(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6545324
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20190705BHJP
【FI】
H02K5/22
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-107631(P2018-107631)
(22)【出願日】2018年6月5日
【審査請求日】2019年4月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000242127
【氏名又は名称】北芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄治
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 真一
(72)【発明者】
【氏名】影山 友則
(72)【発明者】
【氏名】武田 弘基
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−9459(JP,A)
【文献】
特開2005−333748(JP,A)
【文献】
特開2014−110697(JP,A)
【文献】
再公表特許第2015/080105(JP,A1)
【文献】
特開2014−33540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面に永久磁石が相対向して設けられた円筒形のフレームと、該フレームの一端を覆うエンドカバーと、該エンドカバーに設けられ少なくとも一対のブラシが取り付けられるホルダとを備えた電動モータであって、
前記エンドカバーは、前記フレームの端部に接続される筒状の筒状部と、該筒状部の一端を閉塞する蓋部と、前記ブラシに電気的に接続された端子が取り付けられたコネクタ部と、該コネクタ部が脱着自在に取り付けられるコネクタ受け部とを有し、
前記コネクタ受け部が、前記蓋部に向かって前記筒状部を切り欠いた切り欠き部と、該切り欠き部に前記蓋部に向かって形成された第1係合部とを有すると共に、前記コネクタ部が、前記第1係合部に係合する第1係合受け部を有して前記切り欠き部に嵌合する構造において、
前記コネクタ受け部に嵌合した前記コネクタ部が前記蓋部の一部に突き当たって固定される突き当たり部を有することを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
請求項1記載の電動モータにおいて、
前記切り欠き部および前記第1係合部が、前記筒状部から前記蓋部の一部に亘って形成されていることを特徴とする電動モータ。
【請求項3】
請求項2記載の電動モータにおいて、
前記コネクタ受け部が、前記切り欠き部の前記筒状部側に前記蓋部に向かって形成された第2係合部を有すると共に、前記コネクタ部が、該第2係合部に係合する第2係合受け部を有することを特徴とする電動モータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の電動モータにおいて、
前記コネクタ部は、前記第1係合部および前記第1係合受け部に沿って該コネクタ部が嵌合する方向とは垂直な方向に、前記端子を挟み込むスリットが形成されていることを特徴とする電動モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側面に永久磁石が相対向して設けられた円筒形のフレームと、該フレームの一端を覆うエンドカバーと、該エンドカバーに設けられたブラシが取り付けられるホルダとを備えた電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動モータとしては、円筒形のフレームに2つの永久磁石が相対向して設けられた2極モータと、4つの永久磁石が相対向して設けられた4極モータとがある。2極モータと4極モータとを比較した場合、2極モータの方が回転時に振動および騒音がより発生しづらいことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2015−531392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、4極モータにおいてエンドカバーにおけるコネクタ部の構造を改善することで、コネクタ部の固定をより確実にしている。すなわち、エンドカバーにはフレームの端部に接続される筒状の筒状部と、筒状部の一端を閉蓋する蓋部と、コネクタが接続されるコネクタ部と、コネクタ部が着脱自在に取り付けられる挿入口とを有し、この挿入口は、筒状部を貫通すると共に蓋部の一部を含むように貫通し、挿入口に取り付けられたコネクタ部が蓋部に突き当たって固定される突き当り面を有している。
【0005】
しかし、安定した電動モータの稼働を行うためには、モータ回転時の振動などによるモータの端子における電気的接続の不安定性を解消させる必要がある。
【0006】
本発明は、端子における電気的接続の安定性を向上させたコネクタ構造を有する電動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の電動モータは、内側面に永久磁石が相対向して設けられた円筒形のフレームと、該フレームの一端を覆うエンドカバーと、該エンドカバーに設けられ少なくとも一対のブラシが取り付けられるホルダとを備えた電動モータであって、
前記エンドカバーは、前記フレームの端部に接続される筒状の筒状部と、該筒状部の一端を閉塞する蓋部と、前記ブラシに電気的に接続された端子が取り付けられたコネクタ部と、該コネクタ部が脱着自在に取り付けられるコネクタ受け部とを有し、
前記コネクタ受け部が、前記蓋部に向かって前記筒状部を切り欠いた切り欠き部と、該切り欠き部に前記蓋部に向かって形成された第1係合部とを有すると共に、前記コネクタ部が、前記第1係合部に係合する第1係合受け部を有して前記切り欠き部に嵌合する構造において、
前記コネクタ受け部に嵌合した前記コネクタ部が前記蓋部の一部に突き当たって固定される突き当たり部を有することを特徴とする。
【0008】
第1発明の電動モータによれば、コネクタ部をエンドカバーに装着するに際し、筒状部を切り欠いて設けた切り欠き部に形成された第1係合部に対して、コネクタ部に設けた第1係合受け部を嵌合させるので、コネクタ部が嵌合する方向とは垂直な方向(エンドカバーにおける周方向および半径方向)の自由度を抑制することができ、コネクタ部のがたつきを低減することができる。
【0009】
また、コネクタ部が突き当たり部に突き当たって固定されるため、コネクタ部が嵌合する方向の自由度を抑制することができるので、コネクタ部のがたつきを低減することができる。
【0010】
このように、第1発明の電動モータによれば、コネクタ部をエンドカバーに確実に固定することができる。
【0011】
第2発明の電動モータは、第1発明の電動モータにおいて、
前記切り欠き部および前記第1係合部が、前記筒状部から前記蓋部の一部に亘って形成されていることを特徴とする。
【0012】
第2発明の電動モータによれば、上記の構成とすることにより、コネクタ部とエンドカバーとの嵌合部分がより大きくなるため、より確実にコネクタ部のがたつきを低減することができる。
【0013】
第3発明の電動モータは、第2発明の電動モータにおいて、
前記コネクタ受け部が、前記切り欠き部の前記筒状部側に前記蓋部に向かって形成された第2係合部を有すると共に、前記コネクタ部が、該第2係合部に係合する第2係合受け部を有することを特徴とする。
【0014】
第3発明の電動モータによれば、第1係合部、第1係合受け部に加えて第2係合部、第2係合受け部を設けることにより、コネクタ部をエンドカバーによりスムーズに装着することができ、より確実にコネクタ部のがたつきを低減することができる。
【0015】
第4発明の電動モータは、第1乃至第3発明の電動モータにおいて、
前記コネクタ部は、前記第1係合部および前記第1係合受け部に沿って該コネクタ部が嵌合する方向とは垂直な方向に、前記端子を挟み込むスリットが形成されていることを特徴とする。
【0016】
第4発明の電動モータによれば、ブラシに電気的に接続された端子の一部がこのスリットに挟み込まれた構成とすることにより、コネクタ部における端子の固定をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施態様の電動モータの構成を示す分解図。
【
図2】
図1の電動モータを組み立てた状態を示す解説図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図2を参照して、本実施形態の電動モータの構成について説明する。
【0019】
本実施形態の電動モータは、フレーム1と、エンドカバー2と、エンドカバー2に設けけられるホルダ3とを備える。
【0020】
フレーム1は、円筒形状の金属製の部材であって、内側面に複数の永久磁石10が設けられている。
【0021】
フレーム1は、一端側に、エンドカバー2を固定するための複数のエンドカバー嵌合部11を備え、フレーム1の他端側はモータ保持部6により閉塞されている。
【0022】
エンドカバー2は合成樹脂製の部材であって、フレーム1の一端側に接続される筒状の筒状部21と、筒状部21の一端を閉蓋する蓋部22と、ブラシ5に電気的に接続された端子4が取り付けられたコネクタ部23と、コネクタ部23が脱着自在に取り付けられるコネクタ受け部24とを備える。
【0023】
筒状部21には、フレーム1に嵌合する嵌合部211が形成されており、周方向の一部にはコネクタ部23と係合するコネクタ受け部24が設けられている。
【0024】
また、筒状部21の外周面から中心に向かって2か所のホルダ3が設けられている。ホルダ3にはブラシ5が装填され、電動モータ稼働時には、ブラシ5は端子4を介して(図示しない)外部電源と導通している。この2か所のホルダ3は電動モータの回転軸を中心として約90度の角度を成しており、2極モータを構成している。
【0025】
蓋部22は筒状部21の一端側を閉塞しており、蓋部22には後ろ側の軸受けとしての貫通孔220が形成されている。
【0026】
コネクタ部23はエンドカバー2と同様の合成樹脂製の本体230と金属製の端子4とからなり、エンドカバー2のコネクタ受け部24にスライド自在に取り付けられる。
【0027】
コネクタ部23には、コネクタ受け部24との嵌合面の周方向の両側面に、蓋部22に向かって形成された凸溝状の第1係合受け部232を有しており、さらに第1係合受け部232よりも筒状部21側に凸溝状の第2係合受け部233が形成されている。
【0028】
また、コネクタ部23には金属製の端子4を挟み込むスリット231が2箇所設けられており、端子4は合成樹脂製のコネクタ部23の本体230に確実に固定されている。ここでスリット231はコネクタ部23が嵌合する方向と垂直な方向に形成されており、端子4のブラシ5側の端部は同様にコネクタ部23が嵌合する方向と垂直な方向に形成されているが、(図示しない)外部電源側の端部は筒状部21の外周の接線方向に形成されている。
【0029】
従来の電動モータにおいては、コネクタ部において端子を固定するには、所定の形状の端子をかしめたり、合成樹脂製の本体に対して端子をインサート成形したりしていたが、本実施態様においては、端子4は金属の薄板を加工しただけの構成であり、加工が容易で、安価かつ寸法精度に優れている。また、端子4はスリット231に確実に挟み込まれているので、端子4はコネクタ部23に確実に固定される。
【0030】
なお、本実施態様においては上記のような端子4の形状としたが、端子4の両端部、特に(図示しない)外部電源側の端部は様々な形状を採ることが可能であり、従来のように(図示しない)外部電源との接続方向が、本発明におけるコネクタ部23が嵌合する方向と垂直な方向(電動モータの回転軸に垂直な方向)に限定されることはない。
【0031】
コネクタ受け部24は筒状部21の周方向の一部分を蓋部22に向かって切り欠いた構造となっており、この切り欠き部241には、コネクタ部23との嵌合面の周方向の両端面に、蓋部22に向かって形成された凹溝状の第1係合部242を有しており、さらに第1係合部242よりも筒状部21側に凹溝状の第2係合部243が形成されている。
【0032】
この切り欠き部241および第1係合部242は筒状部21から蓋部22の一部に亘って形成されており、蓋部22の一部には、コネクタ部23が嵌合して突き当たって固定される突き当たり部221を有している。
【0033】
また本実施態様においては、コネクタ受け部24とコネクタ部23との嵌合面にもそれぞれスライドのガイドとなる凹凸溝が形成されており、また、筒状部21の内面にもコネクタ部23が嵌合して突き当たる内面突き当たり部222を有している。
【0034】
なお、本実施態様においては、第1係合受け部232および第2係合受け部233を凸溝状とし、第1係合部242および第2係合部243を凹溝状としたが、これらの溝形状を逆の関係としてもよい。また、溝の断面形状は様々に選択可能である。
【0035】
また、本実施態様においては、図示したように突き当たり部221が平面である場合について説明したが、突き当たり部221の形状はこれに限定されるものではない。
【0036】
続いて本実施態様の電動モータの組み立て方法について、エンドカバー2を中心に説明する。
【0037】
コネクタ部23の端子4のブラシ5側の端部は、ピグテル線を介してブラシ5に接続されている。ブラシ5は(図示しない)付勢手段により、電動モータ回転の半径方向に付勢される。
【0038】
コネクタ部23はコネクタ受け部24の切り欠き部241から、第1係合受け部232および第2係合受け部233と第1係合部242および第2係合部243とを合わせ、スライドさせて突き当たり部221まで押し込まれる。
【0039】
次に、フレーム1の一端側に形成された複数のエンドカバー嵌合部11と、筒状部21に形成された嵌合部211との位置を合わせ、フレーム1をエンドカバー2の筒状部21に嵌合させる。これにより、コネクタ部23はエンドカバー2に確実に固定される。
【0040】
こうしてコネクタ部23がエンドカバー2に固定されたことで、切り欠き部241がコネクタ部23によって埋められたような形状となり、端子4の(図示しない)外部電源側の端部は筒状部21から突出した形となるので、(図示しない)外部電源との電気的接続が容易に可能となる。
【0041】
以上の本実施態様によれば、端子4を含むコネクタ部23がエンドカバー2に確実に固定されるので、電動モータにおいて、端子4における電気的接続の安定性を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施態様においては、2極モータを例に説明したが、これに限定されるものではなく、電動モータは4極モータであってもよい。
【0043】
さらに、本実施態様においては、ホルダ3はエンドカバー2に設けられた一体型の形態としたが、ホルダ3が別体の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…フレーム、2…エンドカバー、3…ホルダ、4…端子、21…筒状部、22…蓋部、23…コネクタ部、24…コネクタ受け部、221…突き当たり部、231…スリット、232…第1係合受け部、233…第2係合受け部、241…切り欠き部、242…第1係合部、243…第2係合部。
【要約】
【課題】端子における電気的接続の安定性を向上させたコネクタ構造を有する電動モータを提供することを目的とする。
【解決手段】電動モータのエンドカバー2は、筒状部21と蓋部22とコネクタ部23とコネクタ受け部24とを有し、コネクタ受け部24が、蓋部22に向かって筒状部21を切り欠いた切り欠き部241と、切り欠き部241に蓋部22に向かって形成された第1係合部242とを有し、コネクタ部23が、第1係合部242に係合する第1係合受け部232を有して切り欠き部241に嵌合する。コネクタ受け部24に嵌合したコネクタ部23が蓋部22の一部に突き当たって固定される突き当たり部221を有する。
【選択図】
図1