【課題を解決するための手段】
【0007】
一端に光送信機を有し、他端に光受信機を有する光伝送区間の信号伝送品質を決定する方法は、次の工程を有する。
【0008】
a)送信機コードが光送信機から光受信機に送信される信号を表すとして、この送信機コードを受信する工程。
【0009】
b)受信機コードが光受信機により送信機コードを用いて用意される信号を表すとして、この受信機コードを読み出す工程。
【0010】
c)光伝送区間の信号伝送品質を決定するために、これらの送信機コードと受信機コードが一致する度合いを算出する工程。
【0011】
信号伝送品質とは、如何なる精度で送信機から受信機に信号が伝送されたのかを表す変量であると理解することができる。送信された信号と受信された信号が一致する度合いが高くなる程、より良い信号伝送品質であるとすることができる。光伝送区間とは、光線の伝送区間であると理解することができる。この光線は、一回又は複数回反射されて、光伝送区間を通過することができる。例えば、光伝送区間は、フォトアイソレータの光路とすることができる。光線は、光送信機から光伝送区間を介して光受信機に伝送することができる。この場合、光送信機は、光伝送区間の一端を示し、光受信機は、光伝送区間の他端を示す。光送信機とは、電気信号を光に変換するように構成された電気部品であると理解することができる。それは、例えば、LED(Light Emitting Diode)とも呼ばれる発光ダイオードとすることができる。フォト受信機とも呼ばれる光受信機とは、光を電気信号に変換するように構成されたセンサであると理解することができる。それは、例えば、フォトダイオードとすることができる。
【0012】
光送信機は、送信機コードを送信するように構成することができる。送信機コードとは、例えば、赤の波長領域の光(赤色光線)又は赤外光などの光線の形で光受信機に送信できるコードであると理解することができる。このコードは、例えば、所定のビット配列のデジタル符号語とすることができ、それを用いて、光の強度を変更する。光受信機は、送信機コードを受信するように構成することができる。更に、光受信機は、送信機コードを用いて受信機コードを用意するように構成することができる。この受信機コードは、光受信機において、送信機コードを搬送する光信号を受信している限り、送信機コードを表す電気信号とすることができる。これらの送信機コードと受信機コードを互いに比較することができる。それにより、送信機コードと受信機コードが一致する度合いを算出することができる。この場合、例えば、送信機コードと受信機コードの如何に多くのコード区画がそれぞれ互いに一致するのかを算出することができる。一致する度合いとは、一致するコード区画の数であると理解することができる。この一致するコード区画の数に応じて、光伝送区間の信号伝送品質を決定することができる。送信機コードと受信機コードが完全に一致することは、例えば、実現可能な最良の信号伝送品質に対応させることができる。
【0013】
本アプローチは、フォトアイソレータの機能が外部からの影響により制限される可能性が有るとの知見に基づいている。例えば、汚れ又は露がフォトアイソレータの光送信機及び/又は光受信機上に付着する場合が有る。それによって、光送信機から送出される光線が、変化した角度で放出されるか、或いは光受信機が、送出された光線の一部だけを検出する可能性が有る。それは、フォトアイソレータの誤動作又は故障を引き起こす場合が有る。そのような外部からの影響により生じる妨害を防止するために、コードを送信するように光送信機を構成することができる。光受信機は、そのコードを受信するように構成することができる。ここで、送信されたコードと受信されたコードを比較することによって、光伝送区間が外部からの影響により妨害されたか否かを確認できる。それは、例えば、送信されたコードを搬送する光の一部が伝送時に望ましくない散乱により受信機に届かないために、特に、両方のコードが互いに異なる場合であるとすることができる。
【0014】
本アプローチは、技術的に簡単で非常に安価に実現できる補助手段を用いて、フォトアイソレータの機能を妨害する可能性の有る外部からの影響を確実に検知できるとの利点を提供する。それにより動作の安全性が向上されるために、そのようなフォトアイソレータは、例えば、筐体内における自動車のオートマチック変速機の変速段セレクタレバーの位置を決定するために、コストを節約した形で車両に採用することもできる。
【0015】
本アプローチの一つの実施構成では、本方法は、受信機コードを搬送する信号の受信機コード信号強度を測定する工程を有することができる。更に、この場合、本方法は、受信機コード信号強度の所定の値からの偏差を決定する工程を有することができる。受信機コード信号強度とは、受信機コードを搬送する信号のレベルであると理解することができる。この受信機コードを搬送する信号は、例えば、アナログ信号とすることができる。所定の値とは、受信機コード信号強度の保存された基準値であると理解することができる。受信機コード信号強度の所定の値からの偏差を決定するために、受信機コード信号強度を所定の値と比較することができる。例えば、この所定の値は、受信機コードを搬送する信号の最小信号強度を表すことができる。受信機コード信号強度は、光伝送区間の物理的な特性により影響を受ける可能性が有る。光受信機が、送信機コードを搬送する信号を用いて、光伝送区間の物理的な特性に関係無く、受信機コードを搬送する信号を提供できるように、受信機コード信号強度の測定と受信機コード信号強度の所定の値からの偏差の決定とによって、送信機コードを搬送する信号が最小信号強度で光受信機に送信されたのかを確認することができる。そのような偏差の決定は、誤り診断でも役に立つことができる。
【0016】
本アプローチの一つの実施構成では、本方法は、受信機コード信号強度の所定の値からの偏差を用いて、送信機コードを搬送する信号の送信機コード信号強度を変更する工程を有することができる。送信機コード信号強度とは、送信機コードを搬送する信号のレベルであると理解することができる。例えば、この送信機コードを搬送する信号は、例えば、赤の波長領域の光又は赤外光などの光信号とすることができる。例えば、光送信機及び/又は光受信機の結露又は汚染のために、受信機コード信号強度が所定の値と異なる場合、例えば、光送信機の送信電力の上昇によって、送信機コード信号強度を増大することができる。それによって、光伝送区間が確かに開放されているが、望ましくない外部からの影響により妨害されている場合でも、送信機コードを搬送する信号が光受信機に到達することを実現できる。更に、送信機コード信号強度を変更することは、例えば、光送信機の排熱増加により、光送信機の結露が低減することによって、光伝送区間の妨害を少なくとも部分的に排除できるとの利点を提供する。
【0017】
本アプローチの一つの実施構成では、この変更する工程において、送信機コード信号強度を変更するために、少なくとも二つの異なる措置を実施することができる。例えば、少なくとも二つの異なる大きさの直列抵抗を介して、光送信機、例えば、LEDに電流を流すこと、及び/又は追加の光送信機を接続することによって、送信機コード信号強度を変更することができる。この変更する工程において、少なくとも二つの異なる措置を実施することによって、効率的且つ省資源形態で、送信機コード信号強度を光送信機及び/又は光受信機の結露度合いに適合させることができる。それにより、光送信機の寿命を延ばす作用及び/又は光伝送区間の機能妨害に対抗する作用を得ることができる。
【0018】
本アプローチの一つの実施構成では、本方法は、別の送信機コードを受信する別の工程を有することができる。この場合、この別の送信機コードは、光送信機から光受信機に送信される別の信号を表すことができる。この場合、別の送信機コードは、受信する工程で受信する送信機コードと異なることができる。これらの送信機コードと別の送信機コードが互いに異なることによって、光伝送区間の物理的な特性が、同じ送信機コードの反復伝送により影響を受けることを防止できる。それにより、信号伝送エラーを回避できる。
【0019】
本アプローチの一つの実施構成では、受信する工程において、送信機コードとして、二進コードを受信することと、読み出す工程において、受信機コードとして、二進コードを読み出することとのいずれか一つを実施することができる。二進コードとは、一般的に、例えば、1と0又は真又は偽などの二つの異なるシンボルのシーケンスにより情報を表現可能なコードであると理解することができる。有利には、二進コードは、簡単で安価な技術手段により構成するとともに、安価且つ省資源形態で処理することができる。
【0020】
本アプローチの一つの実施構成では、受信する工程において、更に、少なくとも一つの追加の送信機コードを受信することができる。この場合、少なくとも一つの追加の送信機コードは、少なくとも一つの追加の光送信機から少なくとも一つの光受信機に送信される信号を表すことができる。少なくとも一つの追加の光伝送区間の一端に、この少なくとも一つの追加の光送信機を配置し、他端に、この少なくとも一つの追加の光受信機を配置することができる。この場合、この少なくとも一つの送信機コードは、送信機コードと異なるコードとすることができる。
【0021】
この読み出す工程において、更に、少なくとも一つの追加の受信機コードを読み出すことができる。この場合、少なくとも一つの追加の受信機コードは、少なくとも一つの追加の光受信機により少なくとも一つの追加の送信機コードを用いて用意された信号を表すことができる。
【0022】
この算出する工程において、更に、少なくとも一つの追加の光伝送区間の信号伝送品質を決定するために、これらの少なくとも一つの追加の送信機コードと少なくとも一つの追加の受信機コードが一致する度合いを算出することができる。
【0023】
そのような二チャンネルによる実施構成によって、小さいコストと材料負担により、本方法の特に高い信頼度を保証することができる。そのため、本方法は、例えば、車両の領域などの高い安全要件の領域にも適用することができる。
【0024】
この少なくとも一つの追加の送信機コードが送信機コードと異なることによって、前記の光送信機と少なくとも一つの追加の光送信機が同時に動作しないことを実現できる。それによって、散乱光による相互の機能妨害を回避することができる。
【0025】
本アプローチの一つの実施構成では、受信する工程において、追加の送信機コードとして、反転された送信機コードと一致するコードを受信することができる。反転された送信機コードとは、一般的に、送信機コードを表すコード配列、例えば、デジタル符号語を論理的に逆転させたコード又はコード桁毎に反転させたコードであると理解することができる。それによって、特に簡単に、且つ低い計算負荷で送信機コードと少なくとも一つの追加の送信機コードの間の実現可能な最大限の違いを作り出すことができる。
【0026】
本アプローチは、更に、一端に光送信機を有し、他端に光受信機を有する光伝送区間の信号伝送品質を決定する装置を提供する。本装置は、次の特徴を備えることができる。
a)送信機コードが光送信機から光受信機に送信される信号を表すとして、この送信機コードを受信する受信ユニット
b)受信機コードが光受信機により送信機コードを用いて用意された信号を表すとして、この受信機コードを読み出す読出ユニット
c)光伝送区間の信号伝送品質を決定するために、送信機コードと受信機コードが一致する度合いを算出する算出ユニット
【0027】
一つの装置は、センサ信号を処理して、その信号に応じて制御信号を出力する電気機器とすることができる。この装置は、ハードフェア及び/又はソフトウェアにより構成可能な一つ又は複数の好適なインタフェースを備えることができる。ハードフェアによる構成では、これらのインタフェースは、例えば、この装置の機能を置き換えた、集積回路の部分とすることができる。これらのインタフェースは、独自の集積回路とするか、或いは少なくとも部分的に個別部品から構成することができる。ソフトウェアによる構成では、これらのインタフェースは、例えば、マイクロプロセッサ上でそれ以外のソフトウェアモジュールと並列に存在するソフトウェアモジュールとすることができる。この装置は、有利には、操作部材により調整を実施するための調節装置とすることができる。そのような調節装置は、例えば、変速段セレクタレバー、シャーシ調節装置とすることができる。
【0028】
本アプローチは、更に、前述した実施構成の中の一つに基づく方法を実施する装置を備えた調節装置を提供する。そのような調節装置は、例えば、シャーシを調節するための調節装置とすることができる。有利には、本アプローチは、オートマチック変速機用の変速段セレクタレバーを提供する。変速段セレクタレバーは、通常、オートマチック変速機において、例えば、ニュートラル変速段用のN、前進走行変速段又はドライブ用のD及び後進走行変速段用のRなどの異なる選択変速段の間を切り換えるために使用される。駐車変速段用のPなどの別の選択変速段は、同じく変速段セレクタレバーにより選択可能である。変速段セレクタレバーを用いて投入された選択変速段に関する情報は、例えば、シフト・バイ・ワイヤ式変速段選択システムの場合のように、機械的又は電子的に実現することができる。この情報は、選択された選択変速段に対応して自動車変速機の切り換えを行なうために、場合によっては、変速機制御機器による検証後に、変速機制御機器を介して自動車変速機に転送することができる。この変速段セレクタレバーは、有利には、シフトレバー又は回転選択スイッチとすることができる。更に有利には、この変速段セレクタレバーは、シフト・バイ・ワイヤシステムに組み込まれる。この変速段セレクタレバーは、前述した実施構成の中の一つに基づく方法を実施する装置を備えることができる。そのような変速段セレクタレバーは、高い信頼度と精度を有し、従来の変速段セレクタレバーよりも明らかに安価に製造することができる。
【0029】
半導体メモリ、固定ディスクメモリ又は光メモリなどの機械読み取り可能な媒体に保存できるとともに、コンピュータ又は装置上でプログラムを実行した場合に前述した実施構成の中の一つに基づく方法を実施するために使用されるプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も有利である。
【0030】
添付図面に基づき、本発明の実施例を詳しく説明する。