【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 SXSW2017 TRADE SHOW、オースティンコンベンションセンター、平成29年3月12日〜15日 [刊行物等] https://www.facebook.com/masaru.sumi、平成29年4月5日 [刊行物等] Filament.Inc創業2周年イベント、ちゃやまちプラザ MBS本社1階、平成29年4月9日 [刊行物等] SXSW2017 報告会、Wonder LAB Osaka、平成29年5月11日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る打楽器演奏装置は、打面を叩いて演奏する打楽器の演奏に用いられる。このような打楽器の例として、前面または上面を打面とするカホン、或いは上面及び/又は前面と、左右の側面及び後面のうちの2面の計3面又は4面を打面とするカホンが挙げられる。この他、上面や前面を打面とするドラム(ドラムセット)、コンゴ、ボンゴ、鼓、和太鼓等にも前記打楽器用演奏装置は利用可能である。このように本発明に係る打楽器演奏装置の対象は典型的には側面(前面を含む)や上面の少なくとも一つを打面とする打楽器であるが、打楽器以外の楽器であって打面として利用可能な面を有する楽器(例えばピアノやギター、バイオリン等)も演奏対象に含まれる。また、本来は楽器として利用されない器具(例えば食器や鍋等の調理具、タンスや机等の家具)や資材(例えば木板、鉄板等の板材、空き缶、ガラス瓶)等を、前記打楽器演奏装置により演奏することも可能である。
【0012】
本発明に係る打楽器演奏装置の一態様としては、前面または上面に打面が形成された打楽器の前側または上側に着脱可能に固定された本体部、前記本体部に対してアーム支持部によって一端が固定されたアーム、前記アームの他端に着脱可能に固定されたアームヘッドから成り、電子制御によって駆動された前記アームの前記アームヘッドが前記打楽器の同一打面を叩くことで音が発せられる装置が挙げられる。
【0013】
また、別の態様の打楽器演奏装置は、
a) 前記打楽器の打面と所定の間隔をおいて対向するように該打楽器に取り付けられる本体部と、
b) 前記本体部に取り付けられたアーム支持部と、
c) 前記アーム支持部に回動可能に支持された、先端部にアームヘッドを有するアームと、
d) 前記アームヘッドが前記打面を押圧する状態と前記打面から離間する状態に前記アームを回動変位させる駆動装置と、
e) 制御プログラムに基づき前記駆動装置を制御する制御装置と、
f) 使用者による操作に基づき駆動指令信号を前記制御装置に出力する操作装置と
を備える。
【0014】
上記打楽器用演奏装置を使用するときは、打楽器の打面と所定の間隔をおいて、且つ前記打面と対向するように本体部を打楽器に取り付ける。つまり、打楽器の前面が打面であるときは打面の前側に、打楽器の上面が打面であるときは上面の上側に本体部が取り付けられることになる。本体部を取り付ける位置(高さ位置、左右位置、または前後位置)によってアームヘッドが打面を押圧する箇所が異なるため、本体部の取り付け位置を調整することにより、任意の打音を発生させることができる。
【0015】
前記本体部は、接着剤やネジ、釘等によって前記打楽器に固定するようにしても良いが、前記本体部が該本体部を前記打楽器に着脱可能に取り付けるための取付部材を備えるようにすると、打楽器を演奏する毎に任意の位置に本体部を取り付けることができる。
【0016】
また、前記本体部及び前記アーム支持部が、それぞれ該本体部に該アーム支持部を取り付けるための取付部を備え、前記本体部の取付部及び前記アーム支持部の取付部の少なくとも一方が、該本体部に対する該アーム支持部の取り付け位置を変更可能に構成されていることが好ましい。この構成によれば、アームヘッドが打面を叩く位置を変更することができる。打楽器の種類によっては、打面の叩く位置によって音色が大きく変わることがあり、そのような打楽器の場合にアーム支持部の取り付け位置を変更することにより、音色の調整を行うことができる。例えばカホンは、打面の中央を叩くと低い音を発し、角(かど)付近を叩くと高い音が発する。また、打面のうち、その裏面に弦が張られている箇所の近くの箇所を叩いた場合と、前記弦が張られた箇所から遠い箇所を叩いた場合とでは、近くの箇所を叩いた方が弦の音が大きく鳴る。また、打楽器に本体部が取り付けられた状態で本体部に対するアーム支持部の取り付け位置を変更することができる。
【0017】
また、前記アーム支持部が、前記本体部に着脱可能に取り付けられることが好ましい。さらに、前記本体部に取り付けられるアーム支持部の数は1個に限らず複数個でも良い。前記本体部に複数のアーム支持部が取り付けられる構成(つまり、本体部が、アーム支持部を取り付けるための支持部取付部を複数備える構成)においては、前記駆動装置が、前記複数のアーム支持部に支持された前記アームをそれぞれ独立的に駆動する複数の駆動部を備えると良い。この構成によれば、打面の異なる複数箇所を複数のアームヘッドで同時に叩いたり、タイミングをずらして叩いたりすることができる。また、この構成と、前述の打面を叩く位置を変更可能な構成とを組み合わせることで、アームヘッド毎に異なる音色を発生させることができ、音色の組み合わせのバリエーションを広げることができる。さらに、一部のアームヘッドは打面を押圧したまま、残りのアームヘッドで打面を叩くようにすることもできるため、打音のバリエーションを広げることができる。
【0018】
上記打楽器演奏装置は、打楽器に本体部が取り付けられた状態で使用者が操作装置を操作すると、該操作装置から駆動指令信号が出力され、この駆動指令信号に基づき制御装置は制御プログラムに従って駆動装置を駆動させる。この結果、アームが回動変位してアームヘッドが打楽器の打面を押圧した状態と打面から離間した状態とに変化する(つまり、アームヘッドが打面を叩く)。演奏したい楽曲に合わせたテンポやリズム、強さ等でアームヘッドが打面を叩くように駆動装置を駆動させる制御プログラムを予め設定しておくことにより、使用者は操作装置を操作するだけで打楽器を演奏することができる。
【0019】
好ましくは、上記打楽器演奏装置では駆動装置は本体部又はアーム支持部に設けられる。また、操作装置は本体部に設けてもよいが、本体部とは別に設け、操作装置と制御装置とが有線または無線で相互に信号を送受信できるようにすると良い。なお、制御装置は本体部または本体部と操作装置の両方に設けられるのが好ましい。前記操作装置を本体部とは別に設ける構成では、操作装置をフットスイッチにすれば、本発明の打楽器用演奏装置が取り付けられる打楽器とは別の楽器を手で演奏することができる。
【0020】
操作装置や制御装置は、打楽器演奏装置専用の装置として構成しても良いが、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の電子機器に専用の制御・処理ソフトウエアをインストールし、このソフトウエアを該電子機器上で動作させることで具現化される構成としても良い。また、操作装置や制御装置の機能の一部を、例えばインターネットなどの情報通信技術により、遠隔地で実行可能な構成にしても良い。
【0021】
また、使用者による操作装置の操作によりアームヘッドが打面を叩く強さ、テンポ、リズムを含む演奏条件を変更できるようにしても良い。この構成は、例えば、前記操作装置が、前記演奏条件を設定するための複数の操作部を備え、これら操作部の操作に応じた演奏条件を含む駆動指示信号を出力することで実現することができる。このような構成によれば、即興の演奏など、楽曲に縛られない自由な演奏を行うことができる。
【0022】
また、本発明の打楽器用演奏装置においては、前記アームヘッドが前記打面を叩く力を調整するための調整部材を備えることが好ましい。これにより、打楽器の種類に基づき設定された、或いは、演奏する楽曲の種類に基づき設定された強さでアームヘッドに打面を叩かせることができる。
【0023】
また、前記駆動装置は、ソレノイドアクチュエータ等の、電磁力を利用した駆動機構から構成することが好ましい。この構成では、駆動装置に供給する電流を制御することにより、アームヘッドが打面を叩く力を調整することができる。
【0024】
また、前記本体部、前記アーム、及び前記アームヘッドのうちの少なくとも一つが、前記アームヘッドが前記打面を押圧するタイミングに応じて発光、消光を繰り返す発光装置を備えると、打楽器の演奏を華やかなものにすることができる。
【0025】
また、上記打楽器演奏装置は、
前記本体部に着脱可能に取り付けられる複数種類のアーム支持部であって、それぞれ重量が異なるアームヘッドを先端に有するアームを支持するアーム支持部と、
前記複数種類のアーム支持部について、それぞれが支持する前記アームの回動変位特性に関する情報であるアーム情報を記憶するアーム情報記憶部とを備え、
前記制御装置は、前記本体部に取り付けられた前記アーム支持部が支持する前記アームのアーム情報と前記制御プログラムに基づき前記駆動装置を制御することが好ましい。
前記アームの回動変位特性とは、或るアームに回動を開始させるために必要な力の大きさとそのアームの重量の関係、同じ力をアームに加えたときの回動変位量とアームの重量との関係等をいう。また、アームの回動変位特性に関する情報とは、前記回動変位特性に基づき求められた、各アームに適した駆動装置の制御パターン等をいう。
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
各実施形態の打楽器演奏装置の説明に先立ち、該演奏装置により演奏される打楽器の一例であるカホンについて
図1A及び
図1Bを参照して説明する。なお、以下の実施形態では、演奏対象となる打楽器としてカホンを例に挙げて説明するが、上述したように、本発明は、カホンを含め、打面を有する打楽器全般(例えば、ドラム(ドラムセット)、コンゴ、ボンゴ、鼓、和太鼓等の太鼓類)、その他の楽器、器具等を演奏対象とすることができる。
【0027】
カホン100は、木製の縦長の直方体状の中空箱体からなり、通常、床18の上に直接置いて演奏される。カホン100は前面101の厚みがその他の面の厚みよりも薄くなっており、一般的には前面101が打面とされるが、場合によっては上面102や左側面103及び右側面104も打面とされる。
図1A及び
図1Bに示すカホン100は、後面105に1個の円形状のサウンドホール106が形成されているが、左側面103又は右側面104にサウンドホールが形成されていても良い。例えば左側面103にサウンドホールが形成されている場合は、カホン100の内部であって前面101の裏側に複数本(
図1Aでは4本)の弦107が張られている。
【0029】
図7は本実施形態に係る打楽器演奏装置10(以下、演奏装置10という)の全体構成を示す概略図である。演奏装置10は、装置本体10Aと操作装置17とを備える。
図2は、装置本体10Aの正面図であり、
図3はカホン100の前面に取り付けられた状態で示す装置本体10Aの斜視図である。
図2及び
図3に示すように、装置本体10Aは、本体部11と、該本体部11に固定された3個のアーム支持部14と、これらアーム支持部14のそれぞれに回動自在に取り付けられたアーム12と、該アーム12の先端に固定されたアームヘッド13とを備えている。
【0030】
本体部11は、カホン100の打面(前面)の前側に配置されたアーム取付プレート11aと、該アーム取付プレート11aの両端から後方に延びる挟持部11b、11c(挟持部11bは
図7にのみ示す)とから構成されている。挟持部11b、11cの間隔はカホン100の前面の左右の幅よりもやや小さく設定されており、挟持部11b、11cの間にカホン100の打面の左右の縁部を嵌め込むことにより本体部11はカホン100に固定される。このとき、アーム取付プレート11aをカホン100の打面から1〜2mm程度離間させる。これにより、カホン100の打面をアームヘッド13が叩いたときの、本体部11による、打面の振動への影響を低減できる。
【0031】
3個のアーム支持部14は、アーム取付プレート11aに固定されている。詳しい図示は省略するが、3個のアーム支持部14はネジによってアーム取付プレート11aに固定される。また、
図4に示すように、アーム12は、アーム支持部14の外部に位置するアーム本体121と、アーム支持部14の内部に位置するL字状の基端部122とから成る。アーム本体121の先端部にアームヘッド13が取り付けられている。
【0032】
カホン100に対する本体部11の取り付け高さを変更したり、アーム12の長さを変更したりすることで、アームヘッド13がカホン100の打面を叩く部位を変更することができる。また、アーム取付プレート11aに対するアーム支持部14の、該プレート11aにおける幅方向及び高さ方向の取り付け位置も適宜変更可能である。アーム支持部14の取り付け位置をカホン100の打面の幅方向及び高さ方向にスライドすることで、両手でカホン100を叩くときのような高低さまざまなドラム音を発生させることができる。
【0033】
アームヘッド13は天然ゴム、シリコーンゴムやその他の合成ゴム、軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム、繊維、木材、樹皮(コルク)、樹脂など様々な材料から形成することができる。また、アームヘッド13の形状は直方体状、円柱状、球状など種々の形状にすることができる。アームヘッド13の材料や形状を変化させることで、アームヘッド13がカホン100を叩いたときのドラム音の音色や音量を変化させることができる。
【0034】
図4〜
図6に示すように、アーム12の基端部122にはシャフト24が固定されている。シャフト24はアーム支持部14内の軸受(図示せず)に回転自在に支持されている。また、アーム支持部14内には、軸受に支持されたシャフト24とほぼ平行となるようにバネ支え軸23が固定されている。シャフト24の基端部122の両側に位置する部分にはダブルトーションバネ25の2個のコイル部がそれぞれ挿通されており、ダブルトーションバネ25の2個のコイル部を連結する部分は基端部122の下側に掛け渡されている。また、ダブルトーションバネ25の両端部はバネ支え軸23に係止されている。ダブルトーションバネ25は、アームヘッド13が打面を叩く力を調整するための調整部材として機能する。
【0035】
アーム12の基端部122には、ジョイント26を介してプル型のソレノイドアクチュエータ20が連結されている。ソレノイドアクチュエータ20は本発明の駆動装置(駆動部)に相当する。ソレノイドアクチュエータ20は、ハウジング201と該ハウジング201の内部に収容された円筒状のソレノイドコイル202と、該ソレノイドコイル202の内部に配置された可動鉄芯203とを有している。
ソレノイドコイル202に電流が流れることにより発生する電磁力によって、可動鉄芯203はソレノイドコイル202内に引き込まれる。
【0036】
図5に示すように、ソレノイドコイル202に電磁力が発生していないときは、可動鉄芯203はソレノイドコイル202の外に突出している状態にあり、このとき、アーム12はバネ25による負荷が小さい。一方、
図6に示すように、ソレノイドコイル202に電流が流れて電磁力が発生すると、矢印
Bで示すように、可動鉄芯203がソレノイドコイル202の中に引き込まれ、これに伴いアーム本体121が、ダブルトーションバネ25の弾性力に抗して、シャフト24を中心に矢印
A方向に回動し、この結果、アーム本体121の先端のアームヘッド13が打面を押圧する。このとき、アーム12はバネ25による負荷が大きい。ソレノイドコイル202の電磁力がなくなると、ダブルトーションバネ25の復元力によって、アーム本体121がシャフト24を中心に反矢印
A方向に回動し、
図5に示す位置に戻る。なお、ソレノイドコイル202の位置やバネ25の配置は一例であり、適宜変更することができる。
【0037】
図7に示すように、カホン100の左側面の前部には制御箱15が配置されている。この制御箱15は、本体部11の左側の挟持部11bに固定されている。制御箱15の内部には、アーム12の駆動に必要な電子回路が収容されている。この電子回路は、3個のアーム支持部14の内部に収容されたソレノイドアクチュエータ20に接続されている。また、制御箱15には、電源アダプタ16と前記操作装置17が接続されている。操作装置17は4個のフットスイッチを備えており、これらのフットスイッチが押圧操作されると、該フットスイッチは所定の駆動指令信号を電子回路に出力する。電子回路には、フットスイッチ毎の電流供給リズム(各アーム支持部14内のソレノイドコイル202に供給される電流の周期、電流値等)が予め記憶されており、電子回路に各フットスイッチからの駆動指令信号が入力されると、そのフットスイッチに応じたリズムで、本体部11に取り付けられているアーム支持部14内のソレノイドアクチュエータ20のソレノイドコイル202にそれぞれ電流を供給する。
【0038】
従って、電源アダプタ16から制御箱15(電子回路)に電力が供給された状態で4個のフットスイッチのいずれかが操作されることにより、所定の周期及び強さで各アーム支持部14が備えるアーム12が繰り返し回動してアームヘッド13がカホン100の打面に対して振り下ろされ、アームヘッド13がカホン100の打面を叩くことで音が発生する。また、操作されるフットスイッチが切り換えられることにより、アームヘッド13がカホン100の打面を叩くリズムが変更される。つまり、使用者は、フットスイッチを選択的に押圧操作するだけで、カホン100を演奏することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、制御箱15内の電子回路にフットスイッチ毎の電流供給リズムを予め記憶しておくようにしたが、制御箱15内にパソコンやスマートフォンなどの電子端末機器19と双方向通信可能な通信回路を収容し、該通信回路を通じて電子端末機器19から電流供給リズムに関するデータを受信するようにしても良い。また、使用者はフットスイッチの操作に代えて電子端末機器19を通じて、ソレノイドコイル202に対する電流供給の開始や停止を指示したり、電子回路に記憶されている電流供給リズムの内容を変更したりするようにしても良い。
【0040】
<第2実施形態>
図8〜
図13を参照して第2実施形態に係る打楽器演奏装置の構成を説明する。なお、ここでは、既に説明した第1実施形態と同一又は対応する構成要素については数字の下二桁が共通する符号を付し、適宜説明を省略する。
図8は本実施形態に係る打楽器演奏装置110(以下、演奏装置110という)の全体構成を示している。この図に示すように、演奏装置110は装置本体110Aと制御装置115Aと操作装置117とを備えている。操作装置117は、5個のフットスイッチ117a〜117e、これらフットスイッチの操作に応じて点灯するLEDランプ118a〜118e、制御盤115Bを備えている。フットスイッチ117aは演奏装置110による演奏の開始及び停止を指示するためのスイッチであり、フットスイッチ117b〜117eは、演奏装置110が演奏する楽曲データを指定するためのものである。詳しくは後述する。
【0041】
図9はカホン100に取り付けられた状態で示す装置本体110Aの正面図である。
図8及び
図9に示すように、装置本体110Aは、1個の本体部111と、これに取り付けられた1ないし複数個のアーム支持部114と、該アーム支持部114が備えるアーム112及びアームヘッド113等とを有する。なお、
図9では制御装置115Aの図示を省略している。
【0042】
図10A〜
図10Cに示すように、本体部111は、U字状の金属製のフレーム131と、該フレーム131の両端部に取り付けられた挟持部132、133とから構成されている。フレーム131は、本体部111をカホン100に取り付けたときに打面とほぼ平行な状態で該打面と対向する平板部131aと、その上下のU字状部131bとから成る。フレーム131は1枚の金属板を折曲することにより、平板部131aとU字状部131bを形成しており、該フレーム131の内部は中空になっている。平板部131aには、アーム支持部114を取り付けるための孔131cが複数形成されている。本実施形態では、孔131cが支持部取付部として機能する。
【0043】
挟持部132、133はフレーム131の両側にそれぞれ取り付けられている。このうち、一方の挟持部132は、フレーム131にネジ止めされたプラスチック製のブロック132aと、該ブロック132aに貼り付けられたゴム製のシート132bとから構成されている。他方の挟持部133は、フレーム131にネジ止めされたプラスチック製のブロック133aと、該ブロック133aに2本のボルト133bを介して連結されたプラスチック製の可動板133cと、該可動板133cに貼り付けられたゴム製のシート133dとから構成されている。シート132bとシート133dは互いに向かい合うようにブロック132aと可動板133cに貼り付けられている。
【0044】
また、本体部111の内部であってフレーム131のU字状部131bの裏側にはテープ状の発光部材200が貼り付けられている。この発光部材200は、シート材に多数のLEDが装着されたものである。
【0045】
本体部111は次のようにカホン100に取り付けられる。まず、挟持部132のシート132bと挟持部133のシート133dをカホン100側に向けて、カホン100の打面(前面)の前側に該打面と平行に平板部131aを配置する。そして、本体部111を後方に移動させてカホン100の打面に近づけるとともに挟持部132、133のシート132b、133dをカホン100の打面の左右側部に宛がう。このとき、シート132b、133dは、その平板部131a側の端部の一部がカホン100の打面とフレーム131の間に突出しているため、本体部111をカホン側に近づけても必ずカホン100の打面との間にシート132b、133dの厚み分(1〜2mm程度)だけ隙間が生じる(
図11参照)。そして、シート132b、133dとカホン100の左右側部の間が空いているときは、ボルト133bを回して可動板133cを挟持部132のブロック132a側に近づける。これにより、ブロック132aと可動板133cによってカホン100が強く挟持され、以て本体部111がカホン100に固定される。カホン100から本体部111を取り外すときはボルト133bを逆に回せば良い。このように、本実施形態では、ブロック132a、133a、可動板133c、ボルト133b等が取付部材を構成する。
【0046】
図12A及び
図12Bに示すように、アーム支持部114は、収容部114aとアーム支持部114を平板部131aの孔131cにネジにより固定するための例えば4個の長孔114bとを有する。収容部114aの内部にはソレノイドアクチュエータと該アクチュエータの動きをアーム112に伝えるジョイント等が収容されている。アクチュエータ及びジョイント並びにジョイントとアーム112の連結構造等は第1実施形態と同じであるため、図示及び説明を省略する。
【0047】
アーム支持部114の4個の長孔114bを、平板部131aの孔131cのいずれかにあてがい、ネジを螺挿することにより、アーム支持部114が平板部131aに取り付けられる。長孔114bをあてがう孔131cの位置によって平板部131aに対するアーム支持部114の左右方向位置が決まり、ネジを取り付ける長孔114bの位置によって平板部131aに取り付けるアーム支持部114の上下方向の位置が決まる。このような構成により、平板部131aに対するアーム支持部114の左右方向及び上下方向の取り付け位置を適宜変更することができる。
【0048】
アーム112の先端にはヘッド取付部112aが固定されている。ヘッド取付部112aにはアリ溝112bが形成されており、アームヘッド113はこのアリ溝112bに嵌合する突部113aを有している。従って、ヘッド取付部112aに対してアームヘッド113を着脱自在に取り付けることができる。
図12A及び
図12Bに示すアームヘッド113は、円形状の基板に、この基板とほぼ同じ直径の円形状のパッドを取り付けた構成を有する。また、
図13A及び
図13Bに示すアームヘッド113は、三角形状の基板の3個の角部に円形状のパッドを取り付けた構成を有する。このように打面を押圧する部分の形状やパッドの材質が異なる複数種のアームヘッド113を用意しておき、演奏する楽曲の種類に応じてアームヘッド113を付け替えるようにすると、より、演奏のバリエーションを広げることができる。また、劣化したアームヘッド113の交換も容易に行うことができる。
【0049】
図8に示すように、本体部111の左側には電子回路が収容された制御箱115Aが取り付けられている。この制御箱115Aには、電源アダプタ116と前記操作装置117が接続されている。
【0050】
図14は、本実施形態に係る演奏装置110の機能ブロック図である。この図に示すように、制御箱115Aの電子回路は、I/Oインターフェース1151、アーム検出部1152、アーム駆動部と発光駆動部を有する駆動部1153、制御部1154、入力部1155、アーム情報記憶部1156を備えている。また、制御盤115Bは、制御部1157、入力部1158、曲情報記憶部1159を備えている。
【0051】
制御盤115Bの曲情報記憶部1159には楽曲データが記憶されている。楽曲データとしては、例えばMIDI規格による楽曲データが挙げられるが、これに限定されない。楽曲データには、演奏開始からの時間、拍数、リズムパターン等に関するデータが含まれる。
【0052】
入力部1158は、例えばスマートフォンやパソコン等の外部機器119を通じて曲情報記憶部1159に記憶する楽曲データを入力するためのものである。なお、外部機器119には、インターネットを通じて取得した楽曲データ、外部機器119上で作成した楽曲データを保持しており、これらの楽曲データが利用される。また、外部機器119を操作することにより、入力部1158を通じて曲情報記憶部1159に記憶されている楽曲データの内容を書き換えたり、4個のフットスイッチ117b〜117eに割り当てる4種類の楽曲データを設定したりすることもできる。なお、必ずしも4個のフットスイッチ117b〜117eのそれぞれに異なる種類の楽曲データを割り当てる必要はなく、複数のフットスイッチに同じ楽曲データを割り当てるようにしても良い。また、4個のフットスイッチの全てに楽曲データを割り当てる必要はなく、楽曲データが割り当てられていないフットスイッチが存在しても良い。
【0053】
本体部111はアーム支持部114用の複数の接続端子(図示せず)を備える。I/Oインターフェース1151は、発光部材200及び前記接続端子に接続されたアーム支持部114が備えるソレノイドアクチュエータと制御箱115Aとの間の信号の入出力を制御する。
【0054】
アーム情報記憶部1156には、本体部111に取り付けられているアーム支持部114が備えるアーム112の回動変位特性に関する情報(アーム情報)が記憶されている。アーム情報は、例えばアーム112の種類と、アームヘッド113が打面を叩く強さ(音量)と、ソレノイドアクチュエータの駆動制御に関する情報からなる。ソレノイドアクチュエータの駆動制御に関する情報は、各種類のアーム112の重量や長さ、ダブルトーションバネ25(
図4〜6参照)の弾性力、ソレノイドアクチュエータ20の大きさ(
図4〜6参照)等に基づいて設定されたものである。詳しくは後述する。
【0055】
入力部1155は、信号線SLを通じて制御盤115Bから送られてくるデータを制御部1154に入力する。制御盤115Bから送られてくるデータには、曲情報記憶部1159に記憶されている楽曲データ、スマートフォンやパソコン等の外部機器119から入力部1158を通じて制御盤115Bに入力されたアーム情報が含まれる。つまり、アーム情報記憶部1156に記憶されるアーム情報は、外部機器119から制御盤115Bを通じて入力される。また、外部機器119を操作することにより、制御盤115Bを通じて、或いは、直接アーム情報記憶部1156に記憶されているアーム情報の内容を変更することも可能である。
【0056】
そのため、外部機器119には、本体部111に取り付け可能な複数種類のアームのアーム情報が予め記憶されている。外部機器119はインターネットを通じて取得したアーム情報、或いは外部機器119上で作成したアーム情報を記憶している。そして、使用者が外部機器119を操作して、複数種類のアーム情報の中から、本体部111の各接続端子に取り付けられたアーム支持部114が備えるアーム112のアーム情報を選択し、送信すると、制御盤115Bの制御部1157は、入力部1158を通じて外部機器119から送られてくるアーム情報を受信し、これを制御箱115Aに送る。制御箱115Aの制御部1154は、入力部1155を通じてアーム情報を受信し、アーム情報記憶部1156に記憶する。アーム情報記憶部1156は、本体部111の接続端子のそれぞれに対応した記憶域を備えており、受信されたアーム情報は、対応する記憶域に保存される。
【0057】
次に、演奏装置110によりカホン100を演奏するときの具体的な動作について説明する。
まず、演奏装置110がカホン100を演奏していない状態において「再生及び停止」を指示するフットスイッチ117aが操作されると、制御部1157はフットスイッチ117b(スイッチ1)に割り当てられている楽曲データを曲情報記憶部1159から読み出して制御箱115Aに送信する。このとき、制御部1157は、フットスイッチ117a及び117bに対応するLEDランプ118a及び118bをそれぞれ点灯させる。
【0058】
制御部1154は、制御盤115Bから送られてくる楽曲データを入力部1155を通じて受信すると、この楽曲データとアーム情報記憶部1156から読み出したアーム情報とに基づき、駆動部1153を制御して各アーム112のソレノイドアクチュエータを駆動する。これにより、本体部111に取り付けられているアーム支持部114(
図9に示す例では3個のアーム支持部114)のアーム112が適宜のリズムで回動してアームヘッド113がカホン100の打面101を叩く。
また、制御部1154は、楽曲データに基づき駆動部1153を制御し、例えばアームヘッド113がカホン100の打面101を叩くタイミングに合わせて発光部材200のLEDを発光させる。
【0059】
演奏装置110がカホン100を演奏している状態で「再生及び停止」を指示するフットスイッチ117aが操作されると、演奏が停止される。また、演奏装置110が演奏している楽曲データが割り当てられているフットスイッチ(スイッチ1)とは別のフットスイッチ(スイッチ2〜4)が操作されると、制御部1157はそのフットスイッチに対応する楽曲データを曲情報記憶部1159から読み出して制御箱115Aに送信する。これにより、制御部1154は、新たに送られてきた楽曲データに基づき駆動部1153を制御してソレノイドアクチュエータを駆動させる。この結果、それまでとは異なるリズムでアーム112が回動してアームヘッド113がカホン100の打面101を叩く。このようにして、演奏装置110は4種類の楽曲データから選ばれた任意の楽曲データに基づく演奏を繰り返す。なお、制御部1154は、新たな楽曲データ送られてくると、それまでの楽曲データに基づく制御を新たな楽曲データに基づく制御に直ちに切り替えても良いが、適切なタイミング(例えば、演奏ループの切れ目)で切り替えることが好ましい。
【0060】
ここで、アーム情報の一つであるアーム重量と楽曲データとに基づくソレノイドアクチュエータの駆動制御について
図15を参照しつつ説明する。この実施形態では、制御部1154はPWM制御により駆動部1153を制御してソレノイドアクチュエータを駆動させることとする。アームの重量はアームの素材や長さ、アームヘッドの種類によって決まる。
図15の(1)〜(4)の各チャートの横軸は時間を、縦軸は電圧値を示している。また、各チャート中、長方形状の図形は駆動パルスを、太線の実線は実効電圧を、Tは発音時刻を、t0は楽曲データの入力時刻を、S1〜S4はソレノイドアクチュエータの駆動開始時刻を、m1〜m4はソレノイドアクチュエータの駆動開始から発音までの時間を、r1、r2、r31、r32、r41、r42は実効電圧値を、それぞれ示している。
【0061】
図15(1)は重量が大きいアームを用いて大音量で打面を叩くときの制御パターンを示しており、
図15(2)は重量が小さいアームを用いて大音量で打面を叩くときの制御パターンを示している。重量が大きいアームは重量が小さいアームよりも追従性が悪いため、ソレノイドコイルへの電流の供給が開始されてアームが回動を開始し、アームヘッドが打面に当接する位置に達するまでに時間がかかる。つまり、ソレノイドアクチュエータの駆動開始からアームヘッドが打面を叩くまで(発音まで)に時間がかかる(m1>m2)。そこで、楽曲データを受信してから駆動開始までの時間を短くする(S1<S2)。
【0062】
図15(3)は重量が大きいアームを用いて小音量で打面を叩くときの制御パターンを示しており、
図15(4)は重量が小さいアームを用いて小音量で打面を叩くときの制御パターンを示している。大音量で打面を叩くときと同様、小音量で打面と叩くときも、重量が小さいアームよりも重量が大きいアームを、楽曲データを受信してから駆動開始までの時間を短くする(S3<S4)。ただし、小音量のときは、アームが打面を叩く力を小さくするために、駆動開始から所定の時間が経過するまでは、アームの駆動を開始させるために必要な実効電圧値を確保し、その後、実効電圧を小さくすべくパルスのデューティー比を小さくする。
なお、ここではアーム112の重量を例に挙げて説明したが、アーム112の長さによってソレノイドアクチュエータの制御パターンを変更しても良い。また、アームの重量と長さの両方に基づいてソレノイドアクチュエータの制御パターンを変更しても良い。
【0063】
このようにアームの重量に応じてソレノイドアクチュエータの駆動を制御することにより、楽曲データによるアームヘッド113がカホン100の打面101を叩くタイミングと、実際にアームヘッド113が打面101を叩くタイミングの間に生じるずれを小さくすることができる。
【0064】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような適宜の変更が可能である。
【0065】
<発光装置の変形例>
図16A、
図16Bは、アーム112に沿ってテープ状のLED301を貼り付けるとともに、アームヘッド113の周囲にテープ状のLED302を貼り付けた例を示す。この場合、アームヘッド113が打面を叩くタイミングに合わせてLED301、302が点灯するように該LED301、302の発光を制御すると良い。また、アーム112の回動する方向に応じてLED301が矢印C方向又は反矢印C方向に順に点灯するようにしても良い。
【0066】
<アーム支持部の変形例>
図17は、2個のアーム112を備えたアーム支持部114Aが2個、本体部111に取り付けられた例を示す。
図18は、長さが異なるアームをそれぞれ1個ずつ備えた3個のアーム支持部114が本体部111に取り付けられた例を示している。
図19は、2個のアーム112を備えたアーム支持部114Aが1個、1個のアームを備えたアーム支持部114が2個、それぞれ本体部111に取り付けられた例を示している。
図17及び
図19に示すアーム支持部114Aは2個のアーム112を駆動するための駆動装置(図示せず)を備える。該駆動装置は、1個の駆動部(例えばソレノイドアクチュエータ)によって2個のアーム112をまとめて駆動する構成でも良く、2個の駆動部を備え、これら駆動部がそれぞれ1個のアーム112を駆動する構成でも良い。
【0067】
図20は、本体部111に3個のアーム支持部が取り付けられた例を示している。これらのうち中央のアーム支持部114Bは左右両側のアーム支持部114よりもサイズが大きく、且つ、アーム支持部114のアームヘッドよりも重いアームヘッド113のアーム112が支持されている。また、アーム支持部114が備える駆動装置よりも大型で高パワーの駆動装置(図示せず)を備えている。この構成により、アーム支持部114B及びアーム支持部114のアームヘッド113が打面を叩く強さの組み合わせを幅広くすることができる。また、アーム支持部114が備えるアームよりも重いアーム
ヘッドを備えたアームを扱うことができる。
【0068】
<本体部に対するアーム支持部の取り付け方の変形例>
図21、
図22は、1個のアームを備えたアーム支持部114が3個、本体部111に取り付けられた例を示している。
図21は3個のアーム支持部114のうち2個はアーム112が上向きに、1個のアーム支持部114はアーム112が下向きに、本体部111に取り付けられている。
図22は、3個のアーム支持部114がいずれもアーム112が下向きになるように本体部111に取り付けられている。
【0069】
なお、
図17〜
図22に示す構成は一例にすぎず、本体部111にどのような形態のアーム支持部を取り付けるか、どのような向きでアーム支持部を取り付けるか、或いは本体部111に取り付けるアーム支持部の個数や組み合わせは適宜変更が可能である。また、本体部111に取り付けられるアーム支持部の数は複数に限らず1個でも良い。
【0070】
<操作装置の変形例>
図23は、外部機器としてのパソコン219が操作装置を兼用する例を示している。この構成では、フットスイッチではなくパソコン219の操作によって装置本体110Aやアーム112の駆動開始や停止等が指示される。
【0071】
<アームの駆動制御の変形例>
上述の第2実施形態では、使用者が本体部111に取り付けられたアーム支持部114の種類に応じたアーム情報を外部機器119を通じて入力するようにしたが、アーム支持部114に識別子を取り付け、本体部111のフレーム131にアーム支持部114が取り付けられると、制御部1154がアーム支持部114の識別子を読み出すようにしても良い。識別子が入力された制御部1154は、その識別子に対応するアーム情報をアーム情報記憶部1156から読み出し、そのアーム情報に基づく適宜のプロトコルで駆動部1153を制御してソレノイドアクチュエータを駆動する。
【0072】
<その他の変形例>
操作装置は、使用者が発する音声を認識して駆動指令信号を出力するようにしても良い。この構成においては、使用者が音声を発することが、「使用者による操作」に相当する。
【0073】
上述の第2実施形態では、曲情報記憶部1159に予め記憶された楽曲データに基づき制御部1154がソレノイドアクチュエータを駆動する構成としたが、制御装置に楽曲データ生成部を接続し、この楽曲データ
生成部が生成した楽曲データに基づき制御装置が駆動装置を制御するようにしても良い。この例では、例えば楽曲データ生成部が、打楽器演奏装置の対象とする打楽器とは別の楽器が演奏するリズムに合う楽曲データを自動的に生成する構成にすると良い。