(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーザ光の照射によって前記レーザ光が前記不純物含有膜で吸収されて高温となった前記不純物含有膜からの熱伝導によって前記半導体表層が溶融することを特徴とする請求項3記載のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法。
前記膜形成工程では、前記不純物と溶媒とを有する不純物含有液を前記半導体膜の前記一表面上にコーティングし、その後、焼成して前記不純物含有膜とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法。
前記結晶欠陥は、高濃度の酸素以外の不純物と酸素とによって半導体の結晶面が乱されて、結晶方位または/および結晶格子間隔がずれた積層欠陥を有していることを特徴とする請求項7記載のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法。
半導体の他表面に回路を形成する工程と、前記膜形成工程前に、回路を形成した前記半導体の前記一表面側を研磨して薄層化する工程とを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法。
裏面にゲッタリング層を有する半導体が積層され、積層された半導体内部に貫通電極を有し、前記貫通電極により積層した半導体間が電気的に接続されていることを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハにゲッタリング効果をもたらすゲッタリング技術(非特許文献1参照)は、イントリンシック・ゲッタリング(以下IGという)技術とエクストリンシック・ゲッタリング(以下EGという)技術に分類される。前者は元々シリコンウエハに含まれている酸素を高温熱処理によって凝集析出させ、シリコンウエハ中に欠陥を作り、その周辺に歪み場を形成させることでゲッタリング効果を持たせている。後者はシリコンウエハの外部から歪場や化学作用を与えてゲッタリング効果を持たせるものである。
【0003】
EG技術の中にはレーザ照射法があり、レーザ誘起欠陥をゲッタリング源として利用するものである。例えば、超短パルスレーザ(特許文献1参照)や近赤外レーザ(特許文献2参照)やKrFエキシマレーザ(非特許文献1参照)やQスイッチNd:YAGレーザ(非特許文献2、3参照)を光源として破砕層(結晶欠陥)をSiウエハの表層付近に誘起させ、金属不純物を捕捉(ゲッタリング)、除去することが試みられている。
【0004】
具体的には、特許文献1では、超短パルスレーザー(パルス幅:1.0E−15〜1.0E−8sec;波長300〜1200nm)を照射して、数十μm程度の深さにゲッタリング層(アモルファス層を含む)を作るレーザゲッタリング技術が提案されている。
特許文献2では、近赤外レーザを照射して、厚さ100μm未満のシリコンウエハのある深さに厚さ1μm未満の破砕層を作るレーザゲッタリング技術が提案されている。
EG技術について、非特許文献1ではKrFエキシマレーザによるゲッタリング技術が紹介されており、非特許文献2と非特許文献3ではQスイッチNd:YAGレーザによるゲッタリング技術が紹介されている。
【0005】
特許文献3では、シリコン基板裏面にボロンをイオン注入して、2x10
20/cm
3以上となるボロンをイオン注入することでB12クラスターをシリコン内部に発生させ、このクラスターがシリコン基板中の金属不純物イオンをゲッタリングする技術が考案されている。
【0006】
特許文献4「シリコンウェーハの製造方法」では、シリコン基板裏面に酸素、炭素、窒素の何れか1元素以上の不純物をレーザ照射によってドーピングすることで、従来のチョクラルスキー法による単結晶ウエハ製造では不可能な、部分的に高濃度に不純物がドーピングされたウエハを製造している。この技術ではSiウエハ中の元素を、酸素は1.0×10
18から2.0×10
19/cm
3、炭素は1.0×10
17から1.0×10
18/cm
3、窒素は1.0×10
15から1.0×10
17/cm
3の濃度で存在させ、このウエハに順次不活性ガス雰囲気で1200℃の温度で1時間の高温熱処理(スリップ評価熱処理)を実施した後、酸化雰囲気で800℃の温度で4時間の熱処理に続けて、酸化雰囲気で1000℃の温度で16時間の熱処理を行う二段階熱処理(BMD密度評価熱処理)を施すことで、ゲッタリング能力が高いウエハを製造する技術が考案されている。
【0007】
三次元構造SiPの技術ロードマップ(Semiconductor Technology Roadmap of Japan:STRJ)によれば、近年にはシリコンウエハの厚さが10μmレベルになることが予想され、極薄Siウエハの表層にあるデバイス構造に熱ダメージを与えないようにその裏面にゲッタリング層を新たに形成する必要がある。そのためゲッタリング技術としては低温プロセスが可能なEG法が既に主流となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
三次元積層半導体装置で用いられるシリコンウエハのゲッタリング層形成技術において、低温プロセスが可能なEG法においては、表面側のデバイス構造を設ける面として、裏面側を研削して薄化した後、レーザ光の照射を行っている。しかし、シリコンウエハの厚さが10μmレベルと極薄くなると、形成された破砕層などのダメージにより割れやすいという問題がある。
【0011】
特許文献3の技術では、イオン注入を用いているために装置が高価になるという課題があり、必要なドーズ量が3×10
16/cm
2と多いためプロセス時間がかかるという問題がある。
特許文献4の技術では、Siウエハ中に酸素、炭素、窒素、を固溶させることがレーザ照射の目的であり、ゲッタリング能力の発現にはその後の高温熱処理が不可欠である。したがって、レーザ非照射面にデバイスを形成後に高温熱処理によるゲッタリング層形成処理を行うことはできないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、ゲッタリング処理に際し、不純物含有膜を形成した半導体にレーザ照射を行うことで、半導体への熱ダメージを与えることなく効果的なゲッタリング層を半導体面に形成することができ、シリコンウエハの薄化がなされる場合にも割れなどが生じ難いゲッタリング層を持つ半導体の製造方法、半導体装置の製造方法および半導体装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法のうち、第1の本発明は、ゲッタリング層を持つ半導体の製造方法であって、デバイス構造を設ける面の裏面側である前記半導体の一表面上に、
酸化ボロン膜である不純物含有膜を形成する膜形成工程と、
前記一表面側から前記半導体にレーザ光を照射して前記半導体表層を溶融する溶融工程とを有し、前記溶融工程において、溶融した前記半導体中に不純物がドーピングされて不純物の高濃度領域を形成することで前記ゲッタリング層を形成するものであり、前記レーザ光が、前記不純物含有膜を透過し、前記半導体の表層で吸収される510〜540nmの波長を有し、半値幅が300ns以下で、0.5〜6.0J/cm
2のエネルギー密度で前記不純物含有層に照射されることを特徴とする。
第2の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、前記第
1の本発明において、前記半導体中にドーピングされる不純物は、ボロンと酸素であることを特徴とする。
第
3の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、ゲッタリング層を持つ半導体の製造方法であって、
デバイス構造を設ける面の裏面側である前記半導体の一表面上に、カーボン含有膜またはボロンとカーボンの含有膜である不純物含有膜を形成する膜形成工程と、
前記一表面側から前記半導体にレーザ光を照射して前記半導体表層を溶融する溶融工程とを有し、
前記溶融工程において、溶融した前記半導体中に不純物がドーピングされて不純物の高濃度領域を形成することで前記ゲッタリング層を形成するものであり、
前記レーザ光が、前記不純物含有膜で吸収される510〜540nmの波長を有し、半値幅が300ns以下で、0.5〜6.0J/cm
2のエネルギー密度で前記不純物含有層に照射され、該レーザ光の照射によって高温となった前記不純物含有膜からの熱伝導によって前記半導体表層が溶融することを特徴とする。
第
4の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、前記第
3の発明において、前記レーザ光の照射によって前記レーザ光が前記不純物含有膜で吸収されて高温となった前記不純物含有膜からの熱伝導によって前記半導体表層が溶融することを特徴とする。
第
5の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、前記第
3たは
第4の発明において、前記半導体中にドーピングされる不純物は、カーボンと酸素、ボロンとカーボンと酸素、のいずれかの組み合わせであることを特徴とする。
第
6の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、前記第1〜第
5の本発明のいずれかにおいて、前記膜形成工程では、前記不純物と溶媒とを有する不純物含有液を前記半導体膜の前記一表面上にコーティングし、その後、焼成して前記不純物含有膜とすることを特徴とする。
第
7の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、前記第1〜第
6の本発明のいずれかにおいて、前記高濃度領域には、高濃度不純物に起因する結晶欠陥が形成されることを特徴とする。
第
8の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、前記第
7の本発明において、前記結晶欠陥は、高濃度の酸素以外の不純物と酸素とによって半導体の結晶面が乱されて、結晶方位または/および結晶格子間隔がずれた積層欠陥を有していることを特徴とする。
第
9の本発明のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法は、前記第1〜第
8の本発明のいずれかにおいて、半導体の他表面に回路を形成する工程と、前記膜形成工程前に、回路を形成した前記半導体の前記一表面側を研磨して薄層化する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
第
10の本発明の半導体装置の製造方法は、前記第1〜第
9の本発明のいずれに記載の方法によって製造されたゲッタリング層を持つ半導体を積層し、積層された半導体内部に貫通電極を設け、前記貫通電極により積層した半導体間を電気的に接続することを特徴とする。
【0015】
第
11の本発明の半導体装置は、主表面に回路が形成され、薄化された半導体の裏面側に、第1〜9のいずれかに記載のゲッタリング層を持つ半導体の製造方法によって不純物がドープされて前記半導体中に不純物の高濃度領域によるゲッタリング層が形成されていることを特徴とする。
第
12の本発明の半導体装置は、前記第
11の本発明において、前記不純物含有膜は
酸化ボロン膜またはカーボン含有膜、またはボロンとカーボンの含有膜であり、前記、シリコン中に高濃度にドーピングされる不純物は、ボロンと酸素、カーボンと酸素、ボロンとカーボンと酸素、のいずれかの組み合わせにより構成されていることを特徴とする。
第
13の本発明の半導体装置は、前記第
11または
12の本発明において、前記高濃度領域には、高濃度不純物に起因する結晶欠陥が形成されることを特徴とする。
第
14の本発明の半導体装置は、前記第
13の本発明において、前記結晶欠陥は、高濃度のボロンと酸素によって半導体の結晶面が乱されて、結晶方位または/および結晶格子間隔がずれた積層欠陥を有していることを特徴とする。
第
15の本発明の半導体装置は、前記第
11〜第
14の本発明のいずれかにおいて、裏面にゲッタリング層を有する半導体が積層され、積層された半導体内部に貫通電極を有し、前記貫通電極により積層した半導体間が電気的に接続されていることを特徴とする。
第
16の本発明の半導体装置は、前記第
11〜第
14の本発明のいずれかにおいて、前記半導体が半導体シリコンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、不純物含有膜などの側からレーザ光を照射して不純物含有膜などと半導体表層を溶融することとしたので、イオン注入を用いることなく安価かつ高スループットで高濃度の不純物を半導体表層にドーピングできる。また、溶融した半導体中に不純物が高濃度にドーピングされることで、不純物の高濃度領域が形成され、半導体表層にゲッタリング能力を付与することができるという優れた効果がある。また、レーザ光の照射によって、低熱負荷の処理が可能なため、他面側に回路が形成されている場合にも、半導体の表面の回路に熱ダメージを与えることなく処理を行うことができる。さらに、レーザ照射面が平坦であるため、ウエハの抗折強度が高く、割れにくいという効果も有する。
【0017】
本発明では、ドーピングされた不純物の高濃度領域には、高濃度領域に起因する結晶欠陥が形成され、形成された結晶欠陥は、高濃度の不純物によって半導体の結晶面がわずかに乱されることによって、結晶方位または/および結晶格子間隔がわずかにずれた積層欠陥が生じ、半導体に大きな歪を与えることなく、かつ300℃から500℃程度の低温でもCuなどの金属不純物の強力なゲッタリングサイトとして機能するという非常に優れた効果がある。
【0018】
本発明では、不純物の高濃度領域は、非常に多くの不純物を含んでいるが半導体基板に大きな歪を与えることなく、かつ300℃から500℃程度の低温でもCuなどの金属不純物の強力なゲッタリングサイトとして機能するという非常に優れた効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について
図1(a)〜(e)に基づいて説明する。
図1(a)は本実施形態で使用するシリコンウエハ1の図であり、シリコンウエハ1は本発明の半導体に相当する。
シリコンウエハ1は、図示しているように主表面1aには各種工程を経てデバイス層2(配線層等も含む)が形成されていても良いし、薄化によって数十μm(例えば、100μm、さらには例えば50μm以下)の厚みにした薄ウエハを用いても良いし、通常の厚いウエハでも良い。また、シリコンウエハ1はチップごとに分割された状態でも良い。
【0021】
図1(b)は不純物含有膜の形成工程を示す。この工程では、シリコンウエハ1の裏面1b側に不純物含有膜を形成する。膜の形成には、各種の成膜工程を利用可能である。裏面1bは、本発明方法における一表面に相当する。
まずボロン含有膜の形成について説明する。コーティングを用いる手法ではボロン含有膜の原料液を用意し、シリコンウエハ1の裏面1b側にスピンコート等の方法で不純物含有原料液膜3aを形成する。ボロン含有膜の原料液としては、例えばポリビニルアルコールと酸化ボロンの反応物であるPBFポリマーなどを用いることができる。コーティング方法は、スリットコータなどスピンコート以外の方法でも良い。
【0022】
次に
図1(c)に示すように不純物含有原料液膜3aの乾燥と焼成のため、100℃から400℃以下の温度で膜中のPBFポリマーを分解して酸化ボロン(B
2O
3)を形成する。このようにして不純物含有膜3bを得る。この際、分解が不十分で膜中にPBFポリマーやバインダー等の成分が残留していても良い。乾燥・焼成後のボロン含有膜は例えば100nm〜200nmの厚みで形成することができるが、厚みはこの範囲に限定されない。ただし照射するレーザ光4の波長と不純物含有膜3bの光学特性や厚みによって入射光に対する反射率が変化するため、反射ロスを少なくするために反射率が最小となる厚みにすることが望ましい。
【0023】
また、不純物含有膜3bの別の形成方法として、真空蒸着やスパッタリングやCVDなど各種の真空成膜プロセスによる形成も可能である。これらの成膜方法では直接不純物含有膜3bを形成することができる。形成する膜としては、ボロン(B)、酸化ボロン(B
2O
3)、シリコンとボロンの混合物(Si:B)、酸化シリコンとボロンの混合物(SiO
2:B)、シリコンと酸化ボロンの混合物(Si:B
2O
3)、酸化シリコンと酸化ボロンの混合物(SiO
2+B
2O
3)を例示することができる。ただし、本発明としては、これらに限らず、ボロンを含んでいればよい。なお、ボロン含有の不純物含有膜3bの形成前に各種洗浄によってシリコンウエハ1と膜の密着性を向上させるのが好ましい。例えばシリコンウエハ1の表面を親水性にすると密着性が向上する場合は、アンモニア水と過酸化水素水からなるSC1洗浄などを行うことができる。なお、洗浄方法は特に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。
【0024】
図1(d)はレーザ照射工程を示す。本発明の例として、B
2O
3膜を透過する波長のレーザを照射する場合について説明する。一例として、波長515nmのレーザ光4を、エネルギー密度6J/cm
2、パルス半値幅300nsの条件でシリコンウエハ1の不純物含有膜3bの側(裏面1b側)から照射することができる。
なお、レーザ光4のパルス半値幅およびエネルギー密度については、不純物含有膜3bを透過してシリコンウエハ1で吸収され、シリコンウエハ1表層及び不純物含有膜の一部以上を溶融させる条件であればよく、適宜選択できる。本発明としては、特定の条件に限定されるものではないが、波長は例えば、好適には510〜540nmのグリーン域の波長を用いることができる。これにより、スループットを考慮して高出力が得られる。パルス半値幅は、500ns以下とするのが望ましく、さらに300ns以下とするのが一層望ましい。エネルギー密度は溶融を生じさせるために0.5から6.0J/cm
2が例示できる。
【0025】
この実施形態では、レーザ光4は主に不純物含有膜3bを透過してシリコンウエハ1表層で吸収される波長としたため、レーザ光照射時に膜がはがれたり、蒸発したり、飛散することを防ぎ、不純物含有膜がシリコンウエハに密着した状態でレーザ照射ができるため、シリコン基板と不純物含有膜の界面を安定して溶融させることができ、結果として再現良く溶融深さと高濃度の不純物ドーピング濃度を実現できるという優れた効果がある。このことは副次的に、例えば光学系のボロン化合物による汚染を防ぐ効果も併せ持つ。
【0026】
ゲッタリング層の厚さと効果を考慮すれば、溶融深さは2μm以下が望ましい。シリコンウエハ1の厚さに対し、溶融深さが相対的に厚くなるとシリコンウエハ1のデバイス層2へ熱影響を与えやすくなるため、溶融深さは1.0μm以下がさらに望ましく、0.5μm以下が一層望ましい。溶融深さはエネルギー密度とパルス半値幅によってコントロールできる。上記により得られるゲッタリング層の厚さは、シリコンウエハ1表面を基点として最も深い位置が1μm以下であるが望ましい。なお、同様の理由でゲッタリング層の厚さは、同様の基準で0.5μm以下が望ましく、0.25μm以下が一層望ましい。また、レーザ光4の短軸方向および長軸方向の重複率(オーバーラップ率)は、必要に応じて適宜選定(例えば短軸方向50〜90%、例えば長軸方向10%〜50%)することができ、本発明としては特に限定されるものではない。
【0027】
照射された波長515nmのレーザ光4はB
2O
3膜をほぼ透過するため、透過したレーザ光がシリコンウエハへ到達して吸収され、シリコンウエハ1表層を溶融させる。その際に、溶融したシリコン5aとの境界の不純物含有膜3bのB
2O
3膜の一部またはすべてが溶融する。溶融したシリコン5a中にボロンと酸素が不純物として拡散する。
なお、この実施形態では、不純物の一つである酸素は不純物含有膜3bに含まれて供給されているが、本発明としては、溶融時に雰囲気中の酸素やBやSi:B表層などの自然酸化膜、シリコンウエハ表層の自然酸化膜の酸素から取り込まれるものやSC1洗浄などでシリコンウエハ表層にわずかに形成したSiO
2膜の酸素などから全部または一部が供給されるものであってもよく、これらが複合したものであってもよい。
【0028】
また、この他に、不純物含有膜としてボロンを有する不純物含有膜を形成した場合は、同様に波長515nmのレーザ光4を照射しても透過しない場合に該当する。その場合は、ボロン膜を数十nm程度に薄く形成して、照射したレーザ光4をボロン膜に吸収させ、高温になったボロン膜からの熱伝導でシリコンウエハ表層を溶融させることができる。その際に溶融したシリコンは高温になり、ボロン膜界面から溶融したシリコン中にボロンが拡散する。このように、不純物含有膜に対するレーザ光照射によって半導体を間接的に溶融させる場合、不純物含有膜の厚さは、例えば10〜100nmが望ましい。ただし、本発明としては、その厚さが特定の範囲に限定されるものではない。
【0029】
図1(e)は、ゲッタリング層の形成を示す。ボロンや酸素と一緒に溶融していた溶融したシリコン5aは冷却されて単結晶シリコンとして結晶化することで固体に戻り、その際に溶け込んでいたボロンと酸素がシリコンの結晶中に高濃度の不純物として取り込まれる。このようにして高濃度不純物拡散層5bが形成される。また、B膜形成時にバインダー成分からC成分が不純物として拡散し、BとC両方の特性を持つゲッタリング層を形成することもできる。高濃度不純物拡散層5bの最表層側にはさらに不純物濃度の高い超高濃度不純物拡散層5cが形成される。この超高濃度不純物拡散層5cは、冷却時に固体に戻りつつある溶融したシリコン中で最後に結晶化して固体に戻る部分に該当し、結晶中の不純物であるボロンおよび酸素の濃度が非常に高いため、単結晶として結晶化しようとしているシリコンの結晶配列を乱す結果、わずかに格子間隔や結晶方位の異なる積層欠陥が形成される。なお、図では、シリコンウエハ1の裏面1b側には、残存した不純物含有層3cが見られる。残存した不純物含有層3cは、溶融したシリコン5aに溶け込んでいたボロンと酸素のうち、最終的にシリコン結晶中に取り込まれなかった分が再び表層で固体化して形成される場合もある。
【0030】
上記一例における工程を経た半導体について、ボロンと酸素の深さ方向濃度分布についてSIMS分析を行った。その結果を
図2に示す。
分析前に、不純物含有層3cは完全に除去したものをサンプルとして用いた。深さ約1.6μmより表層ではボロンと酸素濃度が次第に高くなっており、この部分が溶融し、溶融したシリコン5a中にボロンと酸素が不純物として高濃度に拡散し、高濃度不純物拡散層5bとなる。深さ約1.2μmより表層のボロン濃度は1E17/cm
3以上の高濃度であり、深さ約1.0μmより表層の酸素濃度は1E19/cm
3より高濃度となっている。さらに深さ60nmより表層の最表層には、ボロンと酸素が非常に高濃度な超高濃度不純物拡散層5cが形成されており、この部分が結晶欠陥を含んでいる。深さ約20nm付近にボロンと酸素は同様のピークを形成しており、ボロン濃度は最大1E18/cm
3程度、酸素濃度は30nm深さでは1E20/cm
3を超えている。
【0031】
通常の固体シリコンの密度は約5E22/cm
3であることから0.5%が不純物の酸素であり非常に高濃度である。高濃度不純物拡散層5bの表層側にある超高濃度不純物拡散層5cのTEM像を
図3に示す。表層から約20nm付近の深さまで、縞々のモワレ模様が観察され、この領域にわずかに格子間隔や結晶方位の異なる積層欠陥が形成されていることを示している。この種の欠陥は面欠陥として分類される。なお、本実施形態によってゲッタリング層を形成したシリコンウエハは、TEM像からわかるように表面はフラットな鏡面状態で十分な抗折強度を有しており、ウエハ内の歪みが大きくないためシリコンウエハの反りは有していない。ゲッタリング層を形成したシリコンウエハは、本発明における、ゲッタリング層を持つ半導体に相当する。
【0032】
次に、ゲッタリング層を形成したシリコンウエハからボロン含有の不純物含有層3cを完全に除去し、両面を洗浄して、ゲッタリング能力の評価を行った。評価方法は次の取りである。
シリコンウエハの両面からCuが完全に検出されなくなるまで洗浄を実施し、ゲッタリング層を形成したシリコンウエハ裏面側をCu濃度が約1E11/cm
2となるよう定量汚染した。その後、シリコンウエハ裏面を300℃で30分間加熱してCuの熱拡散を行った。最後にシリコンウエハ表面のCu濃度を測定することで、裏面から表面まで拡散してきたCu濃度を評価した。ゲッタリング能力の評価では、シリコンウエハごとに存在する個体差を加味するため、1枚のシリコンウエハ内の半分のみにゲッタリング層を形成し、半分はゲッタリング層を形成せずにリファレンスとした。まず、リファレンス部では平均1.3E10/cm
2のCuが検出されたが、ゲッタリング層形成部ではCuはいずれの計測ポイントにおいても未検出であった。その後さらに、400℃および500℃で各30分間加熱後に同様にCu濃度を測定したが、ゲッタリング層形成部ではCuはいずれの計測ポイントにおいても未検出であった。既に示した
図2のCuはゲッタリング評価後のCuの深さ方向濃度分布であり、ボロンや酸素が非常に高濃度となっていた深さ約20nmをピークとしてCuが捕獲され、表層から20nm深さ付近までTEM像で積層欠陥が観察されていることから、この付近が強いゲッタリングサイトとして働いていることを示している。したがって、本実施形態のゲッタリング層はゲッタリング能力を有している。
【0033】
本実施形態によれば、ボロンと酸素の高濃度領域には、ボロンと酸素の高濃度領域に起因する結晶欠陥が形成され、形成された結晶欠陥は、高濃度のボロンと酸素によってシリコンの結晶面がわずかに乱されることによって、結晶方位若しくは結晶格子間隔がわずかにずれた積層欠陥を有しているため、半導体基板に大きな歪を与えることなく、かつ300℃から500℃程度の低温でもCuなどの金属不純物の強力なゲッタリングサイトとして機能するという非常に優れた効果がある。
【0034】
(実施形態2)
実施形態2では、カーボン含有膜を用いたゲッタリング層の形成について説明する。主要な部分は実施形態1と同様であるため、異なる部分のみを
図4に基づいて説明する。
図4(b)は不純物含有膜の形成工程を示す。カーボン含有膜の形成では、カーボン含有膜の原料となる原料液を用意し、シリコンウエハ1の裏面1b側にスピンコート等の方法で不純物含有膜原料液膜6aを形成する。カーボン含有膜の原料液としては、例えばカーボンブラックと有機バインダーの混合物などを用いることができる。また、アクリル系樹脂をコーティングして形成した各種樹脂膜やポリマー膜も使用可能である。コーティング方法は、スリットコータなどスピンコート以外の方法でも良い。
【0035】
次に
図4(c)に示すように不純物含有膜原料液膜6aの乾燥のため、室温から100℃程度の温度で膜中の有機バインダーを乾燥させてカーボン含有膜を形成する。このようにして不純物含有膜6bを得る。この際、分解が不十分で膜中にバインダー成分が残留していても良い。乾燥後のカーボン含有膜は例えば100nmから200nmの厚みで形成することができるが、厚みはこの範囲に限定されない。ただし照射するレーザ波長とカーボン含有膜の光学特性や厚みによって入射光に対する反射率が変化するため、反射ロスを少なくするために反射率が最少となる厚みにすることが望ましい。なお、カーボン含有膜の形成前に各種洗浄によってシリコンウエハと膜の密着性を向上させるのが好ましい。例えば、シリコンウエハ1の表面を親水性にすると密着性が向上する場合は、アンモニア水と過酸化水素水からなるSC1洗浄を例示することができる。
【0036】
図4(d)はレーザ照射工程を示す。本発明の例として、カーボンブラックと有機バインダーの混合物で形成した黒色のカーボン含有膜に対し、該膜を透過しない波長のレーザ光を照射する場合について説明する。一例としては、波長515nmのレーザ光4を、エネルギー密度3J/cm
2、パルス半値幅300nsの条件でシリコンウエハ1の不純物含有膜6bの側から照射した。なお、レーザ光4のパルス半値幅およびエネルギー密度については、不純物含有膜6bで主に吸収され、シリコンウエハ表層を溶融させる条件であればよく適宜選択できる。本発明としては、特定の条件に限定されるものではないが、波長は例えば510〜540nmのグリーン域の波長を用いることができる。これにより、スループットを考慮して高出力が得られる。パルス半値幅は、1200ns以下とするのが望ましく、さらに300ns以下とするのが一層望ましい。エネルギー密度は溶融を生じさせるために0.5から6.0J/cm
2が例示できる。
【0037】
ただし、ゲッタリング層の厚さと効果を考慮すれば、溶融深さは2μm以下が望ましい。シリコンウエハ1の厚さに対し、溶融深さが相対的に厚くなるとシリコンウエハ1のデバイス層2へ熱影響を与えやすくなるため、溶融深さは1.0μm以下がさらに望ましく、0.5μm以下が一層望ましい。溶融深さはエネルギー密度とパルス半値幅によってコントロールできる。上記により得られるゲッタリング層の厚さは、シリコンウエハ表面を基点として最も深い位置で1μm以下が望ましい。なお、同様の理由でゲッタリング層の厚さは、同じ基準で0.5μm以下が望ましく、0.25μm以下が一層望ましい。
【0038】
また、レーザ光4の短軸方向および長軸方向の重複率(オーバーラップ率)は、必要に応じて適宜選定(例えば短軸方向50〜90%、例えば長軸方向10%〜50%)することができ、本発明としては特に限定されるものではない。照射された波長515nmのレーザ光4はカーボンを含有する不純物含有膜6bでほぼ吸収されるため、吸収されたレーザ光4が熱に変換され、その熱がシリコンウエハ1へ到達してシリコンウエハ表層を溶融させる。その際に、溶融したシリコン7aとの境界のカーボン含有膜から溶融したシリコン7a中にカーボンと酸素が不純物として拡散する。
また、不純物含有膜6bとしてアクリル系樹脂膜を形成した場合は、同様に波長515nmのレーザ光4を照射しても透過する場合に該当する。その場合は、照射した波長515nmのレーザ光4はアクリル系樹脂膜をほぼ透過してシリコンウエハ1へ到達して吸収され、シリコンウエハ表層を溶融させる。その際に、溶融したシリコンとの境界のアクリル系樹脂膜の一部またはすべてが溶融したシリコン7a中に取り込まれることでカーボンと酸素が不純物として拡散する。
【0039】
図4(e)はゲッタリング層の形成を示す。カーボンや酸素と一緒に溶融していた溶融したシリコン7aは冷却されて単結晶シリコンとして結晶化することで固体に戻り、その際に溶け込んでいたカーボンと酸素がシリコンの結晶中に高濃度の不純物として取り込まれる。このようにして高濃度不純物拡散層7bが形成される。高濃度不純物拡散層7bの最表層側にはさらに不純物濃度の高い超高濃度不純物拡散層7cが形成される。この超高濃度不純物拡散層7cは、冷却時に固体に戻りつつある溶融したシリコン中で最後に結晶化して固体に戻る部分に該当するが、目立った欠陥は形成されない。なお、図では、シリコンウエハ1の裏面1b側には、残存した不純物含有層6cが見られる。残存した不純物含有層6cは、溶融したシリコン7aに溶け込んでいたカーボンのうち、最終的にシリコン結晶中に取り込まれなかった分が再び表層で固体化して形成される場合もある。
【0040】
上記一例における工程を経た半導体について、カーボンと酸素の深さ方向濃度分布についてSIMS分析の結果を
図5に示す。分析前に、カーボン含有の不純物含有層6cは完全に除去したものをサンプルとして用いた。深さ約1.0μmより表層ではカーボンと酸素濃度が次第に高くなっており、この部分が溶融したシリコン7a中にカーボンと酸素が不純物として高濃度に拡散し、高濃度不純物拡散層7bとなる。深さ約0.22μmより表層のカーボン濃度は1E19/cm
3以上の高濃度となっている。さらに100nmより表層の最表層には、カーボンと酸素が非常に高濃度な超高濃度不純物拡散層7cが形成されている。深さ約30nm付近にカーボンと酸素は同様のピークを形成しており、カーボン濃度は最大5E21/cm
3程度で50nm深さまでは1E21/cm
3を超え、酸素濃度は30nm深さまで5E20/cm
3を超えている。
【0041】
通常の固体シリコンの密度は約5E22/cm
3であることから、10%がカーボンであり、1%が酸素であるため非常に高濃度である。高濃度不純物拡散層7bの表層側にある超高濃度不純物拡散層7cのTEM像を
図6に示す。本手法で形成した高濃度不純物拡散層7bの表層側に位置する超高濃度不純物拡散層7cは、10nm程度で若干の表面荒れを有しているため、表層に見える10nm程度の構造はこの凹凸によるものであり、そこから25nm程度の深さまでは特にカーボンと酸素濃度の高い領域である。高濃度不純物拡散層7b表層から深い部分まで、目立った欠陥は観察されず、転位や積層欠陥は形成されていないと考えられる。ただし、約10%のカーボンが含まれているため、単結晶シリコンのシリコン原子位置の一部はカーボン原子が占めることで一部を置換した単結晶を形成している可能性があるが定かではない。原子サイズの異なるカーボンがシリコンを置換することで、歪や応力を発生している可能性がある。また、転位や積層欠陥が形成されていないとみられるため、10%のカーボン原子や1%の酸素原子は格子間原子などの点欠陥となっている可能性もあるが定かではない。なお、本発明で形成したゲッタリング層を形成したシリコンウエハは、TEM像からわかるように若干の表面荒れを有しているが十分な抗折強度を有しており、ウエハ内の歪みが大きくないためシリコンウエハの反りは有していない。この実施形態におけるゲッタリング層を形成したシリコンウエハは、本発明のゲッタリング層を持つ半導体に相当する。
【0042】
次に、ゲッタリング層を形成したシリコンウエハからカーボン含有の不純物含有層6cを完全に除去し、両面を洗浄して、ゲッタリング能力の評価を行った。評価方法は次の取りである。シリコンウエハの両面からCuが完全に検出されなくなるまで洗浄を実施し、ゲッタリング層を形成したシリコンウエハ裏面側をCu濃度が約1E11/cm
2となるよう定量汚染した。その後、シリコンウエハ裏面を300℃で30分間加熱してCuの熱拡散を行った。最後にシリコンウエハ表面のCu濃度を測定することで、裏面から表面まで拡散してきたCu濃度を評価した。ゲッタリング能力の評価では、シリコンウエハごとに存在する個体差を加味するため、1枚のシリコンウエハ内の半分のみにゲッタリング層を形成し、半分はゲッタリング層を形成せずにリファレンスとした。まず、リファレンス部では平均2.1E10/cm
2のCuが検出されたが、ゲッタリング層形成部ではCuはいずれの計測ポイントにおいても未検出であった。その後さらに、400℃および500℃で各30分間加熱後に同様にCu濃度を測定したが、ゲッタリング層形成部ではCuはいずれの計測ポイントにおいても未検出であった。既に示した
図5のCuはゲッタリング評価後のCuの深さ方向濃度分布であり、カーボンや酸素が非常に高濃度となっていた深さ約30nmをピークとしてCuが捕獲されていることから、この付近が強いゲッタリングサイトとして働いていることを示している。したがって、本実施形態のゲッタリング層はゲッタリング能力を有している。
【0043】
本実施形態によれば、カーボンと酸素の高濃度領域は、非常に多くのカーボンと酸素を含んでいるがシリコン基板に大きな歪を与えることなく、かつ300℃から500℃程度の低温でもCuなどの金属不純物の強力なゲッタリングサイトとして機能するという非常に優れた効果がある。
【0044】
また、実施形態1、2では、主表面に回路が形成され、裏面側から薄化されたシリコンウエハの裏面に不純物含有膜を形成する工程と、不純物含有膜の側からレーザ光を照射して不純物含有膜とシリコンウエハ表面を溶融する工程によって、溶融したシリコン中にボロンやカーボンと酸素が高濃度にドーピングされ、ボロンと酸素の高濃度領域に起因する結晶欠陥や、カーボンと酸素の呼応濃度領域を形成することで薄化したシリコンウエハ裏面にゲッタリング層を形成したので、金属汚染が発生してもゲッタリング層に金属不純物がゲッタリングされるため、歩留まりは下がらず、経年使用中の半導体装置の故障や劣化が少ないという産業上優れた効果を有する。
【0045】
(実施形態3)
実施形態3では、本発明のゲッタリング層を有するシリコンウエハ1を、三次元積層した半導体装置に適用する場合の製造工程の一例について
図7に基づいて説明する。
まず、最終厚さよりも厚いシリコンウエハ1(例えば775μm厚)を用意し、シリコンウエハ1の主表面にデバイス層2を設け、該デバイス層に電極埋め込みとバンプ10の形成を行う(
図7(a))。次いで、シリコンウエハ1の裏面側を研削・研磨して、例えば10μm厚程度に薄型化する(
図7(b))。その後、研削・研磨した裏面側に不純物含有原料液膜3aを形成する((
図7(c))。その後、図示しないが不純物含有原料液膜3aを乾燥および焼成して不純物含有膜3bを形成し、大気中で不純物含有膜3bを有する面側から上記で説明したレーザ光4を照射し、シリコンウエハ1の表層部を溶融させて溶融したシリコン5aを生成する(
図7(d))。溶融したシリコン5aは、裏面側表面から2μm以下の深さとする。この溶融では不純物含有膜の一部またはすべてを溶融させることで溶融したシリコン5a内に表面の不純物含有膜3bから不純物であるボロンと酸素が拡散して高濃度の不純物がドーピングされる。
【0046】
そしてレーザ光4のパルスオフにより急冷によって液相/固相界面から表面に向かって不純物を取り込みながらシリコンが結晶化して高濃度不純物拡散層5bおよび超高濃度不純物層5cを形成する。最表層である超高濃度不純物層5cを形成する。最表層である超高濃度不純物層5cには結晶欠陥や%オーダーの超高濃度不純物を含むさらに不純物濃度の高い層が形成され、超高濃度不純物層5cを含む高濃度不純物拡散層5bがゲッタリング層としての機能を持つ。残存した不純物含有膜は不要な場合は除去する。次いで、TSV(Through Silicon Via)成形工程に移行し、まずTSV成形として裏面側にオーバーコート13を形成するとともに裏面側にビア14を開口し(
図7(e))、次いで、該ビア14にCuを埋め込んで電極11を形成し(
図7(f))、さらに裏面側のオーバーコート13を研削した後、電極11に接続された裏バンプ12を形成し(
図7(g))、チップを切り出す。これらのチップを順次縦方向に積層・接合することで、ゲッタリング層を有するシリコンウエハを三次元積層した半導体装置が得られる。
【0047】
(実施形態4)
また、
図8は、不純物含有層として不純物含有原料液膜6aを用いた工程を示す図である。なお、上記と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。不純物含有膜6bに基づいて高純度不純物拡散層7bおよび超高濃度不純物層7cを形成して同様の工程により半導体装置を製造することができる。
【0048】
上記実施形態3、4ではチップをチップに積層するC to Cについて説明したが、チップをウエハに積層するC to Wや、ウエハをウエハに積層するW to Wによってもゲッタリング層を有するシリコンウエハを三次元積層した半導体装置が得られる。さらに、ここではTSV形成工程をデバイス層(配線工程含む)2形成後にウエハ裏面からビアを開口して形成するいわゆるビアラスト方式で形成する場合について説明したが、TSV形成工程をデバイス層(配線工程含まない)形成後にウエハ表面からビア開口して電極を形成後に表面配線工程を行うビアミドル方式で形成する場合も同様に実施できる。
【0049】
実施形態3、4では、本発明の半導体装置は薄化したシリコンウエハ内部に貫通電極を有し、裏面にゲッタリング層を有するものを積層し、ウエハ内に設けた貫通電極で積層したウエハ間を電気的に接続して使用することができるため、高信頼性の三次元積層半導体が生産できるという優れた効果を有する。
【0050】
(実施形態5)
実施形態5は、本発明のゲッタリング層を有するSOI(Silicon On Insulator)ウエハに適用する場合の製造工程の一例について
図9に基づいて説明する。
まず、本発明で使用するシリコンウエハ21として、デバイス層形成用にウエハ表層(主表面)にシリコン無欠陥領域21aを形成したものを使用する。また、デバイス層形成用にウエハ表層にシリコンエピタキシャル成長層21bを形成したものでもよい(
図9(a))。
次にシリコンウエハ21のシリコン無欠陥領域21a又はシリコンエピタキシャル成長層21bの側に、本発明の不純物含有膜3bまたは不純物含有膜6bを形成し、レーザ光4を照射することで、ゲッタリング層である超高濃度不純物層5cを含む高濃度不純物拡散層5bまたは超高濃度不純物層7cを含む高濃度不純物拡散層7bを形成する(
図9(b))。なお、不純物含有膜3bまたは不純物含有膜6bはゲッタリング層形成後に除去する。
【0051】
次に高濃度不純物拡散層5bまたは高濃度不純物拡散層7b上に絶縁膜22を形成し、絶縁膜22の表面を平坦化する。この平坦化は、例えば化学的機械研磨によって行う。これによって、上記絶縁膜22の表面を支持基板との貼り合せに適合した表面状態にする。次に、水素イオン注入によって上記シリコンウエハ21中にスプリット層23を形成する。スプリット層23の位置は、例えばシリコン無欠陥領域21a(またはシリコンエピタキシャル成長層21b)内部、またはシリコンウエハ21との境界前後であり、後の工程でシリコンウエハ21の剥離ができるように形成される。ここではシリコンウエハ21との境界前後に形成する場合を説明する。水素イオンを注入することにより、スプリット面となる脆弱な上記スプリット層23が形成される(
図9(c))。
【0052】
次に、上記絶縁膜22上に支持基板24を張り合わせる。上記支持基板24には、シリコンウエハを用いる。もしくはガラス基板もしくは樹脂基板を用いることもできる。このときの接合には、耐熱性樹脂での接着やプラズマ処理による接着を用いる(
図9(d))。
次に、上記スプリット層23で上記シリコンウエハ21側を剥離する。この結果、支持基板24側にシリコン無欠陥領域21aまたはシリコンエピタキシャル成長層21bが形成される。スプリット層23をシリコン無欠陥領域21aまたはシリコンエピタキシャル成長層21bとシリコンウエハ21との境界前後とした場合は、シリコン無欠陥領域21aまたはシリコンエピタキシャル成長層21b上にシリコンウエハ21が一部残存することとなる。上記シリコンウエハ21の剥離は、例えば、400℃未満の熱処理による熱衝撃により行う。または、窒素(N
2)ブロー、もしくは、純水ジェット流を用いた物理的衝撃の付与にて行う。このように、400℃以下での処理が可能となる。そして、イオン注入による注入イオンの体積膨張により形成されるスプリット層23は、脆弱な層となっていることから、スプリット層23でのシリコンウエハ21の剥離が容易になっている。この時、シリコン無欠陥領域21aまたはシリコンエピタキシャル成長層21bの表層にスプリット層の一部であるスプリット面23aが残存する(
図9(e))。
【0053】
次に、上記シリコン無欠陥領域21aまたはシリコンエピタキシャル成長層21b表面のスプリット面23aを平坦化処理する。この平坦化処理は、例えば、水素アニールと研磨によって行なう。この研磨は、例えば、化学的機械研磨(CMP)を用いる。このとき、スプリット面23aとシリコンウエハ21が残存する場合は除去し、シリコン無欠陥領域21aまたはシリコンエピタキシャル成長層21bを露出させる(
図9(f))。
【0054】
以上のようにして、ゲッタリング層である高濃度不純物拡散層5bまたは高濃度不純物拡散層7bを持つSOIウエハを製造できるため、シリコン無欠陥領域21aまたはシリコンエピタキシャル成長層21b中の金属を高濃度不純物拡散層5bまたは高濃度不純物拡散層7bにゲッタリングすることが容易になり、金属汚染の影響を排除することができる。したがって、本発明の製造方法によるSOI基板は、デバイス作成工程中のゲッタリング作用が期待でき、工程内の金属汚染レベルにロバストとなり、高歩留りで高品質のデバイス製造が可能となる。
【0055】
以上、本発明について上記実施形態に基づき説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。