(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係わる入力装置100の上方斜視図である。
図2は、入力装置100の分解斜視図である。
図3(a)は、
図1に示すZ1側から見た上面図であり、
図3(b)は、
図1に示すY2側から見た正面図である。
図4は、
図3(a)に示すIV−IV線における断面図である。
【0030】
本発明の第1実施形態の入力装置100は、
図1及び
図3に示すような外観を呈し、
図2に示すように、操作者の操作により回転動作する操作体11を有した操作部材1と、操作体11を回転自在に支持する支持体3と、操作体11に対して回転負荷を付与する回転負荷付与機構F5と、操作体11の操作位置を検出する位置検出手段P6と、を備えて主に構成されている。なお、本発明の第1実施形態の入力装置100では、操作体11の回転軸11j(
図2を参照)を回転中心とした回動方向(回転方向)への操作が可能な回転型の入力装置となっている。
【0031】
また、第1実施形態の入力装置100では、上述の構成要素に加え、本体の側壁の一部を構成する側壁スペーサS17と(
図2を参照)、回転負荷付与機構F5の中に配設されるスリットスペーサS57と(
図4を参照)、を有している。そして、この回転型の入力装置100は、図示しない操作部材1の操作部(操作ノブや操作つまみ等)が操作体11の一端側に係合され、操作者により操作部が把持されて操作され、操作体11が両方向に回転動作するようになっている。
【0032】
先ず、入力装置100の操作部材1について説明する。操作部材1は、操作者が把持する操作部(図示していない)と、操作部が係合され操作部の回転操作に伴って回転動作する操作体11と、を有している。
【0033】
操作部材1の操作部は、操作者により把持されて操作される操作ノブや操作つまみ等の部材であり、操作体11の一端側に係合されて用いられる。また、その形状は、操作し易いような形状等を考慮され、適用される製品によって任意に決められる。
【0034】
操作部材1の操作体11は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT、poly butylene terephtalate)等の合成樹脂を用い、
図2に示すように、円柱形状の柱部11cと、柱部11cの中心を貫き回転中心ある軸中心ACを中心とした回転軸11jと、操作体11の他端側に設けられ柱部11cより一回り大きいサイズのリング部11rと、を有して、一体に射出成形されて作製されている。そして、操作体11は、回転軸11jの軸中心ACを回転中心として回転(回動)するように構成されている。また、
図4に示すように、OリングR7が、柱部11cに挿通されて、柱部11cとリング部11rとの繋ぎ目部分に配設されている。ここに装着されているOリングR7は、可動部材55が収容される収容空間を閉じる機能も有している。これにより、この収容空間に充填された磁気粘性流体75が収容空間から漏れ出すのを防止している。
【0035】
次に、入力装置100の支持体3について説明する。支持体3は、
図4に示すように、操作体11の回転軸11jの端部が当設される軸受け部3jと、操作体11の柱部11cが挿通されて柱部11cを案内する軸支持部3sと、軸支持部3sを押さえて安定させるための蓋部3uと、から主に構成されている。そして、この支持体3が、操作体11の回転が自在になるように操作体11(操作部材1)を支持している。
【0036】
また、支持体3の軸受け部3jは、
図4に示すように、操作体11の回転軸11jと対向する側が凹形状となっている。そして、軸受け部3jは、入力装置100が組み立てられた際には、この軸受け部3jの凹形状部分に回転軸11jの端部が当接されて支持され、操作体11の回転動作が容易に行われることを許容している。
【0037】
また、支持体3の軸支持部3sは、中央部に貫通穴を有したリング形状をしており(
図2を参照)、
図4に示すように、回転負荷付与機構F5(後述する磁気発生機構FM5の第1ヨーク15の上ヨーク15A)の中央の上部に設けられた凹部(後述する
図6(a)を参照)に収容されている。そして、操作体11の柱部11cが軸支持部3sの貫通穴に挿通されて、軸支持部3sが柱部11c(操作体11)を回転可能に支持している。
【0038】
また、支持体3の蓋部3uは、平板状で中央部に貫通穴を有した円形形状をしており(
図2を参照)、
図3(a)に示すように、回転負荷付与機構F5(上ヨーク15A)に載置されている。そして、軸支持部3sと同様に、操作体11の柱部11cが蓋部3uの貫通穴に挿通されている。なお、軸受け部3j、軸支持部3s及び蓋部3uは、操作体11と同様にして、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の合成樹脂を用い、射出成形されて作製されている。
【0039】
次に、入力装置100の回転負荷付与機構F5について説明する。
図5は、
図4に示すQ部分の拡大断面図である。
図6(a)は、回転負荷付与機構F5の上方斜視図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示すY2側から見た正面図である。
図7は、
図6に示す第2ヨーク25及び可動部材55を省略した下方斜視図である。
【0040】
回転負荷付与機構F5は、
図4に示すように、回転軸11jと係合して回転動作する可動部材55と、
図5に示すように、可動部材55と隙間5gを挟んで一方側に対向する磁気発生機構FM5と、この隙間5gに存在する磁気粘性流体75と、を備えて構成されている。更に、回転負荷付与機構F5の磁気発生機構FM5は、
図6(a)に示すような円柱形状を呈し、
図5に示すように、通電により磁界を発生させるコイル35と、コイル35を囲むように設けられた第1ヨーク15と、可動部材55と隙間5gを挟んで他方側に対向する第2ヨーク25と、コイル35への通電を制御する操作制御部45(図示していない)と、を有して構成されている。そして、回転負荷付与機構F5は、操作者による回転操作を受けて、操作体11に回転負荷付与機構F5からの負荷を与えることにより、操作者に対して操作部材1の操作部(操作ノブや操作つまみ等)へ回転負荷を付与するように構成されている。
【0041】
先ず、回転負荷付与機構F5の磁気発生機構FM5について説明する。磁気発生機構FM5のコイル35は、金属線材が環状に巻回されて形成されており、
図4に示すように、可動部材55の一方側(
図4に示すZ1側)に配設されている。そして、このコイル35に通電することにより、コイル35の周囲に磁界が発生するようになる。なお、コイル35は、金属線材が巻回されて束ねられた形状となっているが、
図2では、簡略化して、表面を平坦にして示している。
【0042】
次に、磁気発生機構FM5の第1ヨーク15は、
図4に示すように、コイル35を囲むようにして設けられ、コイル35の一方側(
図4に示すZ1側)とコイル35の内側側壁(環状形状の軸中心AC側の側壁)とを覆う上ヨーク15Aと、コイル35の外側側壁とコイル35の他方側(
図4に示すZ2側)の一部とを覆う横ヨーク15Bと、コイル35の他方側の一部を覆う下ヨーク15Cと、を有して構成されている。そして、第1ヨーク15は、
図5に示すように、可動部材55の一方側に配設されて、横ヨーク15Bの一部及び下ヨーク15Cが可動部材55と隙間5g(第1隙間5ga、
図5を参照)を挟んで対向している。この第1ヨーク15により、コイル35から発生する磁束が閉じ込められ、効率的に可動部材55側に磁界が作用することとなる。
【0043】
また、第1ヨーク15は、
図4及び
図7に示すように、可動部材55と対向する側において、横ヨーク15Bと下ヨーク15Cとで形成されたスリット15s(ヨークスリット)を有しており、第1ヨーク15の可動部材55と対向する側が分割された形状となっている。ここで、可動部材55と対向している横ヨーク15Bの部分を、第1ヨーク15の第1対向部TB5とし、可動部材55と対向している下ヨーク15Cの部分を、第2対向部TC5としている。
【0044】
また、
図4及び
図5に示すように、このスリット15s幅は、第1ヨーク15と可動部材55との隙間5g(第1隙間5ga)より狭くなっている。これにより、コイル35への通電により磁界が発生し、例えば第1ヨーク15の第1対向部TB5から第2対向部TC5にかけて磁路が可動部材55側に広がって形成されるようになる。
【0045】
また、本発明の第1実施形態では、第1ヨーク15のスリット15sの部分には、
図7に示すように、リング形状のスリットスペーサS57(
図2を参照)が収納されている。このスリットスペーサS57は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の合成樹脂を用いて形成されており、第1ヨーク15(横ヨーク15B)の第1対向部TB5と第1ヨーク15(下ヨーク15C)の第2対向部TC5とを磁気回路においても分割している。なお、本発明の第1実施形態では、第1ヨーク15が、上ヨーク15A、横ヨーク15B及び下ヨーク15Cの3つの部品で構成されているが、これに限るものではなく、2つの部品或いは4つ以上の部品で構成されていても良い。また、第1ヨーク15にスリット15sを好適に用いた構成であるが、スリット15sを有さない構成であっても良い。
【0046】
次に、磁気発生機構FM5の第2ヨーク25は、
図2に示すような円盤形状で形成されており、
図4、
図5及び
図6(b)に示すように、可動部材55の他方側に配設され、可動部材55と隙間5g(第2隙間5gb、
図5を参照)を挟んで対向している。これにより、コイル35から発生した磁束が、第1ヨーク15の第1対向部TB5から第2ヨーク25に、第2ヨーク25から第1ヨーク15の第2対向部TC5にかけて確実に貫くこととなる。このため、可動部材55の回転動作する方向(
図6(a)に示すX−Y平面を横切る方向)と垂直な方向(
図6(b)に示すX−Y平面に垂直なZ方向)に確実に磁路が形成される。
【0047】
また、第2ヨーク25には、
図2に示すように、中央部分に下方(
図2に示すZ2方向)まで貫通した貫通穴25と、略円形形状に一段下方に下がった溝部25mと、溝部25mの一部から下方にまで貫通したスリット穴25sと、が形成されている。この貫通穴25には、
図4に示すように、操作体11の回転軸11j及び支持体3の軸受け部3jが収容される。
【0048】
また、溝部25mは、後述するフィルム基材96(位置検出手段P6の固定側電極26)の外形が収まるサイズで形成されており、この溝部25mにフィルム基材96が収容される。また、スリット穴25sには、フィルム基材96の取出し部96t(
図2を参照)が挿入される。
【0049】
また、第1ヨーク15(横ヨーク15B)の外周側と第2ヨーク25の外周側との間には、本体の側壁の一部を構成する側壁スペーサS17が設けられている。この側壁スペーサS17も、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)等の合成樹脂を用いて形成されており、第1ヨーク15(横ヨーク15B)と第2ヨーク25とを磁気回路において分割している。
【0050】
また、
図4に示すように、第1ヨーク15と第2ヨーク25と側壁スペーサS17とで、操作体11の回転軸11jに沿った方向(
図4に示すZ方向)と直交する方向(X−Y平面の方向)に狭い収容空間を形成している。この狭い収容空間に、回転負荷付与機構F5の可動部材55が配設されている。
【0051】
次に、磁気発生機構FM5の操作制御部45は、集積回路(IC、integrated circuit)を用いており、コイル35への通電量、通電のタイミング等を制御している。具体的には、例えば、操作者の操作により回転操作がされた際に、操作体11の操作位置を検出する位置検出手段P6からの検出信号を受けて、操作制御部45は、コイル35にある一定量の電流を流したり、操作体11の操作位置に応じて電流量を変化させたりしている。
【0052】
また、操作制御部45は、図示していない回路基板に搭載されて、コイル35と電気的に接続されているとともに、位置検出手段P6(後述する検出制御部66)と接続されている(後述する
図8を参照)。そして、操作制御部45は、コイル35へ通電した電流の電流値を位置検出手段P6に送信している。なお、操作制御部45及び回路基板は、磁気発生機構FM5の近傍に好適に配設されているが、これに限るものではない。例えば、操作制御部45は、フレキシブルプリント基板(FPC、Flexible printed circuits)等でコイル35及び検出制御部66と接続され、適用される製品の母基板(マザーボード)に搭載されていても良い。
【0053】
次に、回転負荷付与機構F5の可動部材55について説明する。可動部材55は、鉄等の軟磁性体から形成されており、しかも導電性を有した導電体である。そして、可動部材55は、
図2に示すように、回転軸11jの軸中心ACを中心とした貫通穴を有した基部55dと、基部55dと一体に形成され軸中心ACを中心とした円盤形状(円形形状)の円盤部55eと、から構成されている。
【0054】
可動部材55の基部55dは、
図4に示すように、操作体11のリング部11rの下部側で操作体11の回転軸11jと係合している。これにより、操作体11の両方向への回転動作に伴って、可動部材55の円盤部55eが両方向へ回転移動することとなる。
【0055】
可動部材55の円盤部55eは、入力装置100が組み立てられた際には、
図4に示すように、上述した狭い収容空間に収容される。これにより、コイル35から発生した磁束が、第1ヨーク15の第1対向部TB5から可動部材55に、可動部材55から第2ヨーク25に、第2ヨーク25から可動部材55に、可動部材55から第1ヨーク15の第2対向部TC5にかけて、確実に貫くこととなる。このため、可動部材55の回転動作する方向と垂直な方向により確実に磁路が形成される。
【0056】
また、円盤部55eには、
図4に示すように、回転軸11jの軸中心ACを中心とした仮想の円に沿った、つまり円盤部55eの円形形状に沿った一対の円弧を有した矩形状の貫通孔55hが5箇所に設けられている。そして、この貫通孔55hは、いずれも同じ外形形状を有しているとともに、それぞれ等間隔の角度で同一円周上に配設されている(後述する
図8(a)を参照)。また、この貫通孔55hは、後述するが、位置検出手段P6の可動側電極16を形成するための機能を有している。
【0057】
また、円盤部55eには、
図2示すように、回転軸11jの軸中心ACを中心とした仮想のリング形状を4つに分割した円弧形状の可動部スリット55sが形成されている。この可動部スリット55sは、
図4及び
図5に示すように、第1ヨーク15に設けられたスリット15sと対向した位置に設けられている。これにより、コイル35から発生した磁束が、可動部材55により閉じ込められることがなく、第1ヨーク15及び可動部材55を介して第2ヨーク25へ、第2ヨーク25から可動部材55を介して第1ヨーク15へと、確実に貫くことができるようになる。このことにより、第1ヨーク15から第2ヨーク25まで誘導されず上側の磁気粘性流体75や可動部材55だけを通るようにショートカットして第1ヨーク15へ(横ヨーク15Bから第2ヨーク25を介さず下ヨーク15Cへ)導かれる磁束を少なくすることができる。
【0058】
しかも、
図5に示すように、可動部スリット55sの幅が第1ヨーク15のスリット15sの幅よりも小さいので、第1ヨーク15からの磁束の広がりを可動部材55で捕捉することができ、第2ヨーク25まで導くことができる。なお、可動部スリット55sの幅の中心位置とスリット15sの幅の中心位置とが一致するようにすると、より好適である。
【0059】
次に、入力装置100の位置検出手段P6について説明する。
図8は、位置検出手段P6を説明する機能ブロック図である。
図9は、位置検出手段P6を説明する図であって、
図9(a)は、回転負荷付与機構F5の可動部材55の上面図であり、
図9(b)は、位置検出手段P6の固定側電極26が形成されたフィルム基材96の上面図である。なお、説明を分かり易くするため、
図9(a)には、可動側電極16と対向する固定側電極26の固定側電極ランド26rを2点鎖線で示している。また、同様にして、
図9(b)には、可動部材55の貫通孔55hを2点鎖線で示している。
(a)には、
【0060】
位置検出手段P6は、
図8に示すように、可動部材55に設けられた可動側電極16と、可動側電極16と対向する位置に設けられた固定側電極26と、固定側電極26と接続された検出制御部66と、磁気粘性流体75の誘電率を記憶している記憶部86と、を有して構成されている。そして、位置検出手段P6は、可動側電極16と固定側電極26との間の静電容量が可動部材55の回転動作に伴って変化することを利用して、可動部材55の回転動作(回転方向における位置)、ひいては操作体11の回転方向における位置を検出を行うことができる。具体的には、例えば動作の有無、回転方向、回転角度等の検出を行うことができる。このため、位置検出手段P6は、可動部材55に係合されて連動する操作体11の操作位置を検出することができる。この検出の際には、従来例のような磁気センサホイール913及びホールセンサ914を用いていないので、磁気発生機構FM5による磁界の影響を強く受けることがなく、検出精度が低下することがないという効果を奏する。
【0061】
位置検出手段P6の可動側電極16として、本発明の第1実施形態では、可動部材55が導電性を有した導電体であることを利用して、隣合う可動部材55の貫通孔55hの間を静電容量の検出のための電極として用いている。つまり、可動側電極16は、
図9(a)に示すように、隣合う貫通孔55hの間における固定側電極26と対向する部分としており、更に、貫通孔55hで分割された複数(本発明の第1実施形態では6個)の可動側電極ランド16rとしている。これにより、可動側電極16の作製を容易に行うことができる。
【0062】
また、この6個の可動側電極ランド16rは、
図9(a)に示すように、回転軸11jの軸中心ACを中心とした仮想の円の円周上に配設されているとともに、それぞれ等間隔になるように配設されている。つまり、隣合う可動側電極ランド16rのそれぞれの中央位置(配設位置)と軸中心ACとのなす角である第1中心角R1が全て同じ角度になっている。なお、本発明の第1実施形態では、可動側電極ランド16rを6個用いた構成としたが、これに限るものではなく、任意に構成することができる。
【0063】
位置検出手段P6の固定側電極26は、本発明の第1実施形態では、片面のフレキシブルプリント基板(FPC、Flexible printed circuits)を用いており、ポリイミド樹脂(PI、Polyimide)等のフィルム基材96の表面に接着された銅箔をパターニングして作製されている。そして、このパターニングされた面を上方(
図2に示すZ1方向)に向けて、第2ヨーク25の可動部材55と対向する側の面に形成された溝部25mにこのフレキシブルプリント基板(FPC)を載置して貼り付けるようにする。これにより、パターニングされた面の固定側電極26を可動部材55と対向する第2ヨーク25側に設けていることとなる。以上により、コイル35を囲んだ第1ヨーク15に設ける場合と比較して、可動部材55と対向する側に固定側電極26を容易に形成することができる。このことにより、固定側電極26のパターン(特に固定側電極ランド26r)を所望の形にでき、回転動作の検出精度をより向上させることができる。
【0064】
また、固定側電極26には、
図9(b)に示すように、それぞれ分割された複数(本発明の第1実施形態では5個)の固定側電極ランド26rを有している。この5個の固定側電極26は、可動側電極ランド16rと同様に、回転軸11jの軸中心ACを中心とした仮想の円の円周上に配設されているとともに、それぞれ等間隔になるように配設されている。つまり、固定側電極ランド26rのそれぞれの中央位置(配設位置)と軸中心ACとのなす角である第2中心角R2が全て同じ角度になっている。
【0065】
そして、可動側電極ランド16rの第1中心角R1と固定側電極ランド26rの第2中心角R2とが異なる角度となっている。これにより、可動部材55の回転に伴って可動側電極ランド16rと固定側電極ランド26rとの対向面積が少しずつズレて徐々に変化することとなる。このことにより、検出制御部66が静電容量の変化を容易に検出することができ、可動部材55、ひいては操作体11の回転動作を容易に捉えることができる。場合によっては、詳細な回転角度も得ることができる。なお、
図9では、第1中心角R1が60°、第2中心角R2が72°となっているが、この角度に限るものではなく、任意に決めることができる。
【0066】
位置検出手段P6の検出制御部66は、集積回路(IC、integrated circuit)を用いており、図示していないが、固定側電極26と電気的に接続されている。そして、検出制御部66は、前述したように、可動側電極16の可動側電極ランド16rと固定側電極26の固定側電極ランド26rとの間の静電容量の変化を検出している。なお、固定側電極26と検出制御部66との接続は、詳細な図示はしていないが、第2ヨーク25にスリット穴25sに挿入されたフィルム基材96の取出し部96tを介して行われている。
【0067】
また、検出制御部66は、操作制御部45により通電した電流値と予め記憶部86に記憶された誘電率とを用いて、検出した静電容量の容量値を補正している。この記憶部86に記憶された誘電率は、磁気発生機構FM5が発生させる磁界の強さに応じた磁気粘性流体75の誘電率である。これにより、実際の使用時に磁気発生機構FM5で発生させた磁界の強さに応じて僅かに変化した磁気粘性流体75の誘電率の変化を静電容量の容量値に反映させることができる。このことにより、補正した静電容量の容量値から算出することが可能となり、回転動作の検出精度をより一層向上させることができる。
【0068】
位置検出手段P6の記憶部86は、検出制御部66に内蔵された内部メモリを利用している。なお、内部メモリに限らず外部メモリを用いても良い。
【0069】
最後に、回転負荷付与機構F5の磁気粘性流体75について説明する。
図10は、磁気粘性流体75について説明する模式図であって、
図10(a)は、磁界が印加されていない状態の磁気粘性流体75の図であり、
図10(b)は、磁界が印加されている状態の磁気粘性流体75の図である。なお、
図10(b)には、説明を分かり易くするために磁界(磁束)の流れを2点鎖線で示している。
【0070】
磁気粘性流体75は、
図10(a)に示すように、有機溶剤等の溶質SV中に、鉄やフェライト等の磁性を有した微細な磁性粒子JRが分散した物質であって、一般的にMR流体(Magneto Rheological Fluid)と呼称されている。この磁気粘性流体75は、磁界の強さに応じて粘性が変化する特性を有しており、同じような磁性流体(Magnetic Fluid)とは区別されている。両者の形態の大きな違いは粉体の粒子径であり、MR流体の方が1μm〜1mm程度で、磁性流体の方が10nm〜1μm程度で、MR流体の方が磁性流体と比べて粒子径が100〜1000倍程度、大きくなっている。
【0071】
ここで、この磁気粘性流体75における“磁界の強さに応じて粘性が変化する”ことについて簡単に説明する。
【0072】
先ず、磁気粘性流体75に磁界がかかっていない場合、
図10(a)に示すように、磁性粒子JRが不規則に溶質SV中に分散している。この際に、例えば可動部材55が回転動作する(
図10(a)に示すZ方向に対して垂直な面(X−Y平面)での回転)と、比較的低い抵抗力を受けながら可動部材55が容易に回転動作する。
【0073】
次に、磁気発生機構FM5のコイル35に電流が流されて磁界が発生すると、
図10(b)に示すように、磁気粘性流体75に対して作用する磁界に沿って(
図10(b)ではZ方向に沿って)、磁性粒子JRが直鎖状に規則的に揃うようになる。なお、この規則性の度合いは、磁界の強さに応じて変化している。つまり、磁気粘性流体75に対して作用する磁界が強くなればなる程、規則性の度合いが強くなる。そして、この直鎖状に揃った磁性粒子JRの規則性を崩す方向に対して、より強いせん断力が働き、結果として、この方向に対しての粘性が強くなってくる。特に、作用した磁界に対して直交する方向(
図10(b)ではX−Y平面方向)に最も高いせん断力が働いている。
【0074】
そして、このような通電状態(
図10(b)に示す状態)で、可動部材55が回転動作すると、可動部材55に対して抵抗力が生じ、可動部材55に係合した操作体11に、この抵抗力(回転負荷)が伝達するようになる。これにより、回転負荷付与機構F5は、操作者に対して回転操作の回転負荷を付与することができる。その際に、操作制御部45によりコイル35への通電量や通電のタイミング等を制御しているので、操作者に対して任意のタイミングで任意の回転負荷を自由に与えることができる。
【0075】
この“磁界の強さに応じて抵抗力(回転負荷)が強くなる”ことを検証した結果を
図11に示す。
図11は、磁気発生機構FM5のコイル35に流す電流と操作体11にかかるトルクとの関係の一例を表したグラフである。横軸は電流(A)で縦軸がトルク(Nm)である。このトルクは、操作体11にかかる抵抗力(回転負荷)に相当する。
【0076】
図11に示すように、磁気発生機構FM5のコイル35に流す電流を大きくすると、それに伴って発生する磁界が強くなり、この磁界の強さに伴ってトルク、つまり操作体11にかかる抵抗力(回転負荷)が増大するようになる。このようにして、磁気粘性流体75における“磁界の強さに応じて、粘性が変化して、抵抗力が強くなる”ことを利用して、操作体11(操作部材1)に可変の負荷をかけることができる。
【0077】
本発明の第1実施形態では、上述した特性を有した磁気粘性流体75を好適に用いている。そして、磁気粘性流体75は、
図4に示すように、第1ヨーク15と可動部材55との隙間5gである第1隙間5ga(
図5を参照)に配設され、特に、
図5に示すように、第1ヨーク15の第1対向部TB5及び第2対向部TC5と可動部材55との第1隙間5gaに充填されている。これにより、第1ヨーク15(第1対向部TB5)と可動部材55及び可動部材55と第1ヨーク15(第2対向部TC5)にかけて形成された磁束を横切る方向に回転動作する可動部材55に対して、磁気粘性流体75により回転負荷がかかるようになる。このことにより、可動部材55及び回転軸11jを介して操作体11に回転負荷がかかるようになる。従って、良好な操作感触が得られる入力装置100を提供することができる。
【0078】
しかも、本発明の第1実施形態では、
図7に示す第1対向部TB5における磁気粘性流体75に臨む第1対向面15rの面積と第2対向部TC5における磁気粘性流体75に臨む第2対向面15tの面積とが同じである。これにより、磁束の入口と出口とで磁束密度が同等になり、コイル35から発生した磁束を磁気粘性流体75の粘性の制御に効率的に作用させることができる。このことにより、可動部材55に対して均等に回転負荷を付与することができ、より良好な操作感触を操作者に対して与えることができる。
【0079】
更に、本発明の第1実施形態では、可動部材55と第2ヨーク25との隙間5gである第2隙間5gbにも磁気粘性流体75が充填されている。ここに充填された磁気粘性流体75にも、第1ヨーク15(第1対向部TB5)から可動部材55を介して第2ヨーク25に、第2ヨーク25から可動部材55を介して第1ヨーク15(第2対向部TC5)にかけて形成された磁束が作用することとなる。このため、可動部材55の回転動作する方向と垂直な方向に磁性粒子JRを揃えることができ、より強い回転負荷をかけることができる。このことにより、更なる回転負荷を付与することができ、同等の磁界であっても、更に大きな操作感触を操作者に対して与えることができる。
【0080】
以上のように構成された本発明の第1実施形態の操作装置100は、操作部材1の操作量や操作方向に応じた抵抗力や推力等の外力(力覚)を付与する方法として、従来例1のようにモータ810を用いていないので、小型化が図れるとともに、消費電力を低減することができる。しかも、外力(力覚)が付与される際の音も生じることがない。
【0081】
最後に、本発明の第1実施形態の入力装置100における、効果について、以下に纏めて説明する。
【0082】
本発明の第1実施形態の入力装置100は、操作体11の回転軸11jと係合して回転動作する可動部材55と、可動部材55の一方側に配設された磁気発生機構FM5のコイル35及び第1ヨーク15と、第1ヨーク15と可動部材55との隙間5gである第1隙間5gaに充填される磁気粘性流体75と、を備えた構成とした。これにより、コイル35への通電により磁界が発生し、磁路が第1ヨーク15から可動部材55側に広がって形成されて、磁気粘性流体75における磁性粒子JRが磁束に沿って揃うこととなる。このため、第1ヨーク15と可動部材55及び可動部材55と第1ヨーク15にかけて形成された磁束を横切る方向に回転動作する可動部材55に対して、磁気粘性流体75により回転負荷がかかるようになる。このことにより、可動部材55及び回転軸11jを介して操作体11に回転負荷がかかるようになる。また、位置検出手段P6の検出制御部66が、可動部材55の回転動作に伴って変化する、可動部材55に設けられた可動側電極16と対向する位置に設けられた固定側電極26との間の静電容量を検出するので、可動部材55の回転動作(操作体11の回転方向における位置)を検出、例えば動作の有無、回転方向、回転角度等の検出を行うことができる。このことにより、位置検出手段P6が磁気発生機構FM5による磁界の影響を強く受けることがなく、検出精度が低下することがない。従って、良好な操作感触が得られるとともに回転動作の検出精度が向上した入力装置100を提供することができる。
【0083】
また、可動部材55が軟磁性体からなるので、第1ヨーク15(第1対向部TB5)から可動部材55に、可動部材55から第1ヨーク15(第2対向部TC5)にかけて磁路が確実に形成されて、磁気粘性流体75における磁性粒子JRが第1ヨーク15と可動部材55と互いに対向する対向面方向(
図4に示すZ方向)に揃うこととなる。このため、磁性粒子JRが揃った対向面方向を横切る方向に回転動作する可動部材55に対して、より強い回転負荷がかかるようになる。このことにより、可動部材55及び回転軸11jを介して操作体11により強い回転負荷がかかるようになり、より良好な操作感触を操作者に対して与えることができる。
【0084】
また、磁気発生機構FM5が可動部材55の他方側に対向して配設された第2ヨーク25を有するので、第1ヨーク15(第1対向部TB5)から第2ヨーク25に、第2ヨーク25から第1ヨーク15(第2対向部TC5)にかけて磁路が確実に形成される。このため、可動部材55の回転動作する方向と垂直な方向に磁性粒子JRを揃えることができ、より強い回転負荷をかけることができる。このことにより、可動部材55及び回転軸11jを介してより強い回転負荷を操作体11にかけることができる。更に、可動部材55と第2ヨーク25との隙間5g(第2隙間5gb)に磁気粘性流体75が充填されているので、磁束を横切る方向に回転動作する可動部材55に対して、更なる回転負荷を付与することができる。このことにより、同等の磁界であっても、更に大きな操作感触を操作者に対して与えることができる。
【0085】
固定側電極26が第2ヨーク25に設けられているので、コイル35を囲んだ第1ヨーク15に設ける場合と比較して、可動部材55と対向する側に固定側電極26を容易に形成することができる。このことにより、固定側電極26のパターンを所望の形にでき、回転動作の検出精度をより向上させることができる。
【0086】
それぞれ等間隔になるように配設された複数の可動側電極ランド16r及び複数の固定側電極ランド26rの円周上の配設位置(それぞれの第1中心角R1と第2中心角R2)が異なってズレているので、可動部材55の回転に伴って可動側電極ランド16rと固定側電極ランド26rとの対向面積が少しずつズレて徐々に変化することとなる。このことにより、検出制御部66が静電容量の変化を容易に検出することができ、可動部材55、ひいては操作体11の回転動作を容易に捉えることができる。
【0087】
導電体である可動部材55に、回転軸11jの軸中心ACを中心とした仮想の円に沿って、それぞれ等間隔になるように複数の貫通孔55hを設け、隣合う貫通孔55hの間を可動側電極16としたので、可動側電極16の作製を容易に行うことができる。
【0088】
検出制御部66が、操作制御部45により通電した電流値と位置検出手段P6の記憶部86に予め記憶された誘電率とを用いて、検出した静電容量の容量値を補正するので、実際の使用時に磁気発生機構FM5で発生させた磁界の強さに応じて僅かに変化した磁気粘性流体75の誘電率の変化を静電容量の容量値に反映させることができる。このことにより、補正した静電容量の容量値から算出することが可能となり、回転動作の検出精度をより一層向上させることができる。
【0089】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0090】
<変形例1>
上記第1実施形態では、可動部材55が収容される収容空間(第1ヨーク15と第2ヨーク25と側壁スペーサS17とで形成した収容空間)を満たすように磁気粘性流体75が充填されていたが、これに限るものではなく、磁気粘性流体75が隙間5gの少なくとも一部に存在していれば良い。
【0091】
<変形例2>
図12は、本発明の第1実施形態に係わる入力装置100の変形例2を説明する拡大断面図である。上記第1実施形態では、フレキシブルプリント基板(FPC)を用いて位置検出手段P6の固定側電極26を構成したが、これに限るものではない。例えば、
図12に示すように、可動部材55と対向する第2ヨーク25の面を凹状に加工して、その凹状の部分に絶縁層CY6と導電性の電極パターンC6rとを形成して、固定側電極C26の固定側電極ランドC26rとしても良い。その際には、コイル35を囲んだ第1ヨーク15ヨークよりも、表面の加工自由度が高い第2ヨーク25に設ける方が好適である。
【0092】
<変形例3>
上記第1実施形態では、固定側電極26を第2ヨーク25側に設けた構成としたが、第1ヨーク15側に設けた構成でも良い。
【0093】
<変形例4>
上記第1実施形態では、可動部材55の貫通孔55hを用いて、好適に可動側電極16の複数の可動側電極ランド16rとして構成したが、これに限るものではなく、例えば、固定側電極26と同様に、フレキシブルプリント基板(FPC)を用いて可動側電極16としても良い。
【0094】
<変形例5>
上記第1実施形態では、可動部材55が好適に軟磁性体から形成されていたが、これに限るものではなく、合成樹脂等の非磁性体であっても良い。その際には、可動側電極16を別途設ける必要がある。
【0095】
<変形例6>
上記第1実施形態では、固定側電極ランド26rの形状が回転軸11jの軸中心ACを中心とした仮想のリング形状を分割した矩形状(円弧形状)であったが、この形状に限るものではなく、任意の形状にすることができる。
【0096】
<変形例7>
上記第1実施形態では、第1ヨーク15の横ヨーク15Bと下ヨーク15Cとで、第1対向部TB5及び第2対向部TC5を構成したが、下ヨーク15Cのみが可動部材55と対向するようにして、第1対向部TB5及び第2対向部TC5を設けない構成でも良い。
【0097】
<変形例8>
上記第1実施形態では、軟磁性体からなる可動部材55に可動部スリット55sを設けた構成であったが、可動部スリット55sを設けない構成でも良い。その際には、可動部材55を非磁性体とするのが好適である。
【0098】
<変形例9>
上記第1実施形態では、可動部材55が円盤形状を有して構成されていたが、これに限るものではなく、例えば矩形状や多角形形状であっても良い。
【0099】
<変形例10><変形例11>
上記第1実施形態では、可動部材55が回転動作するタイプの回転型の入力装置100であったが、この回転動作に限るものではない。例えば、可動部材が支持体の延在方向に対して交差する方向にスライド動作するスライド型の入力装置であっても良い{変形例10}。また、例えば、支持体の延在方向にプッシュ動作する押圧型の入力装置であっても良い{変形例11}。この押圧型の入力装置の場合、可動部材と第1ヨーク(及び第2ヨーク)とがプッシュ動作方向に対して交差する方向(好ましくは直交方向)で対向するようにし、可動部材と第1ヨーク(及び第2ヨーク)との隙間に磁気粘性流体を充填するように構成すると適切に可動負荷を与えることができる。
【0100】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。