(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
(1)全体構成
図1は、本発明の一実施の形態に係るプラント建設工程変更影響評価装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0012】
図1において、プラント建設工程変更影響評価装置100は、建設対象となる構造物の建設に係る複数の作業工程の情報を記憶する建設工程情報データベース1と、構造物の3次元形状情報(3Dモデル)を記憶する3Dモデルデータベース2と、作業工程の情報と3次元形状情報との対応関係である工程−3Dモデルリンク情報を記憶する工程−3Dモデルリンク情報データベース3と、作業物量と作業工数との関係である建設作業工数情報を記憶する建設作業工数情報データベース4と、作業工程の作業日程等の変更の他の作業工程への影響を計算する制御部5と、マウスやキーボードなどにより構成され、作業工程に関する種々の情報の入力を行う入力装置6と、作業工程などの設定画面や計算結果を表示する表示装置等の出力装置7とを備えている。
【0013】
(1−1)工程データベース1
図2は、工程データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0014】
図2において、工程データベース1(以降、工程DB1と称する)には、建設対象となる構造物の建設に係る全体工程計画に含まれる作業工程を単位として複数のレコードが登録されている。各レコードには、プラントID(IDentification:識別子)10、建屋ID11、作業工程ID12、構造物種類13、作業工程名称14、作業エリア15、作業開始日16、作業完了日17、作業物量18、および作業人数19などが設定され格納されている。
【0015】
プラントID10は、各レコードの作業工程の対象となるプラントの名称を表す識別子であり、「P1」などの文字列が格納される。
【0016】
建屋ID11は、各レコードの作業工程の対象となる建屋の名称を表す識別子であり、「B1」などの文字列が格納される。
【0017】
作業工程ID12は、各レコードの作業工程を一意に識別するためにそれぞれ付与される識別子であり、例えば「a1−P−1」のような文字列が格納される。
【0018】
構造物種類13は、各レコードの作業工程の対象となる構造物の種類を示すものであり、例えば、「配管」、「電気ケーブルトレイ」、「空調ダクト」などの構造物の名称を表す文字列が格納される。
【0019】
作業工程名称14は、各レコードの作業工程が工程表などに記載される場合の作業の名称を示すものであり、例えば、「搬入」、「据付」、「溶接」、「コンクリート打設」などの文字列が格納される。
【0020】
作業エリア15は、各レコードの作業工程が実施される作業領域(作業エリア)の名称を示すものであり、例えば「エリア1」や「壁工区A」、又は「a1」のような文字列が格納される。
【0021】
作業開始日16は、各レコードの作業工程の作業を開始する日付を示すものであり、作業完了日17は、作業工程の作業を完了する日付を示すものである。作業開始日16及び作業完了日17には、例えば、「2015/04/01」(年/月/日)などの日付データが格納される。
【0022】
作業物量18は、各レコードの作業工程の対象となる構造物の物量を示すものであり、例えば、作業内容が配管据付作業であれば「100」(点)などの配管部品の数を表す数値が格納され、コンクリート打設であれば「50」(m
3)などのコンクリートの容積を表す数値が格納される。なお、作業物量15に割り当てられる物量の単位は、別途紙面又はプログラムなどに定義されている場合には、データベース上では数値のみを扱うことが可能である。
【0023】
作業人数19は、各レコードの作業工程の作業に従事する作業者の人数を表すものであり、例えば「4」(人)などの人数を表す数値が格納される。
【0024】
例えば、
図2の最上段に示すレコードは、プラント「P1」の建屋「B1」で実施される作業工程「a1−P−1」についてのレコードであり、作業者「4」(人)で配管「100」(点)を「2015/03/01」から「2015/03/30」の期間に「エリア1」に搬入する作業工程に関するものであることがわかる。さらに詳述すると、
図2のレコードからは、プラント「P1」における作業エリアの「エリア1」において実施される作業工程として、4つの作業工程「a1−P−1」、「a1−P−2」、「a1−E−1」、及び「a1−D−1」があり、これら4つの作業工程をこの順番で実施するようにそれぞれの作業開始日16と作業完了日17が設定されていることがわかる。さらに、作業内容が「配管」の「据付」、「電気ケーブルトレイ」の「据付」、「空調ダクト」の「据付」である作業工程(a1−P−2、a1−E−1、a1−D−1)の作業期間がそれぞれ重複するよう設定されていることがわかる。また、作業工程の構造物種類13が「配管」である作業工程「a1−P−1」及び「a1−P−2」の作業物量18は配管部品「100」(点)に設定されており、作業人数19は作業工程「a1−P−1」が4人、作業工程「a1−P−2」が3人に設定されていることがわかる。また、作業内容が「電気ケーブルトレイ」の「据付」である作業工程「a1−E−1」の作業物量18は「80」(点)、作業人数19が「3」(人)に設定されており、作業内容が「空調ダクト」の「据付」である作業工程「a1−D−1」の作業物量18は「20」(点)、作業人数が「2」(人)に設定されていることがわかる。
【0025】
(1−2)3Dモデルデータベース(DB)2
図3は、3Dモデルデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0026】
図3において、3Dモデルデータベース2(以降、3DモデルDB2と称する)には、建設対象となる構造物を構成する個々の部品を単位として、各部品の3Dオブジェクト(3次元形状情報)に関する複数のレコードが登録されている。各レコードには、各部品の3Dオブジェクトに関する情報として、プラントID10、建屋ID11、部品ID22、形状情報23、座標情報24、構造物種類13、および作業エリア15などが設定され格納されている。
【0027】
プラントID10は、工程DB1と同様に、各レコードの部品の作業対象となるプラントの名称を表す識別子であり、「P1」などの文字列が割り当てられる。
【0028】
建屋ID11は、工程DB1と同様に、各レコードの部品の作業対象となる建屋の名称を表す識別子であり、「B1」などの文字列が格納される。
【0029】
部品ID22は、各レコードの部品を一意に識別するためにそれぞれ付与される識別子であり、各部品を一意に識別することができる長さの文字列が格納される。なお、
図3においては、簡略化のために「S1」、「S2」のような文字列が格納される場合を例示している。
【0030】
形状情報23は、各レコードの部品の形状の情報を示すものであり、例えば、「直管」、「エルボ」、「直方体」など各部品の形状を表す文字列が割り当てられる。
【0031】
座標情報24は、各レコードの部品の作業領域(作業エリア)における空間的な位置を示すものであり、例えば、部品の形状情報23が「直管」又は「エルボ」である場合は、2つの端面(例えば、上面と底面)を形成する円の中心座標とその半径を表すデータを格納する。また、例えば、部品の形状情報23が「直方体」である場合は、その直方体の各辺を構成する12本の線分の情報(2点の端部の座標)が格納される。
【0032】
構造物種類13は、工程DB1と同様に、各レコードの部品が構成する構造物の種類を示すものであり、例えば、「配管」、「電気ケーブルトレイ」、「空調ダクト」などの構造物の名称を表す文字列が格納される。
【0033】
作業エリア15は、各レコードの部品が据え付けられる作業領域(作業エリア)の名称を示すものであり、工程DB1と同様に、例えば「エリア1」や「壁工区A」、又は「a1」のような文字列が格納される。
【0034】
(1−3)工程−3Dモデルリンクデータベース(DB)3
図4は、工程−3Dモデルリンクデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0035】
図4において、工程−3Dモデルリンクデータベース3(以降、工程−3DモデルリンクDB3と称する)には、建設対象となる構造物の建設に係る全体工程計画に含まれる各作業工程と、その作業工程の対象となる構造物を構成する部品の3Dオブジェクトとの対を単位として複数のレコードが登録されている。各レコードには、プラントID10、建屋ID11、作業工程ID12、および部品ID22などが設定され格納されている。
【0036】
プラントID10は、工程DB1や3DモデルDB2と同様に、各レコードの作業工程の作業対象となるプラントの名称を表す識別子であり、「P1」などの文字列が割り当てられる。
【0037】
建屋ID11は、工程DB1や3DモデルDB2と同様に、各レコードの作業工程の作業対象となる建屋の名称を表す識別子であり、「B1」などの文字列が格納される。
【0038】
作業工程ID12は、工程DB1や3DモデルDB2と同様に、各レコードの作業工程を一意に識別するためにそれぞれ付与される識別子であり、例えば「a1−P−1」のような文字列が格納される。
【0039】
部品ID22は、3DモデルDB2と同様に、各レコードの部品を一意に識別するためにそれぞれ付与される識別子であり、各部品を一意に識別することができる長さの文字列が格納される。なお、
図4においても、簡略化のために「S1」、「S2」のような文字列が格納される場合を例示している。
【0040】
図4に例示したレコードからは、プラント「P1」の建屋「B1」において実施される作業工程「a1−P−2」で用いられる部品は「S1」〜「S3」であり、作業工程「a1−D−1」で用いられる部品は「S4」及び「S5」であり、作業工程「a1−E−1」で用いられる部品は「S6」であることがわかる。
【0041】
(1−4)作業工数データベース(DB)4
図5は、作業工数データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【0042】
図5において、作業工程データベース4(以降、作業工程DB4と称する)には、作業工程における作業の種類に対応する作業工数原単位を単位として複数のレコードが登録されている。各レコードには、プラントID10、建屋ID11、構造物種類13、作業工程名称14、および作業工数原単位44などが設定され格納されている。作業の種類は、プラントID10、建屋ID11、構造物種類13および作業工程名称14の組合せによって特定される。
【0043】
プラントID10は、工程DB1や3DモデルDB2、工程−3DモデルリンクDB3などと同様に、各レコードの作業工程の作業対象となるプラントの名称を表す識別子であり、「P1」などの文字列が割り当てられる。
【0044】
建屋ID11は、工程DB1や3DモデルDB2、工程−3DモデルリンクDB3などと同様に、各レコードの作業工程の作業対象となる建屋の名称を表す識別子であり、「B1」などの文字列が格納される。
【0045】
構造物種類13は、工程DB1や工程−3DモデルリンクDB3などと同様に、各レコードの部品が構成する構造物の種類を示すものであり、例えば、「配管」、「電気ケーブルトレイ」、「空調ダクト」などの構造物の名称を表す文字列が格納される。
【0046】
作業工程名称14は、工程DB1と同様に、各レコードの作業工程が工程表などに記載される場合の作業の名称を示すものであり、例えば、「搬入」、「据付」、「溶接」、「コンクリート打設」などの文字列が格納される。
【0047】
作業工数原単位44は、プラントID10、建屋ID11、構造物種類13および作業工程名称14の組合せによって特定される作業の種類において、単位物量あたりの作業工数を表すものであり、その作業工数を表す数値が格納される。例えば、「配管」の「搬入」に係る作業において、配管部品1点当り1人/日の場合、作業工数原単位44は「1」となる。なお、
図5においては、説明のために作業工数原単位44を「M1」、「M2」等の記号で示す。
【0048】
図5のレコードによって、作業工数DB4の各作業工数原単位44は、プラントID10、建屋ID11、構造物種類13、及び作業工程名称14の4つによって、工程DB1の作業工程(各レコード)と対応づけることができる。そして、作業工数DB4の各レコードの作業工数原単位44と工程DB1の対応するレコードの作業物量18との積をとることで、作業工程毎の作業工数を計算することができる。
【0049】
例えば、
図5の上から二段目に示すレコードは、プラント「P1」の建屋「B1」で実施される「配管」の「据付」についての作業工数原単位はM2であることがわかる。また、
図2の工程DB1に例示したレコードにおいて、プラントID10が「P1」で構造物種類13が「配管」であり、作業工程名称14が「据付」である作業工程としては「a1−P−2」があり、この作業工程の作業物量は100であることから、作業工程「a1−P−2」の作業工数は100×M2として計算することができる。
【0050】
(1−5)制御部5
図1において、制御部5は、建設工程変更影響評価装置100全体の動作を制御するとともに、作業工程全体を管理する作業工程管理処理を実施するものであり、工程DB1や3DモデルDB2、工程−3DモデルリンクDB3、作業工数データベース(DB)4などからの情報に基づいて各作業工程間に生じる影響を計算する物理的距離影響計算部51、作業空間干渉影響計算部52、及び作業リソース影響計算部53を備えている。
【0051】
図6は、制御部における建設工程変更影響評価処理の全体を示すフローチャートである。
【0052】
図6において、制御部5は、まず、作業工程(全体工程)の工程表の表示範囲の設定を読み込む(ステップS100)。工程表の表示範囲の設定は、入力装置6や出力装置7により構成されるGUI(Graphical User Interface)を用いてオペレータにより予め設定される。次に、読み込んだ表示範囲の工程、3Dモデル、工程−3Dモデルリンクの情報を工程DB1、3DモデルDB2及び工程−3DモデルリンクDB3から読み込む(ステップS110)。続いて、読み込んだ作業工程において、オペレータが入力装置6等により入力した開始日および完了日の変更に関する情報を読み込む(ステップS120)。
【0053】
ここで、工程のデータの順序制約条件をチェックし(ステップS130)、順序制約に違反する作業工程があるかどうかを判定する(ステップS140)。工程のデータの順序制約条件は、各作業工程間における先行・後続の順序の制約であり、工程のデータ毎に予め設定されて付されている。
【0054】
ステップS140での判定結果がYESの場合には、作業工程日程修正処理を実施し(ステップS150)、ステップS130の処理に戻る。作業工程日程修正処理は、例えば、制約を解消するような最小の日付変更量で後続の作業工程を後ろ倒しにするか、または、先行する作業工程を前倒しに修正する処理であり、修正結果を図示しない記憶装置に格納する。
【0055】
また、ステップS140での判定結果がNOの場合には、作業工程の変更を行ったかどうかを判定し(ステップS160)、判定結果がNOの場合には処理を終了する。また、ステップS160での判定結果がYESの場合には、各情報に基づいて工程変更影響評価処理を実施し(ステップS170)、処理を終了する。工程変更影響評価処理は、作業工程の変更が他の作業工程に及ぼす影響を評価するものであり、物理的距離影響計算部51、作業空間干渉影響計算部52、及び作業リソース影響計算部53の少なくとも1つにより、工程DB1や3DモデルDB2、工程−3DモデルリンクDB3、作業工数データベース(DB)4などからの情報に基づいて各作業工程間に生じる影響が計算される。
【0056】
(1−5.1)物理的距離影響計算部51
物理的距離影響計算部51は、工程変更影響評価処理の1つとして物理的距離影響計算処理を実施するものであり、作業工程間の物理的距離を計算し、算出された物理的距離に基づいて作業工程の変更の他の作業工程への影響の有無を判定するものである。ここで、作業工程間の物理的距離とは、各作業工程に関する構造物の3Dオブジェクト間の距離であり、各作業工程に関する構造物の複数の3Dオブジェクト(躯体・機器・配管・ケーブルトレイ・ダクトなど)の距離から計算される。例えば、2つの作業工程Aおよび作業工程Bの物理的距離を計算する場合は、それぞれの作業工程に関する構造物の3Dオブジェクトを1つずつ抽出し、3Dオブジェクト間の距離を計算する。作業工程A,B間の全ての3Dオブジェクトの組合せに対して距離を計算し、その最小値を2つの作業工程A,B間の物理的距離と定義する。
【0057】
また、配管やケーブルトレイ、ダクトの据付作業などのように、ある機器や壁など特定の構造物を基点として順番に据え付けるような作業工程の場合には、2つの作業工程間に配管などのルート接続関係が存在するかどうか、また、ルート接続関係が存在する場合には、そのルート上の距離または据付物量が、作業工程への日程変更の影響を特定する上で重要となる。そのため、物理的距離影響計算部51は、ある作業工程AおよびBのそれぞれに紐づく3Dオブジェクトを全て取得し、オブジェクト間の距離に基づいて3Dオブジェクトの接続関係を判定する(すなわち、2つのオブジェクト間の距離がゼロであれば、当該オブジェクト同士は接続していると判定する)。そして、この処理を全ての作業工程に対して網羅的に実施し、作業工程間の物理的接続関係の有無を判定する。
【0058】
例えば、2つの作業工程A,Bの距離を計算する際には次のような方法が考えられる。すなわち、2つの作業工程を接続する3DオブジェクトをそれぞれA1,B1とし、また、それぞれの作業工程に紐づく3Dオブジェクトのうち、接続先の3Dオブジェクトが1つしか存在しないものをルートの端点とする。このとき、作業工程A内では、3DオブジェクトA1から複数存在する端点までのルート長またはルート上に存在する据付物量の平均値を作業工程A内の距離、同様に作業工程B内の距離を計算する。そして、作業工程間の距離については、作業工程Aが先行着手される場合には、作業工程A,B間の距離として作業工程A内の距離を利用、一方、作業工程Bが先行着手される場合には作業工程A,Bの距離として作業工程B内の距離を利用する。
【0059】
図7は、物理的距離影響計算部における工程変更影響評価処理としての物理的距離影響計算処理を示すフローチャートである。
図7では、先行する作業工程の開始日および完了日に遅延が発生し、後続の作業工程の作業日程と重なりが生じてしまった場合を考える。
【0060】
図7において、物理的距離影響計算部51は、まず、変更された作業工程のうち未処理の1つの作業工程を選択する(ステップS200)。次に、ステップS200で選択した作業工程と作業期間(作業日程)が重複する他の作業工程を全て抽出し(ステップS210)、各作業工程に紐付けされた3Dオブジェクトの配置データを工程−3DモデルリンクDB3から取得する(ステップS220)。続いて、作業工程間の物理的距離を計算して算出し(ステップS230)、その物理距離に基づいて、順序制約に違反する作業工程があるかどうかを判定する(ステップS240)。順序制約に違反する作業工程があるかどうかの判定は、以下の考え方に基づいて実施する。すなわち、作業工程A,Bに接続関係が存在する場合、作業工程Bが着手可能となる条件は、作業工程A,B間の距離分の作業が完了するか、または、作業工程Bが先行する他の作業工程Cに接続しているかのどちらかである。従って、まず作業工程Bの接続関係を計算し、作業工程Bに接続しかつ先行する作業工程Cが存在するかを判定する。存在しない場合は、作業工程A内で作業工程A,B間の距離に相当する物量と、作業工数DB4に格納されている単位物量当たりの作業工数データとの積を取ることで、作業工程Aの着手日から作業工程Bの着手日までに必要な作業日数を計算する。当該必要作業日数が作業工程A,Bの重なり日数を超過する場合には、作業工程Bの開始日を超過しないように後ろ倒しにする。一方、作業工程Cが存在する場合は、作業工程Cに遅延が発生しない限り、作業工程Bの日程を修正する必要は無い。
【0061】
したがって、ステップS240での判定結果がYESの場合には、作業工程日程修正処理を実施し(ステップS250)、続いて、未処理の変更した作業工程は有るかどうかを判定する(ステップS260)。また、ステップS240での判定結果がNOの場合には、ステップS260に進む。ステップS260での判定結果がYESの場合には、ステップS200に進み、判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
【0062】
(1−5.2)作業空間干渉影響計算部52
作業空間干渉影響計算部52は、工程変更影響評価処理の1つとして作業空間干渉影響計算処理を実施するものであり、2つの作業工程の作業空間に干渉が存在するかどうかを計算し、算出された干渉量に基づいて作業工程の変更の他の作業工程への影響の有無を判定するものである。
【0063】
図8及び
図9は、作業工程間の作業空間の干渉について説明する図であり、
図8は作業場所の重複を説明する図、
図9は作業期間の重複を説明する図である。
【0064】
図8に示すように、例えば、配管82a〜82cの上空にケーブルトレイ81a〜81cが据え付けられる場合、配管82a〜82cとケーブルトレイケーブルトレイ81a〜81cの作業空間85が重複してしまうため、同時に作業することができない。従って、
図9に示すように、例えば、配管据付に関する作業工程91に遅延が生じて作業工程91aとなった場合、ケーブルトレイの据付に関する作業工程92に作業工程91の遅延の影響(すなわち、作業工程91aの影響)が生じて、作業工程92にも遅延が生じることになる。
【0065】
図10は、作業空間干渉影響計算部における工程変更影響評価処理としての作業空間干渉影響計算処理を示すフローチャートである。
【0066】
図10において、作業空間干渉影響計算部52は、まず、開始日または完了日が変更された作業工程の1つ(作業工程Aとする)を選択する(ステップS300)。次に、選択された作業工程の作業日程と重なりを持つ他の作業工程を全て取得する(ステップS310)。なお、ステップS310では、各作業工程に作業日程の重複日数も同時に算出する。続いて、抽出した他の作業工程から未処理の1つ(作業工程Bとする)を選択する(ステップS320)。
【0067】
続いて、作業工程A,Bに紐付けされた3Dオブジェクトデータを取得し(ステップS330)、各3Dオブジェクトデータに基づいて3Dオブジェクトの周囲に作業空間オブジェクトを作成する(ステップS340)。作業空間オブジェクトの作成は、例えば、直方体や円柱、球体などの形状の空間オブジェクト、およびそれらの組合せによって、3Dオブジェクトに係る機器や配管の据付作業に関する作業空間を生成する。
【0068】
次に、作業工程Aの作業空間オブジェクトと作業空間Bの作業空間オブジェクトの干渉チェックを全ての組合せに対して実施し(ステップS350)、作業工程A,Bのうち先行する作業工程について、干渉が発生するオブジェクトの総数、ルート長の総和、体積の総和、面積の総和の少なくとも一つを計算する(ステップS360)。続いて、ステップS360での計算結果と、作業工数DB4に格納されている単位物量当たりの作業工数の値とを用いて、干渉するオブジェクトが示す構造物の据付作業に必要な作業日数(干渉作業日数とする)を計算する(ステップS370)。
【0069】
ここで、工程重複日数よりも作業干渉日数が大きいかどうかを判定し(ステップS380)、判定結果がYESの場合には、後続の作業工程の開始日および完了日を「作業干渉日数=工程重複日数」となるように修正する(ステップS390)。ステップS390での判定結果がNOの場合、またはステップS390の処理が終了した場合は、未処理の他の作業工程はあるかどうかを判定し(ステップS400)、判定結果がNOの場合にはステップS320の処理に進む。
【0070】
また、ステップS400での判定結果がYESの場合には、未処理の変更した作業工程があるかどうかを判定し(ステップS410)、判定結果がNOの場合にはステップS300に進み、判定結果がYESの場合には処理を終了する。
【0071】
このような作業空間干渉影響計算処理において、例えば、建設対象の構造物が原子力プラントなどの場合、大型設備の搬入を各フロアの天井を打設する前にクレーン等で搬入する必要があるため、躯体建築の作業工程の作業日程と設備搬入の作業工程の作業日程とが互いに影響する。したがって、これらを判定するために、躯体建築の作業工程と設備搬入の作業工程の作業空間の影響を計算する必要がある。
【0072】
したがって、作業空間干渉影響計算処理では、さらに、設置対象である設備を囲む壁及び設備の上方に位置する天井と、他の作業工程の作業空間に干渉が存在するかどうかを計算し、算出された干渉量に基づいて作業工程の変更の他の作業工程への影響の有無を判定する。
【0073】
図11は、設置対象である設備を囲む壁に関する作業空間干渉影響計算処理を示すフローチャートである。
【0074】
図11において、作業空間干渉影響計算部52は、まず、設備3Dオブジェクトを1つ選択し、設備オブジェクトの中心を取得する(ステップ500)。次に、選択した設備と同じ高さ(フロア)に位置する壁オブジェクトを抽出する(ステップS510)。具体的には、設備オブジェクトの中心点の高さ(Z軸方向)が、壁オブジェクトの軸平行バウンディングボックスの上端の高さ以下、かつ、下端の高さ以上であるという条件で判定する。次に、抽出した壁オブジェクトをX−Y平面に射影し、外形線のX−Y座標を抽出する(ステップS520)。これは、外形線は線分であれば両端の座標、円弧であれば中心点と半径、及び両端の座標などである。次に、X−Y平面上で、中心点を端点として周囲に複数の半直線を描く(ステップS530)。これは、例えば、4方向、8方向、16方向など計算時間に応じて調整しても良い。次に、それぞれの半直線と外形線との交点を導出する(ステップS540)。これは、半直線と外形線に関するX座標値とY座標値の関係を記述した連立方程式を解くことにより導出される。そして、得られた各半直線上に存在する複数の交点の内、最も中心点(端点)に近い交点を生成している躯体オブジェクトを抽出する(ステップS550)。これにより、選択されている設備オブジェクトを取り囲む壁オブジェクトを抽出することができる。その後、選択中の設備オブジェクトと抽出した壁オブジェクトに紐づく作業工程を工程―3DモデルリンクDB3から取得すれば、壁の作業工程の完了日と設備の搬入工程の開始日との比較が可能となり、壁の建築工程(作業工程)が遅延した場合(変更された場合)の搬入工程(他の作業工程)への伝搬を計算することができる。
【0075】
図12は、設置対象である設備の上方に位置する天井に関する作業空間干渉影響計算処理を示すフローチャートである。
【0076】
図12において、作業空間干渉影響計算部52は、まず、選択されている設備オブジェクトとX−Y平面上で近接している天井オブジェクトを抽出するため、設備オブジェクトと躯体オブジェクトの軸平行バウンディングボックス(BB)をX−Y平面上に射影し(ステップS600)、X−Y平面上で設備オブジェクトのBBと躯体オブジェクトのBBの外形線の交差を計算する(ステップS610)。交差が存在する躯体オブジェクトは設備に近接していると判断して抽出する(ステップS620)。次に、高さ方向の絞り込みを行うため、設備オブジェクトのBBの上面のZ座標と躯体オブジェクトのBBの底面のZ座標とを比較し(ステップS630)、躯体オブジェクトの軸平行BB下面のZ座標値が設備オブジェクトの軸平行BB上面のZ座標値を上回っており、かつ、その差の絶対値が最小となるものを抽出する(ステップS640)。
【0077】
(1−5.3)作業リソース影響計算部53
作業リソース影響計算部53は、工程変更影響評価処理の1つとして作業リソース影響計算処理を実施するものであり、2つの作業工程のリソースを計算し、算出されたリソースに基づいて、作業工程の変更の他の作業工程への影響の有無を判定するものである。つまり、作業リソース影響計算部53は、作業工程に変更が発生した場合に、設備搬入前の保管スペースの充填率や、搬入作業に必要となるクレーンの稼働率といったリソース面での制約をチェックし、上限値を上回る場合には出力装置7等により警告を表示してオペレータに対策を促すものである。
【0078】
図13は、作業空間干渉影響計算部における工程変更影響評価処理としての作業リソース影響計算処理を示すフローチャートである。
【0079】
図13において、作業リソース影響計算部53は、まず、変更された作業工程を1つ選択し(ステップS700)、選択された作業工程のリソースの種類を判定する(ステップS710)。ここで、リソースの種類とは、例えば、搬入工程の場合にはクレーン使用時間、仮置きや保管工程の場合保管スペースの占有率などであり、また、据付作業工程では作業者数である。
【0080】
続いて、それぞれのタイプに応じたリソース使用量および全体工程でのリソース使用量を計算する(ステップS720)。例えば、クレーン使用時間の導出方法は次の通りである。すなわち、作業工程に紐づく3Dモデルの座標値と、3DモデルDB2に格納されているクレーンの配置座標値を用いて、各3Dオブジェクトに最も近いクレーンに搬入を担当させるよう割当を行う。そして作業工数DB4に格納されている作業工数を用いて3Dオブジェクトの数量を作業工数に変換する。次に、各作業工程の開始日から終了日までの期間内で均等に各3Dオブジェクトの作業工数を均す。例えば、作業工程が5日間実施され、その間に搬入する物量が配管100本だった場合、1日当り20本となるように均す。仮に作業期間が10日となった場合は1日当り10本となる。最後に、クレーン毎に総和を取ることで稼働時間の山積み(時間推移)を計算する。
【0081】
また、保管スペースの占有率の導出方法は、体積を用いる場合は、一般的なCADが有する体積計算機能などを用いて3Dオブジェクトの体積を計算し、また、3DモデルDB1aに格納されている保管スペースオブジェクトの体積を計算して前者を後者で割ることで占有率を計算する。一方、面積を用いる場合は、機器の場合は据付後の状態と同じ態勢で保管されるため、軸平行バウンディングボックスの底面積を機器の占有面積とすれば良いが、配管の場合は寝かせて保管するため、保管姿勢の推定が必要である。
【0082】
この推定方法は次のようなものが考えられる。配管の3Dオブジェクトを構成する最小要素(円柱または円錐形状)の中心線分を抽出する。簡単化のためエルボなど配管のルートが曲線となる要素は無視する。中心線分は、円柱や円錐の上面と底面の中心点の座標及びそれらを結ぶ3次元ベクトルとして保持する。そして、同一平面上に存在する直線(ベクトル)同士を同一グループに分類する。これは、選択中の配管3Dオブジェクトの端に位置する構成要素からスタートして、順次2つのベクトルの成す角を計算し、成す角が0となるか、または、2つの直線間の最短距離が0となる場合に、当該2つの直線が同一平面に存在すると判定できる。交点を持つ場合は同一平面上に存在するため、交点を持つ場合はそれらを同一グループに分類する。
【0083】
詳細な手順としては、まず配管オブジェクトの端に位置する構成要素をグループ1とする。次に隣の構成要素を選択し、グループ1内に存在する全ての構成要素(最初は端に位置する構成要素のみ)と前記の方法で同一平面上に存在すると判定された場合は、当該要素をグループ1に追加し、そうでない場合はグループ2を新規作成し追加する。これを順次繰り返し、すべての構成要素をグループに分類する。分類が完了した後、グループ毎に構成要素の中心線分の長さの総和を計算し、それが最大となるグループを選択する。このグループが構成する平面が、配管を保管した際に地面と水平になる平面であると考える。そして、占有面積を計算するために、前記配管オブジェクトの構成要素毎に上面と底面の中心点を結ぶ線分を前記平面上に射影して構成される線分の長さの総和に配管の直径を掛けると良い。エルボ部分は簡単化し、上面と底面の中心点を線分で結ぶか、または、両隣に位置する円柱要素の中心線(直線)の交点を計算し、エルボ底面の中心点と当該交点を結ぶ線分、および、当該交点とエルボ上面の中心点を結ぶ線分で代替する。
【0084】
保管スペースのリソースの山積み(時間推移)の計算は、クレーンの稼働時間のように作業日数に応じて1日当りの数値に均すのではなく、作業期間中ずっと占有面積分のリソースを消費し続けるものとして計算する。上限値は、保管スペースを示す3Dオブジェクトの底面積を計算するか、事前にオペレータが入力装置6を介して入力しても良い。
【0085】
そして、上限値を超過している期間が存在しないか計算する(ステップS730)。その後、
図14に示すような方法で、出力装置7の表示機能を通じてオペレータに表示する。リソースが上限値を超過する場合は、作業工程の日程を調整する以外にもリソース上限値を増加させることで対応することも可能であるため、上限値の増加または作業工程の修正についてはオペレータが判断して、入力装置6を通じて行うものとする。
【0086】
(1−6)出力装置7
出力装置7は、作業工程などの設定画面や工程変更影響評価処理の処理結果を表示する表示機能を有している。
【0087】
図15及び
図16は、出力装置に表示される工程変更影響評価処理の様子を示す図であり、
図15は作業工程の変更を入力する前の表示例を示しており、
図16は作業工程の変更が入力された場合の工程変更影響評価処理の処理結果の表示例を示すものである。
【0088】
図15において、入力部801は工程の遅延影響の計算対象となる工程のプラント名、建屋名を入力する箇所であり、プルダウンにより複数の名称から選択できる。当該2つの名称を入力すると入力部804に工程表が表示される。入力部801の工程検索欄は工程の名称をオペレータがキーボードにより入力したり、プルダウンに作業工程一覧を表示させたりし、その中からオペレータに選択させ、入力結果に該当する作業工程を選択中にする。工程検索欄の右に位置する三角形のボタンは複数の検索結果に対して、順および逆順に一つずつ選択状態を変更していくボタンである。選択状態となった作業工程は後述する入力部802に情報が表示され、また、入力部804で作業工程バーの色や太さが変更されることで選択状態にあることをオペレータに強調する。また、入力部801でオペレータが作業工程バー(線)をクリックすることで直感的に作業工程を選択状態にすることも可能である。
【0089】
入力部802は表示された工程表の中で、選択状態にある1つの作業工程に関する名称、変更タイプ、変更前の作業日程、変更後の作業日程を表示または入力する箇所である。変更タイプとは、オペレータが手動で作業日程を変更したか、または、変更影響計算結果により変更されたか、または、変更なしかのいずれか1つを表示する。変更後日程欄はオペレータがキーボードを通じて変更後の作業日程を入力しても良いし、入力部804で一般の工程管理ソフトのように作業工程バーをドラッグアンドドロップするなどして変更した結果を表示しても良い。
【0090】
影響計算実行ボタンは、工程変更影響の計算を実行するものであり、初期状態では入力は無効(クリックなどの入力を受け付けない状態)であり、少なくとも1つ以上の作業工程の日程がオペレータにより変更された場合に有効(クリックなどの入力を受け付ける状態)に遷移し、1度入力を受け付けると、再び無効に遷移する。ボタンが押下されて計算を実行し終えると、
図16の同箇所に示すように、入力部804の工程表が変更後の工程表に置き換えられ、変更が発生した作業工程については、変更前と比較して線の色や太さを変えることによりオペレータに強調表示する。
【0091】
入力部803は変更影響計算の実行完了後に有効となり、選択工程への影響伝搬パス欄は現在選択状態にある作業工程に変更があった場合に、
図16の同箇所に示すように当該変更に至るまでの変更された作業工程一覧(パス、経路)を表示するものである。当該パスが選択状態にある場合、同時に入力部804の工程表上でも当該パスを示す矢印を、他の矢印と異なる色や太さで表示することによりオペレータに強調表示する。また、選択中の影響リンク欄は、
図16の同箇所に示すように、現在選択状態にある1つのリンク(2つの作業工程間における日程変更の伝搬)の名称を示すもので、先行作業工程の名称と後続作業工程の名称を表示する。これは、影響リンクの一覧をプルダウン形式で表示して選択しても良いし、入力部804上で矢印により表示される影響リンクをクリックで選択しても良い。影響理由欄は、選択状態にある影響リンクに関して、影響が発生した理由を表示するものであり、物理的距離計算部51で計算された場合には具体的な距離を数値で表示し、作業空間干渉影響計算部52で計算された場合には作業空間の干渉体積を数値で表示したり、壁―設備の関係または設備天井の関係であることが判別できる文字列で表示させたりする。CADハイライトボタンは、入力部801で入力されたプラント及び建屋に該当する3Dモデルを3D−CAD上に表示し、かつ、選択状態にある影響伝搬パスや影響リンクに係る3Dオブジェクトの色を変更することにより強調表示するためのものである。
【0092】
(2)効果
以上のように構成した本実施の形態の作用効果を説明する。
【0093】
原子力プラントや発電プラント、化学プラントなどの大規模なプラント建設や、大多数の部品の大規模な組立作業を要する製造分野などにおいては、作業工程の一部に変更や遅延が生じるような場合には、他の作業工程および全体工程への影響を的確に把握して対策を検討し、納期遅延の防止・抑制を図ることが重要である。しかしながら、大規模なプラント建設などでは、多種類の作業が複雑に絡み合いながら建設が進められていくため、上記従来技術のように一部の作業工程間の関係を考慮するだけでは不十分であり、ある作業工程の内容変更の全体工程への影響を抑制することができず、納期遅延などの発生が懸念される。
【0094】
これに対して本実施の形態においては、建設対象となる構造物の建設に係る複数の作業工程の情報を記憶する建設工程情報記憶部と、構造物の3次元形状情報を記憶する3次元形状情報記憶部と、作業工程の情報と3次元形状情報との対応関係である工程−3Dモデルリンク情報を記憶する工程−3Dモデルリンク情報記憶部とを備え、複数の作業工程のうち少なくとも1つの作業日程が変更された場合に、作業工程の情報と、3次元形状情報と、工程−3Dモデルリンク情報とに基づいて、その他の作業工程の作業日程への影響を計算するように構成したので、作業工程の内容変更に係る全体工程への影響をより確実に把握し、抑制することができる。
【0095】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。