【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名「平成26年 電気学会 電力・エネルギー部門大会 論文集CD−ROM」 発行日 平成26年9月10日 発行所 一般社団法人 電気学会 電力・エネルギー部門 該当ページ 8−5需給制御I 論文番号21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
先ず、
図1を用いて、本実施形態における電力管理システムの構成を説明する。
図1は、電力管理システム1の構成を示すブロック図である。本発明は、蓄電池によるピーク電力削減効果を向上させる電力管理システムとして、与えられた蓄電池容量に対してピーク電力削減量が最大となる補償帯域の上下限周波数を決定する機能(以下、補償帯域決定機能と呼ぶ)を備えている。上下限周波数は、上記補償帯域の上限(高域側)の周波数と下限(低域側)の周波数とを表し、以下、高域・低域遮断周波数と称することもある。また、電力管理システムは、蓄電池の出力初期値を決定する機能(出力初期値決定機能と呼ぶ)を具えている。
【0015】
図1において、電力管理システム1は、システム演算部10と、過去実績データDB(データベース)11と、リアルタイムコントローラ12と、定置用蓄電池部13とを備える。システム演算部10は、気象情報取得部20と、負荷電力取得部として例示する気象類似日負荷電力データ取得部21と、蓄電池補償帯域決定部22と、出力初期値決定部23を有する。蓄電池補償帯域決定部22は、上述の補償帯域決定機能を備えている。出力初期値決定部23は、上述の出力初期値決定機能を具えている。リアルタイムコントローラ12は、決定補償帯域格納部30と、指令値計算部として例示する蓄電池出力指令値計算部31とを有する。
【0016】
また、上記気象情報取得部20、気象類似日負荷電力データ取得部21、及び過去実績データDB11は、負荷電力取得部40の一部として構成されてもよい。また、蓄電池補償帯域決定部22は、制御パラメータ決定部41の一部として構成することもできる。また、決定補償帯域格納部30、蓄電池出力指令値計算部31、及び定置用蓄電池部13は、蓄電池を正誤する機能を備える蓄電池制御部42の一部として構成されてもよい。
【0017】
負荷電力取得部40は、制御対象日の前日に翌日(制御対象日)の気象情報と類似した気象情報に対応付けられて記録されている負荷電力の過去実績データ(平日、土日・祝日に対応)を取得する(1日1回)。より具体的には、過去実績データDB11は、電力管理システム1の外部に設けられたシステムから、例えば、天気、温度、湿度等を含む気象情報と、当該気象情報に該当する日における負荷電力の履歴とを対応づけて記憶する。なお、負荷電力には、例えば太陽光発電装置や風力発電等のマイクログリッド発電によって発電された電力を含んでもよい。発電量はマイナスの負荷電力として扱うことができる。
【0018】
気象情報取得部20は、例えばインターネット2を介して制御対象日の天気、温度、湿度等を含む気象情報を外部に接続された気象情報提供サーバ等から取得する。気象類似日負荷電力データ取得部21は、気象情報取得部20によって取得された制御対象日の気象情報と、過去実績データDB11に記憶された過去の気象情報とを比較して、類似する過去の気象情報を特定する。気象類似日負荷電力データ取得部21は、特定された過去の気象情報の該当する日における負荷電力のデータを、過去実績データとして過去実績データDB11から取得する。ここで、制御対象日の気象情報と、過去実績データDB11に記憶された過去の気象情報が類似するか否かの判定は任意である。例えば、天気(天候、降水確率等)が同じであり、かつ、お互いの温度と湿度が、それぞれ所定の範囲内にあれば類似すると判定することができる。また、天気が異なるとき、又は、天気が同じであっても、お互いの温度と湿度の少なくともいずれかが、所定の範囲外である場合には、類似しないと判定することができる。また、制御対象日における気温の推移予想グラフと過去の気象情報における気温の推移グラフの相関関係、制御対象日における湿度の推移予想グラフと過去の気象情報における湿度の推移グラフの相関関係によって類似を判断してもよい。
【0019】
制御パラメータ決定部41は、蓄電池補償帯域決定部22及び出力初期値決定部23を有し、補償帯域決定の機能及び出力初期値決定機能を備える。
【0020】
蓄電池補償帯域決定部22は、負荷電力取得部40が取得した過去実績データを用いて、高域遮断周波数及び低域遮断周波数を決定する。負荷電力取得部40が取得した過去実績データには、時刻の経過と負荷電力との関係を表す負荷電力プロファイルを含む。蓄電池補償帯域決定部22は、電力需要が増加する所定のる時刻の範囲における負荷電力プロファイルから最適な蓄電池の補償周波数帯域(低域遮断周波数、及び高域遮断周波数)を求める。蓄電池補償帯域決定部22(制御パラメータ決定部41)における低域遮断周波数の決定方法の詳細は後述する。蓄電池補償帯域決定部22は、実効蓄電池容量(電池残量(SOC)の使用範囲として定める下限値から上限値までに対応する容量)で最も補償帯域を広くとれる低域遮断周波数を2点の線形補間により決定する。
【0021】
出力初期値決定部23は、定期用蓄電池部13から出力される出力初期値を離散フーリエ変換し、蓄電池補償帯域決定部22によって算出された高域遮断周波数を上限値、低域遮断周波数を下限値として、逆離散フーリエ変換することで、蓄電池補償帯域決定部22が高域遮断周波数及び低域遮断周波数を設定した際に予想される蓄電池出力[kW]を求め、出力初期値を決定する。なお、出力初期値決定部23の動作の詳細は後述する。
【0022】
制御パラメータ決定部41は、蓄電池補償帯域決定部22における上述のような補償帯域を決定する処理、及び出力初期値決定部23における上述のような出力初期値を決定する処理を例えば1日1回実行する。
【0023】
なお、高域遮断周波数については、短周期の速い変動を補償してもピーク電力削減効果が小さいことから、本実施形態では固定値として説明する。但し、高域遮断周波数についても過去実績データに基づき算出するようにしてもよい。また、制御パラメータ決定部41は、本実施形態では説明しない、過去実績データに基づき解析されたシミュレーション結果を補償周波数帯域の算出に使用してもよい。
【0024】
次に、蓄電池制御部42が行う蓄電池制御処理について説明する。蓄電池制御部42は、例えば、蓄電池制御処理を制御周期1秒として実行する。蓄電池制御部42は、所定の蓄電池制御のアルゴリズムに従って、リアルタイム制御で、様々な周波数成分を持つ負荷電力の変動(買電電力と蓄電池出力との合計)に基づいて負荷電力の推定を行い、蓄電池補償帯域決定部22によって決定された補償周波数帯域の変動を抽出して蓄電池出力指令を解き、蓄電池出力指令値を出力する(制御周期1秒)。
【0025】
より具体的には、決定補償帯域格納部30は、蓄電池補償帯域決定部22によって低域遮断周波数及び高域遮断周波数が決定される毎に決定された低域遮断周波数及び高域遮断周波数の値を格納する。また、決定補償帯域格納部30は、出力初期値決定部23によって出力初期値が決定される毎に決定された出力初期値を格納する。
なお、本実施形態では、高域遮断周波数は固定値の場合を説明するので、決定補償帯域格納部30には、高域遮断周波数を固定値として格納しておき、決定毎に低域遮断周波数を新たに格納するようにしてもよい。
蓄電池出力指令値計算部31には、決定補償帯域格納部30から高域遮断周波数、低域遮断周波数、及び出力初期値が入力される。また、蓄電池出力指令値計算部31には、買電電力の値がリアルタイムで入力される。買電電力の値は、例えば売買電力を測定する図示しない電力計等によって所定の周期によって入力されるようにすることができる。また、蓄電池出力指令値計算部31には、定置用蓄電池部13からの蓄電池出力の値がリアルタイムで入力される。蓄電池出力の値は、例えば蓄電池出力を測定する図示しない電力計等によって所定の周期によって入力されるようにすることができる。
蓄電池出力指令値計算部31は、入力された高域遮断周波数、低域遮断周波数、出力初期値、買電電力及び蓄電池出力に基づいて、負荷電力を推定し、推定した負荷電力に基づいて蓄電池の出力を制御するための蓄電池出力指令値を算出する。
定置用蓄電池部13は、蓄電池出力指令値計算部31から入力された蓄電池出力指令値に従って、リアルタイムに蓄電池の出力を制御する。
以上で、
図1を用いた、電力管理システムの構成の説明を終了する。
【0026】
次に、
図2を用いて、
図1で説明した蓄電池出力指令値計算部31の詳細を説明する。
図2は、蓄電池出力指令値計算部31における、蓄電池制御のアルゴリズムを示すブロック図である。
【0027】
図2において、蓄電池出力指令値計算部31は、加算器50、バンドパスフィルタ51、出力リミッタ52を備える。加算器50は、買電電力の値と蓄電池出力の値とを加算して、バンドパスフィルタ51に入力する。バンドパスフィルタ51は、加算器50から入力された買電電力の値と蓄電池出力の値の合計値に対して、補償帯域の下限値及び上限値として入力される低域遮断周波数と高域遮断周波数、及び出力初期値をパラメータとして、フィルタリング処理を実行し、出力信号を出力リミッタ52に出力する。出力初期値は、蓄電池出力指令値計算部31から出力される蓄電池出力指令値の初期値である。
【0028】
バンドパスフィルタ51は、1次ローパスフィルタ511と1次ハイパスフィルタ512によって構成することができる。ここで、1次ローパスフィルタ511の入力をx(t)、1次ローパスフィルタ511の出力(1次ハイパスフィルタ512の入力)をy(t)、蓄電池出力指令値をz(t)とすると、y(t)は、x(t)を入力とする、高域遮断周波数によって定められた高域周波数を遮断する1次ローパスフィルタの出力である。また、z(t)は、y(t)を入力とする、低域遮断周波数によって定められた低域周波数を遮断する1次ハイパスフィルタの出力である。出力リミッタ52は、バンドパスフィルタ51から出力された出力信号の振幅を制限し、蓄電池出力指令値を
図1の定置用蓄電池部13に出力する。なお、本実施形態では、出力リミッタ52の出力を蓄電池出力指令値として、便宜上z(t)として説明する。
【0029】
以上、説明したとおり、蓄電池出力指令値計算部31では、様々な周波数成分を持つ負荷電力の変動(加算器50で加算した買電電力の値と蓄電池出力の値の合計)を、バンドパスフィルタ51に通すことで、補償帯域の変動を抽出して蓄電池出力指令値を算出し、蓄電池出力指令値を出力する。この制御のアルゴリズムによって、定置用蓄電池部13による負荷変動補償を実現することができる。
なお、太陽光発電等のマイクログリッド発電は、発電電力等を任意に制御できない電源であるので、本実施形態による制御では負の値をもつ負荷として取り扱い、
図2に示す制御系に組み込まないものとする。
【0030】
次に、
図1で示した制御パラメータ決定部41の蓄電池補償帯域決定部22における低域遮断周波数の決定方法の詳細を説明する。
先ず、蓄電池補償帯域決定部22は、負荷電力に含まれる周波数成分を特定するため、負荷電力の過去実績データから、数式(1)の離散フーリエ変換の公式を用いて、負荷電力の各周波数f
kにおける実数部R(f
k)、及び虚数部I(f
k)を計算する。x(t)は負荷電力、f
kは周波数、X(f
k)は周波数f
kにおける負荷電力、kは1からサンプル数Nまでの数を表す。
次に、蓄電池補償帯域決定部22は、数式(2)に基づき、負荷電力の各周波数の振幅|X(f
k)|[kW]を求める。kは、1からN/2までの数である。
次に、蓄電池補償帯域決定部22は、数式(3)に基づき、実数部R(f
k)及び虚数部I(f
k)を用いて、位相差φ(f
k)[rad]を求める。
なお、基本周波数f
1は、数式(3)に基づき、負荷電力のサンプリング間隔Δt、及びサンプル数Nから求められる。また、ナイキスト周波数f
sは、数式(4)に基づき求められる。
【0036】
次に、
図3を用いて、低域遮断周波数の決定方法を説明する。
図3は、数式(2)で求めた各周波数の振幅|X(f
k)|の正弦波の時間積分による蓄電池容量の算出方法を示すグラフである。
図3において、縦軸は電力[kw]を表し、横軸は時間[sec]を表す。電力のグラフは、数式(2)より求めた各周波数f
kに対する振幅|X(f
k)|を示し、正弦波の半周期分において、数式(3)より求めた位相差φ(f
k)[rad]を考慮して、蓄電池の充電期間における放電電力と放電期間における放電電力を示している。すなわち、
図3における0〜φ(f
k)[rad]における電力は充電電力[kW]を示し、φ(f
k)〜1/2f
k[rad]における電力は放電電力[kW]を示す。
【0037】
図3に示す正弦波とx軸で囲まれた斜線部分は、半周期分における電力を積分した蓄電池の充電電力量(充電量)と放電電力量(放電量)を表している。すなわち、
図3における0〜φ(f
k)[rad]における電力量は充電量[kWh]を示し、φ(f
k)〜1/2f
k[rad]における電力量は放電量[kWh]を示す。
ここで、負荷変動補償に必要な蓄電池容量は、放電量から充電量を引いた値、すなわち、
図3斜線部分で示した放電量から充電量を引いた値によって算出することができる。周波数f
kにおける蓄電池容量は、数式(6)に基づき求められる。蓄電池補償帯域決定部22は、離散フーリエ変換で求めた振幅|X(f
k)|、周波数f
k、及び位相差φ(f
k)を用いて、
図3図示半周期分において蓄電池の充電量及び放電量を算出する。
また、位相差φ(f
k)を0[rad]として考えると、数式(6)においてcosφ(f
k)=1となり、すなわち、周波数f
kにおける蓄電池容量は、半周期において放電電力量に基づく値となる。一方、位相差φ(f
k)が0[rad]でない値の場合を考慮すると、半周期分において、放電量に加えて充電量を考慮した電力量が計算される。位相差φ(f
k)を考慮することにより、放電量のみを考慮した蓄電池容量に対して充電量を考慮するため、より小さい蓄電池容量を算出することになり、負荷変動補償に適切な蓄電池容量の決定をすることができる。
なお、蓄電池補償帯域決定部22は、実効蓄電池容量(電池残量(SOC)の使用範囲として定める下限値から上限値までに対応する容量)で最も補償帯域を広くとれる低域遮断周波数を2点の線形補間により決定する。
【0039】
次に、数式(7)及び数式(8)を用いて、蓄電池補償帯域決定部22の動作を説明する。蓄電池補償帯域決定部22は、数式(7)により、蓄電池容量W[kWh]を算出する。
【0041】
数式(7)において、蓄電池容量W[kWh]は、数式(6)に示す周波数f
kにおける蓄電池容量について、低域遮断周波数から高域遮断周波数まで積算することにより求められる。蓄電池容量W[kWh]について、低域遮断周波数から高域遮断周波数まで積算することにより、低域遮断周波数と負荷変動補償に必要な蓄電池容量との関係を求めることができる。数式(7)に示す関係から、実効蓄電池容量で最も補償帯域を広くとれる低域遮断周波数を、2点の線形補間で求めることができる。すなわち、数式(7)において求めた低域遮断周波数と負荷変動補償に必要な蓄電池容量との関係において、実効蓄電池容量において最も補償帯域を広くとれる低域遮断周波数を求め、求めた補償帯域の低域遮断周波数の高域側及び低域側2点の周波数の線形補間によって低域遮断周波数を決定することができる。例えば、数式(7)において、蓄電池容量が155.6kWhのときの低域遮断周波数が0.031mHz、蓄電池容量が47.5kWhのときの低域遮断周波数が0.061mHzと求めたとすると、実効蓄電池容量106kWhの低域遮断周波数は、線形補間によって、0.031+(155.6−106)×(0.061−0.031)/(155.6−47.5)≒0.045mHzと決定することができる。
【0042】
次に、数式(7)の詳細を数式(8)、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、1次バンドパスフィルタのゲイン特性を示すグラフである。
図5は、1次バンドパスフィルタの位相差特性を示すグラフである。
【0044】
数式(8)は、数式(7)の詳細を説明するためのものである。数式(8)において、蓄電池容量W[kWh]は、各周波数における容量W1、低域遮断周波数の容量W2、及び高域遮断周波数の容量W3を合計したものである。
各周波数における容量W1は、数式(8)の(イ)に示す通り、数式(6)で求めた充放電電力量について、周波数を低域遮断周波数iから高域遮断周波数mまでを積算したものである。周波数f
kを低域遮断周波数iから高域遮断周波数mまで積算することにより、低域遮断周波数と負荷変動補償に必要な充電電池容量を算出することができる。
【0045】
低域遮断周波数の容量W2及び高域遮断周波数の容量W3は、
図4及び
図5に示す、バンドパスフィルタの特定に基づき求められる。
図4において、1次バンドパスフィルタの周波数に対するゲインは、低域遮断周波数及び高域遮断周波数に対して図示のような特性を示す。すなわち、1次バンドパスフィルタの出力のゲイン特性は、波形のピークを0[dB]とした場合、低域遮断周波数及び高域遮断周波数において全ての入力が遮断される理想特性において、ゲインは2
−1/2倍(−3dB)となる。エネルギーはゲインの2乗となるため、低域遮断周波数の容量W2及び高域遮断周波数の容量W3は、それぞれ1/2になる。数式(8)の(ロ)及び(ニ)おいて、低域遮断周波数の容量W2及び高域遮断周波数の容量W3の分母の2は、それぞれの容量をゲインの2乗で除したものである。
【0046】
図5において、1次バンドパスフィルタの周波数に対する位相差は、低域遮断周波数では入力に対して45°(π/4)進み、一方高域遮断周波数では、入力に対して45°遅れることを示している。したがって、数式(8)の(ハ)に示すように、低域遮断周波数の容量W2におけるcos(φf(f))は、cos(φf(f
i)+π/4)となる。また、数式(8)の(ホ)に示すように、高域遮断周波数の容量W3におけるcos(φf(f))は、cos(φf(f
m)−π/4)となる。
以上で、数式(8)、
図4及び
図5を用いた数式(7)の詳細説明を終了する。
【0047】
次に、数式(9)及び数式(10)を用いて、出力初期値決定部23における動作の詳細を説明する。
【0050】
数式(9)は、バンドパスフィルタ51の出力z(t)(蓄電池出力指令値)を算出する数式である。数式(9)において、出力z(t)は、蓄電池補償帯域決定部22によって決定された高域遮断周波数mを上限値、決定された低域遮断周波数iを下限値として、蓄電池補償帯域決定部22において離散フーリエ変換された負荷電力x(t)に対して、下限値から上限値までの間で逆離散フーリエ変換を行う。すなわち、数式(9)によって負荷電力x(t)と出力z(t)(蓄電池出力指令値)との関係を表すことができる。
【0051】
次に、数式(10)を用いて数式(9)の詳細を説明する。数式(10)において、負荷電力x(t)を、低域遮断周波数iから高域遮断周波数mまで逆離散フーリエ変換すると、出力z(t)は、右辺第1項に示す各周波数の出力、右辺第2項に示す低域遮断周波数の出力、及び右辺第3項に示す高域遮断周波数の出力の合計となる。
ここで、数式(9)の第2項の(イ)及び第3項の(ニ)に示すルート2は、
図4で説明したゲインが2
−1/2倍(−3dB)になることに基づくものである。すなわち、低域遮断周波数の出力と高域遮断周波数の出力は、それぞれ2
−1/2倍となる。
また、数式(9)の第2項(ロ)及び(ハ)の+π/4は、
図5で説明した位相差が45°進むことに基づくものである。また、数式(9)の第3項(ホ)及び(ヘ)の−π/4は、
図5で説明した位相差が45°遅れることに基づくものである。
【0052】
出力初期値決定部23は、数式(9)を用いて、時刻t=0における出力初期値z(0)を算出する。出力初期値決定部23は、算出した出力初期値z(0)を蓄電池制御部42に出力する。蓄電池制御部42は、出力初期値z(0)を考慮した蓄電池の出力制御を行うことができるので、適切な蓄電池容量と補償帯域を算出するとともに、限られた蓄電池容量において高いピーク電力削減効果を得ることが可能となる。
以上で、数式(9)及び数式(10)を用いた出力初期値決定部23の説明を終了する。
【0053】
次に、
図6〜
図11を用いて、本実施形態における効果を説明する。
図6は、気象類似日負荷電力データ取得部21において取得された負荷電力プロファイルを例示している。
図6において、横軸は時刻[時]を示し、縦軸は負荷電力[kW]を示す。
図6は、朝7時から夕方17時までの負荷電力を示している。負荷電力にマイナス電力があるのは、太陽光発電等のグリッド発電によって買電電力より発電電力が大きくなる場合があるからである。
【0054】
制御パラメータ決定部41は、数式(7)で説明したとおり、気象類似日負荷電力データ取得部21から入力された負荷電力に基づき、蓄電池補償帯域決定部22において高域遮断周波数を10mHzと決定し、また低域遮断周波数を0.045mHzと決定する。
【0055】
図7は、出力初期値決定部23において
図6の負荷電力に対して離散フーリエ変換を行った周波数解析結果である。
図7において、横軸は周波数[mHz]を示し、縦軸は振幅[kW]を示す。
制御パラメータ決定部41は、数式(9)で説明したとおり、気象類似日負荷電力データ取得部21から入力された負荷電力に対して、出力初期値決定部23において逆離散フーリエ変換を行う。逆離散フーリエ変換は、基本周波数の整数倍である各低域遮断周波数を下限として行われ、数式(9)において蓄電池出力z(t)を算出することができる。数式(9)において算出された蓄電池出力を基に算出される出力初期を
図8に示す。
図8は、蓄電池の出力初期値の算出結果を示すグラフである。
【0056】
図8において、例えば、低域遮断周波数を0.061mHzとしたとき、制御開始直後から500秒までの出力初期値の計算結果を示す。
図8の横軸は経過時間[sec]を示し、縦軸は蓄電池出力[kW]を示す。高域遮断特性を10mHzに設定して逆フーリエ変換すると、ローパスフィルタの効果によって経過時間50秒付近にオーバーシュートのピークが生じ、蓄電池出力z(t)の追従性が悪くなっている。ここで、ローパスフィルタによるオーバーシュートを低減するために、高域遮断周波数を500mHz(ナイキスト周波数)に設定して、出力初期値z(0)を計算する。
【0057】
次に、蓄電池補償帯域決定部22で算出した低域遮断周波数に基づき、出力初期値を算出する。蓄電池補償帯域決定部22で算出した低域遮断周波数0.045mHzは基本周波数の整数倍ではないため、逆離散フーリエ変換における算出不能である。そこで、高域遮断周波数をナイキスト周波数として、
図9を用いて2点による線形補間によって出力初期値を決定する。
図9は、低域遮断周波数と出力初期値の関係を示す表である。
図9において、蓄電池補償帯域決定部22で算出した低域遮断周波数0.045mHzは、低域遮断周波数0.031mHzと0.061mHzの間にある。そこで、0.031mHzにおける90.0kWと0.061mHzにおける67.7kWの2点において線形補間した79.7kWを出力初期値として決定する。
【0058】
次に、上記で説明した制御パラメータによって得られるピーク電力削減のシミュレーション結果を、
図10を用いて説明する。なお、ピーク電力削減量は、MATLAB/Simulinkにより蓄電池による負荷変動補償を模擬したシミュレーションによって求める。MATLAB/Simulinkによるシミュレーションにおいては、
図6に示した負荷電力のプロファイルを用いる。
【0059】
図10は、本発明における負荷電力と買電電力のシミュレーション結果を示すグラフである。補償帯域と出力初期値は、上記で説明したとおり、補償帯域を0.045〜10mHz、出力初期値を79.7kWとする。
図10(a)は、サンプリング周期を1秒としたときの電力と電力量を示す。また、
図10(b)は、サンプリング周期を30分としたときの電力と電力量を示す。負荷変動補償に必要な蓄電池容量は、
図8(a)の蓄電池出力を時間積分した電力量の最大値であるので、図より91.4kWhとなる。本実施形態で使用した蓄電池の実効蓄電池容量(106kWh)であるので、使用した蓄電池は必要な負荷変動補償の条件を満たしている。
また、ピーク電力は通常30分平均で求めるが、30分平均におけるピーク電力削減量は42.4kWとなる。
【0060】
なお、
図11は、出力初期値を0kWとした、従来技術におけるシミュレーション結果を表している。
図11において、補償帯域を同様に0.045〜10mHzとした場合、負荷変動補償において必要な蓄電池容量は
図11(a)に示す通り31.8kWhであり、ピーク電力削減量は
図11(b)に示す通り25.2kWとなる。すなわち、本実施形態におけるピーク電力削減量が従来技術におけるピーク電力削減量に比べて大きくなることがシミュレーション結果において説明することができる。
【0061】
なお、実施形態における電力管理システム1はコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウエアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0062】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。