特許第6544440号(P6544440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544440
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】半導体検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20190705BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20190705BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20190705BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20190705BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20190705BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   H01L27/146 F
   H01L27/146 A
   H01L27/144 K
   H01L29/48 M
   H01L31/10 H
   H01L21/92 603D
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-551472(P2017-551472)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(86)【国際出願番号】JP2015082605
(87)【国際公開番号】WO2017085842
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】徳田 敏
(72)【発明者】
【氏名】吉牟田 利典
(72)【発明者】
【氏名】岸原 弘之
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸久
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−165185(JP,A)
【文献】 特開2000−230981(JP,A)
【文献】 特開2012−234949(JP,A)
【文献】 特開2000−133792(JP,A)
【文献】 特開平09−083008(JP,A)
【文献】 特開平06−120549(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0205887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14−148
G01T 1/20−24
G01T 7/00
H01L 31/02−024
H01L 31/0248−0392
H01L 31/08−119
H01L 31/18−20
H01L 21/60−607
H01L 29/47
H01L 29/872
H01L 21/329
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光または放射線を検出する光電変換半導体層を有し、複数の画素電極が形成された一方の半導体チップまたは基板と、
各々の前記画素電極に対向した位置に対向画素電極が形成され、前記光電変換半導体層で検出されて得られた信号を読み出す他方の半導体チップまたは基板と
前記画素電極および前記対向画素電極のいずれかに形成されたバンプ電極とを備え、
前記対向画素電極と前記画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造、あるいは前記画素電極と前記対向画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造を有し、
前記光電変換半導体層に接触する電極の材料が光電変換半導体層に対してショットキー機能を有すると共に、前記光電変換半導体層にAl(アルミニウム)が接して形成された場合にAlがショットキー機能を有するように、前記光電変換半導体層が構成され、
当該ショットキー機能を有した電極に形成された最表面の電極の材料と当該ショットキー機能を有した電極の材料とにおける相互拡散係数が、前記最表面の電極の材料とAlとにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、ショットキー機能を有した電極が形成され、
ショットキー機能を有した電極および最表面の電極の積層構造により前記画素電極が形成される、半導体検出器。
【請求項2】
光または放射線を検出する光電変換半導体層を有し、複数の画素電極が形成された一方の半導体チップまたは基板と、
各々の前記画素電極に対向した位置に対向画素電極が形成され、前記光電変換半導体層で検出されて得られた信号を読み出す他方の半導体チップまたは基板と、
前記画素電極および前記対向画素電極のいずれかに形成されたバンプ電極とを備え、
前記対向画素電極と前記画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造、あるいは前記画素電極と前記対向画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造を有し、
前記光電変換半導体層に接触する電極の材料が光電変換半導体層に対してショットキー機能を有し、
当該ショットキー機能を有した電極、中間の金属層からなる電極、および最表面の電極の順に積層形成されて前記画素電極が形成され、
当該最表面の電極の材料と前記中間の金属層からなる電極の材料とにおける相互拡散係数が、前記最表面の電極の材料と前記ショットキー機能を有した電極の材料とにおける相互拡散係数よりも小さい、
半導体検出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体検出器において、
前記最表面の電極および前記バンプ電極が同一の材料で形成される、半導体検出器。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体検出器において、
前記ショットキー機能を有した電極が、Ti(チタン),Cr(クロム)のいずれかを含む、半導体検出器。
【請求項5】
請求項2に記載の半導体検出器において、
前記中間の金属層からなる電極が、Ti(チタン),Ni(ニッケル),Cr(クロム)のいずれかを含む、半導体検出器。
【請求項6】
請求項2または請求項5に記載の半導体検出器において、
前記ショットキー機能を有した電極が、Al(アルミニウム)である、半導体検出器。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の半導体検出器において、
前記最表面の電極が、Au(金),Cu(銅)のいずれかである、半導体検出器。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体検出器において、
前記バンプ電極が、前記最表面の電極と同一の材料であるAu(金),Cu(銅)のいずれかである、半導体検出器。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の半導体検出器において、前記光電変換半導体層がCdTe、ZnTe、CdZnTe、GaAsのいずれかである、半導体検出器。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の半導体検出器において、光または放射線を検出する光電変換半導体層を有した一方の半導体チップまたは基板の導電性がP型または真性である、半導体検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野、工業分野、さらには原子力分野等に用いられる半導体検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの電極と信号読出し基板上の電極とを向かい合わせにして、導電性バンプ(バンプ電極)を介して両者を電気的に接続する、いわゆる「フリップチップボンディング」は図6のような構造である。図6の符号101は信号読出し基板であり、符号102は半導体チップであり、符号103は画素電極であり、符号104は導電性バンプであり、符号105は絶縁層である。
【0003】
信号読出し基板101は、例えば画素電極103を2次元マトリックス状に配置したCMOS集積回路等の信号読出し基板である。なお、半導体チップの替わりに対向基板などに代表される基板を用いてもよい。画素電極103は信号読出し基板101に形成されている。導電性バンプ104は、画素電極103に対向した位置に対向画素電極として半導体チップ102に形成されている。
【0004】
図6に示すフリップチップボンディングは光検出器や放射線検出器に用いられ、光や放射線を検出し、検出されて得られた信号を取り出す。なお、フリップチップボンディングは、はんだバンプや金バンプなどを用いた金属接合方式の他に、有機材料を用いた接合である導電性樹脂接合や、異方性導電部材接合などの接着接合方式もある。フリップチップボンディング以外に、接合の対象として基板を両方用いる場合にも適用することができる。
【0005】
なお、光や放射線を検出する半導体チップや基板は光電変換半導体層を有している。光や放射線の入射側にバイアス電圧を印加する共通電極を有し、当該共通電極と上述した画素電極とで光電変換半導体層を挟持して構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
対向画素電極にバンプ電極が形成される場合には、金バンプなどを用いた金属接合では、バンプ電極と画素電極との接合面に、圧力,熱または超音波等のエネルギーを加えることにより、バンプ材料および電極材料間の金属の相互拡散により接合する圧着方式を用いることにより、強度および信頼性の高い接合が得られる。バンプ材料および電極材料として、物理的・化学的に安定で、かつ適度な拡散係数を有した上述したようなAu(金)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−177141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、圧着方式で接合を行う際には、以下のような問題点がある。すなわち、半導体を上述した光電変換半導体層(検出層)とする光または放射線検出器では、リーク電流を抑制する必要があり、高抵抗半導体が使用される。リーク電流をさらに抑制する場合には、ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極)の障壁が利用される。P型半導体の場合、ショットキー電極として、上述した特許文献1:特開2001−177141号公報のようなIn(インジウム),Al(アルミニウム)等の仕事関数が小さな金属が用いられるが、これらの金属は熱拡散を生じやすい。
【0009】
そのため、半導体上の画素電極に上述した仕事関数が小さな金属を用いる場合、熱圧着時にバンプ材料のAuとショットキー電極との間で相互拡散を生じ、接合不良を起こすことがわかった。具体的には、InやAlがAuバンプ中に拡散した結果、バンプ電極が合金化してしまい、バンプ電極と対向画素電極との間で接合不良を起こす。また、Inを画素電極材料として用いると、Inの半導体中での拡散係数が非常に大きいので、微細ピッチの検出器では、画素間リークが増大し空間分解能が劣化する。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、低リーク電流で、さらに機械的強度・信頼性の高い接合が得られる半導体検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る半導体検出器(前者)は、光または放射線を検出する光電変換半導体層を有し、複数の画素電極が形成された一方の半導体チップまたは基板と、各々の前記画素電極に対向した位置に対向画素電極が形成され、前記光電変換半導体層で検出されて得られた信号を読み出す他方の半導体チップまたは基板と、前記画素電極および前記対向画素電極のいずれかに形成されたバンプ電極とを備え、前記対向画素電極と前記画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造、あるいは前記画素電極と前記対向画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造を有し、前記光電変換半導体層に接触する電極の材料が光電変換半導体層に対してショットキー機能を有すると共に、前記光電変換半導体層にAl(アルミニウム)が接して形成された場合にAlがショットキー機能を有するように、前記光電変換半導体層が構成され、当該ショットキー機能を有した電極に形成された最表面の電極の材料と当該ショットキー機能を有した電極の材料とにおける相互拡散係数が、前記最表面の電極の材料とAlとにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、ショットキー機能を有した電極が形成され、ショットキー機能を有した電極および最表面の電極の積層構造により前記画素電極が形成されるものである。
【0012】
また、前者とは別の発明に係る半導体検出器(後者)は、光または放射線を検出する光電変換半導体層を有し、複数の画素電極が形成された一方の半導体チップまたは基板と、各々の前記画素電極に対向した位置に対向画素電極が形成され、前記光電変換半導体層で検出されて得られた信号を読み出す他方の半導体チップまたは基板と、前記画素電極および前記対向画素電極のいずれかに形成されたバンプ電極とを備え、前記対向画素電極と前記画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造、あるいは前記画素電極と前記対向画素電極上のバンプ電極とが互いに機械的・電気的に接続された構造を有し、前記光電変換半導体層に接触する電極の材料が光電変換半導体層に対してショットキー機能を有し、当該ショットキー機能を有した電極、中間の金属層からなる電極、および最表面の電極の順に積層形成されて前記画素電極が形成され、当該最表面の電極の材料と前記中間の金属層からなる電極の材料とにおける相互拡散係数が、前記最表面の電極の材料と前記ショットキー機能を有した電極の材料とにおける相互拡散係数よりも小さいものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る半導体検出器(前者)によれば、ショットキー機能を有した電極に形成された最表面の電極の材料と当該ショットキー機能を有した電極の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極の材料とAl(アルミニウム)とにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、ショットキー機能を有した電極が形成されている。したがって、最表面の電極の材料がショットキー機能を有した電極中に拡散することなくショットキー機能を維持しつつ、ショットキー機能を有した電極の材料が最表面の電極中に拡散することなく最表面の電極の合金化を防止することができる。その結果、低リーク電流で、さらに機械的強度・信頼性の高い接合が得られる。
また、前者とは別の発明に係る半導体検出器(後者)によれば、ショットキー機能を有した電極,中間の金属層からなる電極,最表面の電極の順に積層形成されている。そして、当該最表面の電極の材料と中間の金属層からなる電極の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極の材料とショットキー機能を有した電極の材料とにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、各電極が形成されている。したがって、最表面の電極の材料がショットキー機能を有した電極中に拡散することなくショットキー機能を維持しつつ、ショットキー機能を有した電極の材料が最表面の電極中に拡散することなく最表面の電極の合金化を防止することができる。また、光電変換半導体層に接触する電極の材料に中間の金属層よりも光電変換半導体とのショットキーバリア障壁の高い材料を用いることにより、機械的強度・信頼性が高く、さらに低リークの接合が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1に係る半導体検出器(放射線検出器)の概略断面図である。
図2】各実施例に係る半導体検出器(放射線検出器)の半導体チップおよび対向基板(信号読出し基板)の具体的な構成を示した概略断面図である。
図3】各実施例に係る半導体検出器(放射線検出器)の対向基板(信号読出し基板)の単位画素当たりの等価回路である。
図4】熱圧着時の電極金属間の拡散距離比較である。
図5】実施例2に係る半導体検出器(放射線検出器)の概略断面図である。
図6】フリップチップ接続構造の概略図である。
図7】各種画素電極高抵抗P型CdTe結晶素子のリーク電流測定データ(界面金属の仕事関数依存性)である。
【実施例1】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1は、実施例1に係る半導体検出器(放射線検出器)の概略断面図であり、図2は、各実施例に係る半導体検出器(放射線検出器)の半導体チップおよび対向基板(信号読出し基板)の具体的な構成を示した概略断面図であり、図3は、各実施例に係る半導体検出器(放射線検出器)の対向基板(信号読出し基板)の単位画素当たりの等価回路である。後述する実施例2も含めて、本実施例1では、半導体検出器は、放射線検出器として用いられる。なお、図2ではバンプ電極の図示を省略する。
【0016】
放射線検出器は、図1図3に示すように、半導体チップ1と、半導体チップ1に対向配置した対向基板2とを備えている。半導体チップ1は、共通電極11,光電変換半導体層13,画素電極15の順に積層形成されて構成されている。一方、対向基板2は、2次元マトリックス状に配置された各々の対向画素電極21およびそれらを配列する画素配列層を含んだ信号読出し基板で構成されている。対向画素電極21は、画素電極15に対向した位置に形成されている。具体的には、スパッタ蒸着もしくはスクリーン印刷,めっき等によって形成されたバンプ電極3により半導体チップ1の画素電極15と対向基板2の対向画素電極21とを互いに対向させて貼り合わせる。
【0017】
対向基板2はSi(シリコン)あるいはガラス基板で形成されている。対向基板2には、上述の対向画素電極21の他に、画素容量22,スイッチングトランジスタ23が2次元マトリックス状に形成され、走査線24(図3を参照)および信号読出線25(図3を参照)が行および列方向にそれぞれ縦横にパターン形成されている。
【0018】
具体的には、図2に示すように、対向基板2上に画素容量22の基準電極22aおよびスイッチングトランジスタ23のゲート電極23aが積層形成され層間絶縁膜31で覆われている。その層間絶縁膜31に、画素容量22の容量電極22bが、層間絶縁膜31を介在させて基準電極22aに対向するように積層形成され、スイッチングトランジスタ23のソース電極23bおよびドレイン電極23cが積層形成され、対向画素電極21が存在する部分を除いて封止材料32で覆われている。なお、容量電極22bとソース電極23bとは相互に電気的に接続される。図2に示すように、容量電極22bおよびソース電極23bを一体的に同時形成すればよい。基準電極22aについては接地する。層間絶縁膜31には、例えばプラズマSiNが使用される。
【0019】
図3に示すように、走査線24は、スイッチングトランジスタ23のゲート電極23a(図2を参照)に電気的に接続され、信号読出線25は、スイッチングトランジスタ23のドレイン電極23c(図2を参照)に電気的に接続されている。走査線24は、各々の画素の行方向にそれぞれ延びており、信号読出線25は、各々の画素の列方向にそれぞれ延びている。走査線24および信号読出線25は互いに直交している。図3の符号13は、光電変換半導体層の等価回路である。これら走査線24や信号読出線25を含めて、画素容量22、スイッチングトランジスタ23および層間絶縁膜31は、半導体薄膜製造技術や微細加工技術を用いて対向基板2の表面に画素配列層としてパターン形成されている。
【0020】
放射線検出する半導体チップ1として、CdTe(テルル化カドミウム),ZnTe(テルル化亜鉛),CdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛),GaAs(ガリウムヒ素)等を用いる。
【0021】
上述したように、半導体チップ1の画素電極15と対向基板2の対向画素電極21とは、互いに対向させて貼り合わされる。層間絶縁膜31で覆われていない箇所の対向画素電極21に、スパッタ蒸着もしくはスクリーン印刷,メッキ等により形成されたバンプ電極3を接続することにより、半導体チップ1の画素電極15と対向基板2の対向画素電極21とを互いに対向させて貼り合わせる。具体的な画素電極15や対向画素電極21の構造,製造方法,材料および寸法(サイズ)については詳しく後述する。
【0022】
このようにして放射線検出器は、放射線の入射により放射線の情報を電荷情報(電子−正孔対キャリア)に変換することで放射線を検出する。以上をまとめると、放射線検出器は、半導体チップ1と対向基板2とを備えており、半導体チップ1の光電変換半導体層13が放射線を検出し、検出されて得られた信号を対向基板2のスイッチングトランジスタ23を介して読み出す。半導体チップ1は、バイアス電圧(各実施例では−0.1V/μm〜1V/μmの負のバイアス電圧)を印加する共通電極11、および放射線の情報を電荷情報(電子−正孔対キャリア)に変換する光電変換半導体層13を含んでいる。対向基板2は、電荷情報(電子−正孔対キャリア)をそれぞれ読み出す2次元マトリックス状に配置された各々の対向画素電極21およびそれらを配列する画素配列層を含んでいる。
【0023】
放射線検出器の動作を、図1図3を参照して説明する。共通電極11にバイアス電圧を印加した状態で、放射線(例えばX線)が入射することにより光電変換半導体層13で電子−正孔対キャリアが生成され、画素容量22に一旦蓄積される。必要なタイミングで走査線24を駆動させることで、当該走査線24に接続されたスイッチングトランジスタ23がON状態に移行し、画素容量22に蓄積された電子−正孔対キャリアが信号電荷として読み出され、スイッチングトランジスタ23に接続された信号読出線25を介して後段の信号収集回路(図示省略)に読み出される。
【0024】
各々の画素電極15や対向画素電極21は各々の画素にそれぞれ対応しているので、画素電極15や対向画素電極21に対応して読み出された信号電荷を画素値に変換することで、画素に応じた画素値を2次元に並べて2次元画像(2次元分布を有した放射線画像)を取得することができる。
【0025】
画素電極15や対向画素電極21の構造,製造方法,材料および寸法(サイズ)について、図4を参照して説明する。図4は、熱圧着時の電極金属間の拡散距離比較である。なお、図4中の1.En(nは整数)は1.0×10(すなわち指数表記)を表す。例えば、図4中の「1.E+06」は1.0×10を表し、図4中の「1.E+00」は1.0×10(=1.0)を表し、図4中の「1.E−12」は1.0×10−12を表す。
【0026】
例えば、CdTe結晶の裏面にPtの共通電極を形成し、Tiのショットキー機能を有した電極(ショットキー電極)およびAuの最表面の電極の積層構造からなる画素電極をCdTe結晶の対向面(表面)に形成する場合について説明する。先ず、ショットキーバリアを立たせるために、CdTe結晶の対向面に対してプラズマ処理または上述した特許文献1:特開2001−177141号公報のようにBr(臭素)メタノール処理で化学反応により不純物を除去することで、CdTe結晶の対向面(界面)を洗浄する。
【0027】
次に、CdTe結晶の裏面(略全面)にPtの共通電極11(図1を参照)を形成し、裏面(略全面)にPtの共通電極11を形成したCdTe結晶からなる光電変換半導体層13(図1を参照)の対向面に、□20μmピッチ,□10μmのAuの最表面の電極15a(図1を参照)およびTiのショットキー機能を有した電極(ショットキー電極)15c(図1を参照)の積層構造からなる(Au/Ti)画素電極15(図1を参照)を形成する。さらに、各画素電極15の中心にφ3μm×t0.25μmのAuバンプ電極3(図1を参照)を形成する。なお、□は平方を表し、φは直径を表し、tは厚みを表す。例えば、「□10μm」は10μm平方(=10μm×10μm)を表す。
【0028】
画素電極15については、フォトリソグラフィーにより画素電極が形成されていない箇所(非画素電極)にレジストパターンを形成した後、蒸着もしくはスパッタリング法によりTiのショットキー電極15c,Auの最表面の電極15aを所定の膜厚で順次に成膜する。本実施例1では、t0.05μmのTiのショットキー電極15cを形成した後、t0.1μmのAuの最表面の電極15aを形成する。
【0029】
一方、Siの対向基板2にも、画素電極15と同様の方法で、□20μmピッチ,□10μm×t0.1μmの(Au/Ti)対向画素電極21(図1を参照)を形成する。さらに、各画素電極15の中心にφ3μm×t0.25μmのAuバンプ電極3(図1を参照)を形成する。なお、後述する実施例2も含めて、本実施例1では、Auバンプ電極3をCdTe結晶(一方の半導体チップ)の画素電極15に形成したが、Siの対向基板2の対向画素電極21に形成してもよい。
【0030】
いずれの場合も、フリップチップボンダーを用いてCdTe結晶およびSi対向基板を加熱しつつ対向位置で近接させ、CdTe結晶の画素電極とSi対向基板の対向画素電極との位置を合わせた後に両電極を接触させ、一定時間荷重を加え両者を接合する。
【0031】
対向画素電極21における最表面の電極21a(図1を参照)をAuで形成することで、バンプ電極3が、最表面の電極15a,21aと同一の材料であるAuで形成される。図4に示すように、150℃/3分の熱負荷を加えた場合、Au同士の拡散距離Lが約1.0×10−3(nm)とAuの自己拡散係数が大きいので、バンプ電極3が、最表面の電極15a,21aに直接に接触することにより、熱圧着接合が良好となる。
【0032】
図4に示すように、Au/Auの熱圧着接合を想定した150℃/3分の熱負荷を加えた場合、AuとAlとにおける相互拡散係数が大きい(図4のAuとAlとの拡散距離Lを参照)ので、従来のようにショットキー電極をAlで形成するとバンプ材料のAuとショットキー電極材料のAlとの間で相互拡散を生じる。「発明が解決しようとする課題」の欄でも述べたように、AlがAuバンプ中に拡散した結果、バンプ電極が合金化してしまい、バンプ電極と対向画素電極との間で接合不良を起こす。逆に、AuがAlショットキー電極中に拡散すると、ショットキー電極としての機能を果たさなくなる。その結果、従来のようにショットキー電極をAlで形成すると、ショットキー電極としての機能を果たさないとともに、Auのバンプ接合表面にもAlが拡散析出し、圧着することができない。
【0033】
そこで、ショットキー電極に形成された最表面の電極の材料と当該ショットキー電極の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極の材料とAlとにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、ショットキー電極を形成する。最表面の電極がAuで形成され、かつショットキー機能を有した電極の材料との組み合わせは、図4に示すようにAu・Alの他に、Au・Tiがある。また、図4では省略しているが、Au・Cr(クロム)がある。Au・Tiにおける相互拡散係数やAu・Crにおける相互拡散係数は、Au・Alにおける相互拡散係数よりも小さいので、最表面の電極をAuで形成する場合には、ショットキー電極をTiまたはCrで形成する。
【0034】
このように、TiまたはCrのショットキー電極,Auの最表面の電極の順に積層形成し、Auの最表面の電極およびTi(またはCr)のショットキー電極の積層構造により画素電極15、さらに対向画素電極21を形成することで、熱圧着接合の負荷に対してショットキー電極・最表面の電極の相互作用(相互拡散)が十分に抑制される。その結果、ショットキー障壁によるリーク電流抑制を維持することができ、かつAuバンプとの熱圧着接合が可能になることを確認した。
【0035】
上述の構成を備えた本実施例1に係る放射線検出器によれば、光電変換半導体層13に接触する電極(ショットキー電極15c)の材料が光電変換半導体層13に対してショットキー機能を有するように形成されているので、低リーク電流に抑えることができる。また、当該ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)に形成された最表面の電極15aの材料と当該ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極15aの材料とAlとにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)が形成されている。したがって、最表面の電極15aの材料がショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)中に拡散することなくショットキー機能を維持しつつ、ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)の材料が最表面の電極15a中に拡散することなく最表面の電極15aの合金化を防止することができる。その結果、低リーク電流で、さらに機械的強度・信頼性の高い接合が得られる。
【0036】
本実施例1では、最表面の電極15aおよびバンプ電極3が同一の材料で形成されている。特に、本実施例1では、最表面の電極15aはAuであり、バンプ電極3が最表面の電極15aと同一の材料であるAuである。また、対向画素電極21における最表面の電極21aもAuで形成することで、バンプ電極3が、最表面の電極15a,21aと同一の材料であるAuで形成される。Auの自己拡散係数が大きいので、熱負荷を加えた場合にバンプ電極3が最表面の電極15a,21aに直接に接触することにより、熱圧着接合が良好となる。
【0037】
なお、最表面の電極およびバンプ電極としてAuの代わりにCu(銅)を用いてもよい。Cuを用いる場合においても、Auを用いる場合と同様の作用・効果を奏する。
【0038】
画素ピッチが50μm未満(各実施例では20μm)になるように、画素電極15,対向画素電極21およびバンプ電極3が1次元もしくは2次元(各実施例では2次元)に配置されている。本実施例1では、ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)が、Ti,Crのいずれかを含んでいるので、従来のようなショットキー電極としてInを用いた場合と相違して、画素ピッチが50μm未満である微細ピッチの検出器でも、画素間リークを抑えることができ、空間分解能が劣化することがない。
【0039】
一方の半導体チップまたは基板(各実施例では半導体チップ1)の光電変換半導体層13は、CdTe,ZnTe,CdZnTe,GaAsのいずれかである。
【実施例2】
【0040】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。図5は、実施例2に係る半導体検出器(放射線検出器)の概略断面図である。上述した実施例1と共通する構成については、同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、図示を省略する。
【0041】
上述した実施例1では、図1に示すように、ショットキー電極15cおよび最表面の電極15aの積層構造により画素電極15が形成されているのに対して、本実施例2では、図5に示すように、ショットキー電極15c,中間の金属層(「バリアメタル」とも呼ばれる)からなる電極15bおよび最表面の電極15aの積層構造により画素電極15が形成されている。つまり、ショットキー電極15cと最表面の電極15aとの間に中間の金属層(バリアメタル)を挟んで画素電極15が形成されている。
【0042】
上述した実施例1と同様に、本実施例2においても、画素電極15や対向画素電極21の構造,製造方法,材料および寸法(サイズ)について、上述した図4を参照して説明する。
【0043】
例えば、CdTe結晶の裏面にPtの共通電極を形成し、Alのショットキー機能を有した電極(ショットキー電極),TiのバリアメタルおよびAuの最表面の電極の積層構造からなる画素電極をCdTe結晶の対向面(表面)に形成する場合について説明する。先ず、上述した実施例1と同様に、CdTe結晶の対向面に対してプラズマ処理またはBrメタノール処理で化学反応により不純物を除去することで、CdTe結晶の対向面(界面)を洗浄する。
【0044】
次に、CdTe結晶の裏面(略全面)にPtの共通電極11(図5を参照)を形成し、裏面(略全面)にPtの共通電極11を形成したCdTe結晶からなる光電変換半導体層13(図5を参照)の対向面に、□20μmピッチ,□10μmのAuの最表面の電極15a(図5を参照),Tiの中間の金属層からなる電極15b(図5を参照)およびAlのショットキー電極15c(図5を参照)からなる(Au/Ti/Al)画素電極15(図5を参照)を形成する。さらに、各画素電極15の中心にφ3μm×t0.25μmのAuバンプ電極3(図5を参照)を形成する。
【0045】
画素電極15については、フォトリソグラフィーにより画素電極が形成されていない箇所(非画素電極)にレジストパターンを形成した後、蒸着もしくはスパッタリング法によりAlのショットキー電極15c,Tiの中間の金属層からなる電極15b,Auの最表面の電極15aを所定の膜厚で順次に成膜する。本実施例2では、t0.05μmのTiのショットキー電極15cを形成した後、t0.05μmのTiの中間の金属層からなる電極15bを形成し、t0.1μmのAuの最表面の電極15aを形成する。
【0046】
一方、上述した実施例1と同様に、Siの対向基板2にも、画素電極15と同様の方法で、□20μmピッチ,□10μm×t0.1μmの(Au/Ti)対向画素電極21(図5を参照)を形成する。さらに、各画素電極15の中心にφ3μm×t0.25μmのAuバンプ電極3(図5を参照)を形成する。なお、上述した実施例1でも述べたように、本実施例2においても、Auバンプ電極3をCdTe結晶(一方の半導体チップ)の画素電極15に形成したが、Siの対向基板2の対向画素電極21に形成してもよい。
【0047】
いずれの場合も、上述した実施例1と同様に、フリップチップボンダーを用いてCdTe結晶およびSi対向基板を加熱しつつ対向位置で近接させ、CdTe結晶の画素電極とSi対向基板の対向画素電極との位置を合わせた後に両電極を接触させ、一定時間荷重を加え両者を接合する。
【0048】
上述した実施例1でも述べたように、対向画素電極21における最表面の電極21a(図1を参照)をAuで形成することで、バンプ電極3が、最表面の電極15a,21aと同一の材料であるAuで形成される。図4に示すように、150℃/3分の熱負荷を加えた場合、Auの自己拡散係数が大きいので、バンプ電極3が、最表面の電極15a,21aに直接に接触することにより、熱圧着接合が良好となる。
【0049】
上述した実施例1でも述べたように、Au/Auの熱圧着接合を想定した150℃/3分の熱負荷を加えた場合、AuとAlとにおける相互拡散係数が大きいので、従来のようにショットキー電極をAlで形成するとバンプ材料のAuとショットキー電極材料のAlとの間で相互拡散を生じる。その結果、従来のようにショットキー電極をAlで形成してAuバンプを直接に接合すると、ショットキー電極としての機能を果たさないとともに、Auのバンプ接合表面にもAlが拡散析出し、圧着することができない。
【0050】
そこで、最表面の電極の材料と中間の金属層からなる電極の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極の材料とショットキー電極の材料とにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、各電極を形成する。最表面の電極がAuで形成され、かつショットキー電極がAlで形成される場合において、中間の金属層(バリアメタル)との組み合わせは、図4に示すようにAu・TiやAu・Ni(ニッケル)がある。また、図4では省略しているが、上述した実施例1でも述べたように、Au・Crがある。最表面の電極の材料と中間の金属層からなる電極の材料とにおける相互拡散係数として、Au・Tiにおける相互拡散係数やAu・Niにおける相互拡散係数やAu・Crにおける相互拡散係数は、最表面の電極の材料とショットキー電極の材料とにおける相互拡散係数としてのAu・Alにおける相互拡散係数よりも小さい。そのために、最表面の電極がAuで形成され、かつショットキー電極がAlで形成される場合には、中間の金属層(バリアメタル)をTi,NiまたはCrで形成する。
【0051】
このように、Alのショットキー電極,Ti,NiまたはCrの中間の金属層からなる電極,Auの最表面の電極の順に積層形成し、Auの最表面の電極,Ti(,NiまたはCr)の中間の金属層からなる電極,Alのショットキー電極の積層構造により画素電極15、さらに対向画素電極21を形成する。つまり、Auの電極層とAlの電極層との間に、Au・Alにおける相互拡散係数よりも小さなTiやNiやCr等の中間の金属層(バリアメタル)を挟むことで、熱圧着接合の負荷に対してショットキー電極・最表面の電極(Au・Al)の相互作用(相互拡散)が十分に抑制される。その結果、ショットキー障壁によるリーク電流抑制を維持することができ、かつAuバンプとの熱圧着接合が可能になることを確認した。
【0052】
上述の構成を備えた本実施例2に係る放射線検出器によれば、上述した実施例1に係る放射線検出器と同様に光電変換半導体層13に接触する電極(ショットキー電極15c)の材料が光電変換半導体層13に対してショットキー機能を有するように形成されているので、低リーク電流に抑えることができる。また、当該ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c),中間の金属層からなる電極15b,最表面の電極15aの順に積層形成されている。そして、当該最表面の電極15aの材料と中間の金属層からなる電極15bの材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極15aの材料とショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)の材料とにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、各電極が形成されている。したがって、最表面の電極15aの材料がショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)中に拡散することなくショットキー機能を維持しつつ、ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)の材料が最表面の電極15a中に拡散することなく最表面の電極15aの合金化を防止することができる。また、光電変換半導体層に接触する電極の材料に中間の金属層よりも光電変換半導体とのショットキーバリア障壁の高い材料を用いることにより、機械的強度・信頼性が高く、さらに低リークの接合が得られる。
【0053】
上述した実施例1と同様に、本実施例2では、最表面の電極15aおよびバンプ電極3が同一の材料で形成されている。特に、本実施例2では、最表面の電極15aはAuであり、バンプ電極3が最表面の電極15aと同一の材料であるAuである。また、対向画素電極21における最表面の電極21aもAuで形成することで、バンプ電極3が、最表面の電極15a,21aと同一の材料であるAuで形成される。Auの自己拡散係数が大きいので、熱負荷を加えた場合にバンプ電極3が最表面の電極15a,21aに直接に接触することにより、熱圧着接合が良好となる。
【0054】
なお、上述した実施例1でも述べたように、本実施例2においても、最表面の電極およびバンプ電極としてAuの代わりにCu(銅)を用いてもよい。Cuを用いる場合においても、Auを用いる場合と同様の作用・効果を奏する。
【0055】
画素ピッチが50μm未満(各実施例では20μm)になるように、画素電極15,対向画素電極21およびバンプ電極3が1次元もしくは2次元(各実施例では2次元)に配置されている。本実施例2では、ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極15c)が、Alであるので、従来のようなショットキー電極としてInを用いた場合と相違して、画素ピッチが50μm未満である微細ピッチの検出器でも、画素間リークを抑えることができ、空間分解能が劣化することがない。
【0056】
本実施例2では、最表面の電極が、Au,Cuのいずれかである。また、上述した実施例1と同様に、一方の半導体チップまたは基板(各実施例では半導体チップ1)の光電変換半導体層13は、CdTe,ZnTe,CdZnTe,GaAsのいずれかである。
【0057】
[作製評価試料の結果]
表1に作製評価試料の電極構造および熱処理条件を示す。試料として、Si基板にAl,Auを順次に成膜したもの(表1では「Au/Al/Si」で表記)、Si基板にAl,Ti,Auを順次に成膜したもの(表1では「Au/Ti/Al/Si」で表記)、Si基板にIn,Ti,Auを順次に成膜したもの(表1では「Au/Ti/In/Si」で表記)、Si基板にIn,Ni,Auを順次に成膜したもの(表1では「Au/Ni/In/Si」で表記)の4種類を準備している。
【0058】
【表1】
【0059】
表1中の「NT」はNon Treatment、すなわち熱処理を行わない常温を表し、表1中の「golden」は、電極間の相互作用(相互拡散)が抑制された結果、電極表面がAuの状熊を維持し、表面色が金色であることを表し、表1中の「silver」は、電極表面にAlが拡散析出した結果、表面色がAlの銀白色であることを表し、表1中の「golden/gray(mosaic)」は、InがSi中に拡散した結果、表面色が金色・灰色のモザイク模様であることを表す。
【0060】
表1の結果から、従来のようなAu/Al/Siの場合、100℃/5分の熱負荷では電極表面がAuの状熊を維持して表面色が金色であるが、150℃/5分の熱負荷や200℃/5分の熱負荷では電極表面がAuの状熊を維持することができずに表面色がAlの銀白色となることが確認される。それに対して、実施例2のような中間の金属層(バリアメタル)がTiであるAu/Ti/Al/Siの場合、200℃/5分の熱負荷でも電極表面がAuの状熊を維持して表面色が金色であることが確認される。
【0061】
また、図7に、各種画素電極高抵抗P型CdTe結晶素子のリーク電流測定データ(界面金属の仕事関数依存性)を示す。Au/TiおよびAu/Cr電極高抵抗P型CdTe結晶素子のリーク電流をAu/Ti/Al電極素子と併せて示す。CdTe結晶素子のリーク電流は、界面電極金属の仕事関数に対して指数的に増加する。Tiの仕事関数(4.35eV)は、Al(4.28eV)よりやや大きいので、リーク電流は3倍程度大きいが、多くの用途では許容範囲であり、テープ剥離試験によりCdTe結晶に対する密着性がAlより良好であることを確認した。
【0062】
なお、ショットキー電極としてAlの代わりにInを用いた場合には、「発明が解決しようとする課題」の欄でも述べたように、Inの半導体中での拡散係数が非常に大きいので、画素間リークが増大する。したがって、中間の金属層(バリアメタル)を挟んでも、相互拡散の抑制効果が不十分で、ショットキー整流特性およびAuバンプとの圧着接合性が劣化する。このことは、表1の結果(表1の「Au/Ti/In/Si」や「Au/Ni/In/Si」を参照)からも確認される。
【0063】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0064】
(1)上述した各実施例では、半導体検出器は、放射線検出器として用いられていたが、光を検出する光検出器として用いられてもよい。具体的には、一方の半導体チップまたは基板(各実施例では半導体チップ1)の光電変換半導体層が光を検出し、検出されて得られた信号を他方の半導体チップまたは基板(各実施例では対向基板2)から取り出して読み出す構造の光検出器に適用する。
【0065】
(2)上述した各実施例では、光電変換半導体層を有し、画素電極を形成する対象は半導体チップであるとともに、対向画素電極を形成し、光電変換半導体層で検出されて得られた信号を読み出す対象は基板(各実施例では対向基板2)であったが、半導体チップ・基板を互いに入れ替えてもよい。例えば、半導体チップ・基板を互いに入れ替えることにより、光電変換半導体層を有し、画素電極を形成する対象として基板を用いて、対向画素電極を形成し、光電変換半導体層で検出されて得られた信号を読み出す対象として半導体チップを用いてもよい。また、半導体チップを両方用いてもよいし、基板を両方用いてもよい。
【0066】
(3)上述した各実施例では、画素ピッチが50μm未満(各実施例では20μm)になるように、画素電極,対向画素電極およびバンプ電極が2次元に配置されていたが、画素電極,対向画素電極およびバンプ電極が1次元に配置された構造の半導体検出器にも適用することができる。
【0067】
(4)半導体検出器において、一方の半導体チップ/基板と、対向した他方の半導体チップ/基板とを接合する際には、接合面に、圧力,熱または超音波等のエネルギーを加えることにより行う。
【0068】
(5)上述した各実施例では、光電変換半導体層はP型半導体であり、仕事関数が小さな金属を用いることによりショットキー機能を有したが、N型半導体からなる光電変換半導体層の半導体検出器に適用してもよい。N型半導体からなる光電変換半導体層の半導体検出器に適用する場合には、仕事関数が大きな金属を用いることによりショットキー機能を有する。したがって、ショットキー電極の材料は、実施例1のようなTi,Crや実施例2のようなAlに限定されず、光電変換半導体層の材料や最表面の電極の材料や中間の金属層からなる電極の材料に応じてショットキー電極の材料を選択すればよい。また、光または放射線を検出する光電変換半導体層を有した一方の半導体チップまたは基板の導電性は、P型または真性のいずれでもよい。
【0069】
(6)上述した各実施例では、最表面の電極およびバンプ電極が同一の材料で形成されていたが、必ずしも最表面の電極およびバンプ電極が同一の材料で形成される必要はない。ただし、圧着接合を容易にするために、上述した各実施例のように最表面の電極およびバンプ電極を同一の材料で形成するのが好ましい。
【0070】
(7)上述した各実施例では、対向画素電極も積層構造により形成されていたが、必ずしも対向画素電極は積層構造により形成される必要はない。単一の金属層で対向画素電極を形成してもよい。
【0071】
(8)上述した各実施例では、最表面の電極はAu,Cuのいずれかであったが、最表面の電極として、Au,Cu以外の金属を用いてもよい。ただし、実施例1では、最表面の電極の材料とショットキー電極の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極の材料とAlとにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、ショットキー電極の材料および最表面の電極の材料をそれぞれ選択する。同様に、実施例2では、最表面の電極の材料と中間の金属層からなる電極の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極の材料とショットキー電極の材料とにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、各電極の材料をそれぞれ選択する。
【0072】
(9)上述した実施例2では、中間の金属層からなる電極が、Ti,Ni,Crのいずれかであったが、Ti,Ni,Crに限定されない。最表面の電極の材料やショットキー電極の材料に応じて中間の金属層からなる電極の材料を選択すればよい。ただし、最表面の電極の材料と中間の金属層からなる電極の材料とにおける相互拡散係数が、最表面の電極の材料とショットキー電極の材料とにおける相互拡散係数よりも小さくなるように、中間の金属層からなる電極の材料を選択する。
【符号の説明】
【0073】
1 … 半導体チップ
11 共通電極
13 … 光電変換半導体層
15 … 画素電極
15a … 最表面の電極
15b … 中間の金属層からなる電極
15c … ショットキー機能を有した電極(ショットキー電極)
2 … 対向基板
21 … 対向画素電極
22 … 画素容量
23 … スイッチングトランジスタ
24 … 走査線
25 … 信号読出線
3 … バンプ電極
31 … 層間絶縁膜
32 … 封止材料
101 … 信号読出し基板
102 … 半導体チップ
103 … 画素電極
104 … 導電性バンプ
105 … 絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7