(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部鋼管は、螺旋状に巻かれた長尺鋼板の上下の縁が重なって連続した螺旋状の凹凸状リブを有するスパイラル管であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート充填二重鋼管柱。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート充填二重鋼管柱の内部鋼管は、コンクリートの供給圧を受けるので、偏心する虞があり、建込み配置にずれが生じると、コンクリート充填二重鋼管柱の強度も偏る虞がある。
本発明は、強度と剛性に優れたコンクリート充填二重鋼管柱およびそのコンクリート充填二重鋼管柱の構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する第一の発明は、外殻鋼管と内部鋼管とを備え、コンクリートが充填されたコンクリート充填二重鋼管柱であって、内部鋼管には、複数の開口部が外周面に高さ方向に螺旋状に配置されるとともに、内部鋼管の外周面には、径方向の位置固定用部材が下端側および上端側、または下端側、中間部、上端側に設けられており、コンクリートが開口部を通して、外殻鋼管および内部鋼管の内外に充填されていることを特徴とする。
【0006】
第一の発明の構成によれば、外殻鋼管と内部鋼管で構成されたコンクリート充填二重鋼管柱においては、其々の鋼管内に充填されたコンクリートは、二重鋼管による拘束効果により強度と剛性が其々増加されるために、鋼管及びコンクリートの各材料強度を足し合わせた単純累加強度を上回る高強度コンクリート充填鋼管柱を実現することができる。
また、内部鋼管の外周面の下端部や上端部、或いは中間部に、其々径方向の位置固定用部材を設けたことで、外殻鋼管内で内部鋼管を偏らせることなく、密実にコンクリートが充填された二重鋼管柱を実現することができる。
また、内部鋼管の外周面には、複数の開口部が螺旋状に設けられていることで、内部鋼管の開口部を通して外郭鋼管内に、密実にコンクリートが充填された二重鋼管柱を実現することができる。
【0007】
前記課題を解決する第二の発明では、コンクリート充填二重鋼管柱を構成する内部鋼管は、螺旋状に巻かれた長尺鋼板の上下の縁が重なって連続した螺旋状の凹凸状リブを有するスパイラル管であることを特徴とする。
【0008】
第二の発明の構成によれば、内部鋼管は外周面側に凸状リブが形成され、凸状リブに対応した内周面側に凹状リブが其々螺旋状に形成されていることで、内部鋼管と当該内部鋼管の内外に充填されるコンクリートとの間の付着強度が高められるために、内部鋼管とコンクリートを強固に一体化することができる。
【0009】
また、第三の発明では、コンクリート充填二重鋼管柱を構成する外殻鋼管は、外殻鋼管は、内周面側に溶接された水平補剛鋼材を備え、水平補剛鋼材は空気孔を有しており、内部鋼管に設けられた開口部は、少なくとも水平補剛鋼板に対向した箇所に配置されていることを特徴とする。
第三の発明の構成によれば、外殻鋼管内に溶接された水平補剛鋼材が、空気孔を有するとともに、内部鋼管に設けられた開口部が、当該水平補剛鋼板に対向した高い位置に設けられていることで、水平補剛鋼材の上面および下面に空気溜まりが形成されることなく、密実にコンクリートが充填された二重鋼管柱を実現することができる。
【0010】
前記課題を解決する第四の発明は、上記の第一から第三の発明によるコンクリート充填二重鋼管柱の構築方法であって、前記外殻鋼管を基部上に立設し、立設した前記外殻鋼管の内側に前記内部鋼管を挿入して配置し、前記内部鋼管の上方にコンクリート受け用ホッパーを設置し、前記水平補剛鋼板の取り付け高さ位置において、前記外殻鋼管の外周面に振動を付与しながら、フレッシュコンクリートを前記内部鋼管側から供給し、前記内部鋼管の開口部を通して、前記外殻鋼管内までコンクリートを充填することを特徴とする。
【0011】
第四の発明の構成によれば、外郭鋼管内に、外周面に開口部が螺旋状に設けられた内部鋼管を配置し、その内部鋼管の下端部、中間部および上端部に径方向の位置固定用部材を設けることで、内部鋼管の位置ずれを防止しつつ、外殻鋼管内に内部鋼管の開口部を通してコンクリートを万遍なく充填させることができる。
また、水平補剛鋼材が溶接された外殻鋼管の外周面に外部振動を加えることで、水平補剛鋼材の上面または下面に空気溜まりを形成させることなく、外殻鋼管内にコンクリートを密実に打設することができる。或いは、バイブレータを内部鋼管の上方から水平補剛鋼材の周辺まで下ろし、フレッシュコンクリートに直接、外部振動を加えてもよい。
また、コンクリート充填二重鋼管柱のコンクリートは、ホッパーから供給ホースを通じて内部鋼管内に供給してもよい。この場合には、コンクリートが自由落下する距離を短くすることができるため、内部鋼管内にてコンクリートの材料が分離するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外殻鋼管内に内部鋼管を埋設し、その内部鋼管を通じて外殻鋼管内に密実なコンクリートに打設することで、強度と剛性に優れたコンクリート充填二重鋼管柱を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のコンクリート充填二重鋼管柱1は、
図1に示すように、外殻鋼管10の中心部に内部鋼管20を仮固定し、内部鋼管20を通じて外殻鋼管10内にコンクリート30を打設して形成したCFT柱である。
本実施形態のコンクリート充填二重鋼管柱1は、外殻鋼管10と、外殻鋼管10内に仮固定された内部鋼管20と、を備え、外殻鋼管10内および内部鋼管20内にはコンクリート30が打設されている。
本実施形態のコンクリート充填二重鋼管柱1の第一の特徴は、外殻鋼管10内にコンクリート3を打設する際に、内部鋼管20の外周面に螺旋状に設けた開口部27を通して外殻鋼管10内にコンクリート30を放射状に一様に充填することができる点である。また、第二の特徴は、コンクリート充填二重鋼管柱1を構成するコンクリート30は、外殻鋼管10と内部鋼管20の二重鋼管による拘束効果により、鋼管10,20およびコンクリート30の其々の材料強度を足し合わせた単純累加強度を上回る高強度なコンクリート充填鋼管柱1を実現することができる点である。
【0015】
外殻鋼管10は、軸断面が正方形の角筒状の鋼管である(
図2(a)参照)。外殻鋼管10は、コンクリート充填二重鋼管柱1の外周壁を構成するものである。外殻鋼管10は、地上面または床面などの基部面2に垂直に立設される。
外殻鋼管10の所定の高さには、二本の梁部材40,40が接続される接続部が設けられている。外殻鋼管10の内部において接続部に対応する位置には、外殻鋼管10の内部を上下に仕切る水平補剛鋼材50(ダイヤフラム)が設けられている。本実施形態では、二枚の水平補剛鋼材50,50が上下方向に間隔を空けて配置されている。
水平補剛鋼材50の中心部には、
図2(b)に示すように、円形の挿通孔51が形成されている。挿通孔51は、内部鋼管20が上下方向に挿通される開口部である。
挿通孔51の内径は、内部鋼管20の外径よりも大きく形成されている。したがって、挿通孔51に内部鋼管20を挿通した状態では、挿通孔51の内周縁部と、内部鋼管20の外周面との間には、コンクリート30が外殻鋼管10内に充填されていく際に、コンクリート30が流れていく空間部分(隙間)が形成される。また、水平補剛鋼材50には、四つの空気孔52が四隅に形成されている。
【0016】
内部鋼管20は、
図1に示すように、上下方向に延びている円筒状の鋼管である(
図3参照)。内部鋼管20は、外殻鋼管10内に位置固定用鉄筋61、72、81を介して仮固定されている。
内部鋼管20は、コンクリート30を外殻鋼管10内に打設するための供給管である。また、内部鋼管20は、コンクリート30が外殻鋼管10内に充填された後は、外殻鋼管10内のコンクリート30内に残置される。
内部鋼管20は、上下二本のスパイラルダクト21,22を連結したものである。
スパイラルダクト21,22は、
図3に示すように、長尺鋼板(帯状の板)を螺旋状に巻回した周壁を有している。スパイラルダクト21,22の外周面には、上下に配置された長尺鋼板の上下の縁同士が連続して重なった凹凸状のリブ24が形成されている。
第1のスパイラルダクト21の上端部と、第2のスパイラルダクト22の下端部とは、円筒状の連結管25に内嵌されることで連結されている。このように、連結管25を用いることで、上下のスパイラルダクト21,22を縮径することなく連結することができ、両スパイラルダクト21,22の内径を一定の大きさに形成することができる。
また、連結管25は、水平補剛鋼材50の上方に配置され、第1のスパイラルダクト21と第2のスパイラルダクト22の連結部分、または第2のスパイラルダクト22,22同士の連結部分に用いられる。連結管25の内径は、双方のスパイラルダクト21,22の外径より大きく、スパイラルダクト21,22の内径を縮小させないように、ビスや締め付け金具等で接続されている。
【0017】
第1のスパイラルダクト21の外周面の下端部には、上下方向に延びている二つの第1の開口部26,26が形成されている。第1の開口部26は、
図1に示すように、側面視で長方形に形成されている。第1の開口部26は、下側のスパイラルダクト21の周壁部を貫通している(
図2(c)参照)。
第1の開口部26内のリブ24は切断されておらず、第1の開口部26の両側縁部にリブ24が架け渡されている。このように、第1の開口部26内にリブ24を残すことで、第1のスパイラルダクト21の下端部の強度を十分に確保することができる。
二つの第1の開口部26,26は、
図2(c)に示すように、第1のスパイラルダクト21の中心軸を挟んで対峙している。
なお、本実施形態の第1の開口部26は、
図1に示すように、第1のスパイラルダクト21の下縁部よりも上方に形成されているが、第1の開口部26を第1のスパイラルダクト21の下縁部に達するように形成してもよい。
【0018】
第1のスパイラルダクト21の外周面において、両第1の開口部26,26よりも上方の位置には、四つの第2の開口部27が形成されている。また、第2のスパイラルダクト22の外周面には、一つの第2の開口部27が形成されている。第2の開口部27は、スパイラルダクト21,22の周壁部を貫通している(
図2(a)および(b)参照)。
複数の第2の開口部27は、スパイラルダクト21,22の周壁部の螺旋方向に沿って、螺旋状に間隔を空けて配置されている(
図4参照)。すなわち、スパイラルダクト21,22には、複数の第2の開口部27が螺旋状に並設されている。
複数の第2の開口部27は、上下方向に間隔を空けて配置されており、
図3に示すように、スパイラルダクト21,22の外周面の一方側および他方側に交互に配置(千鳥配列)されている(
図5参照)。すなわち、上下に並ぶ第2の開口部27,27のうち、上側の第2の開口部27は下側の第2の開口部27に対して斜め上方に形成されている。
第2の開口部27は、スパイラルダクト21,22の外周面に形成されたリブ24の上下の間に形成されている。すなわち、第2の開口部27の上縁部および下縁部はリブ24によって形成されている。したがって、第2の開口部27の上縁部および下縁部は、リブ24の傾斜に沿って形成されている。これにより、第2の開口部27は、内部鋼管20の軸方向に対して斜めに延びている。第1の開口部26および第2の開口部27は、スパイラルダクト21,22の突起部(リブ24)を残した矩形孔または楕円形孔とする。
本実施形態の内部鋼管20では、スパイラルダクト21,22のリブ24が連続しているため、スパイラルダクト21,22の外周面に第1の開口部26や第2の開口部27を形成しても、スパイラルダクト21,22の強度を十分に確保することができる。
最下端部の第1の開口部26は、他の第2の開口部27よりも大開口の長孔に形成されている。第1の開口部26を大口径とすることで、コンクリート充填二重鋼管柱1の柱脚部分に、短い時間で根固めコンクリート部を形成させて、内部鋼管20の位置を固定させることができる。
【0019】
図1に示すように、外殻鋼管10内に内部鋼管20を固定した状態では、第1のスパイラルダクト21の四つの第2の開口部27のうち、最上段の第2の開口部27が上側の水平補剛鋼材50を上下方向に跨ぐとともに、上から二番目の第2の開口部27が下側の水平補剛鋼材50を上下方向に跨ぐように構成されている(
図5参照)。すなわち、少なくとも一つの第2の開口部27が水平補剛鋼材50に対向した箇所に配置され、水平補剛鋼材50の上側および下側に開口している。
【0020】
第1のスパイラルダクト21の下端部には、最下端部の位置固定用鉄筋60が設けられている。最下端部の位置固定用鉄筋60は、内部鋼管20を基部面2に対して垂直に配置するための部材である。最下端部の位置固定用鉄筋60は、
図2(c)に示すように、四本の水平鉄筋61を格子状に組み合わせた枠体であり、第1のスパイラルダクト21の外周面を囲んでいる(
図3参照)。
最下端部の位置固定用鉄筋60の各水平鉄筋61は、第1のスパイラルダクト21の軸方向に対して垂直に配置されている(
図1参照)。最下端部の位置固定用鉄筋60の各水平鉄筋61は、第1のスパイラルダクト21の外周面に接合されている。また、最下端部の位置固定用鉄筋60は、
図1に示すように、水平補剛鋼材50の挿通孔51を通過可能な大きさに形成されている。
そして、最下端部の位置固定用鉄筋60が基部面2上に載置されることで、内部鋼管20が基部面2に対して垂直に配置される。
また、最下端部の位置固定用鉄筋60の上部には、第1のスパイラルダクト21を囲むリング鉄筋と、四本の斜め鉄筋とからなるガイド鉄筋62が設けられている。このガイド鉄筋62は、第1のスパイラルダクト21を外殻鋼管10内の中心部に配置するための部材である。
【0021】
第1のスパイラルダクト21の高さ方向の略中間部には、
図1に示すように、中間部の位置固定用鉄筋70が設けられている。中間部の位置固定用鉄筋70は、内部鋼管20の上下方向の位置を定めるための部材である。中間部の位置固定用鉄筋70は、
図2(b)に示すように、四本の水平鉄筋71を格子状に組み合わせた枠体であり、第1のスパイラルダクト21の外周面を囲んでいる(
図3参照)。
中間部の位置固定用鉄筋70の各水平鉄筋71は、第1のスパイラルダクト21の軸方向に対して垂直に配置されている。中間部の位置固定用鉄筋70の各水平鉄筋71は、第1のスパイラルダクト21の外周面に接合されている。
そして、
図1に示すように、中間部の位置固定用鉄筋70が上段の水平補剛鋼材50の上面に載置されることで、内部鋼管20の上下方向の位置が定まる。
また、中間部の位置固定用鉄筋70の上部には、第1のスパイラルダクト21を囲むリング鉄筋と、四本の斜め鉄筋とからなるガイド鉄筋72が設けられている。このガイド鉄筋72は、第1のスパイラルダクト21を外殻鋼管10内の中心部に配置するための部材である。具体的には、ガイド鉄筋72の下端側は、上側の第2のスパイラルダクト22の外周面に接合され、ガイド鉄筋72の上端側は、外殻鋼管10の内周面の四隅にそれぞれ当接させて、スパイラルダクト21,22(内部鋼管10)の位置を固定させることが好ましい。
【0022】
第2のスパイラルダクト22の上端部には、最上端部の位置固定用鉄筋80が設けられている。最上端部の位置固定用鉄筋80は、内部鋼管20を外殻鋼管10内の中心部に位置決めするための部材である。最上端部の位置固定用鉄筋80は、
図2(a)に示すように、同じ長さの四本の斜め鉄筋81によって構成されている(
図3参照)。
最上端部の位置固定用鉄筋80の各斜め鉄筋81の内端部は、上側の第2のスパイラルダクト22の外周面に接合され、最上端部の位置固定用鉄筋80の各斜め鉄筋81の外端部は、外殻鋼管10の内周面の四隅にそれぞれ当接させて、スパイラルダクト21,22(内部鋼管10)の位置を固定している。
そして、
図1に示すように、最上端部の位置固定用鉄筋80の各斜め鉄筋81が、上側のスパイラルダクト22の外周面と、外殻鋼管10の内周面の四隅との間に介設されることで、上側のスパイラルダクト22が外殻鋼管10内の中心部に位置固定される。また、中間部のガイド鉄筋72と最上端部の位置固定用鉄筋80の其々の上端側を共に、外殻鋼管10の内周面の四隅にそれぞれ当接させれば、外殻鋼管内に配置されるスパイラルダクト21,22(内部鋼管10)の位置を中間部と最上端部の異なる高さ位置にて強固に固定させることができる。
【0023】
本実施形態のコンクリート充填二重鋼管柱1では、内部鋼管20を用いて外殻鋼管10内にコンクリート30が打設されている。すなわち、内部鋼管20の外周面と外殻鋼管10の内周面との間にコンクリート30が打設されている。また、内部鋼管20内にもコンクリート30が打設されている(
図2(a)参照)。コンクリート30は、外殻鋼管10の上端縁部よりも下げた位置(例えば、300mm以上)まで打設されている。本実施形態では、最上端部の位置固定用鉄筋80の下端部までコンクリート30が打設されている。また、内部鋼管20の上端縁部の高さは、コンクリート30の上端面の高さに合わせて設定されている。すなわち、内部鋼管20の上端縁部の位置は、外殻鋼管10の上端縁部よりも下げた位置であり、最上端部の位置固定用鉄筋80の下端部と同じ高さである。
【0024】
次に、前記したコンクリート充填二重鋼管柱1の構築方法について説明する。
図5に示すように、外殻鋼管10を基部面2に対して垂直に立設する。続いて、外殻鋼管10の上端開口部から外殻鋼管10内に内部鋼管20を挿入する。
なお、内部鋼管20には、最下端部の位置固定用鉄筋60、中間部の位置固定用鉄筋70および最上端部の位置固定用鉄筋80が予め接合されている。最下端部の位置固定用鉄筋60は、内部鋼管20に予め接合した状態で、外殻鋼管10内の柱脚部の略中央位置に配置する。
内部鋼管20の下端部を基部面2に当接させ、内部鋼管20全体を外殻鋼管10内に設置させる。
最下端部の位置固定用鉄筋60を基部面2に当接させると、内部鋼管20は、基部面2に対して垂直に配置される。また、中間部の位置固定用鉄筋70を上側の水平補剛鋼材50の上面に当接させると、内部鋼管20が上下方向に位置決めされる。さらに、最上端部の位置固定用鉄筋80を外殻鋼管10の内周面の四隅に当接させると、内部鋼管20が外殻鋼管10内の略中心部に位置が固定される。
【0025】
内部鋼管20を外殻鋼管10内に仮固定した後に、外殻鋼管10の上方にホッパー4を配置する。ホッパー4に、一旦、フレッシュコンクリート(生コンクリート)を投入した後、ホッパー4の排出口4aから内部鋼管20内にコンクリート30を落下させる。
なお、柔軟な樹脂製(ポリ塩化ビニル製)の供給ホース4bをホッパー4の排出口4aに接続し、供給ホース4bの先端部から内部鋼管20内にコンクリート30を落下させている。これにより、フレッシュコンクリートが落下する距離を小さくすることができるため、内部鋼管20内でフレッシュコンクリートの材料が分離するのを防ぐことができる。
【0026】
内部鋼管20内に供給されたコンクリート30は、内部鋼管20の両第1の開口部26,26から外殻鋼管10内の放射状に充填される。さらに、順次に上方の第2の開口部27から外殻鋼管10内にコンクリート30が流れ出ていき、内部鋼管20内および外殻鋼管10内にコンクリート30が充填される。
コンクリート30が上下の水平補剛鋼材50,50に達すると、両水平補剛鋼材50,50の取り付け高さ位置において、外殻鋼管10の外周面にバイブレータなどの振動装置によって外部振動を与える。これにより、コンクリート30内の空気を水平補剛鋼材50の上面または下面に沿って空気孔付近まで移動させて、空気孔から排出させる。
そして、最上端部の位置固定用鉄筋80の下端部まで外殻鋼管10の内部にコンクリート30を充填し、コンクリート30を硬化させる。このようにして、コンクリート充填二重鋼管柱1を構築する。
外殻鋼管10にコンクリート30を打設した後は、外殻鋼管10の上部に最上端部の位置固定用鉄筋80が露出しているため、他の内部鋼管20を継ぎ足すときには、次の内部鋼管20は、最上端部の位置固定用鉄筋80の中央部を通過し、外殻鋼管10の中央部に配置される。このように、最上端部の位置固定用鉄筋80内部鋼管20のガイド部材の役割を果たしている。
【0027】
以上のようなコンクリート充填二重鋼管柱1では、
図1に示すように、内部鋼管20の第2の開口部27が水平補剛鋼材50を上下方向に跨ぐように構成されている。また、外殻鋼管10内にコンクリート30を充填するときに、水平補剛鋼材50に対応する位置で外殻鋼管10に外部振動を与えている。
そして、コンクリート充填二重鋼管柱1では、外殻鋼管10内にコンクリート30を充填したときに、コンクリート30内の空気が内部鋼管20を通じて上方に排出される。これにより、コンクリート充填二重鋼管柱1では、水平補剛鋼材50の上面側および下面側でコンクリート30に空気溜まりが生じるのを抑制することができるため、外殻鋼管10内にコンクリートを密実に打設することができる。
また、コンクリート充填二重鋼管柱1では、外殻鋼管10および内部鋼管20の二重鋼管による拘束効果により、強度と剛性が其々増加される。鋼管10,20およびコンクリート30各材料強度を足し合わせた単純累加強度を上回る高強度なコンクリート充填二重鋼管柱1を実現することができる。
また、コンクリート充填二重鋼管柱1では、内部鋼管20の外周面の下端部、中間部、および上端部に、其々径方向の位置固定用鉄筋60,70,80を設けたことで、外殻鋼管20内で内部鋼管10を偏らせることなく、密実にコンクリート30が充填されたコンクリート充填二重鋼管柱1を実現することができる。
【0028】
コンクリート充填二重鋼管柱1では、外殻鋼管10内から内部鋼管20を引き抜く必要がなく、内部鋼管20内のコンクリート30の上面の高さ位置により、コンクリート30の充填量を把握することができるため、コンクリート30の充填作業を容易に管理することができる。
また、コンクリート充填二重鋼管柱1では、内部鋼管20を位置固定用鉄筋60,70,80によって、外殻鋼管10内に仮固定した状態で、内部鋼管20内にコンクリート30を充填することができるため、コンクリート30を充填するときの作業性を良くすることができる。
【0029】
[性能確認実験]
次に、本発明の効果を確認する目的で、実建物の1階〜3階分までの縮小コンクリート充填二重鋼管柱モデルを対象に、内部鋼管を用いたコンクリートの充填性試験を実施した。以下、試験方法と、コンクリートの充填結果について述べる。
試験方法は、先ず、
図6に示すように、開口部26,27を設けた内部鋼管20を用いて外殻鋼管10内にコンクリートを充填させた。コンクリートが硬化した後に、コンクリート充填二重鋼管柱1の複数個所を水平方向に切断し、その水平切断面を画像処理して、コンクリート充填二重鋼管柱1のコンクリート中に存在する空気溜まり(気泡部)を計測し、コンクリートの充填性能を確認した。
【0030】
実験試験体の外殻鋼管10は、
図6に示すように、レベル調整モルタル3の上面に立設されている。外殻鋼管10は、周壁の一辺が418mm、周壁の厚さが12mm、高さは5990mmの角筒状の鋼管である。
外殻鋼管10内には、実建物のコンクリート充填二重鋼管柱に設けられるダイヤフラムを模擬して三枚の水平補剛鋼材50A〜50Cを設置した。各水平補剛鋼材50A〜50Cの厚さは24mmである。各水平補剛鋼材50A〜50Cの中央部には、直径250mmの挿通孔51が形成されている。
最下段の水平補剛鋼材50Aは、レベル調整モルタル3の上面から上方に3160mm離れて配置されている。また、中段の水平補剛鋼材50Bは、最下段の水平補剛鋼材50Aの上面から上方に176mm離れて配置されている。また、最上段の水平補剛鋼材50Cは、中段の水平補剛鋼材50Bの上面から上方に652mm離れて配置されている。
【0031】
実験試験体の内部鋼管20は、三本のスパイラルダクト21,22,23を連結したものである。内部鋼管20は、直径が115mmで高さが5690mmの円筒状の鋼管である。
内部鋼管20の下端部には、高さが690mm、幅が115mmの第1の開口部26が形成されている。また、内部鋼管20には、複数の第2の開口部27が螺旋状に所定間隔おきに形成されている。第2の開口部27は、高さが135mm、幅が115mmに形成されている。実験試験体の内部鋼管20では、10個の第2の開口部27が上下方向に間隔を空けて千鳥状に配置されている。
また、各第2の開口部27のうち三つの第2の開口部27は、各水平補剛鋼材50A〜50Cをそれぞれ上下方向に跨いでいる。
【0032】
本実験では、スランプフロー60cmの高流動コンクリートを、内部鋼管20を通じて外殻鋼管10内に充填している。また、各水平補剛鋼材50A〜50Cの取り付け高さ位置において、外殻鋼管10の外周面にバイブレータなどの振動発生装置によって振動付与している。
このようにして、外殻鋼管10内および内部鋼管20内にコンクリートを打設する。コンクリートが硬化した後に、各水平補剛鋼材50A〜50Cの下面の近傍でコンクリート充填二重鋼管柱1を水平に切断する。
そして、コンクリートの切断面をカメラで撮影し、その画像をコンピュータによって画像処理することで、コンクリートの充填率を算出した。
図7に、縮小コンクリート充填二重鋼管柱モデルを用いたコンクリートの充填性試験における中段の水平補剛鋼材50Bを挟んだコンクリート充填二重鋼管柱1の水平切断面での気泡部の計測結果を示す。
図7(a)は水平補剛鋼材50Bの上端面位置で、
図7(b)は水平補剛鋼材50Bの下端面位置である。図中の網掛け部分は気泡部を示しており、略中央付近の二重円形輪郭部において、内側円形輪郭部は内部鋼管20の切断位置を示し、外側円形輪郭部は水平補剛鋼材50Bの内部側に相当し、挿通孔の位置である。
図7(a)および
図7(b)の計測結果からは、気泡部は特定の位置に集中的に形成されておらず、水平補剛鋼材50Bを挟んだ柱コンクリート部に形成される気泡部は柱の水平断面積当り、平均値で1.4%である。また、下段側の水平補剛鋼材50Aと、上段側の水平補剛鋼材50Cを挟んだ気泡部の平均は、1.1%と0.5%である。
試験結果によると、本発明の内部鋼管20を使用したコンクリート充填方法では、水平補剛鋼材50A〜50Bの上面および下面の特定の位置に、大きな気泡部が形成されることはなく、コンクリートが密実に充填されることを確認することができた。
【0033】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態のコンクリート充填二重鋼管柱1は、
図1に示すように、角筒状の外殻鋼管10内に円筒状の内部鋼管20が配置されているが、外殻鋼管および内部鋼管の形状は限定されるものではない。
また、本実施形態のコンクリート充填二重鋼管柱1では、外殻鋼管10の所定の高さに梁部材40が接合されているが、梁部材40に連結される接合部材を外殻鋼管10に取り付けてもよい。
また、第2の開口部27の形状や数は限定されるものではなく、コンクリート30の充填量や流動に応じて適宜に設定される。