【課題を解決するための手段】
【0027】
上述のニーズは、車両の運転支援システムにおける予測サブシステムについての方法により満たされる。本方法は、基本環境表現のセットを受け取るステップであって、各基本環境表現は、車両の環境において一つ又は複数のセンサにより検出された少なくとも一つの第1実在物を表現するものであるステップと、基本信頼度推定のセットを割り当てるステップであって、当該セットの各基本信頼度推定は、前記基本環境表現のセットの一つに関連付けられ、各基本信頼度推定は、前記関連付けられた基本環境表現に関連する一つ又は複数の検出信頼度の結合(combination)を表すものであるステップと、少なくとも一つの重みを前記基本信頼度推定の一つに関連付けるステップであって、前記重みは、前記基本環境表現のセットに基づく複合環境表現に関連するものであり、且つ前記重みは、前記重み付き基本信頼度推定に関連付けられた前記基本環境表現における検出エラーの、検出された第2実在物についての予測に対する効果を示すものであるステップと、前記基本信頼度推定のセットと前記関連付けられた少なくとも一つの重みとの組み合わせ(結合、combination)に基づいて、前記複合環境表現についての重み付き複合信頼度推定を算出するステップと、前記重み付き複合信頼度推定を、前記複合環境表現に基づく前記予測についての評価のための入力として出力するステップと、を有する。
【0028】
前記車両(ホスト車両、自車両)は、乗用車、トラック、若しくはバス、又は一般に、道路、高速道路等を走行することを意図された任意の物体であるものとすることができる。これには、運転者によって運転される有人車両のほか、ロボット車両のような自動的に運転される車両も含まれる。この点において、“運転者支援システム”及び“運転支援システム”(ここでは同義語として用いられる)という用語は、一般に、例えば無人車両にも用いられ得る、任意の種類の運転支援システムを含むものとして解釈されるべきである。
【0029】
運転支援システムは、移動物体についての何らかの種類の将来運動及び又は他の挙動を予測する機能を有する場合には、予測サブシステムを備えるものと解釈することができる。
【0030】
検出される実在物には、任意の種類の移動物体若しくは静止物体、又はレーンマーキングや道路領域などの他の構造要素が含まれ得る。例えば、移動物体には、他の車両、乗用車、トラック、バス、バイク/自転車、ロボット車両のほか、市街電車(トロリー、trolley)、歩行者、及び馬などの動物も含まれ得る。静止物体には、駐車中の車両のほか、道路標識、交通信号、路側(road margins)、ガードレール、壁、樹木や灌木、レーンマーキング等の固定物体も含まれ得る。明確のため上述において“第2実在物”と称された予測対象である実在物は、基本環境表現により表現される“第1実在物”の一部であり得る。
【0031】
ホスト車両は、一つ又は複数のレーダシステム、一つ又は複数のカメラ等の、任意の種類のセンサ装置又はセンサ回路を備え得る。自車両(ego vehicle)は、車車間通信を介して他車両からのデータを受信したり、近距離通信システム又はモバイル通信システムを介して路側通信ステーションからのデータを受信するための、通信システムを備え得る。これらの方法の一つ又は複数に従って取得されるデータも、ここでは簡単のためセンサデータと称される。
【0032】
ホスト車両の「環境」又は「周辺」は、当該車両が備える上記一つ又は複数のセンサシステムの検知範囲によって定義され得る。例えば、環境は、レーダシステムが少なくとも所定の信頼度をもって物体を検出することのできる能力範囲まで広がっているものとすることができる。
【0033】
基本環境表現は、運転支援システムの処理システム内で、一つ又は複数の検出された実在物を表現するものであり、及び又は、二つ又はそれ以上の実在物の互いに対する関係についての表現を含むことができる。「基本」という用語は、ここでは単に、それが示す表現が、複合環境表現についての入力として用いられることを示すために用いられるものと解釈すべきである。したがって、一つ又は複数の基本環境表現から得られる何らかの「複合」環境表現は、その後に続く処理における基本環境表現として用いられ得る。
【0034】
検出された単一の実在物は、運転支援システムの中で表現され得るものであり、したがって、環境表現の単純な例である。例えば、物体は、それに関連付けられた位置及び速度の表現(indication)を持つ構造要素、ユニット、又は原子として表現され得るが、これらの構造要素、ユニット、又は原子は、更に、構造的特性、幾何学的広がり(geometrical extension)、その実在物の種類を表す所定の指標(indicator)等の更なる表現(indication)を持ち得る。より複雑な環境表現は、2つの物体と、それらの間の関係とを、暗に又は明示的に含み得る。例えば、検出された物体は、自車両の前方を移動する車両として表現され得る。他の例として、2つの物体は、同じレーンを走行する2つの車両として表現され得る。さらに他の例として、車両は、レーンに関連付けられたものとして表現され得る。
【0035】
複合環境表現は、基本環境表現の予め定義されたセットにより形成されるものと理解すべきである。いくつかの実施形態によると、必要とされる基本信頼度推定のセットは、決定すべき複合環境表現に寄与する基本環境表現に関連付けられた基本信頼度推定を、複数の利用可能な基本信頼度推定の中から選択することによって割り当てられる。
【0036】
逆も同様であり、本システムは、基本環境表現の必要なセットが利用可能であるか否かに基づいて、複合環境表現を形成できるか否か、または形成すべきか否かについての判断を行い得る。その判断が肯定的であるときは、基本環境表現の必要なセットが割り当てられ、複合環境表現が決定される。その次に、その複合環境表現に基づいて、予測が決定され得る。上記割り当てを行うステップは、単に、そのセットの全ての基本信頼度推定が、利用可能であること、例えばそれら自身に割り当てられた有意な値を有していることを、システム内において判断又は評価することにより構成される。
【0037】
基本環境表現(複数)は、それら自身に対し1対1の関係で割り当てられた基本信頼度推定を有し得る。しかしながら、1対多または多対1の関係を用いることもできる。ここで再び、「基本」という用語は、単に、それが示す信頼度推定が、複合信頼度推定を算出するための入力であることを示すことを意図するものである。換言すれば、複合信頼度推定は、後続の処理においては基本信頼度推定として作用し得る。
【0038】
検出信頼度は、単純な例として、基本環境表現内で表現される物体及び又は関係の検出に寄与するセンサ要素(複数)に関する一つ又は複数の信頼度を表し得る。例えば、環境表現は、自車両が備えるレーダシステムにより検出された移動物体を表し、これに関連付けられる信頼度推定は、そのレーダシステムの信頼度値、例えば、レーダシステムにより与えられる移動物体検出の信頼度を表す値、検出された物体の検出された位置や速度等についての正確さを示す一つ又は複数の精度値、等を表し得る。
【0039】
一つの実在物が複数のセンサシステムによって検出された場合、これに対応する信頼度推定は、これらセンサシステムのそれぞれについての一つ又は複数の信頼度値で構成されるものとすることもできるし、及び又は、種々の信頼度値を処理して組み合わされた(結合された)信頼度値とすることもできる。
【0040】
センサ信頼度は、信号強度や信号対雑音比の表示(indications)、誤差伝搬手法から導出される誤差表示(error indication)、等により構成され得る。他の例として、検出信頼度も妥当性チェックから得られ得る。
【0041】
信頼度推定は、直接的に用いられて環境表現及び又はその予測に割り当てられ得るもの、及び又は、基本信頼度推定として、すなわち複合信頼度推定の算出のための入力として、用いられ得るものと理解すべきである。したがって、簡単のため、「複合信頼度推定」をここで議論する際には、それらの複合信頼度推定には、検出信頼度から直接得られる一つ又は複数の信頼度推定(他の信頼度推定に基づく計算が行われることなく得られるもの)も含まれ得るものとする。同様に、基本信頼度推定は、必ずしも複合信頼度推定の算出のための入力として用いられなくてもよい。
【0042】
重みは、基本信頼度推定(複数)のそれぞれ、又は少なくとも一つの基本信頼度推定を含む基本信頼度推定(複数)のサブセットに関連付けられ得る。重みは、単純な値(value)、パラメータ、又は番号(number)として表現されるものとすることができ、これらは、予め定義されているものとしても良いし、そうでなくても良い。また、これらよりも複雑な表現で構成されていて、実行時にその値が算出されるものとしても良い。具体例として、重みは、基本/複合信頼度推定に対し1対1の関係で関連付けられ得る。他の実施形態によると、重みが基本/複合信頼度推定に対し1対多の関係で関連付けられるように、一つの同じ重み値が複数の信頼度推定に関連付けられ得る。
【0043】
更に、種々の実施形態によると、重みは、多対1の関係で基本/複合信頼度推定に関連付けられることもできる。重みは、基本信頼度推定に対し、当該基本信頼度推定から導出される複合信頼度推定を考慮して関連付けられ得ると理解すべきである。したがって、一般に、重みは、それに関連付けられた基本信頼度推定に特有の値を有することができるだけでなく、関連付けられた複合信頼度推定に特有の値を有することもできる。したがって、種々の実施形態によると、複数の複合信頼度推定の算出のための入力として用いられる信頼度推定(単数)が、当該信頼度推定に関連付けられた複数の重み(例えば、複合信頼度推定毎に一つの重み)を有することとなり得る。
【0044】
一つの信頼度推定に対する複数の重みは、重みベクトルで表現され得る。一のシステムで用いられる重みの全体は、少なくとも一つの基本信頼度推定と少なくとも一つの複合信頼度推定とに関連付けられた各重みに従う重みマトリクスで表現され得る。当業者であれば、そのような一般モデルの修正を行うことは可能である。
【0045】
重みの具体的な値は予め定義しておくことができる。当該定義には、ホスト車両の起動時若しくは運転システムやその予測サブシステムの起動時に又は複合信頼度推定の算出のため重みが必要になったときにオンデマンドで一部又はすべての重み値を生成するための、数式やアルゴリズムが与えられているような実施形態が含まれるものと理解すべきである。
【0046】
種々の実施形態によると、運転支援システムの予測サブシステムは、自車両の環境内で検出された各実在物について、少なくとも当該実在物が将来のアクティブ制御又はパッシブ制御に関係するであろうと推測されるときに、当該実在物についての予測を生成するよう動作し得る。例えば、予測は、関係のある参加者であると推測された移動(又は静止)物体について出力され得る。本予測は、センサ入力に基づいて生成され得る。すなわち、本予測はセンサドリブン(sensor-driven)であり得る。
【0047】
予測に基づいてアクティブ制御又はパッシブ制御を起動することとなる前に、その実在についての当該予測又は予測の前提についての信頼性を、例えばセンサ信頼度に基づいて評価することができる。ここで、当該信頼性は、システム内において環境表現に関連付けられた信頼度推定により表現される。
【0048】
重みは、システム内において信頼度推定に関連付けられ、これにより現在検出されている交通参加者についての予測に対する信頼度推定の影響を表現し得る。適切に重み付けされた信頼度推定は、予測についての信頼性の評価を向上し得る一つの手法であり、従って、(例えばホスト車両の運転者の)支援のためのアクティブ制御又はパッシブ制御を向上し得る手法である。重みは、誤った予測がアクティブ制御又はパッシブ制御の基礎として用いられる確率を最小化又は減少させるために割り当てられ得る。
【0049】
システム内において重み(複数)を使用することができるので、例えば特定の信頼度推定(これらは特定の環境表現に割り当てられている)にそれぞれ割り当てられた重みに対して具体的な数値を割り当てる際には、種々の具体的なストラテジに従うものとすることができる。重みは、予測に対する検出エラーの影響を表し得る。例えば、重みは、予測又は予測結果(予測の帰結)に対するセンサエラー/誤検出の影響を表し得る。
【0050】
いくつかの実施形態によると、重みは、検出された実在物(予測対象である実在物以外のものであり得る)についての、一つ又は複数のセンサに基づく誤検出が、予測結果に与える影響を反映し得る。例えば、重みは、検出された物体の位置、速度についての誤検出が他の物体についての予測に与える影響を表したり、又は検出された物体についての誤ったレーン割り付けが予測に与える影響などを表し得る。
【0051】
種々の実施形態によると、複数の重みが、複数の基本信頼度推定に対し1対1の関係で関連付けられ得る。複数の重みには、関連付けられた基本環境表現の、予測に対する相対的な重要度を反映する相対値が割り当てられ得る。例えば、複数の重みの重みペアのそれぞれについて、その重みペアの一方に関連付けられた基本環境表現の予測に対する影響が、当該重みペアの他方に関連付けられた基本環境表現の影響と比較して高いか、等しいか、低いかに応じて、当該重みペアの一方に、当該ペアの他方と比較して高いか、等しいか、又は低い値を割り当てるものとすることができる。相対重みには、例えば0〜1の間の数値を割り当てるものとすることができる。
【0052】
他の実施形態によると、例えば対応する基本環境表現(複数)の影響が同じであるという理由から、一つ又は複数の重みを、一対多の関係で基本信頼度推定(複数)に割り当てるものとすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態によると、重みは、アクティブ制御又はパッシブ制御の基礎として臨界的(critical)な予測(クリティカル予測)が採用される確率についての検出エラーの影響を反映するように割り当てられるものとすることができる。クリティカル予測は、どのような運転支援が採用されているかに応じ、具体的な状況に応じて定義され得る。例えば、クリティカル予測は、誤った肯定的予測結果又は誤った否定的予測結果の少なくとも一つを構成し得る。
【0054】
用語「重み付き複合信頼度推定」及び「複合信頼度推定」は、ここでは同意語として用いられることがある。複合信頼度推定の算出には、重み付き基本信頼度推定を形成することを含み得る。すなわち、基本信頼度推定とそれに関連付けられた重みとの組み合わせ(結合、combination)が、例えばそれらの積の算出結果として形成される。ただし、これは一例であって、基本信頼度推定に重みを割り当てるための他の又はより複雑なアプローチ(例えば数式(指数表現など)と当該数式内の一つ又は複数の位置(べき指数など)に含まれるべき重みと、により表現される信頼度推定)を、排除することを意図するものではない。
【0055】
複合信頼度推定の算出は、基本信頼度推定及び又は重み付き基本信頼度推定のセットの組み合わせ(結合、combination)を形成することにより構成され得る。当該組み合わせは、信頼度推定の和、それらの積、それらの最小値又は最大値の検出、及び又はより複雑な計算、のいずれかを含み得る。和又は積の算出は、重み付き和又は重み付き積の算出を含み得る。ここで、重みとは、基本信頼度推定に関連付けられる重みとは区別されるべきものである。
【0056】
本手法の結果として、重み付き複合信頼度推定が複合環境表現に関連付けられ得る。運転支援システムの予測サブシステム又はその他のコンポーネントは、複合環境表現を予測の基礎として用いるか否か、例えば、シーン解釈/予測においてその環境表現を活性化(activate)させるか抑制(suppress)させるかを決定することができる。当該決定は、重み付き複合信頼度推定の数値を、一つ又は複数の他の数値と比較することを含み得る。例えば、その信頼度推定は、予め規定された閾値を超えているか当該閾値未満であるかの調査が行われ得る。これに加えて又はこれに代えて、信頼度推定は、他の環境表現に関連付けられた一つ又は複数の他の信頼度推定と比較されるものとすることができる。
【0057】
予測サブシステムは、上述において紹介した直接指標及び間接指標の概念(特許文献2に詳述されている)に基づくものであり得る。例えば、(基本/複合)環境表現の一つ又は複数は、一つ又は複数の直接指標及び又は間接指標により構成される。基本/複合信頼度推定は、同様に、「信頼度指標」として表現され得る。例えば、信頼度指標は、関連付けられた環境表現の信頼度を示すことが意図された変数により構成され得る。当該変数は、これに関連付けられた更なるパラメータ又は変数(例えば、関連付けられた環境表現(例えば直接指標又は間接指標)へのポインタ)を持ち得る。
【0058】
信頼度指標の表現構造は、直接/間接指標の表現構造から再利用されるものとすることができ、従って、これらの指標の表現構造と同様であり得る。例えば、直接/間接指標は、それぞれ、変数のペアとして表現されものとすることができ、第1の変数が観測可能な値を示し、第2の変数がこれに関連付けられた信頼度値を示すものとすることができる。一方、信頼度指標は、少なくとも、信頼度推定を示す第1変数と、一つ又は複数の関連付けられた環境表現の場所を示すインデックス番号を表した第2変数、ポインタ、又は実数若しくは整数の変数と、のペアとして表現され得る。
【0059】
いくつかの実施形態によると、環境表現に関連する信頼度推定の計算は、その環境表現に一つ又は複数の妥当性規則(plausibility rules)を適用することと、当該信頼度推定を当該環境表現に基づく予測のための入力として出力することとに基づき得る。ここで、上記妥当性規則のそれぞれは、少なくとも一つ実在物と、少なくとも一つの他の実在物と、当該少なくとも一つの実在物についての前回の検出と、の間の可能性のある(妥当な、尤もらしい)関係(plausible relation)により構成される。
【0060】
信頼度推定は、専らセンサ信頼度に基づいて決定されるものとする必要はなく、これに代えて又はこれに加えて、妥当性チェックの結果を表すものとすることができる。例えば、信頼度推定は、少なくとも一つの妥当性規則に基づいて算出されるものとしてもよい。
【0061】
妥当性規則は、環境表現に適用されて真(true)又は偽(false)のいずれかを表す2進値を返すif条件文として実装され得る。妥当性規則は、対象実在物及び同じ時点で検出された他の実在物の特性に関するものであり得るし、又は2つの異なる時点で検出された一つの同じ対象実在物の、一つ又は複数の特性に関するものであり得る。一つ又は複数の妥当性規則を適用した後に、当該適用された規則の結果が真であるか偽であるかに依存して、対象実在物の検出が妥当なものであるレベルを示す信頼度推定を得る、という目的に適した関係(relations)がテストされる。
【0062】
妥当性規則は、対象実在物が他の検出された実在物に対し特定の態様において関係を持つか否か、例えばその対象実在物が2つの検出されたレーンマーキングの間にあるか否か、というようなことを問うだけのものである必要はないと理解すべきである。そうではなく、規則は、疑似的な実在物又は未検出の実在物との関連性を問うものであり得る。例えば、規則は、移動物体又は静止物体などの他の物体が対象車両の周囲に何かしら存在するか否かを問うものであり得る。同様に、規則は、対象実在物が過去に検出されていたか否かを問うものであり得る。
【0063】
ここで用いられているように、二つの実在物(又は2つの異なる時点における一つの同じ実在物)は、それらが、ホスト車両のセンサ装置によって検出された態様又は検出され得る態様で、シーン内に単に存在し又は存在し得た場合には、既に「関係」を有しているものと言える。例えば、「他の車両が存在するか」という規則は、「シーン内に複数の車両が存在する」という種類の単純な関係を問うものである。他の規則は、距離関係(例えば2つの実在物間でのギャップの存在)や、速度関係(例えば、一つの実在物が他の実在物に近付いて行っているか否か)等を問うものであり得る。
【0064】
したがって、結果として得られる信頼度推定は、センサ信頼度に関連するものではなく、又は専ら関連するものではなく、一の対象実在物について現在検出されている少なくとも一つの特性が、検出された他の実在物の少なくとも一つの特性及び又はその対象実在物について過去に検出された少なくとも一つの特性に対し、論理的にどの程度矛盾のないもの(consistent)であるかという妥当性判定の結果を反映するものとなり得る。
【0065】
妥当性規則を適用して、信頼度推定に予め定められた値を与えたり、及び又は信頼度推定を予め定められた値だけ増減させることができる。例えば、妥当性規則を適用することにより、環境表現が妥当な検出であることを示す予め定められた値又は妥当でない検出であることを示す予め定められた値のいずれかがセットされるという予備的な信頼度推定を定義することとなり得る。そして、更なる妥当性規則を適用することにより、当該予備的な信頼度推定を予め定められた値だけ増減させることができる。
【0066】
信頼度推定の算出は、複数の妥当性規則の適用結果の結合(組み合わせ、combination)の算出により構成され得る。ここで、上記結合は、複数の予備的信頼度推定の加算、重み付き加算、積、重み付き積、及び最小値又は最大値の選択、の少なくとも一つにより構成される。
【0067】
上述したニーズは、さらに、例えば車両が備える一つ又は複数の電子処理モジュール(electronic processing modules)などのコンピューティングデバイス上で実行されたときに、上述において又は本出願書類のいずれかにおいて概説された方法又は方法の態様のいずれか一つに従う方法を実行するためのプログラムコード部分を備えた、コンピュータプログラム製品により満たされる。前記コンピュータプログラム製品は、コンピューティングデバイスの内部に設けられた又はこれに関連付けられた永久メモリ若しくは書き換え可能なメモリ、又は着脱可能なCD−ROM、DVD、又はUSBスティックなどの、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存されているものとすることができる。これに加えて又はこれに代えて、前記コンピュータプログラム製品は、例えばインターネットなどのデータネットワークや、電話回線や無線リンクなどの通信回線を介して、コンピューティングデバイスへのダウンロードが行えるように提供されるものとすることができる。
【0068】
上述のニーズは、さらに、車両用の運転支援システムにより満たされる。本運転支援システムは、予測サブシステムを備え、基本環境表現のセットを受け取るよう適合されたコンポーネントであって、各基本環境表現は前記車両の環境において一つ又は複数のセンサにより検出された少なくとも一つの第1実在物を表現するものであるコンポーネントと、基本信頼度推定のセットを割り当てるよう適合されたコンポーネントであって、当該セットの各基本信頼度推定は基本環境表現のセットの一つに関連付けられ、各基本信頼度推定は前記関連付けられた基本環境表現に関連する一つ又は複数の検出信頼度の結合を表すものであるコンポーネントと、少なくとも一つの重みを前記基本信頼度推定の一つに関連付けるよう適合されたコンポーネントであって、前記重みは、前記基本環境表現のセットに基づく複合環境表現に関連するものであり、且つ前記重みは、前記基本信頼度推定に関連付けられた前記基本環境表現における検出エラーの、検出された第2実在物についての予測に対する効果を示すものであるコンポーネントと、前記基本信頼度推定のセットと前記関連付けられた少なくとも一つの重みとの組み合わせに基づいて、前記複合環境表現についての重み付き複合信頼度推定を算出するよう適合されたコンポーネントと、前記重み付き複合信頼度推定を、前記複合環境表現に基づく前記予測についての評価のための入力として出力するよう適合されたコンポーネントと、を有する。
【0069】
一の実施形態によると、前記重みの少なくとも一部は、予め定義されて、対応する記憶装置に記憶される。これに加えて又はこれに代えて、基本信頼度推定と、対応する重みと、の種々の組み合わせが、例えば車両の製造時や、運転支援システムの実装又は更新時等の際に、予め算出されて保存されるものとすることができる。システム用途の詳細に依存して、重み付き複合信頼度推定の中間結果又は最終結果が、予め算出されて保存されるものとすることができる。これは、特に、一定(constant)のセンサ信頼度のみに部分的又は全体的に基づいた信頼度推定に関して、適用することができる。
【0070】
種々の実施形態によると、上記において概説した運転支援システムは、例えば、ホスト車両の周囲を移動する車両の割り込み操縦又は抜け出し操縦(utting-in or cutting-out maneuvers)等のレーン変更操縦についての予測を含むACC機能等のクルーズコントロール機能を実行するよう適合されたものであり得る。
【0071】
上述したシステムの予測サブシステムは、例えば特許文献2の開示に従い、コンテキストベース予測と物理的予測とを実行するよう適合されているものとすることができる。
【0072】
本システム及び又はここに示したいずれかの機能は、個別のハードウェア回路を用いて、汎用コンピュータ又はプログラムされたマイクロプロセッサーと共に機能するソフトウェア及び又はファームウェアを用いて、特定用途向け集積回路(ASIC)を用いて、及び又は一つ又は複数のデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を用いて、実施され得る。
【0073】
上述のニーズは、更に、上記において概説され又は本願出願書類のいずれかに記載されたシステムを備える車両によって満たされる。
【0074】
本発明は、回避できない検出の不正確さ及び検出誤りがあってもその信頼性が向上される予測機能を備えた運転支援システムの提供を可能とする。検出誤りの重大性に応じた重み付けを行うことにより信頼度推定を向上させる本アプローチは、例えば、環境表現が予測の基礎として及び当該予測の結果(帰結)として行われる車両のアクティブ制御又はパッシブ制御の基礎として、選択されるに足る信頼性を有するか否かといったことについての、より信頼度の高い判断を行うための基礎を提供する。
【0075】
したがって、本発明のアプローチは、予測的運転支援システムの適用範囲を、より少ないセンサを備えた、及び又は中程度の又は低い品質のセンサ装置を備えた車両にまで、従ってコスト効果の高い解決策にまで、拡大するものである。
【0076】
ここに示すアプローチは、特許文献2に記載されているような、測定可能な変数に関連付けられた信頼度値を含む指標(indicator)の一般的なデータ構造の使用を可能とするほか、そのようなデータ構造に依存することなく、予測機能を有する任意の運転支援システムにおいても実施することができる。
【0077】
特に基本信頼度推定に重み付けを行うことに関して言えば、ここに提案するアプローチに従って適切な重みを割り当てることにより、センサの不正確さやセンサエラーがある場合であっても、信頼性の高い予測に基づいてアクティブ制御又はパッシブ制御を行うことが可能となる。その一つの理由は、とりわけ、適切に構成されたシステムでは、基本信頼度推定に関連付けられた適切な重みを用いることにより、数は少ないが重要である基本環境表現が低い信頼度推定と高い重みを持つ場合には、たとえ多数の環境表現がより高い信頼度推定を持つが低い重み(これらの環境表現が信頼性のある予測を行うためさほど重要ではないことを表している)を有しているという場合であっても、複合環境表現は低い複合信頼度を得ることとなり得る点にある。
【0078】
他の、補足的な観点から言えば、本システムは、目標とする複合環境表現に関係のある基本環境表現と関係のない基本環境表現とを区別して、すなわち関係のある環境表現だけを考慮して、その複合環境表現を算出するだけではない。さらに、本システムは、実際に考慮される基本信頼度推定を即ちそれらの重みに従って順位付け、これにより、対応する複合環境表現に基づく予測の信頼性又はシーン認識の結果の信頼性について当該システムがより良い判断を行うことを可能とする、洗練された複合信頼度推定を実現する。
【0079】
本発明は、付加的なセンサ装置を必要としないため、低コストで実施することができる。本機能は、例えば、ソフトウェアモジュールの形態で実現することができる。したがって、運転支援システムの種々の既存の実施形態では、ソフトウェアのアップデートを行うだけで足りる。