(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544616
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】EGR混合構造
(51)【国際特許分類】
F02M 26/17 20160101AFI20190705BHJP
F02M 26/19 20160101ALI20190705BHJP
【FI】
F02M26/17
F02M26/19 331
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-230236(P2014-230236)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-94852(P2016-94852A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】俊野 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏充
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−014265(JP,A)
【文献】
特開2002−004961(JP,A)
【文献】
特開2010−101305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/08−47/10
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気の一部をEGRとしてEGR流路を介して前記内燃機関の吸気流路へ導入するEGR混合構造であって、
前記吸気流路の外周に設けられ、前記EGR流路と連通する環状空間を内部に区画する環状チャンバと、
前記環状空間と前記吸気流路とを連通し、前記環状空間から前記吸気流路へEGRを流入させる環状スリットと、
前記環状スリットの一部に設けられ、前記環状スリットのスリット幅を他の部分よりも狭め、又は前記環状スリットを部分的に塞ぐ流入規制部と、を備え、
前記EGR流路は、前記環状空間の中心軸と交差する軸交差方向に沿って延びて前記環状空間と連通するEGR下流側流路と、前記軸交差方向と略直交し且つ前記中心軸を含む平面と略直交する方向へ前記EGR下流側流路側から曲折するEGR上流側流路とを有し、
前記EGR下流側流路と前記環状空間とは、前記EGR上流側流路から前記EGR下流側流路へ流通したEGRが、前記EGR下流側流路に対する前記EGR上流側流路の曲折方向と同側の曲折側領域と反対側の反曲折側領域とに前記EGR下流側流路から流入するように連通し、
前記流入規制部は、前記環状スリットのうち前記反曲折側領域と前記吸気流路との間に設けられ、前記曲折側領域と前記吸気流路との間には設けられていない
ことを特徴とするEGR混合構造。
【請求項2】
請求項1に記載のEGR混合構造であって、
前記EGR流路のうち前記環状空間の近傍に設けられ、EGRの流通方向に沿って延びる整流板を備える
ことを特徴とするEGR混合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気の一部をEGRとして内燃機関の吸気流路へ導入するEGR混合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、EGRパイプを環状チャンバに接続し、環状チャンバ内部と吸気管内部とを環状スリットによって連通するEGR混合装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−92592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のEGR混合装置では、吸気管の外周の全域から吸気管内部へ環状スリットと介してEGRが一様に流入可能である。このため、例えば、EGRパイプが曲折しており、環状チャンバに流入する前のEGRパイプ内のEGRの流れが乱れていると、環状チャンバ内部(環状空間)でEGRがさらに乱れ、吸気管内部(吸気流路)へのEGRの導入量が低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、環状チャンバの環状空間でのEGRの乱れを低減して、吸気流路へのEGRの導入量の低下を抑制することが可能なEGR混合装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は、内燃機関の排気の一部をEGRとしてEGR流路を介して内燃機関の吸気流路へ導入するEGR混合構造であって、環状チャンバと環状スリットと流入規制部とを備える。
【0007】
環状チャンバは、吸気流路の外周に設けられ、EGR流路と連通する環状空間を内部に区画する。環状スリットは、環状空間と吸気流路とを連通し、環状空間から吸気流路へEGRを流入させる。流入規制部は、環状スリットの一部に設けられ、環状スリットのスリット幅を他の部分よりも狭め、又は環状スリットを部分的に塞ぐ。
EGR流路は、
環状空間の中心軸と交差する軸交差方向に沿って延びて環状空間と連通するEGR下流側流路と、
軸交差方向と略直交し且つ環状空間の中心軸を含む平面と略直交する方向へEGR下流側流路
側から曲折するEGR上流側流路とを有する。EGR下流側流路と環状空間とは、EGR上流側流路からEGR下流側流路へ流通したEGRが、EGR下流側流路に対するEGR上流側流路の曲折方向と同側の曲折側領域と反対側の反曲折側領域とにEGR下流側流路から流入するように連通する。流入規制部は、環状スリットのうち反曲折側領域と吸気流路との間に設けられ、曲折側領域と吸気流路との間には設けられていない。
【0008】
上記構成では、環状空間のうち流入規制部が設けられた領域では、環状空間へ流入したEGRが環状空間に沿って流通し易くなる。このため、環状空間でのEGRの乱れを低減することができ、吸気流路へのEGRの導入量の低下を抑制することができる。
【0009】
また、EGR混合構造は、EGR流路のうち環状空間の近傍に設けられ、EGRの流通方向に沿って延びる整流板を備えてもよい。
【0010】
上記構成では、環状空間へ流入する直前のEGRの乱れが整流板によって抑制されるので、環状空間でのEGRの乱れをさらに抑制して、吸気流路へのEGRの導入量の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環状チャンバの環状空間でのEGRの乱れを低減して、吸気流路へのEGRの導入量の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインレットカバーの正面図である。
【
図2】
図1のインレットカバーを矢印II方向から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るインレットカバー1について、
図1〜
図7を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、インレットカバー1は、インレットカバーインナ2とインレットカバーアウタ3とを組み合わせて結合することによって形成され、EGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)を採用する車両のエンジン(内燃機関)40に固定される。インレットカバー1は、吸気流路4(
図5、
図7参照)とEGR流路5(
図3、
図4、
図7参照)とEGR合流部6(
図3、
図5、
図7参照)とを備え、EGR合流部6には、
図5に示すように環状チャンバ7と環状空間8と環状スリット9と流入規制部10とが設けられ、EGR流路5には、
図3に示すように整流板11が設けられる。
【0014】
図2に示すように、インレットカバーインナ2は、吸気マニホルド部12とインナ吸気管部13とインナ環状チャンバ形成部14とインナEGR流路形成部15とを一体的に有し、エンジン40のシリンダヘッド41に固定される。吸気マニホルド部12は、エンジン40の各気筒(図示省略)と連通する気筒連通空間16(
図7参照)をシリンダヘッド41との間に形成する。気筒連通空間16は、所謂インテークマニホールドとして機能する。インレットカバーアウタ3は、アウタ吸気管部17とアウタ環状チャンバ形成部18とアウタEGR流路形成部19とを一体的に有する。
【0015】
図5及び
図7に示すように、インナ吸気管部13には、吸気流路4の下流側領域であるインナ吸気流路20が形成され、インナ吸気流路20の下流端は気筒連通空間16と連通する。アウタ吸気管部17には、吸気流路4の上流側領域であるアウタ吸気流路21が形成され、アウタ吸気管部17の上流端には、アウタ吸気流路21の上流端が開口するフランジ状の吸気管接続部22が形成される。吸気管接続部22には吸気管(図示省略)が接続され、外気(新気)が吸気管から吸気流路4へ流入する。
【0016】
アウタ吸気流路21は下流へ向かって縮径し、EGR合流部6は、インナ吸気流路20とアウタ吸気流路21との連通部近傍のベンチェリ部に設けられる。環状チャンバ7は、インナ吸気流路20の外周のインナ環状チャンバ形成部14と、アウタ吸気流路21の外周のアウタ環状チャンバ形成部18とから構成される。インナ環状チャンバ形成部14には、円環溝状のインナ環状空間形成溝23が形成され、アウタ環状チャンバ形成部18には、円環溝状のアウタ環状空間形成溝24が形成される。インナ環状空間形成溝23とアウタ環状空間形成溝24とによって、通気流路4の外周の環状チャンバ7の内部に円環状の環状空間8が形成される。インナ環状空間形成溝23の内径側の周縁は、円環状のインナスリット形成リブ25によって区画され、アウタ環状空間形成溝24の内径側の周縁は、円環状のアウタスリット形成リブ26によって区画される。インナスリット形成リブ25の先端面とアウタスリット形成リブ26の先端面とは互いに離間し、インナスリット形成リブ25とアウタスリット形成リブ26との間に、環状空間8と吸気流路4とを連通する環状スリット9が形成される。
【0017】
図3及び
図4に示すように、EGR流路5の下流側領域であるEGR下流側流路27は、インナEGR流路形成部15とアウタEGR流路形成部19とによって直線状に形成され、EGR下流側流路27の下流端は環状空間8と連通する。
図4に示すように、EGR流路5の上流側領域であるEGR上流側流路28は、アウタEGR流路形成部19に形成され、その下流端がEGR下流側流路27の上流端に連通する。EGR流路5は、EGR上流側流路28で略直角に曲折し、EGR上流側流路28とEGR下流側流路27との間でさらに略直角に曲折する。アウタEGR流路形成部19には、EGR上流側流路28の上流端が開口するフランジ状のEGR管接続部29が形成される。EGR管接続部29にはEGR管(図示省略)が接続され、エンジン40の排気の一部がEGRとしてEGR管からEGR流路5へ流入する。EGR流路5へ流入したEGRは、EGR合流部6において吸気流路4の外周から環状スリット9を流通し、吸気流路4から気筒連通空間16へ流入する外気に混入する。
【0018】
流入規制部10は、環状スリット9の一部に設けられ、環状スリット9を部分的に塞ぐ。流入規制部10は、アウタスリット形成リブ26の全周域のうち一部の円弧状の部分であり、他の領域よりも突出高さが高く形成されてインナスリット形成リブ25と接触する。流入規制部10は、環状空間8の全周域のうちEGR下流側流路27から流入するEGRの流れが速い側(高流速側)に配置される。本実施形態では、EGRがEGR下流側流路27に対して上方(
図4参照)から流入し、EGR下流側流路27では下側(
図3参照)の方が上側よりも高速で流れて環状空間8へ流入するため、環状空間8(スリット9)の下側領域に流入規制部10が配置される(
図3参照)。
【0019】
図3に示すように、EGR下流側流路27には、EGRの流通方向に沿って環状空間8の近傍まで直線状に延びる平板状の整流板11が設けられる。
図6に示すように、整流板11は、インナEGR流路形成部15から突出するインナ整流板形成リブ30と、アウタEGR流路形成部19から突出するアウタ整流板形成リブ31とによって構成される。
【0020】
本実施形態によれば、環状空間8のうち流入規制部10が設けられた領域では、EGRが吸気流路4に直接流入せず、環状スリット9に達するまで環状空間8に沿って流通した後、環状スリット9から吸気流路4に流入する。このように、環状空間8へ流入したEGRが環状空間8に沿った流れを形成し易くなるので、環状空間8でのEGRの乱れを低減することができ、吸気流路4へのEGRの導入量の低下を抑制することができる。
【0021】
また、環状空間8へ流入する直前のEGRの乱れが整流板11によって抑制されるので、環状空間8でのEGRの乱れをさらに抑制して、吸気流路4へのEGRの導入量の低下を抑制することができる。
【0022】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0023】
例えば、上記実施形態では環状スリット9を部分的に塞ぐ流入規制部10を設けたが、これに代えて、
図8に示すように、環状スリット9のスリット幅(インナスリット形成リブ25とアウタスリット形成リブ26との間隙)を他の部分よりも狭める流入規制部32を設けてもよい。この場合、アウタスリット形成リブ26の一部の突出高さを、他の領域よりも高く且つインナスリット形成リブ25と接触しない高さに設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、EGRを採用する内燃機関に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 インレットカバー
2 インレットカバーインナ
3 インレットカバーアウタ
4 吸気流路
5 EGR流路
6 EGR合流部
7 環状チャンバ
8 環状空間
9 環状スリット
10,32 流入規制部
11 整流板
40 エンジン(内燃機関)