【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オゾン発生装置は、通常、殺菌脱臭対象となる空間内に据え置いて用いられることが想定される。このため、オゾン発生装置用の操作端末が、オゾン発生装置と同じ空間内に配置されていると、当該操作端末を操作する人間がオゾンによって曝露され、当該人間の身体に影響が及ぶおそれが考えられる。従って、オゾン発生装置が設置されている空間とは別の空間から、遠隔でオゾン発生装置を操作できることが好ましい。
【0006】
ところで、オゾン発生装置は殺菌・脱臭機能が高く、また、操作が簡便なため、多くの事業所に導入され始めている。例えば、映画館など、不特定多数の来客が見込まれる空間内にオゾン発生装置を設置し、営業終了後、翌日の営業が開始されるまでの時間帯において、当該空間を無人状態としてオゾン発生装置を稼働させるような用途が考えられる。
【0007】
ところが、このような設置態様においては、不特定多数の来客が見込まれる空間内にオゾン発生装置が設置されるため、仮に営業時間内に当該装置が誤って稼働してしまうと、多くの人間の身体に悪影響が及ぶ危険性がある。従って、安全性の観点から、オゾン発生装置を動作させることのできる人間を極めて限定的にしておく必要がある。
【0008】
オゾン発生装置が設置されている空間とは別の空間から、操作端末によってオゾン発生装置を操作させる方法としては、有線による通信と無線による通信が考えられる。ここで、有線による通信を介して操作端末からの操作信号を受け付ける態様の場合、操作端末を、オゾン発生装置が設置されている空間とは別の所定の空間(部屋)内に据え置くこととなる。この場合、当該空間内に入室できる人間は、誰でも操作端末を操作することができてしまう。
【0009】
映画館などの空間にオゾン発生装置を設置することを想定した場合、オゾン発生装置を操作するための端末を固定的に設置する場所としては、管理室など、特定の人間しか入ることができない室内に設置することが考えられる。しかし、通常、このような室内においても、関係者スタッフであれば容易に入室することが可能である。上述したように、不特定多数の来客が見込まれる閉ざされた空間内で、オゾン発生装置が誤って稼働してしまうと、不特定多数の人体に影響を及ぼすおそれがある。このため、オゾン発生装置を操作するための端末は、出来る限り特定の人物からの操作しか受け付けないような構成とすることが求められる。つまり、営業時間内に、誤動作によってオゾン発生装置が稼働するリスクを可能な限りゼロに近づけたいという事情がある。
【0010】
一方、オゾン発生装置が、無線による通信を介して操作端末からの操作信号を受け付ける構成の場合、オゾン発生装置側に所定の認証機能を持たせることで、特定の人間からの操作しか受け付けない構成とすることが可能である。
【0011】
オゾン発生装置の分野では一般的ではないが、コンピュータやネットワークの認証処理としては、ユーザIDとパスワードを入力させ、入力されたユーザIDとパスワードが、予め登録されているものと一致するかどうかに基づいて、セキュリティの認証を行うことは一般的である。
【0012】
無線通信を介してオゾン発生装置を制御する態様を実現するに際しては、操作用の端末として、汎用的なスマートフォン、タブレットPCなどを利用することができる。これらの端末は、Wi-FiやBluetooth(登録商標)といった所定の規格を有する電波の送受信機能が予め備えられている。よって、以下のような方法が考えられる。まず、操作端末側で認証用の画面からユーザIDとパスワードを入力させ、前記電波を介して装置側に入力情報を送信させて認証処理を行う。そして、正しく認証ができた場合にのみ、例えば操作用のコントローラが操作端末の画面上に表示されて、当該表示内容に従って操作することで、オゾン発生装置を操作できるようになる。
【0013】
しかし、このような方法を用いた場合、ユーザIDとパスワードに関する情報が第三者に漏れた場合には、誰でもオゾン発生装置を動作することができてしまう。特に、無線通信を介した操作を想定する場合、操作端末は上述したように汎用的なスマートフォンやタブレットPCが想定されるため、潜在的にオゾン発生装置を操作できてしまう人間の数は、有線の場合よりも飛躍的に上昇してしまう。このため、より高いセキュリティ性が求められる。
【0014】
近年では、特にコンピュータの認証において、指紋認証や静脈認証といったセキュリティ性をより高めた認証方法が利用され始めている。しかし、このような認証方法を導入する場合には、初期設定時の処理が煩雑である。また、実際にオゾン発生装置を操作する役割が任せられている担当のスタッフが、事情により交代する場合は大いに想定されることであるが、このような事情が発生した場合に、煩雑な処理が必要となる。
【0015】
このような事情に鑑み、潜在的にオゾン発生装置を操作する可能性のある人間のみを、予め登録しておくことが考えられる。例えば、上記の方法であれば、関係スタッフ全員の指紋や静脈を予め登録しておくことが考えられる。しかし、この方法を用いた場合には、オゾン発生装置を操作することのできる人間の数が増えてしまう結果、上述したように、営業時間内に操作端末を誤操作してしまうリスクが依然として残る。
【0016】
本発明は、上記の課題に鑑み、誤操作のリスクをなるべく減らすことで、安全性を高めたオゾン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、操作端末から発信された所定形式の電波信号を介して遠隔的に操作可能なオゾン発生装置であって、
気体が通流可能な空間内に配置され、紫外線を照射してオゾンの生成が可能な光源体と、
前記電波信号を受信する受信部と、
前記光源体に対する操作を認容する第一権限が付された唯一の前記操作端末である第一特定操作端末の識別情報に対応した第一識別情報を含む情報が格納された記憶部と、
前記光源体に対する動作制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記受信部で受信された前記電波信号に含まれる前記識別情報と、前記記憶部に格納された前記第一識別情報とが一致した場合に限り、前記光源体に対して、前記電波信号に含まれる動作指示情報に基づいた動作制御を行うことを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、光源体に対する操作を認容する権限(第一権限)が付された操作端末が唯一に設定されている。そして、この第一権限が付された操作端末(第一特定操作端末)の識別情報(第一識別情報)が記憶部に格納されている。
【0019】
仮に、オゾン発生装置が備える受信部が、第一特定操作端末以外の操作端末から発信された電波信号を受信した場合には、制御部において、この操作端末の識別情報と、記憶部に格納されている第一識別情報とが一致しないことを確認し、これ以後の操作情報を受け付けないものとすることができる。また、オゾン発生装置が備える受信部が、第一特定操作端末から発信された電波信号を受信した場合には、制御部において、この操作端末の識別情報が記憶部に格納されている第一識別情報に一致することを確認し、これ以後の操作情報を受け付けるものとすることができる。
【0020】
つまり、上記構成によれば、予め登録されている唯一の操作端末以外から操作指示に関する情報が送信されたとしても、当該情報に基いてオゾン発生装置が作動することがない。このことは、オゾン発生装置を稼働できる人間を、特定の操作端末を保持している唯一の者に限定できることを意味する。なお、この操作端末は、汎用的なスマートフォン又はタブレットPCで実現することができるため、実際には、特定のスマートフォン又はタブレットPCの所有者一人が、オゾン発生装置の運転操作を行えることとなる。
【0021】
操作端末の識別情報としては、操作端末別に異なる値が付されている情報であれば、いかなる情報を利用してもよい。一例として、MACアドレス、Bluetooth(登録商標)アドレス、デバイスID、シリアル番号などを利用することができる。
【0022】
前記制御部は、前記電波信号に含まれる前記識別情報と、前記記憶部に格納された前記第一識別情報とが一致した場合に限り、当該識別情報に対応した操作端末からの操作を受け付ける構成とすることができる。より詳細には、受信した識別情報と記憶部に格納された第一識別情報とが一致した場合に限って、例えば操作端末の画面上に操作用のコントローラが表示される。操作者は、この操作端末の画面上に表示されているコントローラ内の所定のボタンをタッチ(又はクリック)することで、オゾン発生装置の動作を開始させることができる。このコントローラには、動作開始指示を行うボタン以外に、動作中のオゾン発生装置を緊急停止させる指示を行うボタン、オゾン発生装置の動作時間を設定するボタンなど、オゾン発生に関係する処理内容を目的とする種々のボタンが内蔵されるものとしても構わない。
【0023】
前記記憶部に前記第一識別情報が格納されていない初期段階において、
前記制御部は、前記受信部で最初に受信された前記電波信号に含まれる前記操作端末の識別情報を、前記第一識別情報として前記記憶部に格納するものとしても構わない。
【0024】
オゾン発生装置は、工場出荷時においては第一権限が付された操作端末(第一特定操作端末)がまだ登録されていない。この状態において、オゾン発生装置を操作する予定となる操作端末がオゾン発生装置側に接続されることで、当該操作端末に付された識別情報が、第一識別情報として記憶部に格納される。この構成によれば、第一権限を付与する手続が極めて簡易化される。
【0025】
この構成が実現できるのは、第一権限を付与する操作端末が「唯一」であることに起因する。コンピュータやネットワークの技術分野において、特定の装置(人間)以外からのアクセスを拒否する認証処理システムは一般的に行われている。しかし、この技術は、特定の装置(人間)からのアクセスを受け付けるものであり、この「特定の装置(人間)」は複数である。すなわち、一般的なコンピュータ、ネットワークのセキュリティシステムの技術においては、アクセスを許可する対象となる複数の装置(人間)それぞれに対応した複数のコードが、予め記憶部に格納されている。
【0026】
これに対し、オゾン発生装置は、操作権限が付与される操作端末は「唯一」であるため、上記のように、最初に接続された操作端末に操作権限を付与するという処理が可能となる。
【0027】
オゾン発生装置は、記憶部に格納されていない識別情報を有する操作端末からの接続を受け付ける構成として構わない。この場合、あくまで無線通信回線を介して操作端末とオゾン発生装置との接続が行われるのみであり、当該操作端末によって遠隔的にオゾン発生装置の操作を行うことができるわけではない。上述したように、制御部において、受信部で受信された電波信号に含まれる識別情報と、記憶部に格納された第一識別情報とが一致した場合に限り、当該識別情報が付された操作端末が「第一特定操作端末」と認定され、その後の操作が受け付けられる。
【0028】
前記制御部は、前記受信部において、特別なアプリケーションがインストールされた管理用端末から発信された管理用電波信号が受信されると、前記管理用電波信号に含まれる初期化指示情報に基づいて前記記憶部に格納された前記第一識別情報を初期化するものとしても構わない。
【0029】
第一特定操作端末としては、上述したように汎用的なスマートフォンやタブレットPCが想定される。しかし、このような操作端末は、汎用性があるがゆえに、機種を変更したり、また機器自体が故障する可能性も否定できない。上述したように、第一特定操作端末は唯一に定められるため、この操作端末が故障等してしまうと、もはやオゾン発生装置を動作できなくなってしまう。
【0030】
上記の構成によれば、特定の管理用端末に対してのみ特別なアプリケーションをインストールしておき、この管理用端末は、例えば管理業者が保管するようにしておく。そして、管理業者が、この管理用端末からオゾン発生装置に対して接続することで、記憶部に格納された第一識別情報を初期化することができる。その後、新たに登録したい操作端末によってオゾン発生装置に接続することで、当該操作端末に付与された識別情報が、「第一識別情報」として記憶部に格納される。その後は、この新たな操作端末が、第一権限が付与された第一特定操作端末となる。
【0031】
前記記憶部は、当該記憶部に格納された前記第一識別情報を消去する操作を認容する第二権限が付された特定の前記操作端末である第二特定操作端末の識別情報に対応した第二識別情報が更に格納されており、
前記制御部は、前記受信部で受信された前記電波信号に含まれる前記識別情報と、前記記憶部に格納された前記第二識別情報とが一致した場合に限り、前記電波信号に含まれる初期化指示情報に基づいて前記記憶部に格納された前記第一識別情報を初期化するものとしても構わない。
【0032】
上記の構成によれば、記憶部には、当該記憶部に格納された第一識別情報を初期化する権限(第二権限)が付与された操作端末の識別情報(第二識別情報)が格納されている。よって、登録されている第一特定操作端末がもはや利用できなくなった場合には、この第二権限が付与された操作端末(第二特定操作端末)からの操作によって、記憶部に格納された第一識別情報を初期化することができる。その後、新たに登録したい操作端末によってオゾン発生装置に接続することで、当該操作端末に付与された識別情報が、「第一識別情報」として記憶部に格納される。その後は、この新たな操作端末が、第一権限が付与された第一特定操作端末となる。
【0033】
第二権限が付与された操作端末(第二特定操作端末)は、例えば管理業者が保管するものとしてもよい。
【0034】
前記オゾン発生装置は、
筐体と、
前記筐体で囲まれた空間を、少なくとも第一室と第二室とに隔てる壁体と、
前記筐体の一部に設けられ、前記筐体の外部から取り込まれた空気を前記第一室内に導く第一開口部と、
前記筐体の一部に設けられ、前記第一室内の気体を前記筐体の外部に送り出す第二開口部と、
前記受信部、前記記憶部、及び前記制御部が実装された制御基板とを備え、
前記光源体は、前記第一室内において、前記第一開口部と前記第二開口部との間の経路上に設けられ、
前記制御基板は、前記第二室内に設けられているものとしても構わない。
【0035】
かかる構成によれば、受信部、記憶部、及び制御部が実装された制御基板は、オゾンを含むガスが通流する経路とは独立した位置に配置される。このため、オゾンが曝露されることで制御基板が故障するリスクは回避される。