【実施例】
【0026】
図1には、本発明に係る防爆照明システムの一実施例が模式的な断面図に示されている。同図に示されるように、本実施例の防爆照明システムは、火気厳禁領域1に配置される照明装置2と、該照明装置2から離れた領域であって火気厳禁領域1とは隔絶された非火気厳禁領域3に配置される光源装置4と、該光源装置4から発する光を照明装置1に導く光ファイバ5とを有している。
【0027】
光源装置4は、交流電源から供給される交流電流を直流電流に変換するAC/DC定電流電源17と、電源からの供給電力により光を発する発光ダイオード(LED)を複数備えた光源6を有しており、本実施例において、光源6は、基板上に複数の発光ダイオードを配設して成るチップオンボードにより形成されている。光源6はAC/DC定電流電源17からの直流電流によって光を発するものであり、例えば10Wの出力を有している。光源6は、放物線
状の反射鏡7を介してヒートシンク8に固定されており、ヒートシンク8がLEDによって生じる熱を放熱(冷却)することにより、常に効率良く発光できる構成を有している。
【0028】
また、光源6は反射鏡7の中心に配置されており、反射鏡7の光出射側には凸レンズ9が設けられている。このような構成によって、光源6からの出射光はほぼコリメート状態とされたコリメート光と成し、集光用の凸レンズ10に導入され、凸レンズ10によって集光されて光ファイバ5の光入射側に導入される。なお、光源6の光を効率的に光ファイバ5に入射するために反射鏡7を設けることが好ましいが、場合によっては反射鏡7は省略することもできる。
【0029】
光ファイバ5は複数本の裸光ファイバを束ねたバンドルファイバにより形成されている。具体的には、例えば直径0.75mmのマルチモードファイバのプラスチックファイバ(裸光ファイバ)11が50本束ねられて互いに密着して直径約6mmと成し、裸光ファイバ11の外側を熱収縮チューブ12により被覆して形成されている。各裸光ファイバ11は、もともと断面が真円形状に形成されているが、束ねられて密着し凝集圧縮されることによって、
図2の模式的な断面図に示されるように、断面略六角形状に形成されている。なお、
図2は、図を分かりやすくするために裸光ファイバ11の本数を50本よりも少なく記載している。
【0030】
光ファイバ5および各裸光ファイバ11の端面は整えられており、前記光源装置4の凸レンズ10によって集光された光が光ファイバ5の光入射側に効率的に導入され、照明装置2まで導かれる構成と成している。なお、本実施例においては、照明装置2と光源装置4との間に、光ファイバ5の長さを可変可能とする光ファイバ長さ可変調整部位13が設けられている。この光ファイバ長さ可変調整部位13は、例えば
図3(a)に示されるように、光ファイバ5をコイル状に巻回して形成されており、その巻回領域の両
端側には、光コネクタ部14,15が設けられている。例えば巻回領域の長さ(カール長)は50cm程度、径(カール径)は13〜20mm程度に形成される。
【0031】
また、光ファイバ5を形成する裸光ファイバ11の束は、光出射側においては(照明装置2内において)1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されている。例えば
図4(a)、(b)には、光ファイバ5の構成を説明するための、光ファイバ5の入射端側と出射端側の横断面構成がそれぞれ示されている。例えば光ファイバ5は、入射端側において
図4(a)に示されるように裸光ファイバ11が互いに密着して束ねられている状態であるが、光ファイバ5の出射側においては、
図4(b)に示されるように、裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して配設され、裸光ファイバ11の間隔には例えば樹脂16が充填されて裸光ファイバ11同士が固定されている。
【0032】
なお、
図4(a)、(b)においては、説明を分かりやすくするために3本の裸光ファイバ11が示されているが、実際には、前記の如く、本実施例において50本のプラスチック製の裸光ファイバ11が束ねられてバンドルファイバの光ファイバ5が形成されており、それらの裸光ファイバ11同士が、光ファイバ5の光出射側を除き、密着させられているか凝集圧縮され断面略六角形状に形成されて(
図2、参照)設けられているかのいずれかの態様をとる。また、50本の裸光ファイバ11は、光出射端側では例えば
図4(c)に示されるように互いに間隔を介して配置されている。
【0033】
そして、前記光源装置4の駆動によって発せられて光ファイバ5を伝送した光は、個々の裸光ファイバ11毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバ11の光出射端から出射され、
図1に示されるように照明装置2を通して前記火気厳禁領域1の被照明空間領域に照射される。なお、被照明空間領域とは、例えばロボットや作業者によって作業が行われる空間領域である。照明装置2は、直径約30mmのアクリル球18と光ファイバ保持部19とを有しており、光ファイバ保持部19に保持されてアクリル球18の中心部に光ファイバ5の出射端が配置されている。
【0034】
アクリル球18は例えば薄い硝子板によって形成されて表面が擦りガラス状に形成され、この擦りガラス状の表面が、光ファイバ5の光出射側から出射される光を拡散させる光拡散部材と成している。このことによって、照明装置2は、光ファイバ5から出射される光を周囲に散乱する効果を有し、光ファイバ5から出射された光が火気厳禁領域1の被照明空間領域において広範囲に照射される。
【0035】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な態様を採り得る。例えば照明装置2の形状や大きさ、形態は特に限定されるものでなく適宜設定されるものであり、前記実施例におけるアクリル球18の代わりに、ポリカーボネート球としてもよいし、
図5(a)に示されるように、光出射端が平面状の薄い板状の照明カバー20を有する構成としてもよい。この場合も、照明カバー20の材質は特に限定されるものでなく適宜設定されるものであるが、照明カバー20の側壁がわには光を内側に反射する光反射材21を設け、光の出射端側には光を拡散させる光拡散部材22を設けるとよい。
【0036】
また、照明装置2の形状は、
図5(b)に示されるような形状としてもよく、この例では、照明カバー20の内側に光拡散部材22を設けている。
【0037】
さらに、光ファイバ5を形成する裸光ファイバ11の本数や長さ、材質等は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものである。例えば
図5(b)に示される防爆照明システムは、光ファイバ5を形成する裸光ファイバ11の本数を少なめとしている。なお、このように裸光ファイバ11の本数が少ない場合には、光源装置4に設ける光源6を前記実施例のようにチップオンボードにより形成せずに単独のLED光源としてもよい。また、光源装置4に設ける光源6は、LEDを二次元アレイ状に配設した二次元アレイ面光レーザにより形成することもできる。さらに、光源6はレーザダイオードや、レーザダイオードを複数配設したものにより形成することもできる。
【0038】
また、裸光ファイバ11をプラスチック製にする代わりに、石英ファイバ、シリケイト系ファイバ、フッ化物系ファイバ等の他の材質のファイバにより形成することもできる。さらに、光ファイバ5は、光コネクタを介して複数のバンドルファイバを長手方向に接続して形成してもよい。
【0039】
さらに、光ファイバ長さ可変調整部位13の構成は、特に限定されるものでなく適宜設定されるものであり、例えば
図3(b)に示されるように、形態レール23にケーブルハンガー24を介して光ファイバ5を螺旋状に設け、図の矢印に示されるように、ケーブルハンガー24の位置を適宜ずらせる構成と成してもよい。この場合、例えばケーブルハンガー24の間隔を広げれば光ファイバ5の長さを長く(光源装置4と照明装置2との間隔を広く)できるし、ケーブルハンガー24の間隔を狭くすれば光ファイバ5の長さを短くできる。一例として、例えば間隔Sは1.5〜2m程度まで広げる領域を形成することができるし、長さHは1m程度にすることができる。また、光ファイバ長さ可変調整部位13の構成は滑車等を用いて光ファイバ5の長さを可変できるものとしてもよい。
【0040】
さらに、
図6には光ファイバ5の他の実施例における出射端側の構成を説明するための図が示されており、光ファイバ5は、この例に示されるような態様にすることもできる。つまり、この例は、
図6(b)〜(d)に示されるような構成の帯状保持部材26を形成して、その帯状保持部材26を
図6(a)に示されるように渦巻き状に配設するものであり、例えば
図6(b)の横断面図および
図6(c)の縦断面図に示されるように、バンドルファイバの光ファイバ5の出射側において、裸光ファイバ11の出射端部が例えば伸縮性を有する帯状のフィルムにより形成された被覆材25を介して互いに間隔を介して配置された帯状保持部材26を形成する。
【0041】
そして、その帯状保持部材26を
図6(a)に示されるように渦巻き状に配設し、被覆材25同士が接するように帯状保持部材26をしっかりと巻くことによって(
図6(a)の矢印、参照)、光ファイバ5の出射側においては裸光ファイバ11が互いに間隔を介して配置されているように形成する。なお、光ファイバ5は、その入射側においては、前記実施例と同様に束ねて集合一体化されるようにする。
【0042】
光ファイバ5をこのような態様とする場合には、被覆材25(帯状のフィルム)の厚さa、bおよび裸光ファイバ11同士の間隔c、d、e等を適宜の大きさに形成することにより、裸光ファイバ11の配置構成を自由に、かつ、効率的に設定することができる。なお、帯状保持部材26を形成する際、
図6(b)に示されるように被覆材25同士で挟んだ状態としてもよいし、
図6(d)に示されるように、被覆材25に裸光ファイバ11を埋め込み配置してもよい。
【0043】
さらに、本発明の防爆照明システム
の参考例として、例えば
図7に示されるように、光源装置4を、照明装置2から離れた領域ではあるが照明装置2の配置領域と連通する火気厳禁領域1に配置し、光源装置4を光源装置4の外部に電気火花を漏らさない防爆構成を有する構成
を挙げることができる。このようなシステムは、例えば火気厳禁領域1としての洞道30に設けられるものであり、光源装置4と照明装置2とを、光ファイバ5を介して洞道30に配置し、かつ、光源装置4側で束ねられている裸光ファイバ11をそれぞれの照明装置2毎の束に分けて対応する照明装置2のそれぞれに導くようにするとよい。
【0044】
つまり、この構成においては、火気厳禁領域に配置される従来の照明装置のように、防爆のための耐圧、強度を有する構成を照明装置2に設けなくとも、もともと照明装置2は光ファイバ5の出射端側から光を出射して照射する構成であることから、たとえ可燃性ガスが空間(洞道30)内にあったとしても爆発の危険はなく、光源装置4のみを防爆構成にすればよいためにコスト削減が可能であり、かつ、安全である。また、洞道30のような長い距離において互いに間隔を介して照明装置2を設けることにより洞道30内の作業性を良好にできる効率的で優れたシステムを構築できる。
【0045】
なお、光源装置4側で束ねられている裸光ファイバ11を複数のそれぞれの照明装置2毎の束に分けて対応する照明装置2のそれぞれに導く構成は、前記実施例のように照明装置2を火気厳禁領域1に設けて光源装置4は非火気厳禁領域3に設けるシステムに適用することもできる。この場合、複数の照明装置2によって効率的に被照明空間領域を照らすことができるものであり、例えば火気厳禁領域1(例えば作業室)が複数箇所ある場合に、それぞれの火気厳禁領域1に1つ以上の照明装置2を配置し、1つの光源装置4からの光を複数箇所の火気厳禁領域1(例えば火気厳禁が要求される複数の作業室)や、例えば火気厳禁作業室といった火気厳禁領域1内における複数箇所に照明装置2を配置し、それぞれの照明装置2に光を導いて照明することもできる。
【0046】
さらに、前記実施例では、光ファイバ5の出射端側において、裸光ファイバ11が1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されていたが、光ファイバ5の出射端側において、例えば
図8(d)に示されるように、複数に小分けされた小束状態と成して小束27同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されていてもよい。その場合、例えば小束27毎に互いに間隔を介して配置された裸光ファイバ11の光出射端側の前記間隔に樹脂16を設け、該樹脂16によって裸光ファイバ11を固定するとよい。
【0047】
さらに、前記実施例では、光ファイバ5の出射端側において、裸光ファイバ11が1本ずつに分けられた状態と成して個々の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して照明装置2内に配置されていたが、
参考例として、例えば
図8(a)、(b)、(c)にそれぞれ示されるように、光ファイバ5の出射端側においても光ファイバ5の入射端側と同様に、裸光ファイバ11同士が束ねられて互いに密着した状態
のものが示されている。このような場合でも、照明装置2
において光拡散部材22
を設けると光が拡散されて被照明空間領域を広範囲に照らすことができる。なお、図の簡略化のために、
図8(a)、(b)は、光ファイバ保持部19等を省略して示しており、
図8(c)および前記
図8(d)は、実際には密着状態の裸光ファイバ11が互いに少しの間隔を介して配置されているように示している。
【0048】
また、
図8(c)は
図8(b)のA−A’断面を示しているが、
図1に示したような前記実施例や、
図5に示したような例においても、照明装置2内で光ファイバ5の裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して配設されるようにする代わりに、
図8(b)のA−A’で示す部分において(つまり、光ファイバ5の途中部において)裸光ファイバ11同士が互いに間隔を介して配設されるようにしてもよい。
【0049】
さらに、前記実施例では、各裸光ファイバ11は、凝集圧縮されて断面略六角形状に形成されていたが、束ねられていれば断面略六角形状に形成されていなくてもよい。