【実施例】
【0011】
試験片には、0.5ミリ×50ミリ×70ミリのSPCC鋼板を用い、その表面にジンケート亜鉛めっきを施した。亜鉛めっきの膜厚は9〜10マイクロメートルであった。
亜鉛めっきが施された試験片を常温の5%硝酸水溶液に10秒浸漬し、次いで水道水の流水で十分に濯ぎ、表面を清浄化した。この他に、試験片の表面状態によっては、アルカリ浸漬や湯洗などを加えてもよい。
化成処理の実施方法は下記実施例及び比較例に記載する。
化成処理を行った試験片は、水道水とイオン交換水にて十分に洗浄したのち、80℃に保った電気乾燥炉にて10分間静置し乾燥させた。
【0012】
化成皮膜の外観は、色調と均一性の観点から評価した。
良好=色調はうすい青〜うすい黄色でムラがなく、光沢のある均一外観、
可=色調はうすい青〜うすい黄色だが多少ムラがあり均一性が低い外観、
不可=色調がうすい青〜うすい黄色の範囲から外れる及び/又は均一性がなく光沢も低い外観。
【0013】
化成処理された試験片はJIS Z―2371に準じて塩水噴霧試験(以下SST)を行い、72時間、120時間、240時間での白錆発生面積で耐食性を評価した。試験結果は4段階に分け、○=白錆発生なし、△=白錆5%未満、▲=白錆5%以上、×=赤錆発生として評価した。
【0014】
1.金属濃度の評価
(実施例1)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:5.2g/L(Zrとして10mmol/L)
(C)蓚酸:1.4g/L(15mmol/L)
マロン酸:1.6g/L(15mmol/L)
残部は水である。
【0015】
(実施例2)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:10.4g/L(Zrとして20mmol/L)
(C)蓚酸:1.4g/L(15mmol/L)
マロン酸:1.6g/L(15mmol/L)
残部は水である。
【0016】
(実施例3)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:15.6g/L(Zrとして30mmol/L)
(C)蓚酸:1.4g/L(15mmol/L)
マロン酸:1.6g/L(15mmol/L)
残部は水である。
【0017】
(実施例4)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:26g/L(Zrとして50mmol/L)
(C)蓚酸:1.4g/L(15mmol/L)
マロン酸:1.6g/L(15mmol/L)
残部は水である。
【0018】
(実施例5)
下記のとおり化成処理液を調製し、62%硝酸を用いてpH=4.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:3g/L(Crとして5mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:5.2g/L(Zrとして10mmol/L)
残部は水である。
【0019】
(実施例6)
下記のとおり化成処理液を調製し、62%硝酸を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液(ZrO
220%:6.2g/L(Zrとして10mmol/L)
(C)50%乳酸:3.6g/L(乳酸として20mmoL/L)
残部は水である。
【0020】
(比較例1)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:48g/L(Crとして80mmol/L)
(B)硝酸コバルト:Coとして1.0g/L
(C)蓚酸:1.4g/L(15mmol/L)
マロン酸:1.6g/L(15mmol/L)
残部は水である。
【0021】
(比較例2)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:24g/L(Crとして40mmol/L)
(B)硝酸コバルト:Coとして1.0g/L
(C)蓚酸:1.4g/L(15mmol/L)
マロン酸:1.6g/L(15mmol/L)
残部は水である。
【0022】
実施例1〜6並びに比較例1及び2の各処理液の組成を表1にまとめ、評価結果を表2に、皮膜中の3価クロム及びジルコニウムの含有量を表3に示す。
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
表2の結果から、実施例1〜6において、コバルトを含有する比較例1及び2と同等の性能を有する皮膜を得ることができている。
【0026】
2.ジカルボン酸の評価
(実施例7)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ水溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:10.4g/L(Zrとして20mmol/L)
(C)蓚酸:1.8g/L(20mmol/L)
残部は水である。
【0027】
(実施例8)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ水溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:10.4g/L(Zrとして20mmol/L)
(C)マロン酸:2.0g/L(20mmol/L)
残部は水である。
【0028】
(実施例9)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ水溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:10.4g/L(Zrとして20mmol/L)
(C)コハク酸:2.4g/L(20mmol/L)
残部は水である。
【0029】
(実施例10)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ水溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:10.4g/L(Zrとして20mmol/L)
(C)グルタル酸:2.7g/L(20mmol/L)
残部は水である。
【0030】
(実施例11)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ水溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:10.4g/L(Zrとして20mmol/L)
(C)アジピン酸:3.0g/L(20mmol/L)
残部は水である。
【0031】
(実施例12)
下記のとおり化成処理液を調製し、苛性ソーダ水溶液を用いてpH=2.0とした後、前記の試験片に対し30℃、40秒浸漬処理を行った。
(A)40%硝酸クロム:12g/L(Crとして20mmol/L)
(B)フッ化ジルコン水素酸:10.4g/L(Zrとして20mmol/L)
(C)スベリン酸:3.5g/L(20mmol/L)
残部は水である。
【0032】
実施例7〜12の各処理液の組成を表4にまとめ、評価結果を表5に示す。
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
上記より、C
O−(COOH)
2である蓚酸と、C
1−(COOH)
2であるマロン酸を使用した時の耐食性が特に良好であることが示された。