(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記膜板では、前記外側端部の方が前記内側端部に比べて、前記軸線の方向の前記一方側に配置されていることで前記内側端部と前記外側端部とが前記軸線の方向に異なる位置に配置される請求項1に記載の中継弁。
前記膜板では、前記内側端部の方が前記外側端部に比べて、前記軸線の方向の前記一方側に配置されていることで前記内側端部と前記外側端部とが前記軸線の方向に異なる位置に配置される請求項1に記載の中継弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の円板状の膜板を使用した多段式中継弁では、空気室内の空気から各膜板に作用する圧力がちょうど釣り合って、基礎ブレーキ装置への圧縮空気の供給が停止される「重なり位置」にピストンが配置された状態となると、膜板は軸線に直交する平面上にピストンの径方向に真っ直ぐに配置される。そしてこの際、ノッチ同士の間での圧力差が一定にならず、中継弁が設計通りの機能を発揮することができないといった問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、基礎ブレーキ装置へ出力する圧縮空気のノッチ間での圧力差を低減することのできる中継弁、及びこの中継弁を備えたブレーキシステム、及び車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る中継弁は、ピストンと、前記ピストンを該ピストンの軸線の方向に往復動可能に支持するとともに、該往復動にともなって空気源と基礎ブレーキ装置とを連通可能とするケーシングと、前記ケーシングの内部で該ケーシングの内面と前記ピストンの外周面との間に介在されて互いに前記軸線の方向に離間して配置されて、前記ピストンを往復動可能に支持し、前記ケーシング内部を区画することで前記ケーシングの内部にブレーキ指令に応じて空気を導入可能な互いに前記軸線の方向に隣接する複数の空気室、及び、前記複数の空気室に対して前記軸線の方向の一方側に配置されて前記空気源からの圧縮空気を導入可能な一つのフィードバック室を形成し、かつ、互いに受圧面積の異なる可撓性を有する複数の膜板と、を備え、前記膜板が、前記空気室内の圧力と前記フィードバック室内の圧力とが釣り合って、前記空気源と前記基礎ブレーキ装置との連通を停止する重なり位置に前記ピストンが配置された状態で、前記膜板では、前記ピストン側の内側端部と前記ケーシング側の外側端部とが前記軸線の方向に異なる位置に配置される。
【0009】
このような中継弁は、複数の膜板が設けられたいわゆる多段式の中継弁となっており、ブレーキ指令に基づいて、複数の空気室のうちで空気が導入される空気室が選択され、選択された空気室に空気が導入される。これによって、ピストンが動作して、ピストンによってブレーキ指令に基づいた圧力の圧縮空気を基礎ブレーキ装置に送り込むようになっている。そして、フィードバック室の圧力が増し、ピストンが重なり位置に配置された際には、空気源と基礎ブレーキ装置との連通が遮断され、圧縮空気の基礎ブレーキ装置への供給が停止される。
ここで膜板は、ケーシング内に空気室とフィードバック室とを区画するため、ピストンとケーシングとの間に隙間なく設けられる。よって、膜板がピストンの軸線に直交する平面上に配置されて径方向に真っ直ぐに延びた状態では、最も大きな圧縮力が膜板に作用し、その反力がピストンに生じる。本発明では、重なり位置に膜板が配置された状態では、膜板における内側端部と外側端部とがピストンの軸線の方向にずれた位置に配置される。従って、重なり位置で、膜板の圧縮によりピストンに生じる反力を抑制することができ、ピストンが重なり位置に向かって移動する際、ピストンの動作を円滑化することができる。これにより、基礎ブレーキ装置へ向かう管路内の圧力を予め設定された設計時の圧力に調整することが可能となる。
【0010】
また、本発明の第二の態様に係る中継弁は、上記第一の態様における前記膜板では、前記外側端部の方が前記内側端部に比べて、前記軸線の方向の前記一方側に配置されていることで前記内側端部と前記外側端部とが前記軸線の方向に異なる位置に配置されてもよい。
【0011】
このように、重なり位置で外側端部の方が内側端部に比べて軸線の方向の一方側、即ち、外側端部の方がケーシングにおけるフィードバック室が設けられている側に配置されることで、重なり位置でピストンに生じる反力を抑制することができ、ピストンが重なり位置に向かって移動する際、ピストンの動作を円滑化することができる。
【0012】
また、本発明の第三の態様に係る中継弁は、上記第一の態様における前記膜板では、前記膜板では、前記内側端部の方が前記外側端部に比べて、前記軸線の方向の前記一方側に配置されていることで前記内側端部と前記外側端部とが前記軸線の方向に異なる位置に配置されてもよい。
【0013】
このように、重なり位置で内側端部の方が外側端部に比べて軸線の方向の一方側、即ち、内側端部の方がケーシングにおけるフィードバック室が設けられている側に配置されることで、重なり位置でピストンに生じる反力を抑制することができ、ピストンが重なり位置に向かって移動する際、ピストンの動作を円滑化することができる。
【0014】
また、本発明の第四の態様に係るブレーキシステムは、上記第一から第三のいずれかの中継弁と、前記中継弁における前記空気室にブレーキ指令に応じて空気を導入可能とするブレーキ制御装置と、前記中継弁に接続されて、該中継弁に圧縮空気を供給する空気源と、前記中継弁に接続されて、前記空気室への前記空気の導入にともなって前記ブレーキ指令に応じた圧力の前記圧縮空気が前記空気源から前記中継弁を介して導入される基礎ブレーキ装置と、を備えている。
【0015】
このようなブレーキシステムによれば、中継弁を備えていることで、重なり位置に膜板が配置された状態では、膜板における内側端部と外側端部とがピストンの軸線の方向にずれた位置に配置される。従って、重なり位置で、膜板の圧縮に対してピストンに生じる反力を抑制することができ、ピストンが重なり位置に向かって移動する際、ピストンの動作を円滑化することができる。よって、ピストンの往復動の後に、重なり位置において、基礎ブレーキ装置へ向かう管路内の圧力を予め設定された設計時の圧力に調整することが可能となる。
【0016】
また、本発明の第五の態様に係る車両は、車両本体と、前記車両本体に制動力を与える上記のブレーキシステムと、を備えている。
【0017】
このような車両によれば、上記の中継弁が設けられたブレーキシステムを備えていることで、重なり位置で中継弁のピストンに生じる反力を抑制することができ、ピストンが重なり位置に向かって移動する際、ピストンの動作を円滑化することができる。よって、ピストンの往復動の後に、重なり位置において、基礎ブレーキ装置へ向かう管路内の圧力を予め設定された設計時の圧力に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
上記の中継弁、ブレーキシステム、及び車両によると、重なり位置でのピストンへの反力を低減できることで、基礎ブレーキ装置へ出力する圧縮空気のノッチ間での圧力差を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態における車両1について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両1は、例えば鉄道車両や、新交通システムの車両であって、車体2及び車体2の下部に設けられた走行台車3を有する車両本体4と、車両本体4に設けられたブレーキシステム10とを備えている。走行台車3には、軌道上を転動する走行輪5と、走行輪5と車体2との間に介在される空気バネ(枕バネ)6等が主に設けられている。
図1では複数の車両1が連結されているが、車両1は一両のみであってもよい。
【0021】
ブレーキシステム10は、走行輪5に制動力を与える。即ち、ブレーキシステム10は、
図2に示すように、空気ARを圧縮する圧縮機11と、圧縮機11で生成された圧縮空気CAが導入される空気タンク(空気源)12と、空気タンク12からの圧縮空気CAが導入されるブレーキ制御装置13と、ブレーキ制御装置13からの圧縮空気CAを用いて制御される基礎ブレーキ装置15とを有している。
【0022】
圧縮機11は、外部からの空気ARを取り込んで圧縮し、圧縮空気CAを生成する。
【0023】
空気タンク12は、圧縮機11から供給された圧縮空気CAを貯留する。
【0024】
基礎ブレーキ装置15は、圧縮空気CAを利用して、走行台車3に制動力を付与可能となっている。基礎ブレーキ装置15は、例えばディスクブレーキや、路面ブレーキ等であって、
図1に示す走行輪5毎に設けられている。
【0025】
ブレーキ制御装置13は、空気タンク12から導入された圧縮空気CAの圧力を調整した上で、この圧縮空気CAを基礎ブレーキ装置15に供給する。本実施形態のブレーキ制御装置13は、指令発生部21、圧力発生部22、及び中継弁23を有している。
【0026】
指令発生部21は、外部からの入力信号(運転士の操作等)であるブレーキ指令を受け、ブレーキ指令に応じた電気信号を生成、出力する。
圧力発生部22は、指令発生部21からの電気信号に基づき、空気タンク12からの圧縮空気CAを中継弁23に導入する。
ここで、本実施形態では図示しないが、ブレーキ制御装置13には車体2の重量に応じて車両1の制動力を調整可能な応荷重弁が設けられている場合がある。車体2の重量は空気バネ(枕バネ)6の上下の変位等から検知される。
【0027】
次に、
図3から
図5を参照して、中継弁23について詳細を説明する。
中継弁23は、軸線Oを中心とした円柱状をなすピストン31と、ピストン31を覆うケーシング41と、ケーシング41の内部で、ケーシング41の内面とピストン31の外周面との間に介在された膜板51とを備えている。
【0028】
ピストン31は、軸線Oの方向に、ケーシング41に対して往復動可能に設けられている。また、ピストン31における軸線Oの方向の一方側(
図3の紙面に向かって下側)の端部には、径方向外側に突出することで、他の部分に比べて拡径する拡径部31aが形成されている。さらに、ピストン31の内部には排気流路31bが形成されている。この排気流路31bは、ピストン31における軸線Oの方向の一方側を向く端面に開口する入口開口31b1が形成され、後述する排気室ESに開口する出口開口31b2が形成されている。
【0029】
ケーシング41は、ピストン31を軸線Oの方向に往復動可能に支持している。ケーシング41には、軸線Oの方向の一方側の端部でケーシング41の内面から、軸線Oの方向の他方側((
図3の紙面に向かって上側)に突出するように、かつ、ピストン31の拡径部31aに接触可能に、弁体35が設けられている。
【0030】
弁体35は、ケーシング41の内面に固定されて軸線Oを中心とした筒状をなす支持部36と、支持部36の径方向内側に配置されて、支持部36に対して軸線Oの方向に相対的に往復動可能であるとともに、ピストン31の拡径部31aに接触可能な可動部37と、可動部37と支持部36との間に介在され、軸線Oの方向の他方側に向かって可動部37に付勢力を付与する弾性部材38(例えばコイルバネ)とを有している。
【0031】
可動部37は筒状をなしている。そして可動部37にはピストン31の拡径部31aが接触し、または、可動部37に対して離間するようになっている。
【0032】
さらにケーシング41には、弁体35よりも軸線Oの方向の他方側で、軸線Oの方向にケーシング41内を仕切るとともに、ピストン31の拡径部31aが挿通可能な挿通孔42aが形成された仕切部材42が設けられている。これにより、ケーシング41には、仕切部材42を挟んで軸線Oの方向の両側に二つの空間が形成されている。挿通孔42aは、弁体35の可動部37にピストン31からの力(軸線の一方側への押圧力)が作用していない状態で、可動部37によって閉塞されるようになっている(
図5参照)。
【0033】
仕切部材42よりも軸線Oの方向の一方側に形成された空間は給気室SSである。即ち、給気室SS内には、上記の弁体35が設けられており、かつ、この給気室SSの位置に対応するケーシング41には、ケーシング41の内外を連通する給気口41aが形成されている。給気口41aには空気タンク12が接続され、給気室SS内に圧縮空気CAが導入可能となっている。
【0034】
仕切部材42よりも軸線Oの方向の一方側に形成された空間は出力室OSである。出力室OSの位置に対応するケーシング41には、ケーシング41の内外を連通する出力口41bが形成されている。出力口41bには基礎ブレーキ装置15が接続されている。出力室OSは、ピストン31が往復動してピストン31が弁体35の可動部37を軸線Oの方向に押すことで挿通孔42aが開放された際に、給気室SSと接続可能となっており、即ち、空気タンク12と基礎ブレーキ装置15とを連通可能となっている。これにより、給気室SS及び出力室OSを経由して、空気タンク12からの圧縮空気CAが基礎ブレーキ装置15に導入可能となっている。
【0035】
さらにケーシング41には、出力室OSの軸線Oの方向の他方側に排気室仕切43が設けられている。排気室仕切43によって、出力室OSと隔離されるとともにピストン31の排気流路31bの出口開口31b2が開口する空間がケーシング41内に形成されている。この空間は排気室ESであり、排気室ESの位置に対応するケーシング41には、ケーシング41の内外を連通する排気口41cが形成されている。
【0036】
膜板51は、軸線Oを中心として薄板の環状をなすとともに可撓性を有し、複数が軸線の方向に互いに離間してケーシング41内に配置されている。
具体的には、
図6に示すように、各々の膜板51はケーシング41の内面に形成されたケーシング凹部41dと、ピストン31の外周面に形成されたピストン凹部31cとに支持されている。即ち、膜板51は、径方向内側(ピストン31側)の端部となる内側端部52と、径方向外側(ケーシング41側)の端部となる外側端部53と、これらを接続する接続部54とを有している。
【0037】
内側端部52及び外側端部53は、接続部54に比べて軸線Oの方向の寸法である肉厚寸法が大きくなっていることで、ケーシング凹部41d、及びピストン凹部31cに嵌合している。これにより膜板51は、ピストン31の移動に応じて軸線Oの方向に撓むとともに、撓んだ際にも、膜板51とピストン凹部31cとケーシング凹部41dとの間で隙間が形成されずに、膜板51が嵌り込んだ状態が維持されるようになっている。
【0038】
そして膜板51として、軸線Oの方向の他方側から一方側に向かって順に、第一膜板51A、第二膜板51B、及び第三膜板51Cが設けられている。膜板51の受圧面積(ケーシング41内で膜板51が露出する面積)の比は、例えば第一膜板51A:第二膜板51B:第三膜板51C=4:6:7となっている。
【0039】
さらに、本実施形態では、第三膜板51Cよりも軸線Oの方向の一方側で、かつ、排気室仕切43よりも軸線Oの方向の他方側に、非常膜板51Dがさらに設けられている。
【0040】
また、
図3から
図5に示すように、これら膜板51によって、ケーシング41内が区画されて、ケーシング41内に互いに隔離された複数の空間として、空気室AS及びフィードバック室FSが形成されている。
具体的には、ケーシング41と第一膜板51Aとの間の空気室ASが第一空気室S1、第一膜板51Aと第二膜板51Bとの間の空気室ASが第二空気室S2、第二膜板51Bと第三膜板51Cとの間の空気室ASが第三空気室S3となっている。さらに第三膜板51Cと非常膜板51Dとの間の空気室ASが非常用空気室S4となっている。さらに、非常膜板51Dと排気室仕切43との間がフィードバック室FSとなっている。
【0041】
第一空気室S1の位置に対応するケーシング41には、ケーシング41の内外を連通する第一入力口41eが形成されている。同様に、第二空気室S2に対応するケーシング41には第二入力口41fが形成され、第三空気室S3に対応するケーシング41には第三入力口41gが形成され、非常用空気室S4に対応するケーシング41には非常用入力口41hが形成されている。これら第一入力口41e、第二入力口41f、第三入力口41g、及び非常用入力口41hは圧力発生部22に接続されており、圧力発生部22を経由した空気タンク12からの圧縮空気CAが導入されるようになっている。
【0042】
そしてブレーキ指令が出されると、このブレーキ指令に応じてこれら第一空気室S1、第二空気室S2、第三空気室S3、及び非常用空気室S4のうちのいずれか一つ、又は複数が選択され、選択された空気室ASに同じ圧力の圧縮空気CAが導入されるようになっている。
【0043】
例えば、本実施形態では、ブレーキ指令が1ノッチである場合、第三空気室S3に圧縮空気CAが導入される。2ノッチでは第二空気室S2に圧縮空気CAが導入される。3ノッチでは第二空気室S2及び第三空気室S3に圧縮空気CAが導入される。4ノッチでは第一空気室S1に圧縮空気CAが導入される。5ノッチでは第一空気室S1及び第三空気室S3に圧縮空気CAが導入される。6ノッチでは、第一空気室S1及び第二空気室S2に圧縮空気CAが導入される。7ノッチでは第一空気室S1、第二空気室S2、及び第三空気室S3に圧縮空気CAが導入される。非常ブレーキ時には、非常用空気室S4に圧縮空気CAが導入される。
【0044】
また、フィードバック室FSは、出力室OSにつながっており、出力室OS内の圧縮空気CAが流入可能となっている。さらにフィードバック室FS内には、ピストン31を軸線Oの方向の他方側に付勢するように、排気室仕切43とピストン31との間に介在された弾性部材45(例えばコイルバネ)が設けられている。
【0045】
ここで、
図6に示すように、各々の膜板51は、空気室AS内の圧力とフィードバック室FS内の圧力とが釣り合って、仕切部材42の挿通孔42aがちょうど閉塞された状態となると、内側端部52と外側端部53とが軸線Oの方向に異なる位置に配置される。そして本実施形態では、外側端部53の方が内側端部52よりもフィードバック室FS側となる軸線Oの方向の一方側に配置されている。具体的な数値としては例えば、外側端部53の方が内側端部52よりも1〔mm〕程度フィードバック室FS側に位置している。
【0046】
ここで、仕切部材42の挿通孔42aがちょうど閉塞された状態とは、空気タンク12と基礎ブレーキ装置15との連通を停止する位置に、ピストン31が配置されている状態を示す。以下、このような位置を「重なり位置」とする。
【0047】
次に、
図3から
図5を参照して、中継弁23の動作について説明する。
図5に示すように、圧縮空気CAを空気室ASに導入する前には、弾性部材38の弾性力で弁体35の可動部37に仕切部材42における挿通孔42aが形成された部分が接触した状態となっているとともに、弾性部材45の弾性力でピストン31が軸線Oの方向の他方側に押されて可動部37から離れた状態となっている。そしてこの際、挿通孔42aは弁体35の可動部37によって閉塞されており、かつ、ピストン31の排気通路31bの入口開口31bが開通し、給気室SSと出力室OSとは接続されておらず、かつ、出力室OSと排気室ESが接続されている。この際、基礎ブレーキ装置15からの圧縮空気CAがピストン31の排気流路31bに流入し、排気室ESを通じて排気口41cからケーシング41の外部に排出される。即ち、空気タンク12と基礎ブレーキ装置15との連通は停止されて、ピストン31は「排気位置」にある状態となっている。
【0048】
その後、
図4に示すように、ブレーキ指令に基づき、空気室AS内に圧縮空気CAが導入されると、膜板51が撓むとともに、ピストン31の拡径部31aが弁体35の可動部37に接触し、ピストン31の排気通路31bの入口開口31bが閉塞され、ピストン31の押圧力が弾性部材38の弾性力に打ち勝って、可動部37を軸線Oの一方側に押し下げる。すると、可動部37が仕切部材42から離れ、挿通孔42aが開放され、給気室SSと出力室OSとが接続されて空気タンク12と基礎ブレーキ装置15とが連通し、圧縮空気CAが基礎ブレーキ装置15へ導入される。即ち、ピストン31は「給気位置」に配置された状態となる。
【0049】
その後、ピストン31が給気位置に有る状態で、空気タンク12からの圧縮空気CAはフィードバック室FSに流入する。そして
図3に示すように、ピストン31が膜板51が受ける力、即ち空気室AS内の圧力と、フィードバック室FS内の圧力が釣り合うと、ブレーキ指令に基づく圧力が基礎ブレーキ装置15に込められた状態となる。この際に、弾性部材38の弾性力がピストン31の押圧力に打ち勝って、弁体35の可動部37を軸線Oの他方側に押し上げる。すると、可動部37が仕切部材42に接触し、挿通孔42aが閉塞され、給気室SSと出力室OSとの接続が切られ、空気タンク12と基礎ブレーキ装置15との連通は停止され、圧縮空気CAの基礎ブレーキ装置15への導入が停止される。
【0050】
以上説明した本実施形態の車両1によると、車両1のブレーキシステム10が中継弁23を備えている。そして中継弁23の膜板51は、ケーシング41内に空気室ASとフィードバック室FSとを区画するため、ピストン31とケーシング41との間に隙間なく設けられる。このため、膜板51がピストン31の軸線Oに直交する平面上に配置された状態、即ち、径方向に真っ直ぐに延びるように配置されて平板状をなす状態(例えば
図4に示す状態)では、ピストン凹部31cとケーシング凹部41dとの間の距離が最も小さくなるため、ピストン31、及びケーシング41から径方向の力を受けて大きな圧縮力が膜板51に作用する。すると、圧縮された膜板51からの反力がピストン31に生じる。
【0051】
ここで本実施形態では、重なり位置に膜板51が配置された状態では、膜板51における内側端部52と外側端部53とがピストン31の軸線Oの方向にずれた位置に配置される。従って、重なり位置では、膜板51が軸線Oに直交する平面上に配置されて平板状になった状態に比べてピストン凹部31cとケーシング凹部41dとの間の距離が大きくなるため、膜板51に生じる圧縮力を低減することができる。
【0052】
この結果、重なり位置でピストン31に生じる反力を抑制することができ、ピストン31が給気位置側から又は排気位置側から、重なり位置に向かって移動する際にピストン31の動作を円滑化することができる。よって、給排気によってピストン31が往復動した後でも、ブレーキ指令が終了した際には、毎回、重なり位置において、基礎ブレーキ装置へ向かう管路内の圧力を予め設定された設計時の圧力に調整することが可能となる。このため、各ノッチでの設計時の圧力を基礎ブレーキ装置15に出力することができ、この結果、中継弁23から基礎ブレーキ装置15へ出力される圧縮空気CAのノッチ間での圧力差を低減することが可能となる。
【0053】
ここで、
図7に示すように、本実施形態では上述の場合とは逆に、ピストン31が重なり位置に配置されている状態で、内側端部52の方が外側端部53に比べて、軸線Oの方向の一方側、即ちフィードバック室FS側に配置されていてもよい。この場合でも、重なり位置での膜板51の圧縮力を低減することができ、この結果、重なり位置でピストン31に生じる上記の反力を低減することが可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0055】
例えば、上述の実施形態では、四つの膜板51が設けられた多段式の中継弁23について説明したが、膜板51の数量は限定されることなく、少なくとも二つ以上が設けられていればよい。また、上述した膜板51同士の受圧面積比も一例であって、上述の場合に限定されない。
【0056】
〔実施例〕
ここで、上述の実施形態の中継弁23、即ち、ピストンの重なり位置で膜板の外側端部の方が内側端部よりもフィードバック室側に配置された中継弁から出力される圧力を、ノッチ毎に計測する実験を行った。
図8にその実験結果を示す。
【0057】
この実験では、実験条件として、各空気室へ入力されるVL圧力が300〔kPa〕から700〔kPa〕の間となる場合に、各々のVL圧力について、中継弁から出力されるBC圧力について計測を行った。VL圧力については100〔kPa〕刻みで計測を行った。
【0058】
また、比較例として、
図8(a)に示すように、重なり位置で膜板がピストンの軸線に直交する平面上に真っ直ぐに延びた状態となる従来の中継弁の実験も行った。
そして、以下の各ノッチ間の「比率」とは、7ノッチの値を7等分した圧力値に対する各ノッチ間の圧力値の比を示す。
【0059】
図8(a)に示すように、従来の中継弁では、ブレーキ指令が行われない状態、即ち「ユルメ」と「1ノッチ」との間の比率が0.61であったものが、
図8(b)に示すように上述の実施形態の中継弁では「ユルメ」と「1ノッチ」との間の比率が0.84となり、本実施形態の中継弁23の方が、「ユルメ」と「1ノッチ」との間の比率が1により近い値となった。
【0060】
同様に、「1ノッチ」と「2ノッチ」との間の比率が従来の中継弁では1.11であったものが、上述の実施形態の中継弁では1.06となって、「1ノッチ」と「2ノッチ」との間の比率が1により近い値となった。
【0061】
「2ノッチ」と「3ノッチ」との間の比率が従来の中継弁では1.03であったものは、上述の実施形態の中継弁でも1.03となった。
【0062】
また、「3ノッチ」と「4ノッチ」との間の比率が従来の中継弁では1.12であったものが、上述の実施形態の中継弁では0.98となって、「3ノッチ」と「4ノッチ」との間の比率が1により近い値となった。
【0063】
また、「4ノッチ」と「5ノッチ」との間の比率が従来の中継弁では0.85であったものが、上述の実施形態の中継弁では1.09となって、「4ノッチ」と「5ノッチ」との間の比率が1により近い値となった。
【0064】
また、「5ノッチ」と「6ノッチ」との間の比率が従来の中継弁では1.25であったものが、上述の実施形態の中継弁では0.96となって、「5ノッチ」と「6ノッチ」との間の比率が1により近い値となった。
【0065】
「6ノッチ」と「7ノッチ」との間の比率が従来の中継弁では1.04であったものは、上述の実施形態の中継弁でも1.04となった。
【0066】
このように上述の実施形態の中継弁23では、全体として各ノッチ間の比率を1に近づけることができており、基礎ブレーキ装置15へ出力する圧縮空気CAのノッチ間での圧力差を低減することができていることが実験結果から確認できた。