特許第6544577号(P6544577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544577
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】鮮度維持装置及び鮮度維持方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20190705BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20190705BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20190705BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20190705BHJP
   B01F 5/02 20060101ALI20190705BHJP
   B01F 5/10 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   A01K63/04 C
   C02F1/24 A
   C02F1/24 B
   B01F1/00 A
   B01F3/04 Z
   B01F5/02 Z
   B01F5/10
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-235276(P2015-235276)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-99331(P2017-99331A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年11月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591152595
【氏名又は名称】永光産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515334717
【氏名又は名称】株式会社西山ポンプサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】太田 稔宏
(72)【発明者】
【氏名】西山 康正
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−144003(JP,A)
【文献】 特開2011−217672(JP,A)
【文献】 特開2011−088050(JP,A)
【文献】 特開2001−170617(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0139688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00
B01F 1/00
B01F 3/04
B01F 5/02
B01F 5/10
C02F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜養水槽から飼育水を汲み上げて加圧する循環ポンプと、
前記加圧された飼育水に空気を巻き込ませて、溶存空気を溶解又は平衡化させた飼育水を浮上分離兼滞留部に供給させる気体溶解部と、
前記供給された飼育水中にマイクロナノバブルを発生させるマイクロナノバブル発生部と、
前記マイクロナノバブルを含有する飼育水を貯留する浮上分離兼滞留部と、
前記浮上分離兼滞留部の液面上のスカムを除去するスカム処理部と、
前記気体溶解部及び前記浮上分離兼滞留部内の飼育水の液面を調整する液面調整部と、
前記飼育水を前記畜養水槽へ戻す還流部と、
を備え、
前記浮上分離兼滞留部は、前記マイクロナノバブルのうち、大径域のバブルにより、飼育水中の水産物由来の汚物を浮上させて前記スカムとして分離するとともに、前記マイクロナノバブルのうち、小径域のバブルを所定時間滞留させることで、ナノバブル化することを特徴とする鮮度維持装置。
【請求項2】
畜養水槽から飼育水を汲み上げて加圧する加圧ステップと、
前記加圧された飼育水に空気を巻き込ませて、溶存空気を溶解又は平衡化させた飼育水を浮上分離兼滞留部に供給させる気体溶解ステップと、
前記供給された飼育水中にマイクロナノバブルを発生させるマイクロナノバブル発生ステップと、
前記マイクロナノバブルを含有する飼育水を貯留する浮上分離兼滞留ステップと、
前記浮上分離兼滞留部の液面上のスカムを除去するスカム処理ステップと、
前記気体溶解ステップ及び前記浮上分離兼滞留ステップにおける飼育水の液面を調整する液面調整ステップと、
前記飼育水を前記畜養水槽へ戻す還流ステップと、
を備え、
前記浮上分離兼滞留ステップは、前記マイクロナノバブルのうち、大径域のバブルにより、飼育水中の水産物由来の汚物を浮上させて前記スカムとして分離するとともに、前記マイクロナノバブルのうち、小径域のバブルを所定時間滞留させることで、ナノバブル化することを特徴とする鮮度維持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮度維持装置及び鮮度維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水産物の養殖において、マイクロナノバブルを用いて養殖水槽の飼育水の水質を改善する技術が存在する。例えば、特開2007−312609号公報(特許文献1)には、飼育部で魚の飼育に使用された水をマイクロナノバブル発生部に導入してマイクロナノバブルを含有させてから、充填材部を通過させ、再び、前記飼育部に導入して魚の飼育に使用する水処理装置が開示されている。又、特開2012−105569号公報(特許文献2)には、プロテインスキマー(浄化装置)の下部に配置されたマイクロバブル発生手段で発生させたマイクロバブルにより、育成水槽から導入された処理水に含まれる有機物を、前記プロテインスキマーの上方に排出して除去する水処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−312609号公報
【特許文献2】特開2012−105569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚類、蟹類等の水産物は、一般的に、養殖、蓄養において短期間で鮮度劣化するため、養殖、蓄養中に水産物の鮮度維持期間をいかに延長できるかが漁業者の課題となっている。近年、水産物の鮮度維持に関してマイクロナノバブルが有効であるという文献は多種存在するものの、効果的に鮮度維持を期待出来るマイクロナノバブルの利用方法は未だ不明である。
【0005】
上述した特許文献1に記載の技術は、マイクロナノバブルによって、充填材部の微生物を活性化させ、有害なアンモニアを酸化するものである。又、上述した特許文献2に記載の技術では、ナノバブルを含む処理水で好気性微生物を活性させて、アンモニア性窒素を分解するものである。上述した特許文献1、2に記載の技術には、水産物の鮮度維持について具体的な検証結果が無い。
【0006】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、水産物の死亡率を低下させるとともに、水産物の鮮度維持期間を延長することが可能な鮮度維持装置及び鮮度維持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な鮮度維持装置及び鮮度維持方法を完成させた。即ち、本発明に係る鮮度維持装置は、循環ポンプと、気体溶解部と、マイクロナノバブル発生部と、浮上分離兼滞留部と、スカム処理部と、液面調整部と、還流部と、を備える。循環ポンプは、畜養水槽から飼育水を汲み上げて加圧する。気体溶解部は、前記加圧された飼育水に空気を巻き込ませて、溶存空気を溶解又は平衡化させた飼育水を浮上分離兼滞留部に供給する。マイクロナノバブル発生部は、前記供給された飼育水中にマイクロナノバブルを発生させる。浮上分離兼滞留部は、前記マイクロナノバブルを含有する飼育水を貯留する。スカム処理部は、前記浮上分離兼滞留部の液面上のスカムを除去する。液面調整部は、前記気体溶解部及び前記浮上分離兼滞留部内の飼育水の液面を調整する。還流部は、前記飼育水を前記畜養水槽へ戻す。前記浮上分離兼滞留部は、前記マイクロナノバブルのうち、大径域のバブルにより、飼育水中の水産物由来の汚物を浮上分離するとともに、前記マイクロナノバブルのうち、小径域のバブルを所定時間滞留させることで、ナノバブル化する。
【0008】
本発明に係る鮮度維持方法は、加圧ステップと、気体溶解ステップと、マイクロナノバブル発生ステップと、浮上分離兼滞留ステップと、スカム処理ステップと、液面調整ステップと、還流ステップと、を備える。加圧ステップは、畜養水槽から飼育水を汲み上げて加圧する。気体溶解ステップは、前記加圧された飼育水に空気を巻き込ませて、溶存空気を溶解又は平衡化させた飼育水を浮上分離兼滞留部に供給する。マイクロナノバブル発生ステップは、前記供給された飼育水中にマイクロナノバブルを発生させる。浮上分離兼滞留ステップは、前記マイクロナノバブルを含有する飼育水を貯留する。スカム処理ステップは、前記浮上分離兼滞留部の液面上のスカムを除去する。液面調整ステップは、前記気体溶解ステップ及び前記浮上分離兼滞留ステップにおける飼育水の液面を調整する。還流ステップは、前記飼育水を前記畜養水槽へ戻す。前記浮上分離兼滞留ステップは、前記マイクロナノバブルのうち、大径域のバブルにより、飼育水中の水産物由来の汚物を浮上分離するとともに、前記マイクロナノバブルのうち、小径域のバブルを所定時間滞留させることで、ナノバブル化する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水産物の死亡率を低下させるとともに、水産物の鮮度維持期間を延長することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る鮮度維持装置の概念図である。
図2】水中におけるマイクロナノバブルのうち、大径域のバブルと、小径域のバブルの挙動例を示す概念図である。
図3】本発明に係る鮮度維持装置の具体的な構成図である。
図4】実施例及び比較例を示す鮮度維持装置の概念図である。
図5】実施例及び比較例を示す畜養水槽の斜視図(図5A)と、実施例におけるマイクロナノバブル発生の態様を示す斜視図(図5B)と、である。
図6】水蟹の実施例、比較例における水質項目の溶存酸素濃度、pH、酸化還元電位、アンモニア態窒素濃度、水温をまとめた表である。
図7】水蟹の実施例、比較例における死亡率(%)及び活力指数(%)をまとめた表である。
図8】クロザコエビ、ホッコクアカエビの実施例、比較例における死亡率(%)及び活力指数(%)をまとめた表である。
図9】アカカレイの実施例、比較例における死亡率(%)及び活力指数(%)をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0012】
本発明に係る鮮度維持装置1は、図1に示すように、水産物を養殖する畜養水槽10の近傍に設けられ、循環ポンプ11と、気体溶解部12と、マイクロナノバブル発生部13と、浮上分離兼滞留部14と、スカム処理部15と、液面調整部16と、還流部17と、を備えている。処理水槽18は、前記気体溶解部12と、前記マイクロナノバブル発生部13と、前記浮上分離兼滞留部14と、前記スカム処理部15と、前記液面調整部16と、を含む。
【0013】
循環ポンプ11は、畜養水槽10から飼育水を汲み上げて、この飼育水を加圧する。気体溶解部12は、前記加圧された飼育水に空気を巻き込ませて、飼育水の溶存空気を溶解又は平衡化させる。そして、気体溶解部12は、溶存空気を溶解又は平衡化させた飼育水を前記浮上分離兼滞留部14に供給する。
【0014】
ここで、溶存空気の溶解とは、飼育水の溶存気体(窒素、酸素、二酸化炭素、その他希ガス)の濃度を増加させる、又は飼育水の溶存空気の濃度を大気圧下での飽和溶存濃度に近づけることを意味する。溶存空気の平衡化とは、飼育水の溶存空気の濃度を飽和溶存濃度にすることを意味する。又、循環ポンプ11による飼育水への加圧値が制御されることで、前記気体溶解部12及び前記マイクロナノバブル発生部13に放出される飼育水の放出量が調整される。
【0015】
又、マイクロナノバブル発生部13は、前記浮上分離兼滞留部14又は前記気体溶解部12付近(例えば、図3に示す気体溶解部12内の連通孔25c、後述する)に設置され、いずれかに供給された飼育水中にマイクロナノバブルを発生させる。ここで、マイクロナノバブルとは、粒子径が100μm未満の微細気泡を意味する。
【0016】
ここで、一般に、水中でマイクロナノバブルを発生させた場合、大径域のバブル(粒子径が50μm以上の微細気泡)と、小径域のバブル(粒子径が50μm未満の微細気泡及びnm単位の微細気泡)とで挙動が異なる。図2に示すように、水中に発生した大径域のバブルは、上昇速度が速いため、浮力により液面に浮上し、液面で消滅する。一方、小径域のバブルは、上昇速度が遅く、更に、内部圧力が上昇し、ナノバブル化(縮小)して、ナノバブルとなる。ナノバブルとは、粒子径が1μm未満の微細気泡を意味し、ナノバブルを含有する水は、外見上、白濁しておらず、透明である。
【0017】
この一般的なマイクロナノバブルの特性を利用し、飼育水中にマイクロナノバブルを発生させると、大径域のバブルは、飼育水の液面へ浮上するが、その際に、飼育水中に浮遊する水産物由来の汚物(排泄物)を吸着し、これらを飼育水中から分離して、飼育水の液面上に浮かび上がらせる。この液面上の水産物由来の汚物は、スカム(水産物由来の汚物、排泄物と大粒径バブルが混在して浮遊している浮上泥)と呼ばれる。
【0018】
一方、小径域のバブルは、前記飼育水中で所定の滞留時間以上滞留することで、ナノサイズ化する。このナノバブルが、水産物の鮮度維持に寄与するのである。
【0019】
このように、浮上分離兼滞留部14内の飼育水中にマイクロナノバブルを発生させることで、飼育水中の水産物由来の汚物を浮上分離させるとともに、水産物の鮮度維持に寄与するナノバブルを飼育水に含有させることが出来る。
【0020】
浮上分離兼滞留部14には、浮上分離兼滞留部14のほぼ中央から上方寄りに溶存空気を溶解又は平衡化された飼育水、及びマイクロナノバブル発生部13よりマイクロナノバブルを含んだ飼育水が導入される。前記浮上分離兼滞留部14は、導入された飼育水を貯留し、前記浮上分離兼滞留部14の底面に向けて流動し、ナノバブルを含む飼育水を前記浮上分離兼滞留部14の下方向に流すとともに、マイクロナノバブルの内の大径域のバブル及びスカムを前記浮上分離兼滞留部14の上方向に流動する。マイクロナノバブル発生部13より発生したマイクロナノバブルのうち、大径域のバブルは、飼育水中の水産物由来の汚物を吸着し、浮上するため、浮上分離兼滞留部14は、この汚物を飼育水から浮上分離する。小径域のバブルは、上述したように、その上昇速度が遅く、時間の経過に伴って収縮する特性があり、この特性を利用する。マイクロナノバブル発生部13が発生するバブルの粒子径は、50μm前後に分布しているが、浮上分離兼滞留部14は、収縮するバブルの殆どが10μmから20μmまでに収縮するのに要する滞留時間に対応した容積(流量×時間)を持ち、小径域のバブルを飼育水中で所定時間(例えば、2分等)以上滞留させる。浮上分離兼滞留部14は、バブルが収縮した結果、透明となった(白濁していない)飼育水を、浮上分離兼滞留部14の下方より導出し、導出された飼育水中のバブルの殆ど全てがナノバブルとなるようにしている。
【0021】
スカム処理部15は、前記大径域のバブルにより、飼育水中の水産物由来の汚物が浮上分離することで生じる液面上のスカムを除去する。又、液面調整部16は、前記気体溶解部12及び前記浮上分離兼滞留部14内の飼育水の液面を調整し、還流部15は、前記ナノバブルを含有する飼育水を前記畜養水槽10へ戻す。これにより、鮮度維持効果を阻害すると考えられるスカムを除去し、更に、ナノバブル含有の飼育水を水産物に作用させ、当該水産物の鮮度維持に有効に機能させることが出来る。又、スカムを除去した綺麗な飼育水を畜養水槽10へ戻すため、畜養水槽10の飼育水の液面も綺麗に保つことが出来る。
【0022】
ここで、スカム処理部15は、処理水槽18の外部に、除去したスカムを収集するスカム回収受け19を備え、作業者が、定期的にスカム回収受け19から溜まったスカムを廃棄出来るようになっている。尚、排水設備が、鮮度維持装置1又は畜養水槽10の付近に存在する場合は、スカム処理部15と排水設備とを配管等で直接連結して、スカムを直接廃棄しても良い。
【0023】
次に、鮮度維持装置1の各構成について具体例を示す。図3に示すように、畜養水槽10の飼育水の一部は、畜養水槽10の下面に沈められたストレーナー20を介して循環ポンプ11に汲み上げられる。ストレーナー20は、通過する飼育水中の固形分を捕捉する。
【0024】
ストレーナー20から汲み上げられた飼育水は、逆止弁21を介して、循環ポンプ11に導入される。逆止弁21は、循環ポンプ11を停止した際に、処理水槽18内へ汲み上げられた飼育水が逆流するのを防止する。ここで、必要に応じて、例えば、逆止弁21と循環ポンプ11との間に、前記ストレーナー20のメッシュよりも細かいメッシュを有する循環用ストレーナー20aを設けて、循環ポンプ11に導入される飼育水中の固形分を効率よく補足するようにしても良い。
【0025】
前記循環ポンプ11に導入された飼育水は、当該循環ポンプ11で所定の水圧で押し出されて、圧力計22、第一の調整弁23、フローメーター24を介して、気体溶解部12とマイクロナノバブル発生部13へ流される。第一の調整弁23は、循環ポンプ11から導出される飼育水の流量を調整し、例えば、バタフライ弁、ボール弁等で構成される。作業者は、圧力計22、フローメーター24の値を見て、第一の調整弁23を調整し、飼育水の循環を適正化する。
【0026】
気体溶解部12は、飼育水の溶存空気を溶解させること、又は溶存気体の平衡化が出来れば、特に限定は無いが、例えば、空気孔12aを有する箱状の外装12bと、外装12bの内部に設けられた、1個又は複数個のノズル12cと、を備える。前記供給された飼育水は、ノズル12cを介して噴流し、当該噴流によるエジェクタ効果で、噴流量に応じて空気孔12aから大気中の空気を取り込み、その空気を噴流後の飼育水に巻き込ませ、混入させて、数mmのバブルを含む気泡水にして、気液接触による飼育水中の溶存気体の溶解を行う。
【0027】
ここで、気体溶解部12で溶解された飼育水12dを迂回させて、飼育水中の大径域のバブルを浮上分離する大径気泡分離部12eが更に設けられる。大径気泡分離部12eは、例えば、受け容器25aと、分離板25bと、連通孔25cと、を備えている。受け容器25aは、気体溶解部12から噴流された飼育水12dを受けて貯留する。分離板25bは、前記受け容器25aの空間を、前記飼育水を直接受ける受け部と、前記受け空間に貯留した飼育水が上昇し、迂回してから下方へ流れ込む大径気泡分離部12eとの二つの空間に区分する。連通孔25cは、前記大径気泡分離部12eに流れ込んだ飼育水を受け容器25aの下方から前記浮上分離兼滞留部14の内部へ放出させる。これにより、溶存空気が溶解又は平衡化された飼育水は、気泡が少ない状態で、前記浮上分離兼滞留部14へ放出され、貯留される。マイクロナノバブル発生部13は、貯留された飼育水に、マイクロナノバブルを発生させる。
【0028】
ここで、図2に示すように、水中にマイクロナノバブルが発生すると、大径域のバブルが浮上し、小径域のバブルが水中に残ってナノバブル化する現象は、マイクロナノバブル発生部13の発生方式の種類に依らない。そのため、この発生方式に特に限定は無いが、例えば、マイクロナノバブル発生部13に、気液を高速に旋回する気液混合旋回方式を採用する場合、循環ポンプ11から導入される飼育水を、分岐配管26を介して、二流に分岐させ、一方の飼育水を気体溶解部12に供給し、他方の飼育水をマイクロナノバブル発生部13に供給する。そして、マイクロナノバブル発生部13に予め設けられた空気導入部13aにより、マイクロナノバブル発生部13に空気を供給する。マイクロナノバブル発生部13は、飼育水の流量と空気量とに基づいて、前記浮上分離兼滞留部14内の飼育水にマイクロナノバブルを発生させる。
【0029】
作業者は、第二の調整弁27と外気調整弁13bとで飼育水の流量と空気量をそれぞれ調整し、発生するマイクロナノバブルの発生量を制御する。マイクロナノバブル発生部13が気液混合旋回方式の場合、溶存空気が溶解又は平衡化された状態の飼育水にマイクロナノバブルを発生させる。ここで、マイクロナノバブルの発生量に特に限定は無いが、例えば、少なくとも1×10個/mL以上であると好ましい。又、マイクロナノバブルを発生させるための空気量に特に限定は無いが、例えば、マイクロナノバブル発生部13への供給量1L当たりの飼育水に対して、10mL/分〜100mL/分の範囲内であると好ましい。
【0030】
又、処理水槽18は、所定の容積を有し、飼育水を滞留させる。前記気体溶解部12内の連通孔25c付近又は前記浮上分離兼滞留部14内の連通孔25c付近に、マイクロナノバブル発生部13を設けて、飼育水中にマイクロナノバブルを発生させれば、大径域のバブルの吸着力と浮力により、水産物由来の汚物を浮上分離させ、前記浮上分離兼滞留部14内の飼育水の液面上にスカム層を形成させることが出来る。又、前記浮上分離兼滞留部14の飼育水に発生した小径域のバブルが、所定の滞留時間を経て、ナノバブル化し、ナノバブルを含有した飼育水を貯留することが出来る。浮上分離兼滞留部14は、貯留された飼育水を前記浮上分離兼滞留部14の底面より流して液面調整部16へ送る。更に、気液溶解部12で取り込まれた空気流と、飼育水の噴流での波立ちにより、前記浮上分離兼滞留部14の側面に設けられたスカム処理部15へスカム層を移動させることが出来る。
【0031】
浮上分離兼滞留部14の構成に特に限定は無いが、例えば、マイクロナノバブル発生部13の発生源に合わせて、十分な飼育水の貯留量と滞留時間を確保することが可能な大容量の処理水槽18と一体にして構成しても良いし、処理水槽18の空間を適切に区分して、飼育水の貯留量と滞留時間を確保出来る空間に浮上分離兼滞留部14を構成しても良い。又、浮上分離兼滞留部14は、飼育水の貯留のための水槽と飼育水の滞留時間を確保するための迂回水路を備えても良い。図3に示すように、処理水槽18の内部の両側壁にそれぞれ気体溶解部12とスカム処理部15とを設けて、浮上分離兼滞留部14の形状を、下方から上方に向かって漏斗状又は直状に形成して、ナノバブルを含有する飼育水を下方へ集め易くしても良い。ここで、畜養水槽10から処理水槽18を介して当該畜養水槽10へ戻る飼育水の循環流量は、畜養水槽10中の飼育水量、飼育水中の水産物の種類、水産物の数等によって適宜設計される。
【0032】
スカム処理部15は、例えば、オーバーフロー方式を採用し、処理水槽18の内部に、高さの異なる二つの仕切り板15a、15bを設け、処理水槽18内の飼育水の液面が、高さの低い第一の仕切り板15aの上端に接近するように、例えば、作業者が第一の調整弁23を制御したり液面調整部16の液面を調整したりすることによって、前記気体溶解部12と前記浮上分離兼滞留部14内の飼育水の液面の高さが調整される。
【0033】
ここで、前記浮上分離兼滞留部14内の飼育水の液面上のスカムが、第一の仕切り板15aをオーバーフローすると、第一の仕切り板15aと、高さの高い第二の仕切り板15bとの間に入り込む。一方、第二の仕切り板15bは、周囲の飼育水をせき止めるため、第一の仕切り板15aと第二の仕切り板15bとの間に空間が出来て、第一の仕切り板15aからスカムのみが流れ落ちる。これにより、飼育水の液面上のスカムを、第一の仕切り板15aと第二の仕切り板15bとの間に自動的に回収することが出来る。
【0034】
第一の仕切り板15aと第二の仕切り板15bとの間の空間の下面には、スカムを回収する回収口15cが設けられ、当該回収口15cは、外部のスカム回収受け19に連通している。これにより、流れ落ちたスカムをスカム回収受け19に蓄積させることが出来る。又、回収口15cが処理水槽18内の空気の抜け道となるため、気体溶解部12で取り込まれた空気流が、飼育水の液面上のスカムを第一の仕切り板15aへ誘導し、回収口15cへ引き込ませることが出来る。空気流によるスカムの引き込みを補助するために、例えば、気体溶解部12の外装12b等、処理水槽18の内部に送風ファンを設けても良い。
【0035】
液面調整部16は、前記浮上分離兼滞留部14と前記還流部17との間に設けられる。液面調整部16は、処理水槽18の内部の飼育水の液面の上下を跨いだ状態で設置され、前記浮上分離兼滞留部14の底部の近くに設置された水路28と接続された2区画に分けられた槽で、この槽の下面から上方に延出された上下可動式の堰板16aを備える。ナノバブルを含有する飼育水が、処理水槽18の浮上分離兼滞留部14の下方から流入して堰板16aにより堰き止められ、継続的な飼育水の供給量に応じた液面高さで堰板16aをオーバーフローし、オーバーフローした飼育水が自重で還流部17へ流れ、畜養水槽10へ戻る。液面調整部16が、堰板16aの高さを適宜調整することで、前記気体溶解部12及び前記浮上分離兼滞留部14の飼育水の液面を適正な高さに調整することが出来る。又、スカム処理部15がオーバーフロー方式であれば、スカムが乗り越える仕切り板15aに対する飼育水の液面の高さも調整することが出来る。
【0036】
ここで、液面調整部16の堰板16aの下方に、浮上分離兼滞留部14で貯留されたナノバブルを含有する飼育水が下方から上方に向かう漏斗状又は直状の水路28を設けて、ナノバブルが十分に含有されている浮上分離兼滞留部14の下方近傍の飼育水を堰板16a側へ導入するよう構成している。又、処理水槽18には、水抜き部29が設けられている。
【0037】
ここで、図2に示したように、マイクロナノバブルのうち、大径域のバブルは、しばらくすると液面に上昇して消失してしまうが、一方、小径域のバブルは、前記浮上分離兼滞留部14の飼育水内で漂うと、粒子径が100nm前後のバブルまで収縮し、ナノバブルとなり、長時間、水中に存在する。そのため、マイクロナノバブルを含有した飼育水を、所定の滞留時間(例えば、2分等)以上滞留させた後に畜養水槽10へ戻すことで、ナノバブルを含有する綺麗な飼育水を効率よく畜養水槽10に戻すことが出来る。
【0038】
尚、図3に示す鮮度維持装置1の各構成に特に限定は無く、適宜設計変更可能である。例えば、飼育水の溶存空気を飽和溶存濃度にさせるために、気体溶解部12の数を増加させても構わない。又、気体溶解部12の構成に特に限定は無く、一般的な溶存気体平衡器を採用しても良いし、圧力ポンプで高圧下の気体を飼育水に印加して溶存空気を飽和溶存濃度以上まで溶け込ませる圧力タンクを採用しても構わない。
【0039】
又、マイクロナノバブル発生部13の発生方法に特に限定は無く、気液混合旋回方式の他に、気体を液体に加圧した後に除圧する加圧溶解方式、気体と液体の共存状態を乱流にするエジェクタ方式、ベンチュリー方式、オリフィス方式、キャビテーション方式、超音波を与えて気泡を加振させて分裂させる超音波方式等を挙げることが出来る。又、マイクロナノバブル発生部13が発生するマイクロナノバブルの粒子径に特に限定は無いが、例えば、平均粒子径が40μm〜60μmの範囲内で、粒子径分布が正規分布であると、発生するマイクロナノバブルの半分を、大径域のバブルにして、飼育水からの汚物の浮上分離に寄与させ、残りの半分を、小径域のバブルにして、鮮度維持に寄与させることが可能となり、二つの機能を均等に兼ね備えさせることが可能となる。
【0040】
又、マイクロナノバブル発生部13の数や種類に特に限定は無く、例えば、前記気体溶解部12及び前記浮上分離兼滞留部14の内部に、同一の発生方法のマイクロナノバブル発生部13を複数設けても良いし、異なる発生方法のマイクロナノバブル発生部13を複数設けても良い。又、マイクロナノバブル発生部13の形状に特に限定は無く、例えば、所定の箇所のみマイクロナノバブルを発生させる形状でも良いし、前記気体溶解部12及び前記浮上分離兼滞留部14の底面を直進又は蛇行した配管状にして、処理水槽18の飼育水の全体でマイクロナノバブルを発生させる形状にしても良い。
【0041】
又、流量調節弁、電磁弁、圧力センサ、水位センサをマイクロナノバブル発生部13の構成に組み込み、マイクロナノバブルの発生量を制御出来るようにしても良い。又、マイクロナノバブル発生部13の材質に限定は無く、樹脂にして、耐食性、耐久性を付与し、低コスト化を図っても良い。
【0042】
又、スカム処理部15の除去方法に特に限定は無く、オーバーフロー方式の他に、吸収方式、掻き寄せ方式等を挙げることが出来る。オーバーフロー方式では、仕切り板の他に、開口部が拡径した配管を用意し、開口部の先端を、前記気体溶解部12及び前記浮上分離兼滞留部14内の飼育水の液面に接するように配置する形態でも構わない。
【0043】
又、液面調整部16の構成に特に限定は無く、公知の方法を採用することが出来る。又、還流部17の構成に特に限定は無く、例えば、図3に示すように、処理水槽18の内壁を開口して、開口部17aに配管を配置し、開口部17aの水位まで来た飼育水を自重で配管内に流して畜養水槽10に戻す構成でも良い。還流部17に、処理水槽18内の飼育水を吸い出す還流ポンプや逆止弁を設けても構わない。又、鮮度維持装置1には、飼育水のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素及び硝酸態窒素を低減するための脱窒装置を更に備えても構わない。又、本発明に係る鮮度維持装置1は、図1に示すように、一つの畜養水槽10に付設しても良いが、複数の畜養水槽10から飼育水を吸い上げて、ナノバブルを含有する飼育水を畜養水槽10にそれぞれ還す構成としても良い。
【0044】
又、本発明に係る鮮度維持装置1は、畜養水槽10に付設することが出来るため、畜養水槽10の形態に特に限定は無い。例えば、畜養水槽10に、海水、淡水を問わない陸上養殖用水槽、港の畜養生簀、物産店の展示販売用水槽、漁船用生簀、活魚運搬車用水槽、料理店用水槽等を挙げることが出来る。又、水産物の種類に特に限定は無く、魚類、貝類、甲殻類、海藻類等を挙げることが出来、具体的には、エビ、カレイ、イカ、カツオ、アワビ等を挙げることが出来る。
【0045】
又、本発明は、加圧ステップと、気体溶解ステップと、マイクロナノバブル発生ステップと、浮上分離兼滞留ステップと、スカム処理ステップと、液面調整ステップと、還流ステップと、を備える鮮度維持方法としても提供可能である。加圧ステップは、畜養水槽10から飼育水を汲み上げて加圧する。気体溶解ステップは、前記加圧された飼育水に空気を巻き込ませて、溶存空気を溶解又は平衡化させた飼育水を浮上分離兼滞留部14に供給させる。マイクロナノバブル発生ステップは、前記供給された飼育水中にマイクロナノバブルを発生させる。浮上分離兼滞留ステップは、前記マイクロナノバブルを含有する飼育水を貯留する。スカム処理ステップは、前記浮上分離兼滞留部14の液面上のスカムを除去する。液面調整ステップは、前記気体溶解ステップ及び前記浮上分離兼滞留ステップにおける飼育水の液面を調整する。還流ステップは、前記飼育水を前記畜養水槽10へ戻す。前記浮上分離兼滞留ステップは、前記マイクロナノバブルのうち、大径域のバブルにより、飼育水中の水産物由来の汚物を浮上分離するとともに、前記マイクロナノバブルのうち、小径域のバブルを所定時間滞留させることで、ナノバブル化する。このような構成であっても、本発明の作用効果を有する。
【実施例】
【0046】
以下、実施例、比較例等によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0047】
図4に示すように、畜養水槽10の上部に鮮度維持装置1を設置した。畜養水槽10には、従来の畜養条件とするエアレーション発生部3が既設されている。図5Aに示すように、エアレーション発生部3を停止して、鮮度維持装置1を駆動した場合を実施例とし、鮮度維持装置1を停止して、エアレーション発生部3を駆動した場合を比較例とした。
【0048】
畜養水槽10のサイズは、水深52cm、長さ128cm、奥行316cmであり、畜養水槽10の水量は、2トンである。畜養水槽10には、冷却装置31に内蔵された冷却循環ポンプ32が設置され、畜養水槽10の飼育水が取り出され、所定温度まで冷却され、畜養水槽10へ返される。冷却装置31の冷却能力は5300kcal/hrであり、目標海水温度は、4度である。又、冷却循環ポンプ32の循環流量は、75L/分である。冷却循環ポンプ32による畜養水槽10の飼育水の吸い上げ部分には、ゴミ回収部33が設けられる。水産物は、水蟹(若松葉蟹)、クロザコエビ、ホッコクアカエビ、アカカレイを採用した。水産物は、主に水籠34に入れた状態で畜養水槽10に放置したが、水蟹は、水籠34に入れた状態と、畜養水槽10にそのまま放置した状態の2種類とした。
【0049】
実施例の鮮度維持装置1において処理水槽18は、アクリル製で100Lの容量のものを用いた。循環ポンプ11は、吐水量が29L/分のものを用いた。気体溶解部12は、溶存気体平衡器を2台採用し、飼育水の溶存空気が確実に溶解され、溶存酸素が飽和溶存濃度に達するようにした。
【0050】
マイクロナノバブル発生部13は、気液混合旋回方式のマイクロナノバブル発生器を採用した。このマイクロナノバブル発生器には、水調整弁(第二の調整弁27)とエアー調整弁(外気調整弁13b)を設け、マイクロナノバブルの発生量を制御するように構成した。マイクロナノバブルの発生条件は、バブル発生部13に導入される飼育水の流量を29L/分とし、空気量を300mL/分とし、図5Bに示すように、粒子径が76nmから201nm、気泡濃度が3.2×10個/mLのナノバブルを発生させた(公知の測定装置で測定)。浮上分離兼滞留部14は、処理水槽18の体積を大きく設定することで、処理水槽18と一体化させた。スカム処理部15は、処理水槽18内でのオーバーフロー式を採用した。液面調整部16は、処理水槽18の体積及び飼育水の水量から高さが予め調整される固定式の堰板を採用した。還流部17は、十分な滞留時間を経た飼育水を畜養水槽10に戻すように構成した。処理水槽18にスカム回収受け19を設けた。
【0051】
実施例、比較例において、水質項目である溶存酸素(DO)、pH、酸化還元電位(ORP)、アンモニア態窒素濃度(水中に溶解している非解離のアンモニアと解離してイオン態になったアンモニウムイオンの合計の濃度)、水温を測定し、飼育水の状態を確認した。又、養殖中の経過日数に対して水産物の死亡率(%)及び活力指数(%)を算出することで、本発明に係る鮮度維持装置1の鮮度維持効果の有無を確認した。活力指数は、水産物の個体を目視して、各個体毎に「活きが良い」を3点、「生きている」を2点、「死んでいる」を0点として加点し、全ての個体の加点を合計して、100点満点換算で、水産物に対する活力指数を算出した。
【0052】
先ず、水産物を水蟹にした場合について説明する。1つの水籠に10匹の水蟹を入れて、3つの水籠を一セットにして畜養試験を行った。又、水籠に入れず、畜養水槽10にそのまま20匹の水蟹を入れて畜養試験を行った。
【0053】
次に、水蟹の水質項目の結果を示す。溶存酸素について、図6に示すように、実施例の溶存酸素濃度の平均値は10.9mg/Lであり、比較例の溶存酸素濃度の平均値は12.5mg/Lであり、実施例の溶存酸素濃度は比較例よりもやや低かったが、絶対値から海水中で過飽和に近い溶存酸素濃度であった。畜養試験期間(初日から10日目まで)で、実施例、比較例ともに変動は見られなかった。
【0054】
pHについて、実施例のpHの平均値は8.0であり、比較例のpHの平均値は8.1であり、両者に差異が見られなかった。畜養試験期間で、実施例、比較例ともに変動は見られなかった。
【0055】
酸化還元電位について、実施例の酸化還元電位の最高値は260mV、最低値は51mVであり、比較例の酸化還元電位の最高値は266mV、最低値は31mVであり、両者の低減傾向や値に差は見られなかった。
【0056】
アンモニア態窒素濃度について、実施例のアンモニア態窒素濃度の平均値は0.2mg/Lであり、比較例のアンモニア態窒素濃度の平均値は0.2mg/Lであり、両者に差異が見られなかった。畜養試験期間で、実施例、比較例ともに変動は見られなかった。
【0057】
水温について、実施例の水温の平均値は3.2度であり、比較例の水温の平均値は3.1度であり、両者に差異が見られなかった。畜養試験期間で、実施例、比較例ともに変動は見られなかった。液面の汚れについて、実施例では、畜養試験期間中を通して液面に汚れは発生しなかったが、比較例では、畜養試験開始1日後から畜養試験を完了するまで液面の汚れが発生していた。
【0058】
次に、水蟹の死亡率(%)及び活力指数(%)の結果を示す。図7に示すように、実施例における水蟹の死亡率(%)は、比較例における水蟹の死亡率(%)と比較して低かった。又、実施例における水蟹の活力指数(%)は、比較例における水蟹の活力指数(%)と比較して高かった。
【0059】
次に、水産物をクロザコエビ、ホッコクアカエビにした場合について説明する。クロザコエビでは、1つの水籠に89匹入れて畜養試験を行った。又、ホッコクアカエビは、1つの水籠に31匹入れて畜養試験を行った。水質項目の結果は、上述と同様に、実施例でも比較例でも、水温、溶存酸素濃度、アンモニア態窒素濃度、酸化還元電位、pHのいずれも差異がなかった。
【0060】
次に、クロザコエビ、ホッコクアカエビの死亡率(%)及び活力指数(%)の結果を示す。図8に示すように、実施例におけるクロザコエビの死亡率(%)は、比較例におけるクロザコエビの死亡率(%)と比較して低く、実施例におけるクロザコエビの活力指数(%)は、比較例におけるクロザコエビの活力指数(%)と比較して高かった。同様に、実施例におけるホッコクアカエビの死亡率(%)は、比較例におけるホッコクアカエビの死亡率(%)と比較して低く、実施例におけるホッコクアカエビの活力指数(%)は、比較例におけるホッコクアカエビの活力指数(%)と比較して高かった。
【0061】
又、水産物をアカカレイにした場合について説明する。アカカレイでは、1つの水籠51匹入れて畜養試験を行った。水質項目の結果は、上述と同様に、実施例でも比較例でも、水温、溶存酸素濃度、アンモニア態窒素濃度、酸化還元電位、pHのいずれも差異がなかった。
【0062】
次に、アカカレイの死亡率(%)及び活力指数(%)の結果を示す。図9に示すように、実施例におけるアカカレイの死亡率(%)は、比較例におけるアカカレイの死亡率(%)と比較して低く、実施例におけるアカカレイの活力指数(%)は、比較例におけるアカカレイの活力指数(%)と比較して高かった。
【0063】
このように、本発明に係る鮮度維持装置1は、鮮度維持効果を有し、水産物の死亡率を低下させるとともに、水産物の鮮度維持期間を延長することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る鮮度維持装置及び鮮度維持方法は、陸上養殖はもちろん、畜養生簀、活魚水槽等の水産物の鮮度維持に有用であり、水産物の死亡率を低下させるとともに、水産物の鮮度維持期間を延長することが可能な鮮度維持装置及び鮮度維持方法として有効である。
【符号の説明】
【0065】
1 鮮度維持装置
10 畜養水槽
11 循環ポンプ
12 気体溶解部
13 マイクロナノバブル発生部
14 浮上分離兼滞留部
15 スカム処理部
16 液面調整部
17 還流部
18 処理水槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9