ステップS203では、解析部41の間引き処理部413が、複数種類の画素数でそれぞれ間引き処理を行う。本例では、4画素間引き又は5画素間引きを選択して行う。4画素で間引き処理を行うことによって得られる画像は、先述したステップS13の処理によって得られる画像91a〜91dと同様になる。
【0061】
ステップS204では、ステップS203において4画素及び5画素でそれぞれ間引き処理を行った結果について、解析部41のモアレ縞作成部414が、モアレ縞をそれぞれ生成する。ステップS203において4画素で間引き処理を行った結果について生成したモアレ縞は、先述したステップS14の処理によって得られたモアレ縞92a〜92dと同様になる。
【0062】
図10は、5画素で間引き処理を行った結果について生成したモアレ縞の例を示す図である。
図10は、日本実験力学会講演論文集,No10(2010)「サンプリングモアレ法を用いた三次元形状・ひずみ分布の動的計測手法の精度評価」より引用、改変したものである。
図10に示すように、間引かれた画素が設定されていない画素の輝度を、間引かれていない画素が設定されている画素の輝度を用いた線形補間によって設定する処理を施すことにより、モアレ縞92e〜92iが得られる。
【0063】
ステップS205では、解析部41の位相分布算出部415が、4画素で間引き処理を行った結果について生成したモアレ縞92a〜92dの輝度、及び、5画素で間引き処理を行った結果について生成したモアレ縞92e〜92iの輝度を、上記の式(1)に当てはめることにより、間引き数に対応する位相分布における画素位置(k)に対応する位置の位相σが得られる。
【0064】
モアレ縞92a〜92d、モアレ縞92e〜92iを参照しながら式(1)を用いてそれぞれの画素位置に対応する位相値を算出することにより、1ラインの画像を「4」、「5」という間引き数でそれぞれ間引いた場合の位相分布を算出することができる。つまり、モアレ縞92a〜92d、モアレ縞92e〜92iの位相分布に参照格子の位相分布と演算することによって、位相が−πからπまでの周期性を有する第1の模様パターンの位相分布をそれぞれ得ることができる。
【0065】
ステップS206では、解析部41の位相分布算出部415が、画素ごとに、形状解析に適した第1の模様パターンの位相分布を参照する。
図11は、第1の模様パターンM1の画像の例を示す図である。
図11において、例えば、第1の模様パターンM1を撮影した画像において、格子ピッチのある1ピッチP4が4画素に相当する場合は、4画素間引き処理を行った結果について生成した第1の模様パターンM1の位相分布を参照する。また、第1の模様パターンM1を撮影した画像において、格子ピッチの別の1ピッチP5が5画素に相当する場合は、5画素間引き処理を行った結果について生成した第1の模様パターンM1の位相分布を参照する。
【0066】
ステップS207では、ステップS206において画素ごとに第1の模様パターンの位相分布を参照した結果に基づいて、解析部41の位相分布算出部415が、形状算出用の第1の模様パターンの位相分布を決定する。これにより、第1の模様パターンM1を撮影した画像において、第1の模様パターンM1に含まれる格子の1ピッチがどのような画素数に相当しても、精度のよい形状解析結果を得ることができる。つまり、例えば、4画素に固定した間引きを行うと、1ピッチが5画素に相当する領域について解析精度の低下が生じることがある。これに対し、間引きする画素数を固定せずに先述したように4画素又は5画素の間引きを行うことにより、1ピッチが5画素又は4画素に相当する領域それぞれについて、解析精度の低下を回避することができる。このように、解析部41による解析に最適な間引き数の位相分布を選択する。
【0067】
形状算出用の位相分布は、例えば以下のように決定する。すなわち、例えば、撮影画像を平滑化した画像から1ラインを抽出した、輝度分布を示す画像90について、最も暗い画素同士の間隔に相当する画素数を求め、その画素数を間引き画素数とする。そして、その画素数で間引き処理を行った結果に対応する位相分布を、形状算出用の位相分布とする。
【0068】
以上のように位相分布を求める処理が、位相解析処理である。位相解析処理により、タイヤの溝底表面の歪みを高精度に測定することができる。
【0069】
(タイヤ解析方法)
図12は、本実施形態のタイヤ解析装置4によって実現されるタイヤ解析方法の例を示すフローチャートである。
【0070】
図12において、ステップS301では、タイヤ10の表面の少なくとも1箇所に第1の模様パターンM1を形成する。例えば、タイヤ10のトレッド部に、第1の模様パターンM1を形成する。ステップS302では、透明板221を路面としてセットする。ステップS303では、撮影部である撮影装置3が、少なくとも2台のカメラで、透明板221を介して第1の模様パターンM1を含むタイヤ10の表面を撮影する。ステップS304では、解析部41が撮影装置3によって撮影された画像を解析し、三次元座標を算出する。以上のタイヤ解析方法により、タイヤ10の接地状態などを確認することができる。
【0071】
(タイヤの接地有無の判定)
上述したタイヤ解析システムにおいて、透明板221に第2の模様パターンを形成しておき、撮影した画像を解析することによって、透明板221の上面221Uへのタイヤ10の接触状態すなわちタイヤ10の接地有無を判定できる。例えば、撮影した画像に含まれている、第1の模様パターンM1と第2の模様パターンとを比較することによって、透明板221の上面221Uへのタイヤ10の接触状態を判定できる。
【0072】
図13は、第2の模様パターンを用いてタイヤ10の接地有無を判定するようにしたタイヤ解析装置を含むタイヤ解析システムを示す構成図である。
図13に示すように、透明板221の上面221Uに、第2の模様パターンM2が形成されている。第2の模様パターンM2は、例えば、上述した第1の模様パターンM1と同様の形状及び大きさである。
【0073】
第2の模様パターンM2は、カメラ31a及び31bによってそれぞれ撮影できる位置に形成する。したがって、カメラ31aは第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2が1つの画像に含まれるように撮影できる。また、カメラ31bも第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2が1つの画像に含まれるように撮影できる。第2の模様パターンM2は、透明板221の上面221Uの少なくとも1箇所に形成すればよい。第2の模様パターンM2は、透明板221の上面221Uに複数設けてもよい。
【0074】
なお、第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2を撮影する時に、タイヤ10に荷重をかけなくてもよい。タイヤ荷重負荷時に透明板221が微妙に動く場合又はその恐れがある場合は、タイヤ10に荷重をかけた上で第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2を同時に撮影することが好ましい。
【0075】
第1の模様パターンM1に関して説明した非接触形状測定手法を用いることによって、第2の模様パターンM2について、三次元座標を測定できる。
【0076】
本実施形態では、第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2をカメラ31a及び31bによって撮影した画像に基づき、三次元座標を得る。このとき、第2の模様パターンM2についての三次元座標を接地有無判定の基準位置とし、その基準位置と第1の模様パターンM1についての三次元座標とを比較することによって、タイヤ10の接地有無を判定する。例えば、第2の模様パターンM2の任意の1点のZ座標の値を閾値とし、第1の模様パターンM1についてのZ座標の値を閾値と比較することによって、タイヤ10の接地有無を判定する。第1の模様パターンM1の特定点のZ座標の値をZ1、基準位置のZ座標の値をZcutとした場合、Z1≧Zcutであればタイヤ10は接地していると判定でき、Z1<Zcutであればタイヤ10は接地していないと判定できる。
【0077】
なお、接地有無判定の基準位置を選択する際、第2の模様パターンM2の端から、模様1周期以内の領域の点を基準位置とすることは避けることが望ましい。サンプリングモアレ法の解析の制約につき、第2の模様パターンM2の端から模様1周期以内の領域では接地有無判定の精度が保障されないためである(以降、理由1と呼ぶ)。すなわち、間引き処理して線形補間を行うために模様の1周期だけ離れた画素同士の輝度を参照する場合、画像内の第2の模様パターンM2の端から模様1周期以内の領域では第2の模様パターンM2の外(第2の模様パターンM2以外の領域)の画素の輝度を参照することになり、線形補間を正しく行えず、接地有無判定の精度を保障できない。
【0078】
図14Aは、第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2を撮影した画像の例を示す図である。
図14Bは、三次元形状の測定結果の例をグレースケールによって示すコンター図である。
図14Cは、
図14Bにおいてグレースケールで示す三次元形状の測定結果の指標を示す図である。
図14Bに示す三次元形状の測定結果は、第1の模様パターンM1を撮影した画像について解析部41が解析処理を行うことによって得られる。
【0079】
図14Aに示すように、撮影部によって撮影した画像には、第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2が含まれている。
図14Bに示す三次元形状の測定結果は、解析部41が撮影した画像について解析処理を行うことによって得られる。
図14Cは、色が濃いほどタイヤ10が透明板221に接近している(すなわちタイヤ径方向の座標Zがプラスの方向である)ことを示し、色が薄いほどタイヤ10が透明板221から離れている(すなわちタイヤ径方向の座標Zがマイナスの方向である)ことを示す。したがって、
図14Bを参照すると、タイヤ10と透明板221との距離はタイヤ幅方向に沿って接地中心からショルダー部に向かうにしたがって大きくなっていくことが理解できる。なお、
図14Bにおいて、第1の模様パターンM1の端部において、色が濃い部分又は色が薄い部分が多いのは、理由1による。
【0080】
ここで、
図14Dは、
図14Bに示す三次元形状の測定結果を二値化した画像である。
図14Dは、
図14Aに示す画像に含まれている第2の模様パターンM2の座標Zの値を基準位置とし、その基準位置を閾値として
図14Bに示す三次元形状の測定結果を二値化した画像である。
図14Dは、閾値以上の部分(タイヤ径方向の座標Zがプラスの部分)を白色で示し、閾値未満の部分(タイヤ径方向の座標Zがマイナスの部分)を黒色で示す。
図14Dに示す白色部分はタイヤ10が透明板221に接触している部分であり、黒色部分はタイヤ10が透明板221に接触していない部分である。このように、第2の模様パターンM2の画像に基づいて、タイヤ10の接地有無を判定できる。
【0081】
第2の模様パターンM2の複数の点それぞれのZ座標の値の平均値を閾値とし、第1の模様パターンM1についてのZ座標の値を閾値と比較することによって、タイヤ10の接地有無を判定してもよい。この場合の平均値は、三次元座標のうち、Z座標の値についての相加平均である。第2の模様パターンM2の複数の点それぞれのZ座標の値の平均値を閾値とすることにより、タイヤ10の接地有無をより高い精度で判定することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、Z座標を接地判定の基準位置としているため、X座標、Y座標についての平均値の算出を行う必要はない。
【0083】
透明板221に第2の模様パターンを複数形成した場合は、以下のようにタイヤ10の接地状態を判定できる。
図15は、透明板221に複数の第2模様パターンを形成した場合を示す図である。
図15に示すように、透明板221は、上面221Uに形成された3つの第2模様パターンM21,M22及びM23を有する。3つの第2模様パターンM21,M22及びM23のうちの1つについて、上記と同様に、任意の1点のZ座標の値を閾値とするか、又は複数の点それぞれのZ座標の値の平均値を閾値とすればよい。この場合の平均値も、三次元座標のうち、Z座標の値についての相加平均である。複数の点それぞれのZ座標の値の平均値を閾値とすることにより、タイヤ10の接地有無をより高い精度で判定することができる。
【0084】
また、3つの第2模様パターンM21,M22及びM23それぞれから任意の1点のZ座標の値又は複数の点それぞれのZ座標の値を抽出し、抽出した全ての点のZ座標の値の平均値を閾値としてもよい。この場合の平均値も、三次元座標のうち、Z座標の値についての相加平均である。複数の点それぞれのZ座標の値の平均値を閾値とすることにより、タイヤ10の接地有無をより高い精度で判定することができる。
【0085】
(接地有無の判定方法)
図16は、第2模様パターンを用いたタイヤ10の接地有無を判定する方法を示すフローチャートである。
【0086】
図16において、ステップS401では、透明板221の上面221Uの少なくとも1箇所に第2の模様パターンを形成する。ステップS402では、第2の模様パターンの位置を接地判定の基準位置に設定する。ここでは、第2の模様パターンのZ座標の値を接地判定の基準位置に設定する。ステップS403では、第2の模様パターンを撮影する。この場合、少なくとも2台のカメラで第2の模様パターンを撮影する。ステップS404では、非接触形状測定手法により、第2の模様パターンの三次元座標を算出する。ステップS405では、算出した三次元座標について、基準位置を閾値として、タイヤ10の接地有無を判定する。
【0087】
以上のように、第2の模様パターンを基準位置に設定してタイヤ10の接地有無を判定することにより、高い精度でタイヤ10の接地有無を判定できる。
【0088】
(角度算出部)
ところで、高い精度でタイヤ10の接地有無を判定するためには、透明板221は、水平に設置されていることが好ましい。透明板221が水平に設置されているか否かは、角度算出部42が、透明板221の傾斜角度を算出することによって判定できる。例えば、第2の模様パターンM2を撮影した画像に基づいて、透明板221の傾斜角度を算出することにより、透明板221が水平に設置されているか否かを判定できる。そして、判定結果に基づいて、三次元座標の測定結果を補正することによって、安定した精度で接地有無を判定することができる。
【0089】
図17は、3つの第2の模様パターンを用いて、透明板221の傾斜角度を算出する場合の処理を示す図である。
図17に示すように、3つの第2の模様パターンM21,M22及びM23のうち、第2の模様パターンM21の中心点Aから第2の模様パターンM22の中心点Bへ向かう方向は、傾斜している透明板221の長軸方向iと一致する。また、第2の模様パターンM21の中心点Aから第2の模様パターンM23の中心点Cへ向かう方向は、傾斜している透明板221の傾斜の短軸方向jと一致する。また、傾斜している透明板221の厚さ方向に沿った方向を、厚さ方向kとする。
【0090】
傾斜が無い場合の透明板221の長軸方向を方向X、傾斜が無い場合の透明板221の短軸方向を方向Y、傾斜が無い場合の透明板221の厚さ方向に沿った方向を、厚さ方向Zとする。方向Xと長軸方向iとがなす角度をαとし、方向Yと短軸方向jとがなす角度をβとする。
【0091】
中心点Aの座標を(a1,a2,a3)、中心点Bの座標を(b1,b2,b3)、中心点Cの座標を(c1,c2,c3)とする。すると、
AB(→)=(b1−a1,b2−a2,b3−a3) …(2)
X(→)=(b1−a1,b2−a2,0) …(3)
AC(→)=(c1−a1,c2−a2,c3−a3) …(4)
Y(→)=(c1−a1,c2−a2,0) …(5)
となる。ただし、式(2)から式(5)において、「(→)」はベクトルであることを示し、以下同様である。
【0092】
なお、b2−a2≒0、かつ、c1−a1≒0となるように、中心点A,B及びCの位置を予め決めておく。X(→)及びY(→)は、それぞれ(1,0,0)、(0,1,0)を基底とするベクトルであるためである。
【0093】
式(2)から式(5)において、ベクトルの内積の公式により、角度α及び角度βを算出することができる。
【0094】
補正前の三次元座標を(X,Y,Z)、傾斜角度をα、βと定義する。また、点Aは原点(X,Y,Z)=(0,0,0)とする。
【0095】
傾斜角度βによる一次補正後の三次元座標を(X1,Y1,Z1)とすると、
X1=X
Y1=Y×cosβ − Z×sinβ
Z1=Y×sinβ + Z×cosβ
となる。
【0096】
次に、傾斜角度αによる最終的な三次元座標を(X2,Y2,Z2)とすると、
X2=X1×cosα + Z1×sinα
Y2=Y1
Z2=−X1×sinα + Z1×cosα
となる。
【0097】
図18は、1つの第2の模様パターンを用いて、透明板221の傾斜角度を算出する場合の処理を示す図である。
図18は、第2の模様パターンM2の大きさを誇張して示す。
図18に示すように、1つの第2の模様パターンM2に含まれる複数の点A1,B1及びC1について、
図17を参照して説明した処理と同様の処理によって、角度α及び角度βを算出することができる。
【0098】
図19A及び
図19Bは、タイヤ10の接地中心部分の三次元形状の測定結果の例をグレースケールによって示すコンター図である。
図19Cは、
図19A及び
図19Bにおいてグレースケールで示す三次元形状の測定結果の指標を示す図である。
【0099】
図19Aは、補正前の三次元形状の測定結果の例を示す図である。
図19Bは、算出した角度α及び角度βを補正した、補正後の三次元形状の測定結果の例を示す図である。
【0100】
図19A及び
図19Bにおいて、色が濃いほどタイヤ10が透明板221に接近している(すなわちタイヤ径方向の座標Zがプラスの方向である)ことを示し、色が薄いほどタイヤ10が透明板221から離れている(すなわちタイヤ径方向の座標Zがマイナスの方向である)ことを示す。したがって、補正前の三次元形状の測定結果の例を示す
図19Aを参照すると、透明板221が傾斜しているため、透明板221とタイヤ10との距離が一定ではない。これに対し、補正後の三次元形状の測定結果の例を示す
図19Bを参照すると、透明板221の傾斜が補正されたため、透明板221とタイヤ10との距離が一定であることがわかる。
【0101】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、タイヤの接地している部分の形状の解析を実現できる。また、複数のカメラの撮影方向同士がなす角度θを28.6度以上68.2度以下に設定することにより、精度の高い三次元形状を得ることができる。
【0102】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、フーリエ変換法を用いてタイヤのトレッドの接地形状を得る。サンプリングモアレ法の代わりにフーリエ変換法を用いる点を除き、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様である。このため、第2の実施形態では、第1の模様パターンM1の画像についてフーリエ変換を行う。第2の模様パターンM2の画像についてもフーリエ変換を行う。
【0103】
図20は、第2の実施形態にかかるタイヤ解析システムのタイヤ解析装置の主たる機能を示すブロック図である。
図20に示すように、タイヤ解析装置4は、解析部41を有する。解析部41は、撮影装置3によって撮影したタイヤ画像について解析処理を行って三次元形状を得ることができる。解析部41は、フーリエ変換部418と、逆フーリエ変換部419と、アンラッピング処理部416と、三次元形状算出部417とを有する。
【0104】
フーリエ変換部418は、撮影部によって撮影した画像を二次元フーリエ変換し、パワースペクトルを取得する。逆フーリエ変換部419は、取得したパワースペクトルについて水平方向及び上下方向の一次調和波を抽出し、それぞれについて二次元逆フーリエ変換する。アンラッピング処理部416は、二次元逆フーリエ変換によって得られたラッピング型の位相分布を位相接続して、アンラッピング型に変換する。三次元形状算出部417は、各カメラによる撮影画像の位相分布と各カメラの視線(撮影方向)とに基づいて、タイヤ10の三次元形状を算出する。三次元形状算出部417は、カメラの視線、つまりカメラ31aとカメラ31bとタイヤ10(透明板221)との相対位置に基づいてカメラ31a、31bのそれぞれで取得した撮影画像の位相分布を視線データとして利用することで三次元形状を得る。
【0105】
なお、接地有無判定の基準位置を選択する際、第2の模様パターンM2の端から、模様0.5周期以内の領域の点を基準位置とすることは避けることが望ましい。フーリエ変換法による位相解析の制約につき、第2の模様パターンM2の端から模様0.5周期以内の領域では接地有無判定の精度が保障されないためである。フーリエ変換法による位相解析を行う場合、画像内の第2の模様パターンM2の端から模様0.5周期以内の領域では誤差が増大し、接地有無判定の精度を保障できない。
【0106】
図21は、撮影部によって撮影した画像をフーリエ変換部418が二次元フーリエ変換して取得する、パワースペクトルの例を示す図である。
図21は、上下方向周波数及び水平方向周波数のパワースペクトルを示す。逆フーリエ変換部419は、
図21に示すパワースペクトルについて、上下方向の一次調和波WV及び水平方向の一次調和波WHを抽出する。
【0107】
図22は、本実施形態にかかるタイヤ解析システム1によるタイヤ解析方法を示すフローチャートである。
図22において、ステップS501では、撮影装置3により、模様パターンを少なくとも2台のカメラで撮影する。ステップS502では、撮影装置3によって撮影した画像を二次元フーリエ変換し、パワースペクトルを取得する。ステップS503では、取得したパワースペクトルから、上下方向の一次調和波WV及び水平方向の一次調和波WHを抽出し、それぞれについて二次元逆フーリエ変換する。ステップS504では、二次元逆フーリエ変換によって得られたラッピング型の位相分布を位相接続して、アンラッピング型に変換する。ステップS505では、各カメラによる撮影画像の位相分布と各カメラの視線(撮影方向)とに基づいて、三次元形状を算出する。
【0108】
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様に、第2の模様パターンM2を撮影した画像に基づいてタイヤ10の接地状態を判定できる。また、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様に、第2の模様パターンM2を撮影した画像に基づいて透明板221の傾斜を検出し、三次元座標の測定結果を補正することができる。
【0109】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、タイヤの接地している部分の形状の解析を実現できる。また、複数のカメラの撮影方向同士がなす角度θを28.6度以上68.2度以下に設定することにより、精度の高い三次元形状を得ることができる。
【0110】
(第3の実施形態)
本実施形態では、デジタル画像相関法を用いてタイヤのトレッドの接地形状を得る。サンプリングモアレ法の代わりにデジタル画像相関法を用いる。デジタル画像相関法を用いるため、第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2をランダムパターンとする。ランダムパターンは、規則性を有しない模様からなるパターンである。これらを除き、第3の実施形態は、第1の実施形態と同様である。
【0111】
図23は、第3の実施形態にかかるタイヤ解析システムのタイヤ解析装置の主たる機能を示すブロック図である。
図23に示すように、タイヤ解析装置4は、解析部41を有する。解析部41は、撮影装置3によって撮影したタイヤ画像について解析処理を行って三次元形状を得ることができる。解析部41は、パターンマッチング部420と、対応点算出部421と、三次元形状算出部417とを有する。
【0112】
パターンマッチング部420は、撮影装置3によって撮影した画像に対し、パターンマッチング法を適用する。例えば、特徴ベースマッチング、領域ベースマッチング又は位相ベースマッチングのいずれか1つを適用する。対応点算出部421は、第1の実施形態又は第2の実施形態において説明した位相分布に相応する、複数の異なる方向からの撮影画像の対応点を算出する。三次元形状算出部417は、複数の異なる方向からの撮影画像の対応点と各カメラの視線(撮影方向)とに基づいて、三次元形状を算出する。三次元形状算出部417は、各撮影画像の対応点とカメラの視線、つまりカメラ31aとカメラ31bとタイヤ10(透明板221)との相対位置に基づいてカメラ31a、31bのそれぞれで取得した撮影画像の位相分布を視線データとして利用することで、三次元形状を得ることができる。本実施形態においては、第1の模様パターンM1及び第2の模様パターンM2にランダムパターンを用いている。このため、同じ形状の孔が規則的に並んだパターンなどの規則的なパターンを用いる場合に比べて、対応点の算出を正確に行うことができ、より正確な三次元形状を得ることができる。
【0113】
図24は、本実施形態にかかるタイヤ解析システム1によるタイヤ解析方法を示すフローチャートである。
図24において、ステップS601では、ランダムパターンを形成したタイヤの表面を少なくとも2台のカメラで撮影する。ステップS602では、2台のカメラによる撮影画像に対し、パターンマッチング法を適用する。ステップS603では、複数の異なる方向からの撮影画像の対応点を算出する。ステップS604では、算出した対応点と各カメラの視線(撮影方向)とに基づいて、三次元形状を算出する。
【0114】
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様に、第2の模様パターンM2を撮影した画像に基づいてタイヤ10の接地状態を判定できる。また、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様に、第2の模様パターンM2を撮影した画像に基づいて透明板221の傾斜を検出し、三次元座標の測定結果を補正することができる。
【0115】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、タイヤの接地している部分の形状の解析を実現できる。
【0116】
(第4の実施形態)
本実施形態では、光切断法を用いてタイヤのトレッドの接地形状を得る。本実施形態では、上述した第1の模様パターン及び第2の模様パターンはいずれも不要である。また、本実施形態では、少なくとも1台のカメラを用いれば足り、2台のカメラを用いる必要はない。
【0117】
図25は、本発明の第4の実施形態にかかるタイヤ解析装置を含むタイヤ解析システムを示す構成図である。
図26は、
図25に示したタイヤ解析システムのタイヤ解析装置の機能を示すブロック図である。これらの図において、
図25は、タイヤ解析システムの全体構成を模式的に示し、
図26は、タイヤ解析装置の主たる機能を示している。
【0118】
本実施形態にかかるタイヤ解析システム1は、所定条件を入力したときのタイヤ形状の変化又はタイヤの表面の歪みの変化を測定することにより、タイヤの挙動解析(タイヤの応答性評価)を行うシステムに適用される。タイヤ解析システム1は、タイヤ試験機2と、撮影装置3と、タイヤ解析装置4とを備える(
図25参照)。タイヤ試験機2は、第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0119】
撮影装置3は、カメラ31aと、照明用ランプ32を有する。カメラ31aは、タイヤ10を撮影する撮影部であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。カメラ31aは、透明板221を介してタイヤ10を撮影する。カメラ31aは、透明板221の他主面である下面221Dから試験タイヤ10を撮影する。また、カメラ31aは、試験タイヤ10を相互に異なる方向から撮影できる位置に配置される。カメラ31aは、試験タイヤ10を撮影して、タイヤ画像(試験タイヤ10のデジタル画像データ)を生成する。照明用ランプ32は、カメラ31aの撮影範囲にスリット光を照射する。照明用ランプ32は、スリット光をタイヤ10の表面に照射する。照明用ランプ32は、例えば、ラインレーザ光をタイヤ10の表面に照射する。カメラ31aによって撮影して取得したタイヤ画像は、タイヤ解析装置4の解析部41によって処理される。
【0120】
図26に示すように、タイヤ解析装置4は、解析部41を有する。解析部41は、撮影装置3によって撮影したタイヤ画像について解析処理を行って三次元形状を得ることができる。解析部41は、計算部422を有する。計算部422は、タイヤ画像に基づいて、三次元形状を算出する。計算部422は、タイヤ画像のスリット光の結像位置に基づいて、三角測量法によって三次元形状を算出する。計算部422は、カメラの位置、タイヤの位置、及び、照明用ランプ32の位置について三角測量法を適用することによって、三次元形状を算出する。
【0121】
図27は、本実施形態にかかるタイヤ解析システム1によるタイヤ解析方法を示すフローチャートである。
図27において、ステップS701では、照明用ランプ32によって、透明板221を介して、スリット光をタイヤ10の表面に照射する。ステップS702では、透明板221を介してカメラ31aによってタイヤ10の表面を撮影し、タイヤ10の画像を取得する。ステップS703では、取得した画像に含まれるスリット光の結像位置を基に、三角測量法によって三次元形状を算出する。ステップS704では、必要な範囲の三次元形状が得られたか否か判定する。ステップS704において、必要な範囲の三次元形状が得られていない場合(ステップS704においてNo)、ステップS705において照明用ランプ32のスリット光の照射位置を変更する。その後、ステップS701に戻り、処理を継続する。ステップS704において、必要な範囲の三次元形状が得られた場合(ステップS704においてYes)、処理は終了となる。
【0122】
つまり、スリット光の照射位置を変更しつつ、ステップS701からステップS703までの処理を繰り返し行うことにより、タイヤ10の三次元形状を算出することができる。
【0123】
以上説明したように、第4の実施形態によれば、タイヤの接地している部分の形状の解析を実現できる。また、第4の実施形態によれば、カメラを2台用いずに、1台のカメラで、タイヤ10の三次元形状を算出することができる。
【0124】
(第5の実施形態)
本実施形態では、距離センサを用いてタイヤのトレッドの接地形状を得る。本実施形態では、上述した第1の模様パターン及び第2の模様パターンはいずれも不要である。また、本実施形態では、少なくとも1台のカメラを用いれば足り、2台のカメラを用いる必要はない。
【0125】
図28は、本発明の第5の実施形態にかかるタイヤ解析装置を含むタイヤ解析システムを示す構成図である。
図29は、
図28に示したタイヤ解析システムのタイヤ解析装置の機能を示すブロック図である。これらの図において、
図28は、タイヤ解析システムの全体構成を模式的に示し、
図29は、タイヤ解析装置の主たる機能を示している。
【0126】
本実施形態にかかるタイヤ解析システム1は、所定条件を入力したときのタイヤ形状の変化又はタイヤの表面の歪みの変化を測定することにより、タイヤの挙動解析(タイヤの応答性評価)を行うシステムに適用される。タイヤ解析システム1は、タイヤ試験機2と、撮影装置3と、タイヤ解析装置4とを備える(
図28参照)。タイヤ試験機2は、第1の実施形態と同様の構成を有する。
【0127】
撮影装置3は、カメラ31aと、照明用ランプ32を有する。カメラ31aは、タイヤ10を撮影する撮影部であり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。カメラ31aは、透明板221を介してタイヤ10を撮影する。カメラ31aは、透明板221の他主面である下面221Dから試験タイヤ10を撮影する。また、カメラ31aは、試験タイヤ10を相互に異なる方向から撮影できる位置に配置される。カメラ31aは、試験タイヤ10を撮影して、タイヤ画像(試験タイヤ10のデジタル画像データ)を生成する。照明用ランプ32は、カメラ31aの撮影範囲にスポット光を照射する。照明用ランプ32は、スポット光をタイヤ10の表面に照射する。カメラ31aによって撮影して取得したタイヤ画像は、タイヤ解析装置4の解析部41によって処理される。
【0128】
図29に示すように、タイヤ解析装置4は、解析部41を有する。解析部41は、撮影装置3によって撮影したタイヤ画像について解析処理を行って三次元形状を得ることができる。解析部41は、計算部422を有する。計算部422は、タイヤ画像に基づいて、三次元形状を算出する。計算部422は、タイヤ画像のスポット光の結像位置に基づいて、三角測量法によって三次元形状を算出する。計算部422は、カメラの位置、タイヤの位置、及び、照明用ランプ32の位置について三角測量法を適用することによって、三次元形状を算出する。
【0129】
図30は、本実施形態にかかるタイヤ解析システム1によるタイヤ解析方法を示すフローチャートである。
図30において、ステップS801では、照明用ランプ32によって、透明板221を介して、スポット光をタイヤ10の表面に照射する。ステップS802では、透明板221を介してカメラ31aによってタイヤ10の表面を撮影し、タイヤ10の画像を取得する。ステップS803では、取得した画像に含まれるスポット光の結像位置を基に、三角測量法によって三次元形状を算出する。ステップS804では、必要な範囲の三次元形状が得られたか否か判定する。ステップS804において、必要な範囲の三次元形状が得られていない場合(ステップS804においてNo)、ステップS805において照明用ランプ32のスポット光の照射位置を変更する。その後、ステップS801に戻り、処理を継続する。ステップS804において、必要な範囲の三次元形状が得られた場合(ステップS804においてYes)、処理は終了となる。
【0130】
つまり、スポット光の照射位置を変更しつつ、ステップS801からステップS803までの処理を繰り返し行うことにより、タイヤ10の三次元形状を算出することができる。
【0131】
以上説明したように、第5の実施形態によれば、タイヤの接地している部分の形状の解析を実現できる。また、第5の実施形態によれば、カメラを2台用いずに、1台のカメラで、タイヤ10の三次元形状を算出することができる。