特許第6544908号(P6544908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6544908予測的運転者支援システムのための複合信頼度推定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544908
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】予測的運転者支援システムのための複合信頼度推定
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20190705BHJP
   B60R 21/0132 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/0132
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-212481(P2014-212481)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-82324(P2015-82324A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】13189698.7
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュムドリッヒ
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−065338(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/097943(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/070650(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/072515(WO,A1)
【文献】 特開2013−045447(JP,A)
【文献】 特開平06−265364(JP,A)
【文献】 特開2009−031241(JP,A)
【文献】 特開平08−304560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60R 21/00−21/13
B60R 21/34−21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援システムの周囲の環境内にある少なくとも一つの実在物の将来の移動挙動を予測するための方法であって、
一つ又は複数のセンサ(102)により前記車両の前記環境内において検出された少なくとも一つの前記実在物の少なくとも位置及び速度を表す少なくとも一つの基本環境表現を受け取るステップ(302)と、
前記基本環境表現それぞれについて、当該基本環境表現に関連する検出動作の信頼度である検出信頼度を示す基本信頼度推定(506、507、510、512、514)を決定するステップ(306)と、
前記基本環境表現の予め定義されたセットに基づいて第1複合環境表現を算出するステップ(304)と、
前記第1複合環境表現を構成する前記基本環境表現のそれぞれついて決定された前記基本信頼度推定の重み付け結合として第1複合信頼度推定を算出するステップ(310)であって、前記重み付け結合に用いる重みは、対応する前記基本環境表現に関連する検出動作における誤検出が前記第1複合環境表現に基づく前記少なくとも一つの実在物についての将来の移動挙動の前記予測に与える効果を示すものであるステップと
記第1複合信頼度推定を、前記第1複合環境表現に基づく前記予測についての評価のための入力として出力するステップ(312)と、を有する、
方法。
【請求項2】
前記基本環境表現の予め定義されたセットに基づいて第2複合環境表現を算出することと、
前記第2複合環境表現について、当該第2複合環境表現を構成する前記基本環境表現のそれぞれについて決定された基本信頼度推定の重み付け結合として第2複合信頼度推定を算出することと、
を有し、
前記第2複合環境表現及び前記第2複合信頼度推定が、それぞれ、前記基本環境表現及び前記基本信頼度推定として用いられ前記第1複合環境表現及び前記第1複合信頼度推定が算出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基本環境表現並びに前記第1複合環境表現及び前記第2複合環境表現は、直接指標及び又は間接指標(124、126)により構成され、
前記基本信頼度推定並びに前記第1複合信頼度推定及び前記第2複合信頼度推定は、信頼度指標(128)により構成され、
直接指標及び又は間接指標、並びに信頼度指標は、同様のデータ構造に基づいている、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出信頼度は、センサデータに関連付けられた信号強度、センサデータに関連付けられた誤差伝搬表現、及び妥当性規則の適用、のうちの少なくとも一つに基づくものである、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重みは、前記予測に対する、関連する前記第1複合環境表現の相対的な重要度を表す相対値が割り当てられる、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重みは、前記基本環境表現に関連する検出動作における誤検出当該誤検出に起因して前記予測の誤りが生じ且つ誤った当該予測が前記車両の制御の基礎として用いられることとなる確率に対して与える影響の程度を表すものである、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記誤った前記予測は、誤った肯定的予測結果又は誤った否定的予測結果の少なくとも一つを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1複合信頼度推定(516)の算出(310)に用いる前記重み付け結合は、加算、重み付き加算、積、重み付き積、及び最小値又は最大値の選択、の少なくとも一つにより構成される、
請求項1ないし7いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1複合信頼度推定の数値を、予め定められた閾値及び一つ又は複数の他の信頼度推定の数値の少なくとも一つの数値と比較することにより、前記第1複合環境表現を前記予測に用いるか否かが決定される、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記運転支援システムは、クルーズコントロール機能を実行するよう適合されている、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
コンピューティングデバイス上で実行されたときに請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法を実行するためのプログラムコード部分を備える、コンピュータプログラム。
【請求項12】
周囲の環境内にある少なくとも一つの実在物の将来の移動挙動を予測する予測サブシステムを備える、車両用の運転支援システム(100)であって、当該予測サブシステムは、
それぞれが一つ又は複数のセンサ(102)により、前記運転支援システムが支援する車両の前記環境内において検出された少なくとも一つの前記実在物の少なくとも位置および速度を表す少なくとも一つの基本環境表現を受け取るよう適合されたコンポーネント(202)と、
前記基本環境表現それぞれについて、当該基本環境表現に関連する検出動作の信頼度である検出信頼度を示す基本信頼度推定を決定するよう適合されたコンポーネント(204)と、
前記基本環境表現の予め定義されたセットに基づいて第1複合環境表現を算出するよう適合されたコンポーネント(228)と、
前記第1複合環境表現を構成する前記基本環境表現について決定された前記基本信頼度推定の重み付け結合として第1複合信頼度推定を算出するよう適合されたコンポーネント(208)であって、前記重み付け結合に用いる重みは、対応する前記基本環境表現に関連する検出動作における誤検出が前記第1複合環境表現に基づく前記実在物の少なくとも一つについての将来の移動挙動の前記予測に与える効果を示すものであるコンポーネントと、
前記第1複合信頼度推定を、前記第1複合環境表現に基づく前記予測についての評価のための入力として出力するよう適合されたコンポーネント(208)と、
を有するシステム。
【請求項13】
前記予測サブシステムは、コンテキストベース予測(132)及び物理的予測(130)を実行するよう適合されている、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のシステムを備える乗り物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者を受動的又は能動的に支援するための、予測サブシステムを備えた運転支援システムに関し、更に、これに対応する方法、ソフトウェア製品、及びそのような運転支援システムを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、多岐にわたる車両用運転支援システムが利用可能であり、これらは、車両乗員の運転快適性及び又は安全性を高めることを目的としている。レーダ(RADAR)、ライダ(LIDAR)、カメラ等の種々のセンサ装置に基づいて、運転や操縦に関する機能は、距離測定や駐車支援をはじめとして、例えば、レーン変更支援、衝突緩和、緊急ブレーキング等の機能も備え得る“インテリジェント・アダプティブクルーズコントロール(IACC、Intelligent Adaptive Cruise Control)”などのクルーズコントロール機能(ACC)のような“先進運転者支援システム(ADAS、Advanced Driver Assistant Systems)まで、広範囲に及ぶ。
【0003】
例えばADAS関連の機能には、自車両(ego-vehicle)の前方又は後方を移動する他車両又は物体を検出する機能や、移動物体についての将来の振る舞いを予測する機能が含まれ得る。当該予測は、自車両のアクティブ制御を行ったり、及び又は、表示手段やオーディオ手段を介して運転者に警告メッセージを提示するなどの運転者への情報提供を行う目的で、運転支援システムにより用いられ得る。
【0004】
予測は、一般的には先進運転者支援システムにおける判断の基礎としてうまく機能するが、問題も残っている。先進支援機能においては、一般に、高信頼で動作することが求められており、これには、運転者に快適でないと感じさせ得るような状況や、運転者による介入が必要となり得るような状況の発生を回避することが含まれる。
【0005】
しかしながら、センサデータは、一般に、使用可能なセンサ装置の制限や、検知範囲、配置などにより、及び測定手法が有する本質的な不確実性に起因して、その精度が制限される。センサデータにおけるエラーマージンの他に、センサシステムも、ホスト車両の環境における実在物(entities)についての検出漏れ(misdetection)、遅延検出、及び又は誤検出(wrong detection)といったエラーを生じさせる傾向がある。これらのエラー要因は信頼性の低い予測を行うことに繋がり、運転支援システムは、センサデータ及びセンシング結果における不確実さを処理するためのストラテジを持つ必要がある。
【0006】
より詳細には、いくつかの運転支援機能の動作は、一つの実在物(entity)についてのセンシングにのみ基づくものとなり得る。例えば、単純なクルーズコントロール機能は、先行車両までの車間距離を所定距離に維持するものであり得る。この場合、その動作は、先行車両の検出に関連するセンサデータの検出精度のみによって制限される。しかしながら、より洗練された機能の場合には、複数の実在物又は物体に関するデータが必要とされる場合があり、例えばホスト車両の近くで検出された2つの車両間のギャップを表すデータなどの、センサデータから導出される2次的なデータも必要とされ得る。車両の一つが検出漏れ(misdetection)になるというようなエラーによって、支援機能にエラーが生じ得るであろうことは明らかである。しかしながら、2つの車両について検出された単なる位置の不正確さであっても、そこから導出されるギャップには不正確さが蓄積されることとなり、第3の車両がレーン変更を行うための十分なギャップが存在するか否か又は存在することとなるか否かについて、誤った判断に繋がることとなり得る。そのような判断に基づく予測は、やはり誤ったものとなり得るし、運転者及び又は他の交通参加者にとり混乱の元となるような、且つ許容できないような、システム応答につながり得る。
【0007】
システムの信頼性を向上するための直接的な解決策は、付加的なセンサ装置及び又は高性能な装置を設けることである。この解決策は、利用可能な基礎データを改善することとなり得るが、ハードウェアを複雑化すると共にコストを増加させる。
【0008】
これに代えて、所与のセンサ装置を前提としてセンサデータの不正確さを処理するための、予測サブシステムを備えた運転支援システムのための種々のアプローチが知られている。いくつかのアプローチでは、完全なセンサ装置を明示的に仮定し、更なる手段を用いない。
【0009】
非特許文献1には、道路シーンにおける複数物体の将来挙動を推論するためのフレームワークが記載されている。モンテカルロ経路計画(Monte Carlo path planning)を用いて、そのシーンにおける全ての車両についての可能性のある将来挙動の確率分布が生成される。車両は、最良の予測された動作を用いて直接的に制御されるか、推奨される経路を運転者に表示するか、又は道路上の危険物体又は危険領域についての警報を表示し得る。センサの不確実さは、将来の検討事項とされている。
【0010】
他のアプローチでは、環境認識におけるエラーは、暗に考慮されるのみである。
【0011】
特許文献1には、自律車両制御システムにおけるリスク評価に関する技術が記載されている。車両に近接して検出された複数の物体のそれぞれは、長距離用レーダ、短距離用レーダ、及び前方カメラなどの種々のセンサ装置によってモニタされる。センサデータは融合され、融合されたデータに基づいて、自車両の予定軌道に対する相対的な物体位置が予測される。レーン変更操縦の際の、車両と各物体との間の衝突危険レベルが、定速度走行、緩制動(mild braking)、急制動(hard braking)などの、検出された物体についての可能性のあるアクションに関して評価される。レーン変更操縦は、当該評価と、空間的な安全マージンを規定する危険許容ルール(risk tolerance rules)とに従って制御される。
【0012】
センサ精度について検討が行われており、物体位置及び状態についてのセンサによる検出及び測定は、“推定”と称されるべきものとされている。しかしながら、これらの推定を、さらに明示的に取り扱うことは行われていない。融合された物体データには、そのデータ推定における信頼性の程度が含まれる。
【0013】
特許文献2には、ホスト車両のレーンに割込み(カットイン、cut-in)をしようとする対象物体や、ホスト車両のレーンから離脱(カットアウト、cut-out)をしようとする対象物体を例示的に強調しつつ、対象交通物体の移動挙動(movement behavior)をホスト車両において予測する技術が記載されている。この技術は、2つの個別の予測モジュールに基づいている。一つは、コンテキストベース予測(CBP、context based prediction)であり、移動挙動の認識、すなわち、“何”が起ころうとしているかの判断に関する。他の一つは、物理的予測(PP、physical prediction)であり、挙動が“どのように”発生するか又は発生し得るかの判断に関するものである。コンテキストベース予測は、少なくとも間接指標(indirect indicators)に依拠し、物理的予測は直接指標(direct indicators)に依拠する。
【0014】
指標は、対象車両の将来の又は現在実行中の挙動についての情報を運ぶ測定可能な変数と、当該測定可能な変数の実態(true-state)を示す信頼度値と、で構成されている。信頼度値は、測定可能な変数の計算に際して算出された、認識されている全てのシーン要素のセンサ信頼度を結合することにより得られる。ここで、センサ信頼度とは、検出された情報の信頼性に関する値である。指標は、互いに結合することができる。
【0015】
直接指標は、検出すべき挙動が開始された場合に且つその場合にのみ観測することのできる観測可能な変数で構成される。例えば、レーン変更を予測する場合の直接指標の集合は、横方向速度、そのレーンに対して相対的な横方向位置、当該レーンに対して相対的な変化方位、及び他の交通参加者に対して相対的な変化方位、の一つ又は複数で構成され得る。
【0016】
間接指標は、予測された挙動が開始される前に既に観測することのできる観測可能な変数で構成される。間接指標は、直接指標以外の指標の集合として定義され得る。例えば、間接指標は、少なくとも一つの交通参加者と、一つ又は複数の他の交通参加者又は静止したシーン要素(scene elements)と、の間の関係についての情報(例えば、ホスト車両の隣のレーン上において調整ギャップ(fitting gap)が利用可能か否かを示す指標等)に関するものとすることができる。
【0017】
他の間接指標は、挙動予測の対象である交通参加者により能動的に理解され得るような運転者意思についての情報に関するものである。例えば、方向指示灯、ブレーキランプ、又は車車間通信を介して受信される情報により示されていると察せされる意思が、その例である。
【0018】
対象車両について、可能性のある軌道のセットが算出され得る。CBPからの予測された移動挙動を用いて、関連する軌道のセットを縮小することができる。PPにおいて、検知された位置データの履歴に対して状況モデルをマッチングすることにより、上記関連する軌道をさらに減らすことができる。
【0019】
より具体的には、第1段階において、対象車両の将来位置を予測するため、可能性のある移動挙動の集合の一つが当該対象車両によって実行される確率が、CBPによって算出される。これらの移動挙動の一部又は全部は、PPにより検証される。物理的予測の目的は2つある。第1は、CBPの処理結果と、物理的証拠(physical evidence)と、車両連関(vehicle relation)と、の組み合わせに対して、上記可能性のある軌道の集合を検証することである。第2は、各車両の将来位置を算出することである。最終段階においては、不整合検出機能により、PPとCBPとの一貫性が分析される。不整合がある場合には、PPへのフォールバック(fallback)を実行することができる。
【0020】
コンテキストベース予測、物理的予測、及び不整合検出は、状況別モデル(situation specific models)の中にカプセル化することができ、運転者支援システム内の異なる複数のハードウェアユニットにより実行することができる。環境認識又は自己位置推定(self localization)に基づいて、車両環境に適合するふさわしいモデルを起動したり終了させたりすることができる。
【0021】
センサの不正確さや検知エラーに基づく誤った予測の結果として行われたアクティブ制御は、対象車両が予測されていない挙動又は低い確率をもって予測された挙動を見せたときには、中止して逆に戻すことが必要となり得る。その結果として行われる制御は、運転者及び又は他の交通参加者にとり、不適切で、混乱させるものとなり、不快なものとなり得る。したがって、特許文献2に記載された支援システムは、とりわけ、状況モデル(situation models)と不整合検出(mismatch detection)とを導入することにより、できるだけ予測誤りを最小化することを意図している。
【0022】
システム信頼度を向上する更に他のアプローチによると、センサの不確実性は、モデル化されて、予測結果に対し直接又は間接に影響を与え得る。センサの不確実性は、例えばセンサ精度についての仮定に基づいてモデル化することができる。そして、推定された不確実性が、予測結果に影響を与え得る。
【0023】
非特許文献2には、状況分析及び予測に関する確率モデルを利用するACCシステム用の割り込み車両認識機能が記載されている。低いセンサ品質に対処すべく、センサデータのフィルタリングを、カルマンフィルタ、及び確率ネットワークを用いた状況分析と組み合わせ、判断処理の中で低品質のセンサデータを徐々に消滅させていくのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】US 2010/0228419 A1
【特許文献2】EP 2 562 060 A1 (EP'060 for short hereinafter)
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Broadhurst, A., et al., "Monte Carlo Road Safety Reasoning", Intelligent Vehicles Symposium, 6-8 June 2005, IEEE Proceedings 2005, p. 319-324, ISBN: 0-7803-8961-1
【非特許文献2】Dagli, I., et al., "Cutting-in Vehicle Recognition for ACC Systems - Towards Feasible Situation Analysis Methodologies", Intelligent Vehicles Symposium, 14-17 June 2004, IEEE Proceedings 2004, p. 925 - 930, ISBN: 0-7803-8310-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
上記従来技術に鑑み、予測的運転支援について、検出の不正確さ及び検出誤りに関して信頼性を向上するための、コスト効率の高い手法のニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述のニーズは、車両の運転支援システムにおける予測サブシステムについての方法により満たされる。本方法は、基本環境表現のセットを受け取るステップであって、各基本環境表現は、車両の環境において一つ又は複数のセンサにより検出された少なくとも一つの第1実在物を表現するものであるステップと、基本信頼度推定のセットを割り当てるステップであって、当該セットの各基本信頼度推定は、前記基本環境表現のセットの一つに関連付けられ、各基本信頼度推定は、前記関連付けられた基本環境表現に関連する一つ又は複数の検出信頼度の結合(combination)を表すものであるステップと、少なくとも一つの重みを前記基本信頼度推定の一つに関連付けるステップであって、前記重みは、前記基本環境表現のセットに基づく複合環境表現に関連するものであり、且つ前記重みは、前記重み付き基本信頼度推定に関連付けられた前記基本環境表現における検出エラーの、検出された第2実在物についての予測に対する効果を示すものであるステップと、前記基本信頼度推定のセットと前記関連付けられた少なくとも一つの重みとの組み合わせ(結合、combination)に基づいて、前記複合環境表現についての重み付き複合信頼度推定を算出するステップと、前記重み付き複合信頼度推定を、前記複合環境表現に基づく前記予測についての評価のための入力として出力するステップと、を有する。
【0028】
前記車両(ホスト車両、自車両)は、乗用車、トラック、若しくはバス、又は一般に、道路、高速道路等を走行することを意図された任意の物体であるものとすることができる。これには、運転者によって運転される有人車両のほか、ロボット車両のような自動的に運転される車両も含まれる。この点において、“運転者支援システム”及び“運転支援システム”(ここでは同義語として用いられる)という用語は、一般に、例えば無人車両にも用いられ得る、任意の種類の運転支援システムを含むものとして解釈されるべきである。
【0029】
運転支援システムは、移動物体についての何らかの種類の将来運動及び又は他の挙動を予測する機能を有する場合には、予測サブシステムを備えるものと解釈することができる。
【0030】
検出される実在物には、任意の種類の移動物体若しくは静止物体、又はレーンマーキングや道路領域などの他の構造要素が含まれ得る。例えば、移動物体には、他の車両、乗用車、トラック、バス、バイク/自転車、ロボット車両のほか、市街電車(トロリー、trolley)、歩行者、及び馬などの動物も含まれ得る。静止物体には、駐車中の車両のほか、道路標識、交通信号、路側(road margins)、ガードレール、壁、樹木や灌木、レーンマーキング等の固定物体も含まれ得る。明確のため上述において“第2実在物”と称された予測対象である実在物は、基本環境表現により表現される“第1実在物”の一部であり得る。
【0031】
ホスト車両は、一つ又は複数のレーダシステム、一つ又は複数のカメラ等の、任意の種類のセンサ装置又はセンサ回路を備え得る。自車両(ego vehicle)は、車車間通信を介して他車両からのデータを受信したり、近距離通信システム又はモバイル通信システムを介して路側通信ステーションからのデータを受信するための、通信システムを備え得る。これらの方法の一つ又は複数に従って取得されるデータも、ここでは簡単のためセンサデータと称される。
【0032】
ホスト車両の「環境」又は「周辺」は、当該車両が備える上記一つ又は複数のセンサシステムの検知範囲によって定義され得る。例えば、環境は、レーダシステムが少なくとも所定の信頼度をもって物体を検出することのできる能力範囲まで広がっているものとすることができる。
【0033】
基本環境表現は、運転支援システムの処理システム内で、一つ又は複数の検出された実在物を表現するものであり、及び又は、二つ又はそれ以上の実在物の互いに対する関係についての表現を含むことができる。「基本」という用語は、ここでは単に、それが示す表現が、複合環境表現についての入力として用いられることを示すために用いられるものと解釈すべきである。したがって、一つ又は複数の基本環境表現から得られる何らかの「複合」環境表現は、その後に続く処理における基本環境表現として用いられ得る。
【0034】
検出された単一の実在物は、運転支援システムの中で表現され得るものであり、したがって、環境表現の単純な例である。例えば、物体は、それに関連付けられた位置及び速度の表現(indication)を持つ構造要素、ユニット、又は原子として表現され得るが、これらの構造要素、ユニット、又は原子は、更に、構造的特性、幾何学的広がり(geometrical extension)、その実在物の種類を表す所定の指標(indicator)等の更なる表現(indication)を持ち得る。より複雑な環境表現は、2つの物体と、それらの間の関係とを、暗に又は明示的に含み得る。例えば、検出された物体は、自車両の前方を移動する車両として表現され得る。他の例として、2つの物体は、同じレーンを走行する2つの車両として表現され得る。さらに他の例として、車両は、レーンに関連付けられたものとして表現され得る。
【0035】
複合環境表現は、基本環境表現の予め定義されたセットにより形成されるものと理解すべきである。いくつかの実施形態によると、必要とされる基本信頼度推定のセットは、決定すべき複合環境表現に寄与する基本環境表現に関連付けられた基本信頼度推定を、複数の利用可能な基本信頼度推定の中から選択することによって割り当てられる。
【0036】
逆も同様であり、本システムは、基本環境表現の必要なセットが利用可能であるか否かに基づいて、複合環境表現を形成できるか否か、または形成すべきか否かについての判断を行い得る。その判断が肯定的であるときは、基本環境表現の必要なセットが割り当てられ、複合環境表現が決定される。その次に、その複合環境表現に基づいて、予測が決定され得る。上記割り当てを行うステップは、単に、そのセットの全ての基本信頼度推定が、利用可能であること、例えばそれら自身に割り当てられた有意な値を有していることを、システム内において判断又は評価することにより構成される。
【0037】
基本環境表現(複数)は、それら自身に対し1対1の関係で割り当てられた基本信頼度推定を有し得る。しかしながら、1対多または多対1の関係を用いることもできる。ここで再び、「基本」という用語は、単に、それが示す信頼度推定が、複合信頼度推定を算出するための入力であることを示すことを意図するものである。換言すれば、複合信頼度推定は、後続の処理においては基本信頼度推定として作用し得る。
【0038】
検出信頼度は、単純な例として、基本環境表現内で表現される物体及び又は関係の検出に寄与するセンサ要素(複数)に関する一つ又は複数の信頼度を表し得る。例えば、環境表現は、自車両が備えるレーダシステムにより検出された移動物体を表し、これに関連付けられる信頼度推定は、そのレーダシステムの信頼度値、例えば、レーダシステムにより与えられる移動物体検出の信頼度を表す値、検出された物体の検出された位置や速度等についての正確さを示す一つ又は複数の精度値、等を表し得る。
【0039】
一つの実在物が複数のセンサシステムによって検出された場合、これに対応する信頼度推定は、これらセンサシステムのそれぞれについての一つ又は複数の信頼度値で構成されるものとすることもできるし、及び又は、種々の信頼度値を処理して組み合わされた(結合された)信頼度値とすることもできる。
【0040】
センサ信頼度は、信号強度や信号対雑音比の表示(indications)、誤差伝搬手法から導出される誤差表示(error indication)、等により構成され得る。他の例として、検出信頼度も妥当性チェックから得られ得る。
【0041】
信頼度推定は、直接的に用いられて環境表現及び又はその予測に割り当てられ得るもの、及び又は、基本信頼度推定として、すなわち複合信頼度推定の算出のための入力として、用いられ得るものと理解すべきである。したがって、簡単のため、「複合信頼度推定」をここで議論する際には、それらの複合信頼度推定には、検出信頼度から直接得られる一つ又は複数の信頼度推定(他の信頼度推定に基づく計算が行われることなく得られるもの)も含まれ得るものとする。同様に、基本信頼度推定は、必ずしも複合信頼度推定の算出のための入力として用いられなくてもよい。
【0042】
重みは、基本信頼度推定(複数)のそれぞれ、又は少なくとも一つの基本信頼度推定を含む基本信頼度推定(複数)のサブセットに関連付けられ得る。重みは、単純な値(value)、パラメータ、又は番号(number)として表現されるものとすることができ、これらは、予め定義されているものとしても良いし、そうでなくても良い。また、これらよりも複雑な表現で構成されていて、実行時にその値が算出されるものとしても良い。具体例として、重みは、基本/複合信頼度推定に対し1対1の関係で関連付けられ得る。他の実施形態によると、重みが基本/複合信頼度推定に対し1対多の関係で関連付けられるように、一つの同じ重み値が複数の信頼度推定に関連付けられ得る。
【0043】
更に、種々の実施形態によると、重みは、多対1の関係で基本/複合信頼度推定に関連付けられることもできる。重みは、基本信頼度推定に対し、当該基本信頼度推定から導出される複合信頼度推定を考慮して関連付けられ得ると理解すべきである。したがって、一般に、重みは、それに関連付けられた基本信頼度推定に特有の値を有することができるだけでなく、関連付けられた複合信頼度推定に特有の値を有することもできる。したがって、種々の実施形態によると、複数の複合信頼度推定の算出のための入力として用いられる信頼度推定(単数)が、当該信頼度推定に関連付けられた複数の重み(例えば、複合信頼度推定毎に一つの重み)を有することとなり得る。
【0044】
一つの信頼度推定に対する複数の重みは、重みベクトルで表現され得る。一のシステムで用いられる重みの全体は、少なくとも一つの基本信頼度推定と少なくとも一つの複合信頼度推定とに関連付けられた各重みに従う重みマトリクスで表現され得る。当業者であれば、そのような一般モデルの修正を行うことは可能である。
【0045】
重みの具体的な値は予め定義しておくことができる。当該定義には、ホスト車両の起動時若しくは運転システムやその予測サブシステムの起動時に又は複合信頼度推定の算出のため重みが必要になったときにオンデマンドで一部又はすべての重み値を生成するための、数式やアルゴリズムが与えられているような実施形態が含まれるものと理解すべきである。
【0046】
種々の実施形態によると、運転支援システムの予測サブシステムは、自車両の環境内で検出された各実在物について、少なくとも当該実在物が将来のアクティブ制御又はパッシブ制御に関係するであろうと推測されるときに、当該実在物についての予測を生成するよう動作し得る。例えば、予測は、関係のある参加者であると推測された移動(又は静止)物体について出力され得る。本予測は、センサ入力に基づいて生成され得る。すなわち、本予測はセンサドリブン(sensor-driven)であり得る。
【0047】
予測に基づいてアクティブ制御又はパッシブ制御を起動することとなる前に、その実在についての当該予測又は予測の前提についての信頼性を、例えばセンサ信頼度に基づいて評価することができる。ここで、当該信頼性は、システム内において環境表現に関連付けられた信頼度推定により表現される。
【0048】
重みは、システム内において信頼度推定に関連付けられ、これにより現在検出されている交通参加者についての予測に対する信頼度推定の影響を表現し得る。適切に重み付けされた信頼度推定は、予測についての信頼性の評価を向上し得る一つの手法であり、従って、(例えばホスト車両の運転者の)支援のためのアクティブ制御又はパッシブ制御を向上し得る手法である。重みは、誤った予測がアクティブ制御又はパッシブ制御の基礎として用いられる確率を最小化又は減少させるために割り当てられ得る。
【0049】
システム内において重み(複数)を使用することができるので、例えば特定の信頼度推定(これらは特定の環境表現に割り当てられている)にそれぞれ割り当てられた重みに対して具体的な数値を割り当てる際には、種々の具体的なストラテジに従うものとすることができる。重みは、予測に対する検出エラーの影響を表し得る。例えば、重みは、予測又は予測結果(予測の帰結)に対するセンサエラー/誤検出の影響を表し得る。
【0050】
いくつかの実施形態によると、重みは、検出された実在物(予測対象である実在物以外のものであり得る)についての、一つ又は複数のセンサに基づく誤検出が、予測結果に与える影響を反映し得る。例えば、重みは、検出された物体の位置、速度についての誤検出が他の物体についての予測に与える影響を表したり、又は検出された物体についての誤ったレーン割り付けが予測に与える影響などを表し得る。
【0051】
種々の実施形態によると、複数の重みが、複数の基本信頼度推定に対し1対1の関係で関連付けられ得る。複数の重みには、関連付けられた基本環境表現の、予測に対する相対的な重要度を反映する相対値が割り当てられ得る。例えば、複数の重みの重みペアのそれぞれについて、その重みペアの一方に関連付けられた基本環境表現の予測に対する影響が、当該重みペアの他方に関連付けられた基本環境表現の影響と比較して高いか、等しいか、低いかに応じて、当該重みペアの一方に、当該ペアの他方と比較して高いか、等しいか、又は低い値を割り当てるものとすることができる。相対重みには、例えば0〜1の間の数値を割り当てるものとすることができる。
【0052】
他の実施形態によると、例えば対応する基本環境表現(複数)の影響が同じであるという理由から、一つ又は複数の重みを、一対多の関係で基本信頼度推定(複数)に割り当てるものとすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態によると、重みは、アクティブ制御又はパッシブ制御の基礎として臨界的(critical)な予測(クリティカル予測)が採用される確率についての検出エラーの影響を反映するように割り当てられるものとすることができる。クリティカル予測は、どのような運転支援が採用されているかに応じ、具体的な状況に応じて定義され得る。例えば、クリティカル予測は、誤った肯定的予測結果又は誤った否定的予測結果の少なくとも一つを構成し得る。
【0054】
用語「重み付き複合信頼度推定」及び「複合信頼度推定」は、ここでは同意語として用いられることがある。複合信頼度推定の算出には、重み付き基本信頼度推定を形成することを含み得る。すなわち、基本信頼度推定とそれに関連付けられた重みとの組み合わせ(結合、combination)が、例えばそれらの積の算出結果として形成される。ただし、これは一例であって、基本信頼度推定に重みを割り当てるための他の又はより複雑なアプローチ(例えば数式(指数表現など)と当該数式内の一つ又は複数の位置(べき指数など)に含まれるべき重みと、により表現される信頼度推定)を、排除することを意図するものではない。
【0055】
複合信頼度推定の算出は、基本信頼度推定及び又は重み付き基本信頼度推定のセットの組み合わせ(結合、combination)を形成することにより構成され得る。当該組み合わせは、信頼度推定の和、それらの積、それらの最小値又は最大値の検出、及び又はより複雑な計算、のいずれかを含み得る。和又は積の算出は、重み付き和又は重み付き積の算出を含み得る。ここで、重みとは、基本信頼度推定に関連付けられる重みとは区別されるべきものである。
【0056】
本手法の結果として、重み付き複合信頼度推定が複合環境表現に関連付けられ得る。運転支援システムの予測サブシステム又はその他のコンポーネントは、複合環境表現を予測の基礎として用いるか否か、例えば、シーン解釈/予測においてその環境表現を活性化(activate)させるか抑制(suppress)させるかを決定することができる。当該決定は、重み付き複合信頼度推定の数値を、一つ又は複数の他の数値と比較することを含み得る。例えば、その信頼度推定は、予め規定された閾値を超えているか当該閾値未満であるかの調査が行われ得る。これに加えて又はこれに代えて、信頼度推定は、他の環境表現に関連付けられた一つ又は複数の他の信頼度推定と比較されるものとすることができる。
【0057】
予測サブシステムは、上述において紹介した直接指標及び間接指標の概念(特許文献2に詳述されている)に基づくものであり得る。例えば、(基本/複合)環境表現の一つ又は複数は、一つ又は複数の直接指標及び又は間接指標により構成される。基本/複合信頼度推定は、同様に、「信頼度指標」として表現され得る。例えば、信頼度指標は、関連付けられた環境表現の信頼度を示すことが意図された変数により構成され得る。当該変数は、これに関連付けられた更なるパラメータ又は変数(例えば、関連付けられた環境表現(例えば直接指標又は間接指標)へのポインタ)を持ち得る。
【0058】
信頼度指標の表現構造は、直接/間接指標の表現構造から再利用されるものとすることができ、従って、これらの指標の表現構造と同様であり得る。例えば、直接/間接指標は、それぞれ、変数のペアとして表現されものとすることができ、第1の変数が観測可能な値を示し、第2の変数がこれに関連付けられた信頼度値を示すものとすることができる。一方、信頼度指標は、少なくとも、信頼度推定を示す第1変数と、一つ又は複数の関連付けられた環境表現の場所を示すインデックス番号を表した第2変数、ポインタ、又は実数若しくは整数の変数と、のペアとして表現され得る。
【0059】
いくつかの実施形態によると、環境表現に関連する信頼度推定の計算は、その環境表現に一つ又は複数の妥当性規則(plausibility rules)を適用することと、当該信頼度推定を当該環境表現に基づく予測のための入力として出力することとに基づき得る。ここで、上記妥当性規則のそれぞれは、少なくとも一つ実在物と、少なくとも一つの他の実在物と、当該少なくとも一つの実在物についての前回の検出と、の間の可能性のある(妥当な、尤もらしい)関係(plausible relation)により構成される。
【0060】
信頼度推定は、専らセンサ信頼度に基づいて決定されるものとする必要はなく、これに代えて又はこれに加えて、妥当性チェックの結果を表すものとすることができる。例えば、信頼度推定は、少なくとも一つの妥当性規則に基づいて算出されるものとしてもよい。
【0061】
妥当性規則は、環境表現に適用されて真(true)又は偽(false)のいずれかを表す2進値を返すif条件文として実装され得る。妥当性規則は、対象実在物及び同じ時点で検出された他の実在物の特性に関するものであり得るし、又は2つの異なる時点で検出された一つの同じ対象実在物の、一つ又は複数の特性に関するものであり得る。一つ又は複数の妥当性規則を適用した後に、当該適用された規則の結果が真であるか偽であるかに依存して、対象実在物の検出が妥当なものであるレベルを示す信頼度推定を得る、という目的に適した関係(relations)がテストされる。
【0062】
妥当性規則は、対象実在物が他の検出された実在物に対し特定の態様において関係を持つか否か、例えばその対象実在物が2つの検出されたレーンマーキングの間にあるか否か、というようなことを問うだけのものである必要はないと理解すべきである。そうではなく、規則は、疑似的な実在物又は未検出の実在物との関連性を問うものであり得る。例えば、規則は、移動物体又は静止物体などの他の物体が対象車両の周囲に何かしら存在するか否かを問うものであり得る。同様に、規則は、対象実在物が過去に検出されていたか否かを問うものであり得る。
【0063】
ここで用いられているように、二つの実在物(又は2つの異なる時点における一つの同じ実在物)は、それらが、ホスト車両のセンサ装置によって検出された態様又は検出され得る態様で、シーン内に単に存在し又は存在し得た場合には、既に「関係」を有しているものと言える。例えば、「他の車両が存在するか」という規則は、「シーン内に複数の車両が存在する」という種類の単純な関係を問うものである。他の規則は、距離関係(例えば2つの実在物間でのギャップの存在)や、速度関係(例えば、一つの実在物が他の実在物に近付いて行っているか否か)等を問うものであり得る。
【0064】
したがって、結果として得られる信頼度推定は、センサ信頼度に関連するものではなく、又は専ら関連するものではなく、一の対象実在物について現在検出されている少なくとも一つの特性が、検出された他の実在物の少なくとも一つの特性及び又はその対象実在物について過去に検出された少なくとも一つの特性に対し、論理的にどの程度矛盾のないもの(consistent)であるかという妥当性判定の結果を反映するものとなり得る。
【0065】
妥当性規則を適用して、信頼度推定に予め定められた値を与えたり、及び又は信頼度推定を予め定められた値だけ増減させることができる。例えば、妥当性規則を適用することにより、環境表現が妥当な検出であることを示す予め定められた値又は妥当でない検出であることを示す予め定められた値のいずれかがセットされるという予備的な信頼度推定を定義することとなり得る。そして、更なる妥当性規則を適用することにより、当該予備的な信頼度推定を予め定められた値だけ増減させることができる。
【0066】
信頼度推定の算出は、複数の妥当性規則の適用結果の結合(組み合わせ、combination)の算出により構成され得る。ここで、上記結合は、複数の予備的信頼度推定の加算、重み付き加算、積、重み付き積、及び最小値又は最大値の選択、の少なくとも一つにより構成される。
【0067】
上述したニーズは、さらに、例えば車両が備える一つ又は複数の電子処理モジュール(electronic processing modules)などのコンピューティングデバイス上で実行されたときに、上述において又は本出願書類のいずれかにおいて概説された方法又は方法の態様のいずれか一つに従う方法を実行するためのプログラムコード部分を備えた、コンピュータプログラム製品により満たされる。前記コンピュータプログラム製品は、コンピューティングデバイスの内部に設けられた又はこれに関連付けられた永久メモリ若しくは書き換え可能なメモリ、又は着脱可能なCD−ROM、DVD、又はUSBスティックなどの、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存されているものとすることができる。これに加えて又はこれに代えて、前記コンピュータプログラム製品は、例えばインターネットなどのデータネットワークや、電話回線や無線リンクなどの通信回線を介して、コンピューティングデバイスへのダウンロードが行えるように提供されるものとすることができる。
【0068】
上述のニーズは、さらに、車両用の運転支援システムにより満たされる。本運転支援システムは、予測サブシステムを備え、基本環境表現のセットを受け取るよう適合されたコンポーネントであって、各基本環境表現は前記車両の環境において一つ又は複数のセンサにより検出された少なくとも一つの第1実在物を表現するものであるコンポーネントと、基本信頼度推定のセットを割り当てるよう適合されたコンポーネントであって、当該セットの各基本信頼度推定は基本環境表現のセットの一つに関連付けられ、各基本信頼度推定は前記関連付けられた基本環境表現に関連する一つ又は複数の検出信頼度の結合を表すものであるコンポーネントと、少なくとも一つの重みを前記基本信頼度推定の一つに関連付けるよう適合されたコンポーネントであって、前記重みは、前記基本環境表現のセットに基づく複合環境表現に関連するものであり、且つ前記重みは、前記基本信頼度推定に関連付けられた前記基本環境表現における検出エラーの、検出された第2実在物についての予測に対する効果を示すものであるコンポーネントと、前記基本信頼度推定のセットと前記関連付けられた少なくとも一つの重みとの組み合わせに基づいて、前記複合環境表現についての重み付き複合信頼度推定を算出するよう適合されたコンポーネントと、前記重み付き複合信頼度推定を、前記複合環境表現に基づく前記予測についての評価のための入力として出力するよう適合されたコンポーネントと、を有する。
【0069】
一の実施形態によると、前記重みの少なくとも一部は、予め定義されて、対応する記憶装置に記憶される。これに加えて又はこれに代えて、基本信頼度推定と、対応する重みと、の種々の組み合わせが、例えば車両の製造時や、運転支援システムの実装又は更新時等の際に、予め算出されて保存されるものとすることができる。システム用途の詳細に依存して、重み付き複合信頼度推定の中間結果又は最終結果が、予め算出されて保存されるものとすることができる。これは、特に、一定(constant)のセンサ信頼度のみに部分的又は全体的に基づいた信頼度推定に関して、適用することができる。
【0070】
種々の実施形態によると、上記において概説した運転支援システムは、例えば、ホスト車両の周囲を移動する車両の割り込み操縦又は抜け出し操縦(utting-in or cutting-out maneuvers)等のレーン変更操縦についての予測を含むACC機能等のクルーズコントロール機能を実行するよう適合されたものであり得る。
【0071】
上述したシステムの予測サブシステムは、例えば特許文献2の開示に従い、コンテキストベース予測と物理的予測とを実行するよう適合されているものとすることができる。
【0072】
本システム及び又はここに示したいずれかの機能は、個別のハードウェア回路を用いて、汎用コンピュータ又はプログラムされたマイクロプロセッサーと共に機能するソフトウェア及び又はファームウェアを用いて、特定用途向け集積回路(ASIC)を用いて、及び又は一つ又は複数のデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を用いて、実施され得る。
【0073】
上述のニーズは、更に、上記において概説され又は本願出願書類のいずれかに記載されたシステムを備える車両によって満たされる。
【0074】
本発明は、回避できない検出の不正確さ及び検出誤りがあってもその信頼性が向上される予測機能を備えた運転支援システムの提供を可能とする。検出誤りの重大性に応じた重み付けを行うことにより信頼度推定を向上させる本アプローチは、例えば、環境表現が予測の基礎として及び当該予測の結果(帰結)として行われる車両のアクティブ制御又はパッシブ制御の基礎として、選択されるに足る信頼性を有するか否かといったことについての、より信頼度の高い判断を行うための基礎を提供する。
【0075】
したがって、本発明のアプローチは、予測的運転支援システムの適用範囲を、より少ないセンサを備えた、及び又は中程度の又は低い品質のセンサ装置を備えた車両にまで、従ってコスト効果の高い解決策にまで、拡大するものである。
【0076】
ここに示すアプローチは、特許文献2に記載されているような、測定可能な変数に関連付けられた信頼度値を含む指標(indicator)の一般的なデータ構造の使用を可能とするほか、そのようなデータ構造に依存することなく、予測機能を有する任意の運転支援システムにおいても実施することができる。
【0077】
特に基本信頼度推定に重み付けを行うことに関して言えば、ここに提案するアプローチに従って適切な重みを割り当てることにより、センサの不正確さやセンサエラーがある場合であっても、信頼性の高い予測に基づいてアクティブ制御又はパッシブ制御を行うことが可能となる。その一つの理由は、とりわけ、適切に構成されたシステムでは、基本信頼度推定に関連付けられた適切な重みを用いることにより、数は少ないが重要である基本環境表現が低い信頼度推定と高い重みを持つ場合には、たとえ多数の環境表現がより高い信頼度推定を持つが低い重み(これらの環境表現が信頼性のある予測を行うためさほど重要ではないことを表している)を有しているという場合であっても、複合環境表現は低い複合信頼度を得ることとなり得る点にある。
【0078】
他の、補足的な観点から言えば、本システムは、目標とする複合環境表現に関係のある基本環境表現と関係のない基本環境表現とを区別して、すなわち関係のある環境表現だけを考慮して、その複合環境表現を算出するだけではない。さらに、本システムは、実際に考慮される基本信頼度推定を即ちそれらの重みに従って順位付け、これにより、対応する複合環境表現に基づく予測の信頼性又はシーン認識の結果の信頼性について当該システムがより良い判断を行うことを可能とする、洗練された複合信頼度推定を実現する。
【0079】
本発明は、付加的なセンサ装置を必要としないため、低コストで実施することができる。本機能は、例えば、ソフトウェアモジュールの形態で実現することができる。したがって、運転支援システムの種々の既存の実施形態では、ソフトウェアのアップデートを行うだけで足りる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明の一実施形態に従う車両の予測的運転支援システムを、上位のレベルにおいて模式的に示した図である。
図2図1に示す運転支援システムの、一の具体的な実施形態の機能コンポーネントを示す図である。
図3図2に示す運転支援システムの動作を示すフロー図である。
図4】第1の例示的な交通シーンを参考として示した図である。
図5】本発明に従う信頼度指標の第1の実施形態の計算を模式的に示す図である。
図6】本発明に従う信頼度指標の第2の実施形態の計算を模式的に示す図である。
図7】第2の例示的な交通シーンを参考として示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下では、図面に示された例示的な実施形態を参照しつつ、本発明を更に説明する。
図1は、車両の運転支援システム100の実施形態を、上位レベルの概観(high level overview)として示している。システム100は、少なくとも一つの当該車両の電子制御ユニット(ECU、electronic control unit)と、そのユニットの機能を実現するプログラムされたソフトウェア/ファームウェアと、により実現されているものとすることができる。ただし、以下の説明では、簡潔のため機能的な側面に議論を集中し、ハードウェア/ソフトウェアの実現形態の詳細については、そのほとんどを省略する。さらに、図面は、それらのコンポーネントのうち、現時点において本発明の一つ又は複数の側面に関連すると考えられるコンポーネントのみを示している。
【0082】
本車両のセンサ装置102は、一つ又は複数のセンサシステム104、106、及び108を備える。これらのセンサシステムは、運転支援システム100の予測サブシステム(PSS、prediction subsystem)110にセンサデータを提供する。用語「ホスト車両」とは、センサ装置102及び運転支援システム100を備える車両を言う。Car2X環境のように他車両又は路側通信ステーションからセンサデータが受信される場合には、上記センサ装置は、そのようなデータの受信装置を含むものとし、用語「ホスト車両」は、ここではそのような構成を備えるものとしても理解される。
【0083】
明確のため、信頼度推定(CE、confidence estimation)処理に関連するコンポーネント112を分けて図示している。このコンポーネントも、センサ装置102からデータを受け取る。このデータには、例えば、信号対雑音(S/N)比、検出された実在物に関する信号強度、誤差伝搬手法を適用した結果として得られるエラーマージンに関連する表示等のエラー表示(indication)等の、センサ信頼度に関連するデータが含まれ得る。
【0084】
具体的には、センサデータは、センサ信号から直接的に導かれ得る信頼度値が付加されているものとすることできるし、付加されていないものとすることもできる。例えば、レーダセンサは、移動物体や静止物体などの検出した各実在物に、反射信号の信号強度を表す信頼度値を付加するものとすることができる。これに加えて又はこれに代えて、図1には明示的に示していないが、センサ信頼度データは、センサ装置102、支援システム100(例えばCEコンポーネント112)、及び中間処理システムの少なくとも一つに関連付けられた一つ又は複数の専用コンポーネントにおけるセンサデータ処理の結果であり得る。
【0085】
CEコンポーネント112により出力される信頼度推定は、PSSコンポーネント110により受け取られ、以下に詳細に示すように更に処理されて、最終的には、ホスト車両の周囲においてセンサ装置102により検出された交通シーンについての、一つ又は複数の予測が得られ、且つ、場合により、当該予測(単数又は複数)に基づいてアクティブ制御動作又はパッシブ制御動作が行われる。これらの予測は、一つ又は複数の検出された移動物体のそれぞれについての、特定の軌道をなぞる等の挙動に関するものであり得る。
【0086】
予測サブシステム110は、検出された交通シーンの展開を予測するよう動作する。ここで、当該シーンは、ホスト車両を含んでいてもよいし、含まなくても良い。一般に、予測サブシステム110は、付加された信頼度値等の信頼度推定を考慮する。例えば、小さな信頼度値は、検出された実在物(の態様)などの環境表現についての誤った検出が、予測される展開にあまり影響を与えないことを表しており、一方、大きな信頼度値は、環境表現についての誤った検出が大きく影響することを表している。
【0087】
展開を予見するため算出され又は選択された予測(単数又は複数)に基づいて、支援システム100は、車両作動(VA、vehicle actuation)コンポーネント114へ制御信号113を送信することと等を行って、ホスト車両のアクティブ制御を開始するよう動作し得る。これに加えて又はこれに代えて、支援システム100は、その車両の運転者に情報を提供するために設けられた出力システムに、上記の又は何らかの、検出されたシーンについての予測された展開を示す信号113を出力するものとすることができる。当該出力システムは、図1においては、運転者警報(DW、driver warning)コンポーネント116に包含されている。コンポーネント116は、警報、警告メッセージ、警告報知などを運転者に与えるための当該車両の表示装置、オーディオシステム等を制御するよう適合されているものとすることができる。
【0088】
PPSコンポーネント110の機能に関連する機能詳細が、挿入図118に示されている。予測サブシステム110は、センサデータ120を受信する。センサデータ120は、前処理されているものとすることもできるし、されていないものとすることもできる。また、当該センサデータ120は、例えば車両その他の移動物体又はレーンマーキング若しくは路側設置物などの静止物体等の検出された実在物を表現する環境表現の形式であるものとされる。その表現は、位置、速度、幾何学構造又は幾何学的広がり(extension)等を表す種々のデータにより構成され得る。
【0089】
環境表現120は、また、二つ又はそれ以上の物体を表現するデータを含み得る。この場合、環境表現120は、一般に、これら物体の間の関係性に関するデータも含み得る。例えば、環境表現は、第1車両が第2車両に先行していること、及び又は第2車両が第1車両に接近しつつあることに関するものであり得る。この点において、特許文献2に紹介され且つここに記載する直接指標及び間接指標は、環境表現と考えることができる。
【0090】
予測サブシステム110は、さらに、CEサブシステムから信頼度推定122を受信する。各信頼度推定は、交通環境が正しく検知されていることについての算出された信頼度を表現している。信頼度推定は、信号強度又は誤差伝搬表示(error propagation indications)に関連するセンサ信頼度、又は妥当性規則に基づいたものであり得る。結果として、少なくとも一つの信頼度推定値が、検出された交通シーンの少なくとも一つの要素に割り当てられる。具体的には、一つ又は複数の環境表現が、それらに割り当てられた信頼度推定を持つ。ここで、これに必要な処理は、センサ装置102、CEコンポーネント112、又はPSSコンポーネント110により実行されるものとすることができる。これに関する具体的な処理は、後述において詳述する。
【0091】
予測サブシステム110は、さらに、直接指標(DI、direct indicators)、間接指標(II、indirect indicators)、及び信頼度指標(CI、confidence indicators)をそれぞれ構築するための、コンポーネント124、126、及び128を備える。直接指標及び間接指標の概念は、上述において既に説明した。更なる詳細については、特許文献2に記載されている。信頼度指標の概念については、後述において詳述する。
【0092】
種々の指標が、物理的予測(PP、physical prediction)コンポーネント130、及び又はコンテキストベース予測(CBP、context based prediction)コンポーネント132に入力される。それぞれの機能についても、上述において既に説明しており、詳細については特許文献2に記載されている。
【0093】
なお、矢印134(複数)は、図1においては例示的に示されたものであり、具体的な実施形態の詳細に依存して他の又は更なるデータ配信/受信メカニズムを設けるものとすることができる。
【0094】
一般に、コンテキストベース予測及び物理的予測に基づく予測的運転支援システムは、図1に示す構成に従い、ホスト車両が検出した交通シーン内において検知される実在物の少なくとも一つに信頼度値を付加する信頼度推定機能により拡張され得る。さらに、直接指標と間接指標とは、信頼度指標により補足され得る。信頼度指標は、信頼度推定処理から導出されるものであり、その展開が予測対象となっている複合環境表現に関連する検出された実在物についての、且つ当該実在物についてのみの信頼度推定を結合する(組み合わせる)。
【0095】
信頼度指標は、後述する結合関数に基づいて算出され得る。例えば、結合後の信頼度値に推定誤りの影響が反映されるように、当該結合関数に従って複数の信頼度推定が重み付けされて適切に結合される。
【0096】
その後に、一つ又は複数の信頼度指標が、コンテキストベース予測及び物理的予測の一方又は双方に入力され得る。これに加えて又はこれに代えて、信頼度指標は、適切な結合演算(combination operation)に従って、予測された挙動についての出力された信頼度推定又は確率と、結合されるものとすることができる。
【0097】
図2は、図1の運転支援システム100の具体的な実施形態を示す図であり、同図においては、明確のため、符号の再使用が可能な部分については符号を再使用している。ただし、望まれる運転支援の機能やECUに用いることのできるハードウェアプラットホーム等々の詳細に依存して、図2を参照して後述する構成から変更を加えた他の多くの構成も考え得ることに留意すべきである。
【0098】
図2には、信頼度推定器112が、基本環境表現のセットを受け取る(ASER、accepting a set of basic environment representations)ためのコンポーネント202と、基本信頼度推定のセットを割り当てる(ASCE、allocating a set of basic confidence estimates)ためのコンポーネント204と、により構成されるように記載されている。信頼度指標を算出するためのCCコンポーネント128は、基本信頼度推定に重みを割り当てる(AWCE、associating weight to basic confidence estimates)ためのコンポーネント206と、重み付き複合信頼度推定を算出する(CWCE、calculating weighted composite confidence estimates)ためのコンポーネント208と、により構成されるように示されている。
【0099】
次に、図2に示す支援システム100の動作300について、図3に示すフロー図を参照しつつ説明する。ステップ302において、信頼度推定器112のコンポーネント202は、基本環境表現120のセットを受け取る。各基本環境表現は、一つ又は複数のセンサ104、106、及び108により車両の環境内で検出された少なくとも一つの実在物を表現する。
【0100】
環境表現は、記憶コンポーネント(又は記憶領域)210内に保存されるものとすることができる。コンポーネント202は、記憶装置210から基本環境表現を取り出すか、又は記憶装置210内の当該表現の記憶位置を示すポインタのセットを生成するよう動作するものとすることができる。多数となり得る表現のうちのいずれの表現が所望のセットに属しているものかについての情報が、制御コンポーネント(CC)212から受信され得る。例えば、基本環境表現のセットは、特定の複合環境表現(例えば特定の直接指標又は間接指標)を算出するために必要な環境表現をグループ化したものであり得る。
【0101】
どの表現(複数)がセットに属するかは、予め定義して適宜レポジトリ(R)214に保存しておくものとすることができる。例えば、検出された実在物等の環境表現が何らかの具体的な直接指標、間接指標、又は信頼度指標に寄与するという表示(indication)が、レポジトリ214内に記憶され得る。この点において、コンポーネント202は、単に制御コンポーネント212からトリガを受信して、受け取るべき基本環境表現のセットの表示(indication)を受け取るべくレポジトリ214にアクセスし、当該表示を作業領域に提供するものとすることもできる。
【0102】
コンポーネント202の動作に関し、必要な基本環境表現のすべてが利用可能であるものとする。環境表現は、例えば指標生成のために設けられたコンポーネント124、126、及び128によって生成され得る。環境表現(複数)、例えば特許文献2及びここに記載されている直接指標、間接指標、及び信頼度指標以外の環境表現が、センサ装置102から受信されたデータ(例えば検出された単一の実在物の表現)に基づいて更に生成され得る。これらを基本環境表現として用いることにより、さらに複雑な複合環境表現が生成され得る。
【0103】
ステップ304において、与えられた基本環境表現のセットに基づいて複合環境表現が生成される。例えば、DIコンポーネント124又はIIコンポーネント126の一方により、直接指標又は間接指標が算出される。ステップ304は、制御コンポーネント212(単数)によりトリガされ得る。図2において制御コンポーネント212が何度も示されているのは、単に明確のためである。直接指標及び間接指標の算出の詳細については、特許文献2に記載されている。結果として得られた複合環境表現又はその表示(indication)は、記憶装置210に出力され得る。図2では、記憶装置210も、同図の明確のため何度も示されている。なお、ステップ304は、例えば信頼度指標の算出に関するものであり得るステップ306、308、及び310の一つ又は複数の実行前に、これらと並行して、又はこれらの実行後に、実行され得る。
【0104】
ステップ306において、コンポーネント204は、基本信頼度推定のセットを割り当てるよう動作する。当該セットの各基本信頼度推定は、コンポーネント202により受け取られた基本環境表現のセットの一つに関連付けられる。例えば、コンポーネント204は、コンポーネント202によりトリガされ、そこから基本環境表現のセットの表示(indication)を受信するものとすることができる。これに代えて、制御コンポーネント212が、コンポーネント202及び204の両者にトリガを与えるものとすることもできる。したがって、ステップ302及び306は、図3においてはシーケンスに示されているが、一般的には並行に実行されるものとすることもできる。コンポーネント204のトリガリング動作については、更に他の選択肢(オプション)も考えることができる。例えば、コンポーネント204は、単にCCコンポーネント212又はコンポーネント204からトリガを受信し、レポジトリ214へアクセスして必要な基本信頼度推定のセットの情報を取り出すものとすることができる。
【0105】
一般に、各基本信頼度推定は、関連付けられた基本環境表現に関連する一つ又は複数の検出信頼度を結合したものを表している。検出信頼度は、一つ又は複数のセンサ信頼度により構成され得る。この点において、コンポーネント204は、例えばセンサ装置102により与えられたS/N比等に基づいてセンサ信頼度の表示(indication)を生成するように設けられたコンポーネント216から、そのような表示を受け取るものとすることができる。例えばエラーマージンに基づく他のセンサ信頼度も、受信されたセンサデータに基づいて算出され得る。更に他のセンサ信頼度が、コンポーネント216により与えられるか、又はそうでない場合は、特定のセンサシステム等についての既知の信頼度レベルに関する予め定められたデータに基づいて与えられるものとすることができる。
【0106】
検出信頼度は、単なるセンサ信頼度のほか、他の又は更なる信頼度表示(confidence indications)を含み得る。一例として、実在物検出のような検出イベントに対して妥当性規則が適用されるものとすることができる。
【0107】
複数の検出信頼度に基づいて基本信頼度推定を得るために実行されるべき結合演算は、加算、重み付き加算、積、重み付き積、最小値又は最大値の選択、及びこれらの組み合わせ等の、任意のものであり得る。一例として、信頼度推定は、複数のセンサ信頼度の、適切に定義された平均値を表すものとすることができる。
【0108】
コンポーネント204は、図2に示すように、割り当てられた基本信頼度推定のセットを記憶装置218内に出力する。具体例として、記憶コンポーネント218が一般的に信頼度推定の保存を行うよう構成されている場合には、コンポーネント204は、必要な基本信頼度推定のセットを割り当てる際には、単に、記憶装置218内に保存されている信頼度推定の位置を示す一つのポインタ又はポインタのセットを生成するものとすることができる。
【0109】
例えばセンサ信頼度に基づいて信頼度指標の算出128のための信頼度推定を出力するよう動作する図1の信頼度推定処理122は、ステップ306で終了する。ただし、繰り返しになるが、図1に示す矢印134(複数)は、予測サブシステム100の種々の機能ブロックの、関連を有する可能性のあるサブセットを単に示すものである。一例として、信頼度推定122は、直接指標、間接指標、信頼度指標などの指標を含む環境表現(複数)に対し信頼度推定のセットを割り当てることも含み得る。そのような場合に割り当てられる「基本」信頼度推定は、予測サブシステム100の前回動作の際に導出された「複合」信頼度推定により構成される。すなわち、ここに示す動作300は、一般に、単純な環境表現と信頼度推定から開始して、より複雑な環境表現と信頼度推定に到達するように、繰り返し実行され得る。
【0110】
ステップ308では、図2に破線で示されたコンポーネント128に制御が渡される。具体的には、コンポーネント206は、例えば信頼度推定器112のコンポーネント204その他のコンポーネント、又は制御コンポーネント212から、トリガ信号を受信し得る。当該トリガ信号は、例えば、記憶装置218内に与えられている基本信頼度推定のセットの表示(indication)等により構成される。コンポーネント206は、当該トリガに応答して、記憶装置218内に保存され又は示された基本信頼度推定のセットの一つに重みを割り当てるよう動作する。
【0111】
各重みは、少なくとも一つの特定の基本環境表現に割り当てられる。逆に言えば、複合環境表現を形成するための基本環境表現として用いられる一つ又は複数の環境表現のそれぞれは、それらに対し明示的に又は少なくとも暗に割り当てられた重みを有する。例えば、重みは、(例えば割り当てられた信頼度推定と)乗算される場合には平均重みが1、又は(例えばそれら重みの)加算が行われる場合には平均重みが0、となるように規格化されるものとすることができる。この場合、平均重みが割り当てられた信頼度推定には、明示的に割り当てられた重み付けファクタは不要であり、平均値から離れるように重み付けられるべき信頼度推定は、明示的に割り当てられた重み値を持ち得る。
【0112】
各重みは、複合環境表現に基づく予測に対する、例えば誤検知などの検出誤りの影響を表すことを目的とする。したがって、特定の信頼度推定(単数)/環境表現(単数)には一の重みが割り当てられるが、特定の基本信頼度推定(単数)は、それに割り当てられた複数の重みを持ち得る。すなわち、その信頼度推定を一の基本信頼度推定として異なる複数の複合信頼度推定に使用する際の、当該使用のそれぞれについての一の具体的な信頼度値を持ち得る。
【0113】
原理的には、重みは特定の信頼度推定に対して具体的に割り当てられるが、実際の実施形態においては、例えば信頼度推定の或るグループにおいては検出エラーが一又は複数の予測に与える影響が同様であると考えられるという理由から、所与の値を持つ一の重みが信頼度推定のグループに対して割り当てられ得る。
【0114】
重みについての適切な値の選択は、一般に、人間により入力される知識を反映するものとすることができる。従って、重み又は重みを生成するための式(単数又は複数)(数式表現、アルゴリズム表現)を、車両又はECUの製造時や検査の際に行う当該式のアップデート時等の少なくとも一つにおいて、本システムに入力するものとすることができる。ただし、これは、他の重みに基づく重み生成、例えば単純な信頼度推定/環境表現に割り当てられた重みに基づいて複雑な信頼度推定/環境表現に割り当てられる重みを生成することを、排除するものではない。重みは、例えば運転支援システムのアクティブ制御動作又はパッシブ制御動作に対する運転者のフィードバックに基づいて、動作の間に調整されるものとすることもできる。
【0115】
コンポーネント206は、図2では重みのセットを記憶コンポーネント220に出力するように示されている。例えば、記憶装置220は、本システムで使用される全ての重み又はそれらの表示(indication)を記憶し、コンポーネント206は、当該記憶装置220に記憶された、現在処理中である重みのセットに属する重み(複数)へのポインタ(単数又は複数)を生成するものとすることができる。ステップ306及び308の結果として、破線矢印222により示されているように、一般に、記憶装置218内の割り当てられた基本信頼度推定と、記憶装置220内の割り当てられた重みと、の間には、1対1の関係が存在する。例外として、いくつかの信頼度推定やそのグループ等が、平均重み又は中立的な重みを持ち、従ってそれらに対して重みを明示的に割り当てる必要がない場合があり得る。
【0116】
ステップ310では、コンポーネント208が、ステップ304で算出した複合環境表現についての重み付き複合信頼度推定を算出するよう動作する。この算出は、記憶装置218内に示された関連する基本信頼度推定のセットと、記憶装置220内に示された関連付けられた重みと、に基づいて行われる。信頼度推定と関連付けられた重みとの結合が実行される。この結合には、加算、乗算、重み付き加算、重み付き乗算、平均値の算出や最大値又は最小値の決定等の更に複雑な演算、等々の少なくとも一つが含まれ得る。重みは、複合信頼度推定を算出する前に、それぞれ関連付けられた信頼度推定と結合されるか、及び又は重みと信頼度推定とが個別に処理され得る。例えば、信頼度推定及び重みの一方又は双方が、信頼度推定との結合の前に、再度規格化され得る。
【0117】
算出された重み付き複合信頼度推定、又はその表示(indication)が、記憶装置218に保存される。信頼度推定は、それ自身が、後続の処理(例えば、より複雑な複合信頼度推定を算出するために引き続き実行される動作300)において基本信頼度推定として用いられ得る。
【0118】
ステップ312において、重み付き複合信頼度推定は、複合環境表現に基づく予測の評価のための入力として使用される。例えば、複合環境表現は、直接指標又は間接指標により構成されるものとすることができ、図2に矢印224により示されているように、物理的予測サブシステム130及びコンテキストベース予測サブシステム132の一方への入力となる。複合信頼度推定は、関連付けられた信頼度指標により構成されものとすることができ、当該信頼度指標は、矢印226により示されているように、サブシステム128によりPPサブシステム130及びCBPサブシステム132の一方に、適宜出力される。上述したように、矢印224及び226は直接的な機能的関連性を示すものであるが、ステップ304の複合環境表現とステップ310の複合信頼度推定とは、記憶装置210及びリポジトリ218に、それぞれ保存されるものとすることができ、PPコンポーネント130及びCBPコンポーネント132の一方又は双方により、信号224、226のようなトリガ、及び又は制御コンポーネント212から受信される信号のような他の信号に応答して、それらから読み出されるものとすることができる。
【0119】
PPサブシステム130とCBPサブシステム132の一方又は双方は、信号226により示された信頼度推定を受け取り、当該信頼度推定をサブシステム内部の計算に用いるか、又はこれに応じてサブシステムの出力を適宜変調する。より具体的には、コンテキストベース予測は、信頼度指標を他の直接/間接指標とつなげて一つの特徴ベクトルとして識別器に与えることにより、当該信頼度指標を組み込む。これに加えて又はこれに代えて、信頼度指標の値を、予測された挙動に割り当てられた確率と適宜結合させるものとすることができる。その結合演算は、加算、重み付き加算、積、重み付き積、最小値又は最大値の選択、等の少なくとも一つにより構成され得る。
【0120】
信頼度指標は、物理的予測の入力となることができ、例えば尤度値との適切な結合演算又はPPサブシステム130の検証機能が実行される。この検証機能については、特許文献2において、より詳細に述べられている。これに加えて又はこれに代えて、信頼度指標の値は、最終的な事後確率と適宜結合されるものとすることができる。その結合演算は、加算、重み付き加算、積、重み付き積、最小値又は最大値の選択、等々の少なくとも一つにより構成され得る。
【0121】
予測及び決定サブシステム228のコンポーネントは、重み付き信頼度推定に基づいて、対応する(複合)環境表現が、検出された移動実在物の将来挙動についての予測の基礎として信頼できるか否かの判断を行い得る。例えば、重み付き信頼度推定は、一の数値により構成されるものとすることができ、当該数値が評価される。例えば、当該数値が或る値を超えている場合には、その環境表現がアクティブにされ、当該環境表現から得られた予測が制御動作の基礎を構成するものとすることができ、一方、その重み付き信頼度推定が上記或る値未満であるときは、当該環境表現は、予測の基礎としての使用及び当該予測の結果としての制御動作の基礎としての使用が抑制される。
【0122】
重み付き信頼度推定に基づいて、複合環境表現が信頼できるものであることが見出された場合、図2に示すように、結果として得られる予測は、制御信号113となり得る。その後、制御は、より上位の制御レベルに戻され得る。
【0123】
予測サブシステム100の動作300は、更なる環境表現及び又は信頼度推定を出力するべく(例えば、更なる直接指標又は間接指標、及び又は信頼度指標を出力するべく)、再び開始され得る。総合的なシーン解釈のためには、一般に、運転支援機能や交通シーンの複雑さ、例えば検出された関連する実在物の数等に依存して、動作300を複数回実行することが必要となり得る。さらに、予測と、対応する制御信号とは、定期的に(例えば周期的に又は循環的に)、又は新たなセンサデータの受信等に応答して、最新状態に更新することが必要となろう。
【0124】
図1〜3を参照しつつ、リアルタイムで実行される場合のデータ処理について説明したが、本データ処理の一部を、例えば製造の際に、前もって実行し保存しておくこともできる。例えば、少なくともいくつかの基本信頼度推定については、例えば定数であるセンサ信頼度に基づいている場合には、予め算出しておくことができる。重みに関する計算(例えば、重み付き複合信頼度推定の計算に入力されることとなる重みについての結合演算)は、重みが定数である場合又は予め定められている場合には、前もって実行しておくことができる。また、固定の信頼度推定と重みとの結合に関する計算は、一度実行して、車両及び運転支援システムの運用時に使用できるように、当該実行の結果を保存しておくことができる。
【0125】
図4は、後で参照することを目的として、図1〜3において説明した運転支援システム100のホスト車両により検出され得る交通シーンを示した図である。ホスト車両自身は、シーンの一部であっても良いし、一部でなくてもよい。レーン402、404、406を有する道路400において、対象車両j(ホスト車両とは異なる車両であり得る)がレーン404上を走行している。予測システムは、対象車両jのレーン変更(例えばレーン402への割り込み)が予測されるか否かを判断することが必要であり得る。種々の環境表現が生成され、一つ又は複数の信頼性のある予測と対応する制御動作の基礎を得るべく、信頼度推定が割り当てられ得る。
【0126】
環境表現は、対象車両についての他の移動物体(例えば車両)との関係性を表し得る。ここで、文字「p」は対象車両の先行車両(predecessor)、文字「s」は対象車両の後続車両(successor)、文字「l」は対象車両の左側レーン上の物体、文字「r」は対象車両の右側レーン上の物体を、それぞれ表し得る。したがって、対象車両jは、可能性として、当該対象車両のレーン404の左側のレーン402上において車両lp及びlsに対して関係408及び414をそれぞれ有し、当該対象車両のレーン404の右側のレーン406上において車両rp及びrsに対して関係412及び418をそれぞれ有し、及び又は同一のレーン404上において車両p及びsに対して関係410及び416を有し得る。
【0127】
対象車両が含まれる交通シーンでは、図4に示す他車両の全部又は一部が含まれ得ることとなり得る。従って、関係408−418のサブセットのみが、システムによって表現され及び又は評価され得る。
【0128】
図5は、それぞれが計算規則(prescription)の特定のセットに基づいて行われる複数の複合信頼度指標500についての計算を、模式的に示す図である。各セットは、システム100に実装され、図2の制御コンポーネント212により制御され得る。これらの計算規則は、他の信頼度指標を含む他の基本信頼度推定を参照する。それらの基本信頼度推定自身も、リスト500において定義され得る。図1から推測されるように、信頼度指標の生成のための入力502は、環境表現120と、信頼度推定122と、により構成される。
【0129】
図5には、一の特定の(具体的には接近しつつある先行車についての)信頼度推定504の生成が、より詳細に示されている。より詳細には、図4での用語を用いると、信頼度推定504は、対象車両jがその先行車両pに接近しつつあることに関するものである。指標504は、複数の対象車両のそれぞれについて一回適用され得る。すなわち、交通シーンが複数の車両により構成されている場合には、指標504の種々のインスタンスが定義され得る。指標504の各インスタンスに関連するデータは、例えば各対象車両の内部ID番号を用いて保存され得る。
【0130】
信頼度指標504への入力は、移動物体jが正しく検知されていること及び移動物体pが正しく検知されていること、についての信頼度506、507により構成され得る。説明のため、信頼度推定506、507のそれぞれは、センサ信頼度を結合したものを表しているものとする。当該結合は、例えば、物体jが少しでも検知されているとするセンサ信頼度、物体jが二つ以上の個別の独立な実在物ではなく一つの実在物として検知されているとするセンサ信頼度、物体jが正しい位置と共に検知されているとするセンサ信頼度、物体jが正しい速度と共に検知されているとするセンサ信頼度、等々を結合したものであり得る。用語「正しい」とは、ここでは、検知結果が、信頼性のある予測が可能となるエラーマージンの範囲内に限定されていること、と理解され得る。
【0131】
信頼度推定には、相対重み508が割り当てられる。すなわち、重み1−1及び重み2−1が、信頼度推定506及び507のそれぞれに割り当てられる。重み508のそれぞれは、検出エラー(例えば一つ又は複数のセンサエラー)が、複合信頼度指標504に関連付けられている「jがpに接近しつつある」という複合環境表現に基づく予測に対し、相対的な意味において与える影響を表している。信頼度推定506及び507に関し、重み1−1及び重み2−1は同じ値を持ち得る。j又はpの位置、速度、及び又は加速度についての誤検知は、「jがpに接近しつつある」から得られる予測(単数又は複数)に対して同じ又は同様の影響を持つと推測され得るためである。一例として、jのレーン変更が(誤って)予測され得る。
【0132】
説明のため例示的に、信頼度指標504への更なる入力として、pが実際にjの先行車両である信頼度を表す信頼度推定、即ち他の信頼度指標510が必要であるとする。信頼度指標510は、同様に、更なる信頼度推定512として、pとjとの間に更に他の車両が存在しない信頼度を必要とする。そこには、重み1−1及び重み2−1と比較して低い値を持つ重み3−1が割り当てられている。pがjより低速である場合には、jとpとの間にホスト車両のセンサ装置が検出していない車両が存在したとしても、jはレーンを変更すると推測できるためである。
【0133】
信頼度推定510は、更なる信頼度推定として、p及びjの双方に正しいレーンが割り当てられている信頼度514を必要とし得る。当該信頼度推定は、さらに、pとjが実際に同じレーン上を走行している信頼度と、pがjの左側のレーン上を走行していない信頼度と、pがjの右側のレーン上を走行していない信頼度と、の結合から得られることが図示されている。信頼度推定514に寄与する更に他の信頼度も考えることができる。
【0134】
重み4−1、重み5−1、及び重み6−1は、信頼度推定514に割り当てられて、pとjとが実際に同じレーン上を走行しているという検知結果におけるエラーの影響を表す。具体的には、これらの重みは、「jがpに接近しつつある」に基づく予測結果に対するレーン割り付け誤りの影響を表すことを意図したものである。車両pが実際にはjの左側の隣接レーン上にあるのに、車両pをjのレーンに割り付けるという誤りは、例えば左レーン上の車両が右側レーン上の車両よりも通常は高速であり得るという理由から、誤った割り込み予測を生成することとはならない場合もあり得る。車両pが実際にはjの右側のレーン上を移動しているのに、車両pをjのレーンに割り付けるという誤りは、危険な結果を伴う誤った予測を生成することとなり得る。右側レーン上の車両は、jよりも低速であると推測され得るためである。したがって、重み6−1には、重み4−1や重み5−1よりも高い値が選択され得る。
【0135】
信頼度推定506、510、514等に寄与する他の信頼度を考えることもできる。重み付き複合信頼度推定504を得るため、種々の基本信頼度推定及びそれらに割り当てられた重みから、結合f(.)516が算出される。結合516は、加算、積、最小値又は最大値の選択、これらの組み合わせ、等々により構成され得る。なお、結合関数fは、結合演算の一部として図5に示した重みよりも多くの更なる重みにより構成されるものとすることができる。
【0136】
図6は、信頼度推定のセット500の他の複合信頼度推定602を例示する図である。信頼度推定602は、図4に示す車両jの左側レーン上での、lpとlsとの間の、jのためのフィッティングギャップ(jが入り込むための隙間)に関連する信頼度指標であるものとする。
【0137】
図5の指標504と同様に、指標602も、さらにネストされた信頼度推定に基づいている。説明のため、信頼度推定/指標606、610、612等は、信頼度指標602に寄与するものとして図示されている。これらは、物体間の同様な関係性に関するものであり、同様の検出エラーの影響を受けやすいものであり得るという点において、信頼度推定506、510、512等との類似性を有している。しかしながら、これらの類似性はあるものの、検出エラー(複数)は、結果として得られる予測の信頼性に対して異なる影響を与え得る。原理的には、一つの同じ信頼度推定が異なる複合信頼度推定(複数)のための入力(即ち、基本信頼度推定)として用いられる場合には、当該一つの同じ信頼度推定に割り当てられる重み(複数)は異なったものとなり得る。したがって、図6に示す重み1−2、2−2等の値は、以下に示すように、図5の重み1−1、2−1等の値とは異なるように選択され得る。
【0138】
信頼度指標604は、lpがjの左側の先行車両であることの信頼度を示す更なる信頼度指標610を入力として有し得る。信頼度指標610は、同様に、更なる信頼度推定612として、lpとjとの間に他の車両が存在しないことの信頼度を必要とし、複合信頼度指標604の算出のため、重み3−2が割り当てられている。信頼度推定512及び612は同様の関係性に関するものであるが、図5の重み3−1と図6の重み3−2とは、異なる値が割り当てられ得る。その理由は、指標604の場合には、lpとjとの間に他の車両が存在すると、lsとlpとの間のギャップが事実上に閉じてしまうこととなり得、従ってこの意味において、検出漏れ(misdetection)は、対応する環境表現604に基づく予測に対して強い影響を持ち得ることとなるためである。
【0139】
信頼度指標604は、lsがjの左側の後続車両であることに関する信頼度推定615の入力を更に必要とするように図示されている。推定615は、推定610と同様の形態にネストされ得る。重み7−2、重み8−2、重み9−2、及び重み10−2は、重み3−2、重み4−2、おもみ5−2、及び重み6−2と同様の値が割り当てられ得る。ただし、重み7−2、重み8−2、重み9−2、及び重み10−2の一つ又は複数には、それぞれ対応する重み3−2、重み4−2、重み5−2、及び重み6−2よりも大きな値が割り当てられ得る。左側の後続車両は、左側の先行車両に比べて、通常、レーン変更をしようという運転者の意志に対しより強い影響を持ち得るためである。
【0140】
図5及び図6は、それぞれ、一つの演算516及び616における、信頼度推定と重みとの組み合わせ(結合、combination)の実行を例示するものであるが、他の実施形態によると、この計算は、その複数の部分が異なるインスタンス(複数)で実行されるものとすることができ、演算516、616は、予め算出された中間計算結果を結合させることで構成されるものとすることができる。例えば、信頼度推定と重みとの結合は、信頼度指標510を算出する際に、信頼度推定510と512とを結合させることを含めて、且つ重み3−1〜重み6−1を含めて、実行されるものとすることができる。そして、その中間結果を、信頼度指標504を算出する際に、演算516に与えるものとすることができる。
【0141】
信頼度推定に割り当てられる重みには、検知誤りによって臨界的な予測(critical prediction)の結果(即ち、アクティブ制御動作又はパッシブ制御動作)が生じてしまうこととなる確率を反映する値が割り当てられ得る。例えば、種々の実施形態によると、予測誤り及び誤った制御動作が、より危険であるか、又はより危険でないかが、評価され得る。
【0142】
一例として、運転支援システムは、人間である運転者を支援するため有人車両内に実装され得る。人間である運転者は、一般に、ほとんど例外なく、誤りを起こすことなく運転すると推測される。運転支援システムは、事実に基づく理由がないのに、誤った肯定的な予測結果(予測の帰結)(以下、肯定的予測結果という)を生成し得る。この誤った肯定的予測結果には、例えば、警報などのパッシブ制御動作やブレーキ作動などのアクティブ制御動作を行うことが含まれ得る。誤った肯定的予測は、運転者を煩わせ、システムのスイッチをオフさせてしまうこととなり得る。その結果、システムは、人間による運転誤りが発生するような稀な状況において運転者を支援することができなくなってしまう。このような理由から、誤った肯定的予測結果は、重大なシステムエラーであると考えることができる。
【0143】
運転支援システムは、パッシブ制御動作やアクティブ制御動作を生成することについての事実に基づく理由なく、誤った否定的な予測結果(予測の帰結)(以下、否定的予測結果という)も生成し得る。誤った否定的予測結果は、例えば、それらの制御動作を誤って生成しないことを含み得る。運転者は、通常、そのような状況を処理し得るので、誤った否定的結果は、運転者の介入によって解消されると考えることができる。従って、誤った否定的予測結果は、それほど重大なシステムエラーではないと考えることができる。
【0144】
もう一つの例として、運転支援システムは、無人の自律車両に搭載され得る。すなわち、すべての運転状況を車両制御が自律的に処理することが求められる。このようなフレームワークでは、誤った肯定的予測結果は、それほど重大ではないと考えられる。例えば、運転支援システムは、時折発生する誤った肯定的予測結果に基づく動作が、用心深いと考えられる運転動作となるような態様で、実装され得る。一方、誤った否定的予測結果は、重大であると考えられる。その場合、自律車両は事故を発生させ得るためである。
【0145】
以下では、誤った肯定的結果が誤った否定的結果よりも重大であるような運転支援システム、すなわち人間である運転者を支援する運転支援システムの、具体的な例について考える。図5に示す信頼度指標504を参照すると、重みには、次のような数値が具体的に割り当てられ得る:重み1−1=1;重み2−1=1;重み3−1=0.5;重み4−1=1;重み5−1=0.5;重み6−1=2。
重み付き結合516は、i=1_1〜6_1の全てのiについての、(重み_i)×(信頼度指標_i)の加算として算出され得る。
【0146】
説明のため、重み付き信頼度516は、乗算により「JがPに接近しつつある」という間接指標を抑圧する目的で直接的に用いられ得るものとする。
【0147】
図7は、上述の例示的な運転支援システムにより検出され得る例示的な交通シーンを示す図である。レーン702、704、706を有する道路700上において、自車両Eは、対象車両jと先行車両pを検出する。予測システムは、例えば、対象車両jの、レーン704から自車両レーン702へのレーン変更、すなわちレーン702への割り込みが行われるという予測の信頼性を判断することが必要となり得る。この予測は、「jがpに接近しつつある」という間接指標に基づいたものであり得る。
【0148】
説明のため、車両pは、位置708にあるものとして誤って検出されたものとする。すなわち、実際の位置710はレーン706上に存在するのに、レーン704上を走行しているものとして検出されたものとする。車両j及びpの速度は、それぞれ時速100km及び時速60kmとして測定され得る。この速度差が、対応する或る閾値を超えた場合、(例えば、重みを用いない運転支援システムにおいては)「jがpに接近しつつある」という指標が反応して、誤った予測、例えばレーン702への車両jの割り込みが発生するであろうとの誤った予測を導き、さらには誤った予測結果(その予測の帰結)、例えば運転支援システムにより自車両Eのブレーキ動作が開始されるというような誤った肯定的予測結果を導くこととなり得る。
【0149】
図5に示す信頼度指標506及び507を参照し、車両j及びpは比較的正確に検出され得るものとして、信頼度指標C1_1(516)=0.8、C2_1=0.8、とする。さらに、j及びpは互いに接近して検出されており、システムは、jとpとの間に非検出の車両は存在しないことを確信し、信頼度指標C3_1(512)=1.0と算出する。さらに、車両pは、車両jが走行するレーン704と、レーン706と、の間の位置708を走行しているものとして検知され、対応する信頼度指標(514)をC4_1=0.5、C5_1=1.0、及びC6_1=0.5、と算出する。
【0150】
その結果、図5に示す重み付き複合信頼度推定516は、数値0.68と算出される。この値を、重みを用いない(すなわち全ての重みが1.0とされる)システムにおいて算出される数値0.77と比較すべきである。この重み付き複合信頼度推定が「jがpに接近しつつある」という間接指標のアクティベーション(activation)に乗算されたとすると、個々の重み付けは、従って、重み付けを行わない(すなわち、全ての重み=1.0である)場合に比べて、誤った予測の発生確率を著しく減少させることとなる。換言すれば、上述したように、重みのセットは、それぞれ、「jがpに接近しつつある」という指標についての信頼度又は信頼性の推定が、図7に示す臨界的な(クリティカルな)状況においては減少されるようにし、従って、誤った肯定的予測結果を回避することをサポートする。
【0151】
重み設定の具体的な組み合わせは、上述において例示したように、具体的な交通状況に対する誤った肯定的予測結果を回避又は吸収するように適合され得る。その具体的設定は、他の状況に対しては、重み付き信頼度推定の値を増加させることにもなり得るが、この値の増加は、いずれにせよ対応する環境表現(指標等)が反応しないような状況である限り意味を持たない。したがって、重みを適切に設定する際には、当業者は、環境表現(例えば指標)が予測を用いて当該予測に応じた制御動作を実際に開始させるような状況(複数)に集中することができる。
【0152】
本発明は、クルーズコントロールのほか、駐車支援などのより多くの機能を含む、及び将来開発されるであろう支援機能を含む、任意の種類の予測的な運転支援(システム)と共に実施され得る。
【0153】
本発明を、その望ましい実施形態との関係において説明したが、当該説明は、これに限定することを意図するものではなく、単なる例示を目的として記載されたものであると理解すべきである。特に、上述においては特徴構成を個別に記載したが、これら特徴構成を種々組み合わせることが有利又は適切であることは、当業者において明らかである。したがって、本発明が添付の特許請求の範囲のみによって制限されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7