特許第6544583号(P6544583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544583
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】防爆照明システム
(51)【国際特許分類】
   F21V 25/12 20060101AFI20190705BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20190705BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190705BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20190705BHJP
【FI】
   F21V25/12
   F21V8/00 241
   F21V8/00 260
   F21V8/00 271
   F21V8/00 281
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-58483(P2016-58483)
(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公開番号】特開2017-174594(P2017-174594A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】513171493
【氏名又は名称】株式会社SMACO技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100093894
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 清
(72)【発明者】
【氏名】贄川 潤
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−162205(JP,A)
【文献】 特開2006−313754(JP,A)
【文献】 実開昭60−162310(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 25/12
F21V 8/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火気厳禁領域に配置される照明装置と、該照明装置から離れた領域であって前記火気厳禁領域とは隔絶された非火気厳禁領域に配置される光源装置と、該光源装置から発する光を前記照明装置に導く光ファイバとを有し、前記光源装置は電源からの供給電力により光を発する発光ダイオードまたはレーザダイオードから成る光源を備え、前記光ファイバは複数本の裸光ファイバが束ねられている構成を有し、その束状の裸光ファイバの光導入側に前記光源装置から発する光が導入されて前記照明装置まで導かれる構成と成し、前記裸光ファイバはその出射側においては前記裸光ファイバの束が複数の裸光ファイバの束に小分けされた小束状態と成して小束同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているか、裸光ファイバ1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているかのいずれかの態様と成し、該照明装置には前記各裸光ファイバの光出射側から出射される光を拡散させる光拡散部材が設けられており、前記光源装置の駆動によって発せられて前記光ファイバを伝送した光が前記それぞれの裸光ファイバの光出射端から出射されて前記光拡散部材により拡散され前記照明装置を通して前記火気厳禁領域の被照明空間領域に照射される構成とし、前記小束毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバの光出射端側の前記間隔または、個々の裸光ファイバ毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバの光出射端側の前記間隔には樹脂が設けられて該樹脂によって前記裸光ファイバの出射端側が固定されていることを特徴とする防爆照明システム。
【請求項2】
火気厳禁領域に配置される照明装置と、該照明装置から離れた領域であって前記火気厳禁領域とは隔絶された非火気厳禁領域に配置される光源装置と、該光源装置から発する光を前記照明装置に導く光ファイバとを有し、前記光源装置は電源からの供給電力により光を発する発光ダイオードまたはレーザダイオードから成る光源を備え、前記光ファイバは複数本の裸光ファイバが束ねられている構成を有し、その束状の裸光ファイバの光導入側に前記光源装置から発する光が導入されて前記照明装置まで導かれる構成と成し、前記裸光ファイバはその出射側においては前記裸光ファイバの束が複数の裸光ファイバの束に小分けされた小束状態と成して小束同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているか、裸光ファイバ1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているかのいずれかの態様と成し、該照明装置には前記各裸光ファイバの光出射側から出射される光を拡散させる光拡散部材が設けられており、前記光源装置の駆動によって発せられて前記光ファイバを伝送した光が前記それぞれの裸光ファイバの光出射端から出射されて前記光拡散部材により拡散され前記照明装置を通して前記火気厳禁領域の被照明空間領域に照射される構成とし、前記光ファイバの裸光ファイバは、光ファイバの入射側においては束ねられて集合一体化され、光ファイバの出射側においては裸光ファイバの出射端部が帯状の被覆材を介して互いに間隔を介して配置されて形成された裸光ファイバ保持部材が渦巻き状に配設されることにより、光ファイバの出射側においては前記1本ずつに分けられた裸光ファイバまたは前記小束状態の裸光ファイバが互いに間隔を介して配列固定されていることを特徴とする防爆照明システム。
【請求項3】
照明装置は複数設けられ、光源装置側で束ねられている裸光ファイバが前記それぞれの照明装置毎の束に分けられて対応する照明装置のそれぞれに導かれていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の防爆照明システム。
【請求項4】
照明装置と光源装置との間の光ファイバの長さを可変可能とする光ファイバ長さ可変調整部位が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の防爆照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火気厳禁領域に配置される照明装置を備えた防爆照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火気厳禁領域に配置される照明装置には、防爆のための耐圧、強度を有する構成が要求される。そのため、従来の光源内蔵の照明装置には、光照射部位を除いて強固な金属により覆うといった構成が必要であり、また、光照射部位にも厚いガードを設ける必要があった(例えば特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−93246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のように照明装置の光照射部位を除いて強固な金属により覆うと、重量が重くなり、持ち運び等が困難となることに加え、照明装置の取り付け部にも強度が必要となり、運搬コストや取り付けコスト、取り付け状態を維持するコスト等が高くなってしまうといった問題があった。また、前記のように防爆のために、光の照射部位にガードを設けると、光照射にムラが生じたり、光透過率の低下が生じたりするといった問題があり、光束効率が低い照明装置となってしまうといった問題があった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、簡単な構成で火気厳禁領域の被照明空間領域を安全に良好に照らすことができる防爆照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明は、火気厳禁領域に配置される照明装置と、該照明装置から離れた領域であって前記火気厳禁領域とは隔絶された非火気厳禁領域に配置される光源装置と、該光源装置から発する光を前記照明装置に導く光ファイバとを有し、前記光源装置は電源からの供給電力により光を発する発光ダイオードまたはレーザダイオードから成る光源を備え、前記光ファイバは複数本の裸光ファイバが束ねられている構成を有し、その束状の裸光ファイバの光導入側に前記光源装置から発する光が導入されて前記照明装置まで導かれる構成と成し、前記裸光ファイバはその出射側においては前記裸光ファイバの束が複数の裸光ファイバの束に小分けされた小束状態と成して小束同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているか、裸光ファイバ1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているかのいずれかの態様と成し、該照明装置には前記各裸光ファイバの光出射側から出射される光を拡散させる光拡散部材が設けられており、前記光源装置の駆動によって発せられて前記光ファイバを伝送した光が前記それぞれの裸光ファイバの光出射端から出射されて前記光拡散部材により拡散され前記照明装置を通して前記火気厳禁領域の被照明空間領域に照射される構成とし、前記小束毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバの光出射端側の前記間隔または、個々の裸光ファイバ毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバの光出射端側の前記間隔には樹脂が設けられて該樹脂によって前記裸光ファイバの出射端側が固定されている構成をもって課題を解決するための手段としている。
【0007】
また、第2の発明は、火気厳禁領域に配置される照明装置と、該照明装置から離れた領域であって前記火気厳禁領域とは隔絶された非火気厳禁領域に配置される光源装置と、該光源装置から発する光を前記照明装置に導く光ファイバとを有し、前記光源装置は電源からの供給電力により光を発する発光ダイオードまたはレーザダイオードから成る光源を備え、前記光ファイバは複数本の裸光ファイバが束ねられている構成を有し、その束状の裸光ファイバの光導入側に前記光源装置から発する光が導入されて前記照明装置まで導かれる構成と成し、前記裸光ファイバはその出射側においては前記裸光ファイバの束が複数の裸光ファイバの束に小分けされた小束状態と成して小束同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているか、裸光ファイバ1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているかのいずれかの態様と成し、該照明装置には前記各裸光ファイバの光出射側から出射される光を拡散させる光拡散部材が設けられており、前記光源装置の駆動によって発せられて前記光ファイバを伝送した光が前記それぞれの裸光ファイバの光出射端から出射されて前記光拡散部材により拡散され前記照明装置を通して前記火気厳禁領域の被照明空間領域に照射される構成とし、前記光ファイバの裸光ファイバは、光ファイバの入射側においては束ねられて集合一体化され、光ファイバの出射側においては裸光ファイバの出射端部が帯状の被覆材を介して互いに間隔を介して配置されて形成された裸光ファイバ保持部材が渦巻き状に配設されることにより、光ファイバの出射側においては前記1本ずつに分けられた裸光ファイバまたは前記小束状態の裸光ファイバが互いに間隔を介して配列固定されている構成をもって課題を解決するための手段としている。
【0008】
さらに、第3の発明は、前記第1または第2の発明の構成に加え、前記照明装置は複数設けられ、光源装置側で束ねられている裸光ファイバが前記それぞれの照明装置毎の束に分けられて対応する照明装置のそれぞれに導かれていることを特徴とする。
【0011】
さらに、第6の発明は、前記第1乃至第のいずれか一つの発明の構成に加え、前記照明装置と光源装置との間の光ファイバの長さを可変可能とする光ファイバ長さ可変調整部位が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明における一つの特徴的な構成によれば、照明装置は火気厳禁領域に配置されるが、発光ダイオードまたはレーザダイオードから成る光源を備えた光源装置は、前記照明装置から離れた領域であって前記火気厳禁領域とは隔絶された非火気厳禁領域に配置される。そして、該光源装置から発する光を光ファイバによって前記照明装置に導くため、光源装置で電気火花が発生しても、その火花によって火気厳禁領域における爆発等が生じるおそれはなく、火気厳禁領域に配置されている照明装置から光ファイバを通した光を被照明空間領域に照射できる安全な照明システムを構築することができる。
【0013】
また、前記光ファイバは複数本の裸光ファイバが束ねられている態様と成しており、その束状の裸光ファイバの光導入側に前記光源装置から発する光が導入されて前記照明装置まで導かれる。そのため、光源装置から多くの光量の光を光ファイバに通して良好な状態で導くことができる。
【0014】
さらに、前記裸光ファイバは、その出射端側においては、前記裸光ファイバの束が複数の裸光ファイバの束に小分けされた小束状態と成して小束同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているか、裸光ファイバ1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ同士が互いに間隔を介して前記照明装置内に配置されているかのいずれかの態様と成している。
【0015】
そして、前記光源装置の駆動によって発せられて前記光ファイバを伝送した光が、前記小束毎に互いに間隔を介して配置された前記裸光ファイバの光出射端または、個々の裸光ファイバ毎に互いに間隔を介して配置された前記裸光ファイバの光出射端から出射される。その各裸光ファイバの光出射側から出射される光は、前記照明装置を通して該照明装置に設けられている光拡散部材によって拡散され、前記火気厳禁領域の被照明空間領域に照射されるため、被照明空間領域を広範囲に明るく照らすことができ、効率の高い照明が行える優れた防爆照明システムを構築できる。
【0016】
つまり、光ファイバは、その入射側では光源装置からの光を効率的に入射でき、出射側ではその光を広い範囲に向けて良好に照射できるものであり、本発明の防爆照明システムは、簡単な構成で、安全に、かつ、良好に、火気厳禁領域の被照明空間領域を広範囲に照らすことができる優れた防爆照明システムを構築することができる。
【0017】
なお、光源装置を、照明装置から離れた領域であって前記火気厳禁領域とは隔絶された非火気厳禁領域に光源装置が配置される代わりに、前記照明装置から離れた領域ではあるが該照明装置の配置領域と連通する火気厳禁領域に配置する構成とした場合、火気厳禁領域に配置した光源装置から外部に電気火花が漏れてしまうと、引火が生じて爆発等の危険が生じることになるが、前記光源装置該光源装置外部に電気火花を漏らさない防爆構成を有するものとすれば、その心配はない。
【0018】
また、従来のように光源内蔵の照明装置を防爆にするためには、前記の如く、重量が重くなってしまって、持ち運び等が困難となり、照明装置の取り付け部にも強度が必要となり、運搬コストや取り付けコスト、取り付け状態を維持するコスト等が高くなってしまうといった問題が生じたり、光照射にムラが生じたり、光透過率の低下が生じたりするが、システム全体を防爆構成とするのではなく、光源装置を防爆構成を有するものとすればよいため、光ファイバを通した光の被照明空間領域への照射によって、前記のような問題のない、安価で安全で良好な照明を行える照明システムを構築することができる。
【0019】
なお、このような構成は、例えば洞道等において適用されるが、このような洞道等において、光源装置側を防爆構成として、安価な構成で、安全に良好に照明が行えるのは非常にメリットがある。つまり、例えば長い道の複数箇所に互いに間隔を介して照明装置を配置し、光源装置側で束ねられている裸光ファイバをそれぞれの照明装置毎の束に分けて対応する照明装置のそれぞれに導くことにより、洞道の道全体あるいは道における適宜の範囲の空間領域を安全に良好に照明でき、作業性を向上できる。
【0020】
また、複数箇所に互いに間隔を介して照明装置を配置し、光源装置側で束ねられている裸光ファイバをそれぞれの照明装置毎の束に分けて対応する照明装置のそれぞれに導く構成は、光源装置を、照明装置が配置されている火気厳禁領域とは隔絶された非火気厳禁領域に配置するシステムにおいても有効である。つまり、このように構成すると、火気厳禁領域の複数箇所の照明を、その箇所に配置される照明装置によって行えるので、照明装置配置箇所の自由度を向上でき、効率的に照明を行うことができる優れた防爆照明システムを構築できる。
【0021】
さらに、小束毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバの光出射端側の前記間隔または、個々の裸光ファイバ毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバの光出射端側の前記間隔に樹脂を設け、該樹脂によって前記裸光ファイバの出射端側を固定することにより、光ファイバの出射側において裸光ファイバを適切に固定でき、照明装置の信頼性を高めることができる。
【0022】
さらに、光ファイバの裸光ファイバは、光ファイバの入射側においては束ねて集合一体化され、光ファイバの出射側においては裸光ファイバの出射端部が帯状の被覆材を介して互いに間隔を介して配置されて形成された裸光ファイバ保持部材が渦巻き状に配設されることにより、光ファイバの出射側においては1本ずつに分けられた裸光ファイバまたは前記小束状態の裸光ファイバが互いに間隔を介して配列固定されている裸光ファイバが互いに間隔を介して配列固定される構成とすると、光ファイバの出射側において、非常に簡単に、かつ、適切な間隔で良好に裸光ファイバを配置固定でき、照明装置の信頼性を高めることができる。
【0023】
さらに、前記照明装置と光源装置との間の光ファイバの長さを可変可能とする光ファイバ長さ可変調整部位を設けると、例えば照明装置を必要に応じて移動させたり、移動した位置で固定したりといったようにでき、照明装置の適切な配置や作業性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る防爆照明システムの一実施例を示す模式的な縦断面説明図である。
図2】実施例の防爆照明システムに適用されている光ファイバの模式的な横断面説明図である。
図3】実施例の防爆照明システムに適用される光ファイバ長さ可変調整部位の例(a)と、光ファイバ長さ可変調整部位の他の例(b)を示す説明図である。
図4】実施例の防爆照明システムに適用されている光ファイバの入射端側と出射端側との構成の違いを説明するための模式的な横断面説明図である。
図5】本発明に係る防爆照明システムの他の実施例を示す模式的な縦断面説明図である。
図6】本発明に係る防爆照明システムのさらに他の実施例に適用される光ファイバ構成を説明するための示す模式的な説明図である。
図7】本発明に係る防爆照明システムの参考例を示す模式的な説明図である。
図8】本発明に係る防爆照明システムの参考例における光出射端側の態様を示す模式的な縦断面説明図(a)、(b)と、横断面説明図(c)、さらに別の実施例における光出射端側の態様を示す模式的な横断面説明図(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【実施例】
【0026】
図1には、本発明に係る防爆照明システムの一実施例が模式的な断面図に示されている。同図に示されるように、本実施例の防爆照明システムは、火気厳禁領域1に配置される照明装置2と、該照明装置2から離れた領域であって火気厳禁領域1とは隔絶された非火気厳禁領域3に配置される光源装置4と、該光源装置4から発する光を照明装置1に導く光ファイバ5とを有している。
【0027】
光源装置4は、交流電源から供給される交流電流を直流電流に変換するAC/DC定電流電源17と、電源からの供給電力により光を発する発光ダイオード(LED)を複数備えた光源6を有しており、本実施例において、光源6は、基板上に複数の発光ダイオードを配設して成るチップオンボードにより形成されている。光源6はAC/DC定電流電源17からの直流電流によって光を発するものであり、例えば10Wの出力を有している。光源6は、放物線の反射鏡7を介してヒートシンク8に固定されており、ヒートシンク8がLEDによって生じる熱を放熱(冷却)することにより、常に効率良く発光できる構成を有している。
【0028】
また、光源6は反射鏡7の中心に配置されており、反射鏡7の光出射側には凸レンズ9が設けられている。このような構成によって、光源6からの出射光はほぼコリメート状態とされたコリメート光と成し、集光用の凸レンズ10に導入され、凸レンズ10によって集光されて光ファイバ5の光入射側に導入される。なお、光源6の光を効率的に光ファイバ5に入射するために反射鏡7を設けることが好ましいが、場合によっては反射鏡7は省略することもできる。
【0029】
光ファイバ5は複数本の裸光ファイバを束ねたバンドルファイバにより形成されている。具体的には、例えば直径0.75mmのマルチモードファイバのプラスチックファイバ(裸光ファイバ)11が50本束ねられて互いに密着して直径約6mmと成し、裸光ファイバ11の外側を熱収縮チューブ12により被覆して形成されている。各裸光ファイバ11は、もともと断面が真円形状に形成されているが、束ねられて密着し凝集圧縮されることによって、図2の模式的な断面図に示されるように、断面略六角形状に形成されている。なお、図2は、図を分かりやすくするために裸光ファイバ11の本数を50本よりも少なく記載している。
【0030】
光ファイバ5および各裸光ファイバ11の端面は整えられており、前記光源装置4の凸レンズ10によって集光された光が光ファイバ5の光入射側に効率的に導入され、照明装置2まで導かれる構成と成している。なお、本実施例においては、照明装置2と光源装置4との間に、光ファイバ5の長さを可変可能とする光ファイバ長さ可変調整部位13が設けられている。この光ファイバ長さ可変調整部位13は、例えば図3(a)に示されるように、光ファイバ5をコイル状に巻回して形成されており、その巻回領域の両側には、光コネクタ部14,15が設けられている。例えば巻回領域の長さ(カール長)は50cm程度、径(カール径)は13〜20mm程度に形成される。
【0031】
また、光ファイバ5を形成する裸光ファイバ11の束は、光出射側においては(照明装置2内において)1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されている。例えば図4(a)、(b)には、光ファイバ5の構成を説明するための、光ファイバ5の入射端側と出射端側の横断面構成がそれぞれ示されている。例えば光ファイバ5は、入射端側において図4(a)に示されるように裸光ファイバ11が互いに密着して束ねられている状態であるが、光ファイバ5の出射側においては、図4(b)に示されるように、裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して配設され、裸光ファイバ11の間隔には例えば樹脂16が充填されて裸光ファイバ11同士が固定されている。
【0032】
なお、図4(a)、(b)においては、説明を分かりやすくするために3本の裸光ファイバ11が示されているが、実際には、前記の如く、本実施例において50本のプラスチック製の裸光ファイバ11が束ねられてバンドルファイバの光ファイバ5が形成されており、それらの裸光ファイバ11同士が、光ファイバ5の光出射側を除き、密着させられているか凝集圧縮され断面略六角形状に形成されて(図2、参照)設けられているかのいずれかの態様をとる。また、50本の裸光ファイバ11は、光出射端側では例えば図4(c)に示されるように互いに間隔を介して配置されている。
【0033】
そして、前記光源装置4の駆動によって発せられて光ファイバ5を伝送した光は、個々の裸光ファイバ11毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバ11の光出射端から出射され、図1に示されるように照明装置2を通して前記火気厳禁領域1の被照明空間領域に照射される。なお、被照明空間領域とは、例えばロボットや作業者によって作業が行われる空間領域である。照明装置2は、直径約30mmのアクリル球18と光ファイバ保持部19とを有しており、光ファイバ保持部19に保持されてアクリル球18の中心部に光ファイバ5の出射端が配置されている。
【0034】
アクリル球18は例えば薄い硝子板によって形成されて表面が擦りガラス状に形成され、この擦りガラス状の表面が、光ファイバ5の光出射側から出射される光を拡散させる光拡散部材と成している。このことによって、照明装置2は、光ファイバ5から出射される光を周囲に散乱する効果を有し、光ファイバ5から出射された光が火気厳禁領域1の被照明空間領域において広範囲に照射される。
【0035】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な態様を採り得る。例えば照明装置2の形状や大きさ、形態は特に限定されるものでなく適宜設定されるものであり、前記実施例におけるアクリル球18の代わりに、ポリカーボネート球としてもよいし、図5(a)に示されるように、光出射端が平面状の薄い板状の照明カバー20を有する構成としてもよい。この場合も、照明カバー20の材質は特に限定されるものでなく適宜設定されるものであるが、照明カバー20の側壁がわには光を内側に反射する光反射材21を設け、光の出射端側には光を拡散させる光拡散部材22を設けるとよい。
【0036】
また、照明装置2の形状は、図5(b)に示されるような形状としてもよく、この例では、照明カバー20の内側に光拡散部材22を設けている。
【0037】
さらに、光ファイバ5を形成する裸光ファイバ11の本数や長さ、材質等は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。例えば図5(b)に示される防爆照明システムは、光ファイバ5を形成する裸光ファイバ11の本数を少なめとしている。なお、このように裸光ファイバ11の本数が少ない場合には、光源装置4に設ける光源6を前記実施例のようにチップオンボードにより形成せずに単独のLED光源としてもよい。また、光源装置4に設ける光源6は、LEDを二次元アレイ状に配設した二次元アレイ面光レーザにより形成することもできる。さらに、光源6はレーザダイオードや、レーザダイオードを複数配設したものにより形成することもできる。
【0038】
また、裸光ファイバ11をプラスチック製にする代わりに、石英ファイバ、シリケイト系ファイバ、フッ化物系ファイバ等の他の材質のファイバにより形成することもできる。さらに、光ファイバ5は、光コネクタを介して複数のバンドルファイバを長手方向に接続して形成してもよい。
【0039】
さらに、光ファイバ長さ可変調整部位13の構成は、特に限定されるものでなく適宜設定されるものであり、例えば図3(b)に示されるように、形態レール23にケーブルハンガー24を介して光ファイバ5を螺旋状に設け、図の矢印に示されるように、ケーブルハンガー24の位置を適宜ずらせる構成と成してもよい。この場合、例えばケーブルハンガー24の間隔を広げれば光ファイバ5の長さを長く(光源装置4と照明装置2との間隔を広く)できるし、ケーブルハンガー24の間隔を狭くすれば光ファイバ5の長さを短くできる。一例として、例えば間隔Sは1.5〜2m程度まで広げる領域を形成することができるし、長さHは1m程度にすることができる。また、光ファイバ長さ可変調整部位13の構成は滑車等を用いて光ファイバ5の長さを可変できるものとしてもよい。
【0040】
さらに、図6には光ファイバ5の他の実施例における出射端側の構成を説明するための図が示されており、光ファイバ5は、この例に示されるような態様にすることもできる。つまり、この例は、図6(b)〜(d)に示されるような構成の帯状保持部材26を形成して、その帯状保持部材26を図6(a)に示されるように渦巻き状に配設するものであり、例えば図6(b)の横断面図および図6(c)の縦断面図に示されるように、バンドルファイバの光ファイバ5の出射側において、裸光ファイバ11の出射端部が例えば伸縮性を有する帯状のフィルムにより形成された被覆材25を介して互いに間隔を介して配置された帯状保持部材26を形成する。
【0041】
そして、その帯状保持部材26を図6(a)に示されるように渦巻き状に配設し、被覆材25同士が接するように帯状保持部材26をしっかりと巻くことによって(図6(a)の矢印、参照)、光ファイバ5の出射側においては裸光ファイバ11が互いに間隔を介して配置されているように形成する。なお、光ファイバ5は、その入射側においては、前記実施例と同様に束ねて集合一体化されるようにする。
【0042】
光ファイバ5をこのような態様とする場合には、被覆材25(帯状のフィルム)の厚さa、bおよび裸光ファイバ11同士の間隔c、d、e等を適宜の大きさに形成することにより、裸光ファイバ11の配置構成を自由に、かつ、効率的に設定することができる。なお、帯状保持部材26を形成する際、図6(b)に示されるように被覆材25同士で挟んだ状態としてもよいし、図6(d)に示されるように、被覆材25に裸光ファイバ11を埋め込み配置してもよい。
【0043】
さらに、本発明の防爆照明システムの参考例として、例えば図7に示されるように、光源装置4を、照明装置2から離れた領域ではあるが照明装置2の配置領域と連通する火気厳禁領域1に配置し、光源装置4を光源装置4の外部に電気火花を漏らさない防爆構成を有する構成を挙げることができる。このようなシステムは、例えば火気厳禁領域1としての洞道30に設けられるものであり、光源装置4と照明装置2とを、光ファイバ5を介して洞道30に配置し、かつ、光源装置4側で束ねられている裸光ファイバ11をそれぞれの照明装置2毎の束に分けて対応する照明装置2のそれぞれに導くようにするとよい。
【0044】
つまり、この構成においては、火気厳禁領域に配置される従来の照明装置のように、防爆のための耐圧、強度を有する構成を照明装置2に設けなくとも、もともと照明装置2は光ファイバ5の出射端側から光を出射して照射する構成であることから、たとえ可燃性ガスが空間(洞道30)内にあったとしても爆発の危険はなく、光源装置4のみを防爆構成にすればよいためにコスト削減が可能であり、かつ、安全である。また、洞道30のような長い距離において互いに間隔を介して照明装置2を設けることにより洞道30内の作業性を良好にできる効率的で優れたシステムを構築できる。
【0045】
なお、光源装置4側で束ねられている裸光ファイバ11を複数のそれぞれの照明装置2毎の束に分けて対応する照明装置2のそれぞれに導く構成は、前記実施例のように照明装置2を火気厳禁領域1に設けて光源装置4は非火気厳禁領域3に設けるシステムに適用することもできる。この場合、複数の照明装置2によって効率的に被照明空間領域を照らすことができるものであり、例えば火気厳禁領域1(例えば作業室)が複数箇所ある場合に、それぞれの火気厳禁領域1に1つ以上の照明装置2を配置し、1つの光源装置4からの光を複数箇所の火気厳禁領域1(例えば火気厳禁が要求される複数の作業室)や、例えば火気厳禁作業室といった火気厳禁領域1内における複数箇所に照明装置2を配置し、それぞれの照明装置2に光を導いて照明することもできる。
【0046】
さらに、前記実施例では、光ファイバ5の出射端側において、裸光ファイバ11が1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されていたが、光ファイバ5の出射端側において、例えば図8(d)に示されるように、複数に小分けされた小束状態と成して小束27同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されていてもよい。その場合、例えば小束27毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバ11の光出射端側の前記間隔に樹脂16を設け、該樹脂16によって裸光ファイバ11を固定するとよい。
【0047】
さらに、前記実施例では、光ファイバ5の出射端側において、裸光ファイバ11が1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されていたが、参考例として、例えば図8(a)、(b)、(c)にそれぞれ示されるように、光ファイバ5の出射端側においても光ファイバ5の入射端側と同様に、裸光ファイバ11同士が束ねられて互いに密着した状態のものが示されている。このような場合でも、照明装置2において光拡散部材22を設けると光が拡散されて被照明空間領域を広範囲に照らすことができる。なお、図の簡略化のために、図8(a)、(b)は、光ファイバ保持部19等を省略して示しており、図8(c)および前記図8(d)は、実際には密着状態の裸光ファイバ11が互いに少しの間隔を介して配置されているように示している。
【0048】
また、図8(c)は図8(b)のA−A’断面を示しているが、図1に示したような前記実施例や、図5に示したような例においても、照明装置2内で光ファイバ5の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して配設されるようにする代わりに、図8(b)のA−A’で示す部分において(つまり、光ファイバ5の途中部において)裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して配設されるようにしてもよい。
【0049】
さらに、前記実施例では、各裸光ファイバ11は、凝集圧縮されて断面略六角形状に形成されていたが、束ねられていれば断面略六角形状に形成されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の防爆照明システムは、簡単な構成で、火気厳禁領域の被照明空間領域を照らして作業等を行いやすくすることができる照明システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 火気厳禁領域
2 照明装置
3 非火気厳禁領域
4 光源装置
5 光ファイバ
6 光源
7 反射鏡
8 ヒートシンク
9,10 凸レンズ
11 裸光ファイバ
12,25 被覆材
13 光ファイバ長さ調整部位
18 アクリル球
26 帯状保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8