(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態である第1実施形態の逆止弁装置及びこれを備える蒸発燃料供給システムについて、
図1〜
図6を参照しながら説明する。
【0014】
エンジンの吸気系1に導入された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジンに供給される燃焼用燃料と混合されて、エンジンのシリンダ内で燃焼される。エンジンの吸気系1は、エンジンの吸気マニホールド20にスロットルバルブ21を介して吸気管10の一端側が接続され、さらに吸気管10の途中にフィルタ13、過給機12、インタークーラ11等が設けられることにより構成されている。蒸発燃料パージ系2は、燃料タンク80、キャニスタ70が、配管81、配管71、配管72を介して吸気マニホールド20に接続されることで構成される。
【0015】
フィルタ13は、吸気管10の最上流部に設けられ、吸気中の塵や埃等を捕捉する。過給機12は、吸気の充填効率を高めるための吸気用圧縮機で構成され、フィルタ13よりも下流側あるいは吸気マニホールド20側に設けられている。過給機12は、エンジンの排気エネルギーによって作動されるタービンに連動するコンプレッサを備える。過給機12のコンプレッサは、フィルタ13を通過した吸気を加圧して吸気マニホールド20に供給する。
【0016】
インタークーラ11は、冷却用の熱交換器である。インタークーラ11は、過給機12の下流側に設けられる。インタークーラ11では、過給機12によって加圧された吸気と外気との間で熱交換が行われて吸気が冷却される。スロットルバルブ21は、アクセルペダルと連動して吸気マニホールド20の入口部における開度を調節して、吸気マニホールド20内に流入される吸気量を調節する吸気量調節弁である。吸気は、フィルタ13、過給機12、インタークーラ11、スロットルバルブ21を順に通過して吸気マニホールド20内に流入し、インジェクタ等から噴射される燃焼用燃料と所定の空燃比となるように混合されてシリンダ内で燃焼される。
【0017】
燃料タンク80は、ガソリン等の燃料を貯留する容器である。燃料タンク80は、配管81によってキャニスタ70の流入部70aに接続されている。キャニスタ70は、内部に活性炭等の吸着材が封入された容器であり、燃料タンク80内で発生する蒸発燃料を、配管81を介して流入部70aから取り入れ、吸着材に一時的に吸着する。キャニスタ70には、外部の新鮮な空気を吸入するための吸入部70bが設けられている。キャニスタ70が吸入部70bを備えることにより、キャニスタ70内には大気圧が作用する。キャニスタ70は、吸入された新鮮な空気によって吸着材に吸着した蒸発燃料を容易に離脱することができる。
【0018】
キャニスタ70には、吸着材から離脱された蒸発燃料が流出される流出部70cが設けられている。流出部70cには配管71の一端側が接続される。配管71の他端側は、バルブ装置4の流入部に接続されている。ここで、配管71内の通路は、バルブ装置4に対して燃料が流入する燃料流入通路とも称する。バルブ装置4と逆止弁装置3は、中継通路73によって接続されて連通している。逆止弁装置3の流出側は、配管72の一端側に接続されている。ここで、配管72内の通路は、バルブ装置4から流出した燃料が通る燃料流出通路とも称する。配管72の他端側は吸気マニホールド20の流入部に接続されている。
【0019】
バルブ装置4は、配管71内の通路である燃料流入通路及び中継通路73、すなわち、蒸発燃料供給用通路を開閉する開閉手段であり、キャニスタ70からの蒸発燃料をエンジンへ供給することを許可及び阻止できる。バルブ装置4は、例えば、弁体、電磁コイル及びスプリングを備えた電磁弁装置によって構成される。バルブ装置4は、制御装置によって開度が制御される。バルブ装置4は、電磁コイルに通電されたときに発生する電磁力とスプリングの付勢力とのバランスに応じて、蒸発燃料の供給用通路を開閉する。
【0020】
バルブ装置4は、通常は供給用通路を閉じた状態を維持し、制御装置によって電磁コイルに通電が行われると、電磁力がスプリングの弾性力に打ち勝って、供給用通路を開いた状態にする。また、制御装置は、通電のオン時間とオフ時間とによって形成される1周期の時間に対するオン時間の比率、すなわちデューティ比を制御して電磁コイルに通電を行う。バルブ装置4は、デューティコントロールバルブともいう。この通電制御により、供給用通路を流通する蒸発燃料の流量が調節される。
【0021】
逆止弁装置3は、キャニスタ70から吸気管10に至る蒸発燃料の供給用通路であって、バルブ装置4と吸気管10または吸気マニホールド20との間に配設された弁である。逆止弁装置3は、供給用通路において、燃料流入通路から燃料流出通路への蒸発燃料の本来の流通を許容し、燃料流出通路から燃料流入通路への蒸発燃料の逆流を阻止する。逆止弁装置3は、蒸発燃料の本来の流通に伴って流路を開き、蒸発燃料の逆流に伴って流路を閉じる樹脂製の弁体を備える。
【0022】
車両の走行時に過給機12が作動していない場合(通常パージ)には、制御装置によってバルブ装置4が開かれると、ピストンの吸入作用によって発生する吸気マニホールド20内の負圧とキャニスタ70にかかる大気圧との差が生じる。この圧力差によって、キャニスタ70内に吸着された蒸気燃料は、燃料流入通路、バルブ装置4、中継通路73、逆止弁装置3、及び燃料流出通路を流れ、吸気マニホールド20内に吸引される。
【0023】
吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジンに供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジンのシリンダ内で燃焼される。また、エンジンのシリンダ内においては、燃焼用燃料と吸気との混合割合である空燃比が予め定めた所定の空燃比となるように制御される。制御装置は、バルブ装置4の開閉時間をデューティ制御することで、蒸発燃料をパージしても、所定の空燃比が維持されるように蒸発燃料のパージ量を調節する。
【0024】
車両の走行時に過給機12が作動している場合(過給時パージ)には、吸気マニホールド20内は加圧された吸気によって正圧となる。このため、バルブ装置4を通過して内燃機関に蒸発燃料量を供給することができなくなる。さらに、この正圧時には、蒸発燃料が逆流して蒸発燃料が大気中に放出されることがある。この逆流を防止するために逆止弁装置3が設けられている。逆止弁装置3は、長期間使用、非常に多数の作動回数に耐え得る耐久性が要求される。逆止弁装置3は、長期間使用、例えば、15年の実使用期間、15
万マイルの走行を経ても、当初の逆流防止機能を発揮できる性能を有する。
【0025】
次に、逆止弁装置3の構成について
図2〜
図6を参照して説明する。
図2は、閉弁時の逆止弁装置3を示した断面図である。
図3は、開弁時の逆止弁装置3を示した断面図である。逆止弁装置3は、中継通路73及び燃料流出通路を形成するパイプやハウジングの内部に設けられる。中継通路73を形成するハウジング34と燃料流出通路を形成する配管72とは、
図2に示すように、中継通路73と燃料流出通路とを一連の通路として連通するように接続される。ハウジング34と配管72はそれぞれの端部に設けられたフランジ部同士が結合されることで、外部へ蒸発燃料が漏れ出ないレベルのシール性を有して接続される。ハウジング34は、蒸発燃料が流れる上流側通路形成部材を構成する。配管72は、ハウジング34の内部を流れてきた蒸発燃料をさらに下流側の通路に導く下流側通路形成部材を構成する。
【0026】
配管72は、フランジ部よりも弁体側に突出する端末部であるポート720を有する。ポート720は、弁体よりも蒸発燃料の下流に位置する下流側通路724と、下流側通路724に連通する複数の分岐通路723と、を形成する。下流側通路724は、燃料流出通路の一部をなす通路であり、または燃料流出通路に繋がる通路である。下流側通路724は、弁体が開弁状態であるときに、複数の分岐通路723を通過してきた蒸発燃料が合流する通路を構成する。
【0027】
複数の分岐通路723は、ポート720の内部において下流側通路724の周囲に等間隔で周方向に並ぶそれぞれ放射状に延びる通路であり、同じ個数の仕切り壁725によって隣の通路に対し
て仕切られている。第1実施形態では、分岐通路723と仕切り壁725の個数は、それぞれ4個である。
【0028】
ポート720には、弁体や下方に面する端面に下流側通路724に繋がる開口部726が形成されている。開口部726及び下流側通路724は、配管72の軸線方向に並ぶように設けられている。開口部726の開口端から放射状に延びる開口周囲面721は、弁体における傘状の弁部31に対向する。開口周囲面721は、ポート720において軸方向に直交する端面であり、弁座342及び弁部31に対向する面である。また、ポート720の外周面は、開口周囲面721に対して直交する端面でもよいし、交差する端面であってもよい。
【0029】
ハウジング34に設けられた通路壁には、複数個の流体通路341と弁座342とが形成されている。複数個の流体通路341は、蒸発燃料が中継通路73から燃料流出通路へ向けて流れるときに通過する通路を構成する。複数個の流体通路341は、通路壁に支持される弁体の弁軸部30の周囲に円を描くように等間隔に並んで設けられる。第1実施形態では、
図6に図示するように流体通路341の個数は6個である。弁体の弁軸部30が固定される通路壁には、弁部31の裏側に対向する弁座342が設けられている。弁座342は、等間隔に環状に並ぶ複数の流体通路341に対して環状の径内側と径外側に位置する通路壁の表面に相当する。
【0030】
ポート720には、他の部分、例えば仕切り壁725の外周端面よりも径外方向に突出する形状の通路絞り部722が設けられている。通路絞り部722は、ポート720や弁体の軸方向に所定の長さを有するように設けられている。通路絞り部722は、ポート720の周囲を取り囲むハウジング34の内壁面343に対して、ポート720における他の部分の外周面よりも接近している部分のことである。ここでいう外周面は、ポート720において軸心の周囲に全周または部分的に形成される外表面のことであり、ハウジング34において弁座342を除く内壁面343に対面する部分の面である。
【0031】
通路絞り部722は、ポート720の全周において、仕切り壁725の外周端面よりも径外方向に突出するように形成されている。すなわち、ポート720の外周において通路絞り部722を除く他の部分と内壁面343との間に形成される通路は、通路絞り部722と内壁面343との間に形成される通路よりも断面積が大きくなっている。
【0032】
このように通路絞り部722は、流体通路341から下流側通路724に通じる通路における横断面積を局所的に小さくする絞り部を構成する。通路絞り部722とポート720の周囲を取り囲むハウジング34の内壁面343との間に形成される絞り通路727は、その横断面積が複数個の流体通路341の合計横断面積よりも小さくなるように設定されている。したがって、絞り通路727は、上流側通路である複数個の流体通路341と下流側通路724との間であって、弁体よりも下流側に設けられた局所的な通路狭小部である。絞り通路727は、弁体や弁座342に面する通路よりも上流側に位置する通路に対して通路横断面積が小さい通路を構成する。絞り通路727は、複数個の流体通路341と下流側通路724との間において、最も通路横断面積が小さい通路を構成する。
【0033】
逆止弁装置3は、複数個の流体通路341の周囲の少なくとも径外側に環状に設定される弁座342に対して接近、離反するように、その中心軸線に沿うように往復直線運動を行う弁体を備える。この弁体は、少なくとも、弁軸部30と、弁軸部30に一体形成されて弁軸部30から外方に向けて傘状に突出する弁部31と、を備えて構成されるバルブである。弁軸部30は、通路壁に固定される弁軸部であり、往復直線運動の際に変位しないように支持されている。
【0034】
逆止弁装置3の弁体は、弁軸部30の中継通路73側の端部に設けられるストッパ部32と、弁軸部30の弁部31側または下流側の端部に設けられる大径軸部と、を備える。ストッパ部32は、弁部31とは反対側または上流側で弁軸部30の端部に設けられる大径部である。したがって、弁体は、弁軸部30、弁部31、ストッパ部32及び大径軸部が一体となるように形成されるゴム製のバルブである。
【0035】
ストッパ部32、大径軸部は、例えば、弁軸部30よりも外側に突出した外形を有する環状凸部である。弁体は、中継通路73側のストッパ部32と燃料流出通路側の大径軸部とで通路壁を挟持して弁軸部30が通路壁に支持されることで、通路壁に取り付けられる。この取り付け状態では、弁体は、弁部31のみが流体である蒸発燃料による圧力に応じて、弾性変形することになる。
【0036】
弁体は、所定の材料を金型に投入して固めることにより成形することができる。例えば弁体は、各種のゴムを含むエラストマーで構成することができる。また弁体は、シリコーン系の合成樹脂のうちゴム状であるシリコーンゴムやフッ素ゴムまたはフロロシリコンゴムで構成することが好ましい。これは、弁体には低温、高温の双方において耐久性が要求されるからである。
【0037】
弁部31は、大径軸部33と一体である根元部から外周縁310まで径外側に延びる円盤形状をなす。弁部31は、
図2に図示する閉弁時または無負荷状態では、根元部から外周縁310にかけて、弁座342側に接近するような断面湾曲形状に形成されている。また、弁部31は、外周縁310に近づくほど先細りする先細り形状であってもよい。外周縁310は、流体通路341よりも径外側に位置する弁座342の一部に対して線接触する。外周縁310は、全周において弁座342に接触する。さらに外周縁310は、弁座342に接触したときに力を与える面積を小さく集中させるために、先端が細く鋭く形成されていてもよい。
【0038】
弁部31は、弁部31に作用する流体圧力の向きに応じて、弁部31の中ほどが弁座342側に変位するように弾性変形したり、外周縁310が弁座342から浮き上がるように弾性変形したりする。
図2に示すように、弁部31は、無負荷状態または弁部31の表面側の圧力、すなわち逆流方向に作用する圧力が低い低圧時で弾性変形しないか少し変形する程度であるが、外周縁310が弁座342に接触しているため、弁部31は線接触する。
【0039】
このように外周縁310が全周において弁座342に接触する状態から、吸気マニホールド20側からキャニスタ70側へ向けて逆流が発生すると、弁部31の表面が少し押されて弁座342側に変位するように弾性変形する。この弾性変形により、外周縁310がさらに弁座342に強く押すため、外周縁310と弁座342との線接触によるシール力が無負荷状態よりもさらに強くなる。したがって、弁部31の表面側に低圧力が作用するときには、外周縁310と弁座342との線接触によって、流体通路341を通じた流体通過を確実に遮断し、低圧時の漏れを抑制できる。
【0040】
例えば、通常パージ時にピストンの吸入作用によって吸気マニホールド20内に負圧が生じると、弁部31の表面に作用する圧力よりも裏面に作用する圧力が大きくなる。この場合、
図3に示すように、弁部31は全体的に弁座342から離れるように容易に弾性変形するため、外周縁310が浮き上がって弁座342から離れるようになる。この弁体の動作により流体通路341が開放されて中継通路73と燃料流出通路とが連通することで、弁体は流体通路341を通じた流体通過を許容する。そして、キャニスタ70内に吸着された蒸気燃料は、バルブ装置4を通過して中継通路73から流体通路341に流入し、弁座342と外周縁310との隙間を通過して、燃料流出通路を経て吸気マニホールド20内に吸引される。吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、エンジンに供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジンのシリンダ内で燃焼されることになる。
【0041】
このように蒸発燃料がエンジンへ供給されるときには、弁体よりも下流に位置する下流側通路724は、弁体よりも上流側に位置する流体通路341に対して負圧になり、上流側通路である流体通路341と下流側通路724との圧力差が大きくなる。このとき、流体通路341と下流側通路724との圧力差が大きいため、この圧力差に伴う外力が弁部31に作用して弁部31が弾性変形して、ポート720における開口周囲面721に張り付くようになる。
【0042】
図3に示すように、蒸発燃料は流体通路341から下流側通路724へ流れる途中で絞り通路727を通過するため、開弁直後の流体通路341の圧力が、開弁直前に比べてあまり低下しない。これにより、流体通路341と下流側通路724との圧力差を高い状態に維持できるので、弁部31を開口周囲面721側に弾性変形させる外力が急激には小さくならない。この外力は、弁部31が元の形状に戻ろうとする復元力に対抗するため、弁部31は急激に閉弁状態に戻ることはなく、急激な弁部31の形状変化を抑制できる。したがって、弁部31は、前述した従来の逆止弁の場合に比べて、開弁状態から閉弁状態にゆっくりと変化する。そして、弁部31は、徐々に弁座342に近づくように弾性変形し上流側通路である流体通路341から下流側通路724への蒸発燃料の供給を阻止する。
【0043】
さらに、再びエンジンの吸気圧力によって下流側通路724が流体通路341に対して負圧になると、前述したように弁部31が下流側に変位するように弾性変形するので、蒸発燃料のエンジンへの供給流れが発生する。以後、前述した現象が反復するため、弁部31について開口周囲面721側への変位と弁座342側への変位とが急激でない形状変化を伴って交互に繰り返されることで、弁部31に急激に応力が加わることを防止できる。
【0044】
一方、車両の走行時に過給機12が作動する過給時には、吸気マニホールド20内は加圧された吸気によって正圧となるため、弁部31の表面に作用する圧力が裏面に作用する圧力よりもかなり大きくなる。この場合、弁部31は全体的に弁座342側に変位するように弾性変形する。特に弁部31における流体通路341に対向する部位が流体通路341の内周縁に接触するように大きく変形する。つまり、弁部31は、流体通路341に蓋をするように、根元部分と外周縁310との間の部分が逆流方向に凹むように大きく変形する。
【0045】
以上のように、非過給時に、蒸発燃料がバルブ装置4から吸気マニホールド20に向けて流れる供給方向の流れが生じると、弁部31の裏面に作用する流体圧力によって、弁部31が弾性変形して供給方向に変位して、流体通路341が開放される。これにより、蒸発燃料は、流体通路341を通過して燃料流出通路、吸気マニホールド20へと流れる。
【0046】
一方、過給時には、吸気マニホールド20に高い正圧がかかるため、逆止弁装置3には供給方向とは反対向きに流体の圧力が大きくかかる。このため、蒸発燃料がバルブ装置4に向けて逆流する状況になるが、これを逆止弁装置3が防止する。すなわち、正圧によって弁部31の表面に流体圧力が作用して、弁部31が逆流方向に弾性変形する。これにより、弁部31が弁座324に密着して流体通路341を介した流体流通を遮断する。蒸発燃料は、逆止弁装置3を越えてバルブ装置4側に流入せず、過給時の大気中への蒸発燃料の放出を回避できる。
【0047】
次に、第1実施形態の逆止弁装置3がもたらす作用効果について説明する。逆止弁装置3は、流体通路341を通過する蒸発燃料の流れを一方向に制限可能な装置である。逆止弁装置3は、弁部31と、上流側通路形成部材の一例であるハウジング34と、下流側通路形成部材の一例である配管72と、絞り通路727と、を備える。弁部31は、弁軸部30に対して外側に向けて傘状に突出する形状であり、蒸発燃料の圧力の向きに応じて弾性変形して、流体通路341よりも下流に位置する弁座342に対して接触、離間することにより流体通路341の流体通過を遮断、許容する。
【0048】
ハウジング34は、流体通路341及び弁座342が設けられるとともに、弁軸部30を支持する部材である。配管72は、流体通路341を通過してきた蒸発燃料が流下する下流側通路724を内部に形成するポート720を有し、ハウジング34の内側にポート720を収めてハウジング34に接続される部材である。絞り通路727は、弁座342を除くハウジング34の内壁面343とポート720の外周面との間に設けられる絞り通路であり、通路の横断面積が流体通路341と下流側通路724の各通路よりも小さく設定されている。
【0049】
この構成によれば、通路の横断面積が流体通路341と下流側通路724の各通路よりも小さく設定された絞り通路727を、流体通路341及び弁部31よりも下流に備える。このため、弁部31の開弁時に流体通路341と下流側通路724との圧力差が急激に低下することを回避できる。すなわち、開弁時に流体通路341を通過してきた蒸発燃料は、流体通路341よりも断面積が小さい絞り通路727を通過するため、流体通路341の圧力を下流側通路724の圧力に対して高い状態に維持することに寄与する。
【0050】
これにより、流体通路341と下流側通路724との圧力差がしばらく保持し、当該圧力差を徐々に低下させることができる。この圧力差の低下度合いが小さくできることで、弁部31が復元力によって弁座342に近づくように弾性変形して元の形状に戻ることが急激に起こらない装置を提供できる。したがって、弁部31が開弁と閉弁とに交互に弾性変形する速度を抑制できるので、従来の装置のように弁部31に急激な応力が繰り返し加えられる問題を解消することができる。以上により、逆止弁装置3によれば、弁部31の耐久性の低下を抑制できる。また、逆止弁装置3によれば、開弁及び閉弁にわたる挙動において、弁部31の急激な変形を抑制できるため、弁部31のバタつきを防止でき、ばたつくことによる騒音の抑制にも貢献できる。
【0051】
絞り通路727は、弁座342を除くハウジング34の内壁面343とポート720の外周面との間に設けられる絞り通路であるため、弁座342に直面する通路に絞り通路727が形成されない。これによれば、絞り通路727が弁部31の弾性変形に干渉することを防止でき、開弁及び閉弁に関わる弁部31の運動を妨げない逆止弁装置3を提供できる。
【0052】
また、逆止弁装置3は、弁部31が開弁時、閉弁時の繰り返しによるストレスによって局部的に劣化することを長期にわたって防止可能である。逆止弁装置3は、耐久性と長期間に渡るシール性能の両方を獲得することができる。
【0053】
さらに第1実施形態の蒸発燃料供給システムは、前述のように耐久性低下の抑制を実現する逆止弁装置3を備えるため、所望の性能を長きにわたって提供することができる。
【0054】
また、ポート720の外周面に対して交差または直交するポート720の開口周囲面721は、弁座342及び弁部31に対向する。絞り通路727は、ポート720の外周面に設けられ他の部分よりもハウジング34の内壁面343寄りに突出する通路絞り部722とハウジング34の内壁面343との間に形成された通路である。
【0055】
この構成によれば、弁座342及び弁部31に対向しないポート720の外周面に通路絞り部722が設けられる。このため、弁部31の挙動に支障をきたさない通路絞り部722を提供することができる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態の逆止弁装置3に対する他の形態である、逆止弁装置103について
図7〜
図9を参照して説明する。各図において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、第2実施形態において第1実施形態と同様の構成を有するものは、第1実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。また、逆止弁装置103は、第1実施形態の蒸発燃料供給システムに適用することができる。
【0057】
図7は、閉弁時の逆止弁装置103を示した断面図である。
図8は、開弁時の逆止弁装置103を示した断面図である。逆止弁装置103は逆止弁装置3に対して絞り通路1727が相違する。逆止弁装置103のポート1720には、ポート1720の内壁面と外周面と径方向に貫通する絞り通路1727が設けられている。絞り通路1727は、上流端でポート1720の外周面とハウジング34の内壁面343との間に形成される通路と繋がり、下流端でポート1720の内側に形成される下流側通路724と繋がる。
【0058】
逆止弁装置103は、複数個の絞り通路1727を備える。複数個の絞り通路1727は、下流側通路724の周囲に円を描くように等間隔に並んで設けられる。第2施形態では、
図9に図示するように絞り通路1727の個数は4個である。下流側通路724は、弁体が開弁状態であるときに、複数の絞り通路1727を通過してきた蒸発燃料が合流する通路を構成する。
【0059】
複数個の絞り通路1727の合計横断面積は、ポート1720の外周面と内壁面343との間に形成される通路の横断面積よりも小さくなるように形成されている。複数個の絞り通路1727の合計横断面積は、複数個の流体通路341の合計横断面積や下流側通路724の横断面積よりも小さくなるように設定されている。複数個の絞り通路1727は、複数個の流体通路341と下流側通路724との間において、最も通路横断面積が小さい通路を構成する。したがって、複数個の絞り通路1727は、上流側通路である複数個の流体通路341と下流側通路724との間であって、弁体よりも下流側に設けられた局所的な通路狭小部である。
【0060】
第2実施形態の逆止弁装置103によれば、絞り通路1727は、複数個の流体通路341を通過してきた蒸発燃料が上流端から流入し下流端で下流側通路724に接続される、ポート1720を貫通する通路である。この構成によれば、弁座342に直面する通路に絞り通路1727が形成されない。このため、絞り通路1727が弁部31の弾性変形に干渉することを防止でき、開弁及び閉弁に関わる弁部31の運動を妨げない逆止弁装置103を提供できる。
【0061】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態の逆止弁装置3に対する他の形態である、逆止弁装置203について
図10及び
図11を参照して説明する。
図10及び
図11において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第3実施形態において第1実施形態と同様の構成を有するものは、第1実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。また、逆止弁装置203は、第1実施形態の蒸発燃料供給システムに適用することができる。
【0062】
図10は、閉弁時の逆止弁装置203を示した断面図である。
図11は、開弁時の逆止弁装置203を示した断面図である。逆止弁装置203は逆止弁装置3に対して絞り通路2727を形成するための通路絞り部344が相違する。ハウジング134には、その内壁面343に径内方向に突出する形状の通路絞り部344が設けられている。通路絞り部344は、ハウジング134や弁体の軸方向に所定の長さを有するように設けられている。通路絞り部344は、内壁面343における他の部分よりもポート720の外周面に対して接近している部分のことである。
【0063】
通路絞り部344は、内壁面343の全周において、径内側に突出するように形成されている。すなわち、内壁面343の全周において通路絞り部344を除く他の部分とポート720の外周面との間に形成される通路は、通路絞り部344とポート720の外周面との間に形成される通路よりも断面積が大きくなっている。
【0064】
このように通路絞り部344は、流体通路341から下流側通路724に通じる通路における横断面積を局所的に小さくする絞り部を構成する。通路絞り部344とポート720の外周面との間に形成される絞り通路2727は、その横断面積が複数個の流体通路341の合計横断面積よりも小さくなるように設定されている。したがって、絞り通路2727は、上流側通路である複数個の流体通路341と下流側通路724との間であって、弁体よりも下流側に設けられた局所的な通路狭小部である。絞り通路2727は、弁体や弁座342に面する通路よりも上流側に位置する通路に対して通路横断面積が小さい通路を構成する。絞り通路2727は、複数個の流体通路341と下流側通路724との間において、最も通路横断面積が小さい通路を構成する。
【0065】
第3実施形態の逆止弁装置203によれば、絞り通路2727は、ハウジング
134の内壁面343に設けられ他の部分よりもポート720の外周面側に突出する通路絞り部344とポート720の外周面との間に形成された通路である。この構成によれば、弁座342に直面する通路に絞り通路2727が形成されない。このため、絞り通路2727が弁部31の弾性変形に干渉することを防止でき、開弁及び閉弁に関わる弁部31の運動を妨げない逆止弁装置203を提供できる。
【0066】
(他の実施形態)
以上、開示された発明の好ましい実施形態について説明したが、開示された発明は前述した実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、開示された発明の技術的範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。開示された発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0067】
前述の実施形態において、上流側通路形成部材はハウジング34であり、下流側通路形成部材は配管72であるが、この形態に限定するものではない。例えば、上流側通路形成部材をハウジング34または配管で構成し、下流側通路形成部材を配管72またはハウジングで構成してもよい。
【0068】
前述の実施形態において、弁体はその全体がゴムで形成されていると説明したが、弁体を構成する材料はこの形態に限定されない。例えば、弁体は、少なくとも、流体圧力による弾性変形を必要とする弁部31が弾性変形容易な材料で形成されていればよい。したがって、弁軸部30等はゴム製でなくてもよい。この場合、ゴム製でない弁軸部30と弾性変形容易な材料で形成される弁部31とは、二色成形等により一体に形成することができる。
【0069】
前述の実施形態において、弁部31は根元部から外周縁310にかけて徐々に弁座342に接近する断面形状を呈するが、弁部31は根元部から外周縁310にかけて部分的な湾曲部または屈曲部を有する断面形状を有するものであってもよい。
【0070】
前述の実施形態において、ポート720には弁体の弁軸部30に対抗するように開口する開口部726が設けられているが、ポート720には開口部726を有しない構成であってもよい。