特許第6544597号(P6544597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544597
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】ロータリーキルン式ガス化炉
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/72 20060101AFI20190705BHJP
   F27B 7/16 20060101ALI20190705BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20190705BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   C10J3/72 J
   C10J3/72 E
   C10J3/72 G
   F27B7/16
   F27D7/02 A
   F27D17/00 101D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-31054(P2017-31054)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-135451(P2018-135451A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年3月13日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】716003043
【氏名又は名称】環境・エネルギーR&D合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】717001134
【氏名又は名称】阿部 隆一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆一
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−111511(JP,A)
【文献】 特開2008−122043(JP,A)
【文献】 特開2007−000780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
F27B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物、例えばバイオマスをガス化処理するロータリーキルンの固気反応は、前段ゾーンの主反応が予熱乾燥、中段ゾーンの主反応が部分燃焼及びその発熱による熱分解、後段ゾーンの主反応が水性ガス反応及びシフト反応であり、各ゾーンは重複しつつ反応が進み、その固気反応効率を大きくする手段として、各ゾーンにレデューサー型短管パイプリフター9a、または中立型パイプリフター9b、または短管パイプリフター9cを設置する構成要素と、
及び、パイプリフター掻き込みの処理物層厚を増加する手段として、逆螺旋型パイプリフター9dを逆螺旋で設置し、パイプリフター外部突出部により逆移送するか、またはパイプリフターの間隙に単一、若しくは複数の逆送シュート10を、処理物がパイプリフター掻き込み部の上流側へ逆送りされるように逆螺旋で設け、その逆送シュート10内部および外面の逆移送効果によって逆移送するか、またはロータリーキルン軸方向とパイプリフター軸方向がなす角度が、処理物の安息角以下で配置された横型パイプリフター9eによりパイプリフター開口20前面に処理物を掻き寄せることにより処理物層厚を増加する構成要素と、
及び、パイプリフター及び逆送シュートは外面の一部を、ロータリーキルンの内壁耐火物と連結せずに、ロータリーキルンの内壁耐火物に接触または埋め込み、その他の一部はロータリーキルン内部に突出するように設置し、その支持はロータリーキルン外殻の鋼構造に固定する構成要素により、掬い上げられた処理物のロータリーキルン内部への分散効率を高め、ロータリーキルン内での固気反応効率を大きくすることを特徴とするロータリーキルン式ガス化炉。
【請求項2】
パイプリフターまたは逆送シュート10の回転軌跡円筒の内径に対して、ロータリーキルンの排出部内径が小さくなるように、堰を設け、その堰には、排出を抑制するように、逆螺旋方向に傾斜した貫通路または開渠を設けることを特徴とする請求項1記載のロータリーキルン式ガス化炉。
【請求項3】
パイプリフターまたは逆送シュートに羽根21a、または21bを設け、掻き上げ能力の向上、または逆送能力の向上を図り、パイプリフターの設置数量を削減しても、ロータリーキルン内での固気反応効率を大きくすることを特徴とする請求項1または2記載のロータリーキルン式ガス化炉。
【請求項4】
ロータリーキルン出口に配置する2次均質炉15の下部沈降残渣の一部を空気遮断しつつ抜き出し、ロータリーキルン入口に配置する投入ホッパ1に循環し、未反応炭素のガス化率をさらに向上することを特徴とする請求項1、2、または3記載のロータリーキルン式ガス化炉。
【請求項5】
ロータリーキルン炉内の固気反応用の熱源として、処理物の部分燃焼熱を用い、その燃焼用支燃ガスに、ロータリーキルン発生ガスの廃熱との熱交換により得られた過熱水蒸気に酸素を添加した、水蒸気と酸素を主成分にする混合ガスを用いることを特徴とする請求項1、2、3、または4記載のロータリーキルン式ガス化炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理物、例えばバイオマスをガス化処理するロータリーキルンに関する。
代表的な処理対象物にバイオマス、石炭、粉炭、熱可塑性樹脂類があげられるが、社会に一般的に存在する燃料比が小さい可燃性物質についても、水分を多く含むことなどにより発熱量の面から低質な可燃物質についても適用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、生成する物質の燃料比すなわち固定炭素の揮発分に対する比が大きい処理物、例えば代表的にはバイオマスがあり、それら処理物をガス化処理する形式として、
(1)シャフト炉内に部分燃焼用支燃ガスを上昇流または下降流で吹き込み、部分燃焼熱により、シャフト炉内の処理物を熱分解ガス化する形式があり、
(2)「特許文献2」廃棄物処理方法及び装置、
【特許文献3】バイオマスガス化システム、
【特許文献4】炭化炉による熱併給給電、
【特許文献5】バイオマスのガス化方法にあるように、間接加熱並流ロータリーキルンを用いる形式があり、およびバイオマス以外の有機物を揮散、または熱分解させる形式として、(3)
【特許文献1】ロータリーキルン式材料加熱乾燥装置にあるように、高温の処理残渣をロータリーキルンの内部または外部に設けたリサイクル螺旋シュートで、原料投入側に循環させ、材料を加熱乾燥する形式や、
【非特許文献1】Symposium Director Howard H.Elliott「SYNTHETIC FUELS FROM OIL SHALE AND TAR SANDS」SYMPOSIUM PAPERS Presented May 17-19,1983 Louisville,Kentucky、1983年5月17日発行、p.473〜488にあるように、高温の処理残渣をロータリーキルンの内部に設けたリサイクル螺旋シュートで、原料投入側に循環させる、オイルシェールの乾留炉として採用された形式や、
【非特許文献2】Environmental Services & Regulation、「Environmental Review of QER Pty Ltd's Oil Shale Technology Demonstration Plant,Gladstone, Queensland」The State of Queensland (Department of Environment and Heritage Protection)、2013年2月発行、p.7〜10にあるように、高温の処理残渣をロータリーキルンの外部に設けたリサイクル螺旋シュートで、原料投入側に循環させる、オイルシェールの乾留炉として採用された形式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5599015号公報 ロータリーキルン式材料加熱乾燥装置
【特許文献2】特許第4154029号公報 廃棄物処理方法及び装置
【特許文献3】特許第4312632号公報 バイオマスガス化システム
【特許文献4】特許第4502331号公報 炭化炉による熱併給給電
【特許文献5】特開2005−112956号公報 バイオマスのガス化方法
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Symposium Director Howard H.Elliott「SYNTHETIC FUELS FROM OIL SHALE AND TAR SANDS」SYMPOSIUM PAPERS Presented May 17-19,1983 Louisville,Kentucky、1983年5月17日発行、p.473〜488
【非特許文献2】Environmental Services & Regulation、「Environmental Review of QER Pty Ltd's Oil Shale Technology Demonstration Plant,Gladstone, Queensland」The State of Queensland (Department of Environment and Heritage Protection)、2013年2月発行、p.7〜10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術の(1)はシャフト炉内における通気の均一性が維持できず、スケールアップに限界があり、小型炉に限られ、経済的でない。またシャフト炉内でクラスター状の粗粒子の発生により、棚吊りを起こしやすく、運転が安定しない。(2)は間接加熱方式であるために、運転温度が低く、処理物熱量の生成ガス熱量への転換率が低い。また伝熱効率上、スケールアップ上の制約があり、経済的でない。ロータリーキルンは耐熱鋼板製であるので、寿命が短い。(3)はロータリーキルンが耐熱鋼板製であるために、運転温度が低く、生成する物質の燃料比すなわち固定炭素の揮発分に対する比が大きい処理物、例えばバイオマスのような処理物をガス化処理するために、高温運転が要求される形式には適合しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明によると、
処理物、例えばバイオマスをガス化処理するロータリーキルンの固気反応は、前段ゾーンの主反応が予熱乾燥、中段ゾーンの主反応が部分燃焼及びその発熱による熱分解、後段ゾーンの主反応が水性ガス反応及びシフト反応であり、各ゾーンは重複しつつ反応が進み、その固気反応効率を大きくする手段として、各ゾーンにレデューサー型短管パイプリフター9a、または中立型パイプリフター9b、または短管パイプリフター9cを設置する構成要素と、
及び、パイプリフター掻き込みの処理物層厚を増加する手段として、逆螺旋型パイプリフター9dを逆螺旋で設置し、パイプリフター外部突出部により逆移送するか、またはパイプリフターの間隙に単一、若しくは複数の逆送シュート10を、処理物がパイプリフター掻き込み部の上流側へ逆送りされるように逆螺旋で設け、その逆送シュート10内部および外面の逆移送効果によって逆移送するか、またはロータリーキルン軸方向とパイプリフター軸方向がなす角度が、処理物の安息角以下で配置された横型パイプリフター9eによりパイプリフター開口20前面に処理物を掻き寄せることにより処理物層厚を増加する構成要素と、
及び、パイプリフター及び逆送シュートは外面の一部を、ロータリーキルンの内壁耐火物と連結せずに、ロータリーキルンの内壁耐火物に接触または埋め込み、その他の一部はロータリーキルン内部に突出するように設置し、その支持はロータリーキルン外殻の鋼構造に固定する構成要素により、掬い上げられた処理物のロータリーキルン内部への分散効率を高め、ロータリーキルン内での固気反応効率を大きくすることができる。
【0007】
パイプリフター及び逆送シュート10は耐熱鋼製であり、その支持はロータリーキルン外殻19に固定しており、耐火物とは相互に反発力を及ぼさない。耐火物にはパイプリフターまたは逆送シュート10を半埋込するホールを設けるが、設置間隙にはクッションモルタルまたはウールブランケットを施工する。
従って、耐火物11は通常の高温ロータリーキルンの寿命と変わらない。
パイプリフターまたは逆送シュート10は耐熱上の使用限界で、寿命限度が決定され、例えば、SUS310SやハステロイC276では1000℃でも一定の強度を有し、実用上の使用限界は超高温である。しかも消耗品としての取り換えは容易で、設備全体の稼働率への悪影響は最小限に抑えられる。
【0008】
請求項2記載の本発明によると、パイプリフターまたは逆送シュート10の回転軌跡円筒の内径に対して、ロータリーキルンの排出部内径が小さくなるように、堰を設け、その堰には、排出を抑制するように、逆送シュート10と同じ逆螺旋方向に傾斜した貫通路または開渠を設けている。このためロータリーキルンの排出端において、排出を阻害する堰により、未反応処理物は滞留し、請求項1記載のパイプリフターによるロータリーキルン炉内へのガス中固体分散、または逆送シュート10による逆移送により、処理物の未反応残渣を最小限にできる。堰に設けた貫通路または開渠はロータリーキルンが正回転の時は貫通路または開渠から処理残渣が排出されないが、運転停止時など、ロータリーキルン炉内の残留物を排出するときはロータリーキルンを逆回転すれば、炉内残留物を全て排出できる。
【0009】
請求項3記載の本発明によると、パイプリフターまたは逆送シュートに羽根21a、または21bを設け、掻き上げ能力の向上、または逆送能力の向上を図り、パイプリフターの設置数量を削減しても、ロータリーキルン内での固気反応効率を大きくできる。羽根21aはパイプリフター又は逆送シュートの外表面に設けられた掻き上げリフターであり、パイプリフター内部の掻き上げ量に付加して、掻き上げ量を増量している。羽根21bは螺旋管の外表面に螺旋管に沿って設けられた旋回羽根であり、螺旋羽根全高さを増して、逆送量を増量している。
【0010】
請求項4記載の本発明によると、ロータリーキルン出口に配置する2次均質炉15の下部沈降残渣の一部を空気遮断しつつ抜き出し、ロータリーキルン入口に配置する投入ホッパ1に循環し、未反応炭素のガス化率をさらに向上することができる。ロータリーキルン炉内は高効率なリフター効果により発塵環境にあり、未反応炭素は均質炉15に飛散し、粗粒子の一部は下部に沈降するが、その沈降残渣を外部に抜き出し、投入ホッパに戻せば、ガス化効率を高めることができる。
【0011】
請求項5記載の本発明によると、ロータリーキルン炉内の固気反応用の熱源として、処理物の部分燃焼熱を用い、その燃焼用支燃ガスに過熱水蒸気に酸素を添加した、水蒸気と酸素を主成分にする混合ガスを用いる。
未反応核モデルに支配される固気反応は表層から反応が進み、余熱乾燥、部分燃焼及びその発熱による熱分解、水性ガス反応及びシフト反応と進むが、支燃ガスに窒素を含まなければ、熱精算上、反応はより速く進む。そして水蒸気分圧は水性ガス反応およびシフト反応を進める上で、温度条件とともに重要である。請求項1、2、3、または4記載の発明は支燃ガスの主成分を水蒸気と酸素にすることで、固体原料のガス化効率が増加するとともに、その発生ガス品位が向上する。なお酸素は空気から、通常はPSA酸素発生装置により容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により次のことが達成可能である。
(1) パイプリフターによるガス中固体分散が850℃〜1000℃の高温運転で可能である。

パイプリフターは、耐火物11へ取り付けアンカーを埋込まず、耐火物11とは連結せずに、耐火物ホールに自由に収めるのみで、その支持はロータリーキルン外殻19の鋼構造に固定するために、運転温度はパイプリフターの耐熱限界まで設定できる。
耐火物11は通常の耐熱設計で1000℃以上の設計が可能である。

(2) 高温運転により一体のロータリーキルン炉内で水性ガス反応及びシフト反応を急速に進めることができる。

水性ガス反応は一般的に800℃以上で発現し、高温になるほど反応速度は大きくなる。生成する物質の燃料比すなわち固定炭素の揮発分に対する比が大きい処理物である、例えばバイオマスなどにとって、固定炭素の可燃ガスへの転換は水性ガス反応に依存するため、高温運転のメリットは大きい。

(3) ガス中固体分散効果により、ガス化反応速度が大きい

未反応核モデルに支配される固気反応は表層から反応が進むため、表層の気体の換気は重要である。パイプリフターにより個体がガス中へ強制的に分散されるため、表層の気体は常に入れ換わり、固体の乾燥、熱分解ガス化、及び水性ガス反応にとって、反応が進む雰囲気条件を形成できる。

(4) ガス中固体分散効率が高い。

パイプリフターへの掻き込みゾーンの処理物層厚を、パイプリフター9dの逆螺旋配置または逆送シュート10による逆送効果、パイプリフター9eの掻き寄せ効果、またはロータリーキルン排出部に設ける堰による貯留効果により、大きくできる。その結果パイプリフターへの掻き込み量が増加し、処理物のガス中分散量を適正に計画できる。前記いずれの場合もパイプリフターまたは逆送リフターに羽根21a、21bを設ければ、さらにガス中固体分散効率が高めることができる。

(5) 固体原料のガス化効率が高く、発生ガス品位が優れる。

ロータリーキルン発生ガスの廃熱との熱交換により得られた過熱水蒸気に酸素を添加した、水蒸気と酸素を主成分にする混合ガスにより処理物を部分燃焼するために、固体原料のガス化効率が高く、発生ガスの発熱量が大きい。また水蒸気の分圧を大きくでき、水性ガス反応を促進できる。
一方処理物が乾燥品であるときは、酸素の替わりに空気を用いても、実用的に十分な発生ガスの発熱量が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るロータリーキルン全体図で、ロータリーキルン断面は図2のA−A矢視、図7のD−D矢視を示す。
図2】本発明に係るロータリーキルン内面展開図で、各種パイプリフターの配置例を示す。(前段はレデューサー型短管パイプリフター9a、中段は円管パイプリフターの中立配置型9bと逆螺旋配置型9dの組み合わせ、後段は円管パイプリフターの中立配置型9b並びに逆螺旋配置型9dの組み合わせ、および短管パイプリフター9c並びに逆送パイプシュート10の組み合わせにより構成)
図3】本発明に係るロータリーキルン内面展開図で、各種パイプリフターの配置例を示す。(図2の短管パイプリフター9c並びに逆送パイプシュート10の組み合わせを処理物の安息角以下で配置する横型円管パイプリフター9e群に入れ替え)
図4】本発明で使用する2種のパイプリフター例を示す。(a)レデューサー型短管パイプリフター9aを示す。(b)処理物の安息角以上で配置した円管パイプリフター9bを示す。
図5】本発明で使用する処理物の安息角以下(本図の例は傾き角0度)で配置した横型円管パイプリフター9eを示す。(a)図3のE-E矢視を示す。(b)図3のF-F矢視を示す。
図6】本発明に係る2例の堰貫通路13の部分詳細図である。(a)堰貫通路13が2ブロック煉瓦にわたるもの(b)堰貫通路13が1ブロック煉瓦にわたるもの
図7】本発明に係るロータリーキルン内面展開図でパイプリフターを増設した例を示す。
図8】本発明に係るロータリーキルン内面展開図でパイプリフターに羽根を設けて、設置数量を削減した例を示す。
図9】羽根を設けた各種パイプリフター断面を示す。(a)図8のG-G矢視を示す。(b)図8のH-H矢視を示す。(c)図8のI-I矢視を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき、図1図2図3図4図5図6図7図8図9を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係るロータリーキルンの全体図を示す断面図である。
図2は本発明に係るロータリーキルン内面展開図で、各種パイプリフターの配置例
を示す。
【0015】
図1に示すように、
処理物は投入ホッパ1から2重シール弁2、投入シュート3を経由して、ロータリーキルン炉内と大気とのシールを維持しつつ、投入される。
投入された処理物は、前段の予熱乾燥帯で、予熱乾燥されるが、固気反応は未反応核モデルに支配されるため、固体表層では、局部的には熱分解反応が始まり、その結果発生する可燃性ガスが燃焼し、その燃焼熱が、余熱乾燥用に有効に用いられる。
固体の粒子径も反応速度に影響し、木質系の処理物は、チップ状に細断されることが重要である。中段では予熱乾燥がほぼ終了したのち、主反応は熱分解に移行する。予熱乾燥と同様に、熱分解反応は未反応核モデルに支配されるため、ガス中固体分散が重要である。
後段に至ると、固体中の揮発物質はほぼガス中へ移動しつくし、処理物の残渣は炭素が主体となる。炭素のガス化は水性ガス反応に依存するために、十分な水蒸気の存在下において、ガス中固体分散が重要である。ロータリーキルン炉内はパイプリフター効果により発塵環境であるため、2次均質炉へ炭素残渣が飛散し、未反応粗粒子は下部に沈降する。沈降残渣は固形燃料として有効利用できるが、ガス化原料としても貴重であり、一部を投入ホッパへ戻せば、施設全体のガス化効率を増加できる。
【0016】
予熱乾燥帯では、図2に示すように、パイプリフター9aを適正に配置し、パイプリフターへの滑らかな掻き込み、パイプリフターからのブリッジ滞留の無い、滑らかな落下を達成できれば、固体をガス中へ効率的に分散できる。その結果、伝熱効率及び固体表層ガスの拡散により、反応速度は格段に大きくなる。
投入直後の処理物は内部摩擦抵抗が大きく、パイプリフター内での棚吊りが懸念されるため、図2図4(a)、および図9(a)のような、レデューサー型短管パイプリフターの採用が推奨される。
【0017】
熱分解反応はロータリーキルン内を中段に向かって、加速度的に進み、固体が所定の反応温度に達したのちに、ほぼ終了する。
この中段の主反応は熱分解反応と水性ガス反応であり、いずれもガス中への固体分散が重要である。
このため、図2に示すようにパイプリフター9bとパイプリフター9dを効果的に配置し、ガス中への固体分散効果を高めている。
すなわち、図4(b)に示すように、いずれも十分な掻き上げ容積を保有するとともに、パイプリフター9dは逆螺旋に設置することで、炉内処理物の逆送を可能とし、その結果、パイプリフター設置ゾーンの処理物層厚みを大きくできる。
これにより、パイプリフターに掬い込む容積効率を上げることができ、その結果、ガス中固体分散量を高めることができる。
【0018】
処理物は後段に進むとともに、主反応は水性ガス反応およびシフト反応となる。
同時に処理物中の揮発物質は殆ど無くなり、炭素残渣主体となる。
水性ガス反応はこの炭素主体の処理物をガス中に効率的に分散させることによりすすむ。
後段のパイプリフターは、図2に示すように、パイプリフター9b、パイプリフター9d、パイプリフター9cを適正に配置する。最終段のパイプリフター9cにはその間隙に、逆送シュート10を設け、逆送シュート10内外の逆送により、未反応炭素残渣の排出を極力防止している。
また同じ目的で、図1図2図3図5(a)、図7、および図8に示すように、ロータリーキルン炉尻端には堰12を設け、未反応炭素残渣の排出を防止している。
【0019】
処理物が微粒子になった以降のパイプリフターの他の形式には、図3図5図8図9(c)に示すように、
パイプリフター9eをロータリーキルン軸方向へ設け、開口20をパイプリフター9eの側面に複数設ける。パイプリフター9eの壁面からの突出により、処理物が開口20前面へ掻き寄せられるために、効率的にパイプリフター内に掬い込むことができる。
この開口から掻き込まれた処理物は、パイプリフターの上昇、反転とともに、この開口を排出口として、ロータリーキルン炉内に排出され、ガス中固体分散を効率的に達成できる。
さらにこの掻き寄せ効果を増し、且つ掻き上げ量を増加する手段として、パイプリフター9eの外表面に羽根21aを設ける。
【0020】
本発明に係るロータリーキルンには図2図3図7、および図8に示すように、逆送機能を持たせているが、運転停止時には、炉内残留物の排出を妨げることになる。
このために、運転停止時はロータリーキルンを逆回転し、逆螺旋管が正螺旋回転することにより、パイプリフター内外の処理物は排出部に向かって、速やかに排出できる。
またロータリーキルン炉尻端の堰部分は、図6に示すような、傾斜した堰貫通路を設けることにより、正回転では、排出を抑制し、逆回転では、排出を進めることができる。
堰を溝状に傾斜して開渠を設けても同じ効果を望める。
【0021】
図7はロータリーキルン内壁面に、最大限設置可能な数量のパイプリフターを配置した
例である。すなわちパイプリフターおよび逆送シュートの全設置数量は図2の配置では44個に対し、図7の配置では66個になる。
このように処理物の特性に応じて各種のパイプリフターの数量や組み合わせを選択できる。
【0022】
図8はパイプリフターの外表面に羽根21a、21bを付加した例である。羽根21aはロータリーキルン軸方向に設けた一般的なリフター羽根であり、この掻き上げ量がパイプリフター掻き上げ量に付加される。羽根21bは螺旋管に沿わせた羽根であり、螺旋管掻き高さを増やし、逆送量を増加し、ゾーンの処理層高が増え、掻き上げ効率を増加できる。
この配置ではパイプリフターの全設置数量は26個であり、羽根の追加により、パイプリフターの設置数量を削減できる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を図1図2図3図4図5図6図7図8、および図9に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1図2図4図6はバイオマスを原料として、可燃性ガスを発生させる目的で使用されたロータリーキルン式ガス化炉である。
原料は木質チップであり、ロータリーキルンの前段の主反応が予熱乾燥で、中段の主反応が熱分解、および水性ガス反応で、後段の主反応が水性ガス反応、およびシフト反応である。固体の反応は未反応核モデルに支配されるために、前段、中段、および後段が分離独立して主反応が変化していくのでなく、これら各段の主反応は、固体粒子径、固体表層温度、または表層のガス拡散などの条件の変動により、各段間で、重複しつつすすむ。
【0025】
前段部の処理物は木質チップ固有の内部摩擦抵抗が大きく、および粗粒主体の粒度構成であり、投入原料性状が残存している。前段に設けられたパイプリフターは図4aに示すようなレデューサー型短管パイプリフターを採用している。これは処理物をパイプリフター内への掻き込みやすさと上部へ持ち上げられた処理物がパイプリフター内に滞留することなく、滑らかに落下することを重視するためである。処理物は上部に持ち上げられた後に、ガス中に分散され、効率的に乾燥が進む。特に微粒子については表層の一部の処理物は乾燥予熱を終了し、揮発成分の熱分解ガス化が始まる。可燃性の熱分解ガスは部分燃焼支燃性ガスにより燃焼し、その燃焼熱により予熱乾燥を促進する。
【0026】
中段に至り、処理物粒子温度は内部水分が蒸発し、消失する前後から、ガス温度に近づくように、昇温が進み、同時に熱分解が進む。熱分解の結果ガス中に存在する熱分解ガスは、水蒸気の存在下、さらに水性ガス反応により、高分子炭化水素の分解が進み、水素および一酸化炭素主体のガスに変換する。乾燥がほぼ終了した処理物は内部摩擦抵抗が小さくなり、また粒子同士の物理的衝突により、粒子径が小さくなり、流動性が上昇してくる。中段においてはパイプリフター9b、9dを設置し、掻き込み量を増量させる。また掻き込み効率を増加させるため逆螺旋設置したパイプリフター9dを用いて、処理物を逆送させ中段の処理物の層厚を増加させている。この結果パイプリフターの掻き込み量は格段に増加する。
【0027】
後段に至り、残存固形カーボンはパイプリフター9b、9d、9cにより、上部に掻き上げられ、細粒になった固形カーボンは最終的に大部分ガス中の水蒸気により水性ガス反応によりガス化する。この過程でガス中分散量を増加する手段として、まずパイプリフター9dにより逆送し、ゾーンの層厚を増し、掻き込み効率を増加させる。またロータリーキルン炉尻に堰を設け、未反応炭素残渣を滞留させ、さらに逆送シュート10により処理物をパイプリフター9cの下流から上流に逆送し、処理物層高を増大させる。層厚が増したゾーンにおいて、パイプリフター9cにより掻き上げ、炉内にガス中分散させる。
【0028】
このように前段、中段、後段において、炭素粒子を水性ガス反応により、ガス化することにより、炉尻から排出される炭素粒子を最小限にできる。
炉尻フード下部に沈降捕集される一部の未反応炭素残渣はそのまま廃棄、または燃料として設備全体システムの中で、一般的には燃焼空気の加熱用燃料として、または原料の乾燥用燃料として有効活用し設備の熱効率を向上させる。または上流に移送循環し、ロータリーキルンの原料に混合して再活用する。なお移送残渣が疑似素粒子化しているときは、粉砕工程を経由する。
以上の3方式がある。
発電量を重視するときは、炭素残渣の利用において、前記3番目の炭素残渣循環方式が望ましい。
また炉尻フード14で沈降せずに下流に飛散する一部の未反応炭素残渣は、炉尻フード空間およびそれに続く2次均質炉空間において水性ガス反応により、最終的にガス化する。
木質系バイオマスは比較的純粋な炭素質燃料であるために、炭素の熱利用効率により、施設全体の熱効率が決定する。
【実施例2】
【0029】
図1図3図4図5、および図6はバイオマスを原料として、可燃性ガスを発生させる目的で使用されたロータリーキルン式ガス化炉であり、実施例1に対して、後段のパイプリフターを変更した実施例である。
【0030】
後段の最終段においては処理物が細粒化しており、軸方向に設けられ、一部のパイプリフターが炉内に突出したパイプリフター9eが有効である。
これは炉尻に設けられた堰12による処理物層厚の増およびパイプリフター9eの炉内突出部による処理物掻き寄せ効果により、パイプリフター9eの開口20に効率的に掻き込める。同時にロータリーキルン炉内に突出したパイプリフター9e自体による掻き上げが可能である。これら2つの効果により上部に掻き上げられた処理物はガス中に多量に分散される。
【実施例3】
【0031】
図1図4図6および図7はバイオマスを原料として、可燃性ガスを発生させる目的で使用されたロータリーキルン式ガス化炉であり、実施例1と比較するとパイプリフターを設置限界まで増設し、配置した実施例である。
【0032】
処理物の性状は大きく変化するのが普通である。パイプリフターは適正に配置するが、処理物性状に応じてパイプリフターの設置数量は変更できる。
実施例1に比較すると前段のレデューサー型短管パイプリフター9aを2倍設置し、中段のパイプリフター9b、9dを約1.5倍に増設している。
このように処理物の性状により、パイプリフターを増減するとともに、個別のパイプリフター掻き上げ能力を調整する。
【実施例4】
【0033】
図1図8、および図9はバイオマスを原料として、可燃性ガスを発生させる目的で使用されたロータリーキルン式ガス化炉であり、実施例2とは、前段、中段および後段のパイプリフターを削減しつつ、しかし掻き上げ効果をさらに増加させるため、羽根21a、21bを付加した実施例である。
【0034】
実施例3は処理物性状に応じて、パイプリフターを増設したが、パイプリフターは金属製の消耗品であるため、極力削減することが望ましい。
そこで実施例4では、各パイプリフターに羽根21a、21bを付加し、掻き上げ量の増加、および逆送量の増加を図った。羽根21aは掻き上げリフターであり、その掻き上げられた分掻き上げ量が増加する。羽根21bで螺旋管の高さが増加し、その分逆送量は増加し、掻き上げ効率が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本特許発明は特に以下の要求に応えることができる。
(1) 炉内で乾燥、熱分解、水性ガス反応、シフト反応等の一連の処理が一体のロータリーキルンで完結することが要求される。
(2) 炉内雰囲気が高温で、前記各処理工程が高効率で行え、原料の可燃ガス転換率が高く、可燃ガスによる熱回収効率や発電効率が高いことが要求される。
(3) ロータリーキルンがコンパクトで、安価であることが要求される。
(4) 消耗部品の取り換えが短時間で容易に行えることが要求される。
以上の要求は
バイオマスガス化発電装置に使用されるガス化ロータリーキルンの他には、金属精錬用前処理に使用されるロータリーキルン式焙焼炉、乾留、または炭化に使用されるロータリーキルン等に通常要求される。
【符号の説明】
【0036】
1…投入ホッパ 2…2重シール弁
3…投入シュート 4…炉前フード
5a、5b…回転体シール装置 6…ロータリーキルン
7a、7b…タイヤ 8…駆動ギヤーカバー
9a、9b、9c、9d、9e…パイプリフター 10…逆送シュート
11…耐火物 12…堰
13…堰貫通路 14…炉尻フード
15…2次均質炉 16…支燃ガス吹込み管
17…固定ボルト 18…断熱材
19…ロータリーキルン外殻 20…開口
21a、21b…羽根
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9