特許第6544697号(P6544697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544697
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】生体情報評価システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/30 20180101AFI20190705BHJP
   G16H 50/50 20180101ALI20190705BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   G16H50/30
   G16H50/50
   G01N33/48 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-103132(P2017-103132)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-198016(P2018-198016A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2019年5月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517061141
【氏名又は名称】株式会社Eyes,JAPAN
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山寺 純
【審査官】 阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−511882(JP,A)
【文献】 特表2010−532484(JP,A)
【文献】 特表2013−509588(JP,A)
【文献】 特開2014−178800(JP,A)
【文献】 馬場 雪乃 ほか,データ解析コンペティションを用いたクラウドソーシングによる予測モデルの構築 (1J5-OS-18b-2),一般社団法人 人工知能学会 第28回全国大会論文集CD−ROM,日本,一般社団法人 人工知能学会,2014年 5月12日,pp.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 − 80/00
G06Q 10/00 − 99/00
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報の変化から疾病リスクを算出する生体情報評価システムであって、
複数の指標を有する前記生体情報が複数入力され、入力された複数の生体情報から、同種の生体情報が入力された際の疾病リスクを算出するための疾病リスク評価モデルを作成して保存する疾病リスク評価モデル作成部と、
前記疾病リスクの算出を行うべき生体情報が指定されたとき、該生体情報の前記複数の指標に基づいて、前記疾病リスク評価モデル作成部で保存された疾病リスク評価モデルにより該生体情報の疾病リスクを算出して出力する疾病リスク算出部と
を備え、
疾病リスク評価モデル作成部は、前記生体情報の前記複数の指標の一部または全部の時系列データを特徴量として学習器である階層型時間メモリアルゴリズムに入力することにより、該時系列データに基づく出現パターンと出現確率との状態遷移図が該状態遷移図に入れる生体情報の組み合わせとして遷移確率が高いもの同士がグループとなるようにグルーピングされた評価モデルを該階層型時間メモリアルゴリズムが生成し、作成した該評価モデルを前記疾病リスク評価モデルとすることを特徴とする生体情報評価システム。
【請求項2】
請求項1記載の生体情報評価システムにおいて、
前記生体情報は、唾液のサイトカイン値であり、前記複数の指標が該唾液の複数のサイトカインマーカーであって、
疾病リスク評価モデル作成部は、複数のサイトカインマーカーを有する唾液のサイトカイン値が複数入力され、入力されたサイトカインマーカーから、癌リスクを算出するための癌リスク評価モデルを作成して保存することを特徴とする生体情報評価システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の生体情報評価システムにおいて、
前記疾病リスク評価モデル作成部は、前記生体情報の前記複数の指標の一部または全部を特徴量として前記階層型時間メモリアルゴリズム以外の学習器にも入力し、該階層型時間メモリアルゴリズムとその他の該学習器とがそれぞれ作成した一次評価モデルを統合することにより、前記疾病リスク評価モデルを作成することを特徴とする生体情報評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報の変化から疾病リスクを算出する生体情報評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の生体情報評価システムとしては、下記特許文献1に示すように、患者から得られた胃腸サンプル中で、選択された1つ又は複数の遺伝子マーカーのRNA転写物又はそれらの発現産物の発現レベルを決定することで、細胞増殖の徴候を判断する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−165811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の生体情報評価システムでは、特定の遺伝子マーカーから発現レベルを決定するものであるが、そもそも膨大な遺伝子情報などの生体情報から、その生体情報に含まれるどのような指標に着目すべきであるかには膨大な治験が必要となっている。
【0005】
そこで、本発明は、生体情報に含まれる指標の特異性を簡易かつ確実に見出すことができる生体情報評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の生体情報評価システムは、生体情報の変化から疾病リスクを算出する生体情報評価システムであって、
複数の指標を有する前記生体情報が複数入力され、入力された複数の生体情報から、同種の生体情報が入力された際の疾病リスクを算出するための疾病リスク評価モデルを作成して保存する疾病リスク評価モデル作成部と、
前記疾病リスクの算出を行うべき生体情報が指定されたとき、該生体情報の前記複数の指標に基づいて、前記疾病リスク評価モデル作成部で保存された疾病リスク評価モデルにより該生体情報の疾病リスクを算出して出力する疾病リスク算出部と
を備え、
疾病リスク評価モデル作成部は、前記生体情報の前記複数の指標の一部または全部の時系列データを特徴量として学習器である階層型時間メモリアルゴリズムに入力することにより、該時系列データに基づく出現パターンと出現確率との状態遷移図が該状態遷移図に入れる生体情報の組み合わせとして遷移確率が高いもの同士がグループとなるようにグルーピングされた評価モデルを該階層型時間メモリアルゴリズムが生成し、作成した該評価モデルを前記疾病リスク評価モデルとすることを特徴とする。
【0007】
第1発明の生体情報評価システムによれば、生体情報の複数の指標の一部または全部を特徴量として学習器である階層型時間メモリアルゴリズムに入力し、該階層型時間メモリアルゴリズムが生成した評価モデルを疾病リスク評価モデルとする。ここで、階層型時間メモリアルゴリズムは、経時変化が反映されることから、膨大な生体情報からその時間変化を加味して、特定の出現パターンと出現確立とを簡易かつ確実に見出すことができる。
【0008】
このように、第1発明の生体情報評価システムによれば、生体情報に含まれる指標の特異性を簡易かつ確実に見出すことができる。
【0009】
なお、疾病リスクには、特定疾患の発症リスクのほか、体質(ホルモンバランス)、ストレス、性格、寿命などが含まれる。
【0010】
第2発明の生体情報評価システムは、第1発明において、
前記生体情報は、唾液のサイトカイン値であり、前記複数の指標が該唾液の複数のサイトカインマーカーであって、
疾病リスク評価モデル作成部は、複数のサイトカインマーカーを有する唾液のサイトカイン値が複数入力され、入力されたサイトカインマーカーから、癌リスクを算出するための癌リスク評価モデルを作成して保存することを特徴とする。
【0011】
第2発明の生体情評価システムによれば、唾液のサイトカイン値を生体情報とし、該唾液の複数のサイトカインマーカーを複数の指標とすることで、階層型時間メモリアルゴリズムに複数のサイトカインマーカーを有する唾液のサイトカイン値が複数入力され、入力されたサイトカインマーカーから、癌リスクを算出するための癌リスク評価モデルを作成することができる。
【0012】
このように、第2発明の生体情報評価システムによれば、唾液のサイトカイン値に対して、特定のサイトカインマーカーの特異性を実際に簡易かつ確実に見出すことができる。
【0013】
第3発明の生体情報評価システムは、第1または第2発明において、
前記疾病リスク評価モデル作成部は、前記生体情報の前記複数の指標の一部または全部を特徴量として前記階層型時間メモリアルゴリズム以外の学習器にも入力し、該階層型時間メモリアルゴリズムとその他の該学習器とがそれぞれ作成した一次評価モデルを統合することにより、前記疾病リスク評価モデルを作成することを特徴とする。
【0014】
第3発明の生体情報評価システムによれば、生体情報の複数の指標の一部または全部を特徴量として階層型時間メモリアルゴリズム以外の学習器にも入力し、階層型時間メモリアルゴリズムとその他の該学習器とがそれぞれ作成した一次評価モデルを統合することで、各学習器の汎化能力を超える疾病リスク評価モデルを作成することができる。
【0015】
このように、第3発明の生体情報評価システムによれば、生体情報に含まれる指標の特異性を簡易かつより確実に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の生体情報評価システムの概要を示すシステム構成図。
図2図1の生体情報評価システムの処理内容を示すフローチャート。
図3図1の生体情報評価システムの処理内容を示す説明図。
図4図1の生体情報評価システムが組み込まれる生体情報管理システムの概要を示すシステム構成図。
図5図4の生体情報管理システムにおける処理内容を示すフローチャート。
図6図4の生体情報管理システムにおける処理内容を示すフローチャート。
図7図4の生体情報管理システムにおける処理内容を示すフローチャート。
図8図4の生体情報管理システムにおける処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本実施形態の生体情報評価システム1は、生体情報の変化から疾病リスクを算出するシステムであって、コンピュータシステムにより構成されている。
【0018】
詳細な図示は省略するが、該コンピュータシステムは、例えば、1つのコンピュータ、又は相互に通信可能な複数のコンピュータを含むシステムである。該コンピュータシステムを構成するコンピュータには、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等により構成される演算処理装置が搭載されている。
【0019】
また、該コンピュータシステムは、それを構成するコンピュータの構成要素あるいは付加要素として、キーボード、マウス、タッチパネル等により構成される入力操作部、ディスプレイ、印刷機等により構成される情報出力部、有線方式もしくは無線方式の通信機器、並びに、ハードディスク等により構成される記憶装置が含まれる。
【0020】
なお、生体情報価格評価システム1が、複数のコンピュータにより構成される場合、それらのコンピュータは、複数の離れた場所に分散配置されていてもよい。
【0021】
また、入力操作部あるいは情報出力部は、生体情報価格評価システム1の管理者又はユーザが随時使用するパソコン、あるいは、携帯端末機(スマートフォン、タブレット端末等)を含み得る。
【0022】
本実施形態では、生体情報価格評価システム1の評価対象とする生体情報は、例えば、唾液を採取して得られる唾液のサイトカイン値である。そして、生体情報価格評価システム1は、それを構成するコンピュータのハードウェア構成(前記演算処理装置)と該コンピュータに実装されたソフトウェアとにより実現される機能として、生体情報記憶部11と、パーソナルデータ記憶部12と、疾病リスク評価モデル作成部13と、疾病リスク算出部14とを備える。
【0023】
生体情報記憶部11は、生体情報を記憶保持する手段であって、例えば、個人が特定されないIDに紐付けされた唾液サイトカインの値の時系列データが記憶保持される。
【0024】
パーソナルデータ記憶部12は、生体情報に関連する被検者の情報を記憶保持する手段であって、例えば、個人が特定されないIDに紐付けされた性別情報、年齢情報、喫煙情報等のデータが記憶保持される。
【0025】
疾病リスク評価モデル作成部13は、入力された生体情報から、疾病リスクを算出するための疾病リスク評価モデルを作成する。
【0026】
具体的には、疾病リスク評価モデル作成部13は、生体情報の複数の指標の一部または全部を特徴量として学習器である階層型時間メモリアルゴリズムに入力し、該階層型時間メモリアルゴリズムが生成した評価モデルを疾病リスク評価モデルとする。
【0027】
例えば、唾液のサイトカイン値を生体情報とし、該唾液の複数のサイトカインマーカーを複数の指標とすれば、階層型時間メモリアルゴリズムに複数のサイトカインマーカーを有する唾液のサイトカイン値が複数入力され、入力されたサイトカインマーカーから、癌リスクを算出するための癌リスク評価モデルを作成することができる。
【0028】
疾病リスク算出部14は、疾病リスクの算出を行うべき生体情報が指定されたとき、該生体情報の複数の指標に基づいて、疾病リスク評価モデル作成部13で保存された疾病リスク評価モデルを使用して該生体情報の疾病リスクを算出して出力する。
【0029】
次に、図2および図3を参照して、疾病リスク評価モデル作成部13による疾病リスク評価モデルの作成処理内容について説明する。
【0030】
図2に示すように、疾病リスク評価モデル作成部13は、まず、生体情報を取得する(STEP11/図2)。
【0031】
例えば、唾液のサイトカイン値を生体情報とする場合には、唾液から測定される30種類のサイトカイン値の経時変化データを取得する。
【0032】
次に、疾病リスク評価モデル作成部13は、STEP11で取得した生体情報から、該生体情報が有する複数の指標から特徴となり得るその一部または全部を特定する(STEP12/図2)。
【0033】
例えば、唾液のサイトカイン値を生体情報とする場合には、測定値として得られる30種類のサイトカイン値のうち、図3の下側側に示すような特徴的な18種類をサイトカインマーカーとして特定する。
【0034】
次に、疾病リスク評価モデル作成部13は、STEP12で特定した指標の時系列データに基づくパターンの状態遷移図を作成する(STEP13/図2)。
【0035】
例えば、唾液サイトカイン値を生体情報とする場合には、図3の上側に示すように、第1階層(first layer)として、4つのサイトカインデータを1つのグループとし、これら4つのグループの出現パターンとその出現確率に基づく第2階層(second layer)を形成する。そして、第2階層の出現パターンとその確率に基づいて第3階層(third layer)を形成する。このような遷移パターンのみを作成する。
【0036】
次に、疾病リスク評価モデル作成部13は、STEP13で作成した状態遷移図に入れる生体情報の指標の組み合わせとして、遷移確率が高いもの同士がグループとなるようにグルーピングする(STEP14/図2)。
【0037】
例えば、唾液サイトカイン値を生体情報とする場合には、18種類のサイトカインマーカーの時系列データから遷移確率の高くなる組み合わせをグルーピングとする。
【0038】
次に、疾病リスク評価モデル作成部13は、STEP14で決定したグルーピングをSTEP13の状態遷移図に割り当てて、条件付き確率の算出を行う(STEP15/図2)。
【0039】
例えば、唾液サイトカイン値を生体情報とする場合には、STEP14で決定したサイトカインマーカーのグルーピング(18種類のサイトカインマーカーの時系列データから遷移確率の高くなる組み合わせ)となるように、状態遷移図の第1階層に割り当てる。そして、第1階層について、グルーピング(組み合わせ)の出現パターンと出現確率を算出する。
【0040】
次に、疾病リスク評価モデル作成部13は、STEP15の条件付き確率の算出処理がすべてのノードおよび階層について終了したか否かを判定する(STEP16/図2)。
【0041】
そして、すべてのノードおよび階層について終了していない場合には(STEP16でNO/図2)、すべてのノードおよび階層について終了するまで、STEP13からの一連の処理を繰り返し実行し、算出したその出現パターンと出現確率を記憶する。
【0042】
一方、すべてのノードおよび階層について終了している場合には(STEP16でYES/図2)、疾病リスク評価モデル作成部13は、一連の処理を終了する。
【0043】
以上が、疾病リスク評価モデル作成部13による疾病リスク評価モデルの作成処理内容であり、かかる疾病リスク評価モデルは、経時変化が反映される階層型時間メモリアルゴリズムを用いることで、膨大な生体情報からその時間変化を加味して、特定の指標の出現パターンと出現確立とを簡易かつ確実に見出すことができる。すなわち、生体情報に含まれる指標の特異性を簡易かつ確実に見出すことができ、これに基づく疾病リスク評価モデルを作成することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、学習器として階層型時間メモリアルゴリズムを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく階層型時間メモリアルゴリズム以外の学習器と組み合わせもよい。例えば、階層型時間メモリアルゴリズムとその他の学習器であるディープラーニングとがそれぞれ作成した一次評価モデルを統合することで、各学習器の汎化能力を超える疾病リスク評価モデルを作成するようにしてもよい。
【0045】
さらに、組み合わせるその他の学習器は、ディープラーニングに加えて、ランダムフォレストやElastic netを組み合わせてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、生体情報記憶部11に記憶された生体情報を用いて、疾病リスク評価モデルを作成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、これにパーソナルデータ記憶部12に記憶された性別情報、年齢情報、喫煙情報等のデータを組み合わせて出現パターンおよび出現確率の算出を行うようにしてもよい。
【0047】
このようにして作成された疾病リスク評価モデルは、例えば、図4に示す生体情報管理システムにおいて、癌リスク評価結果の作成(STEP232/図7)において用いられる。
【0048】
図4に示す生体情報管理システムは利用者の生体情報を記憶保持するシステムであって、利用者側に設けられた利用者端末100と、利用者端末100とネットワーク接続された管理システム本体200と、管理システム本体200とネットワーク接続され、利用者の生体情報を記憶保持する分散型台帳システム300とを備える。
【0049】
ここで、生体情報は、生体に関する種々の生理学的・解剖学的情報等の種々の情報であって、DNA情報のように個人が特定される情報のほか、心拍数のように個人が特定されない情報の両方を含む概念である。
【0050】
利用者端末100は、例えば、生体情報の測定キットである唾液癌マーカー検査キットの利用者のスマートフォンやタブレット等の情報端末であって、ネットワーク通信部110と、ワークメモリ111と、プログラムメモリ112と、表示入力部13と、撮影部114と、鍵データ格納部115とを有する。
【0051】
ネットワーク通信部110は、インターネット等の広域通信網との接続を行う通信処理部である。
【0052】
ワークメモリ111は、当該利用者端末100における各種処理に対して一時的にデータを記憶保持する。
【0053】
プログラムメモリ112は、当該利用者端末100における各種処理においてプログラムそのものを記憶し、本実施形態では、Webアプリのプログラムを記憶するWebアプリ部112aと、API(Application Program Interface)サーバ部112bとを有する。
【0054】
表示・入力部113は、表示およびタッチ入力が可能なインターフェイスとしての表示部である。
【0055】
撮影部114は、CCDカメラやCMOSセンサ等から構成される撮像手段である。
【0056】
鍵データ格納部115は、後述する復号鍵が記憶保持される記憶保持部である。
【0057】
管理システム本体200は、ネットワーク通信部220と、ワークメモリ221と、プログラムメモリ222と、ストレージ部225とを有する。
【0058】
ネットワーク通信部220は、利用者端末100との間でインターネット等の広域通信網との接続を行う通信処理部として機能するほか、分散型台帳システム300との間でローカルネットワーク接続を行う通信処理部として機能する。
【0059】
ワークメモリ221は、当該管理システム本体200における各種処理に対して一時的にデータを記憶保持する。
【0060】
プログラムメモリ222は、当該管理システム本体200における各種処理においてプログラムそのものを記憶し、本実施形態では、Webサーバ部223と、API(Application Program Interface)サーバ部224とを有する。
【0061】
Webサーバ部223は、利用者端末100のWebアプリ部112aに応じた処理を行うアプリケーションサーバであって、本実施形態では、唾液返送部223aと、評価結果閲覧部223bと、分析結果入力部223cと、唾液ID生成部223dと、管理者機能部223eとを有する。
【0062】
APIサーバ部224は、唾液照合部224aと、生体情報書込部224bと、評価結果取得部224cとを有する。
【0063】
ストレージ部225は、本実施形態では生体情報である唾液データに関連するデータ全般を記憶保持する唾液メタデータ格納部として構成される。
【0064】
分散型台帳システム300は、例えば、ブロックチェーンデータベースであって、本実施形態では、同一の唾液データが記憶される2つのデータベースDB1,DB2で構成され、これらはそれぞれ異なる鍵で暗号化される。
【0065】
以上が本実施形態の生体情報管理システムの構成である。なお、以上の構成において、生体情報管理システムの利用者端末100、管理システム本体200および分散型台帳システム300は、それぞれ例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェアにより構成され、各処理部110〜113,115、220〜225,DB1,DB2による処理を実行するプログラムをメモリに記憶保持し、そのプログラムを実行することにより、上記制御処理を実行するための演算装置(シーケンサ)として機能する。
【0066】
次に、図5図8を参照して、以上のように構成された生体情報管理システムの処理内容について説明する。
【0067】
まず、図8を参照して鍵ペアの生成処理について説明する。
【0068】
図8において、予め、唾液癌マーカー検査キットに付された固有識別IDとしての機能を有するQRコード(登録商標)やシリアルナンバーを読み取ることにより、利用者端末100から管理システム本体200へのアクセスにより利用者端末100が管理システム200との間でWebアプリの利用が可能となると、トップ画面への利用者のアクセスにより(STEP111/図8)、暗号鍵と復号鍵の鍵ペアの生成がされる(STEP112/図8)。
【0069】
ここで、暗号鍵と復号鍵の鍵ペアは、それぞれ唾液癌マーカー検査キットに付された固有識別IDに紐付けされる。
【0070】
そして、鍵ペアができたか否かが判断され(STEP113/図8)、鍵ペアの生成ができない場合には(STEP113/図8でNO)、エラー出力がされる。
【0071】
一方、鍵ペアが生成できている場合には(STEP113/図8でYES)、暗号鍵が管理システム本体200に送信されて管理システム本体200に保存されると共に(STEP211/図8)、復号鍵が利用者端末100に保存される(STEP115)。
【0072】
次に、図6を参照して、唾液IDのメタデータの登録処理について説明する。
【0073】
まず、利用者が唾液癌マーカー検査キットにより唾液の採取を行い、例えば、採取管に付された唾液IDのQRコード(登録商標)を利用者端末100を介して読み取りを行うと(STEP121/図6)、QRコード(登録商標)が正しく読み取れたか判定される(STEP122/図6)。
【0074】
そして、QRコード(登録商標)が正しく読み取れていない場合には(STEP122でNO/図6)、エラー出力がなされる(STEP123/図6)。
【0075】
一方、QRコード(登録商標)が正しく読み取れている場合には(STEP122でYES/図6)、問診事項の入力画面が表示されて(STEP124/図6)、回答された問診事項が管理システム本体200に送信されて、対象唾液IDのメタデータの登録がなされる(STEP221/図6)。
【0076】
なお、ここで採取管に付された唾液IDのQRコード(登録商標)は、唾液癌マーカー検査キットに付された固有識別IDとしての機能を有するQRコード(登録商標)やシリアルナンバーと基本的に同一であるが、例えば、1つの唾液癌マーカー検査キットに対して複数の採取管があるような場合には、別のものであってもよい。
【0077】
なお、固有識別IDと唾液IDが同一の場合には、前述の暗号鍵および復号鍵との紐付けがそのまま維持される。一方、固有識別IDに対して複数の唾液IDがある場合には、予め固有識別IDと複数の唾液IDが紐付けされ、前述の暗号鍵および復号鍵との紐付けが、固有識別IDを介して唾液IDにも紐付けされる。なお、この場合、固有識別IDは、利用者端末100の識別IDに適宜置き換えられることが好ましい。利用者が唾液癌マーカー検査キットを複数回購入した場合、それぞれに同梱される採取管の唾液IDと利用者とを紐づける必要があるからである。
【0078】
次に、図7を参照して、唾液IDのサイトカインデータの登録および癌リスク評価結果の作成処理について説明する。
【0079】
予め、利用者が唾液癌マーカー検査キットにより唾液の採取った採取管を、検査機関に郵送すると、検査機関により当該唾液のサイトカインの分析がなされる。
【0080】
ここで、サイトカインの分析結果は、管理システム本体200に提供され、唾液IDで特定されるサイトカインの分析結果を管理システム本体200が取得する(STEP231/図7)。
【0081】
そして、管理システム本体200は、取得した対象唾液IDのサイトカインデータを固有識別IDに基づいて暗号鍵を特定し、かかる暗号鍵でサイトカインデータを暗号化した上で、分散型台帳システム300に登録し、分散型台帳システム300に記憶保存させる(STEP331/図7)。
【0082】
さらに、管理システム本体200は、取得した対象唾液IDのサイトカインデータ(および既に取得済みのサイトカインデータがある場合にはそれを含む時系列データ)に基づいて、癌リスク評価結果の作成を行い、作成された癌リスク評価結果を暗号鍵で暗号化した上で当該管理システム本体200に記憶保存する(STEP232/図7)。
【0083】
なお、かかる癌リスク評価結果の作成が、本実施形態の生体情報評価システム1の疾病リスク算出部14により実行される。
【0084】
次に、図8を参照して、癌リスク評価結果の利用者への提供処理について説明する。
【0085】
まず、利用者が利用者端末100を操作して、評価結果表示画面へアクセスすると(STEP141/図8)、管理システム本体200が対象唾液IDのサイトカインデータを、唾液ID(固有識別ID)に基づいて、分散型台帳システム300から取得する(STEP241/図8)。
【0086】
次いで、管理システム本体200は、対象唾液IDの癌リスク評価結果を、唾液ID(固有識別ID)に基づいて、管理システム本体200内から取得する(STEP242/図8)。
【0087】
ここで、STEP241およびSTEP242で取得した対象唾液IDのサイトカインデータおよび癌リスク評価結果は、暗号鍵より暗号化された状態となっている。
【0088】
そこで、当該暗号鍵と鍵ペアを成す復号鍵を利用者端末100からの送信により(STEP142/図8)、取得できたか判定する(STEP243/図8)。
【0089】
そして、復号鍵を取得できない場合には(STEP243でNO/図8)、利用者端末100に対してエラー出力を行い(STEP143/図8)、復号鍵を取得できた場合には(STEP243でYES/図8)、復号鍵によりサイトカインデータおよび癌リスク評価結果を復号した上で、利用者端末100に送信して表示させる(STEP144/図8)。
【0090】
以上が本実施形態の生体情報管理システムの構成および処理内容であり、かかる生体情報管理システムによれば、生体情報であるサイトカインデータの記憶保存に際して、予め利用者端末100から管理システム本体200へのアクセスにより、暗号鍵と復号鍵とが生成され、暗号鍵が管理システム本体200に記憶されると共に、復号鍵が該利用者端末100に記憶される。
【0091】
そのため、復号鍵は利用者端末100に存在しているに過ぎず、復号鍵により被験者である利用者が直接特定されることがない。
【0092】
また、利用者の生体情報であるサイトカインデータは、管理システム本体200の暗号鍵に基づいて暗号化され、暗号化されたサイトカインデータが分散型台帳システム300に記憶保持させる。さらに、分散型台帳システム300から読み出した暗号化されたサイトカインデータは、利用者端末100から取得した復号鍵により復号されることから、生体情報へのアクセスが暗号鍵と復号鍵により制限される。
【0093】
さらに、暗号鍵と復号鍵とが測定キットである唾液癌マーカー検査キットの固有識別ID(唾液ID)と紐付けされることにより、測定結果であるサイトカインデータを固有識別IDに基づいて暗号鍵による暗号化をすることができると共に、固有識別IDと紐付いた復号鍵を有する利用者端末のみに生体情報へのアクセスを可能とすることができる。
【0094】
このように、本実施形態の生体情報管理システムによれば、利用者が特定されることを防止しつつ、生体情報へのアクセスを制限することができる。
【0095】
なお、本実施形態では、生体情報管理システムとして、生体情報の測定キットである唾液癌マーカー検査キットを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、その他の検査キット(大腸癌検査キット)や、検査キット以外の生体情報計測機器(血圧計や活動量計等)であってもよい。
【0096】
この場合、生体情報(検査で指標とされるデータ値や計測値)や(必要に応じて)これらに基づく評価結果が、暗号鍵により暗号化された上で管理システム本体200から分散型台帳システム300で記憶保存されると共に、分散型台帳システム300から読みだされた生体情報や評価結果は、利用者端末100の復号鍵により復号されて管理システム本体200から利用者端末100に提供される。
【符号の説明】
【0097】
1…生体情報価格評価システム、11…生体情報記憶部、12…パーソナルデータ記憶部、13…疾病リスク評価モデル作成部、14…疾病リスク算出部、100…利用者端末、200…管理システム本体、300…分散型台帳システム。
図1
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図8