(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6545009
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】バッテリレスの起動装置を備える前進移動手段、特に電動自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20190705BHJP
【FI】
B62M6/45
【請求項の数】18
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-119132(P2015-119132)
(22)【出願日】2015年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-3011(P2016-3011A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2018年2月23日
(31)【優先権主張番号】10 2014 211 306.7
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン シューラー
(72)【発明者】
【氏名】リナルド グライナー
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−199378(JP,A)
【文献】
特開2006−351267(JP,A)
【文献】
実開昭49−127768(JP,U)
【文献】
特開2002−116860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B62M 6/45
H01H 13/00,13/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋力を用いてかつ/又は電気式に運転可能な前進移動手段であって、
制御ユニット(10)と電気的な駆動装置(3)と蓄電池(4)とを有する駆動システムと、
前記駆動システムを起動させるバッテリレスの起動装置(11)であって、システム起動のための起動要求時に起動信号を形成するために周辺エネルギを用いるように設けられている、起動装置と、
を備え、
バッテリレスの前記起動装置(11)は、少なくとも第1の段及び第2の段を有する多段式のシステム起動を可能にし、
前記第1の段で、第1の装置に対する第1の起動信号が形成可能であり、前記第2の段で、第2の装置に対する起動信号が形成可能である、
ことを特徴とする、前進移動手段。
【請求項2】
バッテリレスの前記起動装置(11)は、キー(19)を備える、請求項1記載の前進移動手段。
【請求項3】
バッテリレスの前記起動装置(11)は、少なくとも第1の機械的な抵抗(21)及び第2の機械的な抵抗(22)を備え、前記第1の機械的な抵抗(21)は、前記第1の段に割り当てられており、前記第2の機械的な抵抗(22)は、前記第2の段に割り当てられている、請求項1又は2記載の前進移動手段。
【請求項4】
バッテリレスの前記起動装置(11)は、コイルアセンブリを備える、請求項1から3までのいずれか1項記載の前進移動手段。
【請求項5】
前記コイルアセンブリは、少なくとも1つのフェライトコア(15)と、該少なくとも1つのフェライトコア(15)の周りに巻き掛けられた少なくとも1つのコイル(23)と、前記少なくとも1つのフェライトコア(15)に対して相対的に移動可能な1つの永久磁石要素(12)とを備える、請求項4記載の前進移動手段。
【請求項6】
バッテリレスの前記起動装置(11)は、ピエゾ要素(30)を備える、請求項1から3までのいずれか1項記載の前進移動手段。
【請求項7】
前記キー(19)を初期位置に戻すために戻し要素(17)を更に備える、請求項2又は請求項2を引用する請求項3から6までのいずれか1項記載の前進移動手段。
【請求項8】
前記起動装置(11)は、当該前進移動手段に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の前進移動手段。
【請求項9】
前記起動装置(11)は、前記制御ユニット(10)に組み込まれている、請求項1から8までのいずれか1項記載の前進移動手段。
【請求項10】
前記起動装置(11)は、別個に、独立した構成要素として当該前進移動手段に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の前進移動手段。
【請求項11】
当該前進移動手段は、電動自転車である、請求項1〜10までのいずれか1項記載の前身移動手段。
【請求項12】
請求項1記載の前進移動手段に用いられる装置であって、
当該前進移動手段に用いられる装置は、作動時に多段の起動信号を形成するように設けられており、
多段の起動信号を形成するために周辺エネルギが用いられ、
多段の起動信号に対して、少なくとも、第1の装置により形成可能な第1の起動信号及び第2の装置により形成可能な第2の起動信号が設けられている、
前進移動手段に用いられる装置。
【請求項13】
バッテリレスの前記起動装置(11)は、キー(19)を備え、該キー(19)は、少なくとも、第1の機械的な抵抗(21)及び第2の機械的な抵抗(22)を備え、前記第1の機械的な抵抗(21)は、第1の段に割り当てられており、前記第2の機械的な抵抗(22)は、第2の段に割り当てられている、請求項12記載の前進移動手段に用いられる装置。
【請求項14】
当該前進移動手段に用いられる装置(11)は、コイルアセンブリを備える、請求項12又は13記載の前進移動手段に用いられる装置。
【請求項15】
前記コイルアセンブリは、少なくとも1つのフェライトコア(15)と、該少なくとも1つのフェライトコア(15)の周りに巻き掛けられた少なくとも1つのコイル(23)と、前記少なくとも1つのフェライトコア(15)に対して相対的に移動可能な1つの永久磁石要素(12)とを備える、請求項14記載の装置。
【請求項16】
当該前進移動手段に用いられる装置は、ピエゾ要素(30)を備える、請求項12から15までのいずれか1項記載の前進移動手段に用いられる装置。
【請求項17】
前記キーは、該キー(19)を初期位置に戻すために戻し要素(17)を備える、請求項13又は請求項13を引用する請求項14から16までのいずれか1項記載の前進移動手段に用いられる装置。
【請求項18】
前記前進移動手段に用いられる装置は、バッテリレスの起動装置である、請求項12から17までのいずれか1項記載の前進移動手段に用いられる装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋力を用いてかつ/又は電気式に運転可能な前進移動手段、特に電動自転車であって、制御ユニットと電気的な駆動装置と蓄電池とを有する駆動システムと、駆動システムを起動させるバッテリレスの起動装置であって、起動装置は、システム起動のための起動要求時に起動信号を形成するために周辺エネルギを用いるように設けられている、起動装置と、を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
筋力を用いてかつ/又は電気的に運転可能な前進移動手段、例えば電動自転車は、最近需要がますます高まっている。この種の電動自転車は、電気的な駆動装置と蓄電池と制御ユニットとを備える。制御ユニットは、電気的な駆動装置を、様々な走行パラメータに応じてかつ/又は運転手の要望に基づいて駆動するように調整されている。システム起動のために、通常、ハンドルにおいて表示ユニットにスタートボタンが設けられており、スタートボタンは、表示ユニットに配置された別個のバッテリを介して給電される。従ってこのシステムは2つのバッテリ、つまりシステム起動のための、より小さな容量を有する小さなバッテリと、電気的な駆動装置に給電するための、より大きな容量を有する大きなバッテリ(蓄電池)とを備える。択一的に、いわゆるスタートボタンがメインバッテリ(メインバッテリは本来電気的な駆動装置を駆動するために設けられている)により給電されるシステムが公知である。但しこの場合、スタートボタン又はこれに類するものによる一定のエネルギ消費が存在し、このエネルギ消費は、電動自転車の未使用期間がより長い場合にメインバッテリの放電をもたらす。従って、電動自転車又はこれに類するものにおいて「システム起動」の範囲の問題を択一的に解決する手段を持つことが所望される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、前進移動装置を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明によれば、筋力を用いてかつ/又は電気式に運転可能な前進移動手段、特に電動自転車であって、制御ユニットと電気的な駆動装置と蓄電池とを有する駆動システムと、駆動システムを起動させるバッテリレスの起動装置であって、システム起動のための起動要求時に起動信号を形成するために周辺エネルギを用いるように設けられている起動装置とを備え、バッテリレスの起動装置は、少なくとも第1の段及び第2の段を有する多段式のシステム起動を可能にし、第1の段で、第1の装置に対する第1の起動信号が形成可能であり、第2の段で、第2の装置に対する起動信号が形成可能である。
【0005】
好適には、バッテリレスの起動装置は、キーを備える。
【0006】
好適には、バッテリレスの起動装置は、少なくとも、第1の機械的な抵抗及び第2の機械的な抵抗を備え、第1の機械的な抵抗は、第1の段に割り当てられており、第2の機械的な抵抗は、第2の段に割り当てられている。
【0007】
好適には、バッテリレスの起動装置は、コイルアセンブリを備える。
【0008】
好適には、コイルアセンブリは、1つの第1のフェライトコアと、第1のフェライトコアの周りに巻き掛けられた少なくとも1つの第1のコイルと、第1のフェライトコアに対して相対的に移動可能な1つの永久磁石要素とを備える。
【0009】
好適には、バッテリレスの起動装置は、ピエゾ要素を備える。
【0010】
好適には、前進移動手段は、キーを初期位置に戻すために戻し要素を更に備える。
【0011】
好適には、起動装置は、前進移動手段に配置されている。
【0012】
好適には、起動装置は、制御ユニットに組み込まれている。
【0013】
好適には、起動装置は、別個に、独立した構成要素として前進移動手段に配置されている。
【0014】
本発明によれば、前述の前進移動手段に用いられる装置、特にバッテリレスの起動装置であって、前進移動手段に用いられる装置は、作動時に多段の起動信号を形成するように設けられており、多段の起動信号を形成するために周辺エネルギが用いられ、多段の起動信号に対して、少なくとも、第1の装置により形成可能な第1の起動信号及び第2の装置により形成可能な第2の起動信号が設けられている。
【0015】
好適には、キーが設けられており、キーは、少なくとも、第1の機械的な抵抗及び第2の機械的な抵抗を備え、第1の機械的な抵抗は、第1の段に割り当てられており、第2の機械的な抵抗は、第2の段に割り当てられている。
【0016】
好適には、前進移動手段に用いられる装置は、コイルアセンブリを備え、特に、コイルアセンブリは、1つの第1のフェライトコアと、第1のフェライトコアの周りに巻き掛けられた少なくとも1つの第1のコイルと、第1のフェライトコアに対して相対的に移動可能な1つの永久磁石要素とを備える。
【0017】
好適には、前進移動手段に用いられる装置は、ピエゾ要素を備える。
【0018】
好適には、前進移動手段に用いられる装置、特にキーは、キーを初期位置に戻すために戻し要素を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明による、請求項1の特徴部に記載の構成を有する、筋力を用いてかつ/又は電気式に運転可能な前進移動手段、特に電動自転車は、電気的な駆動システムのシステム起動のために、駆動システムに蓄えられたエネルギが不要であるという利点を有する。システム起動は、バッテリレスでエネルギ自給式に行うことができる。このために、本発明によれば、バッテリレスの起動装置が設けられており、起動装置は、運転手の起動要求時に、起動信号を形成するために周辺エネルギを利用するように設けられている。この場合、本発明による起動装置は、少なくとも第1及び第2の段を有する多段式のシステム起動が可能であるように構成されている。この場合、第1の段では、第1の装置に対する第1の起動信号が形成され、第2の段では、第1の装置とは異なる第2の装置に対する第2の起動信号が形成される。例えば、第1の段は、システム起動に用いられ、第2の段は、前進移動手段に設けられたライトをスイッチオンするために用いられる。従って、本発明によれば、前進移動手段に設けられた蓄電池に依存しないシステム起動を実行できるので、2つのバッテリも、電気的に運転可能な前進移動手段のメインバッテリによるスタートボタン又はこれに類するものへの恒常的な給電も不要である。
【0020】
従属請求項は、本発明の好適な改良態様を表している。
【0021】
特に好適には、バッテリレスの起動装置は、キーを備える。キーを設けることにより、キーを押すことにより、起動信号を形成するために周辺エネルギを利用できる。これにより、特に簡単でコンパクトな構造を実現できる。
【0022】
バッテリレスの起動装置は、好適には、少なくとも第1及び第2の機械的な抵抗を備える。この場合、第1の機械的な抵抗は、システム起動の第1の段に割り当てられており、第2の機械的な抵抗は、システム起動の第2の段に割り当てられている。従って、例えばキーもしくは押しボタンを押す運転手に、両方の機械的な抵抗を設けることにより、例えば第2の段の到達時における機械的な抵抗の増加により、両方の段の起動に関する触感的なフィードバック(応答)を与えることができる。
【0023】
更に好適には、バッテリレスの起動装置は、コイルアセンブリを備える。コイルアセンブリは、例えばキー要素の押下げ、つまり移動時に起動信号を形成し、制御ユニット又はこれに類するものに伝達するように調整されている。バッテリレスの起動装置は、特に好適には、第1のコイル並びに永久磁石要素を備え、第1のコイルは、第1のフェライトコアの周りに配置されており、永久磁石は、運転手によって操作すべきキー又はこれに類するものに結合されていて、第1のコイルに対して相対的な永久磁石の移動により、第1の起動信号が形成可能である。第2のコイルに対して、好適には同一のコイル構造が設けられている。
【0024】
択一的に、バッテリレスの起動装置は、ピエゾ要素を備え、ピエゾ要素は、多段式のシステム起動の様々な段を形成するためにそれぞれ異なる信号を用意するように設けられている。この場合、例えば、キーを介してピエゾ要素に及ぼされる力に応じて、この力が閾値として用いられるピエゾ要素における様々な力の値を超えた後に、様々な信号を形成することができる。択一的に、複数のピエゾ要素を設けてもよく、これらのピエゾ要素に、例えばキーの押下げ深さに応じて、その都度、それぞれ異なる1つの起動信号を、設けられた段に応じて用意することができる。
【0025】
更に好適には、キーは、キーを初期位置に戻すために、戻し要素を備える。戻し要素は、例えばばね又はこれに類するものとして構成してよい。
【0026】
本発明の更に好適な態様によれば、バッテリレスの起動装置は、前進移動手段に配置されている。この場合、バッテリレスの起動装置は、エネルギ自給式のシステム起動を開始するために、前進移動手段の電気的な駆動システムに接続されている。
【0027】
特に好適には、バッテリレスの起動装置は、電気的な駆動システムの制御ユニットに組み込まれている。これにより、特にコンパクトな構造を実現できる。この場合、通常、電気的な駆動ユニットは、制御ユニットを備え、制御ユニットは、例えば電動自転車の場合にはハンドルに配置されていて、前進移動手段の使用者と電気的な駆動システムとの間のインタフェースとして用いられる。択一的に、起動装置は、別個に、前進移動手段に配置されており、これにより、ある種の「スタートボタン」を、前進移動手段の任意の位置に配置することができる。これにより、とりわけ格別な前進移動手段の構造的な要求に配慮して、別個のスタートボタンを任意に位置決めすることができる。
【0028】
更に、本発明によれば、前進移動手段とは別に離して、前述の起動装置が権利請求されるべきである。既に記載された利点とは別に、他に、起動装置は、各々の段に割り当てられた、例えばピエゾ要素の態様のエネルギ形成手段を備えてもよい。この場合、選択的に、各段もしくは各ピエゾ要素が同一の又はそれぞれ異なる量のエネルギを形成するようにしてよい。この種のエネルギを自己形成する起動装置により、外側から起動装置の調節を積極的に監視する必要なく、段に対する起動信号を提供することができる。
【0029】
以下に、添付の図面につき、本発明の実施の形態を詳しく説明する。このとき、同一もしくは機能的に同一の構成要素には、同一の符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の態様による、バッテリレスの起動装置を有する電動自転車の概略図である。
【
図3】本発明の第2の態様による起動装置の概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、
図1及び
図2につき、本発明の第1の好適な態様による電動自転車1を詳説する。
【0032】
図1から看取されるように、電動自転車1は、2つのクランク7,8を有するクランク伝動装置2を備える。クランク7,8には、ペダルが配置されている。電気的な駆動装置3がクランク伝動装置の域に配置されているので、いわゆるセンターモータの配置が提供される。クランク伝動装置2に設けられたチェンリングとチェン5とを介して、電動自転車の後輪9に設けられたスプロケット6が駆動される。
【0033】
電動自転車のハンドルに制御ユニット10が配置されており、制御ユニット10は、電気的な駆動装置3と蓄電池4とに接続されている。
【0034】
更に、キー19を有するバッテリレスの起動装置11が、制御ユニット10に配置されている。従って、電動自転車の電気的な駆動システムは、電気的な駆動システムの給電のために設けられた、単一の蓄電池4だけを備える。しかもこのとき、起動装置11は、バッテリレスであり、この場合、システム起動のための起動信号を形成するために周辺エネルギが利用される。
【0035】
図2は、起動装置11を詳細に示している。この場合、周辺エネルギとして、キー19への押圧により生じる運動エネルギが利用される。この運動エネルギは、本発明によれば、キー19が永久磁石要素12を備え、永久磁石要素12が矢印Fの方向で直線移動可能であることにより得られる。更に、起動装置11は、第1のコイル23を有する第1のコイルアセンブリ13と、第2のコイル24を有する第2のコイルアセンブリ14とを備える。U字形の第1のフェライトコア15の周りには、第1のコイル23が巻き掛けられている。U字形の第2のフェライトコア16の周りには、第2のコイル24が巻き掛けられている。
【0036】
更に、起動装置11は、ばねの態様の戻し要素17を備え、この場合、戻し要素17は、一方の端部で基部18に、他方の端部で永久磁石要素12に支持されている。この場合、戻し要素17は、キー19及び永久磁石要素12を再び初期位置に戻す。
【0037】
更に、起動装置11は、第1の機械的な抵抗21と第2の機械的な抵抗22とを備える。第1の機械的な抵抗21は、第1のフェライトコア15の域に配置されており、第2の機械的な抵抗22は、第2のフェライトコア16の域に配置されている。
図2から看取されるように、両方の機械的な抵抗21,22は、移動方向Fで、間隔Aを置いて互いに幾分かずらして配置されている。これにより、多段式のシステム起動が達成され、この場合、第1の機械的な抵抗21は、第1の段を起動させ、例えば駆動システムをスイッチオンし、第2の機械的な抵抗22は、第2の装置、例えば前ライト又はこれに類するもののような第2の消費器をスイッチオンする。移動方向で互いにずらして配置された両方の機械的な抵抗21,22により、使用者は、矢印Fの方向でのキー19への押圧時に、触感的な応答を受ける。なぜならば、これらの機械的な抵抗に相前後して接触する永久磁石要素12の移動が、その都度、より大きな操作力を必要とするからである。従って、2段式のキーが用意される。この2段式のキーは、永久磁石要素12が第1のもしくは第2の機械的な抵抗21,22を擦過する際に、永久磁石要素12の高められた摩擦を介して、それぞれ別の段の作動接続の感触を生じさせる。
【0038】
戻し要素17の力に抗する矢印Fの方向での永久磁石要素12の移動により、永久磁石要素12は、両方のコイルアセンブリ13,14を閉じるので、システムに電圧がそれぞれ誘導される。ずらされた配置により、先ず第1のフェライトコア15において電圧が誘導され、続いて更なる区間Aの移動後に、第2のフェライトコア16において電圧が誘導される。
【0039】
図2には、単に2つの段が図示されていることを付記しておく。しかも、
図2に示された構造に相応して、更なる段を移動方向にずらすことにより配置することもできるので、2段より多い起動装置が実現される。
【0040】
従って、本発明によれば、起動装置は、バッテリもしくは電動自転車の蓄電池4に対する接続を設けることなく運転することができる。この場合、周辺エネルギとして、永久磁石要素12に及ぼされる力が利用される。この場合、同時に戻し要素17も圧縮されるので、システムの戻りは、やはり外部エネルギを用いることなくばね要素の弛緩により行われる。
【0041】
図3は、本発明の第2の態様による起動装置11を示している。コイルアセンブリとは異なり、第2の態様の起動装置11は、ピエゾ要素30を備える。戻し要素17が、押しボタン31とピエゾ要素30との間に配置されている。本態様では、第1の機械的な抵抗21と第2の機械的な抵抗22と第3の機械的な抵抗33とを備える3段式の起動装置が設けられている。機械的な抵抗21,22,33は、押しボタン31の移動方向(矢印F)で相前後して配置されている。従って、使用者に3段の操作を示唆することができる。押しボタン31は、戻し要素17の戻し力に抗して移動させなければならないので、押しボタン31がより遠くに押し込められるほど、より大きな力を押しボタン31に及ぼさなければならない。これにより、その都度ピエゾ要素30により発生させられる電圧が高まる。従って、3段式のシステム起動を用意することができ、この場合、例えば第1の段(第1の機械的な抵抗21)により、駆動システムの起動が開始され、第2の段(第2の機械的な抵抗22)により前ライトがスイッチオンされ、第3段(第3の機械的な抵抗33)により、後ライトがスイッチオンされる。
【0042】
記載の両方の態様では、起動装置11は、それぞれ制御ユニット10に組み込まれている。起動装置11を別個の「スタートボタン」として任意に電動自転車に配置することも可能である。従って、使用者にとって、制御ユニットとスタートボタンとの間の明確な区別を可能にすることができる。この場合、別個のスタートボタンと制御ユニット10との間の接続は、例えばCAN−BUSシステムを介して達成することができる。
【0043】
この場合、例えば、ビット列を起動信号として起動装置に送ることも可能である。
【0044】
従って、発明を実施するための形態に記載された本発明における電動自転車では、単一のバッテリだけを駆動システムに設ければよいので、より多くの起動工程もしくは電動自転車のより長期の未使用期間の場合でも、部分的又は完全に放電された蓄電池4が存在することはない。更に、背景技術において従来必要であったように、制御ユニット10に設けられたスタートボタンの範囲における面倒なバッテリ交換が省略される。
【0045】
特別な態様では、起動装置の作動の様々な段は、例えばピエゾ要素のような、エネルギを形成する手段に接続されている。この場合、第1の段の到達時に、第1のエネルギ信号が形成され、第2の段の到達時に、第2のエネルギ信号が形成される。これらのエネルギ信号は、同一の大きさを有してよく、しかも、形成の時間的な差異に基づいて、それぞれ異なる制御目的及び/又は起動目的に利用することができる。しかも、択一的に、両方のエネルギを形成する手段は、それぞれ異なるように構成してもよいので、それぞれ異なる大きさのエネルギ信号も形成される。この場合、これらのそれぞれ異なるエネルギ信号に、それぞれ異なる制御性が結びついている。エネルギを形成する手段のそれぞれ異なる態様により、後続の段がより大きな機械的な抵抗を有するようにしてもよいので、使用者は、別の信号が形成されることを触感により認識する。しかも、この態様において、機械的な抵抗が相応に高く調節されることによって、多くの段を不意の作動から守ることも可能である。
【0046】
別の態様では、前述の起動装置は、既存の駆動システムに対して追加できる増設部分として構成されている。この場合、制御情報もしくは起動情報の伝達だけを、適切なインタフェースにより保証すればよい。
【符号の説明】
【0047】
1 電動自転車、 2 クランク伝動装置、 3 電気的な駆動装置、 4 蓄電池、 5 チェン、 6 スプロケット、 7,8 クランク、 9 後輪、 10 制御ユニット、 11 起動装置、 12 永久磁石要素、 13 第1のコイルアセンブリ、 14 第2のコイルアセンブリ、 15 第1のフェライトコア、 16 第2のフェライトコア、 17 戻し要素、 18 基部、 19 キー、 21 第1の機械的な抵抗、 22 第2の機械的な抵抗、 23 第1のコイル、 24 第2のコイル、 30 ピエゾ要素、 31 押しボタン、 33 第3の機械的な抵抗