特許第6544258号(P6544258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000002
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000003
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000004
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000005
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000006
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000007
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000008
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000009
  • 特許6544258-内燃機関の温度調整装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544258
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】内燃機関の温度調整装置
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/14 20060101AFI20190705BHJP
   F02F 1/10 20060101ALI20190705BHJP
   F02F 1/18 20060101ALI20190705BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   F02F1/14 D
   F02F1/10 E
   F02F1/18 B
   F02F1/18 F
   F01P3/02 A
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-25114(P2016-25114)
(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-141796(P2017-141796A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 元
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−275029(JP,A)
【文献】 特開2006−144675(JP,A)
【文献】 特開2006−090196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00−1/42
F02F 7/00
F01P 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボアを構成するボア壁部の周囲にウォータジャケットが形成されたシリンダブロックと、
前記ウォータジャケットの深さ方向に沿って区分される複数の領域に対応して前記ウォータジャケット内に互いに隣接して配置されるとともに、前記ボア壁部から離間して配置され、前記ボア壁部からの距離が可変するように伸縮可能に設けられた複数のウォータジャケットスペーサと、
前記複数のウォータジャケットスペーサの各々を伸縮させる複数の移動体と、
前記複数の移動体の移動量をそれぞれ独立して調整する移動量調整部と、を備え、
前記複数の移動体の各々は、前記ウォータジャケットスペーサを押圧可能に設けられた押圧部材を含み、
前記移動量調整部は、前記押圧部材を移動させる複数のアクチュエータによって構成されており、
前記ボア壁部の内部に設けられ、前記ウォータジャケットの深さ方向に沿って区分される複数の領域にそれぞれ対応する前記ボア壁部の温度を検知する複数の温度検知部をさらに備え、
前記複数のアクチュエータは、前記複数の温度検知部によって検知された温度情報に基づいて、前記複数の移動体の移動量をそれぞれ調整し、
前記ウォータジャケットは、前記深さ方向に沿ってエンジンヘッドに近い側から上部領域、中部領域、および下部領域を有し、
前記上部領域、前記中部領域、および前記下部領域のそれぞれに前記ウォータジャケットスペーサが配置されている、内燃機関の温度調整装置。
【請求項2】
前記シリンダブロックは、前記ウォータジャケットの外側に配置され、かつ、前記ボア壁部に向かい合うベース部を含み、
前記ウォータジャケットを規定する前記ベース部の壁面には、樹脂層が設けられており、
前記複数のウォータジャケットスペーサの各々は、内部に前記移動体を収容した状態で、前記樹脂層に接合されている、請求項1に記載の内燃機関の温度調整装置。
【請求項3】
前記移動量調整部は、エンジンの高負荷時において、エンジンヘッドに最も近い側に配置されている前記ウォータジャケットスペーサと前記ボア壁部との間の距離が、他の前記ウォータジャケットと前記ボア壁部との間の距離よりも広くなるように、前記複数の移動体の移動量を調整する、請求項1または2に記載の内燃機関の温度調整装置。
【請求項4】
前記ウォータジャケットの前記深さ方向に平行な方向において、前記上部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さは、前記中部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さよりも短く、前記中部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さは、前記下部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さよりも短い、請求項1から3のいずれか1項に記載の内燃機関の温度調整装置。
【請求項5】
シリンダボアを構成するボア壁部の周囲にウォータジャケットが形成されたシリンダブロックと、
前記ウォータジャケットの深さ方向に沿って区分される複数の領域に対応して前記ウォータジャケット内に互いに隣接して配置されるとともに、前記ボア壁部から離間して配置され、前記ボア壁部からの距離が可変するように伸縮可能に設けられた複数のウォータジャケットスペーサと、
前記複数のウォータジャケットスペーサの各々を伸縮させる複数の移動体と、
前記複数の移動体の移動量をそれぞれ独立して調整する移動量調整部と、を備え、
前記複数の移動体の各々は、伸縮可能に設けられた圧電素子によって構成され、
前記移動量調整部は、前記圧電素子に電気的に接続された制御部によって構成され、
前記制御部は、前記圧電素子に流れる電流を調整することにより、前記圧電素子の伸縮量を調整する、内燃機関の温度調整装置。
【請求項6】
前記シリンダブロックは、前記ウォータジャケットの外側に配置され、かつ、前記ボア壁部に向かい合うベース部を含み、
前記ウォータジャケットを規定する前記ベース部の壁面には、樹脂層が設けられており、
前記複数のウォータジャケットスペーサの各々は、内部に前記移動体を収容した状態で、前記樹脂層に接合されている、請求項に記載の内燃機関の温度調整装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ウォータジャケットの深さ方向に沿って区分される複数の領域にそれぞれ対応する前記ボア壁部の温度を推定し、推定された前記ボア壁部の温度に基づいて、前記圧電素子に流れる電流を調整する、請求項5または6に記載の内燃機関の温度調整装置。
【請求項8】
前記移動量調整部は、エンジンの高負荷時において、エンジンヘッドに最も近い側に配置されている前記ウォータジャケットスペーサと前記ボア壁部との間の距離が、他の前記ウォータジャケットと前記ボア壁部との間の距離よりも広くなるように、前記複数の移動体の移動量を調整する、請求項5から7のいずれか1項に記載の内燃機関の温度調整装置。
【請求項9】
前記ウォータジャケットは、前記深さ方向に沿ってエンジンヘッドに近い側から上部領域、中部領域、および下部領域を有し、
前記上部領域、前記中部領域、および前記下部領域のそれぞれに前記ウォータジャケットスペーサが配置されている、請求項5から8のいずれか1項に記載の内燃機関の温度調整装置。
【請求項10】
前記ウォータジャケットの前記深さ方向に平行な方向において、前記上部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さは、前記中部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さよりも短く、前記中部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さは、前記下部領域に配置された前記ウォータジャケットスペーサの長さよりも短い、請求項に記載の内燃機関の温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータジャケット内にスペーサが設けられた内燃機関の温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関の冷却装置が開示された文献として、特開2006−90195号公報(特許文献1)が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示の内燃機関の冷却装置にあっては、内側通路と外側通路との区画するスペーサをウォータジャケット内に配置し、冷態時に内側通路が狭まるようにスペーサを移動させる。
【0004】
これにより、内側通路に流れる冷却水の量が少なくなるため、冷態時に、シリンダボアを構成するシリンダライナからの放熱を抑制し、シリンダライナを早期に昇温させることができる。この結果、シリンダライナの温度を暖機運転が完了する温度に早期に到達させることができる。暖機運転が完了した場合には、内側通路が広がるようにスペーサを移動させ、冷却性能を発揮させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−90195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の内燃機関の冷却装置にあっては、シリンダライナからスペーサまでの距離は、スペーサの移動に伴いウォータジャケットの深さ方向に沿って一定に変化する。
【0007】
このため、内燃機関の高負荷運転時において、特に高温となるエンジンヘッドに近い側を積極的に冷却することができず、冷却能力が低下する。このような場合には、オイルの蒸発量および消費量が増加してしまう。
【0008】
また、冷態時においては、シリンダボア内を移動するピストンの上死点および下死点の間であって当該ピストンのスピードが早くなる中央領域近傍に位置する部分のシリンダライナの温度を上昇させつつ、エンジンヘッドに近い側を効率よく冷却する等の調整を行なうことができない。このため、シリンダライナの温度が全体的に上昇してしまい、このことによってもオイルの蒸発量および消費量が増加してしまう。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ウォータジャケットの深さ方向に平行な方向におけるボア壁の温度分布を所望の温度分布にすることができる内燃機関の温度調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づく内燃機関の温度調整装置は、シリンダボアを構成するボア壁部の周囲にウォータジャケットが形成されたシリンダブロックと、上記ウォータジャケットの深さ方向に沿って区分される複数の領域に対応して上記ウォータジャケット内に互いに隣接して配置されるとともに、上記ボア壁部から離間して配置され、上記ボア壁部からの距離が可変するように伸縮可能に設けられた複数のウォータジャケットスペーサと、上記複数のウォータジャケットスペーサの各々を伸縮させる複数の移動体と、上記複数の移動体の移動量をそれぞれ独立して調整する移動量調整部と、を備える。
【0011】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記シリンダブロックは、上記ウォータジャケットの外側に配置され、かつ、上記ボア壁部に向かい合うベース部を含むことが好ましく、上記ウォータジャケットを規定する上記ベース部の壁面には、樹脂層が設けられていることが好ましい。さらに、上記複数のウォータジャケットスペーサの各々は、内部に上記移動体を収容した状態で、上記樹脂層に接合されていることが好ましい。
【0012】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記複数の移動体の各々は、伸縮可能に設けられた圧電素子によって構成されていてもよく、上記移動量調整部は、上記圧電素子に電気的に接続された制御部によって構成されていてもよい。この場合には、上記制御部は、上記圧電素子に流れる電流を調整することにより、上記圧電素子の伸縮量を調整することが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記制御部は、上記ウォータジャケットの深さ方向に沿って区分される複数の領域にそれぞれ対応する上記ボア壁部の温度を推定し、推定された上記ボア壁部の温度に基づいて、上記圧電素子に流れる電流を調整することが好ましい。
【0014】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記複数の移動体の各々は、上記ウォータジャケットスペーサを押圧可能に設けられた押圧部材を含んでいてもよく、上記移動量調整部は、上記押圧部材を移動させる複数のアクチュエータによって構成されていてもよい。
【0015】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記ボア壁部の内部に設けられ、上記ウォータジャケットの深さ方向に沿って区分される複数の領域にそれぞれ対応する上記ボア壁部の温度を検知する複数の温度検知部をさらに備えていてもよい。この場合には、上記複数のアクチュエータは、上記複数の温度検知部によって検知された温度情報に基づいて、上記複数の移動体の移動量をそれぞれ調整することが好ましい。
【0016】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記移動量調整部は、エンジンの高負荷時において、エンジンヘッドに最も近い側に配置されている上記ウォータジャケットスペーサと上記ボア壁部との間の距離が、他の上記ウォータジャケットと上記ボア壁部との間の距離よりも広くなるように、上記複数の移動体の移動量を調整することが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記ウォータジャケットは、上記深さ方向に沿ってエンジンヘッドに近い側から上部領域、中部領域、および下部領域を有することが好ましい。この場合には、上記上部領域、上記中部領域、および上記下部領域のそれぞれに上記ウォータジャケットスペーサが配置されていることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく内燃機関の温度調整装置にあっては、上記ウォータジャケットの上記深さ方向に平行な方向において、上記上部領域に配置された上記ウォータジャケットスペーサの長さは、上記中部領域に配置された上記ウォータジャケットスペーサの長さよりも短く、上記中部領域に配置された上記ウォータジャケットスペーサの長さは、上記下部領域に配置された上記ウォータジャケットスペーサの長さよりも短いことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウォータジャケットの深さ方向に平行な方向におけるボア壁の温度分布を所望の温度分布にすることができる内燃機関の温度調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置の縦断面図である。
図3】実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置の横断面図である。
図4】実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置において内燃機関の高負荷時におけるウォータジャケットスペーサの位置を示す縦断面図である。
図5】内燃機関の高温負荷時におけるウォータジャケットの深さ方向に平行な方向におけるボア壁の温度分布を示す図である。
図6】実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置において内燃機関の冷態時におけるウォータジャケットスペーサの位置を示す縦断面図である。
図7】内燃機関の冷態時におけるウォータジャケットの深さ方向に平行な方向におけるボア壁の温度分布を示す図である。
図8】実施の形態2に係る内燃機関の温度調整装置の縦断面図である。
図9】実施の形態3に係る内燃機関の温度調整装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
(内燃機関の温度調整装置)
図1は、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置の斜視図である。図2は、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置の縦断面図である。図2は、図1に示すII−II線に沿った断面図である。なお、図1においては、エンジンヘッドを二点鎖線で示し、便宜上のためその一部を省略して図示している。図1および図2を参照して、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置100について説明する。
【0023】
図1に示すように、内燃機関の温度調整装置100は、エンジンヘッド5とシリンダブロック10とを備える内燃機関を冷却するためのものである。内燃機関の温度調整装置100は、主として、後述するシリンダボア1a,1b,1cを構成するボア壁部11を冷却するためのものである。
【0024】
図1および図2に示すように、内燃機関の温度調整装置100は、シリンダブロック10と、複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23と、複数の移動体としての複数の押圧部材31,32,33と、移動量調整部40と、複数の温度検知部71,72,73とを備える。
【0025】
シリンダブロック10は、ボア壁部11、ウォータジャケット12、およびベース部13を含む。
【0026】
ボア壁部11は、シリンダブロック10の内周側に設けられている。ボア壁部11は、略円筒形状を有するシリンダボア1a,1b,1cを構成する。ボア壁部11に囲まれた領域にピストン60が配置される。
【0027】
ボア壁部11は、たとえば複数のシリンダライナによって構成される。具体的には、ボア壁部11は、鉄製のシリンダライナと、そのシリンダライナを取り囲むアルミニウム合金とにより構成される。
【0028】
ウォータジャケット12は、エンジンヘッド5に向けて開口し、所定の深さを有する凹形状を有する。ウォータジャケット12は、ボア壁部11の周囲に形成されている。ウォータジャケット12は、ボア壁部11を取り囲むように設けられている。
【0029】
ウォータジャケット12は、ボア壁部11とベース部13との間に位置する。ウォータジャケット12は、底部を有し、この底部において、ボア壁部11とベース部13とが接合されている。ウォータジャケット12には、冷却水が流れる。これにより、ボア壁部11の温度が冷却水によって調整される。
【0030】
ウォータジャケット12は、その深さ方向に沿って区分される複数の領域を有する。ウォータジャケット12は、たとえば、深さ方向に沿ってエンジンヘッド5に近い側から上部領域R1、中部領域R2、および下部領域R3を有する。
【0031】
ベース部13は、ウォータジャケット12の外側に配置され、かつ、ボア壁部11に向かい合う。ベース部13は、たとえばアルミニウム合金から形成されている。ベース部13には、不図示の冷却水の入口が設けられている。この冷却水の入口には、不図示のウォータポンプから冷却水が導入される。
【0032】
複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23は、ウォータジャケット12内に配置されている。複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23は、ウォータジャケット12の深さ方向に沿って区分される複数の領域に対応して隙間を形成することなく互いに隣接して配置されている。
【0033】
ウォータジャケットスペーサ21は、ウォータジャケット12の上部領域R1に配置されている。ウォータジャケットスペーサ22は、ウォータジャケット12の中部領域R2に配置されている。ウォータジャケットスペーサ23は、ウォータジャケット12の下部領域R3に配置されている。
【0034】
複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23は、ボア壁部11から離間して配置されている。複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23は、ボア壁部11からの距離が可変するように伸縮可能に設けられている。複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23は、たとえばゴム等の伸縮性を有する部材によって構成されている。
【0035】
複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23は、ベース部13の壁面13aに設けられた樹脂層50に接合されている。
【0036】
樹脂層50は、複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23とベース部13との接合性を良好にするものである。樹脂層50は、耐熱性および耐水性の優れたものであることが好ましい。
【0037】
複数の押圧部材31,32,33は、複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23の内部に収容されている。複数の押圧部材31,32,33は、複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23を押圧可能に構成されている。複数の押圧部材31,32,33は、後述するようにウォータジャケットスペーサ21,22,23を伸縮させる。
【0038】
移動量調整部40は、複数のアクチュエータ41,42,43によって構成されている。複数のアクチュエータ41,42,43は、駆動軸41a,42a,43aを有する。駆動軸41a,42a,43aは、シリンダブロック10のベース部13を貫通して、押圧部材31,32,33に接続されている。
【0039】
複数のアクチュエータ41,42,43を駆動させると、駆動軸41a,42a,43aがそれらの軸方向に移動する。駆動軸41a,42a,43aの移動に伴って押圧部材31,32,33が移動する。複数のアクチュエータ41,42,43は、駆動軸41a,42a,43aの移動量を調整することにより、複数の押圧部材31,32,33の移動量をそれぞれ調整する。
【0040】
複数のアクチュエータ41,42,43は、たとえば油圧シリンダであってもよいし、モータと、モータの回転運動を駆動軸41a,42a,43aの直線運動に変更する機構との組み合わせであってもよい。また、複数のアクチュエータ41,42,43は、流れる電流の大きさによって変形量が異なる圧電素子によって構成されていてもよいし、与えられる熱量によって変形量が異なるバイメタル等の熱変形部材によって構成されていてもよい。
【0041】
複数のアクチュエータ41,42,43は、複数の温度検知部71,72,73によって検知された温度情報に基づいて、複数の押圧部材31,32,33の移動量をそれぞれ調整する。複数のアクチュエータ41,42,43は、たとえば、検知された温度が高い場合には、初期位置からの移動量が小さく、検知された温度が低い場合に初期位置からの移動量が大きくなるように、複数の押圧部材31,32,33を移動させる。
【0042】
複数の温度検知部71,72,73は、ボア壁部11の内部に設けられている。複数の温度検知部71,72,73は、ウォータジャケット12の深さ方向に沿って区分される複数の領域に対応するボア壁部11の温度を検知する。複数の温度検知部71,72,73は、たとえば熱電対やサーミスタ等によって構成される。
【0043】
温度検知部71は、ウォータジャケット12の上部領域R1に対応する部分のボア壁部11の温度を検知する。温度検知部72は、ウォータジャケット12の中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度を検知する。温度検知部73は、ウォータジャケット12の下部領域R3に対応する部分のボア壁部11の温度を検知する。複数の温度検知部71,72,73は、検知した温度情報を複数のアクチュエータ41,42,43に入力する。
【0044】
(ウォータジャケットスペーサの詳細な構成およびその移動)
図3は、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置の横断面図である。図3を参照して、実施の形態1に係るウォータジャケットスペーサ21の詳細な構成およびその移動について説明する。
【0045】
図3に示すように、ウォータジャケットスペーサ21は、ベース部13の内壁面13aに向けて開口する袋状の形状を有する。ウォータジャケットスペーサ21は、側壁部211,212、上壁部213(図2参照)、下壁部214(図2参照)、および主壁部215を有する。
【0046】
主壁部215は、ベース部13の内壁面13aに沿って延在する。主壁部215は、側壁部211,212、上壁部213、および下壁部214の一端側を接続するように設けられている。
【0047】
側壁部211,212、上壁部213、および下壁部214の他端側は、樹脂層50に接合されている。少なくとも、側壁部211,212、上壁部213、および下壁部214が伸縮可能に設けられることにより、ウォータジャケットスペーサ21が伸縮性を有する。
【0048】
ウォータジャケットスペーサ21は、内部に移動体としての押圧部材31を複数収容している。複数の押圧部材31は、主壁部215の内表面を押圧可能に設けられている。複数の押圧部材31は、主壁部215に沿うように設けられている。
【0049】
複数の押圧部材31は、互いに離間して配置されている。複数の押圧部材31は、シリンダボア1a,1b,1cに対応して配置されている。複数の押圧部材31は、シリンダブロック10のベース部13を貫通するように設けられた後述の駆動軸41aに接続されている。
【0050】
複数の押圧部材31によって主壁部215が押圧されることにより、ウォータジャケットスペーサ21は、伸長してボア壁部11に近づく。一方、複数の押圧部材31が、ボア壁部11から遠ざかる方向に移動することにより、ウォータジャケットスペーサ21は、収縮してボア壁部11から遠ざかる。
【0051】
なお、ウォータジャケットスペーサ21内部には、複数の押圧部材31が収容される場合に限定されず、単一の押圧部材が収容されていてもよい。この場合には、押圧部材は、シリンダボア1aからシリンダボア3aに亘って向かい合うように、主壁部215に沿って延在する。
【0052】
ウォータジャケットスペーサ22,23もウォータジャケットスペーサ21とほぼ同様の構成を有している。ウォータジャケットスペーサ22,23は、複数の押圧部材32,33によって押圧されることにより、伸長してボア壁部11に近づき、複数の押圧部材32,33がボア壁部11から遠ざかる方向に移動することにより、収縮してボア壁部11から遠ざかる。
【0053】
(内燃機関の高負荷時におけるウォータジャケットスペーサの位置)
図4は、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置において内燃機関の高負荷時におけるウォータジャケットスペーサの位置を示す縦断面図である。図4を参照して、内燃機関の高負荷時におけるウォータジャケットスペーサの位置について説明する。
【0054】
内燃機関の高負荷時においては、エンジンヘッド5とシリンダブロック10との間にて燃料の燃焼回数が増加するため、シリンダブロック10の上部側の温度が高くなる。このため、シリンダブロック10の上部側にて温度検知部71によって検知される温度は、シリンダブロック10の中部、および下部側にて温度検知部72,73によって検知される温度よりも高くなる。
【0055】
このような温度情報に基づいて、内燃機関の高負荷時においては、移動量調整部40(複数のアクチュエータ41,42,43)は、エンジンヘッド5に最も近い側に配置されているウォータジャケットスペーサ21とボア壁部11との間の距離が、他のウォータジャケットスペーサ22,23とボア壁部11との間の距離よりも広くなるように、複数の押圧部材31,32,33の移動量を調整する。
【0056】
この場合において、上部領域R1に配置されているウォータジャケットスペーサ21は、ベース部13側に位置する初期の位置からボア壁部11側に移動させられなくてもよいし、ボア壁部11側に相当程度移動させられてもよい。
【0057】
一方、中部領域R2に配置されているウォータジャケットスペーサ22および下部領域R3に配置されているウォータジャケットスペーサ23は、ボア壁部11寄りの位置に移動させられる。ウォータジャケットスペーサ23は、ウォータジャケットスペーサ22と比較して短く(ボア壁部11との間隔が広くなるように)移動させられている。なお、ウォータジャケットスペーサ23は、ウォータジャケットスペーサ22と同じ量移動させられてもよい。
【0058】
このようにウォータジャケットスペーサ21,22,23を移動させることにより、ウォータジャケット12の上部領域R1を流れる冷却水の流量が、ウォータジャケット12の中部領域R2および下部領域R3を流れる冷却水の流量よりも多くなる。
【0059】
これにより、上部領域R1に対応する部分のボア壁部11を効率よく冷却することができる。この結果、シリンダボア1a,1b,1c内に充填されたオイルの蒸発量および消費量を抑制することができる。
【0060】
(内燃機関の高負荷時におけるボア壁の温度分布)
図5は、内燃機関の高負荷時におけるウォータジャケットの深さ方向に平行な方向におけるボア壁の温度分布を示す図である。図5を参照して、内燃機関の高負荷時におけるボア壁部11の温度分布について説明する。
【0061】
図5においては、実施例におけるボア壁部11の温度分布を実線で示し、比較例におけるボア壁部11の温度分布を破線で示している。
【0062】
実施例および比較例においては、いずれも上部領域R1に対応する部分のボア壁部11を冷却することを目的として、上部領域R1においてボア壁部11からウォータジャケットスペーサ21までの距離を最も広くしている。実施例および比較例を比較すると、中部領域R2および下部領域R3におけるウォータジャケットスペーサからボア壁部11までの距離が異なっている。
【0063】
実施例として、上述のように、ウォータジャケットスペーサ21とボア壁部11との間の距離が最も広くなるように、ウォータジャケットスペーサ21,22,23をそれぞれ独立して移動させている。
【0064】
一方、比較例として、ウォータジャケットの深さ方向に分割されていない従来のウォータジャケットスペーサを使用した場合を示す。この比較例では、ボア壁部11から従来構造のウォータジャケットスペーサまでの距離が、実施例のボア壁部11からウォータジャケットスペーサ21までの距離と等距離になるように、従来構造のウォータジャケットスペーサを移動させている。
【0065】
実施例の場合においては、上述のように、ウォータジャケット12の上部領域R1を流れる冷却水の流量が多くなり、上部領域R1に対応する部分のボア壁部11を効率よく冷却することができる。この結果、ウォータジャケット12の深さ方向に平行な方向におけるボア壁部11の温度分布は、略一定となる。
【0066】
一方、比較例の場合においては、ウォータジャケット12の深さ方向においてウォータジャケット12内を流れる流量がほぼ一定となる。すなわち、上部領域R1、中部領域R2、および下部領域R3において冷却水の流量がほぼ一定となる。これにより、上部領域R1に対応する部分のボア壁部11を効率よく冷却することができず、上部領域R1側における冷却効率が低下する。加えて、中部領域R2および下部領域R3に対応する部分のボア壁部11が過度に冷却されてしまい、ピストン60を動かす際の流動抵抗が大きくなってしまう。
【0067】
(内燃機関の冷態時時におけるウォータジャケットスペーサの位置)
図6は、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置において内燃機関の冷態時におけるウォータジャケットスペーサの位置を示す縦断面図である。図6を参照して、内燃機関の冷態時におけるウォータジャケットスペーサの位置について説明する。
【0068】
内燃機関の冷態時においては、シリンダボア1a,1b,1c内の温度も低くなっており、ピストン60を動かす際には、流動抵抗が大きくなる。このため、少なくとも、ピストン60のスピードが早くなる中部領域R2に対応する部分において、流動抵抗を小さくすることが要求される。このため、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度を高くすることが好ましい。
【0069】
また、エンジンヘッド5とシリンダブロック10との間にて燃料が燃焼することにより、シリンダブロック10の上部側の温度が高くなる。シリンダボア1a,1b,1cの上部側からのオイルの蒸発量および消費量を抑制するため、シリンダブロック10の上部側の温度は、低くすることが好ましい。
【0070】
温度検知部71,72,73によってボア壁部11の温度が低くなっており、冷態時であると判断できるような場合には、移動量調整部40(複数のアクチュエータ41,42,43)は、複数のウォータジャケットスペーサ21,22,23とボア壁部11との間の全ての距離の中で、エンジンヘッド5に最も近い側に配置されているウォータジャケットスペーサ21とボア壁部11との間の距離が、最も広くなり、かつ、ピストン60の移動範囲の中央領域に対応する部分のウォータジャケットスペーサ22とボア壁部11との距離が最も狭くなるように、複数の押圧部材31,32,33の移動量を調整する。
【0071】
この場合において、上部領域R1に配置されているウォータジャケットスペーサ21は、ベース部13側に位置する初期の位置からボア壁部11側に移動させられなくてもよいし、ボア壁部11側に相当程度移動させられてもよい。
【0072】
一方、中部領域R2に配置されているウォータジャケットスペーサ22および下部領域R3に配置されているウォータジャケットスペーサ23は、ボア壁部11寄りの位置に移動させられる。ウォータジャケットスペーサ23は、ウォータジャケットスペーサ22と比較して短く(ボア壁部11との間隔が広くなるように)移動させられている。なお、ウォータジャケットスペーサ23は、ウォータジャケットスペーサ22と同じ量移動させられてもよい。
【0073】
内燃機関の冷態時におけるウォータジャケットスペーサ22,23は、内燃機関の高負荷時における位置(図4に示す位置)よりもボア壁部11側に移動させられている。
【0074】
このようにウォータジャケットスペーサ21,22,23を移動させることにより、中部領域R2を流れる流量を抑制することができ、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度を効率的に上昇させることができる。
【0075】
また、ウォータジャケット12の上部領域R1を流れる冷却水の流量を、中部領域R2や下部領域R3とは独立させて十分に確保できるので、上部領域R1に対応する部分のボア壁部11を効率よく冷却することができる。
【0076】
さらに、下部領域R3におけるボア壁部11からウォータジャケットスペーサ23までの距離を、中部領域R2におけるボア壁部11からウォータジャケットスペーサ22までの距離よりも少し広くすることにより、下部領域R3に対応する部分のボア壁部11の温度が過剰に上昇することを抑制することができる。
【0077】
この結果、シリンダボア1a,1b,1c内に充填されたオイルが上部側から蒸発して消費されることを抑制できる。また、シリンダボア1a,1b,1c内に充填されたオイルの中央部の温度を高くでき、ピストン60のスピードが速くなる領域においてオイルによる流動抵抗を小さくすることができる。
【0078】
(内燃機関の冷態時におけるボア壁の温度分布)
図7は、内燃機関の冷態時におけるウォータジャケットの深さ方向に平行な方向におけるボア壁の温度分布を示す図である。図7を参照して、内燃機関の冷態時におけるボア壁部11の温度分布について説明する。
【0079】
図7においては、実施例におけるボア壁部11の温度分布を実線で示し、比較例におけるボア壁部11の温度分布を破線で示している。
【0080】
実施例および比較例においては、いずれも中部領域R2に対応する部分のボア壁部11を保温することを目的として、中部領域R2においてボア壁部11からウォータジャケットスペーサ22までの距離を最も狭くしている。実施例および比較例を比較すると、上部領域R1および下部領域R3におけるウォータジャケットスペーサからボア壁部11までの距離が異なっている。
【0081】
実施例として、ウォータジャケットスペーサ21,22,23とボア壁部11との間の全ての距離の中で、ウォータジャケットスペーサ21とボア壁部11との間の距離が最も広くなり、かつ、ウォータジャケットスペーサ22とボア壁部11との間の距離が最も狭くなるように、ウォータジャケットスペーサ21,22,23をそれぞれ独立して移動させている。
【0082】
一方、比較例として、ウォータジャケットの深さ方向に分割されていない従来のウォータジャケットスペーサを使用した場合を示す。この比較例では、ボア壁部11から従来構造のウォータジャケットスペーサまでの距離が、実施例のボア壁部11からウォータジャケットスペーサ22までの距離と等距離になるように、従来構造のウォータジャケットスペーサを移動させている。
【0083】
実施例の場合においては、上述のように、ウォータジャケット12の上部領域R1を流れる冷却水の流量が多くなり、上部領域R1に対応する部分のボア壁部11を効率よく冷却することができる。また、中部領域R2を流れる流量を抑制することにより、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度を効率的に上昇させることができる。
【0084】
これにより、冷態時におけるボア壁部11の温度は、ウォータジャケット12の深さ方向に平行な方向におけるボア壁部11の温度分布は、略一定となる。
【0085】
なお、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度よりも上部領域R1に対応する部分のボア壁部11の温度が低くなるように調整されてもよい。同様に、下部領域R3に対応する部分のボア壁部11の温度が、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度より小さくなるように調整されてもよい。
【0086】
一方、比較例の場合においては、ウォータジャケット12の深さ方向においてウォータジャケット12内を流れる流量がほぼ一定となる。すなわち、上部領域R1、中部領域R2、および下部領域R3において冷却水の流量がほぼ一定となる。これにより、上部領域R1に対応する部分のボア壁部11を効率よく冷却することができず、上部領域R1側における冷却効率が低下する。一方で、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度は、実施例の温度とほぼ同等程度となる。しかしながら、下部領域R3に対応する部分のボア壁部11の温度は、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度よりも高くなり、下部領域R3においても冷却効率が低下する。
【0087】
このように、比較例においては、中部領域R2に対応する部分のボア壁部11の温度を所望の温度とすることが可能となるが、実施例と比較して上部領域R1側および下部領域R3側が高温となる。これにより、シリンダボア1a,1b,1c内に充填されたオイルが蒸発して消費されやすくなる。
【0088】
以上のように、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置100にあっては、ウォータジャケット12の深さ方向に沿って区分される複数の領域に対応してウォータジャケット12内に互いに隣接して配置された伸縮可能なウォータジャケットスペーサ21,22,23を、複数の押圧部材31,32,33によって伸縮させる構成とし、高負荷時または冷態時といった内燃機関の状態に応じて、移動量調整部40によって複数の押圧部材31,32,33の移動量を適宜調整することにより、ウォータジャケット12の深さ方向に平行な方向におけるボア壁部11の温度分布を所望の温度分布にすることができる。
【0089】
(実施の形態2)
(内燃機関の温度調整装置)
図8は、実施の形態2に係る内燃機関の温度調整装置の縦断面図である。図8を参照して、実施の形態2に係る内燃機関の温度調整装置100Aについて説明する。
【0090】
実施の形態2に係る内燃機関の温度調整装置100Aは、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置100と比較した場合に、複数の移動体31A,32A,33Aおよび移動量調整部の構成が相違するとともに、温度検知部71,72,73が設けられていない点において相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0091】
図8に示すように、実施の形態2に係る温度調整装置100Aは、移動体31A,32A,33Aは、伸縮可能に設けられた圧電素子によって構成されている。移動体31A,32A,33Aは、流れる電流の大きさに応じて、ボア壁部11とベース部13とが並ぶ方向に伸縮する。
【0092】
移動量調整部は、移動体31A,32A,33Aに接続された制御部80によって構成されている。制御部80は、たとえば、内燃機関の動作等を制御するエンジンコントロールユニットである。
【0093】
制御部80は、ウォータジャケット12の深さ方向に沿って区分される複数の領域にそれぞれ対応する部分のボア壁部11の温度を推定し、推定された各部分のボア壁部11の温度に基づいて、移動体31A,32A,33Aに流れる電流をそれぞれ調整する。
【0094】
制御部80は、エンジンの回転数およびエンジンの負荷に基づいて、ウォータジャケット12の深さ方向に沿って区分される複数の領域にそれぞれ対応する部分のボア壁部11の温度を推定する。
【0095】
このように構成される内燃機関の温度調整装置100Aにあっても、内燃機関の高負荷時および内燃機関の冷態時には、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置100と同様に、制御部80が、移動体31A,32A,33Aの移動量をそれぞれ独立して調整する。
【0096】
実施の形態2においても、内燃機関の状態に応じて、移動量調整部40によって複数の移動体31A,32A,33Aの移動量を適宜調整することにより、ウォータジャケット12の深さ方向に平行な方向におけるボア壁部11の温度分布を所望の温度分布にすることができる。
【0097】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係る内燃機関の温度調整装置の縦断面図である。図9を参照して、実施の形態3に係る内燃機関の温度調整装置100Bについて説明する。
【0098】
図9に示すように、実施の形態3に係る内燃機関の温度調整装置100Bは、実施の形態2に係る内燃機関の温度調整装置100Aと比較した場合に、ウォータジャケット12の深さ方向に平行な方向におけるウォータジャケットスペーサ21,22,23の長さが相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0099】
ウォータジャケット12の深さ方向に平行な方向において、上部領域R1に配置されたウォータジャケットスペーサ21の長さL1は、中部領域R2に配置されたウォータジャケットスペーサ22の長さL2よりも短くなっている。
【0100】
ウォータジャケット12の深さ方向に平行な方向において、中部領域R2に配置されたウォータジャケットスペーサ21の長さL2は、下部領域R3に配置されたウォータジャケットスペーサ23の長さL3よりも短くなっている。
【0101】
このように構成される内燃機関の温度調整装置100Bにあっても、内燃機関の高負荷時および内燃機関の冷態時には、実施の形態1に係る内燃機関の温度調整装置100と同様に、制御部80が、移動体31A,32A,33Aの移動量をそれぞれ独立して調整する。
【0102】
これにより、実施の形態3に係る内燃機関の温度調整装置100Bにあっても、実施の形態2に係る内燃機関の温度調整装置100Aと同等以上の効果が得られる。
【0103】
加えて、上述のようにウォータジャケットスペーサ21,22,23の長さ関係とすることにより、上部領域R1、中部領域R2および下部領域R3を流れる流量をより適正に調整することができる。
【0104】
上述した実施の形態1から3においては、ウォータジャケット12がその深さ方向に沿って上部領域R1、中部領域R2、および下部領域R3の3つに区分される場合を例示して説明したが、これに限定されず、2つに区分されてもよいし、4つ以上に区分されてもよい。この場合には、区分された数に対応して、複数のウォータジャケットスペーサ、複数の移動体が設けられる。
【0105】
上述した実施の形態1から3においては、シリンダブロック1内に3つのシリンダボアが形成されている場合を例示して説明したが、これに限定されず、シリンダボアの数は、1つ以上であればよい。
【0106】
また、この発明が適用される内燃機関としては、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン等があり、エンジンの型式として、直列型、V型、W型、水平対向型などの様々なエンジンに本発明を適用することができる。
【0107】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1a,1b,1c シリンダボア、5 エンジンヘッド、10 シリンダブロック、11 ボア壁部、12 ウォータジャケット、13 ベース部、13a 壁面、21,22,23 ウォータジャケットスペーサ、31,32,33 押圧部材、31A,32A,33A 移動体、40 移動量調整部、41,42,43 アクチュエータ、41a,42a,43a 駆動軸、50 樹脂層、60 ピストン、71,72,73 温度検知部、80 制御部、100,100A,100B 温度調整装置、211,212 側壁部、213 上壁部、214 下壁部、215 主壁部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9