(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544556
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】水底の岩盤掘削方法
(51)【国際特許分類】
E21B 4/06 20060101AFI20190705BHJP
E21C 50/00 20060101ALI20190705BHJP
E02B 17/00 20060101ALI20190705BHJP
E01D 15/24 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
E21B4/06
E21C50/00
E02B17/00 Z
E01D15/24
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-23140(P2015-23140)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-145492(P2016-145492A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】森 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】藤内 隆
(72)【発明者】
【氏名】末吉 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】朝山 順一
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−147926(JP,A)
【文献】
実開平05−030289(JP,U)
【文献】
特開平01−174720(JP,A)
【文献】
特開2000−080877(JP,A)
【文献】
特開2012−112191(JP,A)
【文献】
特開平07−293167(JP,A)
【文献】
特開2006−336408(JP,A)
【文献】
国際公開第99/002786(WO,A1)
【文献】
米国特許第04408932(US,A)
【文献】
実開平02−116589(JP,U)
【文献】
特開2000−328863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 4/06
E01D 15/24
E02B 17/00
E21C 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底の岩盤を掘削する方法であって、
ダウンザホールハンマーで掘削するとともに鋼管杭を建て込み、該鋼管杭に支持させて作業床を設置し、先行設置した前記作業床を用いて順次前記鋼管杭の建て込み、前記作業床の設置を行って掘削対象領域に桟橋を設置し、
前記桟橋において適宜の作業をした後に、最前方の作業床を撤去する作業床撤去工程と、
残った作業床に掘削機を配置し、撤去した作業床の部分の前記掘削対象領域の岩盤に複数の掘削孔を穿設する掘削孔穿設工程と、
前記掘削孔穿設工程で穿設された前記掘削対象領域の先端側の鋼管杭を撤去する鋼管杭撤去工程と、
前記掘削対象領域を掘削する掘削工程と、有し、
上記各工程を順番に繰り返し行うことで前記掘削対象領域を掘削することを特徴とする水底の岩盤掘削方法。
【請求項2】
請求項1記載の水底の岩盤掘削方法において、
前記掘削対象領域の岩盤に複数の掘削孔をラップさせずに穿設する際に、ダウンザホール用テンプレートを用いることを特徴とする水底の岩盤掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム湖底などの水底の岩盤を掘削する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度経済成長期前後から多数建設されたダムは、経年的な劣化も認められ、我が国の優れた治水インフラを継続的に維持する観点から、リニューアル工事を随時行ってゆくことが必要になる。
【0003】
一方、ダムのリニューアル工事を行う際には、ダムを支持する岩盤の掘削が必要になるケースが多々ある。そして、新設のダムであれば発破工法等を適用して岩盤掘削を行うことができるが、リニューアル工事においては、既設ダムを供用しながらの施工になるため、発破工法を適用することができない。
【0004】
これに対し、ラップしながら岩盤を掘削し、またバケットで掘削土を搬出しながら掘削を進めてゆくCD工法などのオールケーシング工法の適用が検討されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−293167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、CD工法などのオールケーシング工法の適用する場合には、岩盤が固いと、CD工法の前にダウンザホール工法(ダウンザホールハンマーを用いた補助工法)が必要になることが多く、高コスト、工期の長期化を招くおそれがある。
【0007】
また、ダウンザホール工法は、そのような岩盤にも対応できるが、施工位置を精度よく調整することが非常に難しい。このため、現状では施工性の面も含め、補助工法への適用に限られている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、より効率的にダム湖底などの水底の岩盤を掘削することを可能にした水底の岩盤掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の水底の岩盤掘削方法は、水底の岩盤を掘削する方法であって、ダウンザホールハンマーで掘削するとともに鋼管杭を建て込み、該鋼管杭に支持させて作業床を設置し、先行設置した前記作業床を用いて順次前記鋼管杭の建て込み、前記作業床の設置を行って掘削対象領域に桟橋を設置し、
前記桟橋において適宜の作業をした後に、最前方の作業床を撤去する作業床撤去工程と、残った作業床に掘削機を配置し、撤去した作業床の部分の前記掘削対象領域の岩盤に複数の掘削孔を穿設する掘削孔穿設工程と、前記掘削孔穿設工程で穿設された前記掘削対象領域の先端側の鋼管杭を撤去する鋼管杭撤去工程と、前記掘削対象領域を掘削する掘削工程と、有し、上記各工程を順番に繰り返し行うことで前記掘削対象領域を掘削することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水底の岩盤掘削方法においては、前記掘削対象領域の岩盤に複数の掘削孔をラップさせずに穿設する際に、ダウンザホール用テンプレートを用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水底の岩盤掘削方法においては、ダウンザホールハンマーで掘削するとともに鋼管杭を建て込み、作業床を掘削対象領域まで延設し、この作業床から掘削対象領域の岩盤に、ラップさせずに複数の掘削孔を穿設することで、クラブバケットなどを用いて掘削対象領域の岩盤を所定深度まで掘削することができる。
【0013】
そして、作業床、鋼管杭の撤去を行うとともに、順次掘削孔の穿設、岩盤の掘削を行ってゆくことで、水底の岩盤を効率的に掘削することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る岩盤の掘削方法を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る岩盤の掘削方法の手順を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る岩盤の掘削方法で用いるダウンザホール用テンプレートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図3を参照し、本発明の一実施形態に係る水底の岩盤掘削方法について説明する。
【0016】
ここで、本実施形態では、例えば、ダムのリニューアル工事を行うために、ダムを支持する水底の岩盤を掘削するものとして説明を行う。なお、本発明にかかる岩盤掘削方法は、ダムを支持する岩盤の掘削にその適用を限定する必要はなく、海底、川底、湖底など、水底に存在する岩盤を掘削するあらゆるケースに適用可能である。
【0017】
まずはじめに、本実施形態の水底の岩盤掘削方法では、
図1及び
図2示すように、陸地R1から掘削対象領域R2上に作業足場となる桟橋1を設置する。
【0018】
このとき、
図1、
図2(a)〜
図2(f)に示すように、陸地R1からダム湖の岩盤Gの所定位置をダウンザホールハンマー2で掘削し、掘削孔3に鋼管杭4を建て込み、複数の鋼管杭4に支持させて作業床5を設置する。ここで、本実施形態では作業床5の前端側と後端側にそれぞれ1列ずつ5本の鋼管杭4を設置し、これら鋼管杭4で作業床5を支持する。なお、鋼管杭4の数を限定する必要はなく、例えば作業床5の前端側と後端側の両側端側に鋼管杭4を設置し、1列2本ずつの鋼管杭4作業床5を支持するようにしてもよい。
【0019】
次に、本実施形態の水底の岩盤掘削方法では、構築した桟橋1を適宜他の作業などに使用した後、
図1、
図2(g)に示すように、最前方の作業床5(1スパン目の作業床5)を撤去する
(作業床撤去工程)。そして、作業床5上に掘削機6を配置し、作業床5を撤去した部分の掘削対象領域R2の岩盤Gの所定位置をダウンザホールハンマー2で掘削する
(掘削孔穿設工程)。
【0020】
このとき、
図1、
図2、
図3(a)に示すように、ダウンザホールの掘削位置に応じた複数の貫通孔7が形成された鋼製のダウンザホール用テンプレート(孔あきプレート)8を作業床5を撤去した部分の掘削対象領域R2に設置する。このダウンザホール用テンプレート8の貫通孔7にダウンザホールハンマー2を配置して掘削してくことで、掘削対象領域R2に所望の間隔で精度よく整列配置して掘削孔3を穿設することができる。
【0021】
また、岩盤(地盤)Gの強度などに応じて、
図3(b)に示すような貫通孔7を千鳥配置して貫通孔7同士の距離を小さくしたダウンザホール用テンプレート8を用いるなどし、掘削孔3を密に配置するようにしてもよい。
なお、掘削孔3の数、配置は地盤Gの強度などに応じて決定すればよい。
【0022】
次に、
図2(h)に示すように、ダウンザホール用テンプレート8を撤去し、テンプレートの先端側を支持していた鋼管杭4を撤去する
(鋼管杭撤去工程)。そして、複数の掘削孔3を穿設して強度を低下させた桟橋1前方の岩盤領域R2を桟橋1からグラブバケットで掘削してゆく
(掘削工程)。このようにグラブバケットで掘削して土砂を地上に繰り返し排除してゆくことにより、所望の深度まで岩盤領域R2全体を掘削する。
【0023】
次に、桟橋1の最前方の作業床5(2スパン目の作業床5)を撤去するとともに、作業床5を撤去した部分の鋼管杭4を引き抜いて撤去する。
【0024】
このように2スパン目の作業床5及び鋼管杭4を撤去した段階で、ダウンザホール用テンプレート8を用い、桟橋1から岩盤領域Rに掘削孔3を穿設し、複数の掘削孔3を穿設して強度を低下させた領域R2全体の岩盤Gを、前述と同様、グラブバケットで所定の深度まで掘削する。
【0025】
このような作業床5及び鋼管杭4の撤去、ダウンザホール用テンプレート8の設置、複数の掘削孔3の穿設、ダウンザホール用テンプレート8の撤去、クラブバケットでの掘削を繰り返し行うことで、
図2(i)、
図2(j)に示すように、陸地R側まで所定領域Rの岩盤Gを掘削する。
【0026】
したがって、本実施形態の水底の岩盤掘削方法においては、ダウンザホールハンマー3で掘削するとともに鋼管杭4を建て込み、作業床5を掘削対象領域R2まで延設し、この作業床5から掘削対象領域R2の岩盤Gに、ラップさせずに掘削孔3を穿設することで、クラブバケットなどを用いて掘削対象領域R2の岩盤Gを所定深度まで掘削することができる。
【0027】
そして、作業床5、鋼管杭4の撤去を行うとともに、順次掘削孔3の穿設、岩盤Gの掘削を行ってゆくことで、水底の岩盤Gを効率的に掘削することが可能になる。
【0028】
以上、本発明に係る水底の岩盤掘削方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 桟橋
2 ダウンザホールハンマー
3 掘削孔
4 鋼管杭
5 作業床
6 掘削機
7 貫通孔
8 ダウンザホール用テンプレート
G 岩盤
R1 陸地
R2 掘削対象領域