特許第6544022号(P6544022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6544022熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544022
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/54 20060101AFI20190705BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   B29C49/54
   B29C33/42
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-90930(P2015-90930)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-203565(P2016-203565A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 宗久
(72)【発明者】
【氏名】鳴瀧 紘一
【審査官】 塩見 篤史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−025469(JP,A)
【文献】 特開2008−238615(JP,A)
【文献】 実開昭62−154812(JP,U)
【文献】 特開2008−254364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76,39/26−39/36,41/38−41/44,43/36−43/42,43/50,45/26−45/44,45/64−45/68,45/73,49/48−49/56,49/70,51/30−51/40,51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部成形用金型を備え、底部にボトル内部に向けて突出したアンダーカットを有する熱可塑性樹脂製ボトルを成形するブロー成形金型であって、
前記口部成形用金型のパーティングライン下端部に、角取り部を設けたことを特徴とする熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型。
【請求項2】
前記角取り部は、前記口部成形用金型のパーティング面と成形面と底面のそれぞれの縁に対して角取りされていることを特徴とする請求項1に記載された熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型。
【請求項3】
前記角取り部は、前記口部成形用金型のパーティング面と成形面と底面とに接する湾曲面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載された熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型。
【請求項4】
前記湾曲面の曲率は、徐変していることを特徴とする請求項3に記載された熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型。
【請求項5】
底部にボトル内部に向けて突出したアンダーカットを有する熱可塑性樹脂製ボトルの製造方法であって、
成形されたパリソンをブロー成形金型内で保持する工程と、
前記ブロー成形金型内で保持したパリソンにブローエアを吹き込む工程と、
冷却した前記ブロー成形金型を開いて、ボトルを取り出す工程とを有し、
前記ブロー成形金型が、パーティングライン下端部に角取り部を設けた口部成形用金型を備えることを特徴とする熱可塑性樹脂製ボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型及びそれを用いた熱可塑性樹脂製ボトルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂製ボトルは、一般に、ブロー成形によって製造される。ブロー成形は、押し出し機より押し出されたパリソンを一対の金型(割型)内で保持し、ブローノズルをパリソン内に差し込んでブローエアなどの流体を吹き込むことにより、パリソンを金型キャビティの成形面に押し当てて、所望形状のボトルに成形し、成形物を保形可能温度まで金型内で冷却した後、金型を開いて成形物(ボトル)を取り出すものである。
【0003】
ボトルを製造するためのブロー成形金型は、口部成形用金型と胴部成形用金型と底部成形用金型を分離構成にしたものが知られている(下記特許文献1参照)。また、ボトルの形状としては、底部の中央を容器の内側に向けて(上向きに)突出させるアンダーカット(凹部)を設けたものが一般に知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−276483号公報
【特許文献2】特開平8−25469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性樹脂製のボトルにおいて底部に設けられるアンダーカットは、ボトルの自立性を確保するために凹状に設けられるものであり、ブロー成形完了後、金型を開いてボトルを離型する。一方、ボトルの口部から胴部に至る形状は様々であり、口部から急峻に外径が拡がる肩部を有するものなどがある。
【0006】
このような熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形において、底部にアンダーカットを設けたボトルでは、ブロー成形完了時における型開き時に、アンダーカットを成形するために設けた底部成形用金型の上向き凸部が、ボトルの底部外周部分を上方に押し上げることになり、口部成形用金型や胴部成形用金型が開く途中で、押し上げられたボトルが口部成形用金型や胴部成形用金型に接触する現象が生じる。特に、口部から急峻に外径が拡がる肩部を有するボトル形状の場合には、口部成形用金型のパーティングライン下端部の角部にボトルの肩部が接触して、型開き時の抵抗が大きくなったり、ボトルの肩部に僅かながら擦れ跡が形成されたりする不具合が起こりうる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、底部にアンダーカットを有するボトルをブロー成形で製造するに際して、型開き時に生じる不具合を解消すること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
口部成形用金型を備え、底部にボトル内部に向けて突出したアンダーカットを有する熱可塑性樹脂製ボトルを成形するブロー成形金型であって、前記口部成形用金型のパーティングライン下端部に、角取り部を設けたことを特徴とする熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明は、ブロー成形金型を型開きして、成形されたボトルを取り出す際に、ボトル底部にアンダーカットを形成する底部成形用金型の上向き凸部がボトルを押し上げて、ボトルの肩部が口部成形用金型のパーティングライン下端部に接触したとしても、そのパーティングライン下端部に角取り部が形成されているので、型開き時に大きな抵抗を受けることが無く、また、ボトルの肩部に目立った擦れ跡が付くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型を示した断面図(パーティング面に対して90°方向の縦断面)である。
図2】本発明の実施形態に係る熱可塑性樹脂製ボトルのブロー成形金型における口部成形用金型を示した説明図である。
図3】口部成形用金型の角取り部を示した説明図である。
図4】本発明の実施形態に係るブロー成形金型を用いたボトルの製造方法を示した説明図である。((a)がパリソンを成形金型内で保持する工程、(b)がパリソン内にブローエアを吹き込む工程、(c)が型開きによってボトルを取り出す工程をそれぞれ示している。)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係るブロー成形金型1は、ブロー成形によって、熱可塑性樹脂製のボトルを成形するものである。
【0012】
図1に示したブロー成形金型1は、胴部成形用金型2、口部成形用金型3、底部成形用金型4を備えている。ここでは、それぞれの金型が分離構成されているが、胴部成形用金型2と底部成形用金型4は一体の金型であっても良い。図においては、X,Y方向が水平方向を示し、Z方向が垂直(上下)方向を示している。胴部成形用金型2と口部成形用金型3と底部成形用金型4は、いずれもパーティング面を互いに対面させる一対の割金型である。
【0013】
ブロー成形金型1によって成形されるボトルの形態は任意であるが、ここでは、底部成形用金型4が上向き(図示Z方向)に突出した凸状成形面4Aを有しており、成形されるボトルの底部には、凸状成形面4Aによって成形され、ボトル内部に向けて突出するアンダーカットが形成される。また、口部成形用金型3の直下における胴部成形用金型2には、口部から急峻に外径が拡がる肩部を成形するための拡径部2Aが設けられている。
【0014】
ブロー成形金型1が備える口部成形用金型3は、図1及び図2に示すように、成形面3Aに雄ねじを成形するための条溝3Bを備えており、胴部成形用金型2に係合することで、ボトルの口部を成形する。そして、口部成形用金型3は、パーティングライン31の下端部に、角取り部30を備えている。
【0015】
角取り部30は、図2及び図3に示すように、口部成形用金型3のパーティング面3Pと成形面3Aと底面3Cのそれぞれの縁に対して角取りされている。すなわち、パーティング面3Pと成形面3Aと底面3Cの全てに接する湾曲面30Rを有している。この湾曲面30Rは、例えば、水平方向であるX,Y方向と垂直方向であるZ方向の3軸に対して接する湾曲面であり、その湾曲面30Rの曲率が徐変している。すなわち、パーティング面3Pと成形面3Aと底面3Cの縁に接する部分の曲率半径R1に対して、そこから離れた部分の曲率半径R2が徐々に小さくなっている。
【0016】
このような角取り部30を設けると、型開き時に底部成形金型4の凸状成形面4Aによってボトルが上方に押し上げられて、ボトルの肩部が口部成形用金型3のパーティングライン31の下端部に接触しても、この角取り部30が接触することになるので、肩部表面に目立った擦れ跡が形成されるのを防ぐことができ、また、この接触で型開き時の抵抗が大きくなるといった不具合が生じることもない。
【0017】
口部成形用金型3のパーティングライン31の下端部に角取り部30を設けると、パーティング面3Pの合わせ部に小さな溝が形成されることになり、その溝によってボトルの口部下端に小さな突起が形成されることになるが、前述したように、角取り部30の湾曲面30Rの曲率を徐変させることで、この突起を極力目立たなくすることができる。
【0018】
図4によって、ブロー成形金型1を用いた熱可塑性樹脂製ボトルの製造方法における各工程を説明する。図4(a)に示すように、第1の工程では、押し出されたパリソン5をブロー成形金型1内で保持する。図示の例では、押し出し成形される中空状のパリソン5を、ピックアップチャック6A,6Bで掴んだ状態で、一対のブロー成形金型1内に供給している。この際、上側のピックアップチャック6Aはパリソン5の上端を開口した状態で掴んでいる。
【0019】
図4(b)に示すように、第2の工程では、ブロー成形金型1内で保持したパリソン5にブローエアを吹き込む。この例では、パリソン5の上端開口にブローノズル7を差し込んで、ブローノズル7でブロー成形金型1の上部開口を密封しながら、ブローエアをブロー成形金型1内に吹き込んでいる。
【0020】
図4(c)に示すように、第3の工程では、パリソン5をブロー成形金型1の成形面に密着させた後、冷却したブロー成形金型1を開いて、ボトルWを取り出す。この際、ボトルWはピックアップチャック6A,6Bで保持されており、ブロー成形金型1を左右に型開きすることで、ブロー成形金型1からボトルWが離脱する。この型開き工程では、底部成形用金型4に設けた凸状成形面4Aによって、ボトルWは上方に押し上げられることになり、口部成形用金型3におけるパーティングライン31の下端部がボトルWの肩部に接触することがある。
【0021】
本発明の実施形態に係る成形金型1には、前述したように、口部成形用金型3のパーティングライン31の下端部に角取り部30(湾曲面30R)が設けられているので、ボトルWの肩部が口部成形用金型3の下端部に接触することがあっても、それによって大きな不具合が生じることはない。よって、本発明の実施形態係るブロー成形金型1を用いたボトルの製造方法は、型開き時の不具合を解消して、良品質のボトルWを得ることができる。
【0022】
なお、前述した型開き時の不具合を解消する方法として、分離構成された底部成形用金型4を型開き時に下方に移動させることも考えられるが、これによると、ブロー成形金型1の型開き動作が煩雑になり、連続動作時の位置合わせ精度を確保するのが難しくなる。本発明の実施形態によると、底部成形用金型4を胴部成形用金型2と一体にして型開きすることができるので、型開き時の動作の煩雑さや、連続動作時の位置合わせ調整の煩雑さが解消されることになり、生産性の向上に寄与することができる。
また、前述した角取り部30は、肩部の上方の口部の擦れ跡を防止するため、例えば、口部成形用金型3の条溝3Bを備える部位の成形面3Aのパーティングライン31の上端部、下端部等にさらに設けても良い。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
1:ブロー成形金型,
2:胴部成形用金型,2A:拡径部,
3:口部成形用金型,3A:成形面,3B:条溝,3C:底面,
3P:パーティング面,
30:角取り部,31:パーティングライン,30R:湾曲面,
4:底部成形用金型,4A:凸状成形面,
5:パリソン,6A,6B:ピックアップチャック,7:ブローノズル,
W:ボトル,
図1
図2
図3
図4