(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544769
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】石材構造物の補強用枠体及び当該補強用枠体を用いた補強方法
(51)【国際特許分類】
E04H 13/00 20060101AFI20190705BHJP
【FI】
E04H13/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-140216(P2015-140216)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-20292(P2017-20292A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】512308889
【氏名又は名称】有限会社匠栄技研
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】本橋 昭次
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3006643(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0205872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定幅の複数の板体を組み合わせて略方形状の枠状板体を設け、
当該枠状板体の外周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低外壁を立設し、
当該低外壁とは間をあけて上記枠状板体の内周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低内壁を立設したことを特徴とする、石材構造物の補強用枠体。
【請求項2】
一定幅の複数の板体を組み合わせて略方形状の枠状板体を設け、
当該枠状板体の四隅に支持体を夫々立設し、
当該枠状板体の外周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低外壁を立設し、
当該低外壁とは間をあけて上記枠状板体の内周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低内壁を立設したことを特徴とする、石材構造物の補強用枠体。
【請求項3】
上記補強用枠体の低外壁の各隙間を低内壁の各隙間よりも小さくしたことを特徴とする、上記請求項1又は2に記載の石材構造物の補強用枠体。
【請求項4】
石材を積層して形成された構造物の耐震補強方法において、
上記補強用枠体を下位に位置する石材の上面の略中央に載置し、
下位に位置する石材の上面上であって上記補強用枠体の外側に複数の支持体を設け、
当該補強用枠体の低内壁で囲まれた内側の空間に接着材を充填し、
上記上位に位置する石材を上記下位に位置する石材の上面の補強用枠体及び上記支持体上に載置し、
上記上位に位置する石材は上記支持体と共に上記接着材によって固着支持されることを特徴とする、上記請求項1又は3の何れかに記載の石材構造物の補強用枠体を使用した補強方法。
【請求項5】
石材を積層して形成された構造物の耐震補強方法において、
上記補強用枠体を下位に位置する石材の上面の略中央に載置し、
当該補強用枠体の低内壁で囲まれた内側の空間に接着材を充填し、
上記上位に位置する石材を上記下位に位置する石材の上面の補強用枠体及び上記支持体上に載置し、
上記上位に位置する石材は上記支持体と共に上記接着材によって固着支持されることを特徴とする、上記請求項2又は3の何れかに記載の石材構造物の補強用枠体を使用した補強方法。
【請求項6】
上記下位に位置する石材の上面であって、当該上面に載置した補強用枠体の四方の外側に、上位に位置する石材の下面の外周縁よりやや内側の位置に、上記支持体より高さが低い外側枠体を設け、
上記下位に位置する石材の上面、上記上位に位置する石材の下面及び上記外側枠体の外側面で形成される外周凹部内にシーリング材を充填することを特徴とする、上記請求項4又は5に記載の石材構造物の補強用枠体を使用した補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、墓碑、石碑又は石灯籠等の石材構造物の耐震補強用枠体及び当該補強用枠体を用いた耐震補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石材構造物の一例として、ここでは、和型墓碑Bを使って説明する。従来、一般的な、和型墓碑Bは、
図8に示す様に、上から竿石21、上台22、中台23、芝台24となっており、芝台24の下はカロートと呼ばれる納骨棺となっている。この様な墓石においては、例えば、
図9に示す様に、上台22の上に竿石21を立てる際、上台22の上面の、竿石21を立てる場所内の四隅付近に、竿石21と上台22の間に隙間25(およそ3mm〜5mm)を確保するために、硬質ゴムから成るライナー27を載置する。
【0003】
その後、各ライナー27の上に固定剤28を塗布して、その上から竿石21を載置し、当該竿石21と上台22の隙間25の外周にモルタル29等を充填して固定している。ここで、
図9で示すように、モルタル29は四辺形枠状に形成される。
【0004】
この様な中、昨今では、地震によって被害を受けた墓石の補修及び補強が求められている。特に、竿石は上述の通り、上台の上に立設されるものであるので倒壊等の被害を受け易い。
【0005】
また、竿石が倒壊まではしていないが、この竿石と上台との間のモルタル等が剥がれ落ちたり、当該モルタル等にひびが入ったりするなどの被害を受けることがある。この様な状態を放置していると、再度、地震が起こった場合、やはり竿石は倒壊してしまうこととなる。
【0006】
さらに、大きくて扁平なため、竿石に比べて被害を受け難い上台、中台、芝台であっても、モルタル等が剥がれ落ちたり、横にずれたりすることがある。
【0007】
この様な事態の招来を防ぐための墓石の耐震補強方法として、特許文献1に記載されたものがある。これは、複数の石材を積層して形成された構造物において、下に位置する石材上であって、石材と石材の隙間の外周に型枠を設け、当該型枠に設けた通孔からコーキングガンの細管から成るノズルを当該型枠内に挿入して当該ノズルの吐出口を上に重ねられた石材の下面の中央部へ挿入して上記型枠内に接着剤を注入し、硬化させることによって補強を行うと言うものである。
【0008】
また、特許文献2に記載されたものがある。これは、複数の所定形状の墓石ブロックを積層してなる墓石において、墓石ブロックの大台(1A)の上面に、中台(1B)を載せると当該中台(1B)の重量で薄くなるように弾性変形する、枠状に設けられた弾性緩衝材(4)が狭着されており、この弾性緩衝材(4)によって、互いに接着される大台(1A)と中台(1B)の間に接着隙間(5)が設けられており、この接着隙間(5)に軟質接着材(3)が充填されて、大台(1A)や中台(1B)の墓石ブロックが軟質接着材(3)を介して接着されると言うものである。
【特許文献1】特開2014−105514号公報
【特許文献2】特開平11−93460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の方法を実施しようとすると、型枠に設けた通孔からコーキングガンの細管から成るノズルを隙間の内部に挿入して当該ノズルの吐出口を上に重ねられた石材の下面の中央部へ挿入して型枠内に接着剤を注入すると言う様に、コーキング等に熟練した技術を有するものでないと実施(施工)が難しい。
【0010】
また、上記特許文献2を実施した場合、大台(1A)の上面に、中台(1B)を載せると当該中台(1B)の重量で薄くなるように弾性変形する弾性緩衝材(4)が狭着されており、例えば、この中台(1B)を金属製の支持物で支持するものではなく、そのまま直に中台(1B)を軟質接着材(3)上に載置しており、この時、軟質接着材(3)が周囲へ飛び散り、枠状に配設した上記弾性緩衝材(4)を越えて大台(1A)と中台(1B)の間から外へ飛散することが考えられる。
【0011】
この様に、軟質接着材(3)が弾性緩衝材(4)を超えて周囲へ飛び散り、弾性緩衝材(4)内に充填されるべき軟質接着材(3)が弾性緩衝材(4)外へ流出した場合、大台(1A)や中台(1B)の耐震性の向上としては効率的ではなく、また、これらの後始末をしなければならず、手間と時間が余計にかかる。
【0012】
また、上記特許文献1及び2からも分かる様に、石材構造物に、安価で、容易に、かつ充分な耐震強度を持たせることが出来る補強具及び補強方法は未だ見られないのが現状である。
【0013】
この発明は、これらの点に鑑みて為されたもので、熟練を要さずとも、安価で、容易に、かつ充分な耐震強度を持たせることが出来る、石材構造物の補強用枠体及び当該補強用枠体を用いた補強方法を提供して上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、
一定幅の複数の板体を組み合わせて略方形状の枠状板体を設け、当該枠状板体の外周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低外壁を立設し、当該低外壁とは間をあけて上記枠状板体の内周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低内壁を立設
した、石材構造物の補強用枠体とした。
【0015】
請求項2の発明は、
一定幅の複数の板体を組み合わせて略方形状の枠状板体を設け、当該枠状板体の四隅に支持体を夫々立設し、当該枠状板体の外周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低外壁を立設し、当該低外壁とは間をあけて上記枠状板体の内周縁に内外に通じた多数の隙間を有する低内壁を立設
した、石材構造物の補強用枠体とした。
【0016】
請求項3の発明は、上記補強用枠体の低外壁の各隙間を低内壁の各隙間よりも小さくした、上記請求項1又は2に記載の石材構造物の補強用枠体とした。
【0017】
請求項4の発明は、石材を積層して形成された構造物の耐震補強方法において、上記補強用枠体を下位に位置する石材の上面の略中央に載置し、下位に位置する石材の上面上であって上記補強用枠体の外側に複数の支持体を設け、当該補強用枠体の低内壁で囲まれた内側の空間に接着材を充填し、上記上位に位置する石材を上記下位に位置する石材の上面の補強用枠体及び上記支持体上に載置し、上記上位に位置する石材は上記支持体と共に上記接着材によって固着支持される、上記請求項1又は3の何れかに記載の石材構造物の補強用枠体を使用した補強方法とした。
【0018】
請求項5の発明は、石材を積層して形成された構造物の耐震補強方法において、上記補強用枠体を下位に位置する石材の上面の略中央に載置し、当該補強用枠体の低内壁で囲まれた内側の空間に接着材を充填し、上記上位に位置する石材を上記下位に位置する石材の上面の補強用枠体及び上記支持体上に載置し、上記上位に位置する石材は上記支持体と共に上記接着材によって固着支持される、上記請求項2又は3の何れかに記載の石材構造物の補強用枠体を使用した補強方法とした。
【0019】
請求項6の発明は、上記下位に位置する石材の上面であって、当該上面に載置した補強用枠体の四方の外側に、上位に位置する石材の下面の
外周縁よりやや内側の位置に、上記支持体より高さが低い外側枠体を設け、上記下位に位置する石材の上面、上記上位に位置する石材の下面及び上記外側枠体の外側面で形成される外周凹部内にシーリング材を充填する、上記請求項4又は5に記載の石材構造物の補強用枠体を使用した補強方法とした。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、2、4及び5の各発明によれば、載置する石の大きさや重量に合わせて、必要な接着材を充填できる補強用枠体を選び、これを使用することにより、耐震強度の高い石材と石材の接合が可能となる。また、この補強方法を使用すれば、熟練を要さずとも、容易に、墓石等の石材構造物の充分な耐震補強を行うことが出来る。
【0021】
また、上記補強用枠体の形成に際しては、市販されている安価な材料等を使用しているので、この補強用枠体を非常に安価に形成することが出来る。これらの結果、安価で信頼性の高い、石材構造物の耐震補強方法を提供することができるものである。
【0022】
請求項3の発明によれば、補強用枠体の低外壁の各隙間を低内壁の各隙間よりも小さくしたので、上位の石材が下位の石材上に載置された際、低内壁の内側に充填された接着材は押圧され、低内壁の多数の隙間を通って接着材が低内壁外へ流出し易く、また、低内壁内を減圧し易く、当該低内壁内を速やかに安定した状態にすることが出来る。また、上記低外壁の各隙間が小さいので低内壁から流出した接着材が低外壁外へ流出するのを阻止することが出来る。また、低外壁及び低内壁に多数の隙間を設けたことにより、低内外壁内外の空気を流通させて低内壁の内側の接着材と接触させることが出来、当該接着材を速やかに硬化させることが出来る。これらのことから、低内壁の内側に充填された接着材を無駄なく使用することが出来る。
【0023】
請求項6の発明によれば、補強用枠体の四方の外側に外側枠体を設け、下位に位置する石材、上位に位置する石材及び外側枠体で形成される外周凹部内にシーリング材を充填することが出来るので、上記外側枠体内をより確実に密閉することが出来、例え、低外壁を越えて出てきた接着材があったとしても、この外側枠体によって外部へ出るのをほぼ完全に防ぐことが出来る。また、外部から外側枠体内に雨水等が侵入することが無く、耐震補強効果を長期間に渡り維持することが出来、耐震補強方法として信頼性が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施の形態例1の補強用枠体を上台の上に載置した状態の平面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の補強用枠体の平面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の補強用枠体の一部斜視図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の補強用枠体を上台の上に載置し、その上から竿石を載置した状態の一部断面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例2の補強用枠体を中台の上に載置し、さらに、その外側に外側枠体を設けた状態の平面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例2において、中台の上に外側枠体を載置し、その上から上石を載置した状態の一部断面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例1の補強用枠体の大中小3個を1セットにした様子を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施の形態例1)
以下、この発明の実施の形態例1の石材構造物の補強用枠体Aを図に基づいて説明する。まず、プラスティック製の細幅で長尺な板体を用意し、この板体を四本に切断後、これらをつなげて、
図2及び
図3に示すように、正方形状の枠状板体1を設ける。
【0026】
この正方形状の枠状板体1の外周縁に、内外に通じた多数の隙間を有する低外壁2を前記外周縁に沿って立設する。ここで立設する低外壁2は、プラスティックから成る枝幹が森林の様に縦横に伸びた導水バッカー(商標名、化研マテリアル株式会社製)を使用して、切れ目が無く、連続した低外壁2を形成し、接着材を使って上記枠状板体1の外周縁上に立設する。また、この低外壁2の四隅に硬質ゴムから成る立方体形状の支持体4を夫々立設する。
【0027】
さらに、上記低外壁2とは間をあけて上記枠状板体1の内周縁に、内外に通じた多数の隙間を有する、連続した低内壁3を前記内周縁に沿って立設する。ここでは、上記低外壁2と同様に導水バッカーを使用して、切れ目が無く、連続した低内壁3を形成し、接着材を使って上記枠状板体1の内周縁上に立設する。これらの様にして、補強用枠体Aを形成する。ただし、ここでは、上記低外壁2の方を低内壁3よりも各隙間の目が小さいものを使用する。以上により、補強用枠体Aが構成される。
【0028】
次に、補強用枠体Aの使用方法を説明する。
図8に示す様な、上から竿石21、上台22、中台23、芝台24から形成される和型墓碑Bにおいて、
図1に示すように、上台22の上面の中央に上記補強用枠体Aを載置、固定し、この補強用枠体Aの低内壁3で囲まれた上台22の上面上に、およそ低内壁3の高さまで接着材5を充填する。
【0029】
上記低内壁3のサイズ及びこの低内壁3内に充填する接着材5の量としては、上に乗せる石材の大きさや重量をあらかじめ測定しておき、これらの大きさや重量に依って石材と石材を固着するのに必要な接着材の量が決定され、当該接着材5の量によって上記補強用枠体Aのサイズを選定する。
【0030】
その後、
図4に示すように、竿石21を上記上台22の上面の補強用枠体A上に載置する。この際、竿石21は補強用枠体Aの四隅の支持体4により支持される。竿石21が補強用枠体A上に載置されることにより、
図1及び4に示すように、低内壁3の内側に充填された接着材5は押圧されて、低内壁3の多数の隙間を通って接着材5が低内壁外へ流出するが、多くは低外壁2と低内壁3の間の空間内に止まる(
図4において矢印で示す)。
【0031】
この時、
図1及び
図4に示すように、低内壁3の各隙間を低外壁2の各隙間よりも大きくしているので、低内壁3の内側に充填された接着材5が低内壁3外へ流出し易く、低内壁3の内側を減圧し易く、当該低内壁3の内側を速やかに通常の状態にすることが出来る。また、低外壁2の隙間が低内壁3の隙間よりも小さくなっているので、低内壁3から流出してきた接着材5が当該低外壁2内に止まり、低外壁2外、即ち、補強用枠体Aの外へ流出するのを阻止することが出来る。
【0032】
さらに、低外壁2及び低内壁3に多数の隙間を設けたことにより、低外壁2及び低内壁3の内外の空気を流通させて低内壁3の内側の接着材と接触させることが出来、当該接着材を速やかに硬化させることが出来る。
【0033】
また、上台22上に竿石21を載置した当初は、上記竿石21は上記支持体4で支持され、その後、上記接着材5が硬化した後は、上記支持体4と共に上記接着材5によって上記上台22上に支持固着される。
【0034】
この様に、上記実施の形態例1の補強用枠体Aを採用することにより、熟練を要さずとも、容易に、墓石等の石材構造物の充分な耐震補強を行うことが出来る。これには、まず、上に載置する石の大きさや重量を基に要求されている耐震強度を保持するための接着材の量を計算し、当該接着材が低内壁3の内側に納まる補強用枠体Aを設ける。この大きさの補強用枠体Aを用いることにより、耐震強度の高い石材と石材の接合が可能となる。
【0035】
従って、この実施の形態例1の補強用枠体Aの大きさを選定することによって、定められている耐震基準のおよそ15倍の耐震補強を行うことも出来る。また、上記補強用枠体Aを形成するには、市販されているプラスティック製の板体、接着材及び導水バッカー(商標名)等を使用しているので、非常に安価に補強用枠体Aを形成することが出来る。
【0036】
(実施の形態例2)
次に、この発明の実施の形態例2の石材構造物の補強方法を図に基づいて説明する。ここでも、
図8に示す、竿石21、上台22、中台23、芝台24から形成される和型墓碑Bを使って説明する。ここでは、上台22と中台23の接合について説明する。中台23の上面に上記補強用枠体Aを設け、接着材5を充填するところまでは上記実施の形態例1と同様である。
【0037】
この実施の形態例2では、
図5に示すように、上記中台23の上面に載置した補強用枠体Aの四方の外側であって、この中台23の上に載置する上台22の下面の
外周縁よりやや内側の対向する位置に、硬質ゴム製で角柱状の部材を使って、連続した方形状の外側枠体6を設ける。この外側枠体6の高さは、上記支持体4よりも低いものとなっており、中台23の上に上台22を載置した場合でも、
図6に示すように、外側枠体6の上面と上台22との下面との間には空間が形成される。この空間によって、外側枠体6を設け、上台22を中台23の上に載置した後も、上記接着材5が硬化するまでの時間、補強用枠体Aの内外に空気の流通を確保することが出来る。
【0038】
上記補強用枠体Aの内側の接着材5が硬化した後、
図6に示すように、上記中台23の上面、上台22の下面及び外側枠体6の外側面によって形成される外周凹部9にシーリング材7を充填し、さらに、その外周面にビニールテープ8などを張り巡らせて外側枠体6内を密閉する。このビニールテープ8などは、上記シーリング材7が硬化した後は撤去すれば美観を損なわない。
【0039】
この様に、上記実施の形態例2の補強方法を使用することにより、上記外側枠体6及び補強用枠体A内をより確実に密閉することが出来、もし、低外壁2を越えて流出してきた接着材5があったとしても、この外側枠体6によって外部へ流出するのをほぼ完全に防ぐことが出来る。また、外部から外側枠体6内に雨水等が侵入することが無く、耐震補強効果を長期間に渡り維持することが出来、耐震補強方法として信頼性が高いものである。
【0040】
上記実施の形態例1では、あらかじめ複数の大きさの補強用枠体Aを生産しておき、現場の墓石の大きさや重量に基づいて最適な大きさの補強用枠体Aを使用すれば、より手間が省け、生産効率は上がる。
【0041】
さらに、
図8に示す、竿石21、上台22、中台23、芝台24から成る和型墓碑Bの場合、使用する補強用枠体は大中小の3個となり、その場合、大まかであるが3個の補強用枠体の大きさの比率はだいたい決まったものとなっている。そこで、和型墓碑の場合、
図7に示すように、夫々耐震強度に応じた量の接着材が入る大きさの大中小の3個の補強用枠体を1セットして扱うことができ、この様なセットを複数持っていれば、急な作業依頼があったとしても対応できることとなる。
【0042】
また、上記実施の形態例1では、補強用枠体Aの低外壁2及び低内壁3を導水バッカーによって形成しているが、低外壁2等を形成するのはこれに限らず、この実施の形態例1の低外壁2及び低内壁3として作用し、効果を得ることが出来るならば、他のものを使用してももちろん良い。
【0043】
また、上記低外壁2の各隙間の目を低内壁3の隙間の目より小さいものを使用しているが、これらは同じでも良い。
【0044】
また、上記実施の形態例1では、上記補強用枠体Aの低外壁2の四隅の支持体4を硬質ゴムから設けているが、支持体4を形成する材料は硬質ゴムに限るものではなく、接着材5が硬化するまでの時間及びそれ以後、竿石21等を支持出来るものであれば他の材料から成るものでも良い。
【0045】
また、上記支持体4を補強用枠体Aの低外壁2の四隅に夫々立設しているが、支持体としては、低内壁3の四隅に設けても良く、さらには、補強用枠体Aとは別に、柱状等の支持体として、当該補強用枠体Aの外周に複数個設けても良い(図示書略)。
【0046】
また、上記実施の形態例2では、外側枠体6を使用しているが、この外側枠体6は必ずしも必要と言うものではなく、無くても良く、さらに、この外側枠体6を硬質ゴムから設けているが、外側枠体6を形成する材料は硬質ゴムに限るものではなく、シーリング材7を充填する外周凹部9を形成出来、当該外側枠体6及び補強用枠体A内を密閉出来るものならば他の材料から成るものでも良い。
【0047】
さらに、上記中台23の上面、上台22の下面及び外側枠体6の外側面によって形成される外周凹部9にシーリング材7を充填した後、その外周面にビニールテープ8を張り巡らせているが、ビニールテープ8は必ずしも必要と言うものではなく、無くても良い。
【0048】
A 補強用枠体 B 和型墓碑
1 枠状板体 2 低外壁 3 低内壁
4 支持体 5 接着材 6 外側枠体
7 シーリング材 8 ビニールテープ 9 外周凹部