(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
<<地盤改良工法>>
以下、図面を用いて、本発明に係る実施形態を説明するが、実施形態の説明の前に、
図1及び2を参照して地盤の支持力メカニズムと本発明の基本的な概念について説明する。
図1は、例えば木造2階建ての家屋10が地盤Gの上に直接基礎11によって建築された場合における地盤の支持力メカニズムを模式的に表している。地盤Gは、典型的な例として、表土G
0、第1の軟弱地盤G
1、第2の軟弱地盤G
2及び良質地盤G
3から構成されている例を示している。家屋10は、表土G1を剥いで第1の軟弱地盤G
1上に設けられた直接基礎11に建築されている。
図2に示す深さD
fは耐圧板13を配置する地表面からの深度を示している。
【0017】
建築基準法では、基礎底面深度から−2mまでの区間(
図1のG
1)に、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験結果でW
swが1kN以下の地層がある場合、また、基礎底面深度から−2mから−5mまでの区間(
図1のG
2)に、SWS試験結果でW
swが0.5kN以下の地層がある場合、建物の荷重によって生じる地盤沈下によって建物に障害が生じないことを確認しなければならないとされている。このため、上記条件に合致する敷地や、検討の結果、建物に有害な影響を与える沈下が生じると予測された場合、本発明などの地盤の補強工法の適用を検討することになる。
【0018】
一方、地盤支持力は、(ア)地盤の粘着力に由来するもの、(イ)基礎の大きさに由来するもの、(ウ)基礎の根入れ深さに由来するものの3つに分けることができる。もし基礎底面を
図2のように、より深い位置に移動させることができれば、支持力の三成分のうち、(ウ)基礎根入れ深さに由来する成分を増加させることができる。また、これによって、沈下を生じる層(
図2の耐圧板底面からG
3層までの間に残されたG
2層)の層厚を薄くすることが可能で、沈下量の抑制が期待できる。本発明では、地中側先端に耐圧板を有する鋼管を複数本地中に埋設することで、前述の基礎根入れ深さに由来する成分を得ることができる。また、鋼管を介して建物荷重を地盤の深部に伝達させることで、基礎直下の地盤に伝えられる建物荷重が低減されるので、地盤の沈下量の抑制が期待できる。
【0019】
次に、
図3は、本実施形態において、直接基礎11、鋼管12及び耐圧板13に作用する応力を模式的に示したものであり、直接基礎11にかかる接地圧は、直接基礎11の底面が地盤Gから受ける支持力、鋼管12の周辺が地盤Gから受ける支持力、及び耐圧板13の底面が地盤Gから受ける支持力によって支持されることとなる。本実施形態に係る改良地盤の
極限支持力度は、直接基礎11と耐圧板13の荷重の分担比率を、両者の面積比に比例するものとして算出するが、その具体的な内容は後述する。
【0020】
なお、本実施形態では、鋼管12に過大な荷重を作用させると座屈する可能性が出てくるため、そのようなことが生じないように、鋼管12の座屈強度の範囲内で対応する。そのためには、鋼管12と耐圧板13によって家屋10の荷重すべてを支持するとは捉えず、もとの地盤Gも一定の荷重を支持するように反映させる必要がある。したがって、例えば、第1の軟弱地盤G
1の平均W
SWが0.25kN以下の場合、腐植土のような高圧縮性の地層の存在が危惧される場合、斜面や擁壁の近傍で鉛直支持力の低下が危惧される場合などは、十分に配慮する必要がある。
【0021】
<<設計方法>>
次に、
図4を参照しつつ、本実施形態に係る設計方法について説明する。まず、家屋10の建築が予定される地盤Gについて、地盤条件を設定する(ステップS11<ステップAともいう>)。ステップS11では、その第1段階として、地盤Gの改良対象範囲を確定するため、
極限支持力度、沈下量、及び不同沈下の可能性の3点について、検討する。
【0022】
未改良の地盤Gの許容支持力度q
as(kN/m
2)は、SWS試験などの地盤調査結果に基づき設定する。なお、地盤Gの許容支持力度q
asが直接基礎11を介して加えられる基礎接地圧を下回る場合、地盤Gの補強が必要となる。
【0023】
地盤Gの沈下量は、日本建築学会が示している手法等を用いて予測する。
【0024】
地盤Gの不同沈下の可能性は、日本建築学会がその可能性が高い地形等として挙げている、不均一な軟弱地盤、建物の荷重の偏り、擁壁の変位、埋戻し不良、地盤改良設計不良、地盤改良施工不良、盛土の沈下、盛土施工不良、切盛造成、近接掘削工事、近接盛土・建築物などの事例を参酌して検討する。代表例として、不均一な軟弱地盤において不同沈下が生じ、家屋10が傾いている例を
図5に示す。
【0025】
ステップS11の第2段階では、改良対象範囲とされた地盤Gについて、地盤調査を行い、それらの試験結果を用いて地盤定数を決定する。
【0026】
次に、地盤Gを改良するための、改良率及び改良深度(耐圧板13を配置する深度D
fであって、鋼管12の長さで代表する)を仮定する(ステップS12<ステップBともいう>)。改良率a
dは、耐圧板13の面積A
d(m
2)の、直接基礎11の底面積A
s(m
2)に対する比として、次式(3)で表される。
a
d=A
d/A
s …式(3)
【0027】
なお、複数の耐圧板13を配置する場合には、その位置ごとに改良率a
dを算出し、最小となる改良率a
dを用いて後述する改良地盤G’(複合地盤ともいう)の許容支持力度の算出に反映させる。
図6は耐圧板13と鋼管12の組合せを複数配置した幾つかの例を示しており、
図6(a)は直接基礎11が1列の連続フーチング基礎の場合、
図6(b)は直接基礎11が格子状の連続フーチング基礎の場合、
図6(c)は直接基礎11がベタ基礎の場合を示している。隣接する耐圧板13の配置とその分担範囲については、隣接するもの同士の距離の1/2を境界として設定する。
【0028】
鋼管12の長さは、配置した耐圧板13で負担すべき荷重と鋼管12の座屈強度から決定する。鋼管12は、1本当りの負担荷重が大きくなると(すなわち、改良率adが小さくなると)、座屈し易くなる。したがって、耐圧板13で大きな支持力を確保することよりも、耐圧板13にどれだけの荷重を逃がせば直接基礎11を安定的に支持できるかを考慮して鋼管12の長さの設定を行うことが望ましい。なお、改良深度が浅い場合、鋼管12の鉛直性を確保し難くなることが憂慮されるので、鋼管12周辺の埋戻しの際には砕石を用いるなど埋戻し部分の締固めを十分に行う必要がある。
【0029】
図4に戻る。次に、耐圧板13と鋼管12の組合せを施した改良地盤G’(複合地盤)の
極限支持力度q
uを、直接基礎11のみの極限支持力度q
us(kN/m
2)と、直接基礎11が鋼管12の地中側先端に設置されたと仮定した場合の極限支持力度q
ud(kN/m
2)とを前述の改良率a
dで案分して、次式(1)で推定する(ステップS13<ステップCともいう>)。なお、極限支持力度q
udは、安全側を見込んで、改良率a
dが最小となる箇所の値を代表値として用いる。
q
u=(1−a
d)・q
us+a
d・q
ud …式(1)
ここで、qusは直接基礎のみの極限支持力度、qudは直接基礎が鋼管の地中側先端に設置された場合の極限支持力度、adは改良率である。
【0030】
極限支持力度q
us及び極限支持力度q
udは、一般的な支持力算出式に基づき算出する。
【0031】
次に、家屋10の接地圧が上記で得られた改良地盤G’の許容支持力度q
a(極限支持力度quを安全率で除した値を表す許容支持力度qa)以下であるか否かを判定する(ステップS14<ステップDともいう>)。接地圧が許容支持力度q
aを上回る場合は、ステップS12に戻り、改良率a
d及び鋼管12の長さの仮定した値を見直して、接地圧が許容支持力度q
a以下となるまで、ステップS13及びS14を繰り返す。接地圧が許容支持力度q
a以下となった場合には、鋼管12の座屈を検討するためのステップS15<ステップEともいう>へ移行する。
【0032】
図7は、
図4のステップS15の内容を細分化して示したフローである。
【0033】
軸力として、鋼管12の頭部に作用する応力q
pを、直接基礎11の支持力q
sに対し応力分担係数μ
pを乗算して、次式(2)で算出する(ステップS151<ステップE1ともいう>)。
q
p=μ
p・q
s …式(2)
【0034】
応力分担係数μ
pは、
図8に示す弾性体モデルを用いて決定する応力分担比nから求める。
【0035】
図8(a)は応力q
pを検討するにあたって改良地盤G’を模式的に図示したものであって、
図8(b)は
図8(a)をモデル化したものである。ここで、δ
11は直接基礎下1層目地盤鉛直方向変位、δ
12は直接基礎下2層目地番鉛直方向変位、δ
21は鋼管頭部鉛直方向変位、δ
22は耐圧板下鉛直方向変位、p
11は直接基礎に作用する鉛直応力、p
12は直接基礎下2層目地盤に作用する鉛直応力、p
13は直接基礎下2層地盤下に作用する鉛直応力、p
21は鋼管頭部に作用する鉛直応力、p
22は耐圧板に作用する鉛直応力、p
23は耐圧板下地盤下に作用する鉛直応力、ε
11は1層目地盤のひずみ、ε
12は2層目地盤のひずみ、ε
21は鋼管のひずみ、ε
22は耐圧板下地盤のひずみを、それぞれ現している。
【0036】
図7に戻る。次に、鋼管12の座屈については、鋼管12の側方を弾性支承で支持された柱体としてモデル化し座屈強度を決定する。鋼管12の座屈強度σ
cr(kN/m
2)を、直接基礎11と耐圧板13による端部固定条件を考慮して、座屈荷重P
cr(kN)と鋼管12の断面積A
p(m
2)とから、次式(4)で算出する(ステップS152<ステップE2ともいう>)。
σ
cr=P
cr/A
p …式(4)
【0037】
ステップS152を了した後、
図4に戻って、ステップS16<ステップFともいう>に移行する。ステップS16において、鋼管12の頭部に作用する応力q
pが許容座屈強度σ
K以下であるか否かを判定する。応力q
pが許容座屈強度σ
Kを上回る場合は、ステップS12に戻り、改良率a
d及び鋼管12の長さの仮定した値を見直して、ステップS15までを繰り返す。応力q
pが許容座屈強度σ
K以下となった場合には、鋼管12の施工位置を決定するためのステップS17<ステップGともいう>へ移行する。そして、施工現場の諸条件を勘案して鋼管12の施工位置を決定して、一連の手順を終了する。
【0038】
<<施工方法>>
上述した設計方法によって決定された耐圧板13及び鋼管12を、
図9に示すステップに基づいて、地盤中に配置する。まず、耐圧板13をロッドの先端に着脱可能に取り付ける(ステップS21)。その取り付ける手段については、後述する。次に、坑芯に合わせて耐圧板13を回転圧入し、耐圧板13を設置深度まで圧入する(ステップS22)。耐圧板13が設置深度まで達すると、ロッドをボーリングマシーンから切り離して、ロッドの内部に鋼管12を挿入する(ステップS23)。鋼管12を回転させて耐圧板13に設けられた係合部と係合して固定する(ステップS24)。
【0039】
耐圧板13が所定の設置深度に着底したことをレベルで確認する(ステップS25)。設置深度を確認した後、ロッドを逆回転させて耐圧板13から離脱させ、鋼管12の周辺に土を埋戻して締固める(ステップS26)。ここまでで、耐圧板13及び鋼管12の設置が完了するが、引き続いて、次のようなステップを講じることができる。
【0040】
設置が完了した鋼管12に対し、施工現場で簡易載荷試験を行うことができる(ステップS27)。坑位置について、設計どおりの位置となっているか否かを再確認する(ステップS28)。最後に、鋼管12の頭部に天端キャップを取り付ける(ステップS29)。
【0041】
<<耐圧板と鋼管>>
上述した設計方法及び施工方法に用いることが可能な耐圧板及び鋼管について、実施の態様の例を以下に示す。以下においては、第2のフィンが耐圧板に対応する。また、鋼管については、建築物を木造2階建て家屋と想定した場合、単管パイプが好適に用いられる。単管パイプの諸元としては、例えば、直径48.6mm、厚さ2.4mm、断面積348.3mm
2、断面二次モーメント93.4mm
4を用いればよい。
【0042】
(第一の態様)
図10及び
図11に示すように、第一の態様に係るケーシング1は、中空の管であるケーシング本体2と、ケーシング本体2の地盤側端部の外周に固定して取り付けられた第1のフィン3と、ケーシング本体の地盤側端部の底面にその開口を覆うように着脱可能に係合された第2のフィン4と、第2のフィン4をケーシング本体2に着脱可能に係合するための少なくとも1つのフック機構5とから構成されている。フック機構5の詳細は後述するが、
図10(a)並びに
図11(a)及び(b)は、フック機構5が第1のフィン3の表面下部に設けられている第一例を、
図10(b)並びに
図11(c)及び(d)は、フック機構5がケーシング本体2の内部から外部に延在して設けられている第二例を示している。なお、
図10(a)並びに
図11(a)及び(b)では、煩雑さを避けるためフック機構5を可視できる手前側のみを図示しているが、反対側の第1のフィン3にも同様のフック機構5を対に設けている。
【0043】
ここでは、ケーシング本体2は円筒形状をなしているが、中空の筒状をなしている限り、ケーシング本体2の横断面は円形には限定されない。例えば、丸角の正方形などであってもよい。また、ケーシング本体2を形成する材質は、金属製(例えば、鋼製)や塩化ビニル製であってもよい。塩化ビニル製のケーシング本体2の強度は、例えば鋼管からなるケーシング本体2の強度よりも若干低いが、工事現場の地盤の状況などに適応したものを選択すればよい。
【0044】
第1のフィン3は、ケーシング本体2の地盤側端部の外周に2葉の略扇形状の翼状部31,32が所定の角度をもってケーシング本体2を中心として対称的に配置されている。第1のフィン3の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、1葉の環形状のものを螺旋に設けてもよい。さらに、上下に複数の段にわたって設けてもよい。また、第1のフィン3を形成する材質は、金属製(例えば、鋼製)や塩化ビニル製などであってもよく、ケーシング本体2の材質を勘案して適切なものを選択すればよい。
【0045】
第2のフィン4は、ケーシング本体2の地盤側端部の底面に当接してその開口を覆う略正方形をなす中央部41と、中央部41の4つの辺の各々から外側に延びる4個の翼状部42とから構成されている。中央部41のケーシング本体側の面の中央には略三角形の突出部43が突設されている。後述するように、突出部43は、小さい径の鋼管6をケーシング本体2の中に挿入する際のガイドとなるものである。
【0046】
4個の翼状部42の各々は中央部41に対して交互に上方及び下方に曲折されているが、やや詳しく説明すると、第1の翼状部42aは中央部41に対して上方に、第1の翼状部42aに隣接する第2の翼状部42bは中央部41に対して下方に、第2の翼状部42bに対向する第3の翼状部42cは中央部41に対して上方に、第3の翼状部42cに対向する第4の翼状部42dは中央部41に対して下方に、それぞれ曲折されている。換言すると、対角線上に位置する翼状部42が同じ方向に、すなわち、第1及び第3の翼状部42a、42cはともに中央部41に対して上方に、第2及び第4の翼状部42b、42dはともに中央部41に対して下方に、それぞれ曲折されている。
【0047】
発明者が行った実験によれば、翼状部42が中央部41に対して曲折する角度は15度乃至45度の範囲内にあることが好ましく、15度乃至30度の範囲内にあることがより好ましい。なお、第2のフィン4の形状はここで述ベタ形状に限定されるものではなく、例えば、中央部41は正方形でなくても、ケーシング本体2の開口を覆うことができれば、任意の形状で差し支えない。翼状部42についても、長方形を斜めに曲折した形状でなくても、扇形状や環形状であってもよく、翼状部の枚数も適宜とすることができる。また、第2のフィン4を形成する材質は、金属製(例えば、鋼製)や塩化ビニル製などであってもよく、ケーシング本体2の材質を勘案して適切なものを選択すればよい。
【0048】
フック機構5は、ケーシング本体2と第2のフィン4を着脱可能に係合するためのものであって、前述したとおり、ここでは2つの例を記載している。すなわち、
図11(a)及び(b)は、フック機構5が第1のフィン3の表面下部に設けられている第一例を、
図11(c)及び(d)は、フック機構5がケーシング本体2の内部から外部に延在して設けられている第二例を示している。
【0049】
第一例は、フック機構5が、第1のフィン3の表面下部に取付けられた基体部55と、基体部55の先端に設けられ第2のフィン4を係合する爪部56とから構成されている。ケーシング1が回転圧入工法によって地盤中に回転圧入する際には、その正回転によって爪部56は自動的に第2のフィン4に係合し、ケーシング1が地上に引き抜かれるため逆回転する際には、爪部56は自動的に第2のフィン4から離脱する。
【0050】
これに対し、第二例は、ケーシング本体2の内部の支点54に垂直方向に回動可能に軸支された第1の腕部51と、第1の腕部の外側の端部51aに関節結合されケーシング本体の外側に延伸する第2の腕部52と、第2の腕部の先端に設けられ第2のフィンを係合する爪部53とから構成されている。ケーシング1を回転圧入工法によって地盤中に回転圧入する際、及び、何らかの理由により中途でケーシング1を逆回転させて引き抜く際には、このフック機構5によって係合された第2のフィン4はケーシング本体2とともに同一方向に回転することとなる。
【0051】
第二例では、第1の腕部51の内側の端部51bは、小さい径の鋼管6が第2のフィン4の中央部41に突設された突出部43にガイドされた際に、鋼管6の円周部が接触するように位置決めされている。従って、ケーシング1が地盤中の所定の位置に達し、鋼管6がケーシング本体2の中空部分に挿入されると、鋼管6の円周部が第1の腕部51の内側の端部51bを押し込むことにより、第2の腕部52が持ち上がり、爪部53が第2のフィン4から離脱することとなる。
【0052】
ここでは、第一例及び第二例いずれの場合もフック機構5が2つある例を示しているが、地盤の状況、第2のフィン4の形状などを勘案して、フック機構5を1つ又は3つ以上としてもよい。
【0053】
次に、本態様に係るフィン付きケーシング1を用いてフィン付き鋼管を設置し、地盤を改良する工法を説明する。
【0054】
先ず、ケーシング本体2の地盤側端部の外周に第1のフィン3を固定したケーシング1を用意する。固定にあたっては、ケーシング本体2及び第1のフィン3の材料に応じ、溶接等の方法を適宜に選択できる。
【0055】
次いで、ケーシング本体2の地盤側端部の底面に第2のフィン4をその中央部41がケーシング本体2の開口を覆うように当接させる。そして、フック機構5の爪部53を第2のフィン4の翼状部42に係合させる。
【0056】
次に、重機A(図示せず)に搭載された回転圧入装置B(図示せず)にケーシング1の頭部を連結する。ここまでが、準備行為である。
【0057】
以上の構成及び準備行為を踏まえて、以下の方法により、フィン付きケーシングを用いてフィン付き鋼管を設置する。
図12を参照しつつ、フック機構5が第二例の場合について説明する。中空の管であるケーシング本体2と、ケーシング本体2の地盤側端部の所定の位置に固定された第1のフィン3と、ケーシング本体2の地盤側端部の底面にその開口を覆うように着脱可能に係合された第2のフィン4と、第2のフィン4をケーシング本体2に着脱可能に係合するための少なくとも1つのフック機構5とを備えるケーシング1を地盤中に回転圧入する(ステップ(a))。ねじ込みに際しては、第2のフィン4の中央部41によってケーシング本体2の地盤側端部の底面は覆われているため、土砂はケーシング本体2の中空部分にほとんど侵入することはない。
【0058】
次いで、所定の位置に達して回転圧入を止めた後、鋼管6をケーシング本体2の地上側端部の開口から挿入し、第2のフィン4に当接するまで、第2のフィン4のケーシング本体側の面の中央に突設されケーシング本体の内部に貫入された突出部43に差し込む(ステップ(b))。このときの状態を
図12(a)に示す。鋼管としては、ケーシングの中に挿入できる径を有し、施工後の強度を保てるものであれば特に限定はないが、例えば、鋼管を好適な一例として使用することができる。そして、ステップ(b)の過程において、鋼管6がフック機構5を解除することにより、第2のフィン4をケーシング本体2から解放する(ステップ(c))。
【0059】
次に、第2のフィン4とそれに当接した鋼管6を残置したまま、ケーシング本体2を逆回転させつつ引き抜く(ステップ(d))。ステップ(d)の過程において、ケーシング本体2と鋼管6の間の空間に土砂を埋戻す(ステップ(e))。このときの状態を
図12(b)に示す。引抜いたケーシング1は再使用することができる。
【0060】
ここで、フック機構5が解除されるプロセスは次のとおりである。鋼管6が、突出部43に差し込まれる過程で、突出部43の近傍に位置決めされた第1の腕部51の内側の端部51bをその円周部によって押し込むことにより、第2の腕部52が持ち上がり、爪部53が第2のフィン4から離脱する。
【0061】
図12では、フック機構5が前述した第二例の場合を図示したが、第一例の場合も、前述したフック機構5と第2のフィン4との係合及び離脱に係る具体的構成を除き、ケーシング1を回転圧入及び引き抜いている状態は同様である。すなわち、フック機構5が第一例の場合にあっては、ケーシング本体2が逆回転することにより爪部56は第2のフィン4から自動的に離脱してフック機構5が解除されることにより、第2のフィン4をケーシング本体2から解放する(ステップ(c))。
【0062】
これにより、地中に残置された第2のフィン4とそれに当接した小さい径の鋼管6は、フィン付き鋼管として作用することとなる。
【0063】
(第二の態様)
第二の態様は、上述の第一の態様において、第1のフィン3を、ケーシング本体2の地盤側端部の底面に固定されており、ケーシング本体2の開口のうち中央の所定の範囲に対応する貫通口33を有する第1のフィン3’としたものである。第二の態様では、第1のフィン3’を現場でケーシング本体2に固定できる。例えば、
図13に示すように、ケーシング本体2の地盤側端部の底面にボルト21を取り付けておき、ボルト21を貫通させる孔34を予め設けてある第1のフィン3’をボルト21に貫通させ、反対側をナット22で締め付けることにより固定することができる。これにより、多くのケーシングが必要となるような工事現場であるときには、外周にあらかじめフィンが固定されたケーシングよりも、ケーシング本体2と第1のフィン3’をそれぞれ別個に運搬できることから、運搬効率の向上を図ることができる。第1のフィン3’の形状は特に限定されず、
図13では、上述の第2のフィン4と同じ形状のものを示している。
【0064】
(第三の態様)
第三の態様は、上述の第一の態様において、第2のフィン4を略長方形の平板である第2のフィン4’とし、さらに第1のフィン3に蝶番71を介して回動可能に軸支された第3のフィン7を配置したものである。第三の態様では、第3のフィン7が第2のフィン4’に代えて又は加えてその他のフィンと協調して土を掘削していくものである。すなわち、
図14(a)に示すように、第3のフィン7は、その第1の端部7aが蝶番71を介して回動可能に第1のフィン3に取り付けられており、反対側の第2の端部7bの先端が第2のフィン4’よりも下方に位置するように配置されている。第2のフィン4’は第3のフィン7に係合されており、ケーシング1が回転すると、第3のフィン7に押されて第2のフィン4’も一緒に回転する。第3のフィン7の取付け角度は、水平方向に対し概ね60度の設定が好適である。第3のフィン7の所定の位置には、第2のフィン4’を係合するための凸部72が設けられており、フック機構を構成している。
図14(b)は、ケーシング1を逆回転させて引抜いている状態を示している。逆回転することによって第2のフィン4’は第3のフィン7から離脱し、挿入された鋼管6とともに土中に残留する。引抜いていく状態では、蝶番71が回動可能なことにより第3のフィン7はほぼ水平位置をとる。この際、第1のフィン3は鋼管6の周辺の土を下方に締め固める働きをする。ここで、ケーシング1の上部に螺旋8を設けて、ケーシング1の上方にある土を下方に移動させてもよい。
【0065】
第2のフィン4’は、
図15に示すように、その中央部44に突出部45を有している。突出部45はケーシング1の開口内に挿入されるが、本形態の突出部45は、小さい径の鋼管6がケーシング1に上方から差し込まれた際に、鋼管6を係止するための逆L字型の係止部45aが設けられている。鋼管6として、その内部の所定の位置に内径方向に跨るピンが設けられているものを用いれば、当該ピンをこの係止部45aに嵌合させることができる。また、第2のフィン4’には、所定の方向に延伸部46が設けられている。この延伸部46を第3のフィン7の凸部72に係合させることにより、第2のフィン4’はケーシング1から脱落せずに一緒に回転していく。
【0066】
(第四の態様)
第四の態様は、
図16に示すように、上述の第三の態様において、略長方形の平板である第2のフィン4’の下面の長手方向に、第2のフィン4’との交差状態を略T字状となるようにして縦板47を配置したものである。第三の態様の第2のフィン4’は、掘削する地層の土質によっては撓んでしまうことがある。すなわち、第2のフィン4’の短辺周辺が土の圧力に負けて塑性変形し、めくれ上がるような状態を呈することがある。そのようになると、第2のフィン4’の短辺によって土を掻くことが困難となり、掘削効率に悪影響を与えるばかりでなく、掘削終了後の第2のフィン4’による支持力にもマイナスの要因となる。そこで、
図16に示すように、第2のフィン4’の撓みを防止又は抑制するため、その下面の長手方向に、第2のフィン4’との交差状態を略T字状となるようにして縦板47を配置したものである。縦板47の上部端面を第2のフィン4’の下面に固定する手段としては溶接が好適であるが、ほかにも、例えば縦板47をフランジ付きのものとし、フランジを第2のフィン4’にボルトによって取り付けてもよい。
【0067】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。