(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544575
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】耐張クランプ
(51)【国際特許分類】
H02G 7/05 20060101AFI20190705BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20190705BHJP
F16B 45/00 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
H02G7/05 060
F16B2/10 B
F16B45/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-181161(P2015-181161)
(22)【出願日】2015年9月14日
(65)【公開番号】特開2017-60222(P2017-60222A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391001538
【氏名又は名称】日本カタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】上村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】末本 健太郎
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭47−004208(JP,U)
【文献】
米国特許第02061371(US,A)
【文献】
実公昭46−030121(JP,Y1)
【文献】
実公昭33−000374(JP,Y1)
【文献】
特開平10−126935(JP,A)
【文献】
特開平11−178181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/05
F16B 2/10
F16B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐張鉄塔に電線を配設するための耐張クランプであって、
上縁部に形成された電線を案内する案内溝と、案内溝に続いて設けられた電線を固定するためのクランプ部とを有する本体部を備え、
前記本体部は、前記案内溝の一方の側縁部に沿って起立する案内壁を有し、
前記案内壁は、一端側に設けられた緊線用ワイヤを取り付けるための緊線リンクと、他端側に設けられた碍子装置と接続するための碍子接続部と、前記案内溝に臨む面とは反対側の面に上面から案内溝へ向って形成されたリブとを有することを特徴とする耐張クランプ。
【請求項2】
前記案内壁は、上面に前記案内溝に臨む方向とは反対側の方向へ張り出して形成された張出部をさらに有し、
前記緊線リンクが、前記張出部に形成されている請求項1に記載の耐張クランプ。
【請求項3】
前記碍子接続部は、碍子装置の板状の接続部が挿入されるスリットを有し、該スリットにおける前記緊線リンクから遠い方の内面に、開口部へ向ってスリット幅を拡大させる傾斜面が形成されている請求項1または2に記載の耐張クランプ。
【請求項4】
前記本体部がアルミニウム合金から成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐張クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐張鉄塔に架空送電線を緊線工法によって配設する際に使用される耐張クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
緊線工法には、従来、送電線にカムアロングを取付けて仮緊線し、その後カムアロング取付位置から鉄塔寄りの電線を持ち上げ、この電線に碍子装置の導体側ヨ−クまでの位置をマ−キングし、そのマ−キング位置を基準として適当な位置に楔形引留クランプを取付け、この楔形引留クランプと導体側ヨ−クとを接続するという工法がある。
【0003】
また、送電線を架設する際に、楔形引留クランプの取付位置が電線に所定の張力を加えるような電線の位置にマ−キングを施し、このマ−キング位置に楔形引留クランプを取付けることにより、カムアロング取付作業およびその関連作業を省略した架空送電線の緊線工法が提案されている(特許文献1)。この緊線工法では、送電線に楔形引留クランプを取付けるため、作業者が電線に宙乗りとなって引留クランプ取付位置まで移動し、持参した楔形引留クランプから楔と押え金具とを一旦取り外し、Uボルトとナットとでクランプ本体を送電線に仮付けしたのち、これを移動させ、楔と押え金具とから成る楔機構を利用して、クランプ本体と送電線とを固着するという作業を行う。この固着作業には、楔で電線をクランプ本体の溝に押し込むための油圧工具が必要である。油圧工具は重量が大きいうえに、取り扱いが煩雑である。そのため、特許文献1の工法は、作業者が高所の作業場所まで油圧工具を携帯して運搬する際に労力を要するという問題があった。また、固着作業時に、油圧工具を送電線に宙乗りの状態で操作しなくてはならない場合もあるので、作業者の負担が大きいという問題があった。
【0004】
特許文献2には、緊線作業を容易にできる耐張クランプについて記載されている。この耐張クランプは、クランプ本体の電線案内溝の両側に一対の棒状の取付腕部が回動自在に取り付けられた構造のものにおいて、一方の取付腕部を他方よりも突出させ、長い方の取付腕部と、碍子側の連結金具とを、中間にテーパ部を有するテーパボルトなどの連結子で連結することを特徴としている。また、電線案内溝のジャンパ側に、押え金具とナット付き締付ボルトとからなるクランプ部が設けられる。
【0005】
この耐張クランプによれば、碍子側連結金具と長い方の取付腕部とをテーパボルトなどの連結子で仮止めした状態で、短い方の取付腕部を回動させて送電線を案内溝に導入したのち、短い方の取付腕部を元の送電線を挟む位置に戻して、長い方の取付腕部とともに、ボルト・ナットなどで連結金具との連結を行う。また、送電線を、押え金具と締付ボルトとからなるクランプ部によってクランプ本体に固定できる。よって、特許文献2の耐張クランプは、前記楔形引留クランプに比べて、油圧工具のような重量物で取り扱いが煩雑な器具の使用が不要であり、1本のトルクレンチだけで簡単に電線とクランプ本体との固着作業を行えるので、作業労力を軽減できる利点を有する。
【0006】
特許文献3には、架空送電線の緊線作業を容易に行える架空送電線の緊線工法、これに使用する多導体用耐張碍子装置、およびボルト型の耐張クランプが記載されている。この緊線工法は、送電線のクランプ取付位置に、耐張クランプをジャンパ側で固定し、送電鉄塔の支持ア−ムに吊下げた多導体用耐張碍子装置の導体側ヨ−クと耐張クランプのジャンパ側端部とを緊線用金車で連結し、この金車を短縮することによって、多導体用耐張碍子装置と送電線とを張り上げたのち、耐張クランプに多導体耐張碍子装置のクランプ連結金具を連結するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭57−58842号公報
【特許文献2】実公昭52−29275号公報
【特許文献3】特開平9−182230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の耐張クランプは、碍子装置の連結金具と、テーパボルトなどで仮連結した状態で、一対の取付腕部のうち短い方の取付腕部を開動させて電線導入可能な状態とし、電線を案内溝内へ導入した後に、短い方の取付腕部を電線を挟む挟持位置まで戻し、連結金具との連結を行う必要がある。すなわち、送電線の導入前後でボルト・ナットの着脱作業を行わねばならない。耐張クランプへの送電線の導入作業は、高所で行うものであるから、できるだけ負担を軽減させたいとの要請があり、ボルト・ナットの着脱作業を少なくすることが望まれている。
【0009】
また、クランプ本体に設けられる一対の取付腕部は、強度設計上、高強度の鋼板が使用される。鋼板は、クランプ本体の素材であるアルミニウム合金に比べて比重が大きいので、耐張クランプの重量増大の要因となっている。また一対の取付腕部をクランプ本体に取り付けるのにボルト・ナットが必要であり、取付腕部と碍子装置との仮連結にテーパボルトを用いるなど、部品点数が多いため、部品管理に手間を要するとともに、コスト増大の原因ともなっている。
【0010】
本発明の目的は、前記従来の問題点に鑑み、送電線の導入作業を容易にして緊線作業の負担を軽減できるとともに、軽量化および低コスト化が可能な耐張クランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために創案した請求項1に係る本発明は、
耐張鉄塔に電線を配設するための耐張クランプであって、
上縁部に形成された電線を案内する案内溝と、案内溝に続いて設けられた電線を固定するためのクランプ部とを有する本体部を備え、
前記本体部は、前記案内溝の一方の側縁部に沿って起立する案内壁を有し、
前記案内壁は、一端側に設けられた緊線用ワイヤを取り付けるための緊線リンクと、他端側に設けられた碍子装置と接続するための碍子接続部と、前記案内溝に臨む面とは反対側の面に上面から案内溝へ向って形成されたリブとを有することを特徴とする耐張クランプである。
【0012】
また請求項2に係る本発明の耐張クランプは、前記案内壁が、上面に前記案内溝に臨む方向とは反対側の方向へ張り出して形成された張出部をさらに有し、前記緊線リンクが、前記張出部に形成されていることを特徴とする。
【0013】
また請求項3に係る本発明の耐張クランプは、前記碍子接続部が、碍子装置の板状の接続部が挿入されるスリットを有し、該スリットにおける前記緊線リンクから遠い方の内面に、開口部へ向ってスリット幅を拡大させる傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また請求項4に係る本発明の耐張クランプは、前記本体部がアルミニウム合金から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る耐張クランプによれば、本体部に設けられる案内溝の一方の側縁部に沿って起立する案内壁を有するので、この案内壁に沿って送電線を案内溝内へ導入することができる。したがって、従来のような楔機構や、鋼板製の取付腕部が不要なので、本体部の軽量化を図ることができるとともに、部品点数が少なくなるから、コストダウンを図れる。また、案内壁による片持ち構造であるので、従来の油圧工具を用いた楔の圧入作業や、ボルト・ナットを着脱して一対の取付腕部間に電線を導入する作業が不要であり、緊線作業が簡単になるから、施工性が向上し、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0016】
前記案内壁には、緊線用ワイヤと碍子装置との間で引っ張られることによる引張荷重が集中するが、案内溝に臨む面とは反対側の面に上面から案内溝へ向ってリブを形成したので、軽量なアルミニウム合金などで製作しても、必要十分な強度を備えることができる。
【0017】
また本発明に係る耐張クランプによれば、案内壁の上面に、案内溝に臨む方向とは反対側の方向へ張り出して形成された張出部をさらに有するので、案内壁の強度を一層向上させることができる。さらに、この張出部に緊線リンクを形成した場合は、案内溝に導入される送電線の張架方向と、緊線リンクに接続される緊線用ワイヤの張架方向とを横並びにできるから、緊線用ワイヤに取り付けられる金車と送電線との干渉を避けることができ、金車のワイヤ巻き上げによる短縮作業を容易に行うことができる。
【0018】
また本発明に係る耐張クランプを、碍子装置と緊線用ワイヤとの間で引っ張ったときに、この張架方向に対し本体部が傾斜する姿勢となる。本発明では、碍子接続部が有するスリットにおける緊線リンクから遠い方の内面に、開口部へ向ってスリット幅を拡大させる傾斜面を形成したので、本体部が上記の傾斜姿勢になったときに、このスリット内へ挿入される碍子装置の板状の接続部が傾斜面に面接触し、安定した連結状態を構築することができる。
【0019】
また本発明に係る耐張クランプの本体部をアルミニウム合金で製作した場合は、軽量化と低コスト化とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る耐張クランプの一実施形態に係るものであって、図(A)は正面図、図(B)は背面図である。
【
図2】本発明に係る耐張クランプの一実施形態に係るものであって、図(A)は平面図、図(B)は底面図である。
【
図3】本発明に係る耐張クランプの一実施形態に係るものであって、図(A)は左側面図、図(B)は右側面図である。
【
図4】本発明に係る耐張クランプの一実施形態に係るものであって、図(A)は
図1(A)のA−A切断線における断面図、図(B)は同図のB−B切断線における断面図である。
【
図5】本発明に係る耐張クランプの一実施形態に係るものであって、図(A)は
図1(A)のC−C切断線における断面図、図(B)は同図のD−D切断線における断面図である。
【
図6】本発明に係る耐張クランプを用いた緊線作業を説明するためのものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図である。
【
図7】従来の耐張クランプを用いた緊線作業を説明するためのものであって、図(A)は平面図、図(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。本発明に係る耐張クランプTは、本体部1が、アルミニウム合金(例えばAC7AF)で製作される。本体部1は、上縁部に電線を案内する案内溝1aを有し、案内溝1aの途中から末端部1tまでの領域に、電線を固定するためのクランプ部10が備えられる。また、本体部1における案内溝1aの始端部1sからクランプ部10までの間の領域に、案内溝1aの一方の側縁部に沿って起立形成された案内壁2を有している。案内溝1aは、始端部1sから途中までは緩やかに湾曲し、その後、末端部1tまでは直線的に形成されている。
【0022】
案内壁2は、上面部の一端側に緊線用ワイヤを取り付けるための緊線リンク3が設けられ、他端側に碍子装置60(
図6参照)と接続するための碍子接続部4が設けられる。本実施形態では、案内壁2の上面2aに、案内溝1aに臨む方向とは反対側の方向へ張り出して形成された張出部5が設けられ、この張出部5の一端側に、緊線リンク3が形成されている。
【0023】
さらに案内壁2は、案内溝1aに臨む面2bとは反対側の面2cに、上面2aから案内溝1aへ向って形成されたリブ20を有している。本実施形態では、案内溝1aの底面に対しほぼ直交するように、2つのリブを配置したが、リブ20の個数および角度等は、適宜変更することが可能である。
【0024】
案内壁2のもう一方の端部には、碍子接続部4が設けられる。本実施形態では、碍子接続部4が、碍子装置60(
図6参照)の板状の接続部61を挿入させるスリット4aを有し、該スリット4aにおける緊線リンク3から遠い方の内面に、開口部へ向ってスリット幅を拡大させる傾斜面4bが形成されている。なお4cは、接続部61をスリット4a内に連結するためのボルト・ナットである。
【0025】
クランプ部10は、
図5に示すように、本体部1にピン12pで回動自在に取り付けられた押さえ部12と、本体部1にピン13pによって回動可能に取り付けられたボルト13と、ボルト13に螺合するナット14とを含んでなる。本実施形態では、案内溝1aの両側方に、向きの異なるクランプ部10を互い違いに配設している。なお本実施例では、使用するボルト13・ナット14の組数を4組とし、従来品の5組から1組減少させた。これは、ボルト13の締付けトルクを、従来(130N・m)よりも10N・m高い140N・mに設定することによって、電線Eの掌握力性能を確保できるとの知見に基づくものである。ボルト13・ナット14を1組減らした結果、本実施形態の耐張クランプTは、重量の軽減、コストの削減、および、ボルト締付作業の工数減少による施工性の向上をもたらすことができる。
【0026】
押さえ部12は、ボルト13の軸部13aが挿入可能な凹部12aを有している。電線Eを本体部1に固定する際には、押さえ部12およびボルト13を本体部1の外側へ回動させておき、案内溝1aを開放させる。この状態において、案内溝1aに電線Eを導入した後、押さえ部12を電線E上に被る位置まで回動させ、次いでボルト13を回動させて、押さえ部12の凹部12a内へ挿入させる。そして、あらかじめボルト13に螺合しておいたナット14を締めつけて、押さえ部12を電線Eに圧接させることにより、電線Eの固定が完了する。
【0027】
本実施形態では、電線Eをクランプ部10で固定する作業を、ナット14をボルト13から分離させることなく行うことができるので、作業性が非常によい。また、ナット14が分離されないから、ナット14を落下させたり紛失したりするおそれがない。
【0028】
次に、本発明に係る耐張クランプTを用いた架空送電線の緊線工法を説明する。
図6に示すように、電線Eの所定位置に取り付けたカムアロング30に、2個一組の滑車からなる緊線用金車40を接続し、これと耐張クランプTとを緊線ワイヤ50で接続し、この耐張クランプTと送電鉄塔の支持ア−ム(図示せず)などに取り付けた碍子装置60とを接続する。そして、金車40に巻き付けたワイヤ41を、ウインチなどを用いて巻き上げることによって、金車40を短縮し、電線Eを張り上げる手順は、従来と共通である。
【0029】
本発明に係る耐張クランプTは、電線Eの固定作業を行う際、本体部1に設けた案内壁2に沿って電線Eを案内溝1a内へ導入することができるので、従来に比べて、作業性が格段に向上する。そして電線Eを案内壁2に沿って案内溝1a内へ導入し、クランプ部10のナット14を締めつけることによって、電線Eを耐張クランプTに固定することが容易にできる。
【0030】
これに対し従来の緊線作業は、
図7に示すように、耐張クランプtに設けた1対の取付腕部101,102の間に電線Eを挿入する必要があるため、ボルト・ナットの着脱作業が必要である。すなわち、ボルト・ナットを外して、短い方の取付腕部101を開放位置へ回動させ、電線Eの導入後、再びこの取付腕部101を電線Eを挟む挟持位置まで回動させ、ボルト・ナットを装着して締付け固定するという作業が必要である。
【0031】
このように従来の耐張クランプtが、電線Eの導入には、碍子装置60との仮連結状態で、ボルト・ナットを着脱し、取付腕部101,102を開閉する作業が必要であるのに対し、本実施形態の耐張クランプTは、電線Eを案内壁2に沿って案内溝1a内へ導入し、案内壁2によって片持ち状態で本体部1に保持することができるから、本体部1を碍子装置60に連結した状態のままで電線Eの導入が可能なので、作業性が格段に向上するとともに、ボルトやナットの脱落や紛失の問題も解消する。また、本実施形態の耐張クランプTは、取付腕部101,102を有する従来の耐張クランプtと比較して、軽量化することができる。たとえば、架空送電線ACSR810mm
2 用の耐張クランプにおいて、本実施形態のもの(約16kg)は、従来品(約21kg)と比べて、約5kgの軽量化を達成できた。
【0032】
本実施形態の耐張クランプTは、案内壁2に緊線用の金車40と碍子装置60とが接続され、両者間で大きな引張荷重を受ける。また、緊線作業の完了後は、片持ち状態で案内溝1a内に引張状態で保持される電線Eから、案内壁2が変形力を受ける。そこで、案内壁2の一方の面2cにリブを形成して、引張荷重や変形力に対する強度を確保している。このように、本発明に係る耐張クランプTは、従来の両持ち構造から片持ち構造へ変更するにあたり、大きい引張荷重に耐え得る補強設計に創意工夫を凝らしたものであり、その結果、本体部1をアルミニウム合金で製作して従来品よりも軽量化するとともに、リブを設けて従来の耐張クランプと同等の引張強度を確保することができた。
【0033】
また本実施形態の耐張クランプTは、緊線リンク3を案内壁2の上面2aに設けたので、これに接続される緊線ワイヤ50と、案内溝1aへ導入する際の電線Eとが横並びの配置となるから、金車40のワイヤ41の巻き上げ作業に支障をきたすことがない。また、従来では2箇所に設けていた緊線リンクを、本実施形態では1箇所としたので、コストの低減化および軽量化をもたらすことができる。
【0034】
さらに、本実施形態の耐張クランプTは、緊線リンク3の位置が、案内溝1aの側方であるので、
図6(A)に示すように、金車40と碍子装置60との間で引っ張られたとき、本体部1が、引張方向に対して若干傾斜する姿勢となる。そこで本実施形態では、碍子接続部4のスリット4aにおける一方の内面に傾斜面4bを形成し、本体部1が傾斜したときに、碍子装置60の板状の接続部61がスリット4a内面に面接触するように構成した。この構成により、碍子装置60の接続部61が、スリット4a内でこじれる問題を解消でき、安定した接続状態を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
T 耐張クランプ
1 本体部
1a 案内溝
2 案内壁
3 緊線リンク
4 碍子取付部
5 張出部
10 クランプ部
20 リブ
E 電線