特許第6544237号(P6544237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6544237リサイクル可能な工業用共沸洗浄剤、物品の洗浄方法、工業用共沸洗浄剤の再生方法、当該再生方法により再生された工業用共沸洗浄剤、並びに洗浄再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544237
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】リサイクル可能な工業用共沸洗浄剤、物品の洗浄方法、工業用共沸洗浄剤の再生方法、当該再生方法により再生された工業用共沸洗浄剤、並びに洗浄再生装置
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20190705BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20190705BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20190705BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20190705BHJP
   C23G 1/36 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   C11D7/50ZAB
   C11D7/26
   C11D7/32
   B08B3/08 Z
   C23G1/36
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-543902(P2015-543902)
(86)(22)【出願日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2014078205
(87)【国際公開番号】WO2015060379
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-220553(P2013-220553)
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井内 洋介
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−245988(JP,A)
【文献】 特開平11−189787(JP,A)
【文献】 特開平11−199893(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005068(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/027673(WO,A1)
【文献】 特開平10−046198(JP,A)
【文献】 特開平07−109493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/50
B08B 3/08
C11D 7/26
C11D 7/32
C23G 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):R−O−[−CH−CH(X)−O]−R(式(1)中、R及びRはいずれも炭素数1〜3のアルキル基を、nは2又は3を、Xは水素又はメチル基を示す。)で表される化合物からなる、常圧下の沸点が160〜230℃のグリコール系溶剤(A)と、水(B)と、常圧下における沸点が160〜230℃の3級アミン(C)とを含む共沸混合物であって、
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率が順に5〜35wt%、65〜94.99wt%及び0.01〜30wt%であり、かつ、常圧下の共沸点が90〜100℃であるものを含有し、
(C)成分が、
一般式(2):(R)RN−C−OH(式(2)中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表されるモノアミン(C1)、及び/又は、
一般式(3):(R)RN−C−Y−C−NR(R)(式(3)中、R、R、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは−CH−、−(CH−、−O−、−NH−、及び−N(CH)−のいずれかを示す。)で表されるポリアミン(C2)
であり、
曇点が30〜90℃であることを特徴とする、蒸留再生によるリサイクル可能なフラックス残渣用共沸洗浄剤。
【請求項2】
請求項1のフラックス残渣用共沸洗浄剤を、その曇点以上に加温されている状態で、フラックス残渣が付着した物品に接触させることを特徴とする、物品の洗浄方法。
【請求項3】
請求項の洗浄方法を実施した後に生ずる、フラックス残渣を含むフラックス残渣用共沸洗浄剤の廃液を蒸留することにより、該フラックス残渣が除去された共沸混合物を再生することを特徴とする、フラックス残渣用共沸洗浄剤の再生方法。
【請求項4】
請求項の再生方法により得られる共沸混合物を含む、フラックス残渣用共沸洗浄剤。
【請求項5】
前記共沸混合物が蒸気である、請求項のフラックス残渣用共沸洗浄剤。
【請求項6】
請求項1のフラックス残渣用共沸洗浄剤を用いてフラックス残渣が付着した物品を洗浄する洗浄機構と、
前記洗浄機構で用いたフラックス残渣用共沸洗浄剤の廃液を再生する再生機構と、
フラックス残渣用共沸洗浄剤の廃液を前記再生機構へ供給する供給路と、
再生されたフラックス残渣用共沸洗浄剤を前記洗浄機構へ戻す戻り流路と、を備え、
前記再生機構は、フラックス残渣を含むフラックス残渣用共沸洗浄剤の廃液を気化させることにより、フラックス残渣が除去されたフラックス残渣用共沸洗浄剤を得る気化器を含み、
気化器には充填物又は分離促進器が備えられている、洗浄再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル可能な工業用共沸洗浄剤、物品の洗浄方法、工業用共沸洗浄剤の再生方法、当該再生方法により再生された工業用共沸洗浄剤、並びに物品の洗浄及び工業用共沸洗浄剤の再生を行うための洗浄再生装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用洗浄剤は、例えば、電気機器、電子部品、精密機器、金属、ガラス、セラミックス及び樹脂成形品等の各種物品の表面を清浄にし、製品の信頼性を高めるために使用される。
【0003】
工業用洗浄剤のうち、例えば、フラックス残渣用洗浄剤は、プリント配線基板の電極に、ソルダペースト、糸ハンダ等を用いて電子部品を接合した後に不可避的に生ずるフラックス残渣を除去するために使用される。
【0004】
工業用洗浄剤のうち、例えば、金属用脱脂洗浄剤は、金属製の部品又は当該部品を有する製品に付着した、潤滑油、防錆油、鉱物油、切削油、加工油等の工業油を除去するために使用される。
【0005】
ところで、工業用洗浄剤は、かつてトリクロロエチレン、トリクロロトリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素溶剤が使用されていた。しかし、環境問題が浮上した結果、近年では、非ハロゲンタイプの炭化水素系洗浄剤、グリコール系洗浄剤等が主流となっている。
【0006】
グリコール系洗浄剤は、各種グリコール系化合物を主成分とする洗浄剤であり、フラックス、イオン残渣、金属に付着したオイル等の除去性に優れるとされる(特許文献1及び2を参照)。また、それらは一般に引火点がないか、非常に高く、非危険物であることから、防爆設計された洗浄装置が必要とされない点、及び臭気等の点で、炭化水素系溶剤に勝る。
【0007】
しかし、グリコール系洗浄剤で物品を洗浄すると、フラックス残渣及びオイル等の汚れを含む洗浄剤廃液及び濯ぎ廃水が都度大量に生じてしまい、それらの処理のために相応の設備及び費用が必要となる。
【0008】
この点、炭化水素系洗浄剤については、廃液をリサイクルする目的でその共沸時の組成を規定し、蒸留再生を可能とする技術が提案されている。例えば特許文献3には、各種の加工油及びフラックスに対して十分な洗浄力を有する炭化水素系洗浄剤として、所定沸点範囲の飽和脂肪族炭化水素及び所定のアルコール類からなる共沸混合物が記載されており、このものはリサイクルしても組成変化がなく、液管理が容易であるとされる。また、特許文献4及び5にも、所定の炭化水素化合物からなる共沸混合物を用いた洗浄剤が記載されており、それらは工業油又はフラックスの洗浄力に優れるとともに、リサイクル使用が可能であるとされる。
【0009】
一方、グリコール系洗浄剤についてみると、本出願人が知る限り、工業油、フラックス等の各種工業汚れの除去力に優れるのみならずリサイクル使用が可能なものについてはまだ知見がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−152197号公報
【特許文献2】特開平10−046198号公報
【特許文献3】特開平10−53797号公報
【特許文献4】特開2004−307839号公報
【特許文献5】特開2008−24901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主たる課題は、物品に付着した各種の工業汚れ、例えばソルダペースト、フラックス残渣、各種オイル等の除去力に優れ、かつ引火点を持たず、しかも常圧下でリサイクル(蒸留再生)可能な、グリコール系の工業用共沸洗浄剤を提供することにある。また、本発明は、グリコール系の工業用共沸洗浄剤を用いて物品を洗浄するとともに、洗浄に用いた工業用共沸洗浄剤を再生する方法、及び当該方法を実施するための洗浄再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは検討の結果、グリコール系溶剤のうち特定の化学構造を有しかつ所定の沸点を有するものと水とを含む一群の組成液が常圧下で共沸すること、及び当該組成液の比率と共沸後に得られる蒸留液の比率とが殆ど同じであることを見出した。そして、かかる蒸留液の比率を基準とし、各種工業汚れ、特にフラックス残渣及び工業油の除去力が最適になるような組成の洗浄剤について更に検討を重ねた結果、以下に示す洗浄剤によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の洗浄剤等に関する。
【0013】
1.一般式(1):R−O−[−CH−CH(X)−O]−R(式(1)中、R及びRはいずれも炭素数1〜3のアルキル基を、nは2又は3を、Xは水素又はメチル基を示す。)で表される化合物からなる、常圧下の沸点が160〜230℃のグリコール系溶剤(A)と、水(B)と、必要に応じて常圧下における沸点が160〜230℃の3級アミン(C)とを含む共沸混合物であって、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率が順に5〜35wt%、65〜95wt%及び0〜30wt%であり、かつ常圧下の共沸点が90〜100℃であるものを含有することを特徴とする、リサイクル可能な工業用共沸洗浄剤。
【0014】
2.前記(C)成分が、一般式(2):(R)RNーC―OH(式(2)中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。)で表されるモノアミン(C1)、及び/又は、一般式(3):(R)RN―C―Y―C―NR(R)(式(3)中、R、R、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは−CH−、−(CH−、−O−、−NH−及び−N(CH)−のいずれかを示す。)で表されるポリアミン(C2)である、前記項1の工業用共沸洗浄剤。
【0015】
3.その曇点が30〜90℃である前記項1又は2の工業用共沸洗浄剤。
【0016】
4.前記項1〜3のいずれかの工業用共沸洗浄剤を、工業汚れが付着した物品に接触させることを特徴とする、物品の洗浄方法。
【0017】
5.前記工業用共沸洗浄剤がその曇点以上に加温されていることを特徴とする前記項4の洗浄方法。
【0018】
6.前記工業汚れが、ハンダ付け用フラックス、ソルダペースト、フラックス残渣及び工業油からなる群より選ばれる一種である、前記項4又は5の洗浄方法。
【0019】
7.前記項4〜6のいずれかの洗浄方法を実施した後に生ずる工業用共沸洗浄剤の廃液を蒸留し、工業汚れ成分が除去された共沸混合物を再び得ることを特徴とする、工業用共沸洗浄剤の再生方法。
【0020】
8.前記項7の再生方法により得られる共沸混合物を含む、工業用共沸洗浄剤。
【0021】
9.前記共沸混合物が蒸気である、前記項8の工業用共沸洗浄剤。
【0022】
10.前記項1〜3のいずれかの工業用共沸洗浄剤を用いて工業汚れが付着した物品を洗浄する洗浄機構と、前記洗浄機構で用いた工業用共沸洗浄剤の廃液を再生する再生機構と、工業用共沸洗浄剤の廃液を前記再生機構へ供給する供給路と、再生された工業用共沸洗浄剤を前記洗浄機構へ戻す戻り流路と、を備え、前記再生機構は、工業汚れを含む工業用共沸洗浄剤の廃液を気化させることにより、工業汚れが除去された工業用共沸洗浄剤を得る気化器を含む、洗浄再生装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の工業用共沸洗浄剤(以下、単に本発明の洗浄剤ともいう。)は、各種工業汚れ、例えばソルダペースト、フラックス残渣、工業油等の除去力に優れる。また、本発明の洗浄剤は共沸混合物であるため、沸騰前の組成液と沸騰後の蒸留液との組成に殆ど差がない。それゆえ、当該洗浄剤を、工業汚れが付着した物品に接触させた後に生ずる廃液を蒸留し、汚れ成分を除去することにより、本発明の洗浄剤を再生することができる。また、当該工業用共沸洗浄剤は引火点がなく非危険物であるため、防爆設計された洗浄装置が必要とされない。また、当該洗浄剤は容易に乾燥し、洗浄後の物品に残存し難いため、当該物品を水で濯ぐ工程を省略できる。かかる本発明の洗浄剤は、特にフラックス残渣用洗浄剤及び金属用脱脂洗浄剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る洗浄再生装置の第1実施形態を示す概略図である。
図2】本発明に係る洗浄再生装置の第2実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の洗浄剤は、所定のグリコール系溶剤(A)(以下、(A)成分ともいう。)と、水(B)(以下、(B)成分ともいう。)と、必要に応じて所定の3級アミン(C)(以下、(C)成分ともいう。)とを含む共沸混合物を含有する。なお、本明細書においては、当該共沸混合物を共沸させて得られる蒸留液も「本発明の洗浄剤」に含める。
【0026】
(A)成分は、一般式(1):R−O−[−CH−CH(X)−O]−R(式(1)中、R及びRはいずれも炭素数1〜3のアルキル基を、nは2又は3を、Xは水素又はメチル基を示す。)で表される化合物で構成される有機溶剤である。
【0027】
(A)成分の具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルメチルエーテル、及びトリプロピレングリコール−n−プロピルメチルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(A)成分として、前記ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む本発明の洗浄剤は、物品の汚れ、特にソルダペースト、フラックス残渣、及び工業油の除去に適しており、また、当該洗浄剤によってそれらの汚れを除去した後に生ずる廃液を蒸留し、再生することも容易になる。
【0028】
また、(A)成分は、その常圧下の沸点が160〜230℃程度、好ましくは170〜220℃程度、一層好ましくは175〜190℃程度である。なお、「常圧」とは標準大気圧を意味する(以下、同様。)。
【0029】
(B)成分としては、超純水、純水、精製水、蒸留水、イオン交換水、及び水道水等が挙げられる。
【0030】
(C)成分は任意成分であり、本発明の洗浄剤の工業汚れ、特にフラックス残渣の除去力をより高めるため必要に応じて用いることができる。また、(C)成分は沸点が160〜230℃であるため、これを含む本発明の洗浄剤は常圧下で共沸する。それゆえ、当該洗浄剤を使用した後に生ずる廃液を常圧下で共沸させることにより、本発明の洗浄剤を再生することが可能になる。これらの観点より、(C)成分の沸点は好ましくは180〜215℃程度であり、一層好ましくは190〜210℃程度である。
【0031】
(C)成分としては、沸点が160〜230℃程度の3級アミンであれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、本発明の洗浄剤の汚れ除去力の観点、及び洗浄廃液を蒸留し本発明の洗浄剤を再生する等の観点より、下記一般式(2)で表されるモノアミン(C1)(以下、(C1)成分ともいう。)及び下記一般式(3)で表されるポリアミン(C2)(以下、(C2)成分ともいう。)が特に好ましい。(C)成分は、(C1)成分又は(C2)成分のいずれか1成分でもよいし、両方の成分を含んでもよい。
【0032】
一般式(2):(R)RNーC―OH
(式(2)中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【0033】
一般式(3):(R)RN―C―Y―C―NR(R
(式(3)中、R、R、R及びRはそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは−CH−、−(CH−、−O−、−NH−及び−N(CH)−のいずれかを示す。)
【0034】
(C1)成分の具体種としては、例えば、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、及び2−(ジ−n−プロピルアミノ)エタノール等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、フラックス残渣の除去力の点、及び引火の危険性の低さの点より、2−(ジエチルアミノ)エタノール、及び2−(ジイソプロピルアミノ)エタノールからなる群より選ばれる1種が好ましい。
【0035】
(C2)成分の具体種としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−n−プロピルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−n−プロピルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジイソプロピルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)エーテル、1,1,7,7−テトラメチルジエチレントリアミン、1,1,7,7−テトラエチルジエチレントリアミン、1,1,7,7−テトライソプロピルジエチレントリアミン、1,1,7,7−テトラ−n−プロピルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、4−メチル−1,1,7,7−テトラエチルジエチレントリアミン、4−メチル−1,1,7,7−テトライソプロピルジエチレントリアミン、及び4−メチル−1,1,7,7−テトラ−n−プロピルジエチレントリアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、工業汚れ、特にフラックス残渣の除去力の点、及び引火の危険性の低さの点より、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、及びN,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンからなる群より選ばれる1種が好ましい。
【0036】
本発明の洗浄剤は、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて用いる(C)成分を各種公知の手段で混合することにより調製する。また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率は、工業汚れの除去力、工業汚れの種類等を考慮しつつ、洗浄廃液を蒸留再生してなる洗浄剤の組成変化を最小限に抑える目的より設定される。 具体的には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率は、順に5〜35wt%程度、65〜95wt%程度及び0〜30wt%程度であり、好ましくは順に15〜35wt%程度、65〜85wt%程度、及び0〜15wt%程度である。
【0037】
なお、洗浄剤が(C)成分を含まない場合には、(A)成分及び(B)成分の比率は、具体的には、順に5〜35wt%及び65〜95wt%程度、好ましくは順に15〜35wt%及び65〜85wt%程度、最も好ましくは順に20〜30wt%程度及び70〜80wt%程度と規定できる。
【0038】
また、洗浄剤が(C)成分を含む場合には、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率は、順に5〜35wt%程度、65〜94.99wt%程度及び0.01〜30wt%程度であり、好ましくは10〜30wt%程度、65〜89.95wt%程度及び0.05〜20wt%程度、最も好ましくは15〜27.5wt%程度、70〜84.95wt%程度、及び0.05〜12.5wt%程度と規定できる。
【0039】
本発明の洗浄剤は、各成分をかかる比率で有するため、工業汚れ、特にフラックス残渣(特に鉛フリーソルダペーストでハンダ付けした後に生ずるフラックス残渣)及び各種工業油の除去力が特に優れている。また、それら汚れを含む廃液を蒸留して再生される洗浄剤は、洗浄前の洗浄剤と同程度の組成比率を有する。
【0040】
本発明の洗浄剤は、その常圧下の共沸点が90〜100℃程度、好ましくは95〜100℃程度、一層好ましくは97〜99℃である。
【0041】
本発明の洗浄剤としては、曇点を有するものが特に好ましい。本明細書において「曇点」とは、当該洗浄剤が加温下に相分離し、濁り又は二層分離を示す温度をいう。そのような洗浄剤は、保管時には均質な溶液である一方、使用時には白濁し、物品に付着した工業汚れを効果的に除去する。かかる観点より、本発明の洗浄剤の曇点は、通常30〜90℃程度、好ましくは45〜75℃程度、一層好ましくは55〜65℃程度である。
【0042】
また、本発明の洗浄剤は引火点を有さず、非危険物である。
【0043】
また、本発明の洗浄剤には、各種公知の添加剤を配合してもよい。添加剤として、具体的には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子型界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤、防錆剤、封孔処理剤、pH調整剤、及び消泡剤等が挙げられる。
【0044】
本発明である、物品の洗浄方法は、本発明に係る工業用共沸洗浄剤を、工業汚れが付着した物品に接触させることを特徴とする。
【0045】
工業汚れは特に限定されないが、代表的なものとして、例えばハンダ付け用フラックス、ソルダペースト、フラックス残渣、工業油、及び切り粉等が挙げられる。これらの中でも、ハンダ付け用フラックス、ソルダペースト、フラックス残渣及び工業油からなる群より選ばれる一種は、本発明の洗浄剤の除去対象として好適である。
【0046】
ハンダ付け用フラックスとは、ハンダ及び母材(金属電極等)表面の酸化皮膜を除去し、両者の接合を容易にするために用いられる組成物であり、一般的には、ベース樹脂、活性剤及び有機溶剤からなり、必要に応じてチキソトロピック剤、酸化防止剤、その他の添加剤が配合されていてよい。また、ハンダ付け用フラックスは、その組成により、ソルダペースト用フラックス、並びに糸はんだ用フラックス、ポストフラックス及びプレフラックス等の非ソルダペースト用フラックスに分類される。
【0047】
ベース樹脂としては、ロジン系ベース樹脂及び非ロジン系ベース樹脂が挙げられる。該ロジン系ベース樹脂としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン及びウッドロジン等の天然ロジン、該天然ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びにこれらを原料とする重合ロジン、不飽和酸変性ロジン(アクリル化ロジン、フマル化ロジン、マレイン化ロジン等)及びロジンエステル並びにそれらの精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられる。また、該ロジンエステルを構成する多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。非ロジン系ベース樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフイン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム、ナイロンゴム、ナイロン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ等が挙げられる。
【0048】
活性剤としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、セバシン酸、ドデカン2酸、ダイマー酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、trans−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、cis−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモ吉草酸、5−ブロモ−n−吉草酸、2−ブロモイソ吉草酸、エチルアミン臭素酸塩、ジエチルアミン臭素酸塩、ジエチルアミン塩化水素酸塩、メチルアミン臭素酸等が挙げられる。
【0049】
有機溶剤としては、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ブチルカルビトール、ヘキシルジグリコール、ヘキシルカルビトール、酢酸イソプロピル、プロピオン酸エチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル、n−ヘキサン、ドデカン、テトラデセン等が挙げられる。
【0050】
チキソトロピック剤としては、ひまし油、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が挙げられる。
【0051】
酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンアミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、トリフェニルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファエト、トリス(トリデシル)フォスファイト等が挙げられる。
【0052】
その他の添加剤としては、防黴剤、艶消し剤、増粘防止剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0053】
ソルダペーストは、ハンダ付け用フラックスとハンダ粉末とを混合してなる組成物である。ハンダ粉末としては、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Zn系の鉛フリーハンダ粉末、更に鉛を構成成分とする鉛含有ハンダ粉末が挙げられる。また、これらハンダ金属は、Ag、Al、Au、Bi、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、In、Ni、P、Pt、Sb、Znの1種又は2種以上の元素がドープされたものであってよい。ソルダペーストは、スクリーン印刷によりメタルマスクを介して電極上に供給され、その上に電子部品が載置された後に、加熱下でハンダ付けが行われる。
【0054】
前記ハンダ付け用フラックス又はソルダペーストが付着した物品としては、例えば、スクリーン印刷用のメタルマスク、スキージ、ディスペンス方式用のノズル、シリンジ、及び基板固定用の治具等が挙げられる。
【0055】
フラックス残渣は、ソルダペースト、糸ハンダ、プレフラックス、ポストフラックス等を用い、電子部品等を電極に接合した後に生ずる残渣である。このものは、ハンダ金属及び母材を腐食したり、基板の絶縁抵抗を低下させたりするため、洗浄により除去する必要がある。
【0056】
前記フラックス残渣が付着した物品としては、例えば、プリント回路基板、セラミック配線基板、半導体素子搭載基板、ウエハ、TABテープ、リードフレーム、パワーモジュール、及びカメラモジュール等が挙げられる。また、対応するものについては、IC、コンデンサ、抵抗器、ダイオード、トランジスタ、コイル、及びCSP等の電子部品がハンダ付けされていたり、BGA、PGA、及びLGA等が形成されていたり、ハンダレベリング等の前処理が施されていてもよい。
【0057】
工業油としては、例えば、加工油、切削油、鉱物油、機械油グリース、潤滑油、防錆油、ワックス、ピッチ、パラフィン、油脂、グリース等が挙げられる。これらは機械加工、金属加工等の分野において、材料と工具間の摩擦を低減して焼き付きを防止したり、加工に要する力を低減して形成し易くしたり、製品の錆や腐食を防止したりするために使用される。また、メッキ処理が予定されている部品に工業用油が残存しているとメッキ不良が生じ得るため、そうした部品の洗浄に本発明の洗浄剤は特に適している。
【0058】
工業油が付着した物品としては、例えば、ボルト、ナット、フェルール、及びワッシャー等の成型部品をはじめ、エンジンピストン等の自動車部品、ギア、シャフト、スプロケット、及びチェーン等の産業機械部品、HDD用パーツ、及びリードフレーム等の電子部品等が挙げられる。
【0059】
その他の工業汚れとしては、例えば、プリント回路基板、セラミック配線基板、半導体素子搭載基板、カバーガラス、及びウエハなどをダイシング加工した際に生じる切り粉等が挙げられる。
【0060】
本発明の洗浄剤を工業汚れが付着した物品に接触させて物品を洗浄する手段は限定されず、洗浄手段としては、例えば、浸漬洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、スチーム洗浄、超音波洗浄、液中ジェット洗浄、直通式洗浄(ダイレクトパス(登録商標))等が挙げられる。また、公知の洗浄装置として、例えば、特開平7−328565号公報、特開2000−189912号公報、特開2001−932号公報、特開2005−144441号公報等が挙げられる。なお、本発明の洗浄剤は、炭化水素溶剤系の洗浄剤とは異なり非危険物であるため燃焼しない。そのため防爆設備も不要となることから、シャワー洗浄やスプレー洗浄にも好適である。
【0061】
また、前記スチーム洗浄の場合には、本発明の洗浄剤を各種公知の手段で加熱して、又は以下で詳述する再生方法により得られる共沸混合物の蒸気を蒸気洗浄剤とし、これを工業汚れが付着した物品に接触させればよい。接触手段も特に限定されず、例えば、加温された蒸気洗浄剤を、適当なノズルを通じて物品に噴霧する方法が挙げられる。また、適当な洗浄塔の内部に物品を載置ないし懸架し、かつその下部に洗浄液を貯留し、該洗浄液を加熱し、加温された蒸気洗浄剤を当該物品に接触させる方法も挙げられる。接触手段としては、例えば、日本国特開2004−298644号や日本国特開平5−68953号に記載の手段が参考になる。
【0062】
また、本発明の洗浄剤は、工業汚れが付着した物品に接触させる際、その曇点以上の温度に加温されていることが望ましい。曇点以上の洗浄剤は白濁状となり、工業汚れ、特にフラックス残渣を好適に除去する。また、当該洗浄剤を加温する際、メカニカルスターラーやマグネチックスターラー、超音波等の各種ミキシング手段を併用することが望ましい。
【0063】
なお、本発明の洗浄剤は、乾燥工程において容易に揮発させることができるため、洗浄後の物品に残存し難い。そのため、当該物品の濯ぎ工程を省略できる。ただし、必要に応じ、本発明と同一の洗浄剤、又は各種公知のリンス剤ですすぐことができる。該リンス剤としては、純水、及びイオン交換水等の水;メチルアルコール、エチルアルコール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0064】
本発明に係る再生方法は、前記洗浄方法を実施した後に生ずる工業用共沸洗浄剤の廃液(洗浄後の廃液、濯ぎ後の廃液を含む。)を蒸留し、汚れ成分が除去された留分(共沸混合物)を再び得ることを特徴とする。
【0065】
廃液を蒸留する手段は特に限定されず、各種方法を採用できる。具体的には、ヒーター、熱媒等の熱源を含む気化器と、コンデンサ、熱交換器等の凝縮器とを備えた蒸留器で廃液を蒸留することにより、留出液として共沸混合物を得ることができる。また、蒸留器内では汚れ成分が濃縮され残渣となるが、これは廃棄する。また、蒸留器には、留出液の組成をより共沸混合物に近づけるため、必要に応じ、ラシヒリング、ディクソンパッキン等の充填物、バブルキャップトレイ、デミスター等の分離促進器を設置してもよい。また、それらの理論段数は任意であり、必要に応じて増加させてよい。
【0066】
前記再生方法により得られる共沸混合物はそのまま、或いはこれに前記(A)成分、(B)成分及び必要に応じて(C)成分並びに前記添加剤を適宜配合することにより、本発明洗浄剤として使用することができる。すなわち、本発明の洗浄剤は、前記再生方法により得られた液体の共沸混合物を含んでもよいし、該共沸混合物が蒸気である蒸気洗浄剤を含んでもよい。
【0067】
再生された洗浄剤における(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率は、前記した本発明の洗浄剤の比率と同等である。具体的には、通常、順に5〜35wt%、65〜95wt%及び0〜30wt%程度であり、好ましくは順に15〜35wt%、65〜85wt%、及び0〜15wt%程度である。
【0068】
なお、当該洗浄剤に(C)成分が含まれない場合には、(A)成分及び(B)成分の比率は、具体的には、順に5〜35wt%及び65〜95wt%程度、好ましくは順に15〜35wt%及び65〜85wt%程度、最も好ましくは順に20〜30wt%程度及び70〜80wt%程度である。
【0069】
また、(C)成分が含まれる場合には、順に5〜35wt%程度、65〜94.99wt%程度及び0.01〜30wt%程度であり、好ましくは10〜30wt%程度、65〜89.95wt%程度及び0.05〜20wt%程度、最も好ましくは15〜27.5wt%程度、70〜84.95wt%程度、及び0.05〜12.5wt%程度である。
【0070】
本発明の洗浄再生装置1は、工業用共沸洗浄剤4を用いて工業汚れが付着した物品を洗浄する洗浄機構2と、洗浄機構2で用いた工業用共沸洗浄剤4の廃液を再生する再生機構3とを備えている。洗浄機構2と再生機構3との間には、工業用共沸洗浄剤4の廃液を再生機構3へ供給する供給路20Cと、再生機構3で再生された工業用共沸洗浄剤4を洗浄機構2へ戻す戻り流路30Aとが備えられている。この再生機構3は、工業汚れを含む工業用共沸洗浄剤4の廃液を気化させることにより、工業汚れ(汚れ成分)が除去された工業用共沸洗浄剤4を得る気化器31を含んでいる。以下、具体的な洗浄再生装置1について、図面を参照して説明する。
【0071】
第1実施形態
図1は、第1実施形態の洗浄再生装置1を示す。洗浄再生装置1は、工業用共沸洗浄剤4を用いて工業汚れが付着した物品を洗浄する洗浄機構2と、洗浄機構2において物品の洗浄に用いた工業用共沸洗浄剤4の廃液を再生する再生機構3とを備えている。
【0072】
洗浄機構2は、超音波洗浄を行うもので、工業用共沸洗浄剤4が貯留される第1液槽21A、第2液槽21B及び第3液槽21Cと、各液槽21A,21B,21Cの底部に設けられ、各液槽21A,21B,21Cの内部に超音波を照射する超音波振動子22とを備えている。超音波振動子22としては、ピエゾ素子又は電磁式の振動子等の既知の任意の振動子を用いることができる。工業汚れが付着した物品が最初に投入される第1液槽21Aには、第1液槽21A内に貯留される工業用共沸洗浄剤4を曇点以上の温度に加熱するためのヒーター、熱媒等の熱源23が設けられている。これにより、熱源23により加熱された工業用共沸洗浄剤4は、相分離して白濁状となり、物品に付着した工業汚れを効果的に除去することができる。
【0073】
第1液槽21Aと第2液槽21Bとの間及び第2液槽21Bと第3液槽21Cとの間には、工業用共沸洗浄剤4を図1の矢印Dの方向に流通させる流路20Aが設けられている。また、第1液槽21Aには、第1液槽21Aから工業用共沸洗浄剤4を流出させる流出路20Dが設けられ、流出路20Dは、工業用共沸洗浄剤4を第1液槽21Aに戻す循環路20Bと、工業用共沸洗浄剤4を再生機構3へ供給する供給路20Cとに分岐している。曇点以上に加温された工業用共沸洗浄剤4は、比重の影響により(B)成分を多く含む層と、(A)成分及び(C)成分を多く含む層との二層に分離されるが、このように循環路20Bを設けることで、曇点以上に加温された工業用共沸洗浄剤4の濃度を均一(懸濁状態)に保つことができる。
【0074】
流出路20D及び循環路20Bにはそれぞれ、工業用共沸洗浄剤4の流量を調整するバルブV1及びV2が設けられている。また、供給路20CにもバルブV3が設けられており、バルブV3を開閉操作することで、工業用共沸洗浄剤4の再生機構3への流入が制御されている。流出路20Dには、工業用共沸洗浄剤4を圧送するポンプP1が接続されている。
【0075】
再生機構3は、工業汚れを含む工業用共沸洗浄剤4、つまり工業用共沸洗浄剤4によって物品の工業汚れを除去した後に生ずる工業用共沸洗浄剤4の廃液を気化させる気化器31と、気化して蒸気となっている工業用共沸洗浄剤4を凝縮させる凝縮器32とを備えている。この気化器31と凝縮器32とで、工業用共沸洗浄剤4を蒸留する蒸留器を構成している。
【0076】
気化器31は、底部が工業用共沸洗浄剤4を溜める液溜め部となっており、その液溜め部に、工業用共沸洗浄剤4を加熱し気化させるためのヒーター、熱媒等の熱源33が設けられている。また、気化器31には、蒸留後の留出液の組成をより共沸組成に近づけるために、上記したラシヒリング、ディクソンパッキン等の充填物34及びバブルキャップトレイ、デミスター等の分離促進器35が設けられている。なお、充填物34及び分離促進器35は、必ずしも設けられる必要はなく、必要に応じていずれか一方又は両方が設けられればよい。また、それらの理論段数も任意に変更できる。
【0077】
凝縮器32には、コンデンサ、熱交換器等の既知の凝縮手段を用いることができる。この凝縮器32には、凝縮されて液化した工業用共沸洗浄剤4を洗浄機構2、具体的には第3液槽21Cへ戻すための戻り流路30Aが設けられている。
【0078】
次に、洗浄再生装置1の動作について説明する。各液槽21A,21B,21Cには、工業用共沸洗浄剤4が貯留されている。第1液槽21Aの工業用共沸洗浄剤4は、熱源23によって加熱され、懸濁状態となっている。この第1液槽21Aに工業汚れが付着した物品を投入し、超音波振動子22を作動させて物品を超音波洗浄する。第1液槽21Aで洗浄された物品は、よりきれいな工業用共沸洗浄剤4が貯留されている第2液槽21B、第3液槽21Cへと図1の矢印Eの方向へと移され、第2液槽21Bですすぎ、第3液槽21Cで仕上げすすぎが行われる。このすすぎ及び仕上げすすぎも、超音波振動子22を作動させ超音波洗浄を行うことによってなされる。このようにして、工業汚れが付着した物品が洗浄される。
【0079】
工業用共沸洗浄剤4は、常に開放されているバルブV1とバルブV2とによって、第1液槽21A、流出路20D及び循環路20Bを常時循環している。工業汚れが付着した物品を洗浄することにより第1液槽21A内の工業用共沸洗浄剤4に含まれる工業汚れが増加すると、バルブV3が開放されて、工業用共沸洗浄剤4が供給路20Cを通って再生機構3の気化器31に供給される。気化器31では工業用共沸洗浄剤4が気化し、その時に工業用共沸洗浄剤4に含まれる工業汚れが除去される。除去された工業汚れは気化器31内に溜まり、廃棄される。気化された工業用共沸洗浄剤4は、凝縮器32へと流れ、凝縮器32で凝縮される。そして、工業汚れが除去されて再生された工業用共沸洗浄剤4は、戻り流路30Aを通って第3液槽21Cに戻される。
【0080】
第1液槽21Aから再生機構3へ工業用共沸洗浄剤4が流出すると、第1液槽21A内に貯留される工業用共沸洗浄剤4が減少する。減少した工業用共沸洗浄剤4は、第2液槽21Bから流路20Aを介して補われる。同様に、第2液槽21Bで減少した工業用共沸洗浄剤4は、第3液槽21Cから流路20Aを介して補われる。そして、第3液槽21Cで減少した工業用共沸洗浄剤4は、戻り流路30Aを介して再生機構3で再生された工業用共沸洗浄剤4が戻されることで補われる。このようにして、工業用共沸洗浄剤4が再生される。工業用共沸洗浄剤4を再生する過程では、上記したように工業汚れを廃棄するが、その際に共に排出されて減少した工業用共沸洗浄剤4については、外部から別途補充されてもよい。
【0081】
なお、第1実施形態では、洗浄機構2において超音波洗浄を行っているが、物品を洗浄する手段は、超音波洗浄に限られず、例えば、洗浄機構2において、超音波振動子22を用いず、各液槽21A,21B,21Cに単に物品を浸漬させて洗浄する浸漬洗浄を行うこともできる。その際に、メカニカルスターラーやマグネチックスターラー等の物理的手段を使用又は併用して、各液槽21A,21B,21C内に貯留される工業用共沸洗浄剤を対流させてもよい。また、また、超音波振動子22に変えて各液槽21A,21B,21Cにジェット噴射ノズルを設けることで、液中ジェット洗浄を行うこともできる。また、各液槽21A,21B,21Cのいずれか一槽若しくは二槽、又は全ての槽を特開平7−328565号公報に開示された洗浄塔に置き換えることにより直通式洗浄を行うこともできる。
【0082】
第2実施形態
図2は、第2実施形態の洗浄再生装置1を示す。洗浄再生装置1は、第1実施形態と同様に、工業用共沸洗浄剤4を用いて工業汚れが付着した物品を洗浄する洗浄機構2と、洗浄機構2において物品の洗浄に用いた工業用共沸洗浄剤4の廃液を再生する再生機構3とを備えている。なお、再生機構3については、上記第1実施形態と同一の構成であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0083】
洗浄機構2は、シャワー洗浄を行うものであり、工業用共沸洗浄剤4が貯留される第1液槽21A、第2液槽21B及び第3液槽21C、各液槽21A,21B,21Cの上方に設けられ、工業用共沸洗浄剤4を噴射するシャワーノズル41、及び、シャワーノズル41と液槽21A,21B,21Cとの間に設けられ、物品を搬送する搬送装置42を備えている。シャワーノズル41としては、既知の任意のシャワーノズルを用いることができる。また、搬送装置42としては、ローラコンベア、ベルトコンベア等の既知の任意の搬送装置を用いることができる。以下に詳述するように工業汚れが付着した物品が最初に接触する工業用共沸洗浄剤4を貯留する第1液槽21Aには、第1液槽21A内に貯留される工業用共沸洗浄剤4を曇点以上の温度に加熱するためのヒーター、熱媒等の熱源23が設けられている。これにより、熱源23により加熱された工業用共沸洗浄剤4は、相分離して白濁状となり、物品に付着した工業汚れを効果的に除去することができる。
【0084】
第2実施形態の洗浄再生装置1においても、第1実施形態と同様に、第1液槽21Aと第2液槽21Bとの間及び第2液槽21Bと第3液槽21Cとの間には流路20Aが設けられ、第1液槽21Aには、流出路20Dが設けられている。流出路20Dは、第1液槽21Aに戻る循環路20Bと再生機構3と連通する供給路20Cとに分岐している。また、第1実施形態と同様に、流出路20D、循環路20B及び供給路20Cにはそれぞれ、バルブV1、バルブV2及びバルブV3が設けられており、流出路20Dには、ポンプP1が接続されている。
【0085】
さらに、各液槽21A,21B,21C内の工業用共沸洗浄剤4をシャワーノズル41から噴射させるために、各液槽21A,21B,21Cと各シャワーノズル41とを連通する連通路40Aが設けられている。そして、各連通路40Aにはそれぞれ、各液槽21A,21B,21Cから各シャワーノズル41へ工業用共沸洗浄剤4を圧送するポンプP2が接続されている。そのポンプP2の上流側及び下流側には、工業用共沸洗浄剤4の流出量を調整するバルブV4と、各シャワーノズル41への工業用共沸洗浄剤4の供給量を調整するバルブV5とが設けられている。
【0086】
次に、洗浄再生装置1の動作について説明する。各液槽21A,21B,21Cには、工業用共沸洗浄剤4が貯留されている。第1液槽21Aの工業用共沸洗浄剤4は、熱源23によって加熱され、懸濁状態となっている。これらの各液槽21A,21B,21C内の工業用共沸洗浄剤4を、バルブV4及びバルブV5を開放して連通路40Aを介してシャワーノズル41へ供給し、シャワーノズル41から噴射させる。工業汚れが付着した物品は、シャワーノズル41の下方に設けられた搬送装置42上を、第1液槽21A側から第3液槽21C側に向かって図2の矢印Eの方向へ搬送される。その間にシャワーノズル41から噴射される工業用共沸洗浄剤4に曝されることで、工業汚れが付着した物品はシャワー洗浄される。一方、工業用共沸洗浄剤4は、第1実施形態と同様に再生される。
【0087】
なお、第2実施形態では、洗浄機構2としてシャワー洗浄を行っているが、工業用共沸洗浄剤4を噴射するシャワーノズル41をスプレーノズルに変えることで、スプレー洗浄を行うこともできる。
【0088】
上記第1及び第2実施形態では、工業用共沸洗浄剤4を液体として使用する場合について説明したが、工業用共沸洗浄剤4を蒸気として使用することもできる。例えば、各液槽21A,21B,21Cを洗浄塔に置き換え、洗浄塔の内部に物品を載置又は懸架し、当該洗浄塔の底部に貯留される工業用共沸洗浄剤4を気化させて物品に接触させてスチーム洗浄を行うこともできる。また、気化器31から蒸気として流出される工業用共沸洗浄剤4を、既知の任意のノズルを通じて物品に噴射して物品をスチーム洗浄することもできる。
【0089】
また、上記第1及び第2実施形態では、液槽21A,21B,21Cを3個設けているが、液槽の数は3個に限られず、任意の個数とすることができる。
【実施例】
【0090】
本発明を、実施例を通じて具体的に説明する。ただし、それらによって本発明の範囲は限定されない。
【0091】
<共沸組成確認用の洗浄剤の調製>
調製例1
200mlのナス型フラスコに、(A)成分としてジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を20g、及び(B)成分として超純水(以下、単に水という。)を80g入れ、よく混合することにより、洗浄剤1を調製した。
【0092】
次いで、当該ナス型フラスコに、理論段数N=10に相当する蒸留カラム、ト字管、温度計及びリービッヒ冷却器を接続した。次いで、常圧下、当該ナス型フラスコをオイルバスで加熱し、当該共沸混合物を沸騰させることにより、沸点100℃以下の留分のみを採取した。
【0093】
次いで、当該留分の組成比を、デジタル濃度計PR−201α(ATAGO社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0094】
一方、(A)成分と(B)成分の比率を変える目的で、200mlのナス型フラスコにDEDGを30g、及び水を70g入れ、よく混合することにより洗浄剤2を調製した。また、上記した方法と同様の方法で当該共沸混合物を沸騰させ、その沸点100℃以下の留分のみを採取し、その組成比を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
調製例2〜4及び比較調製例1〜7
調製例1において、(A)成分として表1で示されるものを使用し、かつ(A)成分と(B)成分の比率を表1で示す値に変更した他は同様にして洗浄剤1及び2を調製し、それぞれについて前記同様の方法での蒸留試験を行い、沸点100℃以下の留分の組成比を求めた。ただし比較調製例1と6の洗浄剤1及び2は、いずれも共沸はしたが、留出液が二層分離した。なお、表1中に記載されている(A)成分の名称及び構造は表2〜4に示すとおりである。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
調製例5
200mlのナス型フラスコに、(A)成分としてDEDGを10g、(B)成分として超純水を85g、(C)成分として2−(ジエチルアミノ)エタノール(DEAE)を5g入れ、よく混合することにより洗浄剤1を調製した。
【0101】
また、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率を変える目的で、200mlのナス型フラスコにDEDGを20g、水を65g、及びDEAEを15g入れ、よく混合することにより洗浄剤2を調製した。
【0102】
次いで、洗浄剤1と2のそれぞれを調製例1の方法に従い蒸留し、いずれも沸点100℃以下の留分のみを採取した。次いで、当該留分における(A)成分及び(C)成分の含有量を、ガスクロマトグラフィー6850 Network GC System(Agilent Technologies社製)において、絶対検量線法に従い、定量した(かかる定量手段を、以下、単にGC法ということがある。)。結果を表5に示す。
【0103】
調製例6〜11及び比較調製例8〜13
調製例5において、(A)成分及び(C)成分として表1で示されるものを使用し、かつ(A)成分、(B)成分及び(C)成分の比率を表5で示す値に変更した他は同様にして洗浄剤1及び2を調製し、それぞれについて前記同様の方法での蒸留試験を行い、沸点100℃以下の留分の組成比を求めた。ただし比較調製例8の洗浄剤1及び2は、共沸はしたが、留出液が二層分離した。なお、表5中に記載されている(A)成分の名称及び構造は表2〜4に示すとおりであり、(C)成分の名称及び構造は表6〜9に示すとおりである。
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
<洗浄試験用及び廃液再生用の共沸洗浄剤の調製>
実施例1
調製例1の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、200mlのビーカーにDEDGを49.0g(24.5wt%)及び水を151.0g(75.5wt%)入れ、よく混合することにより、洗浄剤を調製した。なお、その共沸点は、調製例1の結果である共沸点と同一とみなした。また、当該洗浄剤の引火点を、クリーブランド開放法(JIS K2265−4)に準拠して測定したところ、認められなかった。加えて、当該洗浄剤を30g、スクリュー管に入れ、これを恒温槽内で徐々に加温し、その外観に濁りが生じた温度(曇点)を測定したところ、57℃であった。
【0110】
実施例2
調製例2の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。なお、表10に記載した共沸点、引火点及び曇点は、実施例1の解釈及び測定法に従った(以下、同様。)。
【0111】
実施例3
調製例3の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0112】
実施例4
調製例4の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0113】
実施例5
調製例5の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0114】
実施例6
調製例6の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0115】
実施例7
調製例7の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0116】
実施例8
調製例8の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0117】
実施例9
調製例9の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0118】
実施例10
調製例10の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0119】
実施例11
調製例11の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0120】
比較例1
比較調製例2の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0121】
比較例2
比較調製例3の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0122】
比較例3
比較調製例5の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0123】
比較例4
比較調製例9の洗浄剤1及び2の共沸時の留分の比率に基づき、下記表10に示す組成の洗浄剤(200g)を調製した。
【0124】
【表10】
【0125】
<洗浄試験用物品の作製>
作製例1
鉛フリーソルダペースト(商品名「パインソルダーTAS LF219−1」、荒川化学工業(株)製)を、ガラスエポキシ銅張積層板(30×30×T1.5mm)の銅パターン上にメタルマスクを介して印刷し、得られた積層板を、以下のプロファイルでリフローすることによって、フラックス残渣が付着した基板(以下、試験基材Aという。)を作製した。
【0126】
(試験基板のリフロープロファイル)
雰囲気 : 大気
昇温速度 : 2℃/秒
プレヒート : 150℃、60秒間
ピーク温度 : 250℃、60秒間
【0127】
作製例2
鉛フリーソルダペースト(パインソルダーTAS LF219−1)を、ソルダレジストが塗工された銅張積層板(30×30×T1.5mm)の銅パターン上にメタルマスクを介して印刷し、得られた積層板を、前記プロファイルでリフローすることによって、フラックス残渣が付着した基板(以下、試験基材Bという。)を作製した。
【0128】
作製例3
ロジン系ポストフラックス(商品名「パインフラックスWHS−002」、荒川化学工業(株)製)50mgを、JIS2型の櫛形基板(50×50×T1.5mm)の銅パターン上に、軟毛ブラシを用いて均一に塗布し、100℃の乾燥機の中で5分間乾燥させた後、235±5℃の共晶ハンダ浴(錫−鉛合金)に5秒間浸すことによって、ポストフラックスの残渣が付着した基材(以下、試験基材Cという。)を作製した。
【0129】
作製例4
鉛フリーソルダペースト(パインソルダーTAS LF219−1)500mgを、ステンレス製テストピース(75×25×T0.5mm)上に、樹脂製のスキージを用いて均一に塗布することにより、洗浄試験用の基材(以下、試験基材Dという。)を作製した。
【0130】
作製例5
市販の鉄工用タップ・ドリルオイル(商品名「No.167」、(株)三共コーポレーション製)100mgを、前記ステンレス製テストピース(75×25×T0.5mm)上に均一に塗布し、洗浄試験用の基材(以下、試験基板Eという。)を作製した。
【0131】
<洗浄試験>
200mLのビーカーA’に、実施例1の洗浄剤の200gを入れ、65℃に加温した後、前記試験基材Aを浸漬し、28kHzの超音波を15分間照射した後、該基材Aを引き上げ、80℃の循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。
【0132】
200mLのビーカーB’に、実施例1の洗浄剤を200g入れ、65℃に加温した後、前記試験基材Bを浸漬し、28kHzの超音波を15分間照射した後、該基材Bを取り出し、80℃の循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。
【0133】
200mLのビーカーC’に実施例1の洗浄剤を200g入れ、65℃に加温した後、前記試験基材Cを浸漬し、28kHzの超音波を5分間照射した後、該基材Cを取り出し、80℃の循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。
【0134】
200mLのビーカーD’に、実施例1の洗浄剤を200g入れ、65℃に加温した後、前記試験基材Dを浸漬し、28kHzの超音波を1分間照射した後、該基材Dを取り出し、80℃の循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。
【0135】
200mLのビーカーE’に実施例1の洗浄剤を200g入れ、65℃に加温した後、前記試験基材Eを浸漬し、スターラーを用いて1分間撹拌した後、該基材Eを取り出し、80℃の循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。
【0136】
実施例2〜11、及び比較例1〜4の洗浄剤についても、それぞれ前記基材A、B、C、D及びEに適用し、前記同様の方法で洗浄試験を実施した。
【0137】
(評価方法、及び評価基準)
フラックス、及びポストフラックスの洗浄性は、光学顕微鏡を用いた目視検査により除去率を求めることで判定した。尚、フラックス、及びポストフラックスの洗浄性の判定基準は下記の通りである。
【0138】
除去率(%)=(1−洗浄後のフラックス付着面積/洗浄前のフラックス付着面積)×100
◎ : 除去率95%以上
○ : 除去率80%以上、かつ95%未満
△ : 除去率60%以上、かつ80%未満
× : 除去率60%未満
【0139】
ソルダペースト、及び工業油の洗浄性については、洗浄前後の試験基板の重量差から除去率を求めることで判定した。尚、ソルダペースト、及び工業油の洗浄性の判定基準は下記の通りである。
【0140】
除去率(%)=(洗浄前の試験基板重量−洗浄後の試験基板重量)/塗布量×100
◎ : 除去率95%以上
○ : 除去率80%以上、かつ95%未満
△ : 除去率60%以上、かつ80%未満
× : 除去率60%未満
【0141】
【表11】
【0142】
<洗浄廃液の蒸留>
1.ソルダペースト由来のフラックス残渣を含む廃液の蒸留試験
市販の鉛フリーソルダペースト(商品名「パインソルダーTAS LF219−1」、荒川化学工業(株)製)を10g、軟膏缶に入れ、これを250℃に熱したホットプレート上で15分間加熱し、鉛フリーハンダ粉末を溶融させることにより、フラックス残渣を形成させた。
【0143】
次に、200mlのナス型フラスコに、実施例1の洗浄剤を99g、及び前記フラックス残渣を1g入れ、撹拌混合することにより、廃液を調製した。
【0144】
次に、当該ナス型フラスコに、ト字管、温度計及びリービッヒ冷却器を取り付け、これをオイルバスに浸し、1気圧の下、該廃液を加熱して沸騰させた。そして、初留区分を20g、中留区分を20gずつ計3回、及び後留区分約20g未満をそれぞれ採取した。
【0145】
表12に、各蒸留区分における(A)成分の比率(デジタル濃度計PR−201αによる測定値)を示す。
【0146】
表12の記載より、該廃液の留出液における組成比は、各蒸留区分においてほぼ一定であり、蒸留前の洗浄剤の組成比と殆ど相違しないことがわかった。このことより、該廃液から本発明の洗浄剤が再生されたことを確認した。
【0147】
2.ポストフラックス由来のフラックス残渣を含む廃液の蒸留試験
【0148】
市販のポストフラックス(商品名「パインフラックス WHS−002」、荒川化学工業(株)製)を10g、軟膏缶に入れ、これを100℃の乾燥機の中に1時間放置し、溶剤成分を揮発させることにより、フラックス残渣を形成させた。
【0149】
次に、200mlのナス型フラスコに、実施例1の洗浄剤を99g、及び前記フラックス残渣を1g入れ、撹拌混合し、廃液を調製した。次いで、前記同様にして当該廃液を蒸留した。蒸留液の各区分における(A)成分の比率を表12に示す。
【0150】
表12の記載より、該廃液の留出液における組成比は、各蒸留区分においてほぼ一定であり、蒸留前の洗浄剤の組成比と殆ど相違しないことがわかった。このことより、該廃液から本発明の洗浄剤が再生されたことを確認した。
【0151】
3.ソルダペーストを含む廃液の蒸留試験
200mlのナス型フラスコに、実施例1の洗浄剤を99g、及びパインソルダーTAS LF219−1(荒川化学工業(株)製)1gを入れ、撹拌混合し、廃液を調製した。次いで、前記同様にして当該廃液を蒸留した。蒸留液の各区分における(A)成分の比率を表12に示す。
【0152】
表12の記載より、該廃液の留出液における組成比は、各蒸留区分においてほぼ一定であり、蒸留前の洗浄剤の組成比と殆ど相違しないことがわかった。このことより、該廃液から本発明の洗浄剤が再生されたことを確認した。
【0153】
4.工業油を含む廃液の蒸留試験
200mlのナス型フラスコに、実施例1の洗浄剤を99g、及び市販の鉄工用タップ・ドリルオイルNo.167((株)三共コーポレーション製)1gを入れ、撹拌混合し、廃液を調製した。次いで、前記同様にして当該廃液を蒸留した。蒸留液の各区分における(A)成分の比率を表12に示す。
【0154】
表12の記載より、該廃液の留出液における組成比は、各蒸留区分においてほぼ一定であり、蒸留前の洗浄剤の組成比と殆ど相違しないことがわかった。このことより、該廃液から本発明の洗浄剤が再生されたことを確認した。
【0155】
また、実施例2、3、6、7及び11の洗浄剤のそれぞれについても前記1、2、3及び4の蒸留試験を実施した。結果を表12に示す。
【0156】
なお、表12において、実施例2及び3の各数値(wt%)はデジタル濃度計PR−201αを用いて得た測定値である。また、実施例6、7及び11の各数値(wt%)は前記GC法を利用して得た測定値である。
【0157】
【表12】
【符号の説明】
【0158】
1 洗浄再生装置
2 洗浄機構
3 再生機構
4 工業用共沸洗浄剤
20C 供給路
30A 戻り流路
31 気化器
図1
図2